JP2013213253A - 高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼およびこの合金鋼を工具基体とするエンドミル - Google Patents

高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼およびこの合金鋼を工具基体とするエンドミル Download PDF

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Abstract

【課題】高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼、合金鋼製エンドミル、表面被覆合金鋼製エンドミルを提供する。
【解決手段】質量%で、C:2.0〜3.0%、Si:3.0〜6.0%、Cr:3.5〜4.0%、WおよびMoのうちの1種または2種の合計:14.0〜15.0%、V:1.0〜2.0%、Co:7.0〜8.0%、残部はFeおよび不可避不純物からなる高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼およびこの合金鋼で工具基体を構成した合金鋼製エンドミル、表面被覆合金鋼製エンドミル。
【選択図】 図2

Description

この発明は、高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼に関し、さらに、この合金鋼で工具基体を構成することにより、高速切削加工において、刃先が焼戻し温度以上の高温に晒された場合でも、刃先の硬度低下が少なく、高温下ですぐれた切削性能を発揮する合金鋼製エンドミルおよび表面被覆合金鋼製エンドミルに関する。
切削工具用の材料としては、合金鋼(JIS SKH、SKD等)、超硬合金、サーメット、cBN、ダイヤモンド等が知られているが、切削工具用合金鋼のなかでは、耐摩耗性と靭性に優れることから高速度工具鋼(JIS SKH)が多用されている。
高速度工具鋼は、C,Cr,W,Mo,V,Co等の合金元素を多量に添加し、特に高温での硬さや耐摩耗性を高めた工具鋼であるが、大別して、溶製により製造する高速度工具鋼と粉末冶金法により製造する粉末高速度工具鋼(粉末ハイスともいう)の2種類がある。
溶製法による場合には、通常の製法により製造し得るものの、粗大炭化物の偏析等による材料の均質化が問題となりやすく、一方、粉末冶金法による場合は、製造工程が複雑でコスト高になるという欠点はあるものの、溶製法により製造が困難である材質をも製造可能とするとともに、均一組織を形成することができるという利点がある。
溶製法による高速度工具鋼については、例えば、特許文献1〜5に記載されており、特許文献1によれば、鋼中にVC炭化物を形成することにより耐摩耗性を向上させるとともに、VC炭化物の晶出形態を微細かつ均一化することで靭性を高めることが知られている。
また、特許文献2によれば、鋼中の合金成分およびその含有量を調整することにより、熱間加工性、靭性、耐衝撃性、疲労強度を向上させることが知られている。
また、特許文献3によれば、鋼中の合金成分およびその含有量を調整することにより、MC型炭化物の粒径と面積率を調整することにより、高温下での高温硬さを維持すると同時に、耐摩耗性を向上させることが知られている。
また、特許文献4によれば、鋼中の合金成分Si、Mo,Wの含有量を調整し、0.4≦2Mo/(W+2Mo)×Si≦1.0の関係を満足させることにより、焼戻し硬さが高く、靭性、耐摩耗性を向上させることが知られている。
また、特許文献5によれば、鋼中に高硬度の微細炭化物を形成することにより耐摩耗性、耐熱性、耐焼付き性の向上を図り、さらに、鋳造組織を微細化することにより工具切刃の耐チッピング性の向上を図ることが知られている。
粉末冶金法による粉末高速度工具鋼(粉末ハイス)については、例えば、特許文献6,7に記載されており、特許文献6によれば、鋼中の(W+2Mo)量及び(C−Ceq)の値を規制するとともに、Nb/Vの値を規制することにより、靭性、耐食性を有し、かつ、高温焼戻し軟化抵抗性を高めた粉末高速度工具鋼を得ることができるとされている。
また、特許文献7によれば、鋼中の合金成分相互の含有量を、一定の関係を満足するように調整することによって、耐摩耗性および靭性を向上させ得るとされている。
特開平7−228946号公報 特開平8−100239号公報 特開平10−25546号公報 特開2000−144333号公報 特許第2573951号明細書 特開平5−171373号公報 特開2001−294986号公報
近年の切削技術の進展はめざましく、加えて切削加工における省力化、省エネ化、低コスト化さらに効率化等の要求も強く、これに伴い、ドライ条件での高速切削加工、高能率切削加工も求められているが、上記従来の合金鋼から作製された合金鋼製エンドミルを用い、ドライ高速切削を行ったような場合には、切刃が切削加工時の高熱にさらされるため、合金鋼が高温焼戻し軟化を起こして硬度低下を生じやすく、また、高温硬さ、靭性も十分でないために、クレータ摩耗等の発生により、工具寿命が短くなるという問題があった。
そこで、本発明者等は、すぐれた高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化特性を有し、例えば、高熱発生を伴うドライ高速切削を行うエンドミルの基体材料として用いた場合に、すぐれた切削性能を発揮する合金鋼について鋭意研究を行った結果、次のような知見を得たのである。
従来の合金鋼、特に、高速度工具鋼においては、通常その合金成分として、C,Si,Mn,Cr,W,Mo,V,Co等が含有されているが、その合金成分のうちのSiについては、主として脱酸剤としての作用を期待して添加されており、硬さを向上させる作用もあるが、Si含有量が多くなりすぎると、高速度工具鋼の靭性を劣化させることになるので、靭性に悪影響を与えないという観点から通常は2%以下の範囲内で添加されていた。
本発明者等は、Si成分の含有量と作用に着目し、Si量を種々に変化させた場合の高温焼戻し軟化特性への影響、高温靭性への影響を調査したところ、鋼中に含有されるC量を特定の範囲内に規制した条件下では、驚くべきことに、多量のSiを添加含有させた場合に、高温焼戻し軟化特性が大きく改善されることを見出したのである。
なお、ここでいう多量のSiとは、通常の合金鋼において、脱酸剤として添加される量をはるかに超えるものであり、例えば、先に挙げた特許文献1〜6の高速度工具鋼におけるSi含有量は、最大で2質量%であり、最大3質量%のSiを含有し得るとしている特許文献7においても、Si含有量の好ましい上限値は1%(段落0022参照)とされており、本発明者等は3質量%を超える量のSiを添加することによって、合金鋼の高温靭性、高温焼戻し軟化特性が大きく改善されることを見出したのであり、また、この合金鋼によって構成された合金鋼製エンドミル、表面被覆合金鋼製エンドミルはすぐれた切削性能を備えることを見出したのである。
この発明は、上記の知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 質量%で、C:2.0〜3.0%、Si:3.0〜6.0%、Cr:3.5〜4.0%、WおよびMoのうちの1種または2種の合計:14.0〜15.0%、V:1.0〜2.0%、Co:7.0〜8.0%、残部はFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼。
(2) 前記(1)に記載の高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼で基体を構成したことを特徴とする合金鋼製エンドミル。
(3) 前記(1)に記載の高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼で基体を構成し、該基体表面に硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする表面被覆合金鋼製エンドミル。」
に特徴を有するものである。
この発明について、以下に詳細に説明する。
まず、この発明の合金鋼の成分組成範囲についての数値限定理由は次の通りである。
C:2.0〜3.0質量%(以下においては、質量%を単に%で示す)
Cは、焼入れ状態でその一部がマトリックスに固溶してマトリックスを強化し、また、一部は、W,Mo,Cr,Vと結合して炭化物を形成し、合金鋼の硬さと耐摩耗性を向上させる。
C含有量が2.0%未満では、硬さと耐摩耗性向上を期待できないばかりか、後述するSiとの相互作用によって、高温焼戻し軟化特性の改善を図ることができない。また、C含有量が3.0%を超えると、硬くなり過ぎて靭性劣化が生じるようになり、また、不均一なミクロ組織の形成により材質の均質性が担保できなくなることから、C含有量は2.0〜3.0%と定めた。
Si:3.0〜6.0%
通常の合金鋼の場合と同様に、Siは脱酸剤としての作用を有するが、これに加え、高温焼戻し軟化特性の改善を図る上で、この発明においては、最も重要な合金成分である。
本発明者等は、合金鋼の合金成分であるC,Siの含有量と、焼入れ温度、焼入れ硬さ、焼戻し温度、焼戻し軟化割合の関連について詳細な調査を行った。
図1に、一例として、焼入れ温度(1130、1180℃)と焼入れ硬さの関係を示す。
図1から、C2.1%、Si4.0%の本発明鋼1、C2.5%、Si4.0%の本発明鋼2は1130、1180℃からの焼入れにより、焼入れ硬さHRC66.3、67.9が得られており、一方、従来の合金鋼(比較例鋼11、比較例鋼12)では、1130、1180℃からの焼入れにより、焼入れ硬さHRC64.9、65.9が得られていることから、本発明鋼1、2は、従来の合金鋼(比較例鋼11、比較例鋼12)に比して、低温度からの焼入れでも本発明鋼は比較鋼に比べ焼入れ硬さが高いことが分かる。
つまり、本発明の合金鋼は、低温度からの焼入れにより所定の焼入れ硬さが得られていることから、靭性の低下も少なく、すぐれた高温靭性を備えることが分かる。
図2には、一例として、焼戻し温度(600〜700℃)と焼戻し軟化割合の関係を示す。
図2から、本発明鋼1、2の焼戻し温度(℃)による焼戻し軟化割合(HRC硬さ)の変化をみると、600〜700℃の温度範囲で焼戻しを行った場合には、本発明鋼1,本発明鋼2の焼戻しによる軟化割合は、従来の合金鋼(比較例鋼11、比較例鋼12)に比して、はるかに小さい。
上記のことから、C含有量を2.0〜3.0%とした上で、Si含有量を3.0〜6.0%とした本発明の合金鋼の高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性は、従来の合金鋼(比較例鋼11、比較例鋼12)のそれに比してはるかに優れることが分かる。
Mn:1.0%以下
本発明では、Siを多量に含有し、これが脱酸剤として作用することから、Mn含有量については特に規定しないが、Mnには焼入れ性向上作用もあるので、1.0%以下の範囲内で必要に応じ添加することができる。
Cr:3.5〜4.0%
Crは、鋼の焼入れ性を確保するとともに、熱処理時の耐酸化性を高め、また、耐摩耗性を向上させるために3.5%以上の添加を必要とするが、4.0%を超えて添加しても工具としての切削性能の向上効果が少ないので、Cr添加量は、3.5〜4.0%と定めた。
WおよびMoのうちの1種または2種の合計:14.0〜15.0%
Wは、MC型やM6C型の炭化物を形成すると共に、その一部がマトリックス中に固溶し、耐摩耗性、高温焼戻し軟化抵抗性を向上させるが、Wの含有量が過剰になると、炭化物の粗大化を招き、靭性も低下する。
また、Moは、Wと同様に、MC型やM6C型の炭化物を形成して耐摩耗性、高温焼戻し軟化抵抗性を高めるとともに、靭性を向上させるが、Moの含有量が過剰になると、結晶粒が粗大化し脆弱になるとともに、熱処理時に脱炭を生じやすくなる。
したがって、耐摩耗性、高温焼戻し軟化抵抗性を向上させるためには、WおよびMoのうちの1種または2種の合計は14.0%以上必要であるが、その合計量が15.0%を超えると、炭化物の粗大化、結晶粒の粗大化による靭性の低下等が生じるようになるので、WおよびMoのうちの1種または2種の含有量は、14.0〜15.0%と定めた。
V:1.0〜2.0%
Vは、強力な炭化物形成元素で、Cと結合することによってMC型の微細な炭化物を形成し、結晶粒の粗大化による靭性の低下を防止するとともに、高温焼戻し軟化抵抗性を高め耐摩耗性の向上に効果があるが、その含有量が1%未満ではその効果が期待できず、一方、その含有量が2%を超えると研削性が低下する傾向を示すようになることから、Vの含有量は1.0〜2.0%と定めた。
Co:7.0〜8.0%
Coは、それ自体は炭化物を形成しないが、マトリックスに固溶することによって、耐熱性、耐摩耗性、高温焼戻し軟化抵抗性を高める。これらの効果を得るためには、7.0%以上の含有が必要であるが、過剰に含有されると、炭化物の偏析を助長したり脱炭を促進することから、その上限は8.0%と定めた。
上記のとおり、本発明の合金鋼は、その成分組成を、質量%で、C:2.0〜3.0%、Si:3.0〜6.0%、Cr:3.5〜4.0% WおよびMoのうちの1種または2種の合計:14.0〜15.0%、V:1.0〜2.0%、Co:7.0〜8.0%、残部はFeおよび不可避的不純物と定めたことによって、高温下でのすぐれた靭性、硬さを示すとともに、高温焼戻し軟化抵抗性にすぐれるというすぐれた特性を発揮する。
したがって、この合金鋼でエンドミルの基体を構成することによって、ドライ高速切削を行った場合でも、高温焼戻し軟化を生じず、硬度低下が少なく、高温靭性にもすぐれ、しかも、長期の使用にわたってすぐれた耐摩耗性を発揮する合金鋼製エンドミルを得ることができる。
なお、1.0%以下のMnを含有することが許容されることは前記のとおりであるが、不可避不純物としては、本発明合金鋼、エンドミルへの高温靭性、高温焼戻し軟化抵抗性に影響を与えない範囲内で、P,S,N,Ni,Nb,Cu,As,Sb等の不純物成分の含有が許容される。
また、本発明合金鋼の高温焼戻し軟化抵抗性を実験によりさらに具体的に定量化したところ、600〜700℃における軟化割合(%)を、
軟化割合(%)=(H−H600)×100/H600
で表した場合、本発明の合金鋼では、上記軟化割合(%)は0〜−20%の範囲内であることを確認した。
ここで、軟化割合(%)とは、600℃の焼戻し温度における硬さ(H600)を基準とし、焼戻し温度T(℃)(但し、600≦T≦700)における硬さをHとした場合の、焼戻し温度による硬さ低下の度合い示す指標である。
また、本発明では、この合金鋼を基体材料として、合金鋼製エンドミルとして利用した場合には、刃先の軟化(硬度低下)が生じることがないために、高温切削条件下での長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮することができる。
さらに、合金鋼製エンドミルの基体表面に、AlとTiの複合窒化物層、AlとTiとSiの複合窒化物層、AlとCrの複合窒化物層等の当業者に既によく知られている硬質被覆層を蒸着形成することにより、表面被覆合金鋼製エンドミルとして利用することができる。上記の硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆合金鋼製エンドミルは、耐熱性、耐摩耗性が一段と向上し、高温切削条件下でさらに優れた切削性を発揮するものである。
本発明の合金鋼、さらにはこの合金鋼をその基体とする合金鋼製エンドミル、表面被覆合金鋼製エンドミルは、特に、合金成分としてのCを2.0〜3.0%とした上で、Si添加量を高め、Si含有量を3.0〜6.0%としたことにより、600〜700℃の温度範囲で焼戻しを行った場合でも、すぐれた高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を示すことから、高温にさらされる高速切削条件下であっても、刃先の軟化(硬度低下)が生じることがないために、長期の使用に亘って、すぐれた切削性能を発揮する。
合金鋼を焼入れした場合の、焼入れ温度(℃)と焼入れ硬さ(HRC)の関係を示すグラフである。 合金鋼に対して焼戻しを行った場合の、焼戻し温度(℃)と軟化割合(%)との関係を示すグラフである。
本発明を実施例により、以下に説明する。
窒素ガスアトマイズ法によって製造した所定の成分組成を有する粉末を、カプセルに充填・脱気後、温度1150℃×圧力100MPaにてHIP処理(熱間静水圧プレス処理)し、表1に示す成分組成を有する本発明の粉末合金鋼1〜10(以下、本発明鋼1〜10という)を作製した。
また、同様にして、本発明から外れる成分組成を有する比較例の粉末合金鋼11〜15(以下、比較例鋼11〜15という)を作製した。
同じく表1に、比較例鋼11〜15の成分組成を示す。

まず、上記本発明鋼1〜10について、表2に示す条件で熱処理を行い、本発明鋼1−A〜1−D,本発明鋼2−A〜2−D,本発明鋼3−A、3−B,本発明鋼4−A、4−B,本発明鋼5−A、5−B,本発明鋼6−A、6−B,本発明鋼7−A、7−B,本発明鋼8−A、8−B,本発明鋼9−A、9−B,本発明鋼10−A、10−Bを作製した。
同様に、比較例鋼11〜15についても、表3に示す条件で熱処理を行い、比較例鋼11−A〜11−D,比較例鋼12−A〜12−D,比較例鋼13−A、13−B,比較例鋼14−A、14−B,比較例鋼15−A、15−Bを作製した。
即ち、850〜950℃×60〜90分の条件でオーステナイト化処理を行った後、1100〜1180℃×30分間保持で焼入れし、その後、600〜700℃×1時間保持、戻し回数3回で焼戻しを行った。
それぞれについて、焼入れ温度、焼入れ硬さ、600℃における硬さ(H600)、所定の焼戻し温度Tにおける硬さ(H)をロックウェル硬度計で測定(いずれも5点測定の平均値)することにより硬度を求め、その硬度値から
軟化割合(%)(=(H−H600)×100/H600
を算出した。
これらの値を、表2、表3に示す。
なお、本発明鋼1、本発明鋼2、比較例鋼11、比較例鋼12については、焼戻し温度と軟化抵抗の関係を、図2に示した。
表2、表3、さらに、前記図1、図2から明らかなように、比較的低温度の1130〜1180℃から焼入れされた場合、本発明鋼1〜10は焼入れ硬さ(HRCは66.3以上)を有しているのに対して、比較例鋼11〜15では、焼入れ温度が1130〜1180℃の場合には、焼入れ硬さはせいぜいHRC65.9であった。
したがって、本発明鋼は、低焼入れ温度によって焼入れまま状態で高硬さが得られることから、高温における靭性低下が少なく、高温靭性にすぐれることが分かる。
また、600〜700℃という高温で焼戻された場合についても、本発明鋼は、高焼戻し硬さ(HRC54.2以上)とすぐれた軟化抵抗性を示す(軟化割合(%)は0〜−20%の範囲)のに対して、比較例鋼11〜15は、焼戻し硬さが低い(HRC41.8〜48.0)ばかりか、軟化割合(%)も−26〜−34%と大きく、高温焼戻し軟化抵抗性が劣ることは明らかである。
次に、上記で作製した表1に示す成分組成の本発明鋼1〜10を素材として、機械加工にて、切刃部の直径×長さがそれぞれ10mm×25mmの寸法を有し、また、いずれもねじれ角45度の4枚刃スクエア形状をもった本発明合金鋼製エンドミル(以下、本発明エンドミルという)1〜10をそれぞれ製造した。
同様に、比較例鋼11〜15についても、比較例エンドミル11〜15を作製した。
ついで、上記本発明エンドミル1〜10および比較例エンドミル11〜15のそれぞれに対して、(Al0.6,Ti0.4)Nからなる層厚5μmの硬質被覆層をアークイオンプレーティングにより蒸着形成することにより、本発明合金鋼製エンドミル(本発明被覆エンドミルという)1〜10および比較例合金製エンドミル(比較例被覆エンドミルという)11〜15を作製した。
上記硬質被覆層を蒸着形成した本発明被覆エンドミル1〜10および比較例被覆エンドミル11〜15を用いて、次の条件で側面切削加工試験を行ない、切削性能を評価した。
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法のJIS・S50Cの板材、
切削速度: 90 m/min.、
半径方向切込み量: 20.0 mm、
軸方向切込み量: 1.5 mm、
テーブル送り: 802 mm/分、
の条件での炭素鋼の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は60m/min.)。
上記の溝切削加工試験で、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が、使用寿命の目安とされる0.3mmに至るまでの切削溝長を測定した。
上記の結果を表4に示した。
表4に示す結果から、本発明被覆エンドミル1〜10は切削加工時の高温にさらされても、すぐれた高温靭性、高温硬さを有し、また、切刃部の高温焼戻し軟化抵抗性が高いことから、軟化(硬度低下)によるクレーター摩耗の発生はなく、欠損等の異常損傷を生じることもなく、正常な摩耗形態をとり、切削長は70m以上であり、すぐれた切削性能を示した。
これに対して、比較例被覆エンドミル11〜15は、本発明被覆エンドミル1〜10に比べ軟化抵抗が低いことから、硬度低下によるクレーター摩耗等の異常摩耗が生じ、切削長もたかだか35m程度であって、短寿命であった。
上記のとおり、本発明の合金鋼は、すぐれた高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有し、これを基体とする合金鋼製エンドミル、表面被覆合金鋼製エンドミルは、刃先の硬度低下が防止される結果、高熱を発生する切削条件下で、すぐれた切削性能、耐摩耗性を発揮し、また、長寿命であることから、産業上の有益性が非常に大きいといえる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:2.0〜3.0%、Si:3.0〜6.0%、Cr:3.5〜4.0%、WおよびMoのうちの1種または2種の合計:14.0〜15.0%、V:1.0〜2.0%、Co:7.0〜8.0%、残部はFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼。
  2. 請求項1に記載の高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼で基体を構成したことを特徴とする合金鋼製エンドミル。
  3. 請求項1に記載の高温靭性、高温硬さ、高温焼戻し軟化抵抗性を有する合金鋼で基体を構成し、該基体表面に硬質被覆層を蒸着形成したことを特徴とする表面被覆合金鋼製エンドミル。



































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