以下、本発明に係る蒸気タービンおよび蒸気タービンの動翼の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンおよび蒸気タービンの動翼の第1実施形態について図1から図4を参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンを部分的に示す子午面断面図である。
図1に示す本実施形態に係る蒸気タービン1は、原子力発電プラントや火力発電プラント、地熱発電プラントなどの発電プラント(図示省略)の低圧タービンとして適用されることが好ましい。また、図1は蒸気タービン1の低圧最終段に近い低圧段落を示す図である。さらに、図1における蒸気の流れは、図面の左から右へ向かっている。
蒸気タービン1内における蒸気の主な流れ方向(図1中の実線矢F)はタービンロータ軸2の回転中心線Cに対してほぼ平行であり、この蒸気の主な流れ方向を蒸気タービン1の軸方向と定義する。一方、動翼3は、蒸気の主な流れ方向(図1中の実線矢F)における上流側を前方、下流側を後方と定義する。
図1に示すように、蒸気タービン1は、ケーシング(図示省略)内に配置されているノズルダイアフラム外輪6と、ノズルダイアフラム外輪6に固定されている複数の静翼7と、ノズルダイアフラム外輪6に対して回転自在なタービンロータ軸2と、タービンロータ軸2から放射状に延びる複数の動翼3と、動翼3それぞれの翼頂部8に設けられている複数のチップカバー9と、チップカバー9に設けられている撥水性の水分剥離膜11と、を備える。蒸気タービン1の一つの段は、上流側にある静翼7と、その下流側にある動翼3と、を備える。
ノズルダイアフラム外輪6は、動翼3およびチップカバー9の外側を囲む。
また、ノズルダイアフラム外輪6は、チップカバー9を臨むドレンキャッチャ12を有する。ドレンキャッチャ12は、水分剥離膜11から剥離した水滴dを回収する空間である。
さらに、ノズルダイアフラム外輪6は、チップカバー9に向かって延びるノズルストリップ13を備える。ノズルストリップ13は、チップカバー9の後縁部とノズルダイアフラム外輪6とを隔てる隙間を狭めて流路抵抗を高め、当該隙間から下流側へ向かう漏洩蒸気の流量を低減させる。
それぞれの静翼7は、ノズルダイアフラム外輪6の内壁面15からタービンロータ軸2に向かって延びる。複数の静翼7は、タービンロータ軸2を中心とする周方向に放射状に並んで翼列をなす。それぞれの静翼7のタービンロータ軸2に近い側の翼端は、ノズルダイアフラム内輪16に固定されている。
それぞれの動翼3は、タービンロータ軸2に固定されて、タービンロータ軸2からノズルダイアフラム外輪6の内壁面15に向かって延びる。複数の動翼3は、タービンロータ軸2を中心とする周方向に放射状に並んで翼列をなす。
それぞれのチップカバー9は、それぞれの動翼3の翼頂部8に一体成形される。
図2は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部を示す平面図である。
図1に加えて図2に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1のチップカバー9は、動翼3の翼頂部8に外周側から覆い被さる。つまり、チップカバー9の前縁9a(チップカバー9の上流側の縁)は動翼3の前縁3aよりも上流側に張り出し、チップカバー9の後縁9b(チップカバー9の下流側の縁)は動翼3の後縁3bよりも下流側に張り出す。
また、チップカバー9は、動翼3の背側方向に延びる背側カバー部17と、動翼3の腹側方向に延びる腹側カバー部18と、を備える。
さらに、隣り合うチップカバー9は相互に接している。つまり、あるチップカバー9の背側カバー部17は、隣のチップカバー9の腹側カバー部18に接している。そして、チップカバー9は、遠心力による動翼3の捻り戻り(所謂アンツイスト)を利用して隣接するチップカバー9どうし連結し、全周一体となって動翼3の振動を抑制する。
水分剥離膜11は、チップカバー9の外周面21に設けられている。また、水分剥離膜11は、外周面21の前縁側に設けられている。水分剥離膜11の表面は、動翼3およびチップカバー9の素地よりも撥水性が高く水分を弾きやすい。
図3は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部の他の例を示す平面図である。
図2に代えて図3に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1の水分剥離膜11は、動翼3ごとに間隔を隔てて設けられていてもよい。つまり、水分剥離膜11は、必ずしもチップカバー9の全周に渡って設けられている必要は無く、動翼3の翼頂部8からチップカバー9へ水分が乗り移る箇所、すなわちチップカバー9と動翼3との連接部分にあれば良い。
図4は、本発明の第1実施形態に係る蒸気タービンのドレンキャッチャ12と水分剥離膜11との位置関係を説明する子午面断面図である。
図4に示すように、蒸気の流れ方向に見て、本実施形態に係る蒸気タービン1の水分剥離膜11の下流側端22は、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側に位置する。換言すれば、蒸気の流れ方向に見て、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23は、水分剥離膜11の下流側端22よりも下流側に位置する。
他方、蒸気の流れ方向に見て、水分剥離膜11の上流側端25は、チップカバー9の最前縁に位置する。なお、水分剥離膜11の上流側端25は、下流側端22よりも上流側であればチップカバー9の最前縁からドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側の適宜の位置に設定できる。
これら、水分剥離膜11の下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、蒸気タービン1の定常運転時における軸方向の伸びを考慮して設定される。例えば、一般的な低圧タービンにおけるタービンロータ軸2とノズルダイアフラム外輪6との軸方向の伸びの差は、最大で20mm程度である。水分剥離膜11の下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、この伸びの差を考慮して設定される。具体的には、水分剥離膜11とドレンキャッチャ12の開口との位置関係は、蒸気タービン1の定常運転時に、水分剥離膜11の下流側端22がドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に位置するように設定される。
また、ドレンキャッチャ12の入口開口を拡開させる場合(例えば、断面視においてラッパ形状に拡開させる場合)には、すぼまりはじめる位置に最下流縁23を設定する。
次に、蒸気タービン1および動翼3の作用について説明する。
ところで、蒸気タービン1の運転中、蒸気の一部は凝縮し、前段の動翼(図示省略)から剥離した水滴が静翼7に付着する。このとき、図1に示すように、この静翼7に付着した水分は、静翼7の後縁で静翼7から剥離して、再び水滴d1となって飛散する。
この水滴dが蒸気の流れに乗りきれなければ、回転する動翼3の前縁3aに衝突し付着する。
この動翼3に付着した水分を放置すると、この水分は動翼3の後縁3bで動翼3から剥離して再び水滴(図示省略)となって飛散し、後段の静翼(図示省略)へ向かう。このとき、動翼3から飛散した水滴の加速のために、蒸気のエネルギーが消費されて損失になる。また、この水滴は、後段の動翼(図示省略)に衝突して当該動翼の制動力として働き、タービン効率を低下させることにもなる。さらに、水滴の衝突は、後段の動翼の前縁の浸食を引き起こす要因にもなる。
そこで、本実施形態に係る蒸気タービン1は、動翼3に付着した水分を放置することなく、ドレンキャッチャ12へ回収する。
具体的には、蒸気タービン1は、その回転にともなう遠心力によって、動翼3に付着した水分を動翼3の表面(すなわち、動翼3の素地)伝いに径方向外側へ移動させて、翼頂部8に至らせる。ついで、蒸気タービン1は、翼頂部8に到達した水分をチップカバー9に乗り移らせる。そして、蒸気タービン1は、水分が乗り移る先である水分剥離膜11でチップカバー9や動翼3の素地よりも水分を容易に剥離する。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1は、その遠心力で集まる水分が大粒の水滴になる以前、未だ小粒の水滴dのうちに飛散させることができる。そして、蒸気タービン1は、水分剥離膜11で剥離した水分(水滴d)をタービンロータ軸2の径方向外側(図1中の実線矢)へ飛散させてドレンキャッチャ12に回収する。
本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3は、ドレンキャッチャ12を臨むチップカバー9に水分剥離膜11を備えることによって、動翼3に付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。特に、蒸気タービン1および動翼3は、動翼3の表面を伝って水分剥離膜11に到達する水分を順次に剥離することが可能であり、翼頂部8に到達する水分が寄せ集まって粒径の大きな水滴になる前に、粒径の小さな水滴の段階で飛び散らせることができる。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3は、後段に対する水滴dの影響を排除し、ひいてはタービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3は、水分剥離膜11の下流側端22をドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に配置することによって、水分剥離膜11から飛散する水滴dをドレンキャッチャ12で確実に回収することができる。このことも、タービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制する。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3は、チップカバー9に水分剥離膜11を備える簡便な構造によって、動翼3に付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。そして、本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3の簡便な構造は、既設製品の改修に極めて有効である。例えば既設の蒸気タービン1や動翼3に対して、チップカバー9を加工したり、動翼3を交換したりすることなく、既設のチップカバー9に水分剥離膜11を形成することによって、既設製品を改修して本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3にすることができる。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1および動翼3は、必ずしもチップカバー9の全周に水分剥離膜11を備える必要は無く、動翼3ごとに間隔を隔てて水分剥離膜11を備えていれば良い。
[第2の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンおよび蒸気タービンの動翼の第2実施形態について図5から図7を参照して説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンを部分的に示す子午面断面図である。
図6は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部を示す平面図である。
なお、本実施形態において、第1実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図5および図6に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Aのチップカバー9Aは、動翼3Aの翼頂部8の一部に外周側から覆い被さる。つまり、本実施形態に係るチップカバー9Aは、第1実施形態に係るチップカバー9のように動翼3の翼頂部8の全体に覆い被さるものではなく、動翼3Aの翼頂部8の一部に覆い被さるものである。換言すれば、チップカバー9Aの前縁9a(チップカバー9Aの上流側の縁)は動翼3Aの前縁3aよりも下流側に引っ込んでいて、動翼3Aの前縁3aはチップカバー9Aの前縁9aよりも上流側に張り出している。他方、チップカバー9Aの後縁9b(チップカバー9Aの下流側の縁)は動翼3Aの後縁3bよりも下流側に張り出す。
また、チップカバー9Aは、動翼3Aの背側方向に延びる背側カバー部17Aと、動翼3Aの腹側方向に延びる腹側カバー部18Aと、を備える。腹側カバー18Aの前縁はチップカバー9Aの前縁9aであり、動翼3Aの前縁3aよりも下流側に引っ込んでいる。
さらに、隣り合うチップカバー9Aは相互に接している。つまり、あるチップカバー9Aの背側カバー部17Aは、隣のチップカバー9Aの腹側カバー部18Aに接している。そして、チップカバー9Aは、遠心力による動翼3Aの捻り戻り(所謂アンツイスト)を利用して隣接するチップカバー9Aどうし連結し、全周一体となって動翼3Aの振動を抑制する。
一方、動翼3Aの翼頂部8の残部はノズルダイアフラム外輪6を臨む。蒸気タービン1Aのドレンキャッチャ12は動翼3Aまたはチップカバー9Aを臨む。
また、動翼3Aは、背側に水分剥離膜11Aへ向かって延びる水分案内溝27を有する。なお、動翼3A周囲の流れの状態によっては水分案内溝27を腹側に配置しても良い。
水分案内溝27は、動翼3Aの前縁3aの近傍にあり、動翼3Aの前縁3aに対して略平行(つまり、動翼の長さ方向)に延びて動翼3Aの翼頂部8の残部へ達する。水分案内溝27は1条であっても複数条あっても良い。水分案内溝27は動翼3Aの前縁3aに付着する水分を遠心力とともに翼頂部8の残部、ひいては水分剥離膜11Aへ案内する。
なお、動翼3Aは、水分案内溝27を備えていなくても良い。つまり、第1実施形態に係る動翼3にチップカバー9Aを組み合わせたものであっても良い。
蒸気タービン1Aの水分剥離膜11Aは、動翼3Aの翼頂部8に設けられている。特に、水分剥離膜11Aは、動翼3Aの翼頂部8のうちノズルダイアフラム外輪6を臨む残部に設けられている。水分剥離膜11Aの表面は、動翼3Aおよびチップカバー9Aの素地よりも撥水性が高く水分を弾きやすい。
なお、第1実施形態に係る蒸気タービン1、本実施形態に係る蒸気タービン1Aに示すように、水分剥離膜11、11Aは、翼頂部8およびチップカバー9、9Aの少なくとも一方に設けられていれば良い。
図7は、本発明の第2実施形態に係る蒸気タービンの他の例を部分的に示す子午面断面図である。
図7に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Bは、動翼3Bの腹側または背側に水分剥離膜11Aへ向かって延びる親水性の水分誘導膜28を備える。
水分誘導膜28は、蒸気タービン1Aの水分案内溝27と同様に、動翼3Bの前縁3aに付着する水分を遠心力とともに翼頂部8の残部、ひいては水分剥離膜11Aへ案内する。水分誘導膜28は、動翼3Bの前縁3aの近傍にあり、動翼3Bの前縁3aに沿って(つまり、動翼3Bの長さ方向)に延びて動翼3Bの翼頂部8の残部へ達する。水分誘導膜28の表面は、動翼3Bおよびチップカバー9Aの素地よりも、また、水分剥離膜11Aの表面よりも、親水性が高く水分に馴染みやすい。水分誘導膜28は動翼3Bの前縁3aに付着する水分を遠心力とともに翼頂部8の残部、ひいては水分剥離膜11Aへ案内する。
なお、水分誘導膜28は、水分案内溝27とは異なり、動翼3Bの腹側および背側の両方に設けられていても良い。
蒸気の流れ方向に見て、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bの水分剥離膜11Aの下流側端22は、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側に位置する。換言すれば、蒸気の流れ方向に見て、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23は、水分剥離膜11Aの下流側端22よりも下流側に位置する。
他方、蒸気の流れ方向に見て、水分剥離膜11Aの上流側端25は、動翼3A、3Bの前縁3aに位置する。なお、水分剥離膜11Aの上流側端25は、下流側端22よりも上流側であれば動翼3A、3Bの前縁3aからドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側の適宜の位置に設定できる。
これら、水分剥離膜11Aの下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、蒸気タービン1A、1Bの定常運転時における軸方向の伸びを考慮して設定される。例えば、一般的な低圧タービンにおけるタービンロータ軸2とノズルダイアフラム外輪6との軸方向の伸びの差は、最大で20mm程度である。水分剥離膜11Aの下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、この伸びの差を考慮して設定される。具体的には、水分剥離膜11Aとドレンキャッチャ12の開口との位置関係は、蒸気タービン1A、1Bの定常運転時に、水分剥離膜11Aの下流側端22がドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に位置するように設定される。
また、ドレンキャッチャ12の入口開口を拡開させる場合(例えば、断面視においてラッパ形状に拡開させる場合)には、すぼまりはじめる位置に最下流縁23を設定する。
次に、蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bの作用について説明する。
ところで、蒸気タービン1A、1Bの運転中、蒸気の一部は凝縮し、前段の動翼(図示省略)から剥離した水滴が静翼7に付着する。この静翼7に付着した水分は、静翼7の後縁で静翼7から剥離して、再び水滴d1となって飛散する。
この水滴d1が蒸気の流れに乗りきれなければ、回転する動翼3A、3Bの前縁3aに衝突し付着する。
この動翼3A、3Bに付着した水分を放置すると、この水分は動翼3A、3Bの後縁で動翼3A、3Bから剥離して再び水滴(図示省略)となって飛散し、後段の静翼(図示省略)へ向かう。このとき、動翼3A、3Bから飛散した水滴の加速のために、蒸気のエネルギーが消費されて損失になる。また、この水滴は、後段の動翼(図示省略)に衝突して当該動翼の制動力として働き、タービン効率を低下させることにもなる。さらに、水滴の衝突は、後段の動翼の前縁の浸食を引き起こす要因にもなる。
そこで、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bは、動翼3A、3Bに付着した水分を放置することなく、ドレンキャッチャ12へ回収する。
具体的には、蒸気タービン1A、1Bは、その回転にともなう遠心力によって、動翼3A、3Bに付着した水分を水分案内溝27または水分誘導膜28伝いに径方向外側へ移動させて、翼頂部8に至らせる。そして、蒸気タービン1A、1Bは、水分が乗り移る先である水分剥離膜11Aで動翼3A、3Bの素地や、水分案内溝27または水分誘導膜28よりも水分を容易に剥離する。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bは、その遠心力で集まる水分が大粒の水滴になる以前、未だ小粒の水滴のうちに飛散させることができる。そして、蒸気タービン1A、1Bは、水分剥離膜11Aで剥離した水分(水滴d)をタービンロータ軸2の径方向外側へ飛散させてドレンキャッチャ12に回収する。
本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、ドレンキャッチャ12を臨む翼頂部8に水分剥離膜11Aを備えることによって、動翼3A、3Bに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。特に、蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、動翼3A、3Bの表面を伝って水分剥離膜11Aに到達する水分を順次に剥離することが可能であり、翼頂部8に到達する水分が寄せ集まって粒径の大きな水滴になる前に、粒径の小さな水滴の段階で飛び散らせることができる。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、後段に対する水滴dの影響を排除し、ひいてはタービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、水分剥離膜11Aの下流側端22をドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に配置することによって、水分剥離膜11Aから飛散する水滴dをドレンキャッチャ12で確実に回収することができる。このことも、タービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制する。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、動翼3A、3Bの翼頂部8に水分剥離膜11Aを備える簡便な構造によって、動翼3A、3Bに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。そして、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bの簡便な構造は、既設製品の改修に極めて有効である。例えば既設の蒸気タービン1A、1Bや動翼3A、3Bに対して、チップカバー9Aを加工したり、動翼3A、3Bを交換したりすることなく、既設の動翼3A、3Bに水分剥離膜11Aを形成することによって、既設製品を改修して本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bにすることができる。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、動翼3A、3Bの前縁に水分案内溝27または水分剥離膜11Aを備えることによって、動翼3A、3Bに付着する水分を翼頂部8へ向かって円滑に導くことができる。これによって、蒸気タービン1A、1Bおよび動翼3A、3Bは、水分が翼頂部8へ到達する以前、動翼3A、3Bの表面を伝わる過程で寄せ集まって粒径が大きい水滴になることを防ぎ、粒径の小さな水滴を水分剥離膜11Aから飛び散らせることができる。
なお、動翼3A、3Bは、いずれも水分案内溝27および水分誘導膜28の両方を備えていても良い。
[第3の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンおよび蒸気タービンの動翼の第3実施形態について図8から図10を参照して説明する。
図8は、本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンを部分的に示す子午面断面図である。
図9は、本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部を示す平面図である。
なお、本実施形態において、第1実施形態および第2実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図8および図9に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Cのチップカバー9Cは、動翼3Cの翼頂部8の一部に外周側から覆い被さる。つまり、本実施形態に係るチップカバー9Cは、第2実施形態に係るチップカバー9Aのように動翼3Cの翼頂部8の一部に覆い被さるものである。
一方、動翼3Cの翼頂部8の残部はノズルダイアフラム外輪6を臨む。蒸気タービン1Cのドレンキャッチャ12は動翼3Cまたはチップカバー9Cを臨む。
また、動翼3Cは、背側に翼頂部8へ向かって延びる水分案内溝27を有する。なお、動翼3C周囲の流れの状態によっては水分案内溝27を腹側に配置しても良い。
水分案内溝27は、動翼3Cの前縁3aの近傍にあり、動翼3Cの前縁3aに対して略平行(つまり、動翼の長さ方向)に延びて動翼3Cの翼頂部8の残部へ達する。水分案内溝27は1条であっても複数条あっても良い。水分案内溝27は動翼3Cの前縁3aに付着する水分を遠心力とともに翼頂部8の残部へ案内する。
チップカバー9Cの上流側面29(チップカバー9Cの前縁)は動翼3Cの前縁3aよりも下流側に引っ込んでいて、動翼3Cの前縁3aはチップカバー9Cの上流側面29よりも上流側に張り出している。
蒸気タービン1Cの水分剥離膜11Cは、チップカバー9Cの上流側面29に設けられている。つまり、水分剥離膜11Cは、蒸気の流れに逆らう方向(蒸気流の上流方向)を臨む部分に設けられている。また、水分剥離膜11Cは、第1実施形態における水分剥離膜11や第2実施形態における水分剥離膜11Aのように、動翼3Cの前縁3aから連続的に存在せず、動翼3Cの前縁3aよりも下流側に引っ込んだチップカバー9Cの上流側面29に設けられている。水分剥離膜11Cの表面は、動翼3Cおよびチップカバー9Cの素地よりも撥水性が高く水分を弾きやすい。
蒸気の流れ方向に見て、本実施形態に係る蒸気タービン1Cの水分剥離膜11Cの主面31は、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側に位置する。換言すれば、蒸気の流れ方向に見て、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23は、水分剥離膜11Cの主面31よりも下流側に位置する。なお、水分剥離膜11Cの主面31は第1実施形態および第2実施形態に係る水分剥離膜11の下流側端22に相当する。
これら、水分剥離膜11Cの主面31とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、蒸気タービン1Cの定常運転時における軸方向の伸びを考慮して設定される。例えば、一般的な低圧タービンにおけるタービンロータ軸2とノズルダイアフラム外輪6との軸方向の伸びの差は、最大で20mm程度である。水分剥離膜11Cの主面31とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、この伸びの差を考慮して設定される。具体的には、水分剥離膜11Cとドレンキャッチャ12の開口との位置関係は、蒸気タービン1Cの定常運転時に、水分剥離膜11Cの主面31がドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に位置するように設定される。
また、ドレンキャッチャ12の入口開口を拡開させる場合(例えば、断面視においてラッパ形状に拡開させる場合)には、すぼまりはじめる位置に最下流縁23を設定する。
図10は、本発明の第3実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部の他の例を示す平面図である。
図9に代えて図10に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Cの水分剥離膜11Cは、動翼3Cごとに間隔を隔てて設けられていてもよい。つまり、水分剥離膜11Cは、必ずしもチップカバー9Cの全周に渡って設けられている必要は無く、動翼3Cの翼頂部8からチップカバー9Cへ水分が乗り移る箇所、すなわちチップカバー9Cと動翼3Cとの連接部分にあれば良い。
次に、蒸気タービン1Cおよび動翼3Cの作用について説明する。
ところで、蒸気タービン1Cの運転中、蒸気の一部は凝縮し、前段の動翼(図示省略)から剥離した水滴が静翼7に付着する。この静翼7に付着した水分は、静翼7の後縁で静翼7から剥離して、再び水滴d1となって飛散する。
この水滴d1が蒸気の流れに乗りきれなければ、回転する動翼3Cの前縁3aに衝突し付着する。
この動翼3Cに付着した水分を放置すると、この水分は動翼3Cの後縁3bで動翼3Cから剥離して再び水滴(図示省略)となって飛散し、後段の静翼(図示省略)へ向かう。このとき、動翼3Cから飛散した水滴の加速のために、蒸気のエネルギーが消費されて損失になる。また、この水滴は、後段の動翼(図示省略)に衝突して当該動翼の制動力として働き、タービン効率を低下させることにもなる。さらに、水滴の衝突は、後段の動翼の前縁の浸食を引き起こす要因にもなる。
そこで、本実施形態に係る蒸気タービン1Cは、動翼3Cに付着した水分を放置することなく、ドレンキャッチャ12へ回収する。
具体的には、蒸気タービン1Cは、その回転にともなう遠心力によって、動翼3Cに付着した水分を水分案内溝27伝いに径方向外側へ移動させて、翼頂部8に至らせる。ついで、蒸気タービン1Cは、翼頂部8に到達した水分をチップカバー9Cに乗り移らせる。そして、蒸気タービン1Cは、水分が乗り移る先である水分剥離膜11Cで動翼3Cの素地や、水分案内溝27よりも水分を容易に剥離する。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1Cは、その遠心力で集まる水分が大粒の水滴になる以前、未だ小粒の水滴のうちに飛散させることができる。そして、蒸気タービン1Cは、水分剥離膜11Cで剥離した水分(水滴d)をタービンロータ軸2の径方向外側へ飛散させてドレンキャッチャ12に回収する。
本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、チップカバー9Cの上流側面29に水分剥離膜11Cを備えることによって、動翼3Cに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。特に、蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、動翼3Cの表面を伝って水分剥離膜11Cに到達する水分を順次に剥離することが可能であり、チップカバー9Cに到達する水分が寄せ集まって粒径の大きな水滴になる前に、粒径の小さな水滴の段階で飛び散らせることができる。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、後段に対する水滴dの影響を排除し、ひいてはタービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、水分剥離膜11Cの主面31をドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に配置することによって、水分剥離膜11Cから飛散する水滴dをドレンキャッチャ12で確実に回収することができる。このことも、タービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制する。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、チップカバー9Cの上流側面29に水分剥離膜11Cを備える簡便な構造によって、動翼3Cに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。そして、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cの簡便な構造は、既設製品の改修に極めて有効である。例えば既設の蒸気タービン1Cや動翼3Cに対して、チップカバー9Cを加工したり、動翼3Cを交換したりすることなく、既設の動翼3Cに水分剥離膜11Cを形成することによって、既設製品を改修して本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cにすることができる。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、動翼3Cの前縁に水分案内溝27を備えることによって、動翼3Cに付着する水分をチップカバー9Cへ向かって円滑に導くことができる。これによって、蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、水分がチップカバー9Cへ到達する以前、動翼3Cの表面を伝わる過程で寄せ集まって粒径が大きい水滴になることを防ぎ、粒径の小さな水滴を水分剥離膜11Cから飛び散らせることができる。
なお、本実施形態に係る蒸気タービン1Cおよび動翼3Cは、水分案内溝27に代えて、または加えて第2実施形態に係る水分誘導膜28を備えていても良い。
[第4の実施形態]
本発明に係る蒸気タービンおよび蒸気タービンの動翼の第4実施形態について図11から図13を参照して説明する。
図11は、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンを部分的に示す子午面断面図である。
図12は、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部を示す平面図である。
なお、本実施形態において、第4実施形態と共通する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図11および図12に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Dのチップカバー9Dは、動翼3Dの翼頂部8の一部に外周側から覆い被さる。つまり、本実施形態に係るチップカバー9Dは、第2実施形態に係るチップカバー9Aや第3実施形態に係るチップカバー9Cのように動翼3Dの翼頂部8の一部に覆い被さるものである。
チップカバー9Dの上流側面29(チップカバー9Dの前縁)は動翼3Dの前縁3aよりも下流側に引っ込んでいて、動翼3Dの前縁3aはチップカバー9Dの上流側面29よりも上流側に張り出している。
一方、動翼3Dの翼頂部8の残部はノズルダイアフラム外輪6を臨む。蒸気タービン1Dのドレンキャッチャ12は動翼3Dまたはチップカバー9Dを臨む。
また、動翼3Dは、背側に翼頂部8へ向かって延びる水分案内溝27を有する。なお、動翼3D周囲の流れの状態によっては水分案内溝27を腹側に配置しても良い。
水分案内溝27は、動翼3Dの前縁3aの近傍にあり、動翼3Dの前縁3aに対して略平行(つまり、動翼の長さ方向)に延びて動翼3Dの翼頂部8の残部へ達する。水分案内溝27は1条であっても複数条あっても良い。水分案内溝27は動翼3Dの前縁3aに付着する水分を遠心力とともに翼頂部8の残部へ案内する。
蒸気タービン1Dの水分剥離膜11Dは、動翼3Dの翼頂部8およびチップカバー9Dの上流側面29に設けられている。また、水分剥離膜11Dは、第1実施形態における水分剥離膜11や第2実施形態における水分剥離膜11Aのように、動翼3Dの前縁3aから連続的に存在し、かつ第3実施形態における水分剥離膜11Cのように動翼3Dの前縁3aよりも下流側に引っ込んだチップカバー9Dの上流側面29に設けられている。つまり、水分剥離膜11Dは、動翼3Dの翼頂部8のうちノズルダイアフラム外輪6を臨む残部、および蒸気の流れに逆らう方向(蒸気流の上流方向)を臨む部分に設けられている。水分剥離膜11Dの表面は、動翼3Dおよびチップカバー9Dの素地よりも撥水性が高く水分を弾きやすい。
図13は、本発明の第4実施形態に係る蒸気タービンの動翼の翼頂部の他の例を示す平面図である。
図12に代えて図13に示すように、本実施形態に係る蒸気タービン1Dの水分剥離膜11Dは、動翼3Dごとに間隔を隔てて設けられていてもよい。つまり、水分剥離膜11Dは、必ずしもチップカバー9Dの全周に渡って設けられている必要は無く、動翼3Dの翼頂部8からチップカバー9Dへ水分が乗り移る箇所、すなわちチップカバー9Dと動翼3Dとの連接部分にあれば良い。
蒸気の流れ方向に見て、本実施形態に係る蒸気タービン1Dの水分剥離膜11Dの下流側端22は、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側に位置する。換言すれば、蒸気の流れ方向に見て、ドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23は、水分剥離膜11Dの下流側端22よりも下流側に位置する。
他方、蒸気の流れ方向に見て、水分剥離膜11Dの上流側端25は、動翼3Dの前縁に位置する。なお、水分剥離膜11Dの上流側端25は、下流側端22よりも上流側であれば動翼3Dの前縁からドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23よりも上流側の適宜の位置に設定できる。
これら、水分剥離膜11Dの下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、蒸気タービン1Cの定常運転時における軸方向の伸びを考慮して設定される。例えば、一般的な低圧タービンにおけるタービンロータ軸2とノズルダイアフラム外輪6との軸方向の伸びの差は、最大で20mm程度である。水分剥離膜11Dの下流側端22とドレンキャッチャ12の入口開口の最下流縁23との位置関係は、この伸びの差を考慮して設定される。具体的には、水分剥離膜11Dとドレンキャッチャ12の開口との位置関係は、蒸気タービン1Dの定常運転時に、水分剥離膜11Dの下流側端22がドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に位置するように設定される。
また、ドレンキャッチャ12の入口開口を拡開させる場合(例えば、断面視においてラッパ形状に拡開させる場合)には、すぼまりはじめる位置に最下流縁23を設定する。
次に、蒸気タービン1Dおよび動翼3Dの作用について説明する。
ところで、蒸気タービン1Dの運転中、蒸気の一部は凝縮し、前段の動翼(図示省略)から剥離した水滴が静翼7に付着する。この静翼7に付着した水分は、静翼7の後縁で静翼7から剥離して、再び水滴dとなって飛散する。
この水滴dが蒸気の流れに乗りきれなければ、回転する動翼3Dの前縁に衝突し付着する。
この動翼3Dに付着した水分を放置すると、この水分は動翼3Dの後縁で動翼3Dから剥離して再び水滴(図示省略)となって飛散し、後段の静翼(図示省略)へ向かう。このとき、動翼3Dから飛散した水滴の加速のために、蒸気のエネルギーが消費されて損失になる。また、この水滴は、後段の動翼(図示省略)に衝突して当該動翼の制動力として働き、タービン効率を低下させることにもなる。さらに、水滴の衝突は、後段の動翼の前縁の浸食を引き起こす要因にもなる。
そこで、本実施形態に係る蒸気タービン1Dは、動翼3Dに付着した水分を放置することなく、ドレンキャッチャ12へ回収する。
具体的には、蒸気タービン1Dは、その回転にともなう遠心力によって、動翼3Dに付着した水分を水分案内溝27伝いに径方向外側へ移動させて、翼頂部8に至らせる。そして、蒸気タービン1Dは、水分が乗り移る先である水分剥離膜11Dで動翼3Dの素地や、水分案内溝27よりも水分を容易に剥離する。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1Dは、その遠心力で集まる水分が大粒の水滴になる以前、未だ小粒の水滴のうちに飛散させることができる。そして、蒸気タービン1Cは、水分剥離膜11Dで剥離した水分をタービンロータ軸2の径方向外側へ飛散させてドレンキャッチャ12に回収する。
本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、動翼3Dの翼頂部8およびチップカバー9Dの上流側面29に水分剥離膜11Dを備えることによって、動翼3Dに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。特に、蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、動翼3Dの表面を伝って水分剥離膜11Dに到達する水分を順次に剥離することが可能であり、チップカバー9Dに到達する水分が寄せ集まって粒径の大きな水滴になる前に、粒径の小さな水滴の段階で飛び散らせることができる。つまり、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、後段に対する水滴dの影響を排除し、ひいてはタービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、水分剥離膜11Dの下流側端22をドレンキャッチャ12の開口の最下流縁23よりも上流側に配置することによって、水分剥離膜11Dから飛散する水滴dをドレンキャッチャ12で確実に回収することができる。このことも、タービンロータ軸2の回転抵抗を抑え、タービン効率の低下を抑制する。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、動翼3Dの翼頂部8およびチップカバー9Dの上流側面29に水分剥離膜11Dを備える簡便な構造によって、動翼3Dに付着する水分を効率的に飛散させて回収することができる。そして、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dの簡便な構造は、既設製品の改修に極めて有効である。例えば既設の蒸気タービン1Dや動翼3Dに対して、チップカバー9Dを加工したり、動翼3Dを交換したりすることなく、既設の動翼3Dに水分剥離膜11Dを形成することによって、既設製品を改修して本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dにすることができる。
さらに、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、動翼3Dの前縁に水分案内溝27を備えることによって、動翼3Dに付着する水分を翼頂部8へ向かって円滑に導くことができる。これによって、蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、水分がチップカバー9Dへ到達する以前、動翼3Dの表面を伝わる過程で寄せ集まって粒径が大きい水滴になることを防ぎ、粒径の小さな水滴を水分剥離膜11Dから飛び散らせることができる。
なお、本実施形態に係る蒸気タービン1Dおよび動翼3Dは、水分案内溝27に代えて、または加えて第2実施形態に係る水分誘導膜28を備えていても良い。
このように、本実施形態に係る蒸気タービン1、1A、1B、1C、1Dおよび動翼3、3A、3B、3C、3Dによれば、蒸気タービン1、1A、1B、1C、1D内に発生する水分を好適に回収し、タービン効率の低下を防止することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。