ところが、例えばボルト110にナット111を螺着させる際などにおいては、エンドプレート103に対してガス通路部材105が平面方向に位置ずれし、ガス流路106の中心軸A1とガス通路107の中心軸A2との間にズレが生じる可能性が高い(図11参照)。この場合、ボルト110の外周面とガス流路106の内周面との隙間や、ボルト110の外周面と貫通孔108の内周面との隙間が部分的に狭くなるため、ガス流路106及び貫通孔108を通過するガスの流れが遮られ、ガスの流れが不安定になってしまう。しかも、ボルト110の外周面がガス流路106の内周面に接触すると、ボルト110に接続されているガス通路部材105とエンドプレート103との絶縁が図れなくなるおそれがある。以上のことから、燃料電池101の信頼性が低下するという問題がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、絶縁スペーサの位置決めを図ることにより、高い信頼性を得ることができる燃料電池を提供することにある。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、燃料電池セルを複数積層してなる燃料電池スタックと、前記燃料電池セルの積層方向における両端の少なくとも一方にさらに積層され、前記燃料電池スタック内に連通するガス流路が厚さ方向に貫通形成された板状のエンドプレートと、前記積層方向に沿ってさらに前記エンドプレートの端面上に設置され、前記ガス流路に連通するとともに、外部から前記燃料電池スタック内に導入されるガス、または、前記燃料電池スタック内から外部に排出される前記ガスが流れるガス通路が形成されたガス通路部材とを備える燃料電池において、前記エンドプレートと前記ガス通路部材との間には、前記エンドプレートに接触する第1端面と、前記ガス通路部材に接触する第2端面と、前記第1端面及び前記第2端面に接続される外側面とを有し、さらに厚さ方向に貫通して前記ガス流路及び前記ガス通路を連通させる貫通孔を有し、かつ、前記エンドプレートと前記ガス通路部材とを離間させる絶縁スペーサが配置されており、前記第1端面に接触する前記エンドプレートの端部には、前記絶縁スペーサの前記貫通孔の内周面、または、前記絶縁スペーサの外側面に接触する側面を有する第1段差部が形成され、前記第2端面に接触する前記ガス通路部材の端部には、前記絶縁スペーサの前記貫通孔の内周面、または、前記絶縁スペーサの外側面に接触する側面を有する第2段差部が形成されていることを特徴とする燃料電池がある。
手段1に記載の発明によると、絶縁スペーサの貫通孔の内周面、または、絶縁スペーサの外側面に対してエンドプレートに形成された第1段差部の側面が接触することにより、絶縁スペーサがエンドプレートに対して位置決めされる。また、貫通孔の内周面、または、絶縁スペーサの外側面に対してガス通路部材に形成された第2段差部の側面が接触することにより、絶縁スペーサがガス通路部材に対して位置決めされる。以上のことから、エンドプレートとガス通路部材とが絶縁スペーサを介して確実に位置決めされ、ガス流路の中心軸とガス通路の中心軸との間のズレが防止されるため、ガス流路及びガス通路を通過するガスの流れを安定させることができる。しかも、エンドプレートとガス通路部材とが絶縁スペーサを介して位置決めされることにより、エンドプレートとガス通路部材とが離間した状態に維持されるため、エンドプレートとガス通路部材とが確実に絶縁される。以上のことから、高い信頼性を有する燃料電池を得ることができる。
さらに、エンドプレートは、絶縁スペーサの第1端面に接触するだけでなく、絶縁スペーサの貫通孔の内周面、または、絶縁スペーサの外側面にも接触するため、エンドプレートと絶縁スペーサとの接触面積が大きくなる。よって、エンドプレートと絶縁スペーサとのシール性が向上する。同様に、ガス通路部材は、絶縁スペーサの第2端面に接触するだけでなく、貫通孔の内周面、または、絶縁スペーサの外側面にも接触するため、ガス通路部材と絶縁スペーサとの接触面積が大きくなる。よって、ガス通路部材と絶縁スペーサとのシール性が向上する。
ここで、燃料電池としては、ZrO2系セラミックなどを電解質とする固体酸化物形燃料電池(SOFC)、高分子電解質膜を電解質とする固体高分子形燃料電池(PEFC)、Li−Na/K系炭酸塩を電解質とする溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、リン酸を電解質とするリン酸形燃料電池(PAFC)などが挙げられる。なお、燃料電池の稼動温度(即ち、イオンが電解質中を移動可能となる温度)は、燃料電池の種類ごとに異なっている。具体的に言うと、SOFCの稼動温度は700℃〜1000℃程度、PEFCの稼動温度は常温〜90℃程度、MCFCの稼動温度は650℃〜700℃程度、PAFCの稼動温度は150℃〜200℃程度である。
燃料電池が備える燃料電池スタックは、燃料電池セルを複数積層してなる。燃料電池がSOFCである場合、燃料電池セルは、固体酸化物からなる電解質層と、電解質層の両側に配置された電極層とを備えることがよい。燃料電池セルを構成する電解質層は、電極層に接する発電用ガスの一部がイオンとなって移動する性質(イオン電導性)を有している。なお、電解質層中を移動するイオンとしては、例えば酸素イオンや水素イオンなどが挙げられる。また、電極層は、電解質層の表面側に配置され発電用ガスである酸化剤ガスに接する空気極層、及び、電解質層の裏面側に配置され発電用ガスである燃料ガスに接する燃料極層であることがよい。
電解質層(固体酸化物層)の形成材料としては、例えばZrO2系セラミック、LaGaO3系セラミック、BaCeO3系セラミック、SrCeO3系セラミック、SrZrO3系セラミック、CaZrO3系セラミックなどがある。
また、燃料電池セルを構成する燃料極層は、例えば還元剤となる燃料ガスと電解質層内を移動してきた酸素イオンとを反応させる機能を有することにより、燃料電池セルにおける負電極として機能する。ここで、燃料極層の形成材料としては、例えば、希土類元素(Sc、Yなど)により安定化されたZrO2系セラミック、及び、希土類元素(Sm、Gdなど)をドープしたCeO2系セラミック等のうち、少なくとも1つのセラミック材料と、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh、Ni、Fe等の金属材料及びそれら金属材料の合金のうちの少なくとも1つと、を混合した金属セラミック材料の混合物(サーメット)を使用することができる。
また、燃料ガスとしては、例えば、水素ガス、炭化水素ガス、水素ガスと炭化水素ガスとの混合ガスなどが挙げられる。燃料ガスとして炭化水素ガスを選択した場合、炭化水素ガスの種類は特に限定されないが、例えば、天然ガス、ナフサ、石炭ガス化ガス等であることが好ましい。なお、水中にガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)を通過させて加湿することによって得られる燃料ガスや、ガス(水素ガス、炭化水素ガス、混合ガス)に水蒸気を混合させることによって得られる燃料ガスを選択してもよい。また、1種類の燃料ガスのみを用いてもよいし、複数種類の燃料ガスを併用してもよい。さらに、燃料ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。また、液体の原料を気化したものを燃料ガスとして使用したり、水素ガス以外のガスを改質して生成した水素ガスを燃料ガスとして使用したりすることもできる。
燃料電池セルを構成する空気極層は、酸化剤となる酸化剤ガスと接触し、燃料電池セルにおける正電極として機能する。ここで、空気極層の形成材料としては、例えば、金属材料、金属の酸化物、金属の複合酸化物などを挙げることができる。金属材料の好適例としては、Pt、Au、Ag、Pd、Ir、Ru、Rh等やそれらの合金などがある。金属の酸化物の好適例としては、例えば、La、Sr、Ce、Co、Mn、Feの酸化物(La2O3、SrO、Ce2O3、Co2O3、MnO2、FeO)などがある。金属の複合酸化物の好適例としては、例えば、La、Pr、Sm、Sr、Ba、Co、Fe、Mnを含有する複合酸化物(La1−xSrxCoO3系複合酸化物、La1−xSrxFeO3系複合酸化物、La1−xSrxCo1−yFeyO3系複合酸化物、La1−xSrxMnO3系複合酸化物、Pr1−xBaxCoO3系複合酸化物、Sm1−xSrxCoO3系複合酸化物)などがある。
また、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素と他の気体との混合ガスなどが挙げられる。この混合ガスは、窒素やアルゴン等の不活性ガスを含有していてもよい。なお、混合ガスは、安全で安価な空気であることが好ましい。
さらに、燃料電池は、エンドプレートとガス通路部材とを離間させる絶縁スペーサを備えている。絶縁スペーサは、絶縁性、耐熱性、シール性等を考慮して適宜選択することができる。なお、絶縁スペーサは、例えば、絶縁性に優れたマイカなどによって形成されることが好ましく、特には、絶縁性に加えて耐熱性や加工性に優れたマイカセラミックによって形成されることが好ましい。また、絶縁スペーサは、マイカセラミックとは別のセラミック材料によって形成されていてもよい。マイカセラミックとは別のセラミック材料の好適例としては、例えば、アルミナ、ガラスセラミック、結晶化ガラス等の低温焼成材料、窒化アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素などが挙げられる。
なお、エンドプレートとガス通路部材との間の積層方向における最短距離が0よりも大きくなるように、絶縁スペーサの厚さが設定されていることが好ましい。このようにすれば、エンドプレートとガス通路部材との間隔が絶縁スペーサを介して一定に保持されるため、両者の接触が回避される。従って、エンドプレートとガス通路部材とがより確実に絶縁されるため、燃料電池の信頼性をよりいっそう高くすることができる。
また、ガス通路部材の第2段差部は、基端から先端までの距離が絶縁スペーサの厚さよりも大きく設定され、エンドプレートは、第2段差部を収容する収容部を備えていてもよい。このようにしても、第2段差部を収容部に収容することにより、第2段差部の先端と収容部の内側面とを離間させることができるため、エンドプレートとガス通路部材との間隔が一定に保持され、両者の接触が回避される。従って、エンドプレートとガス通路部材とがより確実に絶縁されるため、燃料電池の信頼性をよりいっそう高くすることができる。ここで、第2段差部の側面が絶縁スペーサの貫通孔の内周面に接触するものであって、第2段差部がガス通路の一部を構成し、収容部がガス流路において開口する場合、第2段差部の基端から先端までの距離は、収容部の内側面に接触しない範囲内で可能な限り大きく設定されることが好ましい。第2段差部の基端から先端までの距離を大きく設定すれば、第2段差部の先端と収容部の内側面との隙間が小さくなるため、ガス通路の内壁面とガス流路の内壁面とを滑らかに連続させやすくなる。その結果、ガス通路及びガス流路の接続部分を流れるガスの流れを安定させることができる。また、接続部分を流れるガスが第2段差部の先端と収容部の内側面との隙間から収容部内に侵入しにくくなるため、ガスに晒されることによる絶縁スペーサの破損を防止できる。
さらに、ガス通路部材の第2段差部は、円筒状をなし、基端側から先端側に向けて外径が小さくなるテーパ状に形成されていることが好ましい。このようにすれば、燃料電池の組立時において、第2段差部を絶縁スペーサの貫通孔に挿入しやすくなるため、燃料電池の組立を容易に行うことができる。
また、エンドプレートのガス流路とガス通路部材のガス通路とが、同一の内径を有し、ガス流路、ガス通路及び貫通孔が、同一軸線上に配置されていることが好ましい。このようにすれば、ガス流路の内壁面とガス通路の内壁面とを滑らかに連続させやすくなる。その結果、ガス流路、ガス通路及び貫通孔を流れるガスの流れを安定させることができる。
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池1は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。燃料電池1は、燃料電池スタック10と、エンドプレート12,13と、ガス通路部材21とを積層配置することによって構成されている。燃料電池スタック10は、縦180mm×横180mm×高さ80mmの略直方体状をなし、発電反応により電力を発生するようになっている。また、燃料電池スタック10は、同燃料電池スタック10を厚さ方向に貫通する内径14mmの貫通孔40を8箇所に有している。なお、燃料電池スタック10の四隅にある4つの貫通孔40にボルト(図示略)を挿通させ、燃料電池スタック10の下方に突出するボルトの下端部分にナット(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔40にボルト41(挿通部材)を挿通させ、燃料電池スタック10の上方及び下方に突出するボルト41の両端部分にナット42(固定部材)を螺着させる。その結果、燃料電池スタック10、エンドプレート12,13及びガス通路部材21が固定されるようになっている。
図1に示されるように、燃料電池スタック10は、発電の最小単位である略矩形板状の燃料電池セル11を複数積層してなるものである。燃料電池セル11は、空気極フレーム52、上側絶縁フレーム53、セパレータ54、空気極層55(電極層)、固体電解質層56(固体酸化物層)、燃料極層57(電極層)、下側絶縁フレーム58及び燃料極フレーム59を順番に積層することによって構成されている。また、燃料電池セル11の上端部及び下端部には、コネクタプレート51,60が配置されている。
コネクタプレート51,60は、耐熱性及び導電性に優れたステンレスなどの金属材料によって略矩形板状に形成されている。コネクタプレート51,60は、燃料電池セル11内にガスの流路を形成するとともに、隣接する燃料電池セル11同士を導通させるようになっている。詳述すると、隣接する燃料電池セル11同士の間に位置するコネクタプレート51,60は、いわゆるインターコネクタとなり、隣接する燃料電池セル11同士を区画するようになっている。なお、本実施形態のコネクタプレート60は、下側に隣接する燃料電池セル11のコネクタプレート51を兼ねている。また、燃料電池セル11の積層方向における上端(即ち、燃料電池スタック10の上端)にさらに積層されたコネクタプレート51は、上側エンドプレート12となっており、燃料電池セル11の積層方向における下端(即ち、燃料電池スタック10の下端)にさらに積層されたコネクタプレート60は、下側エンドプレート13となっている。両エンドプレート12,13は、燃料電池スタック10を挟持しており、燃料電池スタック10から出力される電流の出力端子となっている。なお、エンドプレート12,13となるコネクタプレート51,60は、インターコネクタとなるコネクタプレート51,60よりも肉厚になっている。
図1に示される空気極フレーム52及び燃料極フレーム59は、ステンレスなどの導電性材料によって略矩形枠状に形成されている。よって、空気極フレーム52の中央部には、同空気極フレーム52を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部が設けられ、燃料極フレーム59の中央部には、同燃料極フレーム59を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部が設けられている。また、絶縁フレーム53,58は、厚さ0.5mmのマイカシートによって略矩形枠状に形成されている。よって、上側絶縁フレーム53の中央部には、同上側絶縁フレーム53を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部が設けられ、下側絶縁フレーム58の中央部には、同下側絶縁フレーム58を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部が設けられている。さらに、セパレータ54は、ステンレスなどの導電性材料によって略矩形枠状に形成されている。よって、セパレータ54の中央部には、同セパレータ54を厚さ方向に貫通する矩形状の開口部が設けられている。
図1に示されるように、固体電解質層56は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)などのセラミック材料によって形成され、厚さ0.01mmの矩形板状をなしている。固体電解質層56は、セパレータ54の下面に固定されるとともに、セパレータ54の開口部を塞ぐように配置されている。固体電解質層56は、酸素イオン伝導性固体電解質体として機能するようになっている。また、固体電解質層56の上面には、燃料電池スタック10に供給された空気に接する空気極層55が貼付され、固体電解質層56の下面には、同じく燃料電池スタック10に供給された燃料ガスに接する燃料極層57が貼付されている。即ち、空気極層55及び燃料極層57は、固体電解質層56の両側に配置されている。また、空気極層55は、セパレータ54の開口部内に配置され、セパレータ54と接触しないようになっている。なお、空気極層55は、金属の複合酸化物によって矩形板状に形成され、燃料極層57は、金属材料とセラミック材料との混合物(本実施形態ではサーメット)によって同じく矩形板状に形成されている。
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池セル11では、下側絶縁フレーム58の開口部、燃料極フレーム59の開口部、及びコネクタプレート60等により、セパレータ54の下方に燃料室S1が形成されるようになっている。なお、燃料室S1内には、固体電解質層56、燃料極層57及び燃料極集電体67が収容されている。
また、本実施形態の燃料電池セル11では、コネクタプレート51、空気極フレーム52の開口部、及び、上側絶縁フレーム53の開口部等により、セパレータ54の上方に空気室S2が形成されるようになっている。そして、空気極層55及びコネクタプレート51は、空気極集電体66によって電気的に接続されている。よって、絶縁フレーム53,58は、各燃料電池セル11内に配置して積層されるとともに、燃料室S1と空気室S2とのシール部材を兼ねている。
また、図1に示されるように、燃料電池スタック10は、各燃料電池セル11の燃料室S1に燃料ガスを供給する燃料供給経路70と、燃料室S1から燃料ガスを排出する空気排出経路80とを備えている。燃料供給経路70は、貫通孔40である断面円形状の燃料供給孔71と、燃料供給孔71と燃料室S1とを連通させる燃料供給横孔72とによって構成されている。また、燃料排出経路80は、同じく貫通孔40である断面円形状の燃料排出孔81と、燃料排出孔81と燃料室S1とを連通させる燃料排出横孔82とによって構成されている。よって、燃料ガスは、燃料供給孔71及び燃料供給横孔72を順番に通過して燃料室S1に供給され、燃料排出横孔82及び燃料排出孔81を順番に通過して燃料室S1から排出される。
さらに、燃料電池スタック10は、各燃料電池セル11の空気室S2に空気を供給する空気供給経路(図示略)と、空気室S2から空気を排出する空気排出経路(図示略)とを備えている。空気供給経路は、燃料供給経路70と略同様の構造を有しており、貫通孔40である断面円形状の空気供給孔(図示略)と、空気供給孔と空気室S2とを連通させる空気供給横孔(図示略)とによって構成されている。また、空気排出経路は、燃料排出経路80と略同様の構造を有しており、貫通孔40である断面円形状の空気排出孔(図示略)と、空気排出孔と空気室S2とを連通させる空気排出横孔(図示略)とによって構成されている。よって、空気は、空気供給孔及び空気供給横孔を順番に通過して空気室S2に供給され、空気排出横孔及び空気排出孔を順番に通過して空気室S2から排出される。
図1〜図3に示されるように、上側エンドプレート12は、縦180mm×横180mm×高さ10mmの略矩形板状をなしている。上側エンドプレート12には、燃料電池スタック10内の貫通孔40に連通するガス流路14が厚さ方向に沿って貫通形成されている。ガス流路14の内径B1(図3参照)は、貫通孔40の内径と等しくなっており、本実施形態では14mmに設定されている。また、上側エンドプレート12の上端部には、第1段差部16及び収容部18が形成されている。第1段差部16及び収容部18は、ガス流路14の端面15側開口部に設けられている。第1段差部16は、ガス流路14の内周面において開口するとともに、端面15において開口している。収容部18は、ガス流路14の内周面において開口するとともに、第1段差部16によって形成された凹部の底面において開口している。
また、ガス通路部材21は、燃料電池セル11の積層方向に沿ってさらに上側エンドプレート12の端面15上に設置されている。ガス通路部材21は、例えばSUS304等の金属材料によって形成され、本体部22と、同本体部22から径方向外側に延びる分岐管23とを備えている。本体部22は外径24mmの略円筒状をなし、分岐管23は外径12.7mmの円筒状をなしている。また、ガス通路部材21には、上側エンドプレート12のガス流路14に連通するガス通路24が形成されている。ガス通路24には、外部から燃料電池スタック10内に導入されるガス(本実施形態では、燃料ガスまたは空気)、または、燃料電池スタック10内から外部に排出されるガスが流れるようになっている。なお、ガス通路24は、本体部22内に形成され、ガス流路14に連通する断面円形状の連通孔25と、分岐管23内に形成され、連通孔25に連通する断面円形状の分岐孔26とによって構成されている。連通孔25の内径B2(図3参照)は、ガス流路14の内径B1(図3参照)及び貫通孔40の内径と同一であり、本実施形態では14mmに設定されている。また、分岐孔26の内径は、連通孔25の内径B2よりも小さくなっており、本実施形態では10mmに設定されている。
図2,図3に示されるように、ガス通路部材21の下端部には、第2段差部27が形成されている。第2段差部27は、内部に連通孔25の一部を有しており、内径14mm、外径18mmの略円筒状をなしている。また、第2段差部27の先端部は、基端側から先端側に向けて外径が小さくなるテーパ状に形成されている。そして、第2段差部27は、上側エンドプレート12の収容部18に収容されている。なお、第2段差部27の基端から先端までの距離L2(図3参照)は、収容部18の底面に接触しない範囲内で可能な限り大きく設定されており、本実施形態では5mmに設定されている。また、第2段差部27の先端面と収容部18の底面との隙間は、本実施形態において0.5mmに設定されている。
また、上側エンドプレート12とガス通路部材21との間には、マイカシートによって形成された絶縁スペーサ31が配置されている。絶縁スペーサ31は、外径24mm×内径18mm×厚さ3mmの円環状をなしている。即ち、絶縁スペーサ31の外径は本体部22の外径と同一に設定され、絶縁スペーサ31の内径は第2段差部27の外径と同一に設定されている。絶縁スペーサ31の厚さは、第1段差部16の基端から先端までの距離L1(本実施形態では2mm、図3参照)よりも大きく設定されている。よって、絶縁スペーサ31は、上側エンドプレート12の端面15から突出するようになる。また、絶縁スペーサ31の厚さは、第2段差部27の基端から先端までの距離L2(5mm)よりも小さく設定されている。さらに、絶縁スペーサ31の厚さは、上側エンドプレート12とガス通路部材21との間の積層方向における最短距離が0よりも大きくなるように設定されている。つまり、絶縁スペーサ31は、上側エンドプレート12とガス通路部材21とを離間させることにより、両者を電気的に絶縁する機能を有している。
図3に示されるように、絶縁スペーサ31は、第1端面32、第2端面33、第1端面32及び第2端面33に接続される外側面34を有している。第1端面32は、上側エンドプレート12の上端部、具体的には、第1段差部16によって形成された凹部の底面に接触するようになっている。また、第2端面33は、ガス通路部材21の下端面に接触するようになっている。さらに、外側面34は、上側エンドプレート12の第1段差部16が有する側面17に接触するようになっている。また、絶縁スペーサ31は、同絶縁スペーサ31を厚さ方向に貫通する断面円形状の貫通孔35を有している。貫通孔35内には、内部に連通孔25の一部を有する第2段差部27が挿入されている。よって、貫通孔35は、ガス流路14及びガス通路24(連通孔25)を連通させる機能を有している。そして、ガス流路14、連通孔25及び貫通孔35は、同一軸線上に配置されるようになっている。また、貫通孔35の内周面は、第2段差部27が有する側面28に接触するようになっている。
図1〜図3に示されるように、ガス流路14、連通孔25及び貫通孔35には、燃料電池スタック10の貫通孔40を挿通するボルト41の上端部が挿通されるようになっている。よって、ボルト41の外径は、ガス流路14,連通孔25及び貫通孔35の内径よりも小さくなっており、本実施形態では10mmに設定されている。そして、ボルト41においてガス通路部材21の上端面から突出する部分には、ナット42が螺着されている。
また、ガス通路部材21とナット42との間には、両者を互いに電気的に絶縁するための絶縁スペーサ43が配置されている。絶縁スペーサ43は、本体部22の連通孔25の上端側開口部に形成された凹部29内に収容されている。絶縁スペーサ43は、マイカシートによって形成されており、外径16mm×内径10mm×厚さ1mmの円環状をなしている。即ち、絶縁スペーサ43の内径はボルト41の外径と同一に設定されている。つまり、絶縁スペーサ43は、同絶縁スペーサ43を挿通するボルト41の外周面に接触することにより、ボルト41を位置決めする機能も有している。
例えば、燃料電池1を稼働温度に加熱した状態で、燃料供給経路70から燃料室S1に燃料ガスを導入するとともに、空気供給経路から空気室S2に空気を導入する。詳述すると、燃料ガスは、図1において左側に位置するガス通路部材21の分岐孔26から連通孔25に導入された後、燃料電池スタック10の燃料供給経路70に導入される。そして、燃料ガスは、燃料供給経路70を通過して、各燃料電池セル11の燃料室S1に供給される。また、空気は、空気導入用のガス通路部材21の分岐孔26から連通孔25に導入された後、燃料電池スタック10の空気供給経路に導入される。そして、空気は、空気供給経路を通過して、各燃料電池セル11の空気室S2に供給される。その結果、燃料ガス中の水素と空気中の酸素とが固体電解質層56を介して反応(発電反応)し、空気極層55を正極、燃料極層57を負極とする直流の電力が発生する。なお、本実施形態の燃料電池スタック10は、燃料電池セル11を複数積層して直列に接続しているため、空気極層55に電気的に接続される上側エンドプレート12が正極となり、燃料極層57に電気的に接続される下側エンドプレート13が負極となる。
その後、発電後の残余燃料ガスは、燃料排出経路80を通過して、図1において右側に位置するガス通路部材21の連通孔25に導入され、分岐孔26を介して外部に排出される。また、発電後の残余空気は、空気排出経路を通過して、空気排出用のガス通路部材21の連通孔25に導入され、分岐孔26を介して外部に排出される。
次に、燃料電池1の製造方法を説明する。
まず、ステンレス板を打ち抜くことにより、コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、セパレータ54及び燃料極フレーム59を形成する。また、マイカシートを所定形状に形成することにより、絶縁フレーム53,58を形成する。具体的には、市販のマイカシート(マイカと成形用樹脂との複合体からなるシート)を他の部材(コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、セパレータ54及び燃料極フレーム59など)とほぼ同じ形状に形成する。なお、マイカシートに含まれている樹脂成分は、他の部材とともに積層された後に行われる熱処理によって蒸発する。さらに、マイカシートは、各燃料電池セル11を積層方向にボルト締めした際に他の部材に挟まれることによって、各部材をシールするようになっている。
次に、燃料電池セル11を、従来周知の手法に従って形成する。具体的には、燃料極層57となるグリーンシート上に固体電解質層56となるグリーンシートを積層し、焼成する。さらに、固体電解質層56上に空気極層55の形成材料を印刷した後、焼成する(この時点で、SOFCの単セルが得られる)。なお、固体電解質層56は、ロウ付けによってセパレータ54に対して固定される。そして、コネクタプレート51,60、空気極フレーム52、絶縁フレーム53,58、(SOFCの単セルがロウ付けによって固定された)セパレータ54及び燃料極フレーム59などを積層して一体化する。その結果、燃料電池セル11が形成される。
次に、各燃料電池セル11を積層して一体化することにより、燃料電池スタック10を形成する。次に、燃料電池スタック10の上端に上側エンドプレート12を積層するとともに、燃料電池スタック10の下端に下側エンドプレート13を積層する。さらに、上側エンドプレート12の上端部に絶縁スペーサ31及びガス通路部材21を順番に積層する。そして、燃料電池スタック10の四隅にある4つの貫通孔40、及び、上側エンドプレート12の四隅にある4つの上側ボルト孔(図示略)、及び、下側エンドプレート13の四隅にある4つの下側ボルト孔(図示略)にボルト(図示略)を挿通させ、下側エンドプレート13の下面から突出するボルトの下端部分にナット図(図示略)を螺着させる。また、残り4つの貫通孔40、上側エンドプレート12にある4つのガス流路14、4つのガス通路部材21にある連通孔25、及び、下側エンドプレート13にある4つのガス流路(図示略)にボルト41を挿通させる。そして、ガス通路部材21の上端面から突出するボルト41の上端部分、及び、下側エンドプレート13の下面から突出するボルト41の下端部分にナット42を螺着させる。その結果、燃料電池スタック10、エンドプレート12,13、絶縁スペーサ31及びガス通路部材21が固定され、燃料電池1が完成する。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態の燃料電池1では、絶縁スペーサ31の外側面34に対して上側エンドプレート12に形成された第1段差部16の側面17が接触することにより、絶縁スペーサ31が上側エンドプレート12に対して位置決めされる。また、貫通孔35の内周面に対してガス通路部材21に形成された第2段差部27の側面28が接触することにより、絶縁スペーサ31がガス通路部材21に対して位置決めされる。以上のことから、上側エンドプレート12とガス通路部材21とが絶縁スペーサ31を介して確実に位置決めされ、ガス流路14の中心軸と連通孔25の中心軸との間のズレが防止されるため、ガス流路14及びガス通路24を通過する燃料ガス及び空気の流れを安定させることができる。しかも、上側エンドプレート12とガス通路部材21とが絶縁スペーサ31を介して位置決めされることにより、上側エンドプレート12とガス通路部材21とが離間した状態に維持されるため、上側エンドプレート12とガス通路部材21とが確実に絶縁される。以上のことから、高い信頼性を有する燃料電池1を得ることができる。
(2)本実施形態では、ガス流路14及びガス通路24を通過する燃料ガス及び空気の流れが安定するのに伴い、燃料電池スタック10内の貫通孔40を通過する燃料ガス及び空気の流れも安定するため、各段の燃料電池セル11に対して燃料ガスや空気が均一に分配される。その結果、各段の燃料電池セル11ごとの発電バラツキが少なくなり、燃料電池スタック10の長寿命化が図られる。
(3)本実施形態の上側エンドプレート12は、絶縁スペーサ31の第1端面32に接触するだけでなく、絶縁スペーサ31の外側面34にも接触するため、上側エンドプレート12と絶縁スペーサ31との接触面積が大きくなる。よって、上側エンドプレート12と絶縁スペーサ31とのシール性が向上する。同様に、本実施形態のガス通路部材21は、絶縁スペーサ31の第2端面33に接触するだけでなく、貫通孔35の内周面にも接触するため、ガス通路部材21と絶縁スペーサ31との接触面積が大きくなる。よって、ガス通路部材21と絶縁スペーサ31とのシール性が向上する。
(4)本実施形態では、上側エンドプレート12とガス通路部材21とが絶縁スペーサ31によって互いに電気的に絶縁されるのに加えて、ガス通路部材21とナット42(及びボルト41)とが絶縁スペーサ43によって互いに電気的に絶縁されるようになっている。その結果、燃料電池スタック10とガス通路部材21との間のショートや漏電が防止できるのに加えて、ガス通路部材21とナット42(及びボルト41)との間のショートや漏電も防止することができる。以上のことから、よりいっそう高い信頼性を有する燃料電池1を得ることができる。
(5)本実施形態では、上側エンドプレート12とガス通路部材21とを絶縁する機能と、上側エンドプレート12とガス通路部材21とを位置決めする機能とを、1つの部品(絶縁スペーサ31)に持たせている。つまり、絶縁機能を有する部品と位置決め機能を有する部品とを別々に準備しなくても済むため、燃料電池1の製造コストを低減させることができる。同様に、本実施形態では、ガス通路部材21とナット42(及びボルト41)とを絶縁する機能と、ガス通路部材21とボルト41とを位置決めする機能とを、1つの部品(絶縁スペーサ43)に持たせている。この場合も、絶縁機能を有する部品と位置決め機能を有する部品とを別々に準備しなくても済むため、燃料電池1の製造コストを低減させることができる。
なお、本実施形態を以下のように変更してもよい。
上記実施形態の燃料電池1では、絶縁スペーサ31の第1端面32に接触する上側エンドプレート12の端部に、絶縁スペーサ31の外側面34に接触する側面17を有する第1段差部16が形成され、絶縁スペーサ31の第2端面33に接触するガス通路部材21の端部に、絶縁スペーサ31の貫通孔35の内周面に接触する側面28を有する第2段差部27が形成されていた。
しかし、図4に示されるように、絶縁スペーサ131の第1端面132に接触する上側エンドプレート112の端部に、絶縁スペーサ131の外側面134に接触する側面117を有する第1段差部116が形成され、絶縁スペーサ131の第2端面133に接触するガス通路部材121の端部に、絶縁スペーサ131の外側面134に接触する側面128を有する第2段差部127が形成された燃料電池2であってもよい。
また、図5に示されるように、絶縁スペーサ231の第1端面232に接触する上側エンドプレート212の端部に、絶縁スペーサ231の貫通孔235の内周面に接触する側面217を有する第1段差部216が形成され、絶縁スペーサ231の第2端面233に接触するガス通路部材221の端部に、貫通孔235の内周面に接触する側面228を有する第2段差部227が形成された燃料電池3であってもよい。
さらに、絶縁スペーサ31の第1端面32に接触する上側エンドプレート12の端部に、絶縁スペーサ31の貫通孔35の内周面に接触する側面を有する第1段差部が形成され、第2端面33に接触するガス通路部材21の端部に、絶縁スペーサ31の外側面34に接触する側面を有する第2段差部が形成された燃料電池であってもよい。
上記実施形態の燃料電池1では、ガス通路部材21に形成された第2段差部27の先端面と上側エンドプレート12に形成された収容部18の底面との隙間が、極めて狭く(0.5mm)に設定されていた。しかし、図6の燃料電池4に示されるように、第2段差部327の先端部と収容部318の底面との隙間を広く設定してもよい。なお、第2段差部327の基端から先端までの距離L3は、絶縁スペーサ331の厚さよりも大きく設定されていてもよいし、絶縁スペーサ331の厚さ以下に設定されていてもよいが、絶縁スペーサ331の厚さよりも大きく設定されることが好ましい。このようにすれば、ガス流路314とガス通路324との接続部分を流れるガス(燃料ガスまたは空気)が絶縁スペーサ331に接触しにくくなるため、ガスに晒されることによる絶縁スペーサ331の破損を防止しやすくなる。
また、図6に示されるように、第2段差部327の先端部は、基端側から先端側に向けて外径が小さくなるテーパ状に形成されていたが、第2段差部327の先端部は必ずしもテーパ状に形成されていなくてもよい。
上記実施形態では、燃料電池スタック10の上方及び下方に突出するボルト41の両端部分にナット42を螺着させることにより、燃料電池スタック10、エンドプレート12,13、絶縁スペーサ31及びガス通路部材21を固定していた。しかし、上側エンドプレート12側(または下側エンドプレート13側)から貫通孔40に対して頭部を有するボルトを挿通させ、燃料電池スタック10の下方(または上方)に突出するボルトの下端部分(または上端部分)にナットを螺着させるようにしてもよい。さらに、図7の燃料電池5に示されるように、本体部521の下端部分に、同本体部521の径方向外側に延びる張出部501を形成し、張出部501及び絶縁スペーサ531にボルト541を挿通させ、挿通したボルト541の先端部分を上側エンドプレート512に螺着させるようにしてもよい。
上記実施形態の絶縁スペーサ31は、断面円形状の貫通孔35を有し、全体として円環状をなしていた。しかし、絶縁スペーサの形状は適宜変更されていてもよい。例えば、図8に示されるように、断面円形状の貫通孔635を有し、全体として略矩形状をなす絶縁スペーサ631であってもよい。
図9の燃料電池7に示されるように、上側エンドプレート712の端面715において開口する収容凹部701を設け、収容凹部701に円筒状をなすエンドプレート接続部品702を挿入してもよい。そして、収容凹部701からのエンドプレート接続部品702の突出部分の外周面を、絶縁スペーサ731の貫通孔735の内周面に接触させるようにしてもよい。なお、エンドプレート接続部品702の突出部分は第1段差部として機能し、突出部分の外周面は第1段差部の側面として機能するようになる。このようにすれば、既存の上側エンドプレートを利用して第1段差部の構造を成立させることができ、上側エンドプレートの端面上に突出部分を形成するなどの工程が不要になるため、燃料電池7の製造コストを低減させることができる。
上記実施形態では、上側エンドプレート12の端面15上にガス通路部材21が設置されていたが、下側エンドプレート13の端面(下端面)上にガス通路部材21を設置するようにしてもよい。また、上側エンドプレート12の端面15上及び下側エンドプレート13の端面上の両方に、ガス通路部材21を設置するようにしてもよい。