JP2013227563A - 芳香族エーテルを含む相変化インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】非晶質構成成分、結晶性材料、および場合により着色剤を含む相変化インク組成物であって、コーティングされた紙基材での印刷を含むインクジェット印刷に好適である組成物を提供する。
【解決手段】非晶質構成成分;以下の構造を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分を含む相変化インクであって:

式中、RおよびRは、(1)飽和または不飽和の炭素原子1〜40のアルキル基、(2)アルキル部が炭素原子4〜40のアリールアルキル基、(3)炭素原子3〜40を有する芳香族基、および、これらの群から選択されるが、ただし、式中、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1であり;ここでこの相変化インクは、15秒未満で結晶化する、インク。
【選択図】なし

Description

本実施形態は、室温にて固体であり、溶融インクが基材に適用される高温においては溶融状態であることを特徴とする相変化インク組成物に関する。これらの相変化インク組成物は、インクジェット印刷のために使用できる。本実施形態は、非晶質構成成分、結晶性材料、および場合により着色剤を含む新規な相変化インク組成物、およびそれらの製造方法を対象とする。結晶性材料は、芳香族エーテル化合物を含む。
本明細書に例示される実施形態によれば、コーティングされた紙基材上での印刷を含むインクジェット印刷に好適な結晶性芳香族エーテル材料を含む新規な相変化インク組成物を提供する。
特に、本実施形態は、非晶質構成成分および以下の構造を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分を含む相変化インクを提供し:
式中、RおよびRは、独立に、(i)線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル基であることができるアルキル基であって、ここでこのアルキル基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約1〜約40個の炭素原子を有するアルキル基;(ii)置換または非置換アリールアルキル基であることができるアリールアルキル基であって、ここでこのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であることができ、このアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかには場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約4〜約40個の炭素原子を有するアリールアルキル基;および(iii)置換または非置換芳香族基であることができる芳香族基であって、ここでこの置換基は、線状または分岐状、環状または非環状アルキル基であることができ、ここで芳香族基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、約3〜約40個の炭素原子を有する芳香族基;およびこれらの混合物からなる群から選択されるが、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1である;
ここでこの相変化インクは、15秒未満で結晶化する。
さらなる実施形態において、非晶質構成成分;および以下の構造を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分である結晶性構成成分を含む相変化インクが提供され:
式中、RおよびRのそれぞれは、独立に、1つ以上の低級アルキル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換されたアリールであり;pは0または1であり;mは0〜3であり;n0〜3である。
他の実施形態において、
非晶質構成成分であって、この非晶質構成成分が、式
を有するクエン酸または酒石酸のエステルを含み、式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であり、さらにここでこの酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される非晶質構成成分;式
を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分であって、式中、RおよびRは、独立に、(i)線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル基であることができるアルキル基であって、ここでこのアルキル基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約1〜約40個の炭素原子を有するアルキル基;(ii)置換または非置換アリールアルキル基であることができるアリールアルキル基であって、ここでこのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であることができ、このアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかには場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約4〜約40個の炭素原子を有するアリールアルキル基;および(iii)置換または非置換芳香族基であることができる芳香族基であって、ここでこの置換基は、線状、分岐状、環状または非環状アルキル基であることができ、ここで芳香族基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、約3〜約40個の炭素原子を有する芳香族基;およびこれらの混合物からなる群から選択されるが、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1である結晶性構成成分を含む相変化インクが提供される。
図1は、本実施形態に従う、相変化特性を確認する4−(ベンジルオキシ)フェノールの示差走査熱量測定(DSC)データである(DSCデータは、Q1000示差走査熱量計(TA Instruments)にて、10℃/分の速度にて−50から、200を経て−50℃までで得られた)。 図2は、本実施形態に従って製造された相変化インクサンプルのDSCデータである(DSCデータは、Q1000示差走査熱量計(TA Instruments)にて、10℃/分の速度にて−50から、200を経て−50℃までで得られた)。 図3は、本実施形態に従って製造された相変化インクサンプルのレオロジーデータを例示するグラフである。 図4は、開示の実施形態に従う結晶化オンセットから結晶化終了までの結晶形成の画像を示すTROMプロセスを例示する。
すべてのレオロジー測定は、RFS3レオメータ(TA instruments)にて、25mm平行プレートを用いて1Hzの周波数で行った;使用された方法は、5℃の温度ステップにて、各温度の間は120秒の浸漬(平衡)時間で、1Hzの一定周波数にて高温から低温に温度を一掃させた。
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、脂肪族炭化水素基を指す。アルキル部分は、アルケンまたはアルキン部分を含有しないことを意味する「飽和アルキル」基であってもよい。アルキル部分はまた、アルケンまたはアルキン部分を少なくとも1つ含有することを意味する「不飽和アルキル」部分であってもよい。「アルケン」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素二重結合からなる基を指し、「アルキン」部分は、少なくとも2つの炭素原子および少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる基を指す。アルキル部分は、飽和または不飽和であるかに拘わらず、分岐状、直鎖または環状であってもよい。
アルキル基は、1〜40個の炭素原子を有していてもよい(それが本明細書で現れるときはいつでも、数値範囲、例えば「1〜40」は、所与の範囲にある各整数を指す、例えば「1〜40個の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などから、40個を含む炭素原子までからなってもよいことを意味するが、本定義はまた、数値範囲が指定されていない「アルキル」という用語の発生もカバーする。アルキル基はまた、1〜10個の炭素原子を有する中サイズアルキルであってもよい。アルキル基はまた、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルであってもよい。本発明の化合物のアルキル基は、「C−Cアルキル」または同様の指定として指定されてもよい。例にすぎないが、「C−Cアルキル」は、アルキル鎖に1から4個の炭素原子が存在すること、すなわちアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、イソ−ブチル、sec−ブチル、およびt−ブチルからなる群から選択されることを示す。
アルキル基は、置換または非置換であってもよい。置換されている場合、水素の他、いずれかの基は置換基であることができる。置換されている場合、置換基は、1つ以上の基であり、個々におよび独立に、アルキル、シクロアルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、シアノ、ハロ、およびモノ−およびジ−置換されたアミノ基を含むアミノから選択されるが、これらの例示リストに限定されない。典型的なアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、三級ブチル、ペンチル、ヘキシル、エテニル、プロペニル、ブテニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。各置換基は、さらに置換されてもよい。
本明細書で使用される場合、「アリール」という用語は、単独または組み合わせて、1つ、2つまたは3つの環を含有する炭素環式芳香族システムを意味し、ここでこうした環は、ペンダント様式で一緒に結合されてもよく、または縮合されてもよい。「アリール」という用語は、芳香族ラジカル、例えばベンジル、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびビフェニルを包含する。
本明細書で使用される場合、「アリールアルキル」という用語は、単独または組み合わせて、アルキル基を通して親分子部分と結合するアリール基を指す。
相変化インク技術は、多くの市場に対して印刷能および顧客基盤を拡大し、印刷用途の多様性は、プリントヘッド技術、プリントプロセスおよびインク材料の有効な集積によって促進される。相変化インク組成物は、室温で固体であり、溶融インクが基材に適用される高温において溶融状態であることを特徴とする。上記で議論されたように、現在のインク選択肢は多孔質紙基材について成功しているが、これらの選択肢はコーティングされた紙基材については必ずしも満足するものではない。
以前には、固体インク配合物における結晶性および非晶質小分子化合物の混合物を用いることにより、堅牢性インクを提供し、特にコーティングされた紙上に堅牢性の画像を示す固体インクを提供することが見出された。(米国特許出願整理番号13/095、636)。こうした相変化インクを用いて製造されたプリントサンプルは、現在利用可能な相変化インクに比べてスクラッチ、曲げおよび曲げオフセットに対して良好な堅牢性を示す。
しかし、本発明者らは、多くの場合、結晶性および非晶質材料で構成され、任意の染料着色剤を有する混合物が、溶融状態から基材上に印刷される場合に徐々に固化することを見出した。このように徐々に固化するインクは、高速印刷環境、例えば毎分100フィートよりも速い速度での印刷が必要とされるプロダクション印刷には不向きである。インクの固化は、冷却時のインク中の結晶性構成成分の結晶化によるものである。
本発明者らは、結晶性および非晶質構成成分で構成された組成物の迅速な結晶化は、組成物の固有の特性ではないことを見出した。
本実施形態は、迅速に結晶化する一部の結晶性エーテル材料および非晶質材料を含む新規な相変化インク組成物を提供し、そのためコーティングされた紙上での印刷を含む高速インクジェット印刷に好適である。本実施形態は、一般にそれぞれ約60:40〜約95:5の重量比において(1)結晶性および(2)非晶質構成成分のブレンドを含むインクジェット相変化インク組成物の新規なタイプを提供する。より詳細な実施形態において、結晶性構成成分と非晶質構成成分との重量比は、約65:35〜約95:5、または約70:30〜約90:10である。他の実施形態において、結晶性および非晶質構成成分は、それぞれ約1.5〜約20または約2.0〜約10の重量比でブレンドされる。
結晶性化合物
本実施形態は、芳香族エーテル化合物である結晶性材料を含む。これらの結晶性材料は、良好な相転移を示すとともに、特定の熱的特性およびレオロジー的特性を有し、それが材料を、相変化インクにおける使用に好適にすることも見出した。
芳香族エーテルは、一般式:
を有し、式中、RおよびRは同一または異なることができ、ここでRおよびRのそれぞれは、独立に、(i)線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル基であることができるアルキル基であって、ここでこのアルキル基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約1〜約40個の炭素原子、約1〜約20個の炭素原子、または約1〜約10個の炭素原子を有するアルキル基;(ii)置換または非置換アリールアルキル基であることができるアリールアルキル基であって、ここでこのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であることができ、このアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかには場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約4〜約40個の炭素原子、約7〜約20個の炭素原子、または約7〜約12個の炭素原子を有するアリールアルキル基;および(iii)置換または非置換芳香族基であることができる芳香族基であって、ここでこの置換基は、線状、分岐状、環状または非環状アルキル基であることができ、ここで芳香族基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、約3〜約40個の炭素原子、約6〜約20個の炭素原子、または約6〜約10個の炭素原子を有するが、数はこれらの範囲外であることができる芳香族基;およびこれらの混合物からなる群から選択されるが、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1である。
実施形態において、芳香族エーテルは、一般式IV
を有し、式中、RおよびRのそれぞれは、独立に、1つ以上のアルキル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換されたアリール基であり;pは0または1であり;mは0〜3であり;nは0〜3である。実施形態において、RおよびRは、独立に、1つ以上のメチル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換された、フェニル、ナフチルである。実施形態において、pは0である。実施形態において、mは0または1である。実施形態において、nは0または1である。実施形態において、mは0であり、nは0である。こうした特定実施形態において、mは0であり、nは1である。こうした特定実施形態において、mは1であり、nは1である。
実施形態において、Rは−(CH−Rであり、式中、Rは、1つ以上のアルキル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換されたアリール基であり;mは0〜3である。
実施形態において、Rは−(CH−Rであり、式中、Rは、1つ以上のアルキル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換されたアリール基であり;nは0〜3である。
結晶性芳香族エーテルの非限定例としては、
およびこれらの混合物が挙げられる。
結晶性材料は、シャープな結晶化を示し、約140℃の温度において、相対的に低い粘度(≦10センチポイズ(cps)、または約0.5〜約20cps、または約1〜約15cps)を示すが、室温にて非常に高い粘度(>10cps)を示す。これらの材料は、150℃未満、または約65〜約150℃、または約66〜約145℃の溶融温度(T融点)を有し、60℃を超える、または約60℃〜約140℃、または約65〜約120℃の結晶化温度(T結晶)を有する。T溶融とT結晶との間のΔTは約55℃未満である。
非晶質化合物
本実施形態の結晶性材料との組み合わせにおいて、非晶質材料も使用される。相変化インクに使用するのに好適ないずれかの非晶質構成成分が使用されてもよい。例えば、一部の好適な非晶質材料は、米国特許出願整理番号13/095、795(Morimitsu et al.に対する)に開示される。非晶質材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。特に、クエン酸は、米国特許出願整理番号13/095、795に示される合成スキームに従って、トリエステルを製造するために種々のアルコールと反応させた。
実施形態において、非晶質化合物は、式Iの酒石酸エステルまたは式IIのクエン酸エステルを含む
式中、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)、あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物である。実施形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基である。実施形態において、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されたシクロヘキシル基である。
式Iを参照して、特定実施形態においては、RおよびRの1つが、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRの他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、またはシクロヘキシルであり、あるいはRおよびRの1つは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRの他の1つはシクロヘキシルである。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、4−t−ブチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルである。実施形態において、Rは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、Rは、シクロヘキシルである。
式IIを参照すれば、実施形態において、R、RおよびRの1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRの他の1つは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシル、4−t−ブチルシクロヘキシル、またはシクロヘキシルであり、あるいはR、RおよびRの1つは、4−t−ブチルシクロヘキシルであり、R、RおよびRの他の1つはシクロヘキシルである。実施形態において、R、RおよびRのそれぞれは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれは、4−t−ブチルシクロヘキシルである。実施形態において、Rは2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれは、シクロヘキシルである。実施形態において、Rは4−t−ブチルシクロヘキシルであり、RおよびRのそれぞれはシクロヘキシルである。一部の好適な非晶質材料は、米国特許出願整理番号13/095、784(Morimitsu et al.に対する)に開示される。非晶質材料は、式
を有する酒石酸のエステルを含んでいてもよく、式中、RおよびRのそれぞれは、互いに独立に、またはそれらは同一または異なることができることを意味して、アルキル基(ここでこのアルキル部分は、約1〜約40個の炭素原子を有する直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換基であることができる)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基およびこれらの混合物からなる群から選択される。実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルおよびt−ブチルから選択される1つ以上のアルキル基で場合により置換されるシクロヘキシル基である。特定実施形態において、RおよびRのそれぞれは、2−イソプロピル−5−メチルシクロヘキシルである。
酒石酸骨格はL−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される。R基および酒石酸の立体化学に依存して、エステルは結晶または安定な非晶質化合物を形成できる。特定実施形態において、非晶質化合物は、ジ−L−メンチルL−タートラート、ジ−DL−メンチルL−タートラート(DMT)、ジ−L−メンチルDL−タートラート、ジ−DL−メンチルDL−タートラート、ならびにこれらのいずれかの立体異性体および混合物からなる群から選択される。
これらの材料は、噴出温度付近において(≦140℃、または約100〜約140℃、または約105〜約140℃)、相対的に低い粘度(<10センチポイズ(cps)、または約1〜約100cps、または約5〜約95cps)を示し、室温において非常に高い粘度(>10cps)を示す。
非晶質構成成分を合成するために、酒石酸は、米国特許出願整理番号13/095、784に示される合成スキームにおいて示されるように、種々のアルコールと反応させ、ジ−エステルを製造した。本実施形態にて使用されるべき好適なアルコールは、アルキルアルコール(ここでアルコールのアルキル部分は、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和の置換または非置換であることができる)、あるいは置換または非置換の芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。種々のアルコール、例えばメントール、イソメントール、ネオメントール、イソネオメントールおよびこれらのいずれかの立体異性体および混合物がエステル化に使用されてもよい。脂肪族アルコールの混合物は、エステル化に使用されてもよい。例えば、2つの脂肪族アルコールの混合物は、エステル化に使用されてもよい。脂肪族アルコールのモル比は、25:75〜75:25、40:60〜60:40、または約50:50であってもよい。酒石酸と反応する場合、混合物が非晶質化合物を形成する好適な脂肪族アルコールの例としては、シクロヘキサノールおよび置換シクロヘキサノール(例えば、2、3または4−tert−ブチル−シクロヘキサノール)が挙げられる。
実施形態において、2モル当量以上のアルコールは、酒石酸のジエステルを製造するための反応中に使用されてもよい。1モル当量のアルコールが使用される場合、結果は大部分がモノエステルである。
他の好適な非晶質構成成分としては、その全体を参考として本明細書に組み込む米国特許出願整理番号13/095、795(Morimitsu et al.)に開示されるものが挙げられる。非晶質材料は、以下の構造を有する化合物を含んでいてもよく;
、RおよびRは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換基であることができる)、あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物である。
これらの非晶質材料は、クエン酸のエステル化反応によって合成される。特に、クエン酸は、そこで開示される合成スキームに従って、トリエステルを製造するために種々のアルコールと反応させた。実施形態において、相変化インク組成物は、クエン酸および少なくとも1つのアルコールからエステル化反応において合成される非晶質化合物を用いることによって得られる。
本実施形態の結晶性および非晶質材料は、溶融状態で互いに混和性であることがわかった。K−プルーフによってコーティングされた紙に相変化インク組成物によって創製された画像サンプルは、優れた堅牢性を示す。K−プルーファーは、印刷所での共通の試験装置である。この場合、K−プルーファーは、印刷プレートを加熱して相変化インクを溶融するために変更されている。使用されるK−プルーファーは、それぞれ約9.4×4.7cmの3つの長方形グラビアパターンを有する。第1の長方形のセル密度は、通常100%であり、第2のセル密度は80%、第3のセル密度は60%である。実際、このK−プルーフプレートは、厚さ(または高さ)約5ミクロンのフィルム(またはピクセル)をもたらす。試験インクは、加熱されたグラビアプレートにわたって展延され、試験プリントは、試験紙が固定されているプレート表面にわたってワイピングブレードを通過させ、その直後にゴムロールを通過させることによって製造される。紙ロールが通過するときに、インクはグラビアセルから紙に転写される。さらに、本結晶性および非晶質材料を用いることにより、潜在的な生物誘導供給源から誘導されるという追加の利点を有する。本実施形態は、液体から固体へのシャープな相転移を実現するためにバランスのとれた非晶質および結晶性材料を含み、所望のレベルの粘度を維持しながら、硬質および堅牢性の印刷画像を促進する。このインクで製造されたプリントは、市販のインクにも優る利点、例えばスクラッチに対する良好な堅牢性を示した。故に、相変化インクのために結晶性構成成分を提供する本芳香族エーテルは、所望のレオロジープロファイルを有する堅牢性インクを製造すること、およびインクジェット印刷に関する多くの要件を満たすことを見出した。
実施形態において、結晶性材料は、インク組成物の総重量の約60重量%〜約95重量%、または約65重量%〜約95重量%、または約70重量%〜約90重量%の量で存在する。実施形態において、非晶質材料は、インク組成物の総重量の約5重量%〜約40重量%、または約5重量%〜約35重量%、または約10重量%〜約30重量%の量で存在する。
実施形態において、溶融状態において、得られた固体インクは、噴出温度で約1〜約22cps、または約4〜約15cps、または約6〜約12cpsの粘度を有する。噴出温度は、通常、約100℃〜約140℃の範囲に含まれる。実施形態において、固体インクは、室温にて約>10cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、10℃/分の速度にてDSCによって測定される場合に、約65〜約140℃、または約70〜140℃、または約80〜約135℃のT溶融、および約40〜約140℃、または約45〜約130℃、約50〜約120℃のT結晶を有する。
芳香族エーテルは、文献において既知である一方で、市販供給源から既知であり、このクラスの化合物の特性は、化学構造に依存して変動する。本発明者らは、特定の結晶性芳香族エーテルが、相変化インク組成物中の結晶性材料として使用するための要件を満たすことを見出した。相変化インクのための一次要件は、それが噴出温度(通常約100〜約140℃)において液体状態であり、室温では固体状態であることである。本実施形態において使用するために同定される好適な選択肢は、表1に列挙される。同定されるすべての化合物は、TCI America (Portland、Oregon)から市販されている。
化合物1、2、6および13は、最も有望な溶融/結晶化(相転移)挙動を示した。化合物3、7および8は、好ましい融点(T溶融)を有していたが、結晶化温度(T結晶)は好ましい程度に高くはなかった。化合物4、5、9、10、11および12は、相変化インク用途のために好ましい溶融温度を示さなかった。
DSCを利用して、材料の熱特性を測定した。図1に示されるように、化合物1は、所望の温度範囲内で非常にシャープな転移を示したが、これはインクの相変化材料についての良好な特性を示していた。T溶融およびT結晶の間の相対的に狭いギャップは迅速な相変化につながり、この材料を、インクの結晶性構成成分に関して特に良好な選択肢にする。
実施形態のインクは、従来の添加剤をさらに含み、こうした従来の添加剤と関連した既知の機能を活用してもよい。こうした添加剤としては、例えば少なくとも1つの酸化防止剤、消泡剤、スリップおよび平滑剤、浄化剤、粘度調整剤、接着剤、可塑剤などを挙げることができる。
インクは、場合により、酸化から画像を保護するための酸化防止剤を含有してもよく、インク貯蔵器にて加熱された溶融物として存在する間に酸化からインク構成成分を保護してもよい。好適な酸化防止剤の例としては、N、N’−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド)(IRGANOX1098、BASFから入手可能)、2、2−ビス(4−(2−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイルオキシ))エトキシフェニル)プロパン(TOPANOL−205、Vertellusから入手可能)、トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2、6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート(Aldrich)、2、2’−エチリデンビス(4、6−ジ−tert−ブチルフェニル)フルオロホスホナイト(ETHANOX−398、Albermarle Corporationから入手可能)、テトラキス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4、4’−ビフェニルジホスホナイト(ALDRICH46)、ペンタエリスリトールテトラステアレート(TCI America)、トリブチルアンモニウム次亜リン酸塩(Aldrich)、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Aldrich)、2、4−ジ−tert−ブチル−6−(4−メトキシベンジル)フェノール(Aldrich)、4−ブロモ−2、6−ジメチルフェノール(Aldrich)、4−ブロモ−3、5−ジメチルフェノ−ル(Aldrich)、4−ブロモ−2−ニトロフェノール(Aldrich)、4−(ジエチルアミノメチル)−2、5−ジメチルフェノール(Aldrich)、3−ジメチルアミノフェノール(Aldrich)、2−アミノ−4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、2、6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール(Aldrich)、2、2’−メチレンジフェノール(Aldrich)、5−(ジエチルアミノ)−2−ニトロソフェノール(Aldrich)、2、6−ジクロロ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、2、6−ジブロモフルオロフェノール(Aldrich)、α−トリフルオロ−o−クレゾール(Aldrich)、2−ブロモ−4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−フルオロフェノール(Aldrich)、4−クロロフェニル−2−クロロ−1、1、2−トリ−フルオロエチルスルホン(Aldrich)、3、4−ジフルオロフェニル酢酸(Adrich)、3−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、3、5−ジフルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2−フルオロフェニル酢酸(Aldrich)、2、5−ビス(トリフルオロメチル)安息香酸(Aldrich)、エチル−2−(4−(4−(トリフルオロメチル)フェノキシ)フェノキシ)プロピオネート(Aldrich)、テトラキス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4、4’−ビフェニルジホスホナイト(Aldrich)、4−tert−アミルフェノール(Aldrich)、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェネチルアルコール(Aldrich)、NAUGARD76、NAUGARD445、NAUGARD512、およびNAUGARD524(Chemtura Corporationが製造)などならびにこれらの混合物が挙げられる。存在する場合、酸化防止剤は、いずれかの所望のまたは有効な量、例えばインクの約0.25重量%〜約10重量%またはインクの約1重量%〜約5重量%でインク中に存在してもよい。
実施形態において、本明細書で記載される相変化インク組成物はまた、着色剤を含んでいてもよい。いずれかの所望のまたは有効な着色剤は、着色剤がインクキャリア中に溶解または分散できる限り、相変化インク組成物に利用されることができ、それらとしては染料、顔料、これらの混合物などが挙げられる。インクキャリア中に分散または溶解でき、他のインク構成成分と相溶性である限り、いかなる染料または顔料が選択されてもよい。相変化キャリア組成物は、従来の相変化インク着色剤材料、例えばカラーインデックス(C.I.)溶媒染料、分散染料、改質酸および直接染料、塩基性染料、硫黄染料、バット染料などと組み合わせて使用できる。顔料はまた、相変化インクのための好適な着色剤である。
インクベース中の顔料分散液は、共力剤および分散剤によって安定化されてもよい。一般に、好適な顔料は、有機材料または無機材料であってもよい。
実施形態において、溶媒染料が利用される。本明細書に使用するのに好適な溶媒染料の例としては、本明細書に開示されるインクキャリアとの相溶性のためにスピリットソルブル染料を挙げることができる。着色剤は、所望の色または色相を得るためにいずれかの所望のまたは有効量、例えば少なくともインクの約0.1重量%〜約50重量%、少なくともインクの約0.2重量%〜約20重量%、および少なくともインクの約0.5重量%〜約10重量%で相変化インク中に存在してもよい。
実施形態において、溶融状態では、相変化インクのためのインクキャリアは、噴出温度で約1〜約22cps、または約4〜約15cps、または約6〜約12cpsの粘度を有してもよい。噴出温度は、通常、約100℃〜約140℃の範囲に含まれる。実施形態において、固体インクは、室温にて約>10cpsの粘度を有する。実施形態において、固体インクは、10℃/分の速度にてDSCによって測定される場合に、約65〜約140℃、または約70〜140℃、または約80〜約135℃のT溶融、および約40〜約140℃、または約45〜約130℃、約50〜約120℃のT結晶を有する。
インク組成物は、いずれかの所望のまたは好適な方法によって調製できる。例えば、インクキャリアの各構成成分は、共に混合されることができ、その後この混合物を少なくともその融点、例えば約60℃〜約150℃、80℃〜約145℃および85℃〜約140℃に加熱する。着色剤は、インク成分を加熱する前またはインク成分を加熱した後に添加されてもよい。顔料が選択された着色剤である場合、溶融混合物は、磨砕機またはボールミル装置または他の高エネルギー混合装置での粉砕に供されることができ、インクキャリア中の顔料の分散に影響を与える。次いで加熱された混合物は、約5秒〜約30分以上撹拌され、実質的に均質で、均一な溶融物が得られ、続いてインクを周囲温度(20℃〜25℃)まで冷却する。インクは周囲温度にて固体である。1つの実施形態において、形成プロセス中、それらの溶融状態におけるインクは、モールドに注がれ、次いで冷却され、固化されてインクスティックを形成する。好適なインク調製技術は、米国特許第7、186、762号明細書に開示される。
インクは、直接印刷インクジェットプロセスのための装置および間接(オフセット)印刷インクジェット用途に利用できる。本明細書に開示される別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融する工程、および溶融したインクの液滴を記録基材上の画像様パターンに放出させる工程を含むプロセスを対象とする。直接印刷プロセスはまた、例えば米国特許第5、195、430号明細書に開示される。本明細書に開示されるさらに別の実施形態は、本明細書に開示されるインクをインクジェット印刷装置に組み込む工程、インクを溶融させる工程、溶融したインクの液滴を中間転写部材上に画像様パターンに放出させる工程および中間転写部材から画像様パターンのインクを最終記録基材に転写する工程を含むプロセスを対象とする。特定実施形態において、中間転写部材を最終記録シートの温度を超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する。別の特定実施形態において、中間転写部材および最終記録シートの両方を加熱し;この実施形態において、中間転写部材および最終記録シートの両方を印刷装置の溶融インクの温度未満の温度に加熱し;この実施形態において、中間転写部材および最終記録シートの相対温度は、(1)中間転写部材を、最終記録基材の温度を超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する;(2)最終記録基材を、中間転写部材の温度を超える温度で、印刷装置の溶融したインクの温度未満の温度に加熱する;または(3)中間転写部材および最終記録シートをほぼ同じ温度に加熱することであることができる。オフセットまたは間接印刷プロセスはまた、その開示全体が参考として本明細書に組み込まれる米国特許第5、389、958号明細書に開示されている。1つの特定実施形態において、印刷装置は、圧電印刷プロセスを利用するが、ここでインクの液滴は、圧電振動素子の振幅によって画像様パターンに放出される。本明細書に開示されたインクはまた、他のホットメルト印刷プロセス、例えばホットメルト音響インクジェット印刷、ホットメルト熱インクジェット印刷、ホットメルト連続ストリームまたは偏向インクジェット印刷などに利用されることができる。本明細書に開示される相変化インクはまた、ホットメルトインクジェット印刷プロセス以外の印刷プロセスに使用できる。
いずれかの好適な基材または記録シートは、コーティングされたまたは普通紙を含むものが使用できる。コーティングされた紙としては、シリカコーティングされた紙、例えばSharp Companyシリカコーティングされた紙、JuJo紙、HAMMERMILL LASERPRINT紙など、光沢コーティングされた紙、例えばXEROX Digital Color Elite Gloss、Sappi Warren PapersLUSTROGLOSS、特殊紙、例えばXerox DURAPAPERなどが挙げられる。普通紙としては、例えばXEROX4200紙、XEROX Image Series紙、Courtland4024DP紙、罫線入りノート紙、ボンド紙が挙げられる。透明材料、布地、繊維製品、プラスチック、ポリマーフィルム、無機記録媒体、例えば金属および木材も使用されてもよい。
こうした堅牢性インクは、高速での印刷設備と共に使用されてもよい。通常、プロダクションデジタルプレスは、約100〜500フィート/分以上を含む速度にて印刷する。これは、印刷紙が積み重ねられている(カット−シート印刷機)または巻かれている(連続フィード印刷)のいずれかである場合に、迅速な印刷プロセス中に印刷された画像のオフセットを防止するために、紙上に配置されたら非常に迅速に固化できるインクを必要とする。迅速な結晶化は、結晶性−非晶質堅牢性インクの一般的なまたは固有の特性ではない。そのため、すべての結晶性−非晶質インクが、迅速な印刷に向いているわけではない。本発明者らは、非晶質化合物と関連して使用される場合に、迅速に結晶化するので、迅速な印刷が可能である特定の結晶性エーテル化合物を見出した。
迅速な印刷のための試験インクの好適性を評価するために、結晶性構成成分を含有する相変化インクの結晶化速度を測定するための定量方法が開発された。TROM(時間分解光学顕微鏡法)は、種々の試験サンプルを比較でき、結果として、迅速な結晶化インクの設計に関して行われた進行をモニターするための有用なツールである。TROMは、同時係属中の米国特許出願番号13/456、847に記載されている。
時間分解光学顕微鏡法
TROMは、偏光顕微鏡法(POM)を用いることによって結晶の外観および成長をモニターする。サンプルは、顕微鏡の直交偏光子間に置かれる。結晶性材料は、それらが複屈折であるために視覚可能である。光を通さない、例えばそれらの溶融状態のインクと同様の非晶質材料または液体は、POMの下では黒色に見える。故に、POMは、結晶性構成成分を見る場合に画像コントラストを可能にし、溶融状態から設定温度に冷却された場合に結晶性−非晶質インクの結晶化動力学を追跡できる。
異なるおよび種々のサンプルを比較できるデータを得るために、実際の印刷プロセスに関連する多くのパラメータを含むことを目的として標準TROM実験条件を設定した。インクまたはインクベースは、0.2mm〜0.5mmを含む厚さの16〜25mmの円形の薄いガラススライド間に狭持される。インク層の厚さは、実際に印刷されたインク層に近い5〜25μmに維持される(ファイバーガラススペーサを用いて制御される)。結晶化測定の速度に関して、サンプルは、オフラインホットプレートを介して予測される噴出温度(粘度約10〜12cps)に加熱され、次いで光学顕微鏡と連結させた冷却段階に移される。冷却段階は、熱および液体窒素の制御された供給によって維持される予備設定温度にサーモスタッドで調節する。この実験の準備作業は、インク液滴が実際の印刷プロセスにて噴出される予測ドラム/紙温度(この開示で報告される実験に関しては40℃)をモデルとする。結晶形成および成長は、カメラで記録される。
TROMプロセスにおける重要な工程を図4に例示するが、非晶質および結晶性構成成分だけを含有する(染料または顔料を含まない)メインラインインクベースを用いる測定プロセスにおいて重要な工程を強調している。POMの下で見る場合に、溶融状態および時間ゼロにおいて、結晶性−非晶質インクは、光を通さない場合に黒色に見える。サンプルが結晶化するときに、結晶性領域はより明るく見える。TROMによって報告される数は、最初の結晶(結晶化オンセット)から最後の結晶(結晶化終了)までの時間を含む。
TROMプロセスの重要な測定されたパラメータの定義を以下に記載する:
時間ゼロ(T=0s)−溶融サンプルは、顕微鏡の下で冷却段階に置かれる。
Tオンセット=第1の結晶が現れる時間
T成長=第1の結晶(Tオンセット)から結晶化終了までの結晶成長期間(T合計)
T合計=Tオンセット+T成長
選択されたインクのためのTROM方法を用いて得られた結晶化時間は、実際の印刷デバイスにおけるインク液滴の結晶化時間であることとは同一ではないことが理解されるべきである。実際の印刷デバイス、例えば印刷機において、インクは相当速く固化する。本発明者らは、TROM方法によって測定される合計結晶化時間と印刷機内のインクの固化時間との間には良好な相関が存在することを決定した。上記で記載される標準化条件において、本発明者らは、インクは、TROM方法によって測定される10〜15秒以内に固化し、通常100フィート/分以上の速度での迅速な印刷に好適であることを決定した。そのため、本開示の趣旨上、15秒未満の結晶化速度は、迅速な結晶化であると考えられる。
特定実施形態において、相変化インクは、15秒未満で結晶化する。
実施例1
インクベースの調製
トリ−DL−メンチルシトレート(TMC)を非晶質構成成分として利用し、化合物1を、インク配合物の結晶性構成成分として利用した。化合物1(1.40g)およびTMC(0.60g)を、130℃にて溶融状態で撹拌し、次いで冷却して、インクベースサンプルを得た。インクベースサンプルの結晶性/非晶質比は、重量%で70/30であった。結晶性および非晶質材料は、この混合比において非常に混和性であった。
インクベース特性
図2は、調製されたインクベースサンプルのDSCデータを示す。T溶融およびT結晶の両方は、化合物1単独の場合よりも低温にシフトした。さらに、インクベースサンプルは依然として、非晶質材料と混合された場合であっても、非常にシャープな相転移を示した。
図3は、調製されたインクベースサンプルのレオロジーデータを示す。インクベースは、約115℃にて>10cpsへの相転移を示した。相転移温度は、材料を選択し、結晶性/非晶質比を変更することによって、所望の温度範囲内(例えば65℃<T<130℃)に調節可能である。さらに、約130℃(噴出温度)での粘度は、約4cpsであったが、同様に比を変更することによって調節可能であった。
プリント性能
インク組成物を、2.72gの結晶性化合物1と、1.16gの非晶質構成成分(TMC)および0.12gのシアン染料(Ciba Orasol Blue GNとして市販)との混合によって配合し、3%染料と共に実施例1からのインクベースを含有する配合物を提供した。染料は、インク中で良好な溶解性を示した。次いでインクを、K−印刷プルーファー(RK Print Coat Instrument Ltd.、Litlington、Royston、Heris、SG80OZ、U.K.が製造)を用いて、コーティングされた紙のXerox Digital Color Elite Gloss、120gsm(DCEG)でのK−プルーフプリント試験検査に使用した。垂直から約15°の角度にて湾曲した先端を有するスクラッチ/ゴージフィンガーを、528gの重りと共に、約13mm/sの速度で画像にわたって引き寄せた場合。スクラッチ/ゴージ先端は、約12mmの曲率半径を有する旋盤円形ノーズ切削ビットに類似する。
結晶化速度
結晶化速度をTROMによって測定した。結晶化の合計時間は、インクベースについて5秒、表2に示されるようにシアン染料を含有するインクベースについては8秒であった。上記で記載される標準化条件において、本発明者らは、インクは、TROM方法によって測定される10〜15秒以内に固化し、通常100フィート/分以上の速度での迅速な印刷に好適であることを決定した。そのため、本発明に開示される結晶性−非晶質インクは、迅速に結晶化する、すなわち迅速な印刷に好適である。
要約
本実施形態は、少なくとも1つの結晶性材料および少なくとも1つの非晶質材料を含有するインクジェット印刷について開発された堅牢性の相変化インク配合物を提供する。インクはまた、顔料または染料のような着色剤を含んでいてもよい。結晶性材料は、相変化インク組成物において結晶性構成成分として使用するために好適な特性を有することを示しており、非晶質材料と混和性である選択された結晶性芳香族エーテルである。得られた結晶性材料は、堅牢性で迅速な印刷インクを提供する所望の物理的特性を有する。
本明細書において言及されるすべての特許および出願は、それら全体を具体的に本明細書に参考として完全に組み込む。

Claims (10)

  1. 非晶質構成成分;
    以下の構造を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分を含む相変化インクであって:
    式中、RおよびRは、独立に、(i)線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル基であることができるアルキル基であって、ここでこのアルキル基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約1〜約40個の炭素原子を有するアルキル基;(ii)置換または非置換アリールアルキル基であることができるアリールアルキル基であって、ここでこのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であることができ、このアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかには場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約4〜約40個の炭素原子を有するアリールアルキル基;および(iii)置換または非置換芳香族基であることができる芳香族基であって、ここでこの置換基は、線状、分岐状、環状または非環状であることができ、ここで芳香族基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、約3〜約40個の炭素原子を有する芳香族基;およびこれらの混合物からなる群から選択されるが、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1であり;
    ここでこの相変化インクは、15秒未満で結晶化する、インク。
  2. 前記非晶質構成成分が、式Iの酒石酸エステルまたは式IIのクエン酸エステルを含む、請求項1に記載の相変化インク
    式中、R、R、R、R、およびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)、あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物である。
  3. 前記結晶性構成成分が、約140℃の温度にて10cps未満の粘度を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  4. 前記結晶性構成成分が、150℃未満のT溶融を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  5. 前記結晶性構成成分が、60℃を超えるT結晶を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  6. 約100〜約140℃の噴出範囲において、約1〜約22cpsの粘度を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  7. 室温にて約10cpsを超える粘度を有する、請求項1に記載の相変化インク。
  8. 非晶質構成成分;および
    以下の構造を有する芳香族エーテルである結晶性構成成分である結晶性構成成分を含む相変化インク:
    式中、RおよびRのそれぞれは、独立に、1つ以上の低級アルキル、−CN、−NH、−CHOH、または−OHで場合により置換されたアリールであり;pは0または1であり;mは0〜3であり;nは0〜3である。
  9. 前記結晶性構成成分が、
    およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項8に記載の相変化インク。
  10. 以下を含む相変化インク:
    非晶質構成成分であって、非晶質構成成分が、式
    を有するクエン酸または酒石酸のエステルを含み、式中、R、R、R、RおよびRのそれぞれは、独立に、アルキル基(ここでこのアルキルは、約1〜約40個の炭素原子を有する、直鎖、分岐状または環状、飽和または不飽和、置換または非置換であることができる)あるいは置換または非置換芳香族またはヘテロ芳香族基、およびこれらの混合物であり、さらにここでこの酒石酸骨格は、L−(+)−酒石酸、D−(−)−酒石酸、DL−酒石酸、またはメソ酒石酸、およびこれらの混合物から選択される非晶質構成成分;および結晶性構成成分であって、式
    を有する芳香族エーテルであり、式中、RおよびRは独立に、(i)線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和アルキル基であることができるアルキル基であって、ここでこのアルキル基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約1〜約40個の炭素原子を有するアルキル基;(ii)置換または非置換アリールアルキル基であることができるアリールアルキル基であって、ここでこのアリールアルキル基のアルキル部分が、線状または分岐状、環状または非環状、置換または非置換、飽和または不飽和であることができ、このアリールアルキル基のアリール部分またはアルキル部分のいずれかには場合によりヘテロ原子が存在してもよく、実施形態では約4〜約40個の炭素原子を有するアリールアルキル基;および(iii)置換または非置換芳香族基であることができる芳香族基であって、ここでこの置換基は、線状、分岐状、環状または非環状アルキル基であることができ、ここで芳香族基には場合によりヘテロ原子が存在してもよく、約3〜約40個の炭素原子を有する芳香族基;およびこれらの混合物からなる群から選択されるが、ただし、RおよびRの少なくとも1つは、芳香族基であり;pは0または1である結晶性構成成分。
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