JP2013231603A - 加圧水型原子炉用燃料集合体 - Google Patents

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浩明 長野
Mizuki Shoyama
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Abstract

【課題】燃料集合体の中心部と外周部とでウラン濃縮度を変更させることなく経済性に優れていながらも、外周部の出力を充分に抑制することができる加圧水型原子炉用燃料集合体を提供する。
【解決手段】所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体であって、外周部に配置される燃料棒にのみエルビアまたはボロンが添加されている加圧水型原子炉用燃料集合体。所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体において、燃料棒が、外周部から中心部に向かうに従って、エルビアまたはボロンの添加量が少なくなるように配置されている加圧水型原子炉用燃料集合体。
【選択図】図1

Description

本発明は、外周部燃料にエルビアまたはボロンを添加した加圧水型原子炉用燃料集合体に関する。
加圧水型原子炉(以下、原則として「PWR」と記す)に用いられる燃料集合体は、通常、濃縮ウランU235を含む一方で、使用前にはプルトニウムを含んでいない燃料棒から構成されているが、従来の燃料集合体内においては、これらの全燃料棒のウラン濃縮度が均一であるため、集合体曲がり等で水層厚みが増大した場合には、出力が出力ピーキング制限値を超える恐れがあった。
そこで、燃料集合体の外周部燃料棒のウラン濃縮度を、中心部よりも低くすることにより、外周部の出力を抑制して、出力ピーキング制限値を超えないようにすることが提案されている(特許文献1)。
特許4728250号公報
しかしながら、上記の方法の場合、燃料集合体の外周部燃料棒のウラン濃縮度を中心部よりも低くさせているため、燃料集合体におけるウラン235装荷量が低下して、経済性を悪化させるという問題があった。
このため、経済性の悪化を招くことなく、外周部の出力を抑制する技術が求められていた。そして、このような外周部の出力を抑制する技術は、近年の高度燃焼化に伴い集合体曲がりが発生しやすくなることからも、より強く望まれている。
そこで、本発明は、燃料集合体の中心部と外周部とでウラン濃縮度を変更させることなく経済性に優れながら、外周部の出力を充分に抑制することができる加圧水型原子炉用燃料集合体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、請求項1に記載の発明は、
所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体であって、外周部に配置される前記燃料棒にのみエルビアまたはボロンが添加されていることを特徴とする加圧水型原子炉用燃料集合体である。
また、請求項2に記載の発明は、
所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体において、前記燃料棒が、外周部から中心部に向かうに従って、エルビアまたはボロンの添加量が少なくなるように配置されていることを特徴とする加圧水型原子炉用燃料集合体である。
本発明によれば、燃料集合体の中心部と外周部とでウラン濃縮度を変更させることなく経済性に優れながら、外周部の出力を充分に抑制することができる加圧水型原子炉用燃料集合体を提供することができる。
想定した燃料集合体における燃料棒の配置を示す図である。 想定した燃料集合体について相対出力の計算を行った結果を示す図である。 想定した燃料集合体について無限増倍率の計算を行った結果を示す図である。
前記したように、従来は、燃料集合体の外周部燃料棒のウラン濃縮度を、中心部よりも低くすることにより、外周部の出力を抑制して、出力ピーキング制限値を超えないようにしていたため、経済性の悪化を招いていた。
本発明者は、このような経済性の悪化を改善するための検討を行う中で、通常は、内部の燃料棒に添加されるエルビア(Er)やガドリニア(Gd)などの可燃性毒物に着目し、これらの可燃性毒物を外周部の燃料棒のみに添加した場合や、外周部から中心部に向かうに従って可燃性毒物の添加量が少なくなるように配置した場合、ウラン濃縮度を低下させなくても外周部の燃料棒の出力を抑制することができ、出力ピーキング制限値を超えることが回避できると考えた。
そして、可燃性毒物の内でも、エルビアやボロンなどは、ガドリニアに比べて自己遮蔽効果が小さい核種であるため、これらの可燃性毒物が添加された燃料棒は穏やかな燃焼特性を示し、原子炉の運転開始時に臨界状態とすることや燃料の燃焼開始後の出力ピーキングの抑制等の反応度の制御性にも優れていることに着目し、本発明において好ましい可燃性毒物であると考えた。
そして、この考えの下に、図1に示すように燃料棒が配置された燃料集合体を想定し、この燃料集合体を用いた場合の出力分布および無限増倍率の計算を行い、その効果を確認した。
即ち、図1に示す燃料集合体は、いわゆる17×17配置の燃料集合体であって、燃料棒が264本、制御棒用のシンブルが24本、計装用のシンブルが1本格子状に配列されている。なお、図1において、Uはウラン燃料棒であり、Erはエルビア入りのウラン燃料棒であり、GTは制御棒用のシンブル(Guide thimble)であり、ITは計装用のシンブル(Instrument tube)である。図1に示すように、エルビア入りのウラン燃料棒は、燃料集合体の外周部だけに配置されている。
そして、この燃料集合体におけるウランの濃縮度を4.8wt%と仮定して、外周部の燃料棒へのエルビアの添加量を、0.100wt%、0.500wt%、1.000wt%と変化させたと想定したときの、各想定燃料集合体における出力分布と無限増倍率の計算を行った。
図2に、上記した3種類の想定燃料集合体について、燃焼初期の相対出力の計算を行った結果(実線)を示す。なお、図2には、比較のために、特許文献1に示された外周部燃料棒のウランの濃縮度を外周部以外の燃料棒より低くした燃料集合体(比較燃料集合体)について同様の計算を行った結果(点線)も示している。
図2において、横軸はEr(エルビア)の濃度(wt%)であり、縦軸は燃焼初期の相対出力である。また、1は外周部燃料の燃焼初期の平均相対出力であり、2は外周部以外の燃料の燃焼初期の平均相対出力であり、3は出力ピーキング値である。
図2より、想定燃料集合体の場合、エルビアの濃度が増加するにつれて、外周部燃料の相対出力が低下しており、集合体曲がり等で水層厚みが増大した場合でも、出力ピーキング制限値に対して充分な余裕が確保されていることが分かる。
次に、図3に、上記3種類の想定燃料集合体について、無限増倍率の計算を行った結果(1の実線で示す)を示す。なお、図3には、図2の場合と同様に、比較燃料集合体における計算結果(1の点線で示す)も、比較のために示している。
また、図3には、想定燃料集合体と比較燃料集合体との反応度差、即ち、想定燃料集合体の無限増倍率と比較燃料集合体の無限増倍率の差を比較燃料集合体の無限増倍率で割った値(ΔK/K)も併せて示している(2の一点鎖線で示す)。
なお、図3において、横軸は集合体燃焼度(GWd/t)であり、左の縦軸は無限増倍率(Kinf)であり、右の横軸は反応度差(pcm)である。
図3より、反応度差に着目すると、燃焼度が小さい燃焼初期においては比較燃料集合体の無限増倍率の方が大きいため反応度差がマイナスとなっているが、燃焼度が増加するにつれて想定燃料集合体の無限増倍率が大きくなり、燃焼度約20GWd/tで反応度差が逆転している。そしてその後は、燃焼度が増加するに従って想定燃料集合体の無限増倍率が大きくなっており、燃焼末期では想定燃料集合体の方が経済性に優れていることが分かる。
なお、上記においては、想定燃料集合体を17×17配置として説明したが、燃料集合体の配置はこれに限定されることはなく、他の配置の燃料集合体の場合であっても、同様の効果を得ることができる。
また、上記においては、外周部に配置される燃料棒にのみエルビアが添加されているとして説明したが、外周部から中心部に向かうに従ってエルビア添加量が少なくなるように燃料棒を配置した場合も、同様の効果を得ることができる。
そして、上記においては、可燃性毒物としてエルビアを用いているが、ボロンを用いた場合も、同様の効果を得ることができる。
以上より、本発明を適用することによって、燃料集合体の中心部と外周部とでウラン濃縮度を変更させることなく経済性に優れながら、外周部の出力を充分に抑制することができることが分かる。
U ウラン燃料棒
Er エルビア入りのウラン燃料棒
GT 制御棒用のシンブル
IT 計装用のシンブル

Claims (2)

  1. 所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体であって、外周部に配置される前記燃料棒にのみエルビアまたはボロンが添加されていることを特徴とする加圧水型原子炉用燃料集合体。
  2. 所定のウラン濃度を有する複数の燃料棒から構成される加圧水型原子炉用燃料集合体において、前記燃料棒が、外周部から中心部に向かうに従って、エルビアまたはボロンの添加量が少なくなるように配置されていることを特徴とする加圧水型原子炉用燃料集合体。
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Citations (5)

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