以下、本発明に係る医療用マニピュレータについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る医療用マニピュレータの全体構成を示す斜視図である。本実施の形態に係る医療用マニピュレータ(以下、単にマニピュレータ10という)は、内視鏡手術等の手技に用いられ、処置対象Xとなる生体組織に通電して所定の処置(例えば、熱による焼灼等)を行うように構成されている。マニピュレータ10が処置を行う処置対象Xとしては、例えば、腫瘍(病変部)、筋肉、血管、或いは神経等の生体組織が挙げられる。
マニピュレータ10のエンドエフェクタは、処置対象Xを挟み込むことで処置対象Xに通電するグリッパ12(電気メス)として構成されている。マニピュレータ10の内部には、このグリッパ12の送達及び挟み込み(通電動作)を実施するために種々の機構が設けられる。以下、このマニピュレータ10について具体的に説明していく。
マニピュレータ10は、図1に示すように、処置対象Xに処置を行うグリッパ12を有する先端動作部14と、先端動作部14の基端側に接続され基端方向に延在するシャフト16と、シャフト16の基端側に設けられ人からの操作(入力)に基づき先端動作部14を動作させるハンドル18(本体部)とを備える。また、マニピュレータ10のハンドル18には、先端動作部14を動作させる際に所望の電力を供給するコントローラ20が接続されると共に、グリッパ12に通電(高周波電圧を供給)する高周波電源部22が接続される。
マニピュレータ10の使用時には、ユーザ(医師等の手技者)によりハンドル18が把持及び操作されて、マニピュレータ10の先端側(先端動作部14及びシャフト16の先端側)が患者の体内に挿入される。この際、ユーザは、患者の体表の所定位置に小径の孔を開けて、炭酸ガスを注入すると共にトラカール24を装着し、このトラカール24を介してシャフト16を挿入していく。また、マニピュレータ10の先端側が体内に挿入された状態では、内視鏡の監視下に、グリッパ12の姿勢変動及び開閉動作を適宜実施する。これによりグリッパ12を処置対象Xに送達して、この処置対象Xに通電する処置を行う。
なお、エンドエフェクタの構成は、処置対象Xに通電するグリッパ12に限定されるものではなく種々の構成を取り得ることは勿論である。例えば、エンドエフェクタとしては、生体組織を切断する鋏やメス(ブレード)を適用してもよく、また医療機器(鉗子、針等)を把持する把持器具として構成し、把持した医療機器により処置対象Xに処置を施すこともできる。
図2に示すように、グリッパ12の姿勢変動と開閉動作は、マニピュレータ10の先端側の先端動作部14において実施される。グリッパ12の姿勢変動としては、シャフト16の軸Osに対し横方向(ヨー方向)に反るようにグリッパ12を傾動させるヨー動作と、グリッパ12の軸Orを中心に回転するロール動作とが挙げられる。勿論、グリッパ12の姿勢変動は、ヨー動作とロール動作に限定されるものではなく、例えば、シャフト16の軸Osに対し縦方向(ピッチ方向)に傾動させるピッチ動作が行われてもよい。
グリッパ12は、2つのグリッパ部材(第1グリッパ部材26、第2グリッパ部材28)によって構成され、グリッパ保持部材30に開閉可能に保持される。第1及び第2グリッパ部材26、28は、グリッパ保持部材30の縦方向の軸Ogを基点として、その先端部分が開閉動作する。グリッパ保持部材30の基端側は、円筒状に形成された外殻部材32に回転可能に挿入されている。外殻部材32の基端側には、先端動作部14のヨー動作を行う湾曲部34(関節部)が連結されている。
湾曲部34は、剛性を有する材質として、例えばステンレス鋼からなる複数(図2では5つ)の関節部材36を軸方向に並設して構成される(以下、関節部材36に対し先端側から順にA〜Eの符号を付して説明を行う場合もある)。隣接する関節部材36同士は、ヒンジ部38において互いに屈曲可能に連結される。また、関節部材36は、最も先端側の関節部材36Aが外殻部材32に屈曲可能に連結され、最も基端側の関節部材36Eがシャフト16の先端部に連結固定される。なお、本実施の形態では、関節部材36の材質としてステンレス鋼を用いているが、これに限定されず、耐久性に優れ、本機能を達成できるものであればよい。例えば、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)を用いてもよい。
先端動作部14のヨー動作は、関節部材36Eを動作支点として5つのヒンジ部38が連動的に屈曲していくことによってなされる。つまり、外殻部材32及び関節部材36A〜36Dが略同じ角度ずつヨー方向に傾くことにより、湾曲部34の先端側のグリッパ12及びグリッパ保持部材30が一体的に傾く。湾曲部34のヨー動作の可動範囲は適宜設定することができるが、例えば、グリッパ12の軸Orがシャフト16の軸Osに直交する範囲、すなわちグリッパ12が左右180°傾く範囲に設定すると、体内の広い範囲にグリッパ12を臨ませることができる。
一方、先端動作部14のロール動作は、グリッパ保持部材30を外殻部材32と相対的に回転させることによってなされる。つまり、湾曲部34に連結される外殻部材32は、回転方向に対し固定状態となっており、この外殻部材32に対してグリッパ保持部材30が回転する。このため、グリッパ12もグリッパ保持部材30と一緒に回転する。また、本実施の形態では、ロール動作の可動範囲(グリッパ12の回転範囲)が無制限に設定されている。
さらに、グリッパ12の開閉動作は、グリッパ保持部材30に保持された状態で第1及び第2グリッパ部材26、28が開閉する(すなわち、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分が近接(当接)及び離間する)ことによりなされる。このグリッパ12の開閉動作は、グリッパ12の姿勢変動に依らず、ユーザの操作に基づき所望のタイミングで実施可能となっている。
以上のグリッパ12の姿勢変動(ヨー動作及びロール動作)、グリッパ12の開閉動作は、シャフト16から先端動作部14に伝達される動作力に基づき行われる。
図1に戻り、先端動作部14に連なるシャフト16は、所定長さ(例えば、350mm)直線状に延在し、その基端部にハンドル18が接続される。シャフト16は、先端動作部14の動作力をハンドル18から伝達する機能を有している。また、手技中は、シャフト16の基端側が患者の体外に露出されて、マニピュレータ10(シャフト16)の位置や角度が外部から操作されることで、体内に挿入された先端動作部14の挿入角度や挿入量が変更される。
ハンドル18は、ユーザが片手で把持しやすいようにピストル型に形成されたハンドル本体40と、このハンドル本体40の基端側上部に着脱自在に取り付けられる駆動ユニット41とを有する。また、ハンドル本体40は、シャフト16の軸方向と同方向に延在する胴体部42と、胴体部42の下側から下方に延在する把持部44とにより構成されている。
胴体部42は、比較的大きな容積からなる内部空間(図示せず)を有し、この内部空間には上述した先端動作部14の動作(ヨー動作、ロール動作、グリッパ12の開閉動作)を実施させる種々の機構が設けられる。一方、駆動ユニット41の内部には、先端動作部14のヨー動作の駆動源となる駆動モータ46(図11参照)が収容されている。また、駆動ユニット41には、上述したコントローラ20及び高周波電源部22が接続されている。コントローラ20は、図示しない電源に接続され、駆動モータ46の回転駆動を制御する機能を有している。高周波電源部22は、ユーザの操作に基づき、グリッパ12に電力(高周波電圧)を供給する機能を有している。
胴体部42の側面には、先端動作部14のヨー動作の操作がなされるスイッチ48(傾動操作部)が設けられている。また、胴体部42の先端側でシャフト16の接続部分には、先端動作部14のロール動作の操作がなされる回転ハンドル50(ロール操作部)がシャフト16の外側を囲うように設けられている。さらに、胴体部42の下側で把持部44の前方には、グリッパ12の開閉動作の操作がなされるトリガー52(開閉操作部)が設けられている。
把持部44は、胴体部42の軸方向中間部よりもやや先端側に形成されており、ユーザが片手で把持部44を把持した状態では、その把持した片手の指によりスイッチ48、回転ハンドル50及びトリガー52が操作可能となるように構成されている。
先端動作部14の動作は、スイッチ48、回転ハンドル50及びトリガー52がユーザに適宜操作されることで行われる。本実施の形態に係るマニピュレータ10は、グリッパ12の姿勢変動(ヨー動作、ロール動作)、開閉動作、及びグリッパ12の開閉動作に基づく通電動作が相互に連動することで、処置対象Xの処置を行うものであるが、以下の説明では、発明の理解を容易にするため、各動作に関わる構成の概要について個別に説明していくこととする。
図3Aは、図1のマニピュレータ10の通電動作を概略的に説明する第1説明図であり、図3Bは、図1のマニピュレータ10の通電動作を概略的に説明する第2説明図である。先ず、マニピュレータ10において通電動作を可能とする構成を概略的に説明する。
マニピュレータ10は、上述したようにグリッパ12による処置対象Xの把持にともない、この処置対象Xに通電する機能を有している。このため、第1及び第2グリッパ部材26、28は、金属材からなり、処置対象Xに通電する電極(プラス電極とマイナス電極)に構成されている。すなわち、本実施の形態に係るグリッパ12はバイポーラ式の電気メスである。勿論、これに限定されるものではなく、エンドエフェクタをモノポーラ式の電気メスとして構成してもよい。
第1グリッパ部材26と第2グリッパ部材28は、1つの支点ピン54(図2参照)により絶縁状態で枢支されている。開閉動作の動作力を受けると、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分は、支点ピン54を支点として近接又は離間する。そのため、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分同士が離間した開状態では通電が遮断されるが、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分同士が当接する閉状態(処置対象Xを挟んで間接的に閉状態となる状態も含む)では、第1及び第2グリッパ部材26、28間の通電がなされ、処置対象Xにも通電される。
第1及び第2グリッパ部材26、28の基端側には、それぞれ金属材56(通電経路)が電気的に接続される。2極の金属材56(例えば、銅線)は、湾曲部34及びシャフト16の延在部分において、絶縁材58によって被覆され、さらに2つの絶縁材58が溶着や接着により1つにまとめられた導線60として延在している。この導線60はシャフト16と共に基端方向に延在しハンドル18内に挿入されている。本実施の形態では、この導線60が湾曲部34及びシャフト16の軸心(軸Os)を通るように配設されている。従って、先端動作部14やシャフト16の側面に、導線を別途配線する必要がなくなるため、先端動作部14の動作による導線の絡み合い等が回避され、通電を良好に行うことができる。
導線60は、ハンドル18内に挿入されるシャフト16の基端側まで延在しており、導線60内の2つの金属材56がシャフト16に設けられた一対の円筒端子62(回転端子)にそれぞれ接続されている。一対の円筒端子62にはそれぞれ接触端子64が接触しており、この接触端子64がハンドル18外部の高周波電源部22に接続されている。
図4Aは、図1のマニピュレータ10のヨー動作を概略的に説明する第1説明図であり、図4Bは、図1のマニピュレータ10のヨー動作を概略的に説明する第2説明図である。次に、ヨー動作を実施する構成について概略的に説明する。
マニピュレータ10のヨー動作は、上述したように、先端動作部14の湾曲部34によって実現される。軸方向に並ぶ5つの関節部材36の幅方向内側面には、一対のベルト(第1ベルト66、第2ベルト68)が挿通しており、各関節部材36は、第1及び第2ベルト66、68を摺動自在に保持している。第1及び第2ベルト66、68は、先端側が外殻部材32に連結され、基端側がシャフト16の内部を延在する一対の半円管(第1半円管70、第2半円管72:曲げ動作力伝達部材)に連結されている。
第1及び第2半円管70、72は、シャフト16内を挿通してハンドル18まで延在しており、ハンドル18の内部に設けられた一対のスライド部材(第1スライド部材74、第2スライド部材76)に連結されている。第1及び第2スライド部材74、76は、互いに対向する位置に配置され、それぞれの対向面にはラック78が形成されている。また、第1及び第2スライド部材74、76の間には、両方のラック78に噛み合う1つのピニオン80(回転部材)が配設されており、このピニオン80は、後述する複数のギアを介して機械的に駆動モータ46に接続されている。
このように構成されたマニピュレータ10では、例えば、図4Bに示すように、駆動モータ46の回転駆動によりピニオン80を時計方向に回転させると、第1スライド部材74が基端方向にスライド移動し、第2スライド部材76が先端方向にスライド移動する。このため、第1スライド部材74に連結された第1半円管70が基端方向にスライド移動し、第2スライド部材76に連結された第2半円管72が先端方向にスライド移動する。先端動作部14(湾曲部34)には、この第1及び第2半円管70、72の動作力が伝達される。
すなわち、湾曲部34と相対的に第1ベルト66が基端方向に移動して湾曲部34内の第1ベルト66が短くなり、湾曲部34と相対的に第2ベルト68が先端方向に移動することで、湾曲部34内の第2ベルト68が長くなる。その結果、5つの関節部材36が短くなった第1ベルト66側に連動して傾くことなり、関節部材36の先端側に連結されている外殻部材32を傾動させ、グリッパ12及びグリッパ保持部材30をシャフト16の軸Osに対し横方向(ヨー方向)に動作させる。
図5は、図1のマニピュレータ10のロール動作を概略的に説明する説明図である。次に、ロール動作を実施する構成について概略的に説明する。
マニピュレータ10のロール動作は、上述したように、外殻部材32と相対的にグリッパ12及びグリッパ保持部材30が回転することによって実現される。グリッパ保持部材30の基端側には、回転自在な中空チューブ82が接続されており、この中空チューブ82が湾曲部34(5つの関節部材36)の内部を挿通している。中空チューブ82は、湾曲部34の湾曲に追従可能な可撓性を有し、湾曲部34に追従して湾曲しても回転することができるトルクチューブとして構成されている。この中空チューブ82の内部には、導線60(図3A参照)が挿通されている。中空チューブ82の外径は、2.5mm〜3.0mmであることが好ましく、本実施の形態では、2.7mmとして説明する。
湾曲部34に接続されるシャフト16は、外観を構成し軸方向に延在する外筒84と、外筒84の内部を挿通する内筒86とを有する二重管構造となっている。中空チューブ82は、シャフト16の内筒86に接続されており、この内筒86から回転方向の動作力(回転トルク)が伝達されて回転する。
外筒84の基端側は、ハンドル18の内部に挿入され、ハンドル18の先端位置で連結固定される。一方、内筒86は、外筒84よりも基端方向に延在し、ハンドル18内部の回転機構88によって回転自在に軸支されている。回転機構88は、複数のギアを有しており、内筒86は、この複数のギアを介してハンドル18の先端側に設けられた回転ハンドル50に機械的に接続される。回転ハンドル50は、外筒84の周方向に沿って回転自在となっている。
従って、ユーザが手動により回転ハンドル50を回転操作すると、回転ハンドル50の回転トルクが基端側のハンドル18内に伝達され、回転機構88を介して内筒86を回転させる。中空チューブ82には、この内筒86の回転方向の動作力が伝達され、内筒86と共に該中空チューブ82が回転する。その結果、中空チューブ82の先端側に接続されているグリッパ保持部材30(グリッパ12)が、グリッパ12の軸Orを中心に回転する。特に、本実施の形態に係るマニピュレータ10は、グリッパ12、グリッパ保持部材30、中空チューブ82及び内筒86が、外殻部材32、湾曲部34及び外筒84に対し分離状態で配設され、無制限に回転可能となっている。従って、グリッパ12は、ロール動作による姿勢の変動を何度でも行うことができる。
図6Aは、図1のマニピュレータ10の開閉動作を概略的に説明する第1説明図であり、図6Bは、図1のマニピュレータ10の開閉動作を概略的に説明する第2説明図である。次に、開閉動作を実施する構成について概略的に説明する。
グリッパ12の開閉動作は、ハンドル18からグリッパ12に対し先端及び基端方向の動作力を伝達することによって実現される。第1及び第2グリッパ部材26、28は、相互を枢支する支点ピン54よりも基端側に斜め後方に延出する延出部90を備え、この延出部90には長孔92が形成されている。グリッパ保持部材30の内部には、このグリッパ保持部材30と相対的に進退移動(すなわち、先端及び基端方向に移動)可能な移動体94が配設され、移動体94に取り付けられる可動ピン96が長孔92に挿入されている。グリッパ保持部材30と移動体94の配設関係は、ロール動作時にはグリッパ保持部材30と移動体94が共に動作するが、開閉動作時にはグリッパ保持部材30が動作せずに移動体94が進退移動する関係性となっている。このため、グリッパ保持部材30の支点ピン54に対し、可動ピン96(移動体94)が近接及び離間する。
移動体94の基端側には、上述した中空チューブ82が接続されている。移動体94は、中空チューブ82から先端及び基端方向の動作力が伝達されることにより進退移動がなされる。また、中空チューブ82の基端側には、上述した内筒86が接続されており、この内筒86の基端側にはハンドル18内の進退移動機構98が接続されている。進退移動機構98は、複数のリンクを有し、内筒86とハンドル18の下側に設けられたトリガー52とを機械的に接続している。
例えば、ユーザが手動によりトリガー52の引き操作を行うと、トリガー52の操作力が基端側のハンドル18内に伝達され、進退移動機構98を介して内筒86を基端方向に移動させる。この内筒86の基端方向の動作力は、中空チューブ82により移動体94に伝達され、移動体94の後退移動がなされる。逆に、トリガー52の押出操作を行うと、移動体94の進出移動がなされる。
図6Aに示すように、移動体94が進出した位置(可動ピン96が長孔92の先端側に位置する状態)では、第1及び第2グリッパ部材26、28の延出部90が可動ピン96において交差するため、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分が離間して開状態となる。図6Bに示すように、移動体94が後退移動した位置(可動ピン96が長孔92の基端側に位置する状態)では、第1及び第2グリッパ部材26、28の長孔92がガイドされて各延出部90が互いに近接する(重なる)ように動作する。従って、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分も互いに近接して閉状態となる。このように、グリッパ12は、中空チューブ82から先端及び基端方向の動作力が伝達されることで開閉動作が実施される。
図7は、図1のマニピュレータ10の先端側を拡大して示す部分分解斜視図であり、図8は、図1のマニピュレータ10の湾曲部34を拡大して示す部分分解斜視図であり、図9は、図1のマニピュレータ10のハンドル18を拡大して示す部分分解斜視図である。次に、図7〜図9を参照して、本実施の形態に係るマニピュレータ10を構成する部材について具体的に説明していく。
グリッパ12を構成する第1及び第2グリッパ部材26、28は、先端部分が下側に湾曲しつつ先端方向に延出する形状からなり、互いの対向面には鋸状の噛合歯100が形成されている。第1及び第2グリッパ部材26、28の噛合歯100は閉状態で互いに噛み合う。また、第1及び第2グリッパ部材26、28の延出部90は、所定の板厚(例えば、0.5mm)からなる平板状に形成され、噛合歯100の基端部から延在している。延出部90の先端寄りには、支点ピン54が挿入される丸孔102が穿設され、支点ピン54はこの丸孔102に嵌め込まれる絶縁リング104に軸支される。延出部90の基端側には、長孔92が穿設され、可動ピン96はこの長孔92に絶縁筒106を介して挿入される。また、第1及び第2グリッパ部材26、28の各延出部90は、グリッパ保持部材30先端側の隙間108にそれぞれ挿入される。
グリッパ保持部材30は、板状の保持板110が三又に分岐して前記隙間108を有するように先端方向に延出する保持部材側三又部112と、保持部材側三又部112の基端側に連なり基端方向に延出する係合筒部114とからなる。3つの保持板110の先端部分には、支点ピン54が挿入される支点ピン用孔116が形成され、支点ピン用孔116の基端側には可動ピン96が挿入される可動ピン用長孔118が形成される。係合筒部114の外面には、周方向に沿って径方向外側に突出する突出部120が設けられる。また、保持部材側三又部112と係合筒部114の内部には、移動体94が挿入される摺動空間122(図18A参照)が連なるように形成されている。
支点ピン54は、第1及び第2グリッパ部材26、28を隙間108に配設した状態で支点ピン用孔116に挿入され、端部がワッシャ124に固定されることで第1及び第2グリッパ部材26、28を枢支する。可動ピン96は、第1及び第2グリッパ部材26、28が支点ピン54により固定され、且つ摺動空間122に移動体94が挿入された状態で、長孔92及び可動ピン用長孔118に挿入され、その端部がワッシャ126に固定されることで、長孔92及び可動ピン用長孔118に対し進退自在に配設される。
移動体94は、グリッパ保持部材30と同様に、板状の保持板128が三又に分岐して前記隙間108と同じ幅からなる隙間130を有するように先端方向に延出する移動体側三又部132と、移動体側三又部132の基端側に連なり基端方向に延出する挿入部134とを有する。3つの保持板128の先端部分には可動ピン用丸孔136が形成され、この可動ピン用丸孔136に可動ピン96が挿入されることで、移動体94との取付がなされる。また、移動体94の挿入部134には円筒体138が挿入される。なお、移動体94の3つの保持板128のうち中央に延出する保持板128aは絶縁材料によって構成されている。
円筒体138は、軸方向に所定長さ(例えば、6mm)延設され、その内部には中空空間140が形成されている。円筒体138の先端部には上述した挿入部134が挿入され、円筒体138の基端部には第1コネクタ142が挿入される。
第1コネクタ142は、中間部にフランジ部144を有し、このフランジ部144から先端方向に延出する先端接続突部146と、基端方向に延出する基端接続突部148とを有する。この第1コネクタ142は、先端接続突部146が円筒体138内に挿入され、基端接続突部148が中空チューブ82内に挿入されることで、円筒体138と中空チューブ82とを接続させる。円筒体138は、中空チューブ82(第1コネクタ142)が接続された状態で外殻部材32の内部に挿入される。
外殻部材32は、グリッパ保持部材30の係合筒部114が挿入される先端側筒部150と、円筒体138が挿入される基端側筒部152とからなる。先端側筒部150は、片側半分が分離可能な円弧片150aとなっている。先端側筒部150(円弧片150aを含む)の内面には、所定の幅(例えば、2mm)からなる溝部154が設けられており、グリッパ保持部材30の挿入状態ではこの溝部154に突出部120が挿入され両者が係合する。
基端側筒部152には、円筒体138、第1コネクタ142及び中空チューブ82の先端側が挿入される。基端側筒部152の上下位置には、基端方向に突出する外殻部材側ヒンジ片156が形成され、この外殻部材側ヒンジ片156は基端側の湾曲部34に屈曲可能に連結される。また、基端側筒部152の外側面には、ベルト(第1及び第2ベルト66、68)の先端部形状に略一致する切り欠き部158が一対形成され、ベルトの先端部は固定ピン160によりこの切り欠き部158に連結固定される。
図8に示すように、先端動作部14は、外殻部材32よりも基端側にグリッパ12(図7参照)のヨー動作を行う湾曲部34が設けられる。湾曲部34を構成する5つの関節部材36A〜36Eのうち4つの関節部材36A〜36Dは、中央部において筒状に形成された中央筒部162(筒状部)と、中央筒部162から先端側に延出する先端ヒンジ片164と、中央筒部162から基端側に延出する基端ヒンジ片166と、を備えている。中央筒部162は、軸方向に貫通する空洞部162a(図14A参照)を中心部に有する。
先端ヒンジ片164は、基端ヒンジ片166よりも内側に延出するように形成されている。隣り合う関節部材36同士は、先端ヒンジ片164と基端ヒンジ片166が重なり合う。また、先端ヒンジ片164と基端ヒンジ片166には共にヒンジ孔168が形成されており、先端ヒンジ片164と基端ヒンジ片166が重なった状態でヒンジ孔168に関節ピン170が挿入される。これにより、隣り合う関節部材36同士が関節ピン170を支点に屈曲自在に連結されたヒンジ部38が構成される。なお、最も先端側の関節部材36Aの先端ヒンジ片164は、外殻部材32の外殻部材側ヒンジ片156に屈曲可能に連結される。
一方、最も基端側の関節部材36Eは、関節部材36A〜36Dと同じ中央筒部162及び先端ヒンジ片164を有しているが、中央筒部162の基端側に基端ヒンジ片166が設けられておらず、外筒84の内径に略一致する外径に形成された嵌合延出部172を有している。関節部材36Eは、嵌合延出部172が外筒84に嵌合固定される。
5つの関節部材36の空洞部162aには、可撓性を有する中空チューブ82が挿通される。中空チューブ82は、所定の内径(例えば、1.5mm)からなり軸方向に貫通する中空部82aを有する。中空チューブ82の先端部には、第1コネクタ142が接続され、中空チューブ82の基端部には第2コネクタ174が接続される。第2コネクタ174は、第1コネクタ142と同様に、中間部にフランジ部176を有し、このフランジ部176から先端方向に延出する先端接続突部178と、基端方向に延出する基端接続突部180とを有する。この第2コネクタ174は、先端接続突部178が中空チューブ82内に挿入され、基端接続突部180が内筒86内に挿入されることで、中空チューブ82と内筒86とを接続させる。
また、湾曲部34は、5つの関節部材36の内側面にベルト(第1及び第2ベルト66、68)が挿通される。第1及び第2ベルト66、68は、内側に補強板182が接着されて軸方向に延在し、その先端部が外殻部材32(切り欠き部158)に連結され、基端部が外筒84と内筒86の間に配設される第1及び第2半円管70、72に連結される。第1及び第2ベルト66、68は、関節部材36に対しスライド自在であり、このスライド量に応じて先端側の外殻部材32を横方向に傾動させることができる。
シャフト16を構成する外筒84及び内筒86と、その間に設けられる第1及び第2半円管70、72は、基端方向に延在してハンドル18に挿入される。図9に示すように、ハンドル18のハンドル本体40は、縦方向(右側筐体40a、左側筐体40b:図1参照)に分離される構成となっている(図9中では、左側筐体40bの図示を省略している)。また、ハンドル本体40の先端面にはシャフト16が挿入される挿入孔42aが形成されている。
ハンドル本体40の内部空間には、シャフト16(外筒84)の基端部が接続される第1ブラケット200が設置され、この第1ブラケット200に対向する第2ブラケット202が設置される。第1ブラケット200は、先端面及び右側面を有する屈曲した板状に形成されており、第2ブラケット202は、左側面及び上面を有する屈曲した板状に形成されている。第1ブラケット200の先端面には、先端方向に延出するシャフト挿入筒204が設けられ、外筒84、半円管及び内筒86が重なった状態のシャフト16が挿入される。また、シャフト挿入筒204が回転ハンドル50の貫通孔50aに挿入されることで、回転ハンドル50は、第1ブラケット200(すなわち、ハンドル18)に対し回転自在に装着される。
第1及び第2ブラケット200、202の間の上部寄り位置には、第1及び第2スライド部材74、76が配置される。第1及び第2スライド部材74、76は、側面視で略T字状に形成されており、先端及び基端方向に延在する棒部206と、棒部206の下側に垂下する取付部208とを有する。一対の棒部206の対向面には、上述したラック78が設けられている。この棒部206は、第1ブラケット200に形成された支持用切り欠き部210に摺動自在に配設される。なお、第1及び第2ブラケット200、202の基端側には、第1及び第2スライド部材74、76の基端側の移動限界を規定するストッパ212が配置される。
一方、一対の取付部208の下端部側対向面は、円弧状に形成されており、第1及び第2半円管70、72の外面に密接可能となっている。つまり、第1スライド部材74の取付部208に第1半円管70が、第2スライド部材76の取付部208に第2半円管72がそれぞれ連結される。これにより、第1及び第2半円管70、72は、その基端側が第1及び第2スライド部材74、76に支持され、外筒84と内筒86の間を通って先端方向に延出する。
第1及び第2スライド部材74、76間のラック78に配置されるピニオン80は、ピニオンシャフト214の下端部に形成されている。ピニオンシャフト214は、第2ブラケット202の上面に設けられたピニオン用孔202aを挿通して上方向に延出する。ピニオンシャフト214には、ピニオン80の上方位置に従動傘歯車216が嵌合される。従動傘歯車216は、上部側面(傾斜面)に歯面が形成され、この歯面に対し主動傘歯車218の歯面が噛み合うように配置される。主動傘歯車218は、モータギアピン220の先端部に接続されており、このモータギアピン220の基端部には、モータ駆動従動ギア222が設けられている。
モータ駆動従動ギア222は、駆動ユニット41をハンドル本体40に取り付けた状態で、駆動ユニット41の先端面から突出するモータ駆動主動ギア224に噛み合うように構成されている。駆動ユニット41の内部には駆動モータ46(図11参照)が配設されており、モータ駆動主動ギア224はこの駆動モータ46により回転駆動する。このような構成により、第1及び第2スライド部材74、76は、駆動モータ46の回転駆動に基づき、先端及び基端方向にスライド移動させて、連結している第1及び第2半円管70、72を動作させる。
また、第1ブラケット200の左側面及び第2ブラケット202の右側面には、上述したスイッチ48がそれぞれ設けられ、このスイッチ48は、ハンドル本体40の側面に形成された窓42bから外部に露呈される(図1も参照)。スイッチ48の両端部が接触する第1及び第2ブラケット200、202の外側面には、図示しない電気回路が印刷されており、スイッチ48の操作状態が感知可能となっている。また、ハンドル18の内部には、前記電気回路に電気的に導通し、駆動ユニット41の装着にともない駆動ユニット41の第1信号コネクタ(図示せず)に接続される第2信号コネクタ(図示せず)が設けられている。マニピュレータ10は、第1及び第2信号コネクタの接続により、電気回路に電源を供給すると共に、スイッチ48の操作によって生じる操作信号(電圧値)を外部のコントローラ20に送信するように構成されている。コントローラ20は、この操作信号に基づき駆動モータ46を回転させる電力(信号)を供給する。
ところで、第1及び第2半円管70、72に覆われる内筒86は、第1及び第2スライド部材74、76の取付部208よりも基端方向に延出している。内筒86の基端側側面には、回転機構88の一部を構成する回転従動ギア226と、進退移動機構98の一部を構成するスライド駆動軸228(回転軸部材)が装着される。
回転従動ギア226は、所定軸長(例えば、6mm)で延在し、その外側面に形成される歯面が下側に配置される回転主動ギア230の歯面に噛み合う構成となっている。回転主動ギア230は、回転ピン232の基端部に連結固定され、この回転ピン232は、第1ブラケット200の板面から突出する保持凸部234により回転自在に軸支される。また、回転ピン232の先端部には、ハンドル従動ギア236が形成されており、このハンドル従動ギア236は、第1ブラケット200の先端面よりも前に配置される。ハンドル従動ギア236の歯面は、回転ハンドル50の基端側に設けられ胴体部42内に配置されるハンドル主動ギア238の歯面に噛み合うように構成されている。回転機構88はこのように構成されることで、回転ハンドル50の回転操作に基づき、内筒86を軸中心に回転させる。
一方、内筒86に装着されるスライド駆動軸228は、先端側において径方向外側に拡径した頭部240と、この頭部240から基端側に所定長さ延出した胴部242とを有する。頭部240の外側面には、凹部244(溝部)が周方向に沿って形成されており、この凹部244には、スライド駆動軸228の下側に配置される応動部材246(動体)の凸部248(突部)が挿入される。
応動部材246は、側面視で小判状に形成されたブロック体からなり、その上部から一対のアーム250が延出している。凸部248は、この一対のアーム250の上端側の内側面にそれぞれ形成されている。また、応動部材246の側面には、2つの孔(上側孔246a、下側孔246b)が形成されており、上側孔246aは第1ブラケット200から延出する第1支持ピン252に軸支される。これにより、応動部材246は上側孔(第1支持ピン252)を基点に回転可能となる。一方、下側孔246bには第1リンク軸254を介してばねリンク256に連結される。
ばねリンク256は、中央部分にジグザグ状のばね部258を有すると共に、その両端部には2つの孔(前側孔256a、後側孔256b)が形成されている。そして、後側孔256bには、上述した第1リンク軸254が挿入され、前側孔256aには第2リンク軸260が挿入される。この第2リンク軸260は、トリガー52の上端部に連結される。
トリガー52は、二股状に分岐して下方向に延出する延出ハンドル262と、延出ハンドル262の上部から突出し2つの孔(リンク用孔264a、支持用孔264b)が貫通形成されたリンク部264とにより構成される。上述した第2リンク軸260はリンク用孔264aに挿入される。一方、支持用孔264bは、第1ブラケット200から延出する第2支持ピン266に軸支される。これにより、トリガー52は支持用孔264b(第2支持ピン266)を基点に回転可能となる。進退移動機構98は、このように構成されることで、トリガー52の引き操作及び押出操作に基づき、スライド駆動軸228を先端及び基端方向に移動させる。その結果、内筒86の進退移動を実施することができる。
また、スライド駆動軸228の胴部242には、スリップリングシステム270の回転部分が設けられている。スリップリングシステム270は、内筒86が回転機構88により回転しても、内筒86内に配設される導線60(2つの金属材56)と高周波電源部22との電気的接続を継続的に行う機構である。具体的には、スライド駆動軸228の胴部242に対し、第1樹脂筒272、第1円筒端子62a、第2樹脂筒274、第2円筒端子62b、絶縁ワッシャ276、ナット278が外装される。第1円筒端子62aは、第1樹脂筒272の外側面に装着され、その内部に金属材56の一方(例えばプラス極)が接続される。第2円筒端子62bは、第2樹脂筒274の外側面に装着され、その内部に金属材56の他方(例えばマイナス極)が接続される。第1及び第2円筒端子62a、62bの側面には、第1及び第2接触端子64a、64bがそれぞれ当接し、この第1及び第2接触端子64a、64bは、高周波電源部22に接続される。従って、スリップリングシステム270は、第1及び第2円筒端子62a、62bが回転しても第1及び第2接触端子64a、64bが当接し続ける。これにより、高周波電源部22からの出力が金属材56に供給される。
図10は、図1のマニピュレータ10のヨー動作を説明する概略平面図であり、図11は、図1のマニピュレータ10のヨー動作を説明する部分斜視図であり、図12は、図1のハンドル18の内部の組付状態を説明する部分斜視図である。
次に、本実施の形態に係るマニピュレータ10のヨー動作に関わる構成についてより具体的に説明していく。図9及び図10に示すように、ハンドル18は、ハンドル本体40の両側面に2つのスイッチ48(右側スイッチ48a、左側スイッチ48b)が取り付けられる。右側及び左側スイッチ48a、48bは、中央部がハンドル18(第1及び第2ブラケット200、202)に支持され、この中央部を支点に両端部(先端部及び基端部)がユーザの押し操作により変位するように構成されている。この右側及び左側スイッチ48a、48bは、ユーザの右利き及び左利きの両方に対応できるように構成したものであり、例えば、把持部44を右手で把持した場合、右手の人差し指により右側スイッチ48aが操作可能となっている。
右側スイッチ48aは、基端部側(図10のA1)が押し操作された場合、先端動作部14を右方向(Y1方向)にヨー動作させ、先端部側(図10のA2)が押し操作された場合、先端動作部14を左方向(Y2方向)にヨー動作させるように構成されている。一方、左側スイッチ48bは、基端部側(図10のA2)が押し操作された場合、先端動作部14を左方向(Y2方向)にヨー動作させ、先端部側(図10のA1)が押し操作された場合、先端動作部14を右方向(Y1方向)にヨー動作させるように構成されている。このように構成することで、右側スイッチ48a又は左側スイッチ48bのいずれを操作した場合でも、スイッチ48の操作感がユーザの感覚(視点)に合うように構成されている。
つまり、スイッチ48の操作より生じる操作信号は、右方向のヨー動作信号と左方向のヨー動作信号の2パターンがあり、これらの信号はコントローラ20(図11参照)に送信される。コントローラ20は、操作信号に基づき駆動モータ46の回転方向及び回転速度等を制御する駆動信号を駆動モータ46に出力する。駆動モータ46は、このコントローラ20の駆動信号に基づき時計回り又は反時計回りの回転を行う。なお、駆動モータ46の駆動制御は、種々の構成を取り得ることは勿論であり、例えば、スイッチ48の押圧力に応じて駆動モータ46の回転速度を変動させ、ヨー動作が湾曲する速度を変動させる構成としてもよい。
図11及び図12に示すように、マニピュレータ10は、駆動ユニット41をハンドル本体40に取り付けることにより、駆動モータ46の先端に取り付けられているモータ駆動主動ギア224が、ハンドル18内部のモータ駆動従動ギア222に噛み合うように構成されている。モータ駆動従動ギア222を備えるモータギアピン220は、第2ブラケット202の基端側から上方に向けて立設される第1支持バー280及び第2支持バー282により回転自在に保持されている。第1支持バー280は、上端部において先端方向に延出しピニオンシャフト214の上端を保持する構成となっている。ピニオンシャフト214は、モータギアピン220の先端部に設けられる主動傘歯車218に当接する従動傘歯車216により回転し、従動傘歯車216の下端部に形成されているピニオン80を回転させる。
ピニオン80は、第1及び第2ブラケット200、202の組み付けより形成された空間に配置され、第1及び第2スライド部材74、76がこのピニオン80を挟んで対向するように配置される。第1及び第2スライド部材74、76の棒部206は、第1ブラケット200の支持用切り欠き部210(図9参照)に支持され、棒部206の下側に延出する取付部208には、第1及び第2半円管70、72がそれぞれ連結される。このため、ピニオン80が一方に回転すると、第1スライド部材74と第2スライド部材76が互いに逆方向にスライドし、これにともない第1半円管70と第2半円管72も互いに逆方向にスライドする。この第1及び第2半円管70、72の逆方向のスライドがシャフト16を介して先端側の先端動作部14に伝達される。
図13Aは、図1のマニピュレータ10の湾曲部34を示す要部側面図であり、図13Bは、マニピュレータ10の湾曲部34を示す要部平面図であり、図13Cは、図13BのXIIIC−XIIIC線断面図であり、図14Aは、図13Aの関節部材36を拡大して示す一部斜視図であり、図14Bは、関節部材36の組付状態を拡大して示す部分斜視図である。
図13A及び図13Bに示すように、湾曲部34では、第1及び第2半円管70、72の先端部に連結される第1及び第2ベルト66、68が5つの関節部材36を挿通して、先端側の外殻部材32に固定ピン160により連結される。ヨー動作時には、第1及び第2ベルト66、68が互いに逆方向にスライド移動することにより、その一方が短くなり他方が長くなるため、湾曲部34が湾曲動作する。この湾曲動作を実施するために、第1及び第2ベルト66、68は、関節部材36の内側面に沿って摺動するように構成されている。
図14Aに示すように、関節部材36の中央筒部162には、中央筒部162の空洞部162aの外側に第1及び第2ベルト66、68をガイドするガイド部283が設けられている。ガイド部283は、中央筒部162を軸方向に貫通するベルト用空間部286(貫通空洞)と、空洞部162aとベルト用空間部286の間を隔てる突出壁部284とを備える。突出壁部284は、中央筒部162の上下に一対で延出する先端及び基端ヒンジ片164、166に直交するように空洞部162a内に立設される。第1及び第2ベルト66、68は、この突出壁部284によって隔てられるベルト用空間部286を挿通するように組み付けられる(図14B参照)。
一方、先端ヒンジ片164と基端ヒンジ片166は、第1及び第2ベルト66、68が挿通するベルト用空間部286に対し周方向に90°ずれた位置に形成されている。従って、先端ヒンジ片164と基端ヒンジ片166が関節ピン170により屈曲可能に連結されると、隣り合う関節部材36は、第1及び第2ベルト66、68のスライドに応じて、関節ピン170を基点に容易に屈曲する。また、第1及び第2ベルト66、68をスライドさせた場合(すなわち、湾曲部34を湾曲させた場合)には、突出壁部284により第1及び第2ベルト66、68が中央筒部162の内側面から離間することが回避され、そのスライド量に応じて関節部材36を連動して湾曲させることが可能となる。
さらに、関節部材36の内側面の上下には、中空チューブ82が内部を挿通可能となるように円弧面288が形成されている。中空チューブ82は、関節部材36が屈曲した場合に円弧面288に案内されることで追従して湾曲する。
中空チューブ82は、湾曲部34に追従して湾曲可能な可撓性を有し、その内部には、図13Cに示すように、導線60を挿通可能な内径からなる中空部82aが形成されている。中空部82aの基端側には、第2コネクタ174が接続され、中空部82aの先端側には第1コネクタ142が接続される。
また、中空チューブ82の内部には、中空部82aを囲うように2重のコイル(第1コイル290、第2コイル292)が配設されている。第1及び第2コイル290、292は、互いに異なる巻き方向(時計方向、半時計方向)に巻回した状態で重なり合い軸方向に延在している。従って、中空チューブ82が時計方向に回転すると、時計方向に巻回するコイル(例えば、第1コイル290)が拡径し、半時計方向に巻回するコイル(例えば、第2コイル292)が縮径するので、2重のコイル全体としては形状が維持されることになる。これにより、中空チューブ82が湾曲部34により湾曲した状態で回転しても容易に回転トルクを先端(グリッパ12)側に伝達させることができる。
マニピュレータ10は、以上のように先端動作部14及びハンドル18を構成することによりグリッパ12をヨー動作により横方向に傾けることができる。例えば、図11に示すように、グリッパ12を右方向に傾動させたい場合、ユーザは、右側スイッチ48aの基端部A1(又は左側スイッチ48の先端部A1)を押圧することにより(図10参照)、スイッチ48からの操作信号がコントローラ20に送信される。コントローラ20は、この操作信号を受けて所定の駆動信号(電力)を駆動モータ46に出力することで、駆動モータ46のモータ駆動主動ギア224を時計方向に回転させる。これにより、モータギアピン220(モータ駆動従動ギア222)が半時計方向に回転することになり、主動傘歯車218に噛み合う従動傘歯車216(ピニオンシャフト214)を、平面視で時計方向に回転させる。従って、ピニオン80も時計方向に回転して、第1スライド部材74を基端方向にスライドさせると共に、第2スライド部材76を先端方向にスライドさせる。
第1スライド部材74の基端方向の移動にともない第1半円管70及び第1ベルト66が基端方向にスライドする。また、第2スライド部材76の先端方向の移動にともない第2半円管72及び第2ベルト68が先端方向にスライドする。従って、湾曲部34では、第1ベルト66の軸方向長さが短くなり、第2ベルト68の軸方向長さが長くなるので、湾曲部34は、第1ベルト66側に湾曲するようにヨー動作を行う。その結果、湾曲部34の先端側に設けられるグリッパ12は、右方向に傾く姿勢に変動する。
なお、湾曲部34の湾曲においては、曲がる方向に応じて、第1及び第2ベルト66、68のスライド量を変更するように構成してもよい。すなわち、湾曲部34を傾ける場合、湾曲方向の内側のベルト(第1ベルト66)の方が外側のベルト(第2ベルト68)よりも湾曲部分の長さが必要以上に短くなる。このため、第1及び第2スライド部材74、76のラック78に、ピニオン80を直接的に噛み合わせずに図示しないギアを介在させることにより、湾曲方向の内側のベルト(右側の場合は第1ベルト66、左側の場合は第2ベルト68)のスライド量を少なくするように構成するとよい。
図15は、図1のマニピュレータ10のロール動作を説明する概略側面図であり、図16は、図1のハンドル18の内部の組付状態を説明する部分斜視図である。
次に、本実施の形態に係るマニピュレータ10のロール動作に関わる構成についてより具体的に説明していく。図15に示すように、マニピュレータ10先端のグリッパ12は、ロール動作により該グリッパ12の軸Orを中心に回転する。ここで、本実施の形態におけるグリッパ12(エンドエフェクタ)の軸Orとは、湾曲部34(関節部)よりも先端側において、実質的に直線状に延出する部分の中心軸である。この軸Orは、シャフト16の軸Osに対しヨー方向に傾動する(図4B参照)。
ロール動作は、ハンドル18の先端部に装着された回転ハンドル50をユーザが手動で操作することにより実施される。回転ハンドル50は、平面視(図10参照)で、ハンドル18の幅よりも小さな幅からなるブロック状の部材であり、その中心部の貫通孔50aには、第1ブラケット200のシャフト挿入筒204が挿入される(図9参照)。また、回転ハンドル50の側面には、ユーザが回転操作し易いように複数の羽50bが設けられている。
図15及び図16に示すように、回転ハンドル50の基端側には、回転ハンドル50と一緒に回転するラッチ用歯車294とハンドル主動ギア238が設けられており、これらラッチ用歯車294とハンドル主動ギア238は、ハンドル18の内部空間の先端部に配置される。ラッチ用歯車294の外側面は、円弧状に形成された谷部296と、谷部296同士の間に隆起する山部298とにより波状(凹凸面)に形成されている。このラッチ用歯車294の外側面には、ラッチ片300が当接する構成となっている。
ラッチ片300は、第2ブラケット202から先端方向に延出する装着板302に装着される装着部304と、この装着部304から斜め下方に延出し装着部304に対し弾性的に揺動可能な弾性片306とを有する(図9も参照)。弾性片306の下端部は、ラッチ用歯車294の谷部296に合う円弧状に形成されており、ラッチ片300の取付状態では谷部296に面接触する。回転ハンドル50が回転操作されると、ラッチ用歯車294も回転し、この回転によりラッチ片300(弾性片306)が谷部296と山部298に沿って弾性的に揺動する。弾性片306が山部298を越えて谷部296に移動する際には、その弾性力により積極的な変位がなされ、このラッチ片300の変位は、回転ハンドル50を操作するユーザに触感として伝達される。さらに、ラッチ片300の変位にともない、操作音が生じるため、回転ハンドル50の操作感をユーザに一層強く認識させることができる。これにより、ユーザは、回転ハンドル50の回転操作をより感覚的に行うことができる。
ハンドル主動ギア238は、第1ブラケット200に支持されている回転ピン232(ハンドル従動ギア236)を回転させる。ハンドル従動ギア236は、ハンドル主動ギア238に対し小さな外径に形成されており、回転ハンドル50の回転量に対し少ない回転量で回転する。回転ピン232の基端側に設けられる回転主動ギア230は、シャフト16の内筒86に固定されている回転従動ギア226を回転させ、この回転従動ギア226は内筒86を一体的に回転させる。
また、回転従動ギア226よりも基端側に装着されているスライド駆動軸228及びスリップリングシステム270(第1及び第2接触端子64a、64bを除く)は、内筒86と共に回転する。第1及び第2接触端子64a、64bは、第1及び第2円筒端子62a、62bが回転しても接触し続けるように弾性的に当接しており、内筒86の内部に配設される導線60と高周波電源部22との間で定常的な電気的導通を実現している。
図17は、図1のマニピュレータ10の先端部分を一部切り欠いて示す要部斜視図であり、図18Aは、図1のマニピュレータ10の先端部分を示す平面断面図であり、図18Bは、図1のマニピュレータ10の先端部分を示す側面断面図である。
図17に示すように、先端動作部14は、湾曲部34の先端側においてグリッパ12を周方向に回転するように構成される。すなわち、湾曲部34を構成する関節部材36の先端部には外殻部材32が連結されることで、この外殻部材32は回転しない構成となっている。一方、グリッパ12及びグリッパ保持部材30は、湾曲部34の内部に設けられる中空チューブ82から回転トルクが伝達されることで、グリッパ12の軸を中心に周方向に回転するように構成されている。
すなわち、中空チューブ82は、第2コネクタ174を介して、シャフト16の内筒86に接続されることで、内筒86と共に回転する(図13C参照)。図18A及び図18Bに示すように、中空チューブ82の先端部は、グリッパ保持部材30の係合筒部114内に挿入されており、第1コネクタ142の基端接続突部148が嵌合接続されている。また、第1コネクタ142の先端接続突部146は、円筒体138に嵌合されている。
円筒体138は、係合筒部114の内径に略一致する外径に形成されており、この係合筒部114は、中空チューブ82に接続されている円筒体138から回転トルクが伝達される。すなわち、中空チューブ82が回転し回転トルクが伝達されると、第1コネクタ142及び円筒体138が一体的に回転し、円筒体138の回転にともないグリッパ保持部材30(係合筒部114)も回転する。
また、円筒体138の先端部には、移動体94の挿入部134が挿入される。移動体94は、中央部の保持板128aが絶縁材により構成されており、この保持板128aは挿入部134の基端側まで延在し、基端部の上下両面には溶接部308が設けられている。この溶接部308には、導線60の先端部から露呈された金属材56(金属線)が溶接材料によって溶接される。なお、導線60は、先端部が第1コネクタ142により固定保持されて中空チューブ82の中空部82aを軸方向に延在している。移動体94は、挿入部134が円筒体138に嵌合されることで、円筒体138の回転にともない回転する。この移動体94の回転もグリッパ保持部材30に伝達されることで、グリッパ保持部材30を一層スムーズに回転させる。
グリッパ12を構成する第1及び第2グリッパ部材26、28は、グリッパ保持部材30に支持されているため、グリッパ保持部材30の回転と共に一緒に回転する。すなわち、マニピュレータ10は、図17に示すように、グリッパ12、グリッパ保持部材30及び中空チューブ82が、グリッパ12の軸Orを中心に回転する。
特に、本実施の形態に係るマニピュレータ10は、グリッパ12のロール動作として、グリッパ12の軸Orに対し360°無制限に回転可能となっている。すなわち、内筒86は、外筒84に対し無制限に回転自在であり、湾曲部34と重なる位置に配設される中空チューブ82も無制限に回転自在であり、外殻部材32に挿入されるグリッパ保持部材30(グリッパ12)も無制限に回転自在となっている。また、導線60は中空チューブ82及び内筒86内を延在するため、中空チューブ82及び内筒86と一体的に回転する。この際、導線60の基端側における高周波電源部22との電気的導通はスリップリングシステム270によって継続される。
図19は、図1のグリッパ12の開閉動作を説明する概略斜視図であり、図20Aは、図19のハンドル18側の動作を説明する第1側面図であり、図20Bは、図19のハンドル18側の動作を説明する第2側面図である。
次に、本実施の形態に係るマニピュレータ10のグリッパ12の開閉動作に関わる構成についてより具体的に説明していく。図19に示すように、グリッパ12は、開閉動作により第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分(噛合歯100)の近接及び離間がなされる。この開閉動作は、ハンドル18のトリガー52をユーザが手動で操作することにより実施される。
図20A及び図20Bに示すように、トリガー52は、回転機構88を構成する回転ピン232の下側に配置され、第1ブラケット200(ハンドル18)に対し揺動自在に支持される。すなわち、トリガー52のリンク部264が第1ブラケット200から延出する第2支持ピン266に支持され、この第2支持ピン266を基点に延出ハンドル262が先端及び基端方向に動作する。
トリガー52のリンク部264は、内筒86を動作させる進退移動機構98に接続される。具体的に、リンク部264の第2支持ピン266の挿入位置より上部(リンク用孔264a)には、第2リンク軸260を介してばねリンク256の先端が連結される。ばねリンク256は、基端方向に延在するように配置され、その基端が第1リンク軸254を介して応動部材246の下端部(下側孔246b)に接続される。応動部材246の上側孔246aには、第1ブラケット200から延出する第2支持ピン266が挿入され、この上側孔246aよりも上方に延出する一対のアーム250の凸部248(図9参照)は、スライド駆動軸228の凹部244に挿入される。
従って、トリガー52の延出ハンドル262を基端方向に引き操作すると、トリガー52は第2支持ピン266を基点に回動し、リンク部264の上端部(ばねリンク256の接続箇所)を先端方向に移動させる。これにともない、ばねリンク256も先端方向に移動して応動部材246の下端部を先端方向に移動させる。応動部材246は、下端部が先端方向に移動することで第1支持ピン252を基点に回動し、上端部側のアーム250を基端方向に移動させる。これにより、スライド駆動軸228(凹部244)が凸部248に押されて基端方向に移動する。その結果、スライド駆動軸228と共に内筒86が基端方向に移動して、この基端方向の動作力が、シャフト16を介して先端側の先端動作部14に伝達される。
なお、ばねリンク256のばね部258は、トリガー52の延出ハンドル262が引き操作された場合に、弾性的に伸張して、内筒86の基端方向の移動を抑止するものである。つまり、内筒86を基端方向に移動させた際の移動量は、グリッパ12が開状態から閉状態に移行する程度に制限され、それ以上にトリガー52を引き操作した場合は、ばね部258の弾性変形より操作力が吸収される。その結果、グリッパ12の閉じ動作に大きなトルクがかかることを回避することができる。例えば、内筒86の基端方向の移動は、図20Aに示す状態から図20Bに示す状態に移行する程度である。
ここで、内筒86に装着される回転従動ギア226と2つの円筒端子62は、その軸方向長さが内筒86の進退移動の移動量より長くなるように設計されている。このため、トリガー52が操作され、内筒86が基端方向に移動した場合でも、回転従動ギア226に対し回転主動ギア230が継続的に噛み合うことになり、第1及び第2円筒端子62a、62bに対し第1及び第2接触端子64a、64bが継続的に接触することができる。従って、内筒86を回転させつつ(すなわち、グリッパ12のロール動作を行いつつ)、グリッパ12の開閉を行い、処置対象Xに通電することができる。
図21Aは、図1のグリッパ12を示す要部平面図であり、図21Bは、グリッパ12の開状態を示す部分平面図であり、図21Cは、グリッパ12の閉状態を示す部分平面図である。内筒86が先端及び基端方向に移動する動作力は、内筒86の先端部に接続されている中空チューブ82にも伝達され、中空チューブ82を先端及び基端方向に移動させる。中空チューブ82の先端部には、第1コネクタ142を介して円筒体138が接続されており、円筒体138も中空チューブ82と一緒に移動させる。
ここで、中空チューブ82は、先端動作部14の湾曲部34よりも軸方向長さが長く形成されており、中空チューブ82が進退移動しても湾曲部34に常に重なるように配設されている。従って、湾曲部34が図11に示すように湾曲し、これに追従して中空チューブ82が湾曲していても、中空チューブ82を湾曲に沿って進退移動させることができ、中空チューブ82の先端側に接続されている円筒体138に進退移動の動作力を伝達させることができる。
図18Aに示すように、円筒体138の先端側及び基端側には、内側方向(中空空間140)に向かって所定量突出する接続ピン310a、310bが設けられている。第1コネクタ142は、先端接続突部146の根本部分に周方向に刻設された第1コネクタ側係合溝312を備え、基端側の接続ピン310aはこの第1コネクタ側係合溝312に挿入される。また、移動体94は、基端方向に突出する挿入部134に周方向に刻設された移動体側係合溝314を備え、先端側の接続ピン310bはこの移動体側係合溝314に挿入される。これにより、第1コネクタ142、円筒体138及び移動体94は、軸方向の接続が接続ピン310a、310bにより補強され、中空チューブ82から伝達される進退移動の動作力が、円筒体138を介して動体に確実に伝達される。
一方、グリッパ保持部材30は、摺動空間122に移動体94が配置され、移動体94の先端及び基端方向の移動に対しては固定された状態となる。すなわち、係合筒部114の外側面に形成された突出部120と、外殻部材32の内側面に形成された溝部154とが係合することで、グリッパ保持部材30は、移動体94の進退移動に対し、進退移動することが規制されて固定状態となる。
移動体94は、先端部(移動体側三又部132)の隙間130に第1及び第2グリッパ部材26、28を挟み込むと共に、各延出部90の長孔92に挿入された可動ピン96を保持している。図21A〜図21Cに示すように、移動体94が摺動空間122の先端側に位置している状態では、可動ピン96が長孔92の先端側に移動しており、第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分を離間させた開状態とする。
この開状態に対し、トリガー52の引き操作により内筒86が基端方向に移動させると、内筒86、第2コネクタ174、中空チューブ82、第1コネクタ142及び円筒体138を介して、移動体94に基端方向の動作力が伝達される。この際、第1コネクタ142、円筒体138及び移動体94は、接続ピン310a、310bにより連結されていることで、基端方向の動作力がスムーズに伝達される。移動体94が基端方向に移動すると、可動ピン96が長孔92をガイドしつつ基端方向に移動することになり、この長孔92のガイドに基づき第1及び第2グリッパ部材26、28の先端部分を互いに近接させて閉状態とすることができる。
また、グリッパ12の閉状態では、上述したように、異なる極性からなる第1及び第2グリッパ部材26、28の接続により通電状態が形成される。すなわち、第1及び第2グリッパ部材26、28により処置対象Xが挟まれた状態では、高周波電源部22から導線60を介して第1及び第2グリッパ部材26、28に供給された出力が処置対象Xに供給され、所定の処置(熱による焼灼等)がなされる。
以上のように、本実施の形態に係るマニピュレータ10によれば、湾曲部34と重なる位置に設けられる中空チューブ82が、湾曲部34のヨー動作に追従して湾曲することにより、例えば、処置対象Xが生体内の奥部に位置している場合でも、グリッパ12の姿勢(傾斜)を容易に変動させて処置対象Xにスムーズに送達することができる。
また、先端動作部14は、中空チューブ82により回転方向の動作力をグリッパ12に伝達することにより、グリッパ12を無制限に回転(ロール動作)させる。このため、湾曲部34の先端側においてグリッパ12の姿勢(グリッパ12の軸Orを中心とする回転方向の姿勢)を自由に変更することができ、グリッパ12の向きを処置対象Xに合うように何度でも変更して的確な処置を施すことが可能となる。
また、湾曲部34が複数(5つ)の関節部材36により構成されることで、湾曲部34は緩やかに湾曲することになる。このため、湾曲部34に重なる位置に設けられる中空チューブ82も、湾曲部34に容易に追従して湾曲する。そして、中空チューブ82は湾曲部34よりも長く延在しているため、内筒86から伝達される回転方向の動作力や先端及び基端方向の動作力を湾曲部34よりも先端側(グリッパ12)にスムーズに伝達させることができる。
さらに、中空チューブ82を介して伝達される先端及び基端方向の動作力により、グリッパ12の開閉動作を容易に行うことができる。従って、グリッパ12により処置対象Xを簡単に挟み込むことが可能となり、処置対象Xに所定の処置(通電する処置)を効率的に行うことができる。勿論、先端及び基端方向の動作力は、グリッパ12の開閉動作に用いるだけでなく、例えば、エンドエフェクタをそのまま先端及び基端方向に移動させるような動作に適用してもよい。
またさらに、湾曲部34と重なる位置にある中空チューブ82を回転させ、中空チューブ82に接続されるグリッパ保持部材30を外殻部材32と相対的に回転させることで、グリッパ保持部材30に保持されるグリッパ12を良好に回転させることができる。この際、グリッパ保持部材30の突出部120が外殻部材32の溝部154に対し回転自在に挿入されることで、グリッパ保持部材30の回転が溝部154によって案内される。よって、グリッパ12を一層円滑に回転させて、グリッパ12を所望の姿勢とすることができる。
さらにまた、中空チューブ82の内部(中空部82a)に異なる巻き方向に巻回する第1及び第2コイル290、292が配設されることで、中空チューブ82の強度を高めることができる。すなわち、内筒86から伝達される回転方向の動作力を、強度が高められ形状が維持された中空チューブ82を介して、グリッパ12にスムーズに伝達することができる。
また、本実施の形態に係るマニピュレータ10によれば、湾曲部34と重なる位置に設けられる中空チューブ82は、湾曲部34により湾曲しても、内筒86からの動作力を、湾曲状態のまま湾曲部34より先端側(グリッパ保持部材30や移動体94)に伝達させる。よって、湾曲部34よりも先端側において、グリッパ12の姿勢変動や開閉動作を簡単に行うことができる。
この場合、中空チューブ82が有する中空部82aに導線60を配設することにより、バイポーラ式の電気メスとして構成されるグリッパ12の通電経路を簡単に構築することができ、グリッパ12に安定的に電力を供給することができる。
例えば、ハンドル18から伝達される動作力が内筒86を回転させる動作力である場合、中空チューブ82はこの動作力により回転して、中空チューブ82の先端側に接続されているグリッパ12をロール動作させて処置対象Xに所望の姿勢で臨ませることができる。この際、中空チューブ82内に収容される導線60も一体的に回転するので、グリッパ12と導線60(通電経路)の断線を確実に防ぐことができる。
また、上述したように、マニピュレータ10では、スリップリングシステム270を設ける、すなわち円筒端子62の回転中及び静止中に、接触端子64が円筒端子62に電気的に接続する構成とすることができる。これにより、グリッパ12をロール動作させるために、内筒86を回転させても高周波電源部22との電気的導通を継続的に維持することができる。従って、グリッパ12が回転方向に姿勢を変動しても、電気的処置を良好に行うことができる。
また例えば、ハンドル18から伝達される動作力が内筒86を先端及び基端方向に移動させる場合、中空チューブ82が共に進退移動することでグリッパ12を開閉させることができる。この際、導線60が中空チューブ82と一体的に進退移動することで、グリッパ12と導線60(通電経路)の断線を確実に防ぐことができる。
さらに、本実施の形態に係るマニピュレータ10によれば、湾曲部34が複数(5つ)の関節部材36、ヒンジ部38、第1及び第2ベルト66、68によって構成されることにより、グリッパ12をシャフト16の軸Osと異なる方向に容易に湾曲させることができる。また、第1及び第2ベルト66、68を適用することにより、複数の関節部材36の並びを安定的に保持することが可能となり、例えば、湾曲部34を原点に復帰させる(湾曲部34をシャフト16の軸方向に揃える)等の動作を迅速且つ正確に行うことができる。さらに、第1及び第2ベルト66、68が湾曲部34を湾曲させる場合には、複数の関節部材36を円滑に連動させて湾曲させることができる。なお、ベルトは、上記のように湾曲部34に一対(2本)設けられる構成に限定されるものではなく、1本又は3本以上設けられてもよい。
一対のベルト(第1及び第2ベルト66、68)が設けられる場合は、第1及び第2ベルト66、68の相対的な動作により湾曲部34をスムーズに湾曲させることができる。つまり、第1ベルト66を基端方向に移動させ、第2ベルト68を先端方向に移動させるという反対方向の動作を行わせることで、グリッパ12は第1ベルト66側に簡単に傾くことになる。
また、ハンドル18にピニオン80と第1及び第2スライド部材74、76を備えることで、ピニオン80の回転駆動力を、第1及び第2スライド部材74、76の先端及び基端方向の動作力に簡単に変換することができる。そして、この動作力を、第1及び第2半円管70、72を介して、第1及び第2ベルト66、68に容易に伝達することができる。この場合、ピニオン80の回転量を制御することにより、湾曲部34の曲がり量(グリッパ12の傾動角度)を自在に変更することが可能となる。
さらに、マニピュレータ10は、ガイド部283により第1及び第2ベルト66、68をガイドすることで、中央筒部162に対し第1及び第2ベルト66、68が円滑に移動して、第1及び第2ベルト66、68が先端及び基端方向に移動する動作力を、周囲の関節部材36に簡単に伝達することができる。湾曲部34の湾曲時には、第1及び第2ベルト66、68が外側に膨らむことを抑制できる。さらに、空洞部162aの外側にガイド部283が設けられることで、空洞部162aには、エンドエフェクタ(グリッパ12)を動作させる種々の伝達部材を適宜配置することができる。
また、ガイド部283が空洞部162aとベルト用空間部286の間を隔てる突出壁部284を備えることにより、湾曲部34の湾曲時には、第1及び第2ベルト66、68が内側(関節部材36の中心部)に向かって撓むことが突出壁部284によって制限されるため、湾曲部34をより一層スムーズに湾曲させることができる。
さらに、中央筒部162の内側面に中空チューブ82に接触可能な円弧面288が形成されることで、湾曲部34が湾曲した場合に、中央筒部162内を挿通する中空チューブ82を容易に湾曲させることができる。
またさらに、本実施の形態に係るマニピュレータ10によれば、ハンドル18内に回転機構88及び進退移動機構98を備えることで、内筒86を先端及び基端方向に移動させると共に、内筒86を回転させることができる。この内筒86の2種類の動作力は、シャフト16の先端に設けられる先端動作部14のグリッパ12に伝達され、グリッパ12の姿勢変動や開閉動作を容易に行わせることができる。
この場合、回転機構88の回転従動ギア226と回転主動ギア230のうちいずれか一方の軸方向長さが進退移動機構98による内筒86の移動量よりも長く形成されることで、進退移動機構98により内筒86が先端及び基端方向に移動しても、回転従動ギア226と回転主動ギア230を常に噛み合わせることができる。よって、内筒86を安定的に回転させることができる。
また、回転ハンドル50がハンドル18の近傍位置に設けられることで、マニピュレータ10のユーザは、ハンドル18を把持した状態で近傍位置にある回転ハンドル50を簡単に操作することができる。また、回転ハンドル50がハンドル18の幅よりも狭く形成されていることで、手技中に医療機器(鉗子やマニピュレータ10等)を複数使用する場合に、回転ハンドル50が医療機器に干渉することを低減させることができる。
さらに、回転ハンドル50の回転にともない回転するラッチ用歯車294と、ラッチ用歯車294に弾性的に当接するラッチ片300とが設けられることで、回転ハンドル50を操作する際に、ユーザにラッチ感を与えることができる。これにより、ユーザは回転ハンドル50の回転量を感覚的に認識することができ、内筒86の回転を容易に調整することができる。
またさらに、進退移動機構98においては、応動部材246の回動動作に基づき、凸部248が先端及び基端方向に変位し、凸部248が挿入されている凹部244を有するスライド駆動軸228も先端及び基端方向に移動する。従って、スライド駆動軸228が装着されている内筒86を先端及び基端方向にスムーズに移動させることができる。また、スライド駆動軸228は、周方向に凹部244が形成されているため、凸部248と相対的に回転可能となっており、簡単な構成で内筒86の回転を許容することができる。
すなわち、本実施の形態に係るマニピュレータ10は、生体内に挿入されるグリッパ12に高い動作性を得ることができ、処置対象Xを効率的且つ正確に処置することができる。
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。例えば、上述したマニピュレータ10では、ヨー動作のみを電動(駆動モータ46)で動作させる構成としているが、これに限定されないことは勿論である。すなわち、マニピュレータ10は、ヨー動作、ロール動作又は開閉動作のうち、いずれか1つ又は2以上の動作を電動で動作させる構成とすることができ、或いは、ヨー動作、ロール動作及び開閉動作を全て手動で動作させる構成とすることもできる。