JP2013218992A - 燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体 - Google Patents

燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体 Download PDF

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Hiroyuki Kawai
博之 川合
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達也 畑中
Kazutaka Hiroshima
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Abstract

【課題】燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体を提供する。
【解決手段】中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする、燃料電池電極用触媒微粒子。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体に関する。
燃料電池は、燃料と酸化剤を電気的に接続された2つの電極に供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。
従来、燃料電池のアノード及びカソードの電極触媒として、担持白金及び白金合金材料が採用されてきた。しかし、現在の最新技術の電極触媒に必要な量の白金は、燃料電池の大量生産を商業的に実現可能にするには依然として高価である。したがって、白金をより安価な金属と組み合わせることにより、燃料電池カソード及びアノードに含まれる白金の量を減らす研究がなされてきた。
白金とより安価な金属との組み合わせの研究の1つとして、白金の単原子層をパラジウムナノ粒子上に堆積させる研究がある。このような研究を応用した技術として、特許文献1には、白金以外の金属原子又は白金以外の金属原子による合金からなり且つ所定の平均粒径を有するコア粒子と、このコア粒子の表面に白金により形成され且つ所定の平均厚さを有するシェル層とを有する金属粒子が導電性担体に担持された白金含有触媒が開示されている。また、特許文献1の明細書の段落[0235]−[0264]には、当該白金含有触媒中の白金の電子状態の計算方法及び計算結果が記載されている。
特開2011−072981号公報
上記特許文献1の明細書の段落[0235]には、白金含有触媒の電子状態を計算するに当たり、密度汎関数法を用いることが記載されている。しかし、密度汎関数法は、通常、絶対零度かつ真空雰囲気下の対象を計算する方法である。一方、燃料電池環境下における実際の白金の電子状態は、燃料電池の運転温度、燃料電池の雰囲気、燃料電池の作動電位により大きく変化する。したがって、上記特許文献1に記載された方法は、実際の燃料電池環境下における白金の電子状態を精確に反映したものではない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池電極用触媒微粒子は、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする。
本発明においては、前記表面に存在する白金原子数の割合が、前記触媒微粒子全体に含まれる白金原子数の90%以上を占めることが好ましい。
本発明においては、前記表面に存在する白金原子の酸化数は、X線吸収端近傍構造(XANES)のPtLIII端規格化ピーク強度より求められることが好ましい。
本発明の膜・電極接合体は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体であって、前記カソード触媒層は、上記燃料電池電極用触媒微粒子を含むことを特徴とする。
本発明によれば、燃料電池の運転環境下で酸化数を小さく維持できる白金原子を粒子最表面に含むことにより、燃料電池のカソードにおいて優れた触媒活性及び耐久性を発揮できる触媒微粒子が得られる。
本発明の膜・電極接合体の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 白金酸化数に対する規格化ピーク強度の検量線である。 X線吸収強度を測定する工程において、高強度X線を照射する設備の典型例の模式図である。
1.燃料電池電極用触媒微粒子
本発明の燃料電池電極用触媒微粒子は、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする。
今日の計算技術においても、コアシェル構造を有する触媒(以下、コアシェル触媒と称する。)表面の電子状態を求めるには、莫大な計算コスト及び計算時間を必要とする。したがって、上記特許文献1に記載されたような従来の計算方法においては、現実のコアシェル触媒の構造よりもより単純な構造を仮定した計算系の下で、コアシェル触媒表面の電子状態が求められている。当該計算系では、絶対零度且つ真空中における、無限に広がる金属平面上に形成された、欠陥のない白金層中の白金原子の電子状態しか求めることができない。しかし実用面から鑑みると、アイオノマー等の影響による強酸性下、酸素分圧下、且つ室温から100℃程度の温度条件下における、シェルに欠陥を有するコアシェル触媒の粒子中の白金原子について電子状態を把握する必要がある。
したがって、従来の計算系では、現実の燃料電池の作動環境下における、コアシェル触媒表面の電子状態を精確に求めることができない。また、従来の方法では、コアシェル触媒表面の電子状態を、膜・電極接合体に用いられた状態で、リアルタイムで把握することが不可能であった。
本発明者らは、鋭意努力の結果、酸素雰囲気下であっても表面に存在する白金原子の酸化数が極めて小さい触媒微粒子を開発し、本発明を完成させた。
本発明に係る燃料電池電極用触媒微粒子(以下、本発明に係る触媒微粒子と称する場合がある。)は、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える。
中心粒子を構成する材料は、最外層に用いられる材料、好ましくは白金と格子不整合を生じない金属材料であることが好ましい。また、コストを抑える観点からは、中心粒子を構成する材料は、最外層に用いられる材料よりも安価な金属材料であることが好ましい。
この様な観点から、中心粒子に含まれる材料は、パラジウム、金、イリジウム、銀及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料であることが好ましい。これらの金属材料のうち、パラジウム、又は上記金属材料を含むパラジウム合金を中心粒子に使用することがより好ましい。
中心粒子の平均粒径は、後述する触媒微粒子の平均粒径以下であれば、特に限定されない。なお、中心粒子1つ当たりのコストに対する、中心粒子の表面積の割合が高いという観点から、中心粒子の平均粒径は、下限として好ましくは3nm以上、特に好ましくは4nm以上、上限として好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。
なお、本発明に用いられる粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
本発明者らは、本発明に係る触媒微粒子について、最外層の欠陥が多い場合には経時的に触媒微粒子全体が破壊され消耗するが、一方、最外層の欠陥が少ない場合には当該欠陥が経時的に修復され触媒微粒子が再生することを見出した。本発明者らは、本発明に係る触媒微粒子の性能及び耐久性を評価する指標として、最外層の欠陥に関連する物性値でもある、微粒子表面の白金の酸化数に着目した。
ここで、微粒子表面の白金の酸化数とは、触媒微粒子の表面に存在する白金の酸化数の平均を指す。微粒子表面の白金の酸化数は、X線吸収端近傍構造(XANES)のPtLIII端規格化ピーク強度より求められることが好ましい。X線吸収端近傍構造のPtLIII端規格化ピーク強度については後に詳しく説明する。
本発明に係る触媒微粒子表面の白金の酸化数は、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下において0〜0.25である。表面の酸化数が0.25を超える触媒微粒子は、最外層の欠陥が多く経時的な修復が困難なため、触媒活性及び耐久性に著しく劣ると考えられる(比較例2)。
従来技術において、酸素雰囲気下において酸化数が0〜0.25の白金原子を含むコアシェル触媒は存在し得なかった。UPD−Cuを原料として白金を置換メッキにより析出させる従来の製造方法においては、コアシェル触媒の表面をすべて白金で覆うことはできなかった。その理由は、白金析出後の触媒微粒子の粒径は白金析出前の中心粒子の粒径よりも大きくなるため、白金原子は中心粒子の表面に存在する原子よりも多く析出する必要があるのに対し、Cu−UPDにより実際に析出する銅原子数は、中心粒子の表面に存在する原子(例えば、パラジウム原子)の数の8割程度に留まるからである。加えて、従来技術では、コアシェル触媒の作製時において触媒分散処理が行われていた。この触媒分散処理により、コアシェル触媒の白金を含む最外層に欠陥が生じやすくなるという課題があった。このため、従来のコアシェル触媒においては、白金を含む最外層には欠陥が存在し、当該欠陥付近の一部の白金が酸化しやすい状態となる結果、白金の酸化数は0.25よりも大きいものとなった。
最外層は白金を含んでいれば特に材料に制限はない。最外層は、触媒活性が高い材料からなることが好ましい。ここでいう触媒活性とは、燃料電池触媒として使用した際の活性のことを指す。この様な観点から、最外層に含まれる材料は、白金のみ、又は、イリジウム、ルテニウム、ロジウム及び金からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料と白金との合金であることが好ましい。
中心粒子の溶出をより抑制できるという観点から、中心粒子に対する最外層の被覆率が、0.8〜1であることが好ましい。
仮に、中心粒子に対する最外層の被覆率が、0.8未満であるとすると、電気化学反応において中心粒子が溶出し、その結果、触媒微粒子が劣化するおそれがある。
なお、ここでいう「中心粒子に対する最外層の被覆率」とは、中心粒子の全表面積を1としたときの、最外層によって被覆されている中心粒子の面積の割合のことである。当該被覆率を算出する方法の一例としては、TEMによって触媒微粒子の表面の数か所を観察し、観察された全面積に対する、最外層によって中心粒子が被覆されていることが観察によって確認できた面積の割合を算出する方法が挙げられる。
本発明に係る触媒微粒子においては、最外層が単原子層であることが好ましい。このような触媒微粒子は、2原子層以上の最外層を有する触媒微粒子と比較して、最外層における触媒性能が極めて高いという利点、及び、最外層の被覆量が少ないため材料コストが低いという利点がある。
触媒微粒子表面に存在する白金原子数の割合は、触媒微粒子全体に含まれる白金原子数の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。このように、白金原子のほとんどが触媒微粒子表面に存在することにより、優れた触媒活性と材料コストの低減を両立させることができる。また、触媒微粒子表面に存在する白金原子数の割合は、最外層全体に含まれる白金原子数の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
なお、触媒微粒子の平均粒径は、下限として好ましくは3nm以上、特に好ましくは4nm以上、上限として好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。
触媒微粒子は担体に担持されていてもよい。電極触媒層に導電性を付与するという観点から、担体が導電性材料であることが好ましい。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
触媒微粒子の製造方法は、白金を含む最外層を中心粒子の表面に形成できる方法であれば特に限定されない。触媒微粒子の製造方法は、具体的には、中心粒子に金属の単原子層を形成し、当該金属の単原子層を白金を含む最外層に置換するアンダーポテンシャル析出法が好ましい。アンダーポテンシャル析出法の中でも、銅単原子層を用いた銅アンダーポテンシャル析出法(Cu−UPD)が好ましい。
本発明に係る触媒微粒子は、燃料電池のカソード電極に用いられてもよいし、アノード電極に用いられてもよい。本発明に係る触媒微粒子は、燃料電池のカソード電極に用いられることが好ましい。
2.膜・電極接合体
本発明の膜・電極接合体は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体であって、前記カソード触媒層は、上記燃料電池電極用触媒微粒子を含むことを特徴とする。
膜・電極接合体の製造時及び/又は膜・電極接合体の使用時において、後述する白金酸化数の求め方により算出される白金の酸化数が0〜0.25である膜・電極接合体のみを抽出し、それ以外の膜・電極接合体を排除することによって、優れた触媒能及び耐久性を有する触媒微粒子を含む膜・電極接合体のみを選別することができる。触媒微粒子中の白金の酸化数は、膜・電極接合体の製造工程や運転履歴等に依存して変化するため、膜・電極接合体に加工する前の触媒微粒子中の白金の酸化数、未使用の膜・電極接合体中に含まれる触媒微粒子中の白金の酸化数、及び、使用後の膜・電極接合体中に含まれる触媒微粒子中の白金の酸化数は、必ずしも一致しない。本発明においては、膜・電極接合体中の触媒微粒子表面の電子状態をリアルタイムで測定した値を指標として用いるので、未使用、使用中、及び/又は使用後の膜・電極接合体を選別し、放電効率の低い膜・電極接合体を排除することができる。
本発明においては、上述した温度条件、供給ガスの条件、及び電圧条件の下に、白金の酸化数が0〜0.25であることが好ましい。
本発明に係る膜・電極接合体は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える。アノード触媒層及び/又はカソード触媒層中に、上述した触媒微粒子が含まれる。
図1は、本発明に用いられる膜・電極接合体の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。膜・電極接合体100は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)1と、前記電解質膜1を挟んだ一対のカソード電極6及びアノード電極7とでなる。通常は電極として、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成されたものが用いられる。すなわち、カソード電極6はカソード触媒層2とガス拡散層4とを積層したものからなり、アノード電極7はアノード触媒層3とガス拡散層5とを積層したものからなる。通常は、さらに膜・電極接合体100を電極の外側から一対のセパレータとで挟んで燃料電池として用いる。セパレータと電極の境界にはガス流路が確保されている。
高分子電解質膜とは、燃料電池において使用される高分子電解質膜であり、ナフィオン(商品名)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂のようなフッ素系高分子電解質を含むフッ素系高分子電解質膜の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリパラフェニレン等のエンジニアリングプラスチックや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の汎用プラスチック等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、ボロン酸基等のプロトン酸基(プロトン伝導性基)を導入した炭化水素系高分子電解質を含む炭化水素系高分子電解質膜等が挙げられる。
電極は、触媒層とガス拡散層とを備える。アノード触媒層及びカソード触媒層はいずれも、上述した触媒微粒子、導電性材料及び高分子電解質を含有する触媒インクを用いて形成できる。触媒インク中の高分子電解質としては、上述した高分子電解質膜同様の材料を使用できる。本発明に用いられる膜・電極接合体は、カソード触媒層中に触媒微粒子を含むことが好ましい。
触媒担体である導電性材料としては、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料も使用できる。導電性材料は、触媒層に導電性を付与するための導電性材料としての役割も担っている。
触媒層の形成方法は特に限定されず、例えば、触媒インクをガス拡散シートの表面に塗布、乾燥することによって、ガス拡散シート表面に触媒層を形成してもよいし、或いは、電解質膜表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜表面に触媒層を形成してもよい。或いは、転写用基材表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、転写シートを作製し、該転写シートを、電解質膜又はガス拡散シートと熱圧着等により接合した後、転写シートの基材フィルムを剥離する方法で、電解質膜表面上に触媒層を形成するか、ガス拡散シート表面に触媒層を形成してもよい。
触媒インクは上記のような触媒及び電極用電解質等を、溶媒に溶解又は分散させて得られる。触媒インクの溶媒は、適宜選択すればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒、又はこれら有機溶媒の混合物やこれら有機溶媒と水との混合物が使用できる。触媒インクには、触媒及び電解質以外にも、必要に応じて結着剤や撥水性樹脂等のその他の成分を含有させてもよい。
触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択することができる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等が挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥等が挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件に制限はなく、適宜設定すればよい。また、触媒層の膜厚は、特に限定されないが、1〜50μm程度とすればよい。
ガス拡散層を形成するガス拡散シートとしては、触媒層に効率良く燃料を供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるものが挙げられる。導電性多孔質体の厚さは、50〜500μm程度であることが好ましい。
ガス拡散シートは、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層は、必ずしも必要なものではないが、触媒層及び電解質膜内の水分量を適度に保持しつつ、ガス拡散層の排水性を高めることができる上に、触媒層とガス拡散層間の電気的接触を改善することができるという利点がある。
上記したような方法によって触媒層を形成した電解質膜及びガス拡散シートは、適宜、重ね併せて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
作製された膜・電極接合体は、好ましくは、反応ガス流路を有するセパレータで狭持され、単セルを形成する。セパレータとしては、導電性及びガスシール性を有し、集電体及びガスシール体として機能しうるもの、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等が使用できる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。このようなセパレータを、適切に圧縮成形又は切削加工することによって、上述した反応ガス流路を形成することができる。
3.触媒微粒子の白金酸化数の求め方
触媒微粒子の白金酸化数の求め方の典型例は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備え、且つ、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極触媒層に含む膜・電極接合体における、前記触媒微粒子の白金酸化数の求め方であって、前記膜・電極接合体の前記電極触媒層に高強度X線を照射し、吸収強度を測定する工程、及び、前記吸収強度から、前記触媒微粒子中の白金原子の電子状態を示す酸化数を算出する工程、を有することを特徴とする。
本典型例は、吸収強度を測定する工程(1)、及び酸化数を算出する工程(2)、からなる。本典型例は、必ずしも上記2工程のみに限定されることはなく、上記2工程以外にも、例えば、算出された酸化数に基づいて、触媒微粒子及び/又は膜・電極接合体を選別する工程等を有していてもよい。
以下、上記工程(1)〜(2)について、順に説明する。
3−1.吸収強度を測定する工程
本工程は、膜・電極接合体の電極触媒層に高強度X線を照射し、吸収強度を測定する工程である。
本工程においては、白金原子に対し、好適にはエネルギーを連続的に変化させた高強度X線を照射することにより、白金原子の内殻電子を非占有軌道以上のエネルギーに励起する。入射X線の励起エネルギーと内殻電子の結合エネルギーとの差に相当する運動エネルギーをもつ光電子の放出により、X線の吸収スペクトルにおける吸収端の近傍に微細構造が現れる。当該微細構造から、触媒微粒子中の白金原子の電子状態の解析が可能となる。
このように、X線の吸収を応用した解析法を、X線吸収微細構造(X−ray absorption fine structure:XAFS)解析法という。
特に、吸収端近傍数10eV程度に現れる微細構造をX線吸収端近傍構造(XANES:X−ray absorption near edge structure)という。XANESは非占有軌道への励起に起因し、白金原子の酸化数や配位構造等に依存したスペクトル構造である。一方、吸収端から約1000eV高エネルギー側まで続く変調構造を広域X線吸収微細構造(EXAFS:Extended X−ray absorption fine structure)という。EXAFSは、励起電子と近接原子からの散乱電子の相互作用に起因して得られる振動構造であり、フーリエ変換により得られる動径分布関数は、白金原子の局所構造(周囲の原子種、配位原子の数、原子間距離)に関する情報を含む。
触媒反応条件下で触媒構造の変化を観察できるオペランドXAFSにより、従来の白金担持カーボン中の白金の酸化状態を、燃料電池の非放電状態中において観察することは知られている(Tada,M.et al.Angew.Chem.Int.Ed.,2007,46,4310−4315)。しかし、白金担持カーボンを用いたこれまでのオペランドXAFSでは、電極反応に関与する白金微粒子表面の白金原子の内殻電子のみならず、電極反応に関与しない白金微粒子内部の白金原子の内殻電子も励起されてしまうため、白金微粒子表面の酸化状態のみを調べることは不可能であった。
一方、本典型例の手法においては、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子を用いており、観察すべき白金原子が略全て触媒微粒子表面の最外層に存在するため、触媒の活性を司る触媒微粒子表面の白金の酸化状態のみを観察できる。
本工程のオペランドXAFSにおいては、触媒微粒子をカソード触媒層及び/又はアノード触媒層中に含む膜・電極接合体を燃料電池運転環境下に置き、高強度X線を照射して、好ましくはPtLIII端の吸収強度を測定する。
図3は、本工程において高強度X線を照射する設備の典型例の模式図である。なお、二重波線は図の省略を意味する。図3に示すように、加速器リングにより加速され、アンジュレータ等の挿入光源から発せられる高強度X線は、適宜輸送パイプにより実験設備内に導入される。実験設備に導かれた高強度X線は、2枚のミラー、コンパクト分光器、及びさらに2枚のミラーにより単色化され、サンプルである膜・電極接合体に照射される。加速器としては、例えば、高輝度放射光施設Spring−8等が使用できる。
膜・電極接合体に照射される高強度X線のエネルギーは10,000〜13,000eVであることが好ましい。X線のエネルギーが10,000eV未満であるとすると、白金の内殻電子を非占有軌道以上のエネルギーに励起することが難しい。一方、X線のエネルギーが13,000eVを超えるとすると、エネルギー吸収過程において白金の内殻電子が非占有軌道に励起される過程以外の過程を多く含んでしまうため、白金の電子状態の解析に適さなくなるおそれがある。
X線のエネルギーは11,000〜12,000eVであることがより好ましく、11,500〜11,700eVであることがさらに好ましい。
XAFSにおいては、膜・電極接合体の運転条件を特に制限することなく、高強度X線を膜・電極接合体に照射し、触媒微粒子中の白金の酸化状態を観測できる。換言すると、XAFSにより、あらゆる運転条件下の膜・電極接合体について、触媒微粒子中の白金の酸化状態を観測できる。本典型例に用いられる膜・電極接合体の運転条件としては、例えば、以下の条件が挙げられる。
供給ガス圧力:0.2〜2気圧の純酸素(カソード)又は水素(アノード)
供給ガス露点:0〜80℃
電圧:0〜1.0V
上記供給ガスの条件、及び電圧条件は、いずれも、膜・電極接合体の通常の運転条件である。
XAFSは、図3に示したコンパクト分光器内の分光結晶を高速で回転させてX線エネルギーを掃引しながら透過モードで測定する、いわゆるSuperQuickXAFSが好ましい。
本典型例に用いられる触媒微粒子及び膜・電極接合体の詳細は、上述した通りである。測定すべき触媒微粒子以外の材料におけるX線吸収を極力減らすため、本典型例に用いられる膜・電極接合体は、触媒微粒子以外の金属元素をX線の光路上に含まないことが好ましい。光路上から触媒微粒子以外の金属元素を除くことにより、他の金属元素に由来するノイズを予め排除できるため、運転中の膜・電極接合体における触媒微粒子の白金酸化数を求めるのに十分なシグナル/ノイズ比を有するX線吸収スペクトルが得られる。
3−2.酸化数を算出する工程
本工程は、上記工程により測定される吸収強度から、触媒微粒子中の白金原子の電子状態を示す酸化数を算出する工程である。
吸収強度から酸化数を算出するには、例えば、酸化数の公知な物質について吸収強度を予め測定し、当該測定結果から作成した検量線を参照することができる。なお、後述する0以上0.25以下の白金の酸化数の範囲から鑑みて、本工程においては、白金の酸化数が0の物質(白金金属等)の吸収強度、白金の酸化数が2の物質(白金(II)アセチルアセトナート等)の吸収強度、及び、白金の酸化数が4の物質(酸化白金(IV)等)の吸収強度をそれぞれ測定し、当該測定結果から作成した検量線を用いればよい。
測定した膜・電極接合体中の白金原子の吸収強度を当該検量線により酸化数に換算でき、触媒微粒子の表面を覆う白金の酸化数を算出できる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
1.カーボン担持触媒微粒子の作製
[製造例1]
パラジウム担持カーボン触媒(以下、Pd/Cと称する場合がある。)(BASF社製、Pd担持率20%)を白金板に200mg塗布した。Pd/Cを塗布した当該白金板を作用極として、0.1M HClO及び50mM CuSOの混合水溶液中で、0.4V(vsRHE)の電位のまま30分間保持した。これにより、Cu−UPD現象を利用して、パラジウム粒子の表面に銅単原子層を析出させた。
グローブボックス中で、銅を析出させたPd/Cを白金板上から掻き落とし、0.1M HSO水溶液中に分散させた後、0.1M HClO及び50mM NaPtClの混合水溶液中に滴下した。この滴下により、Cuの置換メッキを進行させ、パラジウム粒子の表面に白金単原子層を析出させた。
白金を析出させたパラジウム担持カーボン(以下、Pt/Pd/Cと称する場合がある。)を濾過して分離し、洗浄した後、窒素雰囲気下で50mM NaPtCl水溶液中に加え、24時間攪拌した。
その後、ろ過してPt/Pd/Cを分離し、洗浄及び乾燥することにより、製造例1のカーボン担持触媒微粒子150mgを作製した。
[製造例2]
RuOでコートされた直径14cmのチタンボウルを反応容器として合成を行った。まず、反応容器中に水及び平均粒径6nmのPd/C 300mgを加え、超音波処理を行ってPd/Cを高分散させることにより、Pd/Cの触媒粒度を10nm以下に調整した。次に、0.1M硫酸中にPd/Cを分散させ、0.05〜0.4Vの電位サイクルにてパラジウム酸化物を除いた。続いて、Pd/Cが分散した0.1M硫酸中に硫酸銅溶液を加えて、銅イオンの濃度が50mMとなるように調製した。次に、銅イオン溶液を適時攪拌しながら、0.4V Cu−UPD電位を30分間保持し、Cu−UPDを行った。
銅の析出量は、UPD電流値より求めることができる。銅の析出量の1.1倍の白金量に相当する量の50mM KPtCl水溶液を、攪拌しながら銅イオン溶液にゆっくりと加え、白金の置換メッキを行った。
その後、50mM KPtCl水溶液をさらに過剰に加え、白金析出を行った。このとき、パラジウム粒径並びに合成後の白金及びパラジウムのモル比率から求まる被覆率が90〜100%となるように、KPtCl水溶液を加えた後の溶液中の白金イオンの白金イオン濃度と反応時間を調整した。なお、被覆率は、白金質量(質量%)/パラジウム質量(質量%)=(80.021−24.085×LN(パラジウム粒径(nm)))/(100−(80.021−24.085×LN(E36))で求めることができる。
以上の工程を経て、製造例2のカーボン担持触媒微粒子を作製した。
2.膜・電極接合体の作製
[実施例1]
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgに対し、水14g、2−プロパノール8g、及び20%ナフィオン(登録商標)水溶液0.65gを加え、カソード触媒インクを調製した。得られたカソード触媒インクをPTFEビーズにより分散処理した後、スプレー法により、Pt目付1mg/cmになるように電解質膜に塗布し、カソード触媒層を形成した。
一方、製造例1のカーボン担持触媒微粒子の替わりにPd/Cを用いて、カソード触媒インクと同様にアノード触媒インクを調製した。電解質膜における、カソード触媒層を形成した面の反対側に、スプレー法によりPd目付0.3mg/cmになるようにアノード触媒インクを塗布してアノード電極を形成し、実施例1の膜・電極接合体を作製した。
[比較例1]
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgを、市販の白金担持カーボンに替えたこと以外は、実施例1と同様に、比較例1の膜・電極接合体を作製した。
[比較例2]
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgを、製造例2のカーボン担持触媒微粒子300mgに替えたこと以外は、実施例1と同様に、比較例2の膜・電極接合体を作製した。
3.オペランドXAFSの測定
実施例1、比較例1、及び比較例2の膜・電極接合体を、それぞれ、X線透過度の高い構造を有するX線測定用セルに組み込んだ。当該X線測定用セルに組み込むことにより、カソード触媒層中の白金及びパラジウム、並びにアノード触媒層中のパラジウム以外に、X線の光路上に金属が無い状態として、放電及び測定に供した。なお、単セルの構成は公知文献(Tada,M.et al.Angew.Chem.Int.Ed.,2007,46,4310−4315)を参考に作製した。
高輝度放射光施設スプリング8(ビームラインBL33XU)において、実施例1、比較例1、及び比較例2の膜・電極接合体についてそれぞれ放電を行いながら、以下の手順によりPtLIII端の吸収強度を測定した。
まず、リングに併設されたアンジュレータから発するX線を、輸送パイプにて実験棟へ導き、2枚のミラー、コンパクト分光器、さらに2枚のミラーを用いて単色化した。SuperQuickXAFS法による測定を、透過モードで行った。X線のエネルギーは、11,500〜11,700eVとした。XAFS測定中の膜・電極接合体の運転条件は以下のとおりである。
膜・電極接合体の温度は60℃とした。まず、フル加湿状態の純窒素を空気極に、フル加湿状態の純水素を燃料極に供給した。ガスの圧力は両極とも大気圧とし、ガス流量は両極とも1L/sとし、ガス露点は両極とも35℃とした。次に、セル電圧を0.13Vから0.9Vへ10mV/sで掃引した後、0.9Vに60秒間保持し、空気極への供給ガスを純窒素から純酸素に切り替えた。続いて、30秒から60秒までの、30秒間のPtLIII吸収端のX線吸収スペクトルを1秒ごとに測定した。
このX線吸収スペクトルを一般的なデータ処理により規格化し、規格化ピーク強度を求めた。当該規格化ピーク強度の30秒間の平均をとることにより、再現性の良いデータが得られた。60℃、酸素雰囲気下、且つ0.9Vにおける、実施例1に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.30、比較例1に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.32、比較例2に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.32であった。
PtLIII吸収端の規格化ピーク強度は、白金酸化状態の良い指標となることが知られている。したがって、標準試料として白金金属(Pt0+)、白金アセチルアセトナート(Pt2+)、及び酸化白金(Pt4+)を用いて、それぞれのPtLIII吸収端の規格化ピーク強度を求め、白金の酸化数に対する規格化ピーク強度の検量線(図2)を作成した。
図2に示す検量線を用いて、規格化ピーク強度から実作動状態の白金の平均酸化数を得た。ここで、白金の平均酸化数とは、粒子全体の白金の酸化数の平均を指す。当該検量線より、実施例1に用いられた白金の平均酸化数は0.20であり、比較例1及び比較例2に用いられた白金の平均酸化数はいずれも0.30であることが分かる。
下記表1は、実施例1、比較例1、及び比較例2の膜・電極接合体に用いられた白金原子について、規格化ピーク強度、白金の平均酸化数、最表面白金原子比率、及び0.9Vにおける粒子最表面の白金酸化数をまとめた表である。
下記表1中の最表面白金原子比率とは、触媒微粒子全体に占める白金原子数を100%としたときの、触媒微粒子の最表面に存在する白金原子数の割合を示したものである。実施例1及び比較例2に用いた触媒微粒子の最表面白金原子比率は、最外層(単原子層)のみに白金が存在しているため100%である。一方、比較例1に用いた白金微粒子の場合には、微粒子内部にも当然に白金原子が存在するため、最表面白金原子比率は約5割となる。
下記表1中の0.9Vにおける粒子最表面の白金酸化数とは、上述した白金の平均酸化数とは異なり、触媒反応に寄与しない触媒微粒子の内部を除いた、触媒微粒子の最表面に存在する白金の酸化数を指す。実施例1及び比較例2においては、触媒微粒子の構造上、白金が最外層(単原子層)にしか存在しない。したがって、実施例1及び比較例2においては、規格化ピーク強度から換算される白金の平均酸化数が、そのまま粒子最表面の白金の酸化数となる。一方、比較例1においては、白金微粒子内部に酸化数の低い白金原子を含むため、粒子最表面の白金酸化数は上記平均酸化数よりも大きな値となる。
Figure 2013218992
以上の結果から、白金板にPd/Cを塗布した後に電位を掃引する方法により得られる製造例1の触媒微粒子中の白金は、硫酸銅水溶液中にPd/Cを分散させた後に電位を掃引する方法により得られる製造例2の触媒微粒子中の白金と比較して、酸化が抑えられ、より金属状態に近いことが分かる。したがって、製造例1の触媒微粒子は、製造例2の触媒微粒子よりも酸素還元能が高いことが示唆される。また、製造例1の触媒微粒子をカソード触媒として用いた実施例1の膜・電極接合体は、製造例2の触媒微粒子をカソード触媒として用いた比較例2の膜・電極接合体と比較して、放電性能が高いことが示唆される。また、比較例1に用いられた白金全体の平均酸化数は、比較例2に用いられた白金の平均酸化数と等しいものの、実際に触媒反応に寄与する粒子表面に限ると、比較例1に用いられた白金の酸化数は、比較例2に用いられた白金の酸化数の1.8倍大きいことが分かる。
1 固体高分子電解質膜
2 カソード触媒層
3 アノード触媒層
4,5 ガス拡散層
6 カソード電極
7 アノード電極
100 膜・電極接合体

Claims (4)

  1. 中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、
    1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする、燃料電池電極用触媒微粒子。
  2. 前記表面に存在する白金原子数の割合が、前記触媒微粒子全体に含まれる白金原子数の90%以上を占める、請求項1に記載の燃料電池電極用触媒微粒子。
  3. 前記表面に存在する白金原子の酸化数は、X線吸収端近傍構造(XANES)のPtLIII端規格化ピーク強度より求められる、請求項1又は2に記載の燃料電池電極用触媒微粒子。
  4. 高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体であって、
    前記カソード触媒層は、前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池電極用触媒微粒子を含むことを特徴とする、膜・電極接合体。
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