本発明を実施するための実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下では、気導音と振動音とを利用者に伝える電子機器の例として、携帯電話について説明する。
(実施形態1)
図1、図2及び図3を参照しながら、実施形態に係る携帯電話1Aの全体的な構成について説明する。図1は、携帯電話1Aの正面図である。図2は、携帯電話1Aの背面図である。図3は、携帯電話1Aのa−a断面を模式的に示す断面図である。図1、図2及び図3に示すように、携帯電話1Aは、ディスプレイ2と、ボタン3と、照度センサ4と、近接センサ5と、圧電素子7と、マイク8と、第1スピーカ11aと、第2スピーカ11bと、カメラ12と、パネル20と、筐体40とを備える。
ディスプレイ2は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro−Luminescence Display)、又は無機ELディスプレイ(IELD:Inorganic Electro−Luminescence Display)等の表示デバイスを備える。ディスプレイ2は、文字、画像、記号、及び図形等を表示する。
ボタン3は、利用者からの操作入力を受け付ける。ボタン3の数は、図1及び図3に示す例に限定されない。
照度センサ4は、携帯電話1Aの周囲光の照度を検出する。照度は、光の強さ、明るさ、又は輝度を示す。照度センサ4は、例えば、ディスプレイ2の輝度の調整に用いられる。近接センサ5は、近隣の物体の存在を非接触で検出する。近接センサ5は、磁界の変化又は超音波の反射波の帰還時間の変化等に基づいて物体の存在を検出する。近接センサ5は、例えば、ディスプレイ2が顔に近づけられたことを検出する。照度センサ4及び近接センサ5は、一つのセンサとして構成されていてもよい。照度センサ4は、近接センサとして用いられてもよい。
圧電素子7は、電気信号(音信号に応じた電圧)が印加されると、構成材料の電気機械結合係数に従い伸縮又は屈曲する。すなわち、圧電素子7は、電気信号が印加されると変形する。圧電素子7は、パネル20に取り付けられ、パネル20を振動させるための振動源として用いられる。圧電素子7は、例えば、セラミック又は水晶を用いて形成される。圧電素子7は、ユニモルフ、バイモルフ、又は積層型圧電素子であってよい。積層型圧電素子には、バイモルフを積層した(例えば16層又は24層積層した)積層型バイモルフ素子が含まれる。積層型の圧電素子は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)からなる複数の誘電体層と、該複数の誘電体層間に配設された電極層との積層構造体から構成される。ユニモルフは、電気信号(電圧)が印加されると伸縮する。バイモルフは、電気信号(電圧)が印加されると屈曲する。
マイク8は、利用者から発せられる音声などを入力する音入力部である。マイク8は、入力される音を電気信号へ変換する。
第1スピーカ11a及び第2スピーカ11bは、気導方式で音(気導音)を出力する音出力部である。第1スピーカ11a及び第2スピーカ11bは、第2音発生部の一例である。第1スピーカ11a及び第2スピーカ11bは、例えば、ダイナミックスピーカであり、電気信号を変換した音を、耳を携帯電話1Aに接触させていない人へも伝えることができる。第1スピーカ11aは、主に、通話時に相手側から送信される通話音声を出力するために用いられる。第2スピーカ11bは、通話音声の他に、動画コンテンツの再生中の音声を出力したり、音楽を出力したりするために用いられる。実施形態1では、通話音声を出力する場合、第1スピーカ11aから出力するか、又は第2スピーカ11bから出力するかを利用者により事前に設定できるようにしてもよい。
カメラ12は、ディスプレイ2に面している物体を撮影するカメラである。携帯電話1Aは、カメラ12に加えて、ディスプレイ2の反対側の面に面している物体を撮影するアウトカメラを備えてもよい。
パネル20は、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)にともなって振動し、利用者がパネル20に接触させる耳の人体(耳介人体)等にその振動を音振動として伝える。パネル20は、ディスプレイ2及び圧電素子7等を外力から保護する機能も有する。パネル20は、例えば、ガラス、又はアクリル等の合成樹脂により形成される。パネル20の形状は、例えば、板状である。パネル20は、平板であってよい。パネル20は、表面が滑らかに湾曲する曲面パネルであってもよい。
パネル20の背面には、接合部材30により、ディスプレイ2と、圧電素子7とが取り付けられる。圧電素子7は、パネル20の背面に配置された状態で、筺体40の内表面と所定の距離だけ離間している。圧電素子7は、伸縮または屈曲した状態でも、筺体60の内表面と離間しているとよい。すなわち、圧電素子7と筺体40の内表面との間の距離は、圧電素子7の最大変形量よりも大きいとよい。圧電素子7は、補強部材(例えば、板金又はガラス繊維強化樹脂)を介してパネル20に取り付けられてもよい。接合部材30は、例えば、両面テープ、又は熱硬化性あるいは紫外線硬化性等を有する接着剤である。接合部材30は、無色透明のアクリル系紫外線硬化型接着剤である光学弾性樹脂でもよい。
ディスプレイ2は、パネル20の短手方向におけるほぼ中央に配設される。圧電素子7は、パネル20の長手方向の端部から所定の距離だけ離間した近傍に、圧電素子7の長手方向がパネル20の短手方向と平行になるように配設される。ディスプレイ2及び圧電素子7は、パネル20の内側の面に、平行に並べて配設される。
パネル20の外側の面のほぼ全面には、タッチスクリーン(タッチセンサ)21が配設される。タッチスクリーン21は、パネル20に対する接触を検出する。タッチスクリーン21は、指、ペン、又はスタイラスペン等による利用者の接触操作を検出するために用いられる。タッチスクリーン21を用いて検出されるジェスチャは、例えば、タッチ、ロングタッチ、リリース、スワイプ、タップ、ダブルタップ、ロングタップ、ドラッグ、フリック、ピンチイン、及びピンチアウトを含むがこれらに限定されない。タッチスクリーン21の検出方式は、静電容量方式、抵抗膜方式、表面弾性波方式(又は超音波方式)、赤外線方式、電磁誘導方式、及び荷重検出方式等の任意の方式でよい。
タッチスクリーン21は、音を聞くためにパネル20に接触する耳介人体等を検出するためにも用いられる。
筐体40は、樹脂又は金属を用いて形成される。筐体40は、ボタン3、照度センサ4、近接センサ5、マイク8、スピーカ11、カメラ12、およびパネル20等を支持する。
図1から図5を参照しながら、人体伝導方式による音の出力についてより詳細に説明する。図4は、パネル20の形状の例を示す図である。図5は、パネル20の振動の例を示す図である。
圧電素子7には、出力する音に応じた電気信号が印加される。圧電素子7には、例えば、外耳道を介する気導音によって音を伝える所謂パネルスピーカの印加電圧である±5Vよりも高い、±15Vが印加されてもよい。これにより、利用者が、例えば、3N以上の力(5N〜10Nの力)でパネル20に自身の体の一部を押し付けた場合であっても、パネル20に十分な振動を発生させ、利用者の体の一部を介して伝わる振動音を発生させることができる。圧電素子7に印加される電圧は、パネル20の筺体40に対する固定強度、又は圧電素子7の性能等に応じて適宜調整可能である。
電気信号が印加されると、圧電素子7は長手方向に伸縮又は屈曲する。圧電素子7が取り付けられたパネル20は、圧電素子7の伸縮又は屈曲に合わせて変形する。これにより、パネル20は、振動し、気導音を発生させる。さらに、利用者が体の一部(例えば、耳介軟骨)をパネル20に接触させた場合、パネル20は、体の一部を介して利用者に伝導する振動音を発生させる。すなわち、パネル20は、圧電素子7の変形にともなって、パネル20に接触する物体に対して振動音として知覚される周波数で振動する。
例えば、圧電素子7に、通話の相手の音声、又は着信音、音楽等の音データに応じた電気信号が印加されると、パネル20は、電気信号に対応する気導音及び振動音を発生させる。圧電素子7及びパネル20を介して出力される音信号は、後述するストレージ9に記憶されている音データに基づくものであってよい。圧電素子7及びパネル20を介して出力される音信号は、外部のサーバ等に記憶され、後述する通信ユニット6によりネットワークを介して取得される音データに基づくものであってもよい。
本実施形態において、パネル20は、図4に示すように、利用者の耳とほぼ同じ大きさであってよい。また、パネル20は、図4に示すように、利用者の耳よりも大きなサイズであってもよい。この場合、利用者は、音を聞くときに耳の外周部のほぼ全体をパネル20に接触させることができる。このようにして音を聞くことにより、周囲音(ノイズ)が外耳道に入り難くなる。本実施形態では、少なくとも、パネル20は、人間の対耳輪下脚(下対輪脚)から対耳珠までの間の距離に相当する長手方向(又は短手方向)の長さと、耳珠から対耳輪までの間の距離に相当する短手方向(又は長手方向)の長さとを有する領域よりも広い領域が振動する。パネル20は、耳輪における対耳輪上脚(上対輪脚)近傍の部位から耳垂までの間の距離に相当する長手方向(又は短手方向)の長さと、耳珠から耳輪における対耳輪近傍の部位までの間の距離に相当する短手方向(又は長手方向)の長さを有する領域が振動してもよい。上記の長さおよび幅を有する領域は、長方形状の領域であってもよいし、上記の長手方向の長さを長径、上記の短手方向の長さを短径とする楕円形状であってもよい。人間の耳の平均的な大きさは、例えば、社団法人 人間生活工学研究センター(HQL)作成の日本人の人体寸法データベース(1992−1994)等を参照すれば知ることができる。
図5に示すように、パネル20は、圧電素子7が取り付けられた取付領域20aだけでなく、取付領域20aから離れた領域も振動する。パネル20は、振動する領域において、当該パネル20の主面と交差する方向に振動する箇所を複数有し、当該複数の箇所の各々において、振動の振幅の値が、時間とともにプラスからマイナスに、あるいはその逆に変化する。パネル20は、それぞれの瞬間において、振動の振幅が相対的に大きい部分と振動の振幅が相対的に小さい部分とがパネル20の略全体に一見ランダム又は規則的に分布した振動をする。すなわち、パネル20全域にわたって、複数の波の振動が検出される。上記のように圧電素子7に対して印加される電圧が±15Vであれば、利用者が例えば5N〜10Nの力で自身の体にパネル20を押し付けた場合であっても、パネル20の上述した振動は減衰しにくい。このため、利用者は、パネル20上の取付領域20aから離れた領域に耳を接触させても、振動音を聞くことができる。
本実施形態では、ディスプレイ2がパネル20に取り付けられている。このため、パネル20の下部(ディスプレイ2が取り付けられている側)は、剛性が上がり、パネル20の上部(圧電素子7が取り付けられている側)と比べて、振動が小さい。このため、パネル20の下部において、パネル20が振動することによる気導音の音漏れが低減される。
携帯電話1Aは、パネル20の振動により、気導音と、利用者の体の一部(例えば耳介軟骨)を介する振動音とを利用者に伝えることができる。そのため、携帯電話1Aは、ダイナミックレシーバと同等の音量の音を出力する場合、空気の振動により携帯電話1Aの周囲へ伝わる音を、ダイナミックスピーカのみを有する電子機器と比較して、少なくすることができる。このような特徴は、例えば、録音されたメッセージを電車内のような近くに他人がいる場所で聞く場合等に好適である。
さらに、携帯電話1Aは、パネル20の振動により利用者に振動音を伝える。そのため、利用者は、イヤホン又はヘッドホンを身につけていても、それらに携帯電話1Aを接触させることで、イヤホン又はヘッドホン及び体の一部を介して、パネル20の振動による振動音を聞くことができる。
さらに、携帯電話1Aは、パネル20の振動により音を伝える。そのため、携帯電話1Aが別途ダイナミックレシーバ(例えば、第1スピーカ11a及び第2スピーカ11b)を備えない場合、パネル20が発する音を外部に伝えるための開口部(放音口)を筐体40に形成する必要がない。このため、防水構造を実現する場合に、構造を簡略化することができる。携帯電話1Aは、ダイナミックスピーカの放音口等の開口部を筐体40に形成する必要がある場合、防水構造を実現するために、気体は通すが液体は通さない部材によって開口部を閉塞する構造を採用してもよい。気体は通すが液体は通さない部材は、例えば、ゴアテックス(登録商標)である。
図6を参照しながら、携帯電話1Aの機能的な構成について説明する。図6は、携帯電話1Aのブロック図である。図6に示すように、携帯電話1Aは、ディスプレイ2と、ボタン3と、照度センサ4と、近接センサ5と、通信ユニット6と、圧電素子7と、マイク8と、ストレージ9と、コントローラ10と、第1スピーカ11aと、第2スピーカ11bと、インカメラ12と、姿勢検出ユニット15と、バイブレータ18と、タッチスクリーン21とを備える。
通信ユニット6は、無線により通信する。通信ユニット6によってサポートされる通信方式は、無線通信規格である。無線通信規格として、例えば、2G、3G、4G等のセルラーフォンの通信規格がある。セルラーフォンの通信規格として、例えば、LTE(Long Term Evolution)、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)、CDMA2000、PDC(Personal Digital Cellular)、GSM(登録商標)(Global System for Mobile Communications)、PHS(Personal Handy−phone System)等がある。無線通信規格として、さらに、例えば、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、IEEE802.11、Bluetooth(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、NFC(Near Field Communication)等がある。通信ユニット6は、上述した通信規格の1つ又は複数をサポートしていてもよい。
ストレージ9は、プログラム及びデータを記憶する。ストレージ9は、コントローラ10の処理結果を一時的に記憶する作業領域としても利用される。ストレージ9は、半導体記憶媒体、及び磁気記憶媒体等の任意の非一過的(non−transitory)な記憶媒体を含んでよい。ストレージ9は、複数の種類の記憶媒体を含んでよい。ストレージ9は、メモリカード、光ディスク、又は光磁気ディスク等の可搬の記憶媒体と、記憶媒体の読み取り装置との組み合わせを含んでよい。ストレージ9は、RAM(Random Access Memory)等の一時的な記憶領域として利用される記憶デバイスを含んでよい。
ストレージ9に記憶されるプログラムには、フォアグランド又はバックグランドで実行されるアプリケーションと、アプリケーションの動作を支援する制御プログラムとが含まれる。アプリケーションは、例えば、ディスプレイ2に画面を表示させ、タッチスクリーン21によって検出されるジェスチャに応じた処理をコントローラ10に実行させる。制御プログラムは、例えば、OSである。アプリケーション及び制御プログラムは、通信ユニット6による無線通信又は非一過的な記憶媒体を介してストレージ9にインストールされてもよい。
ストレージ9は、例えば、制御プログラム9A、通話アプリケーション9B、音楽再生アプリケーション9C、動画再生アプリケーション9D、及び設定データ9Zを記憶する。通話アプリケーション9Bは、無線通信による通話のための通話機能を提供する。音楽再生アプリケーション9Cは、音楽データから音を再生するための音楽再生機能を提供する。動画再生アプリケーション9Dは、動画データから動画及び音を再生するための動画再生機能を提供する。設定データ9Zは、携帯電話1Aの動作に関連する各種の設定及び処理に関する情報を含む。設定データ9Zは、携帯電話1Aの動作に関連する各種の設定及び処理に関する情報として、例えば、現在使用されている通話音声の出力方式の情報、通話開始に伴い通話音声を自動で録音させるための設定情報、通話音声の録音データを再生するときの出力方式の情報(再生フラグ)、通話音声の録音データなどが含まれる。
制御プログラム9Aは、携帯電話1Aを稼働させるための各種制御に関する機能を提供する。制御プログラム9Aは、例えば、通信ユニット6、圧電素子7、及びマイク8等を制御することによって、通話を実現させる。制御プログラム9Aが提供する機能は、通話アプリケーション9B等の他のプログラムが提供する機能と組み合わせて利用されることがある。
さらに、制御プログラム9Aには、第1音発生部から発生させる音に対応する第1音データについては次に当該第1音データに基づく音を発生させる際も第1音発生部から発生させ、第2音発生部から発生させる音に対応する第2音データについては次に当該第2音データに基づく音を発生させる際も第2音発生部から発生させるように制御するための機能が含まれる。例えば、第1スピーカ11a又は第2スピーカ11bから通話音声を出力する第1の方式により出力された通話音声の録音データについては第1の方式を用いて音声が再生されるように制御し、圧電素子7を変形させることによりパネル20を変形させ、気導音と、変形するパネル20に接触する利用者の体の一部(例えば、外耳の軟骨)を介して伝わる振動音を発生させる第2の方式により出力された通話音声の録音データについては第2の方式を用いて音声が再生されるように制御するための機能が含まれる。以下では、説明の便宜上、第1スピーカ11a又は第2スピーカ11bから通話音声を出力する第1の方式をダイナミックスピーカ方式と表記し、圧電素子7を変形させることによりパネル20に接触する物体(たとえば、利用者の耳)に対して音声の音振動が伝わる周波数でパネル20を振動させて通話音声を出力する第2の方式を人体伝導方式と表記する。
さらに、制御プログラム9Aには、例えば、通話中、パネル20への耳の接触を検出した場合には、人体伝導方式により通話音声を出力するための機能が含まれる。
コントローラ10は、演算処理装置である。演算処理装置は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SoC(System−on−a−chip)、MCU(Micro Control Unit)、及びFPGA(Field−Programmable Gate Array)を含むが、これらに限定されない。コントローラ10は、携帯電話1Aの動作を統括的に制御して各種の機能を実現する。
具体的には、コントローラ10は、ストレージ9に記憶されているデータを必要に応じて参照しつつ、ストレージ9に記憶されているプログラムに含まれる命令を実行する。そして、コントローラ10は、データ及び命令に応じて機能部を制御し、それによって各種機能を実現する。機能部は、例えば、ディスプレイ2、通信ユニット6、圧電素子7、マイク8、第1スピーカ11a、第2スピーカ11b、及びバイブレータ18を含むが、これらに限定されない。コントローラ10は、検出部の検出結果に応じて、制御を変更することがある。検出部は、例えば、ボタン3、照度センサ4、近接センサ5、カメラ12、姿勢検出ユニット15、及びタッチスクリーン21を含むが、これらに限定されない。
コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、ダイナミックスピーカ方式により出力された通話音声の録音データについてはダイナミックスピーカ方式を用いて再生されるように制御し、人体伝導方式により出力された通話音声の録音データについては人体伝導方式を用いて再生されるように制御するための処理を実行する。第1スピーカ11a又は第2スピーカ11bのどちらから通話音声を出力するか事前に利用者の設定を受け付けるようにしてもよい。
さらに、コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、例えば、通話中、パネル20への耳の接触を検出した場合には、人体伝導方式により通話音声を出力するための処理を実行する。
姿勢検出ユニット15は、携帯電話1Aの姿勢を検出する。姿勢検出ユニット15は、姿勢を検出するために、加速度センサ、方位センサ、及びジャイロスコープの少なくとも1つを備える。バイブレータ18は、携帯電話1Aの一部又は全体を振動させる。バイブレータ18は、振動を発生させるために、例えば、圧電素子7、又は偏心モータを有する。バイブレータ18による振動は、音を伝えるためではなく、着信等の各種のイベントを利用者に報知するために用いられる。
図6においてストレージ9が記憶するプログラム及びデータの一部又は全部は、通信ユニット6による無線通信で他の装置からダウンロードされてもよい。図6においてストレージ9が記憶するプログラム及びデータの一部又は全部は、ストレージ9に含まれる読み取り装置が読み取り可能な非一過的な記憶媒体に記憶されていてもよい。非一過的な記憶媒体は、例えば、CD(登録商標)、DVD(登録商標)、Blu−ray(登録商標)等の光ディスク、光磁気ディスク、磁気記憶媒体、メモリカード、及びソリッドステート記憶媒体を含むが、これらに限定されない。
図6に示した携帯電話1Aの構成は例であり、本発明の要旨を損なわない範囲において適宜変更してよい。例えば、携帯電話1Aは、操作のためのボタンとして、テンキー配列又はQWERTY配列等のボタンを備えていてもよい。
図7〜図9を用いて、実施形態1に係る携帯電話1Aによる処理手順について説明する。図7及び図8に示す処理手順は、コントローラ10が、ストレージ9に記憶されている制御プログラム9Aなどを実行することによって実現される。図7及び図8に示す処理手順は、通話開始から通話終了まで並列に実行される。
図7は、通話中、パネル20への耳の接触が検出された場合に、人体伝導方式を用いて通話音声を出力するように制御するための処理手順の一例を示す図である。図7に示す処理手順では、人体伝導方式又はダイナミックスピーカ方式のいずれかを用いて通話音声を出力するものとする。図7に示す処理手順では、ダイナミックスピーカ方式を用いて通話音声を出力する場合、第1スピーカ11aから通話音声を出力するものとする。
図7に示すように、コントローラ10は、ステップS101として、ボタン3などを用いた発信操作又は通信ユニット6における着信に応じた通話処理を開始する。続いて、コントローラ10は、ステップS102として、タッチスクリーン21の検出結果に基づいて、パネル20への耳の接触が検出されたか否かを判定する。
例えば、コントローラ10は、タッチスクリーン21の検出結果に基づいて得られる像と、予め用意される標本とのパターンマッチングによって、パネル20への耳の接触を検出する。タッチスクリーン21の検出結果に基づいて得られる像は、タッチスクリーン21の検出領域を格子状に分割し、分割されたそれぞれの領域における物体の接触の検出状態を、対応する画素の状態に変換することにより得られる。それぞれの領域においてタッチスクリーン21が検出する値が、例えば、タッチスクリーン21と物体の距離、物体がタッチスクリーン21を圧迫する押圧等によって変動する場合、像は、多階調の画像となってもよい。標本は、パネル20に対する耳の接触時に耳が接触している領域で、タッチスクリーン21の検出結果に基づいて得られる像と同様のやりかたで得られるはずの像である。標本は、携帯電話1Aの利用者の耳の接触時に得られるはずの像であってもよいし、一般的な人の耳の接触時に得られるはずの像であってもよい。標本は、右耳の像、左耳の像というように複数枚用意されてもよい。コントローラ10は、パターンマッチング以外の方法でパネル20への耳の接触を検出してもよい。
コントローラ10は、パネル20への耳の接触を検出すると(ステップS102、Yes)、ステップS103として、設定データ9Zを参照して、出力方式が人体伝導方式に設定されているかどうかを判定する。
コントローラ10は、判定の結果、出力方式が人体伝導方式に設定されていない場合には(ステップS103、No)、ステップS104として、出力方式を人体伝導方式に設定し、設定データ9Zに含まれる出力方式の情報を更新する。
続いて、コントローラ10は、ステップS105として、設定されている出力方式で通話音声を出力する。つまり、コントローラ10は、人体伝導方式を用いて通話音声を出力する。続いて、コントローラ10は、ステップS106として、通話終了を検出したかどうかを判定する。
コントローラ10は、判定の結果、通話終了を検出していない場合には(ステップS106、No)、上述したステップS102に戻る。一方、コントローラ10は、判定の結果、通話終了を検出している場合には(ステップS106、Yes)、図7に示す処理手順を終了する。
コントローラ10は、ステップS103において、判定の結果、出力方式が人体伝導方式に設定されている場合には(ステップS103、Yes)、そのまま、ステップS105の処理手順に移り、設定されている出力方式で通話音声を出力する。つまり、コントローラ10は、人体伝導方式を用いて通話音声を出力する。
コントローラ10は、ステップS102において、判定の結果、パネル20への耳の接触を検出しない場合には(ステップS102、No)、そのまま、ステップS105の処理手順に移り、設定されている出力方式で通話音声を出力する。つまり、コントローラ10は、ステップS105では、人体伝導方式又はダイナミックスピーカ方式を用いて通話音声を出力する。
図8は、通話を録音するように事前の設定がある場合に、通話音声の録音データが、録音時に通話音声の出力に使用されていた出力方式で再生されるように制御するための処理手順の一例を示す図である。図9は、通話音声の録音データについて設定される再生フラグの一例を示す図である。
図8に示すように、コントローラ10は、ステップS201として、ボタン3などを用いた発信操作又は通信ユニット6における着信に応じた通話処理を開始する。続いて、コントローラ10は、ステップS202として、設定データ9Zを参照して、通話音声の録音設定がなされているかどうかを判定する。
コントローラ10は、判定の結果、通話音声の録音設定がなされている場合には(ステップS202、Yes)、ステップS203として、通話音声を録音する。続いて、コントローラ10は、ステップS204として、現在使用中の通話音声の出力方式が人体伝導方式であるか否かを判定する。
コントローラ10は、判定の結果、現在使用中の通話音声の出力方式が人体伝導方式である場合には(ステップS204、Yes)、ステップS205として、通話音声の録音データの再生時に人体伝導方式による再生を実行させるための再生フラグを設定する。一方、コントローラ10は、判定の結果、現在使用中の通話音声の出力方式が人体伝導方式ではない場合(ステップS204、No)、つまりダイナミックスピーカ方式である場合にはステップS206として、通話音声の録音データの再生時にダイナミックスピーカ方式による再生を実行させるための再生フラグを設定する。
図9に示すように、コントローラ10は、通話音声の録音データに一意に付与する録音データIDに対応付けて、人体伝導方式により録音データの再生を実行させるための再生フラグ“001”、又はダイナミックスピーカ方式により録音データの再生を実行させるための再生フラグ“002”を設定し、設定データ9Zに格納する。
続いて、コントローラ10は、ステップS207として、通話終了を検出したかどうかを判定する。コントローラ10は、判定の結果、通話終了を検出していない場合には(ステップS207、No)、上述したステップS203に戻る。一方、コントローラ10は、判定の結果、通話終了を検出している場合には(ステップS207、Yes)、図8に示す処理手順を終了する。
コントローラ10は、ステップS202において、判定の結果、通話音声の録音設定がなされていない場合には(ステップS202、No)、上述したステップS207に移り、通話終了を検出したかどうかを判定する。
実施形態1では、携帯電話1Aは、通話音声の録音データについて、人体伝導方式又はダイナミックスピーカ方式により録音データの再生を実行させるための再生フラグを設定することにより、録音時に通話音声の出力に使用されていた出力方式で再生されるように制御する。このため、実施形態1によれば、音データを再生する際に、簡易な処理で音データに基づく音の発生方法を決定できる。
実施形態1では、ダイナミックスピーカ方式を用いた通話中に、パネル20への耳の接触が検出された場合に、ダイナミックスピーカ方式から人体伝導方式に切替えて通話音声を出力するように制御する。このため、実施形態1によれば、例えば、通話音声の音漏れを防止したい場合に、携帯電話1Aから耳を離すことなく通話音声の出力先を簡単に変更できる。さらに、実施形態1によれば、利用者は、通話音声の出力先の切替と、通話音声の録音データの再生方法の決定、パネル20への耳の接触だけで簡単に実行できる。
実施形態1において、携帯電話1Aは、人体伝導方式により通話音声を出力しているときに、タッチスクリーン21によりパネル20に設けられた所定の箇所へのタッチジェスチャが検出された場合には、ダイナミックスピーカ方式に切替えて通話音声を出力するようにしてもよい。さらに、携帯電話1Aは、ダイナミックスピーカ方式への切替後、タッチスクリーン21によりタッチジェスチャが検出された場合には、再び、人体伝導方式に戻してもよい。パネル20に設けられた所定の箇所は、パネル20への耳の接触により近接センサ5が反応している場合であっても、タッチスクリーン21により検出が機能するようにする。タッチジェスチャとしては、タッチ、タップ、ダブルタップ、ロングタッチなど、任意のタッチジェスチャでよい。
実施形態1において、携帯電話1Aは、ダイナミックスピーカ方式により通話音声を出力する場合に、第1スピーカ11a又は第2スピーカ11bのどちらを利用するかを、利用者が事前に設定できるようにしてもよい。
実施形態1において、携帯電話1Aは、パネル20への耳の接触と、第1スピーカ11aへの耳の接触とを混同しないように、第1スピーカ11aとパネル20との位置関係が調整されているものとする。
(実施形態2)
利用者が認証に成功することを条件として、人体伝導方式による再生フラグが設定されている録音データをダイナミックスピーカ方式で再生してもよい。
制御プログラム9Aには、例えば、利用者から指定された出力方式で、通話音声の録音データを再生するための機能が含まれる。さらに、制御プログラム9Aには、利用者に暗証番号を入力させるためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号の入力を要求するための機能が含まれる。さらに、制御プログラム9Aには、例えば、利用者が認証に成功することを条件として、人体伝導方式の再生フラグが設定された通話音声の録音データを、ダイナミックスピーカ方式により再生するように制御するための機能が含まれる。さらに、制御プログラム9Aには、利用者に通知を行うためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号が間違っている旨を利用者に通知するための機能が含まれる。
コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、利用者から指定された出力方式で、通話音声の録音データを再生するための処理を実行する。さらに、コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、利用者に暗証番号を入力させるためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号の入力を要求するための処理を実行する。さらに、コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、利用者が認証に成功することを条件として、人体伝導方式の再生フラグが設定された通話音声の録音データを、ダイナミックスピーカ方式により再生するように制御するための処理を実行する。さらに、コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、利用者に通知を行うためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号が間違っている旨を利用者に通知するための処理を実行する。例えば、認証としては、パスワード認証又は生体認証などの任意の認証方法を利用することができる。
図10を用いて、実施形態2に係る携帯電話1Aによる処理手順について説明する。図10は、利用者が認証に成功することを条件として、人体伝導方式による再生フラグが設定されている録音データをダイナミックスピーカ方式で再生する場合の処理手順の一例を示す図である。図10に示す処理手順は、コントローラ10が、ストレージ9に記憶されている制御プログラム9Aなどを実行することによって実現される。
図10に示すように、コントローラ10は、ステップS301として、ダイナミックスピーカ方式による録音データの再生指示があると、ステップS302として、設定データ9Zを参照して、再生対象となる録音データに対応付けられた再生フラグを確認する。
続いて、コントローラ10は、ステップS303として、再生指示された録音データの出力方式と、再生フラグの内容が合致するか否かを判定する。例えば、図10に示す場合では、コントローラ10は、設定データ9Zを参照して、ステップS301において、ダイナミックスピーカ方式による再生指示があった録音データに対応付けられた再生フラグが、ダイナミックスピーカ方式に対応する値“002”であるか否かを判定する。
コントローラ10は、判定の結果、出力方式と、再生フラグの内容が合致しない場合には(ステップS303、No)、ステップS304として、暗証番号の入力を要求する。例えば、コントローラ10は、利用者に暗証番号を入力させるためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号の入力を要求する。
続いて、コントローラ10は、ステップS305として、暗証番号がOKかどうか(正しいかどうか)を判定する。コントローラ10は、判定の結果、暗証番号がOKでない場合には(ステップS305、No)、ステップS306として、暗証番号が間違っている旨を通知して、図10に示す処理手順を終了する。例えば、コントローラ10は、利用者に通知を行うためのユーザインタフェースをディスプレイ2に表示させて、暗証番号が間違っている旨を利用者に通知する。
一方、コントローラ10は、判定の結果、暗証番号がOKである場合には(ステップS305、Yes)、ステップS307として、再生指示の対象となる録音データを、ダイナミックスピーカ方式により再生して、図10に示す処理手順を終了する。
コントローラ10は、ステップS303において、判定の結果、出力方式と、再生フラグの内容が合致する場合には(ステップS303、Yes)、上述したステップS307に移り、再生指示の対象となる録音データを、ダイナミックスピーカ方式により再生して、図10に示す処理手順を終了する。
(実施形態3)
携帯電話1Aが、人体伝導方式で通話音声を出力しているときに、所定の姿勢への遷移を検出した場合には、ダイナミックスピーカ方式に切替えて通話音声を出力してもよい。
図11は、実施形態3に係る携帯電話1Aの姿勢の遷移例を示す図である。制御プログラム9Aには、例えば、人体伝導方式で通話音声を出力しているときに、自己の姿勢が、図9に示すステップS1の状態から、図11に示すステップS2の状態に遷移したことを検出した場合には、ダイナミックスピーカ方式に切替えて通話音声を出力するための機能が含まれる。さらに、制御プログラム9Aには、例えば、ダイナミックスピーカ方式で通話音声を出力しているときに、自己の姿勢が、図11に示すステップS2の状態から、図11に示すステップS3の状態に遷移したことを検出した場合には、再び、人体伝導方式に切替えて通話音声を出力するための機能が含まれる。
コントローラ10は、例えば、制御プログラム9Aを実行することにより、姿勢検出ユニット15による検出結果に基づいて、通話音声の出力方式を切替える処理を実行する。コントローラ10は、例えば、人体伝導方式で通話音声を出力しているときに、自己の姿勢が、図11に示すステップS1の状態から、図11に示すステップS2の状態に遷移したことを検出した場合には、ダイナミックスピーカ方式に切替えて通話音声を出力するための処理を実行する。さらに、コントローラ10は、例えば、ダイナミックスピーカ方式で通話音声を出力しているときに、自己の姿勢が、図11に示すステップS2の状態から、図11に示すステップS3の状態に遷移したことを検出した場合には、再び、人体伝導方式に切替えて通話音声を出力するための処理を実行する。
図12を用いて、実施形態3に係る携帯電話1Aによる処理手順について説明する。図12は、携帯電話が、人体伝導方式で通話音声を出力しているときに、所定の姿勢への遷移を検出した場合には、ダイナミックスピーカ方式に切替えて通話音声を出力する場合の処理手順の一例を示す図である。図12では、例えば、人体伝導方式を用いて通話音声の出力を開始する例を取り上げて説明する。図12に示す処理手順は、コントローラ10が、ストレージ9に記憶されている制御プログラム9Aなどを実行することによって実現される。図12に示す処理手順は、実施形態1に係る処理手順(図7及び図8)と、通話開始から通話終了まで並列に実行される。図12では、説明の便宜上、図11に示すステップS1及びステップS3の携帯電話1Aの姿勢を水平姿勢と表記し、図11に示すステップS2の携帯電話1Aの姿勢を垂直姿勢と表記する。
図12に示すように、コントローラ10は、ステップS401として、ボタン3などを用いた発信操作又は通信ユニット6における着信に応じた通話処理を開始する。続いて、ステップS402として、コントローラ10は、人体伝導方式により通話音声を出力する。
続いて、コントローラ10は、ステップS403として、姿勢検出ユニット15による検出結果に基づいて、水平姿勢を検出したかどうかを判定する。コントローラ10は、判定の結果、水平姿勢を検出した場合には(ステップS403、Yes)、ステップS404として、ダイナミックスピーカ方式を用いて通話音声を出力する。
続いて、コントローラ10は、ステップS405として、垂直姿勢を検出したかどうかを判定する。コントローラ10は、判定の結果、垂直姿勢を検出した場合には(ステップS405、Yes)、上述したステップS402に戻り、人体伝導方式を用いて通話音声を出力する。
コントローラ10は、ステップS403において、水平姿勢を検出しない場合には(ステップS403、No)、上述したステップS402に戻り、人体伝導方式を用いた通話音声の出力を継続する。
コントローラ10は、ステップS405において、垂直姿勢を検出しない場合には(ステップS405、No)、上述したステップS404に戻り、ダイナミックスピーカ方式を用いた通話音声の出力を継続する。
(実施形態4)
携帯電話1Aにおいて、音声を出力する際に、ダイナミックスピーカ方式及び人体伝導方式を用いることも考えられる。このとき、パネル20への耳の接触位置と第1スピーカ11aとの距離、パネル20への耳の接触位置とパネル20上の基準点との距離に基づいて、ダイナミックスピーカ方式及び人体伝導方式により同時に音声を出力する場合の各方式の出力比率を調整することも考えられる。
図13は、実施形態4に係る第1スピーカ11aと、パネル20への耳の接触位置と、パネル20上の基準点との位置関係の一例を示す図である。図14は、図13に対応するダイナミックスピーカ方式による音声出力と人体伝導方式による音声出力との出力比率の調整例を示す図である。
図13では、図2に示す場合とは、ディスプレイ2及び圧電素子7の位置を変更する。そして、図13に示すように、圧電素子7の中心点P1とパネル20への耳の接触位置P3との距離がD1であり、第1スピーカ11aの中心点P2とパネル20への耳の接触位置P3との距離がD2であるとする。このとき、携帯電話1Aは、図14に示すように、ダイナミックスピーカ方式及び人体伝導方式により同時に音声を出力する場合の各方式の出力比率を以下のように決定する。
ダイナミックスピーカ方式:人体伝導方式
=D1/(D1+D2):D2/(D1+D2)
すなわち、携帯電話1Aは、ダイナミックスピーカ方式で用いられる第1スピーカ11aの中心点P2の方が、圧電素子7の中心点P1よりも耳の接触位置P3に近い場合には、ダイナミックスピーカ方式による出力比率が高くなるように調整する。一方で、圧電素子7の中心点P1の方が、第1スピーカ11aの中心点P2よりも耳の接触位置P3に近い場合には、人体伝導方式による出力比率が高くなるように調整する。
例えば、携帯電話1Aが、パネル20上のどこに耳を接触しても、人体伝導方式により出力される音声の大きさが同程度となるように構成されている場合には、圧電素子7の中心点P1の代わりに、パネル20上の任意の点を基準点として設定してもよい。あるいは、人体伝導方式による出力比率を一定とし、第1スピーカ11aの中心点P2とパネル20への耳の接触位置P3との距離に応じて、ダイナミックスピーカ方式による出力比率のみを変更してもよい。
(実施形態5)
上記の実施形態では、タッチスクリーン21がパネル20のほぼ全面に配設される例について説明したが、タッチスクリーン21は、パネル20と重ならないように配設されてもよい。図15は、実施形態5に係る携帯電話の正面図である。図16は、図15に示す携帯電話のc−c線断面図である。図15及び図16を用いて、タッチスクリーン21がディスプレイ2と重ならないように配設される携帯電話1Bについて説明する。
図15及び図16に示すように、携帯電話1Bにおいて、ディスプレイ2は、パネル20の内側ではなく、パネル20と同一平面をなすように、パネル20と並べて配設される。タッチスクリーン21は、ディスプレイ2の表側のほぼ全面を覆うように配設される。すなわち、タッチスクリーン21及びディスプレイ2は、所謂タッチパネル(タッチスクリーンディスプレイ)を構成する。
パネル20の背面のほぼ中央には、接合部材30により、圧電素子7が取り付けられる。パネル20は、圧電素子7に電気信号が印加されると、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)に応じて振動し、気導音と、パネル20に接触する人体の一部(例えば、耳介軟骨)を介して伝わる振動音とを発生する。圧電素子7をパネル20の中央に配設することにより、圧電素子7の振動がパネル20全体に均等に伝わり、利用者に伝わる音の品質が向上する。
パネル20の表側の面にはタッチスクリーン21が配設されないが、パネル20は、タッチスクリーン21が配設されるディスプレイ2の近傍に配置される。
携帯電話1Bのように、パネル20をタッチスクリーン21と重ならないように配設した場合でも、圧電素子7が配設される筐体40の同じ側で、圧電素子7の上部にダイナミックスピーカであるスピーカ11を設けることにより、上述と同様に、2つのモードで音声を出力することができる。この結果、ユーザにとって、好適な方法で音声を出力することができる。
(実施形態6)
上記の実施形態では、タッチスクリーン21の少なくとも一部がディスプレイ2と重なるように配設される例について説明したが、タッチスクリーン21は、ディスプレイ2と重ならないように配設されてもよい。図17は、実施形態6に係る携帯電話の正面図である。図18は、図17に示す携帯電話のd−d線断面図である。図17及び図18を用いて、タッチスクリーン21がディスプレイ2と重ならないように配設される携帯電話1Cについて説明する。図17及び図18に示す携帯電話1Cは、いわゆる折畳型携帯電話の一例である。
図17及び図18に示すように、携帯電話1Cにおいて、ディスプレイ2は、パネル20の内側ではなく、パネル20と同一平面をなすように、パネル20と並べて配設される。
パネル20の背面のほぼ中央には、接合部材30により、圧電素子7が取り付けられる。パネル20と圧電素子7との間には、補強部材31が配設される。すなわち、携帯電話1Cにおいては、圧電素子7と補強部材31とが接合部材30により接着され、さらに補強部材31とパネル20とが接合部材30で接着される。なお、圧電素子7は、パネル20の中央に設けられていなくてもよい。
補強部材31は、例えばゴムまたはシリコン等の弾性部材である。補強部材31は、例えばある程度の弾性を有するアルミニウム等から成る金属板であってもよい。補強部材31は、例えばSUS304等のステンレス板であってもよい。ステンレス板等の金属板の厚さは、圧電素子7に印加される電圧値等に応じて、例えば0.2mm〜0.8mmのものが適宜用いられる。補強部材31は、例えば樹脂製の板であってもよい。ここでいう樹脂製の板を形成する樹脂としては、例えばポリアミド系樹脂が挙げられる。ポリアミド系樹脂には、例えば、メタキシリレンジアミンとアジピン酸とから得られる結晶性の熱可塑性樹脂から成り、強度および弾性に富むレニー(登録商標)がある。このようなポリアミド系樹脂は、それ自体をベースポリマーとして、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等により強化された強化樹脂であってもよい。強化樹脂は、ポリアミド系樹脂に対するガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等の付加量に応じて、強度および弾性が適宜調整される。強化樹脂は、例えば、ガラス繊維、金属繊維または炭素繊維等を編みこんで形成された基材に樹脂を含浸させ、硬化させて形成される。強化樹脂は、液状の樹脂に細かく切断された繊維片を混入させたのちに硬化させて形成されるものであってもよい。強化樹脂は、繊維を編みこんだ基材と樹脂層とを積層したものであってもよい。
圧電素子7とパネル20との間に補強部材31を配設することにより、以下の効果が得られる。パネル20に外力が加わった場合に、その外力が圧電素子7に伝わって圧電素子7が破損する可能性を低減することができる。例えば携帯電話1Cが地面に落下することでパネル20に対して外力が加わると、当該外力はまず補強部材31に伝わる。補強部材31は、所定の弾性を有しているため、パネル20から伝わる外力により弾性変形する。そのため、パネル20に対して加わった外力は補強部材31により少なくとも一部が吸収され、圧電素子7に伝達される外力が低減される。結果、圧電素子7の破損を低減することができる。補強部材31が圧電素子7と筺体40との間に配置される場合、例えば携帯電話1Cが地面に落下することで筺体40が変形し、変形した筺体40が圧電素子7に衝突して圧電素子7が破損する可能性を低減できる。
圧電素子7の伸縮または屈曲による振動は、まず補強部材31に伝達され、さらにパネル20に伝達される。すなわち、圧電素子7は、まず圧電素子7よりも大きな弾性係数を有する補強部材31を振動させ、さらにパネル20を振動させることになる。したがって、携帯電話1Cは、補強部材31を備えず、圧電素子7が接合部材70によりパネル20に接合される構造と比較して、圧電素子7の変形が過剰になりにくくすることができる。これにより、パネル20の変形量(変形の程度)を調節することができる。この構造は、圧電素子7の変形を阻害しにくいパネル20の場合に特に有効である。
さらに、圧電素子7とパネル20との間に補強部材31を配設することにより、図19に示すように、パネル20の共振周波数が下がり、低周波帯域の音響特性が向上する。図19は、補強部材31による周波数特性の変化例を示す図である。図19には、上記のSUS304のような板金を補強部材31として用いた場合の周波数特性と、上記のレニーのような強化樹脂を補強部材31として用いた場合の周波数特性とが示されている。横軸は周波数を、縦軸は音圧を示す。強化樹脂を用いた場合の共振点は約2kHzであり、板金を用いた場合の共振点は約1kHzである。強化樹脂を用いた場合のディップは約4kHzであり、板金を用いた場合のディップは約3kHzである。すなわち、強化樹脂を用いた場合には、板金を用いた場合に比べて、パネル20の共振点が高い周波数領域に位置しており、周波数特性のディップがより高い周波数領域に位置している。携帯電話機の音声通話で用いられる周波数帯は300Hz〜3.4kHzであるため、強化樹脂を補強部材31として用いた場合、ディップが携帯電話1Cの使用周波数帯に含まれないようにすることができる。尚、補強部材31として板金を用いる場合でも、板金を構成する金属の種類もしくは組成または板金の厚さ等を適宜調整することで、ディップが携帯電話1Cの使用周波数帯に含まれないようにすることができる。板金と強化樹脂とを比較すると、強化樹脂は、板金と比較してアンテナ性能への影響を低減することができる。強化樹脂は板金と比較して塑性変形しにくいため、音響特性が変化しにくいという利点がある。強化樹脂は板金と比較して、音発生時の温度上昇が抑えられる。補強部材31に換えて、板状の錘を接合部材30により圧電素子7に取り付けてもよい。
パネル20は、圧電素子7に電気信号が印加されると、圧電素子7の変形(伸縮又は屈曲)に応じて振動し、気導音と、パネル20に接触する人体の一部(例えば、耳介軟骨)を介して伝わる振動音とを発生する。タッチスクリーン21は、パネル20の表側のほぼ全面を覆うように配設される。
携帯電話1Cも、上記と同様に、圧電素子7が配設される筐体40の同じ側で、圧電素子7の上部にダイナミックスピーカである第1スピーカ11aが配置され、圧電素子7が配設される筐体40の反対側の背面に第2スピーカ11bが配置される。
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、圧電素子7によりパネル20を変形させ、気導音と振動音とを発生させた。圧電素子7により筺体40の一部を変形させ、気導音と振動音とを発生させてもよい。筺体40の一部は、例えば筺体の角部であってよい。
上記の実施形態では、携帯電話1Aとして、ディスプレイ2が接合部材30を用いてパネル20の背面に取り付けられる例を示したが、携帯電話1Aは、パネル20とディスプレイ2の間に空間ができるように構成されてもよい。パネル20とディスプレイ2の間に空間を設けることにより、パネル20が振動しやすくなり、パネル20上において気導音及び振動音を聞きやすい範囲が広くなる。
上記の実施形態では、携帯電話1Aとして、ディスプレイ2が接合部材30を用いてパネル20の背面に取り付けられる例を示したが、携帯電話1Aは、パネル20とディスプレイ2の間に空間ができるように構成されてもよい。パネル20とディスプレイ2の間に空間を設けることにより、パネル20が振動しやすくなり、パネル20上において振動音を聞きやすい範囲が広くなる。
上記の実施形態では、圧電素子7をパネル20に取り付ける例を示したが、他の場所に取り付けられてもよい。例えば、圧電素子7は、バッテリリッドに取り付けられてもよい。バッテリリッドは、筐体40に取り付けられ、バッテリを覆う部材である。バッテリリッドは、携帯電話等の携帯電子機器においてディスプレイ2と異なる面に取り付けられることが多いため、そのような構成によれば、利用者はディスプレイ2と異なる面に体の一部(例えば耳)を接触させて音を聞くことができる。圧電素子7が筺体40の角部(例えば四隅の少なくとも一か所)を振動させる構成であっても良い。この場合、圧電素子7は、筺体40の角部の内面に取り付けられる構成でもよいし、中間部材をさらに備え、圧電素子7の振動が中間部材を介して筺体40の角部に伝達される構成でもよい。この構成によれば、振動する範囲を比較的狭くできるため、振動により発生する気導音が周囲に漏れにくい。また、この構成によれば、例えば利用者が筺体の角部を外耳道に挿入した状態で気導音と振動音とが利用者に伝わるため、周囲のノイズが利用者の外耳道に入りにくい。そのため、利用者に伝わる音の品質を向上することができる。
上記の実施形態では、補強部材31は板状部材であるが、補強部材31の形状はこれに限られない。補強部材31は、例えば、圧電素子7より大きく、かつその端部が圧電素子7側に湾曲し圧電素子7の側部を覆う形状を有していてもよい。また、補強部材31は、例えば、板状部と、当該板状部から延設されて圧電素子7の側部を覆う延設部とを有する形状であってもよい。この場合、延設部と圧電素子7の側部とが、所定の距離だけ離間しているとよい。これにより、延設部が圧電素子の変形を阻害しにくくなる。
パネル20は、表示パネル、操作パネル、カバーパネル、充電池を取り外し可能とするためのリッドパネルのいずれかの一部または全部を構成することができる。特に、パネル20が表示パネルのとき、圧電素子7は、表示機能のための表示領域の外側に配置される。これにより、表示を阻害しにくいという利点がある。操作パネルは、タッチパネルを含む。また、操作パネルは、例えば折畳型携帯電話において操作キーのキートップが一体に形成され操作部側筺体の一面を構成する部材であるシートキーを含む。
パネル20と圧電素子7とを接着する接合部材およびパネル20と筺体40とを接着する接合部材等が同一の符号を有する接合部材30として説明した。しかしながら、接合部材は、接合する対象である部材に応じて適宜異なるものが用いられてよい。
上記の実施形態では、添付の請求項に係る装置の例として、携帯電話について説明したが、添付の請求項に係る装置は、携帯電話に限定されない。添付の請求項に係る装置は、携帯電話以外の携帯電子機器であってもよい。携帯電子機器は、例えば、タブレット、携帯型パソコン、デジタルカメラ、メディアプレイヤ、電子書籍リーダ、ナビゲータ、及びゲーム機を含むが、これらに限定されない。
添付の請求項に係る技術を完全かつ明瞭に開示するために特徴的な実施形態に関し記載してきた。しかし、添付の請求項は、上記実施形態に限定されるべきものでなく、本明細書に示した基礎的事項の範囲内で当該技術分野の当業者が創作しうるすべての変形例及び代替可能な構成により具現化されるべきである。