JP2013218992A - 燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする、燃料電池電極用触媒微粒子。
【選択図】図1
Description
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、燃料電池電極用触媒微粒子、及び当該触媒微粒子を含む膜・電極接合体を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池電極用触媒微粒子は、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする。
本発明者らは、鋭意努力の結果、酸素雰囲気下であっても表面に存在する白金原子の酸化数が極めて小さい触媒微粒子を開発し、本発明を完成させた。
中心粒子を構成する材料は、最外層に用いられる材料、好ましくは白金と格子不整合を生じない金属材料であることが好ましい。また、コストを抑える観点からは、中心粒子を構成する材料は、最外層に用いられる材料よりも安価な金属材料であることが好ましい。
この様な観点から、中心粒子に含まれる材料は、パラジウム、金、イリジウム、銀及びルテニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属材料であることが好ましい。これらの金属材料のうち、パラジウム、又は上記金属材料を含むパラジウム合金を中心粒子に使用することがより好ましい。
なお、本発明に用いられる粒子の平均粒径は、常法により算出される。粒子の平均粒径の算出方法の例は以下の通りである。まず、400,000倍又は1,000,000倍のTEM(透過型電子顕微鏡)画像において、ある1つの粒子について、当該粒子を球状と見なした際の粒径を算出する。このようなTEM観察による粒径の算出を、同じ種類の200〜300個の粒子について行い、これらの粒子の平均を平均粒径とする。
ここで、微粒子表面の白金の酸化数とは、触媒微粒子の表面に存在する白金の酸化数の平均を指す。微粒子表面の白金の酸化数は、X線吸収端近傍構造(XANES)のPtLIII端規格化ピーク強度より求められることが好ましい。X線吸収端近傍構造のPtLIII端規格化ピーク強度については後に詳しく説明する。
仮に、中心粒子に対する最外層の被覆率が、0.8未満であるとすると、電気化学反応において中心粒子が溶出し、その結果、触媒微粒子が劣化するおそれがある。
触媒微粒子表面に存在する白金原子数の割合は、触媒微粒子全体に含まれる白金原子数の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。このように、白金原子のほとんどが触媒微粒子表面に存在することにより、優れた触媒活性と材料コストの低減を両立させることができる。また、触媒微粒子表面に存在する白金原子数の割合は、最外層全体に含まれる白金原子数の90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
なお、触媒微粒子の平均粒径は、下限として好ましくは3nm以上、特に好ましくは4nm以上、上限として好ましくは30nm以下、特に好ましくは10nm以下である。
担体として使用できる導電性材料の具体例としては、ケッチェンブラック(商品名:ケッチェン・ブラック・インターナショナル株式会社製)、バルカン(商品名:Cabot社製)、ノーリット(商品名:Norit社製)、ブラックパール(商品名:Cabot社製)、アセチレンブラック(商品名:Chevron社製)等の炭素粒子や、炭素繊維等の導電性炭素材料;金属粒子や金属繊維等の金属材料;が挙げられる。
本発明の膜・電極接合体は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体であって、前記カソード触媒層は、上記燃料電池電極用触媒微粒子を含むことを特徴とする。
本発明においては、上述した温度条件、供給ガスの条件、及び電圧条件の下に、白金の酸化数が0〜0.25であることが好ましい。
図1は、本発明に用いられる膜・電極接合体の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。膜・電極接合体100は、水素イオン伝導性を有する固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)1と、前記電解質膜1を挟んだ一対のカソード電極6及びアノード電極7とでなる。通常は電極として、電解質膜側から順に触媒層とガス拡散層とを積層して構成されたものが用いられる。すなわち、カソード電極6はカソード触媒層2とガス拡散層4とを積層したものからなり、アノード電極7はアノード触媒層3とガス拡散層5とを積層したものからなる。通常は、さらに膜・電極接合体100を電極の外側から一対のセパレータとで挟んで燃料電池として用いる。セパレータと電極の境界にはガス流路が確保されている。
上記したような方法によって触媒層を形成した電解質膜及びガス拡散シートは、適宜、重ね併せて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
触媒微粒子の白金酸化数の求め方の典型例は、高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備え、且つ、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える触媒微粒子を、前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層からなる群より選ばれる少なくとも1つの電極触媒層に含む膜・電極接合体における、前記触媒微粒子の白金酸化数の求め方であって、前記膜・電極接合体の前記電極触媒層に高強度X線を照射し、吸収強度を測定する工程、及び、前記吸収強度から、前記触媒微粒子中の白金原子の電子状態を示す酸化数を算出する工程、を有することを特徴とする。
以下、上記工程(1)〜(2)について、順に説明する。
本工程は、膜・電極接合体の電極触媒層に高強度X線を照射し、吸収強度を測定する工程である。
本工程においては、白金原子に対し、好適にはエネルギーを連続的に変化させた高強度X線を照射することにより、白金原子の内殻電子を非占有軌道以上のエネルギーに励起する。入射X線の励起エネルギーと内殻電子の結合エネルギーとの差に相当する運動エネルギーをもつ光電子の放出により、X線の吸収スペクトルにおける吸収端の近傍に微細構造が現れる。当該微細構造から、触媒微粒子中の白金原子の電子状態の解析が可能となる。
特に、吸収端近傍数10eV程度に現れる微細構造をX線吸収端近傍構造(XANES:X−ray absorption near edge structure)という。XANESは非占有軌道への励起に起因し、白金原子の酸化数や配位構造等に依存したスペクトル構造である。一方、吸収端から約1000eV高エネルギー側まで続く変調構造を広域X線吸収微細構造(EXAFS:Extended X−ray absorption fine structure)という。EXAFSは、励起電子と近接原子からの散乱電子の相互作用に起因して得られる振動構造であり、フーリエ変換により得られる動径分布関数は、白金原子の局所構造(周囲の原子種、配位原子の数、原子間距離)に関する情報を含む。
一方、本典型例の手法においては、中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆する白金含有最外層を備える触媒微粒子を用いており、観察すべき白金原子が略全て触媒微粒子表面の最外層に存在するため、触媒の活性を司る触媒微粒子表面の白金の酸化状態のみを観察できる。
図3は、本工程において高強度X線を照射する設備の典型例の模式図である。なお、二重波線は図の省略を意味する。図3に示すように、加速器リングにより加速され、アンジュレータ等の挿入光源から発せられる高強度X線は、適宜輸送パイプにより実験設備内に導入される。実験設備に導かれた高強度X線は、2枚のミラー、コンパクト分光器、及びさらに2枚のミラーにより単色化され、サンプルである膜・電極接合体に照射される。加速器としては、例えば、高輝度放射光施設Spring−8等が使用できる。
X線のエネルギーは11,000〜12,000eVであることがより好ましく、11,500〜11,700eVであることがさらに好ましい。
供給ガス圧力:0.2〜2気圧の純酸素(カソード)又は水素(アノード)
供給ガス露点:0〜80℃
電圧:0〜1.0V
上記供給ガスの条件、及び電圧条件は、いずれも、膜・電極接合体の通常の運転条件である。
XAFSは、図3に示したコンパクト分光器内の分光結晶を高速で回転させてX線エネルギーを掃引しながら透過モードで測定する、いわゆるSuperQuickXAFSが好ましい。
本工程は、上記工程により測定される吸収強度から、触媒微粒子中の白金原子の電子状態を示す酸化数を算出する工程である。
吸収強度から酸化数を算出するには、例えば、酸化数の公知な物質について吸収強度を予め測定し、当該測定結果から作成した検量線を参照することができる。なお、後述する0以上0.25以下の白金の酸化数の範囲から鑑みて、本工程においては、白金の酸化数が0の物質(白金金属等)の吸収強度、白金の酸化数が2の物質(白金(II)アセチルアセトナート等)の吸収強度、及び、白金の酸化数が4の物質(酸化白金(IV)等)の吸収強度をそれぞれ測定し、当該測定結果から作成した検量線を用いればよい。
測定した膜・電極接合体中の白金原子の吸収強度を当該検量線により酸化数に換算でき、触媒微粒子の表面を覆う白金の酸化数を算出できる。
[製造例1]
パラジウム担持カーボン触媒(以下、Pd/Cと称する場合がある。)(BASF社製、Pd担持率20%)を白金板に200mg塗布した。Pd/Cを塗布した当該白金板を作用極として、0.1M HClO4及び50mM CuSO4の混合水溶液中で、0.4V(vsRHE)の電位のまま30分間保持した。これにより、Cu−UPD現象を利用して、パラジウム粒子の表面に銅単原子層を析出させた。
グローブボックス中で、銅を析出させたPd/Cを白金板上から掻き落とし、0.1M H2SO4水溶液中に分散させた後、0.1M HClO4及び50mM NaPtCl4の混合水溶液中に滴下した。この滴下により、Cuの置換メッキを進行させ、パラジウム粒子の表面に白金単原子層を析出させた。
白金を析出させたパラジウム担持カーボン(以下、Pt/Pd/Cと称する場合がある。)を濾過して分離し、洗浄した後、窒素雰囲気下で50mM NaPtCl4水溶液中に加え、24時間攪拌した。
その後、ろ過してPt/Pd/Cを分離し、洗浄及び乾燥することにより、製造例1のカーボン担持触媒微粒子150mgを作製した。
RuO2でコートされた直径14cmのチタンボウルを反応容器として合成を行った。まず、反応容器中に水及び平均粒径6nmのPd/C 300mgを加え、超音波処理を行ってPd/Cを高分散させることにより、Pd/Cの触媒粒度を10nm以下に調整した。次に、0.1M硫酸中にPd/Cを分散させ、0.05〜0.4Vの電位サイクルにてパラジウム酸化物を除いた。続いて、Pd/Cが分散した0.1M硫酸中に硫酸銅溶液を加えて、銅イオンの濃度が50mMとなるように調製した。次に、銅イオン溶液を適時攪拌しながら、0.4V Cu−UPD電位を30分間保持し、Cu−UPDを行った。
銅の析出量は、UPD電流値より求めることができる。銅の析出量の1.1倍の白金量に相当する量の50mM K2PtCl4水溶液を、攪拌しながら銅イオン溶液にゆっくりと加え、白金の置換メッキを行った。
その後、50mM K2PtCl4水溶液をさらに過剰に加え、白金析出を行った。このとき、パラジウム粒径並びに合成後の白金及びパラジウムのモル比率から求まる被覆率が90〜100%となるように、K2PtCl4水溶液を加えた後の溶液中の白金イオンの白金イオン濃度と反応時間を調整した。なお、被覆率は、白金質量(質量%)/パラジウム質量(質量%)=(80.021−24.085×LN(パラジウム粒径(nm)))/(100−(80.021−24.085×LN(E36))で求めることができる。
以上の工程を経て、製造例2のカーボン担持触媒微粒子を作製した。
[実施例1]
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgに対し、水14g、2−プロパノール8g、及び20%ナフィオン(登録商標)水溶液0.65gを加え、カソード触媒インクを調製した。得られたカソード触媒インクをPTFEビーズにより分散処理した後、スプレー法により、Pt目付1mg/cm2になるように電解質膜に塗布し、カソード触媒層を形成した。
一方、製造例1のカーボン担持触媒微粒子の替わりにPd/Cを用いて、カソード触媒インクと同様にアノード触媒インクを調製した。電解質膜における、カソード触媒層を形成した面の反対側に、スプレー法によりPd目付0.3mg/cm2になるようにアノード触媒インクを塗布してアノード電極を形成し、実施例1の膜・電極接合体を作製した。
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgを、市販の白金担持カーボンに替えたこと以外は、実施例1と同様に、比較例1の膜・電極接合体を作製した。
製造例1のカーボン担持触媒微粒子300mgを、製造例2のカーボン担持触媒微粒子300mgに替えたこと以外は、実施例1と同様に、比較例2の膜・電極接合体を作製した。
実施例1、比較例1、及び比較例2の膜・電極接合体を、それぞれ、X線透過度の高い構造を有するX線測定用セルに組み込んだ。当該X線測定用セルに組み込むことにより、カソード触媒層中の白金及びパラジウム、並びにアノード触媒層中のパラジウム以外に、X線の光路上に金属が無い状態として、放電及び測定に供した。なお、単セルの構成は公知文献(Tada,M.et al.Angew.Chem.Int.Ed.,2007,46,4310−4315)を参考に作製した。
高輝度放射光施設スプリング8(ビームラインBL33XU)において、実施例1、比較例1、及び比較例2の膜・電極接合体についてそれぞれ放電を行いながら、以下の手順によりPtLIII端の吸収強度を測定した。
膜・電極接合体の温度は60℃とした。まず、フル加湿状態の純窒素を空気極に、フル加湿状態の純水素を燃料極に供給した。ガスの圧力は両極とも大気圧とし、ガス流量は両極とも1L/sとし、ガス露点は両極とも35℃とした。次に、セル電圧を0.13Vから0.9Vへ10mV/sで掃引した後、0.9Vに60秒間保持し、空気極への供給ガスを純窒素から純酸素に切り替えた。続いて、30秒から60秒までの、30秒間のPtLIII吸収端のX線吸収スペクトルを1秒ごとに測定した。
このX線吸収スペクトルを一般的なデータ処理により規格化し、規格化ピーク強度を求めた。当該規格化ピーク強度の30秒間の平均をとることにより、再現性の良いデータが得られた。60℃、酸素雰囲気下、且つ0.9Vにおける、実施例1に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.30、比較例1に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.32、比較例2に用いられた白金原子の規格化ピーク強度は1.32であった。
図2に示す検量線を用いて、規格化ピーク強度から実作動状態の白金の平均酸化数を得た。ここで、白金の平均酸化数とは、粒子全体の白金の酸化数の平均を指す。当該検量線より、実施例1に用いられた白金の平均酸化数は0.20であり、比較例1及び比較例2に用いられた白金の平均酸化数はいずれも0.30であることが分かる。
下記表1中の最表面白金原子比率とは、触媒微粒子全体に占める白金原子数を100%としたときの、触媒微粒子の最表面に存在する白金原子数の割合を示したものである。実施例1及び比較例2に用いた触媒微粒子の最表面白金原子比率は、最外層(単原子層)のみに白金が存在しているため100%である。一方、比較例1に用いた白金微粒子の場合には、微粒子内部にも当然に白金原子が存在するため、最表面白金原子比率は約5割となる。
下記表1中の0.9Vにおける粒子最表面の白金酸化数とは、上述した白金の平均酸化数とは異なり、触媒反応に寄与しない触媒微粒子の内部を除いた、触媒微粒子の最表面に存在する白金の酸化数を指す。実施例1及び比較例2においては、触媒微粒子の構造上、白金が最外層(単原子層)にしか存在しない。したがって、実施例1及び比較例2においては、規格化ピーク強度から換算される白金の平均酸化数が、そのまま粒子最表面の白金の酸化数となる。一方、比較例1においては、白金微粒子内部に酸化数の低い白金原子を含むため、粒子最表面の白金酸化数は上記平均酸化数よりも大きな値となる。
2 カソード触媒層
3 アノード触媒層
4,5 ガス拡散層
6 カソード電極
7 アノード電極
100 膜・電極接合体
Claims (4)
- 中心粒子、及び、当該中心粒子を被覆し且つ白金を含む最外層を備える燃料電池電極用触媒微粒子であって、
1気圧の純酸素雰囲気下、且つ、0.9V以下の電圧下における、表面に存在する白金原子の酸化数が0〜0.25であることを特徴とする、燃料電池電極用触媒微粒子。 - 前記表面に存在する白金原子数の割合が、前記触媒微粒子全体に含まれる白金原子数の90%以上を占める、請求項1に記載の燃料電池電極用触媒微粒子。
- 前記表面に存在する白金原子の酸化数は、X線吸収端近傍構造(XANES)のPtLIII端規格化ピーク強度より求められる、請求項1又は2に記載の燃料電池電極用触媒微粒子。
- 高分子電解質膜の一面側にアノード触媒層を備えるアノード電極を備え、他面側にカソード触媒層を備えるカソード電極を備える膜・電極接合体であって、
前記カソード触媒層は、前記請求項1乃至3のいずれか一項に記載の燃料電池電極用触媒微粒子を含むことを特徴とする、膜・電極接合体。
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