JP2013230748A - 車両制御システム - Google Patents

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Abstract

【課題】車両制御システムにおいて、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときでも良好な走行性を維持することを可能にすることである。
【解決手段】車両制御システム10は、車体部12とシフトレバー76と制御装置50と推奨ギヤ段を表示する表示部80を備える。車体部12には、エンジン20と後輪16側の差動装置40との間に設けられる第1断接機構26と、前輪14側の差動装置44と前輪14との間に設けられる第2断接機構32が設けられる。制御装置50は、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替の際の第1断接機構26と第2断接機構32の接続によって生じる車速低下代を算出し、車速低下代に対応する推奨ギヤ段を求めて表示部80に表示してユーザに報知する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両制御システムに係り、特に2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替える制御を行う車両制御システムに関する。
車両の駆動状態として2輪駆動モードと4輪駆動モードとを有し、車両の走行状態等に応じてこの2つの駆動モードを切り替える車両が知られている。駆動モードの切替の際には、駆動力伝達状態が変化する。
例えば、特許文献1には、2輪駆動モードの場合は前輪を駆動し、4輪駆動モードの場合には後輪への駆動力の配分を電子制御カップリングで制御する4輪駆動車用動力伝達装置において、2輪駆動時に駆動力に関係しない部分が回転していることでフリクションロスがあることを指摘している。ここでは、FF車と呼ばれるフロントエンジンフロント駆動において、前輪差動装置、後輪差動装置、前輪と後輪の間の駆動力伝達部を備え、前輪差動装置と駆動力伝達部との間に第1断接機構、後輪差動装置と右後輪との間に第2断接機構を設け、4輪駆動モードでは、第1断接機構も第2断接機構も接続状態とし、2輪駆動モードでは第1断接機構も第2機構も切断状態とすることが述べられている。
本発明に関連する技術として、特許文献2には、オートマチックトランスミッション(AT)は変速線図等に基づいて最適な変速段が形成され、マニュアルトランスミッション(MT)では運転者の意思に沿った変速段が形成されるが、MT車においても走行中に最適なシフト位置を表示可能にする最適シフト位置表示装置が提案されていると述べられている。
また、特許文献3には、自動車の2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替のときのトルク伝達経路切替方法が述べられている。ここでは、自動車の走行中に2輪駆動モードから4輪駆動モードへ切り替えるとき、最初に電気モータによってプロペラシャフトの回転が所定速度に上昇するように駆動し、その後、ディファレンシャルおよびプロペラシャフトを備える補助ドライブラインをエンジンおよび後輪へ結合するように第1クラッチ手段と解除式トルク伝達手段とを作動させている。
特開2011−79421号公報 特開2009−248810号公報 特開2007−223588号公報
2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときは、従駆動輪側に駆動力を伝達する駆動力伝達部が停止している。したがって、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えると、従駆動系の回転速度を主駆動系の回転速度に同期させて引き上げるために、走行抵抗が増加し、車速が低下することが生じ得る。特に低温時では、潤滑油の粘度が高くなっているので、走行抵抗の増加が顕著となり、車速の低下傾向が大きくなる。
車速が低下すると、いままでの変速比が必ずしも最適でなくなるときがある。マニュアルトランスミッションを用いる車両では、特許文献2で述べられているように、走行中に最適なシフト位置を表示するものがあるが、そのような車両では、車速の低下によって、表示していたシフト位置が最適でなくなり、そのシフト位置のままでは走行性が低下する。
本発明の目的は、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときでも良好な走行性を維持することを可能にする車両制御システムを提供することである。他の目的は、低温下において2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときでも良好な走行性を維持することを可能にする車両制御システムを提供することである。さらに他の目的は、マニュアルトランスミッションを用い、ユーザに推奨の変速比を知らせる車両において、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときに、推奨の変速比が変わったことをユーザに知らせることを可能にする車両制御システムを提供することである。以下の手段は、これらの目的の少なくとも1つに貢献する。
本発明に係る車両制御システムは、駆動源から従駆動輪への駆動力伝達部に関連して設けられる少なくとも2つの断接機構であって、車両が4輪駆動モードのときは駆動力伝達状態を接続状態とし、2輪駆動モードのときは駆動力伝達状態を切断状態とする断接機構と、ユーザに推奨変速比を報知する報知部と、車両が2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときに車速を低速側に補正し、その補正に基づいて推奨変速比を求める制御部と、を備えることを特徴とする。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、制御部は、断接機構を接続状態とする際の従駆動輪側の回転速度を主駆動輪側の回転速度に同期させることによる走行抵抗の増加に基づいて車速を低速側に補正することが好ましい。
また、本発明に係る車両制御システムにおいて、従駆動輪側の駆動力伝達部における潤滑用媒体の温度を検出する媒体温度検出部を備え、制御部は、検出された潤滑用媒体の温度に基づいて車速を低速側に補正することが好ましい。
上記構成により、車両制御システムは、車両が2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときに車速を低速側に補正し、その補正に基づいて推奨変速比を求め、ユーザにその推奨変速比を報知する。これにより、推奨の変速比が変わったことをユーザに知らせることが可能になる。
また、車両制御システムにおいて、断接機構を接続状態とする際の従駆動輪側の回転速度を主駆動輪側の回転速度に同期させることによる走行抵抗の増加に基づいて車速を低速側に補正する。この補正に基づいて推奨変速比を算出するので、ユーザがこの推奨変速比を利用することで、2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときでも良好な走行性を維持することが可能となる。
また、車両制御システムにおいて、潤滑用媒体の温度に基づいて車速を低速側に補正するので、低温下において2輪駆動状態から4輪駆動状態に切り替えるときでも良好な走行性を維持することが可能になる。
本発明に係る実施の形態において、エンジンが車両の前輪側に配置され、後輪が主駆動輪であるFR車両についての車両駆動システムの構成図である。 図1の構成について、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときの手順を説明するフローチャートである。 本発明に係る実施の形態において、車速と推奨ギヤ段の関係の例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、推奨変速比をユーザに示す表示の例を示す図である。 本発明に係る実施の形態において、エンジンが車両の前輪側に配置され、前輪が主駆動輪であるFF車両についての車両駆動システムの構成図である。 図5の構成について、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときの手順を説明するフローチャートである。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、駆動源であるエンジンが前輪側に設けられるFR車とFF車の場合を説明するが、エンジンの配置位置は前輪側でなくても構わない。また、駆動源としてエンジンを述べるが、2輪駆動モードと4輪駆動モードとを有する車両であればよい。場合によっては、エンジンと回転電機を搭載するハイブリッド車両でもよく、回転電機のみが駆動源となる車両であってもよい。
また、駆動源から従駆動輪への駆動力伝達部に関連して2つの断接機構が設けられる構成を説明するが、断接機構の数は、これ以上であっても構わない。また、断接機構として、キー式の同期係合機構を述べるが、これ以外の構造で2つの軸の間の回転速度の同期を取りながら係合とその解除が行われるものであればよい。例えば、噛みあいクラッチ構造、ドッグクラッチ構造等であってもよい。
以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
図1は、車両制御システム10の構成を示す図である。車両制御システム10は、車体部12と、操作部であるアクセル70、ブレーキ72、シフトレバー76と、これらの要素の動作を全体として制御する制御装置50を含んで構成される。車体部12は、前輪14と後輪16を有し、駆動源としてのエンジン20を備える。図1で、車両の前方側を矢印とFの文字で示したが、この車両は、エンジン20が車体部12の前輪14の側に配置され、主駆動輪が後輪16である構成で、フロント(F)エンジン・後輪(R)駆動のFR車と呼ばれるものである。また、シフトレバー76を備えるので、マニュアルトランスミッション(MT)によって変速を行う構成で、その観点からは、MT車と呼ばれるものである。
車体部12は、エンジン20の駆動力を前輪14、後輪16に伝達するために用いられる駆動力伝達部を備える。駆動力伝達部としては、クラッチ22と、変速機構24と、後輪16側の差動装置40と、前輪14側の差動装置44と、エンジン20と後輪16側の差動装置40との間に設けられる第1断接機構26と、後輪16側から前輪14側に駆動力を伝達するフロント側のプロペラシャフト42と、前輪14側の差動装置44と前輪14との間に設けられる第2断接機構32を含んで構成される。
第1断接機構26と第2断接機構32は、車両の駆動モードを4輪駆動モードと2輪駆動モードの間で切り替えるために設けられる。2輪駆動モードは、主駆動輪のみで車両を駆動する駆動モードで、図1の場合、後輪16のみで車両の駆動が行われる。4輪駆動モードは、主駆動輪と共に従駆動輪も用いて車両を駆動する駆動モードで、図1の場合、後輪16と共に前輪14も用いて車両の駆動が行われる。
4輪駆動モードのときは、第1断接機構26も第2断接機構32も接続状態とされ、エンジン20からの駆動力は、主駆動輪である後輪16と、従駆動輪である前輪14に伝達される。2輪駆動モードのときは、第1断接機構26も第2断接機構32も切断状態とされ、従駆動輪である前輪14にはエンジン20からの駆動力が伝達されない。第1断接機構26と第2断接機構32の詳細については後述する。
このように、図1の車両は、2輪駆動モードと4輪駆動モードを有し、FR車の構造を有するMT車である。
エンジン20は、内燃機関である。クラッチ22は、エンジン20の出力軸に設けられ、エンジン20の駆動力をクラッチ22以降の駆動力伝達部に伝達または遮断する機能を有する。クラッチ22の動作は、図示されていないクラッチペダルをユーザが操作することで行われる。クラッチ22の操作は、シフトレバー76をニュートラルポジションにして行われる。なお、シフトレバー76がニュートラルポジションの位置にあるか否かは、シフトレバー76に設けられるポジション位置検出センサで検知される。
変速機構24は、車両の走行状態に応じて、エンジン20の回転数と出力トルクを変更する機構である。具体的には、前進と後進の切替、1速から6速の間の変速比の切替を行うことができる。1速はエンジン20の回転数をそのまま出力するもので、変速比が最大で、変速機構からの出力トルクが最大となる。2速、3速、4速、5速、6速となるにつれて、変速比が小さくなり、変速機構24の出力トルクが順に小さくなる。6速は、変速比が最小で、変速機構24の出力トルクが最小となる。これを車速との関係でいえば、車速が低速のときに1速側の変速比が適し、車速が高速のときに6速側の変速比が適していることになる。なお、変速段を1速から6速としたが、これは例示である。これ以外の変速段の構成としてもよい。例えば、1速から4速の構成としてもよく、1速から5速の構成としてもよく、1速から7速等の構成としてもよい。
変速機構24の変速比の切替は、シフトレバー76をユーザが操作することで行われる。例えば、5速で走行中に車速が下がってくるときは、加速しやすいように変速比を上げて、5速から4速等にシフトレバー76の位置を変更する。
後輪16側の差動装置40は、後輪16側に設けられる差動歯車機構で、リヤ側のディファレンシャルギヤを略して、リヤ側のデフと呼ばれる。前輪14側の差動装置44は、前輪14側に設けられる差動歯車機構で、フロント側のデフと呼ばれる。
第1断接機構26は、制御装置50の制御の下で、変速機構24と後輪16側の差動装置40の間を接続または切断する機能を有する。第1断接機構26としては、円滑な変速操作を行うために用いられる同期係合機構を利用することができる。同期機構とは、変速の際に、同期側と被同期側の結合スプラインの回転速度を摩擦力によって等しくし、円滑な変速操作を可能とするものである。図1では、カップリングスリーブ28とシンクロリング30を含むキー式の同期係合機構が示されている。
キー式の同期係合機構は、カップリングスリーブ28とシンクロリング30の他に、カップリングスリーブ28と噛みあうために外周にスプラインを切ったシンクロリングを被同期歯車の摩擦面に押し付けるキーと、キーをカップリングに押し付けるためのスプリングを含んで構成される。カップリングスリーブ28とシンクロリング30が軸方向に離れているときは、第1断接機構26が切断状態にある。カップリングスリーブ28がシンクロリング30側に移動することで、第1断接機構26を接続状態とすることができる。
接続状態とするときは、カップリングスリーブ28はキーと共に後輪16側に設けられる被同期歯車の方向に移動し、キーは、シンクロリング30を被同期歯車の摩擦面に接触するまで押す。そして、シンクロリング30が被同期歯車のテーパ面に接触すると、シンクロリング30と被同期歯車の間に相対的回転があるので、シンクロリング30は回転して、カップリングスリーブ28とシンクロリング30が向かい合う位置になる。さらにカップリングスリーブ28が移動すると、カップリングスリーブ28とシンクロリング30同士が接触し、これによってシンクロリング30が被同期歯車の摩擦面を押し、摩擦トルクが発生して、回転速度の同期が行われることになる。同期が終了すると、摩擦トルクが消滅し、カップリングスリーブ28がシンクロリング30を押し分けて、被同期歯車と噛みあって係合が行わる。これによって、第1断接機構26は、変速機構24側と、後輪16側の差動装置40の間を接続する。
フロント側のプロペラシャフト42は、第1断接機構26によって変速機構24と後輪16側の差動装置44の間が接続状態とされるときに、後輪16側の駆動力を前輪14側の差動装置44に伝達する駆動力伝達軸である。
第2断接機構32も第1断接機構26と同様の同期係合機構で、制御装置50の制御の下で、前輪14側の差動装置44と前輪14との間を接続または切断する機能を有する。
温度センサ34は、前輪14側の差動装置44と第2断接機構32を潤滑する潤滑油の温度θFを検出する油温検出手段である。潤滑油の温度θFを検出するのは、第2断接機構32が接続状態となったときの走行抵抗の増加の程度を監視するためである。温度センサ34が検出した潤滑油の温度θFは、適当な信号線を介して制御装置50に伝送される。
すなわち、第2断接機構32が接続状態となると、いままで停止状態にあった前輪14側の差動装置44が回転するので、回転抵抗が発生し、そのために車両の全体としての走行抵抗が増加する。車両の全体としての走行抵抗が増加すると、車速が低下する。すなわち、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えると、車速が低下して、走行性が低下する。潤滑油の温度θFが低いと、その粘度が高く、前輪14側の差動装置44の回転抵抗がより高くなる。したがって、潤滑油の温度θFが低温であるほど、車速低下の程度が大きくなり、車両として走行性がより低下することになる。
図1において、アクセル70は、ユーザが車両の加速を要求するときに踏み込まれる加速操作手段である。ブレーキ72は、ユーザが車両の速度の低下を要求するときに踏み込まれる減速操作手段である。
シフトレバー76は、ユーザが変速機構24における変速比を変更したいときに操作される変速操作手段である。シフトレバー76は、後進位置(R)と、1速位置(1)、2速位置(2)、3速位置(3)、4速位置(4)、5速位置(5)と、ニュートラル位置(N)の間でシフト位置を変更できる。シフト位置の情報は、適当な信号線を介して、制御装置50に伝送される。
制御装置50は、車両制御システム10を構成する各要素の動作を全体として制御する機能を有する。ここでは特に、2輪駆動モードと4輪駆動モードの切替の際に、車速低下によって生じる走行性の低下を抑制することができる制御を行う機能を有する。かかる制御装置50は、車両の搭載に適したコンピュータで構成することができる。
制御装置50は、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替が開始する状態であるか否かを判断する2輪・4輪切替判断部52と、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替が開始する状態であると判断されるときに第1断接機構26を切断状態から接続状態とする第1断接機構接続部54と、同様に第2断接機構32を切断状態から接続状態とする第2断接機構接続部56と、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替によって生じる車速低下の大きさの程度である車速低下代(しろ)を算出する車速低下代算出部58と、現在の車速に適した変速比を有する変速ギヤ段をユーザに知らせる推奨ギヤ段報知部60を含んで構成される。したがって、車速低下代によって推奨ギヤ段が変更になるときは、推奨ギヤ段報知部60がその変更をユーザに報知する
制御装置50に接続される表示部80は、推奨ギヤ段報知部60の報知内容を表示するパネルで、推奨ギヤ段表示画面82を有する。
制御装置50の上記の各機能は、ソフトウェアを実行することで実現でき、具体的には、2輪・4輪切替プログラムを実行することで実現できる。かかる機能の一部をハードウェアで実現してもよい。
上記構成の作用、特に制御装置50の各機能の内容について、図2から図4を用いて詳細に説明する。図2は、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときの手順を説明するフローチャートである。各手順は、2輪・4輪切替プログラムの各処理手順に対応する。
図2において、初期状態は2輪駆動モードの状態である。特に、2輪モードの中でも、エンジン20が停止し、第1断接機構26と第2断接機構32は共に切断状態で、シフトレバー76のシフト位置がニュートラル位置で、車両は惰性で走行しているフリーラン状態とする(S10)。この状態は、減速エコラン・ディスコネクト状態とも呼ばれる。減速エコランとは惰性で減速しながら走行していることを示し、ディスコネクトとは、主駆動輪である後輪16と従属輪である前輪14との間が、駆動力伝達に関し切断状態にあることを示す。S10の状態にあるか否かは、シフトレバー76の位置がニュートラル位置であるか否かで判断できる。これにエンジン20が停止状態か否かの条件を加えてもよい。
この初期状態が継続しているときに、例えば、車速が低下し、あるいは路面の状態が変化して、減速エコラン・ディスコネクト状態から4輪駆動モードに復帰させたいとユーザが考えると、ユーザは、まずクラッチ22を切断状態とする(S12)。これは後述するシフト操作(S28)に備えるためであるが、また、4輪駆動モードに復帰させたいとするユーザの意思を示すものである。なお、S12を破線枠で示したが、これは制御装置50に実行される処理手順ではなく、ユーザによって実行される処理手順であることを表したものである。
このユーザの意思は、初期状態の継続の下でクラッチ22が切断状態となったことで確認できる。したがって、S10の状態であるか否かの判断と、S12の状態であるか否かの判断を合わせることで、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替が開始する状態であるか否かが判断される。すなわち、シフトレバー76の位置がニュートラルで、クラッチ22が切断されたときに、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替が開始する状態であると判断できる。この判断は、制御装置50の2輪・4輪切替判断部52の機能によって実行される。
S10の状態の下でS12が実行されると、2輪駆動モードから4輪駆動モードへの切替が開始する状態であると判断されると、停止しているエンジン20が始動される(S14)。もっとも、S10のエコラン減速・ディスコネクト状態は、シフトレバー76の位置がニュートラル位置にあればよく、そのときにエンジン20が動作していても構わないので、エンジン20が既に動作中であれば、S14の処理は実行されない。
そして、第1断接機構26の同期と係合が行われ、第1断接機構26が接続状態とされる(S16)。この処理手順は、制御装置50の第1断接機構接続部54の機能によって実行される。具体的には、第1断接機構26のカップリングスリーブ28をシンクロリング30の側に移動することが行われる。これによって、後輪16側の回転速度と、フロント側のプロペラシャフト42の回転速度と、前輪14側の差動装置44であるフロント側のデフの回転速度との間の同期がとられる(S18)。この処理手順は、制御装置50の第2断接機構接続部56の機能によって実行される。そして、第2断接機構32の同期と係合が行われ、第2断接機構32が接続状態となる(S20)。このようにして、第1断接機構26と第2断接機構32とが共に接続状態となる(S22)。
S16,S18,S20,S22と平行して、フロント駆動系の同期によって走行抵抗が増加し、車速が低下する程度を算出する(S24)。この処理手順は、制御装置50の車速低下代算出部58の機能によって実行される。S24の手順は、第1断接機構26と第2断接機構32を接続状態とする際に、従駆動輪である前輪14側の回転速度を主駆動輪である後輪16側の回転速度に同期させることによる走行抵抗の増加に基づいて車速を低速側に補正するものである。
第1断接機構26と第2断接機構32を接続状態としたときの走行抵抗の増加は、車速をパラメータとして、予め求めておくことができる。例えば、車速を与えることで、車速低下代が出力されるようなマップ、ルックアップテーブル、計算式等を予め準備し、制御装置50の適当なメモリに記憶しておき、必要に応じ読み出すものとできる。
車速を低速側に補正する際に、温度センサ34が検出した潤滑油の温度θFが考慮される。すなわち、潤滑油の温度θFが低いほど、車速をより低速側に補正する。このように潤滑油の温度θFの影響を考慮することで、車速低下代の算出精度を向上させることができる。潤滑油の温度θFと、車速の補正量の関係は、車速をパラメータとして、予め求めておくことができる。予め求めておいた関係を利用して、現在の車速と、現在の潤滑油の温度θFとに基づいて、車速の低速側への補正量を求めることができる。
なお、車速が低下する程度を、図2では「車速低下代(しろ)」として示した。車速低下分としなかったのは、走行抵抗の増加に対応する車速低下によって推奨ギヤ段の変更がどのように変わるかの見定めをする程度の精度でよく、厳密な車速低下値を求めなくてもよいことがあるからである。
車速低下代が算出されると、その車速低下代に対応する推奨ギヤ段が求められる。その様子を図3に示す。図3の縦軸は車速で、横軸は推奨ギヤ段である。図3で斜線を付した枠の範囲が、該当する推奨ギヤ段に適した車速の範囲である。図3の紙面上で左から6速、5速、4速、3速、2速、1速のギヤ段に適した車速の範囲が示される。この順で、適した車速の範囲が低速側に移る。
図3の車速と推奨ギヤ段との関係は、車両の仕様に基づいて予め定めておくことができる。制御装置50の推奨ギヤ段報知部60は、図3に示す関係に基づいて、車両の現在の車速に応じた推奨ギヤ段を求め、表示部80に表示する。これによって、MT車のユーザは、現在の車両の走行状態に適した推奨ギヤ段を知ることができ、その表示を参考としてシフトレバー76の操作を行うことができる。
図3に示される2本の破線は、高速側の方が、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替える直前で、第1断接機構26と第2断接機構32が共に切断状態のときの車速であり、低速側の方が、第1断接機構26と第2断接機構32が共に接続状態となったとして算出される車速である。この2つの破線の間の車速の差が、S24で算出される車速低下代に相当する。
図3に示されるように、第1断接機構26と第2断接機構32が共に切断状態のときの車速に適した推奨ギヤ段は5速と6速であり、第1断接機構26と第2断接機構32が共に接続状態のときの車速に適した推奨ギヤ段は4速と5速である。このようにして、S24で算出される車速低下代に対応する推奨ギヤ段が求められる。図3から分かるように、各ギヤ段に適した車速には幅があるので、S24で算出される車速低下代がゼロでなくても、推奨ギヤ段の変更がない場合があり得る。
再び図2に戻り、S24で車速低下代が算出された結果、推奨ギヤ段に変更があるときは、推奨ギヤ段の変更が報知される(S26)。この処理手順は、制御装置50の推奨ギヤ段報知部60の機能によって実行される。具体的には、表示部80の推奨ギヤ段表示画面82の内容が変更される。推奨ギヤ段に変更がないときは、そのままの表示が維持される。
図4は、推奨ギヤ段の変更の報知の様子を示す図である。図4の左側の推奨ギヤ段表示画面82は、推奨ギヤ段が5速または6速であることが示されている。これは、図3において、第1断接機構26と第2断接機構32が共に切断状態のときの車速に適した推奨ギヤ段に対応する。図4の右側の推奨ギヤ段表示画面84は、推奨ギヤ段が4速または5速であることが示されている。これは、図3において、第1断接機構26と第2断接機構32が共に接続状態のときの車速に適した推奨ギヤ段に対応する。
再び図2に戻り、このようにして、推奨ギヤ段が表示部80に表示されてユーザに報知されると、ユーザは、この表示を参考として、シフトレバー76を操作する(S28)。上記の場合、ニュートラル位置から4速の位置または5速の位置とする。これにより、4輪駆動モードに復帰したときに、復帰時の車速により適したギヤ段を用いることができる。そして、シフト操作が終わった後、クラッチ22を係合状態に戻す(S30)。このようにしてエンジン20の出力が変速機構24に伝達され、さらに後輪16と前輪14に伝達されて4輪駆動モードとなる。
上記では、車両がFR車であるとして説明した。図5は、車両がFF車であるときの車体部13の構成を示す図である。FF車の場合は、エンジン21が前輪15の側に配置され、前輪15が主駆動輪となる。ここでは、前輪15の側にクラッチ23、変速機構25、前輪15側の差動装置45、第2断接機構33が設けられる。後輪17側には後輪17側の差動装置41、第1断接機構27が設けられる。前輪15側と後輪17側の間には、リヤ側のプロペラシャフト43が配置される。また、後輪17側の差動装置41と第2断接機構27の潤滑油の温度θRを検出する温度センサ35が後輪17側に設けられる。それぞれの要素の内容は、図1において対応する各要素の内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。
図6は、図2に対応するもので、図5の構成のFF車の場合における2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときの手順を説明するフローチャートである。図2と比較して、S25における車速低下代算出の手順と、S19におけるプロペラとデフの同期の手順がそれぞれフロント側からリヤ側となっているところが相違する。その他の手順の内容は、図2で説明したものと同じである。
このように、FF車の場合も、FR車の場合と同様に、第1断接機構27と第2断接機構33の接続の際に生じる車速低下代を算出する。そのときに、リヤ側の潤滑油の温度θRを考慮する。そして、算出された車速低下代に応じた推奨ギヤ段をユーザに報知する。
これによって、マニュアルトランスミッションを用い、ユーザに推奨の変速比を知らせる推奨ギヤ段報知の機能を有する車両において、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときに、推奨の変速比が変わったことをユーザに知らせることが可能になる。また、低温下において2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときでも良好な走行性を維持することが可能になる。このようにして、2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときでも良好な走行性を維持することが可能となる。
本発明に係る車両制御システムは、2輪駆動モードと4輪駆動モードを有するMT車に利用される。
10 車両制御システム、12,13 車体部、14,15 前輪、16,17 後輪、20,21 エンジン、22,23 クラッチ、24,25 変速機構、26,27 第1断接機構、28 カップリングスリーブ、30 シンクロリング、32,33 第2断接機構、34,35 温度センサ、40,41 後輪側の差動装置、42 フロント側のプロペラシャフト、43 リヤ側のプロペラシャフト、44,45 前輪側の差動装置、50 制御装置、52 2輪・4輪切替判断部、54 第1断接機構接続部、56 第2断接機構接続部、58 車速低下代算出部、60 推奨ギヤ段報知部、70 アクセル、72 ブレーキ、76 シフトレバー、80 表示部、82,84 推奨ギヤ段表示画面。

Claims (3)

  1. 駆動源から従駆動輪への駆動力伝達部に関連して設けられる少なくとも2つの断接機構であって、車両が4輪駆動モードのときは駆動力伝達状態を接続状態とし、2輪駆動モードのときは駆動力伝達状態を切断状態とする断接機構と、
    ユーザに推奨変速比を報知する報知部と、
    車両が2輪駆動モードから4輪駆動モードに切り替えるときに車速を低速側に補正し、その補正に基づいて推奨変速比を求める制御部と、
    を備えることを特徴とする車両制御システム。
  2. 請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
    制御部は、
    断接機構を接続状態とする際の従駆動輪側の回転速度を主駆動輪側の回転速度に同期させることによる走行抵抗の増加に基づいて車速を低速側に補正することを特徴とする車両制御システム。
  3. 請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
    従駆動輪側の駆動力伝達部における潤滑用媒体の温度を検出する媒体温度検出部を備え、
    制御部は、検出された潤滑用媒体の温度に基づいて車速を低速側に補正することを特徴とする車両制御システム。
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