以下、図面を参照して、本発明の実施形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態にかかるリソグラフィー装置の概略構成を示す図である。本実施形態のリソグラフィー装置として、露光領域を矩形又は円弧のスリット形状とし、レチクル102とウエハ104を相対的に高速走査して、大画角を精度良く露光する走査型投影露光装置を例として説明する。
縮小投影レンズ系101の光軸は図中AXで示されており、像面は図中Z方向と垂直な関係にある。原版(以下、「レチクル102」)は、レチクルステージ103上に保持される。レチクル102のパターンは、投影光学系(以下、「縮小投影レンズ系101」)の倍率で、例えば、1/4ないし1/2、或は1/5に縮小投影され、その像面に像が形成される。ウエハ104の表面には、レジストが塗布されている。基板(以下、「ウエハ104」)には、先の露光工程で形成された同一のパターン構造を有する多数個のショット領域が配列している。ウエハ104を保持して移動可能なテーブル(以下、「ウエハステージ105」)は、ウエハ104をウエハステージ105に吸着・固定するチャックを有している。また、ウエハステージ105は、X方向とY方向にそれぞれ水平方向に移動可能なXYステージ(XY移動部)と、縮小投影レンズ系101の光軸AX方向であるZ方向へ移動可能なZステージ(Z移動部)とを、有している。さらに、ウエハステージ105はX軸、Y軸の回りに回転可能なレベリングステージ、およびZ軸の回りに回転可能な回転ステージを有している。ウエハステージ105はXYZ方向の並進移動(3自由度)と回転移動(3自由度)とを組み合せることにより、レチクルパターン像をウエハ上のショット領域に合致させるための6自由度の補正系を構成している。
図1における110から126は、ウエハ104の表面位置及び傾きを計測するために設けた面位置計測器の各要素を示している。計測光源110は、例えば、ランプまたは発光ダイオード等により構成され、計測光源の光量は調整可能である。コリメータレンズ111は計測光源110からの光束を、断面の強度分布がほほ均一の平行光束として射出する。スリット部材112は一対のプリズムを、互いの斜面が相対するように貼り合わせることにより構成されている。この貼り合わせ面には、クロム等の遮光膜を利用した複数の開口(例えば、ピンホール)が設けられている。両テレセントリック系の投光側光学系113はスリット部材112の複数の開口を通過した光束を、ミラー114を介して基板上の複数の計測点(計測位置)に導光する。例えば、ピンホールが15個の場合、投光側光学系113は、ピンホールを通過したそれぞれの光束に対応している15個の計測点に導光する。このとき、投光側光学系113に対して、ピンホールを有する平面とウエハ104の表面を含む平面とは、シャインプルーフの条件を満足するように設定されている。
投光側光学系113からの各光束は、ウエハ104上への入射角Φ(光軸となす角)が、例えば、70°以上である。投光側光学系113を通過した15個の光束は、パターン領域の互いに独立した各計測点に入射し、結像している。また、15個の計測点がウエハ104内で互いに独立して観察可能なように、投光側光学系113を通過した15個の光束はX方向からXY平面内でθ°(例えば22.5°)回転した方向より入射している。計測光源110、コリメータレンズ111、スリット部材112、投光側光学系113およびミラー114は、面位置計測器の投光部を構成する。
次に、ウエハ104からの反射光束を計測するための構成を説明する。両テレセントリック系の受光側光学系116は、ウエハ104からの複数の反射光束(例えば、15個の光束)を、ミラー115を介して受光している。受光側光学系116内に設けられているストッパ絞りは、15個の各計測点に対して共通に設けている。ストッパ絞りは、ウエハ104上に存在する回路パターンによって発生する高次の回折光(ノイズ光)をカットする。両テレセントリック系の受光側光学系116を通過した光束は、光軸が互いに平行となっており、補正光学系118に導光される。補正光学系118の複数の補正レンズ(例えば、15個の補正レンズ)により、受光側光学系116からの複数の光束(例えば、15個の光束)のそれぞれは光電変換部119の計測面に対して、互いに同一の大きさを有するスポット光となって結像する。
また、受光側光学系116から補正光学系118の受光側は、ウエハ104上の各計測点と光電変換部119の計測面とが互いに共役となるように倒れ補正を行っている。ミラー115、受光側光学系116、補正光学系118および光電変換部119は、面位置計測器の受光部を構成する。そのため、各計測点の局所的な傾きにより発生する計測面でのピンホール像の位置変化はなく、各計測点の光軸方向AXでの高さ変化に応答して、計測面上でピンホール像が変化するように構成している。ここで、光電変換部119は、例えば15個の1次元CCDラインセンサにより構成することができるが、2次元の位置計測素子を複数配置して構成した場合においても、同一の効果を得ることができる。処理部126は、光電変換部119の出力に基づき、ウエハ104の面位置を求める。処理部126は、例えば、ウエハ上の各計測位置の高さ(Z座標)に基づいて、当該各計測位置を含むウエハ上の局所的な領域を平面とみなしたときの平面の高さおよび傾きを求める。
図1に示すように、レチクル102はレチクルステージ103上に保持される。レチクルステージ103は、縮小投影レンズ系101の光軸AXに対して垂直な面内で、X方向(矢印103a)に一定速度で走査移動する。この時、Y方向は、常に目標位置を維持して走査移動するように補正駆動する。レチクルステージ103のX方向及びY方向の位置情報は、同図のレチクルステージ103に固定されたバーミラー120と、レチクルステージ干渉計121によって、常時計測されている。
露光照明光学系106は、エキシマレーザ等のパルス光を発生する光源を使用する。また、露光照明光学系106には、不図示のビーム整形光学系、オプティカルインテグレータ、コリメータ及びミラー等の部材が設けられている。これらの部材は遠紫外領域のパルス光を効率的に透過或いは反射する材料で形成されている。ビーム整形光学系は、入射ビームの断面形状(寸法含む)を所望の形に整形するためのものである。オプティカルインテグレータは、光束の配光特性を均一にし、レチクル102を均一照度で照明するためのものである。
露光照明光学系106内の不図示のマスキングブレードにより、チップサイズに対応して、矩形の照明領域を設定している。照明領域で部分照明されたレチクル102上のパターンは、縮小投影レンズ系101を介してウエハ104上に投影される。
メイン制御部127は、レチクル102のスリット像をウエハ104の所定領域に結像させるため、レチクルステージ103の動作を制御する。すなわち、XY面内の位置(XYの位置及びZ軸に対する回転θ)と、Z方向の位置(XY各軸に対する回転α、β及びZ軸上の高さZ)を調整する。また、メイン制御部127は、レチクルステージ103とウエハステージ105の走査移動を制御する。さらに、メイン制御部127は、露光照明光学系106を介して、レチクル102上のパターンをウエハ104上に投影して露光する走査露光を制御する。
レチクルステージ103を矢印103aの方向に走査する場合、ウエハステージ105は、同図の矢印105aの方向に縮小投影レンズ系101の縮小倍率分だけ補正した速度で走査する。レチクルステージ103の走査速度は、露光照明光学系106内におけるマスキングブレードの走査方向の幅と、ウエハ104の表面に塗布されたレジストの感度から、装置生産性が有利となるように決定することができる。
レチクル102上のパターンのXY面内での位置合わせは、レチクルステージ干渉計121とウエハステージ干渉計124の位置データ、及び不図示のアライメント顕微鏡から得られるウエハの位置データから、メイン制御部127が制御データを算出する。メイン制御部127は算出した制御データに基づき、レチクル位置制御系122及びウエハ位置制御系125を制御する。
レチクル102上のパターンのZ軸方向の位置合わせ、すなわち像面への位置合わせは、面位置計測器の計測結果をもとに、ウエハステージ105内のレベリングステージをメイン制御部127が制御することによって実現する。より具体的には、図2を用いて説明する。
図2は、面位置計測器がウエハ上のショット領域201に形成する15個の面位置計測点と、露光スリット202の位置関係を示す図である。露光スリット202は、同図破線で囲まれた露光領域を示す。図2に示す例では、露光スリット202はX方向に幅X1、Y方向に幅Y1の矩形領域である。面位置計測点203、204、205は、露光スリット202の矩形領域内に形成されている面位置計測点である。面位置計測点206、207、208は露光スリット202の幅Y1の中点から+Y方向に向かって距離Lp1離れた位置に配置されている。また、面位置計測点212、213、214は露光スリット202の幅Y1の中点からーY方向に向かって距離Lp1離れた位置に配置されている。
面位置計測点209、210、211は露光スリット202の幅Y1の中点から+Y方向に向かって距離Lp2離れた位置に配置されている。そして、面位置計測点215、216、217は、露光スリット202の幅Y1の中点からーY方向に向かって距離Lp2離れた位置に配置されている。図2に例示した距離Lp2と距離Lp1との関係は、Lp2>Lp1である。メイン制御部127は、露光スリット202に対する面位置計測点の距離と、走査方向(R、F)、走査速度の情報を用いることにより、各面位置計測点での光電変換部による計測タイミングを制御することが可能である。
メイン制御部127は、面位置計測点206から217を、ウエハステージ105の移動方向によって、像面への位置合わせに使用する面位置計測点として切り替える。例えば、F方向へ走査露光する場合、面位置計測点206から211にて、ショット領域201の面位置を計測する。メイン制御部127は、当該計測結果に基づきウエハステージ105のZ軸方向の位置を算出する。また、露光対象領域が露光スリット202内へ到達するまでに、ウエハステージ105を算出されたZ軸方向の位置(最適露光像面位置)へ駆動するように制御する。他方、R方向へ走査露光する場合、面位置計測点212から217にて、ショット領域201の面位置を計測する。メイン制御部127は、当該計測結果に基づきウエハステージ105のZ軸方向の位置を算出し、算出されたZ軸方向の位置(最適露光像面位置)へウエハステージ105を駆動するように制御する。
メイン制御部127は面位置計測器の計測光源の光量等を、調整することができる。すなわち、ショット領域に対して走査露光時と同等の軌跡となるようにウエハステージ105を走査しながら、ショット領域における面位置計測位置における計測光源からの光量を面位置計測器にて計測する。メイン制御部127は、当該計測結果に基づき、走査露光時の面位置計測位置にてS/Nが最適となるような計測光源110の光量または光電変換部119のゲインを算出し、記憶する。ウエハ104表面のレジストの凹凸による影響から、ショット領域内の位置に依存して反射光束の光量が異なるため、メイン制御部127は面位置計測位置毎に計測光源110の光量調整を実行する。
図2に示すように、面位置計測点はウエハ104の面位置を高精度に計測するために複数の位置に配置される。特許文献1に記載の面位置計測器の計測光源の光量等の調整方法では、面位置計測点の増加に伴って調整に要する時間が増えるために生産性が低下する。かかる課題を解決する本実施形態の面位置計測器の光量等の調整方法を以下に説明する。
図3に示す計測方法にて、メイン制御部127は面位置計測器を制御してショット領域内の計測位置におけるウエハの面位置を計測する。メイン制御部127は、ウエハ104の走査中における複数の計測タイミングで、ウエハ104上の同一の計測位置に対して照射される計測光源110の光量と受光部の受光光量とを用いて、投光部または受光部を調整する。ここで、メイン制御部127は、(1)式を用いて、走査露光時の面位置計測にてS/Nが最適となる面位置計測器の受光光量を算出する。そして、図4に示すフローチャートに従って、メイン制御部127は算出した受光光量が所定の許容範囲(トレランス)に入るように、複数の面位置計測点の計測結果が所定のトレランス内に収束するように追い込み動作を行う。光電変換部の受光光量が所定の許容範囲(トレランス)内に入るまで、(1)式を用いた計測光源の光量(出力値)の設定と、光電変換部の受光光量の計測を繰り返し、計測光源の光量(出力値)を決定する。
A2=(A1/B1)×B2・・・(1)
(1)式中のA1は、計測光源110の光量(出力値)である。同式中のB1は、計測光源110の光量(出力値)をA1に設定した際の光電変換部119の受光光量である。同式中のB2は、光電変換部のS/Nが最適となる受光光量である。同式中のA2は、光電変換部119の受光光量としてB2を設定した際の計測光源110の出力値である。
計測光源110の光量(出力値)をあらかじめ定めた光量(出力値)A1に設定し、光電変換部119で受光光量B1’を計測する。光電変換部119の受光光量が所定のトレランス内の場合、調整を終了する。一方、光電変換部119の受光光量がトレランス外の場合、受光光量B1’の計測結果に基づき、メイン制御部127は光電変換部のS/Nが最適となる受光光量B2を設定し、(1)式によって出力値A2を算出する。次に、計測光源110の光量(出力値)をA2に設定した状態で、光電変換部の受光光量B1’’を計測する。光電変換部の受光光量B1’’が所定のトレランス内の場合、調整を終了する。光電変換部の受光光量が所定のトレランス外の場合、再度(1)式を用いて調整する。
図3は走査露光時の面位置計測方法を示す図であり、ショット領域301における計測位置302から304と、面位置計測点との関係を示している。図3(a)はショット領域301内の計測位置302、303、304を示している。図3(b)は計測位置302、303、304に対応する面位置計測器の計測点が面位置計測点209、210、211であることを示している。面位置計測点203、206、209、212、215は、それぞれ同一のX座標位置に配置されている。また、面位置計測点204、207、210、213、216は、それぞれ同一のX座標位置に配置されている。さらに、面位置計測点205、208、211、214、217は、それぞれ同一のX座標位置に配置されている。Y方向の走査に対し、各光電変換部が計測する面位置計測のタイミングを調整することで、ショット領域の同一のX座標の計測位置の計測情報として、異なる面位置計測点での計測結果を面位置計測方法に用いることができる。図3(b)及び図3(c)及び図3(d)を用いて具体的に説明する。
図3に示す方向Fに走査し、ショット領域301内の計測位置302を計測する場合を考える。図3(b)は、計測位置302、303、304が面位置計測点209、210、211に一致している状態を示している。図3(b)に示す露光スリット202に対してショット領域301が位置するタイミングで、面位置計測器は、計測位置302に対応する面位置計測点209で光電変換部の受光光量を計測する。図3(b)に示す状態から一定時間の走査後、図3(c)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置302に対応する面位置計測点206で光電変換部の受光光量を計測する。さらに図3(c)に示す状態から一定時間の走査後、図3(d)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置302に対応する面位置計測点203で光電変換部の受光光量を計測する。
同様に、図3(a)の計測位置303に関して、図3(b)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置303に対応する面位置計測点210で光電変換部の受光光量を計測する。次に、図3(c)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置303に対応する面位置計測点207で光電変換部の受光光量を計測する。最後に、図3(d)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置303に対応する面位置計測点204で光電変換部の受光光量を計測する。
また、図3(a)の計測位置304に関して、図3(b)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置304に対応する面位置計測点211で光電変換部の受光光量を計測する。次に、図3(c)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置304に対応する面位置計測点208で光電変換部の受光光量を計測する。最後に、図3(d)のタイミングにて、面位置計測器は、計測位置304に対応する面位置計測点205で光電変換部の受光光量を計測する。
図4は、図3に示した面位置計測器の計測結果に基づく投光部の出力値の調整方法の処理の流れを説明するフローチャートである。図3(b)〜図3(d)に示す方向Fにおける移動中の走査タイミングにおいて、計測位置302に対応する面位置計測点203、206、209で光電変換部の受光光量を計測する場合について説明する。メイン制御部127は、計測条件を設定するタイミングを設定可能に構成されている。メイン制御部127は、パターンの形成を開始する前、あるいは動を伴うパターンの形成と並行して計測条件の調整を行なうことが可能である。メイン制御部127は、計測条件として、複数の投光部の出力値に関する条件(パラメータ)を設定する。あるいは、メイン制御部127は、計測条件として、受光部の出力値に関する条件(パラメータ)を設定する。
ステップ1において、メイン制御部127は受光光量の追い込み動作を開始する。ステップ2(計測工程)において、メイン制御部127(計測部)は面位置計測器を制御して、計測光源110の光量(A1)を設定し、面位置計測器は、計測位置302に対応する第1の面位置計測点で光電変換部の受光光量を計測する。すなわち、面位置計測器(計測部)は、図3(b)の計測位置302に対応する面位置計測点209で光電変換部の受光光量(B1’)を計測する。
ステップ3(判定工程)において、メイン制御部127(判定部)は、第1の面位置計測点で計測した光量(B1’)が、許容範囲内(トレランス内)であるか判定する。トレランス内の場合(ステップ3−Yes)、処理はステップ11に進められる。メイン制御部127(設定部)は、計測光源110の出力値(A1)を最適な光源出力値として、第1、第2および第3の面位置計測点(面位置計測点203、206、209)に関連付けて記憶する。すなわち、複数の計測タイミングのうち計測を行っていない他の計測タイミングでの計測を行わずに、投光部の計測光源110の光量を調整された投光部の出力値として設定する(設定工程)。メイン制御部127(設定部)が受光部の調整を行う場合、受光部の出力を調整するためのパラメータ(例えば、光電変換部119の受光感度を調整するためのゲイン)を算出して、受光部に設定する。受光部の出力を調整するためのパラメータは、予め出力条件に応じて算出されたものを記憶部に記憶しておき、設定の際にメイン制御部127が記憶部から読み出し、受光部に設定することも可能である。あるいは、パラメータを外部の装置に記憶しておき、メイン制御部127が外部の装置との間の通信により取得し、受光部に設定することも可能である。
一方、ステップ3で、第1の面位置計測点で計測した光量(B1’)が、許容範囲外と判定される場合(ステップ3−No)、処理はステップ4に進められる。
ステップ4(算出工程)において、メイン制御部127(算出部)は、第1の面位置計測点で計測された計測した光量(B1’)を元に、(1)式を用いて計測光源110の出力値(A2’)を算出する。メイン制御部127は、計測光源110の光量(A1)と受光部の受光光量(B1’)とを用いて、次の計測タイミングで用いる計測光源の出力値として光量(A2’)を算出する。算出した計測光源110の出力値(A2’)は、第1の面位置計測点に関連付けて記憶すると共に、第2および第3の面位置計測点(面位置計測点206、203)に関連付けて記憶する。すなわち、第1の面位置計測点(面位置計測点209)の計測結果から算出した計測光源110の出力値(A2’)を、面位置計測点203、206、209にそれぞれ関連付けて記憶する。算出された計測光源110の出力値(A2’)は投光部に設定される。尚、メイン制御部127が受光部の調整を行う場合、受光部の出力を調整するためのパラメータ(例えば、光電変換部119のゲイン)を算出(取得)し、受光部に設定する。
ステップ5(第2の計測工程)において、面位置計測器は、計測位置302に対応する第2の面位置計測点で光電変換部の受光光量を計測する。面位置計測器は、図3(c)の計測位置302に対応する面位置計測点206で光電変換部の受光光量(B1’’)を計測する。この際、第2の面位置計測点の光源の出力値は、ステップ4で算出された値(A2’)を使用する。
ステップ6(第2の判定工程)において、メイン制御部127は、第2の面位置計測点で計測された受光光量(B1’’)が、許容範囲内にあるか否かを判定する。受光光量(B1’’)が許容範囲内にある場合(ステップ6−Yes)、処理はステップ11に進められる。メイン制御部127は、計測光源110の出力値(A2’)を最適な光源出力値として、第1、第2および第3の面位置計測点(面位置計測点209、206、203)に関連付けて記憶する。すなわち、複数の計測タイミングのうち計測を行っていない他の計測タイミングでの計測を行わずに、投光部の計測光源110の光量を調整された投光部の出力値として設定する(第2の設定工程)。メイン制御部127が面位置計測器の受光部の調整を行う場合、受光部のパラメータを調整された受光部のパラメータとして設定する。
一方、ステップ6で、受光光量(B1’’)が許容範囲外と判定される場合(ステップ6−No)、処理はステップ7に進められる。
ステップ7において、メイン制御部127は、第2の面位置計測点で計測された光量(B1’’)を元に、(1)式を用いて計測光源110の出力値(A2’’)を算出する。算出した計測光源110の出力値(A2’’)は、第2の面位置計測点に関連付けて記憶すると共に、第1および第3の面位置計測点(面位置計測点209、203)に関連付けて記憶する。すなわち、第2の面位置計測点(面位置計測点206)の計測結果から算出した計測光源110の出力値(A2’’)を、面位置計測点203、206、209にそれぞれ関連付けて記憶する。
ステップ8において、面位置計測器は、計測位置302に対応する第3の面位置計測点で光電変換部の受光光量を計測する。すなわち、面位置計測器は、図3(c)の計測位置302に対応する面位置計測点203で光電変換部の受光光量(B1’’’)を計測する。この際、第3の面位置計測点の光源の出力値は、ステップ7で算出された値(A2’’)を使用する。
ステップ9において、メイン制御部127は、第3の面位置計測点で計測した受光光量(B1’’’)が、許容範囲内にあるか否か判定する。受光光量(B1’’’)が許容範囲内にある場合(ステップ9−Yes)、処理はステップ11に進められる。メイン制御部127は、計測光源110の光量(A2’’)を最適な光源出力値として、第1、第2および第3の面位置計測点(面位置計測点209、206、203)に関連付けて記憶する。一方、ステップ9で、受光光量(B1’’’)が許容範囲外と判定される場合(ステップ9−No)、処理はステップ10に進められる。
ステップ10において、メイン制御部127は、第3の面位置計測点で計測された受光光量(B1’’’)を元に、(1)式を用いて計測光源110の出力値(A2’’’)を算出する。算出した計測光源110の光量(A2’’’)は、第3の面位置計測点に関連付けて記憶すると共に、第1および第2の面位置計測点(面位置計測点209、206)に関連付けて記憶する。すなわち、第3の面位置計測点(面位置計測点203)の計測結果から算出した計測光源110の出力値(A2’’’)を、面位置計測点203、206、209にそれぞれ関連付けて記憶する。
そして、処理はステップ2に戻され、受光光量が所定の許容範囲に入るまで(ステップ11)、同様の処理が繰り返される。受光光量が所定の許容範囲内に入る場合、処理はステップ11に進められ、メイン制御部127は、計測光源110の出力値を最適な光源出力値として記憶する。そして、ステップ12において、メイン制御部127は、面位置計測器の受光光量の追い込み動作を終了する(ステップ12)。
上述の処理で、例えば、第1の面位置計測点で、受光光量がトレランス内に入った場合、このときの計測光源110の光量(出力値)は最適な光源出力値として、他の面位置計測点(第2および第3の面位置計測点)に関連づけられる。この関連づけ(フォードバック)によって、他の面位置計測点における計測結果に基づいて受光光量の追い込み動作を行うことが不要となるため、受光光量の追い込み動作に要する時間を短縮することができる。
図3における計測位置303及び304についても、前述した計測位置302の追い込み動作と同様に面位置計測器の受光光量の追い込み動作を行うことができる。例えば、計測位置303に対しては、面位置計測点210、207、204の順に光電変換部の受光光量計測し、各タイミングでの計測光源110の出力調整結果を各面位置計測点へ順次フィードバックする。計測位置304に対しては、面位置計測点211、208、205の順で計測し、各タイミングでの計測光源110の出力調整結果を各面位置計測点へ順次フィードバックする。
以上のように、面位置計測の計測タイミングに応じて、異なる光電変換部により同一の座標位置の受光光量を順次計測する。計測した受光光量が所定の許容範囲内に収束する場合、この面位置計測のタイミングでの計測光源110の出力調整結果を他の面位置計測点へ関連づける。計測結果の関連づけ(フィードバック)により、他の面位置計測点における計測結果に基づいて受光光量の追い込み動作を行うことが不要となるため、受光光量の追い込み動作に要する時間を短縮することができる。換言すれば、露光装置の生産性を低下することなく、多点面位置計測器の光量調整が可能となる。
なお、面位置計測点間の計測光源110の出力差や光電変換部119の受光感度差があると、追い込み動作に時間がかかり、場合によっては許容範囲に入らないことも生じ得る。そのため、出力差や受光感度差をあらかじめ調整しておくことが効果的である。
走査露光時の面位置計測にてS/Nが最適となる面位置計測器の受光光量の算出のために、(1)式を用いたが、計測光源110の出力特性と光電変換部の受光光量特性に応じて、他の代数方程式を使用してもよい。例えば、計測光源110の光量(出力値)と光電変換部119の受光光量との関係を事前に取得しておく。そして、両者の関係を一次方程式で表現し、光電変換部のS/Nが最適となる受光光量(B2)を設定した際の計測光源110の光量(A2)の算出に使用することも可能である。この場合でも、計測結果の関連づけにより、他の面位置計測点における計測結果に基づいて受光光量の追い込み動作を行うことが不要となるため、受光光量の追い込み動作に要する時間を短縮することができる。
図3および図4では、面位置計測器の投光部の出力値を調整することで光電変換部のS/Nを最適化した。この方法に限定されず、例えば、受光部の出力を制御するためのパラメータとして、例えば、光電変換部119の受光感度を調整するためのゲインを調整することで、S/Nを最適化しても良い。この場合、例えば、ステップ3の判定で、受光光量が許容範囲内にあると判定される場合(ステップ3−Yes)、他の計測タイミング(ステップ5、8)での面位置の計測を行わずに、処理をステップ11に進める。そして、光電変換部119に設定されているゲインを調整された受光部の出力を制御するためのパラメータとして、他の面位置計測点(第2および第3の面位置計測点)に関連づければよい。また、受光光量が許容範囲外と判定される場合(ステップ3−No)、メイン制御部127は、次の計測タイミングで用いる受光部のパラメータを算出すればよい(ステップ4)。
本実施形態によれば、面位置計測器の光量等の調整時間を短縮することで、生産性を低下させることなく、面位置計測精度の向上を図ることが可能になる。面位置計測器を有する露光装置、かかる露光装置の露光方法によれば、優れた面位置計測精度の下に露光を行うことが可能になる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の露光方法について説明する。図5は本実施形態のリソグラフィー方法の処理の流れを説明するフローチャートである。ステップ21において、メイン制御部127は制御を開始する。そして、ステップ22において、不図示の搬送ハンドにてウエハ104をウエハステージ105上に搬入し、不図示のチャックにウエハ104を吸着固定する。
ステップ23において、ステップ27で実行するグローバルアライメントのための事前計測及び補正を行う(プリアライメント)。ステップ27のグローバルアライメントで用いる不図示の高倍視野アライメント顕微鏡の計測範囲に入るように、不図示の低倍視野アライメント顕微鏡にてウエハ104の回転誤差等のずれ量を計測し、補正する。
ステップ24において、面位置計測器を用いてウエハ104の複数の計測位置(例えば、図6の601)における面位置を計測する。当該計測結果から、ウエハ104の全体的な傾きを算出し、補正する(グローバルチルト)。
ステップ25において、ステップ28の走査露光でリアルタイムに面位置を計測する際の事前調整を行う(事前スキャン)。具体的には、前述した面位置計測器の計測光源110の光量(出力値)等や、ウエハ104上のショット領域表面のパターン段差の記憶である。例えば、図4で説明した面位置計測器の光量等の調整方法は、本ステップで実行することが可能である。
ステップ26において、ウエハステージ105上の不図示の光量センサ及び基準マーク、レチクルステージ103上の不図示の基準プレートを用いて、投影レンズの傾きや像面湾曲等の補正値を算出する。具体的には、ウエハステージ105をXYZ方向へ走査した際の露光光の光量変化を、光量センサにて計測する。光量センサの光量変化量から、基準プレートに対する基準マークのずれ量を計測し、補正値を算出及び補正する(投影レンズ補正)。
ステップ27において、不図示の高倍視野アライメント顕微鏡を用いて、ウエハ104上のアライメントマークを計測し、ウエハ104全体のずれ量および各ショット領域共通のずれ量を算出する。アライメントマークを精密に計測するためには、アライメントマークのコントラストが、ベストコントラスト位置になければならない。ベストコントラスト位置の計測は、面位置計測器とアライメント顕微鏡を用いて行う。具体的には、予め定められた高さにウエハステージ105を駆動し、アライメント顕微鏡にてコントラストを計測すると同時に、面位置計測器にて面位置を計測する工程を数回繰り返す。この際、高さに応じたコントラスト計測結果と面位置計測結果とを対応づけて、メイン制御部127に保存する。得られた複数のコントラスト計測結果から、最もコントラストの高い位置を算出し、ベストコントラスト位置とする。
ステップ28において、面位置計測器にて露光対象ショット領域の面位置をリアルタイムに計測し、計測結果に基づきウエハステージ105を最適露光像面位置へ補正駆動しつつ、走査露光する。
全ショット領域の露光が完了した後、ステップ29において、ウエハ104をウエハステージ105から搬出し、ステップ30で一連の処理を終了する。
図5のフローチャートでは、ステップ25において、面位置計測器の計測光源110の光量等の調整をウエハ毎に実行している。生産性向上のため、複数のウエハに対して1回の頻度で光量等の調整を実行しても良い。例えば、ロットの先頭のウエハのみに対して光量等の調整シーケンスを実行し、次ウエハ以降は光量等の調整シーケンスをスキップし、ロット先頭で得た光量等の調整結果をそのロットにおける他のウエハの露光時にフィードバックして使用することも可能である。または、露光装置の組立・調整時やメンテナンス等の特定のタイミングで、光量等の調整シーケンスを実行してもよい。
図5において、調整工程(図4)の処理を露光工程(ステップ28)の前工程としてステップ25で実行するか、露光工程内の処理として実行するかを切り替える切替工程を設けることも可能である。切替工程の実行により、調整工程の処理を実行するタイミングを切り替えることが可能である。図5のフローチャートでは、面位置計測器の投光部の出力値の調整または受光部の出力値の調整(受光部の出力を制御するためのパラメータの設定)を、露光工程(ステップ28)の前工程として、ステップ25にて実行している。生産性の更なる向上のため、ステップ25において計測光源110の光量等の調整を実行する代わりに、ステップ28において、露光のための基板の走査中に調整工程を実行しても良い。具体的には、面位置計測器にて露光対象ショット領域の面位置をリアルタイムに計測すると同時に、光電変換部の受光光量も計測する。受光光量に基づき、面位置計測器の計測光源110の光量等を調整しつつ、ウエハステージ105を最適露光像面位置へ補正駆動及び露光する。
面位置計測精度の更なる向上を目的として、ステップ25とステップ28の両方で計測光源110の光量等を調整しても良い。あるいは、計測光源110の光量等の調整をステップ25でのみ実行するか、ステップ28でのみ実行するか、ステップ25とステップ28の両方で実行するかをウエハ毎やロット毎に切り替えてもよい。例えば、ロット先頭のウエハではステップ25にて実行し、次ウエハ以降はステップ25では実行せずにステップ28で実行する。これにより、ロット内の全ウエハの面位置計測精度を計測光源110の光量等の調整により向上させた状態で維持しつつ、生産性を向上することができる。
ウエハ104上のショット領域のサイズや配置場所、ショット領域の露光順序等のレイアウト条件、及びウエハステージ105の速度・加速度等の駆動条件が同じ場合、光量等の調整結果は略同一となる。そのため、ステップ25で算出した調整結果を、レイアウト条件やウエハステージの駆動条件に関連づけて、保持しておく。同一条件によりウエハ104を露光する場合は、保持していた調整結果を利用してウエハ104を露光し、光量等の調整シーケンスをスキップしても良い。
本実施形態によれば、面位置計測器の光量等の調整時間を短縮することで、生産性を低下させることなく面位置計測精度の向上を図り、優れた面位置計測精度の下に露光を行うことが可能な露光技術の提供が可能になる。
[物品製造方法の実施形態]
実施形態に係る物品の製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。該製造方法は、物体(例えば、感光材を表面に有する基板)上に上記のリソグラフィー装置を用いてパターン(例えば潜像パターン)を形成する工程と、当該工程でパターンを形成された物体を処理する工程(例えば、現像工程)とを含みうる。さらに、該製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形または変更が可能である。例えば、上述の実施形態においてリソグラフィー装置として紫外光、真空紫外光または極端紫外光を用いた露光装置の例を説明したが、リソグラフィー装置は、それに限らず、可動の基板ステージ(保持部)を含むリソグラフィー装置であればよい。例えば、電子線のような荷電粒子線で基板(上の感光材)に描画を行う描画装置であってもよく、また、型を用いて基板上のインプリント材を成形(成型)して基板上にパターンを形成するインプリント装置であってもよい。