JP2013212824A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する。
【解決手段】トレッド部2から両タイヤ幅方向端部を各ビード部5に延在させたカーカス層6を備え、当該カーカス層6のカーカスコードを、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向両外側に、トレッド展開幅TDWの1/2の95[%]以上120[%]以下の範囲において、タイヤ周方向に対して実質的に0[°]の縦材と、タイヤ周方向に対して実質的に90[°]の横材と、タイヤ周方向に対して20[°]以上30[°]以下であって互いに交差する2つの斜材とが織られた4軸織物で構成し、かつ範囲のタイヤ幅方向両外側を横材で構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、カーカス層の工夫により操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善した空気入りタイヤに関するものである。
一般に、空気入りタイヤは、タイヤ周方向に実質的に90[°]に配置したコードが、タイヤ周方向に沿って並設されたカーカス層と、トレッド部におけるカーカス層のタイヤ径方向外側に、タイヤ周方向に対して斜めに配置したコードが、タイヤ周方向に沿って並設された少なくとも2つのベルトを、互いのコードを交差させて設けられたベルト層とを備える。カーカス層は、上記コード配置により、タイヤ周方向には剛性をほとんど有していない。そのため、タイヤ周方向の剛性は、上記コード配置によるベルト層により補っている。その半面、ベルト層は、スチールコードが用いられる場合もあり、タイヤ重量に大きく起因している。
近年では、タイヤの転がり抵抗を低減して低燃費性を向上させることが望まれており、タイヤ重量を低減することが求められている。しかし、タイヤ重量を低減するために、上述のベルト層のコードの使用量を減らすことは、タイヤ周方向の剛性が低下し、タイヤの操縦安定性が低下することになる。
従来、特許文献1に記載の空気入りタイヤは、上記課題に対し、カーカス層に3軸織物を適用している。この空気入りタイヤでは、カーカス層が、タイヤ周方向にも剛性を獲得し、操縦安定性を低下させることなく、ベルト層の使用量を減らしタイヤ重量を低減して転がり抵抗の改善を図っている。
また、従来、特許文献2に記載の空気入りタイヤは、タイヤの少なくとも一部を、3軸以上の多軸織物により構成している。この空気入りタイヤでは、具体的に、カーカス層、ベルト層、およびベルト補強層を有するタイヤで、多軸織物をカーカスに用いることを望ましいとし、これにより旋回安定性の向上を図っている。
特開2007−112384号公報 特開2008−230334号公報
上述した特許文献1の空気入りタイヤは、カーカス層全体、すなわちサイドウォール部にも3軸織物を適用することで、サイドウォール部の耐カット性の向上も図っている。しかし、サイドウォール部においてもカーカス層に3軸織物を適用することは、サイドウォール部の剛性が高すぎて操縦安定性を低下させる原因となり、かつタイヤ重量を増加させる原因ともなり、結果として、操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果を顕著に得ることは困難である。
また、上述した特許文献2の空気入りタイヤは、多軸織物をカーカス層全体やカーカス層の一部に用いるかは言及されておらず、特許文献1と同様に、サイドウォール部においてもカーカス層に多軸織物を適用すると、サイドウォール部の剛性が高すぎて操縦安定性を低下させる原因となり、かつタイヤ重量を増加させる原因ともなり、結果として、操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果を顕著に得ることは困難である。しかも、特許文献2の実施例では、多軸織物を用いたカーカス層に加えて、コード密度が一般的なベルト層もすべて配置していることから、操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善することに着目したものではない。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、カーカス層の工夫により操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善することのできる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の空気入りタイヤは、トレッド部から両タイヤ幅方向端部を各ビード部に延在させたカーカス層を備え、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向両外側に、トレッド展開幅の1/2の95[%]以上120[%]以下の範囲において、前記カーカス層のカーカスコードを、タイヤ周方向に対して実質的に0[°]の縦材と、タイヤ周方向に対して実質的に90[°]の横材と、タイヤ周方向に対して20[°]以上30[°]以下であって互いに交差する2つの斜材とが織られた4軸織物で構成し、かつ前記範囲のタイヤ幅方向両外側を前記横材で構成することを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、4軸織物で構成した範囲は、ベルト層を配置する範囲であり、当該範囲の剛性を4軸織物により向上するため、ベルト層のコードを少なく、またはベルト層およびベルト層を補強する構成そのものを無くすことが可能になる。この結果、ベルト層による剛性で得られる操縦安定性を維持するとともに、ベルト層が起因するタイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善することができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記斜材を、弾性率100[GPa]以上の繊維で形成することを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、斜材を、弾性率100[GPa]以上の比較的高弾性率の繊維で形成することで、軽量で剛性の確保が可能になり、剛性の低下を抑えて操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果を顕著に得ることができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記縦材を、弾性率1[GPa]以上20[GPa]以下の繊維で形成することを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、縦材を、弾性率1[GPa]以上20[GPa]以下の繊維で形成することで、カーカス層のタイヤ周方向での剛性を確保しつつカーカス層のタイヤ周方向への変形を許容するため、耐久性および乗り心地性を両立することができる。
また、本発明の空気入りタイヤは、前記縦材を、芳香族ポリアミド繊維または脂肪族ポリアミド繊維で形成し、前記横材を、ポリエステル繊維で形成し、各前記斜材を、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、セルロール繊維または炭素繊維で形成することを特徴とする。
この空気入りタイヤによれば、縦材、横材、各斜材を上記繊維で構成することで、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果をより顕著に得ることができる。
本発明に係る空気入りタイヤは、操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る空気入りタイヤの子午断面図である。 図2は、カーカス層のカーカスコードの拡大平面図である。 図3は、カーカス層のカーカスコードの展開平面図である。 図4は、本発明の実施例に係る空気入りタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
図1は、本実施の形態に係る空気入りタイヤ1の子午断面図である。以下の説明において、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ1の回転軸(図示せず)と直交する方向をいい、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向において回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とはタイヤ径方向において回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ周方向とは、前記回転軸を中心軸とする周り方向をいう。また、タイヤ幅方向とは、前記回転軸と平行な方向をいい、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面(タイヤ赤道線)CLに向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから離れる側をいう。タイヤ赤道面CLとは、空気入りタイヤ1の回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤ1のタイヤ幅の中心を通る平面である。タイヤ幅は、タイヤ幅方向の外側に位置する部分同士のタイヤ幅方向における幅、つまり、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面CLから最も離れている部分間の距離である。タイヤ赤道線とは、タイヤ赤道面CL上にあって空気入りタイヤ1のタイヤ周方向に沿う線をいう。本実施の形態では、タイヤ赤道線にタイヤ赤道面と同じ符号「CL」を付す。
本実施の形態の空気入りタイヤ1は、図1に示すようにトレッド部2と、その両側のショルダー部3と、各ショルダー部3から連続するサイドウォール部4およびビード部5とを有している。また、この空気入りタイヤ1は、カーカス層6と、ベルト層7と、ベルト補強層8とを備えている。
トレッド部2は、ゴム材(トレッドゴム)からなり、空気入りタイヤ1のタイヤ径方向の最も外側で露出し、その表面が空気入りタイヤ1の輪郭となる。トレッド部2の外周表面、つまり、走行時に路面と接触する踏面には、トレッド面21が形成されている。トレッド面21は、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なストレート主溝である複数(本実施の形態では4本)の主溝22が設けられている。そして、トレッド面21は、これら複数の主溝22により、タイヤ周方向に沿って延び、タイヤ赤道線CLと平行なリブ状の陸部23が複数形成されている。また、図には明示しないが、トレッド面21は、各陸部23において、主溝22に交差するラグ溝が設けられている。ラグ溝は、陸部23がタイヤ周方向で複数に分割するように、両端が主溝22に連通して設けられていてもよく、または陸部23がタイヤ周方向で連通するように、先端が陸部23の途中で終端して設けられていてもよい。また、ラグ溝は、タイヤ幅方向最外側の陸部23では、タイヤ幅方向外側に開口して形成されている。
ショルダー部3は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向両外側の部位である。また、サイドウォール部4は、空気入りタイヤ1におけるタイヤ幅方向の最も外側に露出したものである。また、ビード部5は、ビードコア51とビードフィラー52とを有する。ビードコア51は、スチールワイヤであるビードワイヤをリング状に巻くことにより形成されている。ビードフィラー52は、カーカス層6のタイヤ幅方向端部がビードコア51の位置で折り返されることにより形成された空間に配置されるゴム材である。
カーカス層6は、トレッド部2から両タイヤ幅方向端部を各ビード部に延在させ、各タイヤ幅方向端部が、一対のビードコア51でタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返され、かつタイヤ周方向にトロイド状に掛け回されてタイヤの骨格を構成するものである。このカーカス層6は、後述するカーカスコード61が、コートゴムで被覆されたものである。このカーカス層6は、少なくとも1層で設けられている。
ベルト層7は、少なくとも2層のベルト71,72を積層した多層構造をなし、トレッド部2においてカーカス層6の外周であるタイヤ径方向外側に配置され、カーカス層6をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト71,72は、タイヤ周方向に対して所定の角度(例えば、20[°]〜30[°])で複数並設されたコード(図示せず)が、コートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。また、重なり合うベルト71,72は、互いのコードが交差するように配置されている。
ベルト補強層8は、ベルト層7の外周であるタイヤ径方向外側に配置されてベルト層7をタイヤ周方向に覆うものである。ベルト補強層8は、タイヤ周方向に略平行(±5[°])でタイヤ幅方向に複数並設されたコード(図示せず)がコートゴムで被覆されたものである。コードは、スチールまたは有機繊維(ポリエステルやレーヨンやナイロンなど)からなる。図1で示すベルト補強層8は、ベルト層7のタイヤ幅方向端部を覆うように1層で配置されている。ベルト補強層8の構成は、上記に限らず、図には明示しないが、ベルト層7全体を覆うように配置された構成、または、例えば2層の補強層を有し、タイヤ径方向内側の補強層がベルト層7よりもタイヤ幅方向で大きく形成されてベルト層7全体を覆うように配置され、タイヤ径方向外側の補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成、あるいは、例えば2層の補強層を有し、各補強層がベルト層7のタイヤ幅方向端部のみを覆うように配置されている構成であってもよい。すなわち、ベルト補強層8は、ベルト層7の少なくともタイヤ幅方向端部に重なり、当該ベルト層7のタイヤ幅方向端部付近を補強するものである。また、ベルト補強層8は、帯状(例えば幅10[mm])のストリップ材をタイヤ周方向に巻き付けて設けられる。
図2は、カーカス層のカーカスコードの拡大平面図であり、図3は、カーカス層のカーカスコードの展開平面図である。
上述した空気入りタイヤ1において、カーカス層6は、そのカーカスコード61の所定範囲CW(図3参照)が4軸織物で構成されている。4軸織物は、図2に示すように、タイヤ周方向に対して実質的に0[°](±5[°]を含む)の縦材61aと、タイヤ周方向に対して実質的に90[°](±5[°]を含む)の横材61bと、タイヤ周方向に対して20[°]以上30[°]以下であって互いに交差する2つの斜材61c,61dとが織られたものである。図2において、4軸織物は、縦材61aと横材61bとがタイヤ周方向およびタイヤ幅方向で交互にタイヤ径方向で重なり、一方の斜材61cが縦材61aおよび横材61bのタイヤ径方向内側にて他方の斜材61dに対してタイヤ径方向外側で重なり、かつ他方の斜材61dが縦材61aのタイヤ径方向外側に重なるとともに横材61bのタイヤ径方向内側に重なるように織られたものである。4軸織物は、図2に示す織り形状に限らず、縦材61aと横材61bと斜材61c,61dとが、それぞれ分離しないように織られていればよい。
また、カーカスコード61において、4軸織物で構成される所定範囲CWとは、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向両外側に、図1に示すトレッド展開幅TDWの1/2の95[%]以上120[%]以下の範囲である。さらに、カーカスコード61において、所定範囲CWのタイヤ幅方向両外側は、横材61bで構成されている。
トレッド展開幅TDWについて説明する。図1に示すように、トレッド部2の表面であるトレッド面21のプロファイルは、タイヤ径方向外側に凸形状の複数の異なる曲率半径の円弧により形成されている。具体的に、トレッド面21は、図1に示すように、中央部円弧21aと、ショルダー側円弧21bと、ショルダー部円弧21cと、サイド部円弧21dとで構成されている。中央部円弧21aは、トレッド面21におけるタイヤ幅方向の中央に位置しており、タイヤ赤道面CLを含み、タイヤ赤道面CLを中心としてタイヤ幅方向の両側に形成されている。ショルダー側円弧21bは、中央部円弧21aのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。ショルダー部円弧21cは、トレッド部2からショルダー部3に連なる部分でショルダー側円弧21bのタイヤ幅方向外側に連続して形成されている。サイド部円弧21dは、ショルダー部3からサイドウォール部4に連なる部分でショルダー部円弧21cのタイヤ幅方向外側に連続して形成され、トレッド部2のタイヤ幅方向最外側(ショルダー部3)に位置している。
そして、空気入りタイヤ1を正規リムに組込んで正規内圧の5[%]を内圧充填した無負荷状態で、図1に示すタイヤ子午線方向の断面視にて、ショルダー側円弧21bの仮想の延長線とサイド部円弧21dの仮想の延長線との交点を基準点Pとする。この基準点Pを通過するショルダー部円弧21cの法線間でのタイヤ幅方向の円弧長がトレッド展開幅TDWである。
ここで、正規リムとは、JATMAで規定する「標準リム」、TRAで規定する「Design Rim」、あるいは、ETRTOで規定する「Measuring Rim」である。また、正規内圧とは、JATMAで規定する「最高空気圧」、TRAで規定する「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、あるいはETRTOで規定する「INFLATION PRESSURES」である。
このように、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、トレッド部2から両タイヤ幅方向端部を各ビード部5に延在させたカーカス層6を備え、タイヤ赤道面CLからタイヤ幅方向両外側に、トレッド展開幅TDWの1/2の95[%]以上120[%]以下の範囲CWにおいて、カーカス層6のカーカスコード61を、タイヤ周方向に対して実質的に0[°]の縦材61aと、タイヤ周方向に対して実質的に90[°]の横材61bと、タイヤ周方向に対して20[°]以上30[°]以下であって互いに交差する2つの斜材61c,61dとが織られた4軸織物で構成し、かつ範囲CWのタイヤ幅方向両外側を横材61bで構成するものである。
この空気入りタイヤ1によれば、4軸織物で構成した範囲CWは、ベルト層7を配置する範囲であり、当該範囲CWの剛性を4軸織物により向上するため、ベルト層7のコードを少なく、またはベルト層7およびベルト層7を補強するベルト補強層8そのものを無くすことが可能になる。この結果、ベルト層7による剛性で得られる操縦安定性を維持するとともに、ベルト層7が起因するタイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善することが可能になる。
なお、カーカスコード61は、横材61bだけで構成されている部分と、4軸織物で構成されている部分とを、横材61bを連続して用いてタイヤ幅方向で一連の構成とすることが、カーカス層6を製造し易くし、かつタイヤの骨格を保つうえで好ましいが、横材61bだけで構成されている部分と、4軸織物で構成されている部分とを分割して構成してもよい。この場合、4軸織物の部分と、横材61bだけの部分とを5[mm]以上10[mm]以下の範囲で相互に重なるように配置し、タイヤの骨格を保つようにする。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、斜材61c,61dを、弾性率100[GPa]以上の繊維で形成することが好ましい。
ここで、弾性率は、JIS L−1017に準拠して、コード径の測定と引張試験を行って応力−ひずみ曲線を描き、10[N]と67[N]の点を結び、その直線の傾きを求めることで得ることができる。この測定は、コード20本について行い、その平均値をコードの弾性率とする。
この空気入りタイヤ1によれば、斜材61c,61dを、弾性率100[GPa]以上の比較的高弾性率の繊維で形成することで、軽量で剛性の確保が可能になり、剛性の低下を抑えて操縦安定性を維持するとともに、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果を顕著に得ることが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、縦材61aを、弾性率1[GPa]以上20[GPa]以下の繊維で形成することが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、縦材61aを、弾性率1[GPa]以上20[GPa]以下の繊維で形成することで、カーカス層6のタイヤ周方向での剛性を確保しつつカーカス層6のタイヤ周方向への変形を許容するため、耐久性および乗り心地性を両立することが可能になる。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、縦材61aを、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維または脂肪族ポリアミド(ナイロン)繊維で形成し、横材61bを、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維やポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリエステル繊維で形成し、各斜材61c,61dを、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール(PBO)繊維、ポリケトン(PK)繊維、レーヨンなどのセルロール繊維または炭素繊維で形成することが好ましい。
この空気入りタイヤ1によれば、縦材61a、横材61b、各斜材61c,61dを上記繊維で構成することで、タイヤ重量を低減して転がり抵抗を改善する効果をより顕著に得ることが可能になる。
本実施例では、条件が異なる複数種類の空気入りタイヤについて、タイヤ性能(ベルト層使用量、操縦安定性、タイヤ重量、転がり抵抗)に関する性能試験が行われた(図4参照)。
この性能試験では、タイヤサイズ205/65R15の空気入りタイヤを試験タイヤとした。
ベルト層使用量の評価方法は、2つのベルトとしてスチールコードおよびコートゴムの複合体を使用し、各試験タイヤについてスチールコードの50[mm]あたりの打ち込み本数を変えた。そして、従来例を基準(100)とした指数で示し、この指数が小さいほどベルト層使用量が少ないことを示している。
操縦安定性の評価方法は、上記試験タイヤを正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、試験車両(国産フロントエンジン前輪駆動セダン)に装着して、乾燥試験コースを速度60[km/h]から120[km/h]で走行し、直進時における直進安定性ならびにレーンチェンジ時およびコーナリング時における旋回安定性、剛性感、操舵性の項目について、熟練のテストドライバー2名による官能評価によって行う。この官能評価は、各項目を1点〜10点の評点をつけ、テストドライバー2名の評点の平均を求め、これにより従来例を基準(100)とした指数で示し、この指数が大きいほど操縦安定性が優れていることを示している。
タイヤ重量の評価方法は、上記試験タイヤの重量を測定し、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数で示し、この指数が大きいほどタイヤ重量が軽く優れていることを示している。
転がり抵抗の評価方法は、上記試験タイヤを、正規リムに組み付け、正規内圧を充填し、荷重(5.26[kN])を加えて、スチールドラム式転がり抵抗試験機にて、速度80[km/h]で30[分]の予備走行後の転がり抵抗が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(100)とした指数で示し、この指数が大きいほど転がり抵抗が低く優れていることを示している。
図4において、従来例の空気入りタイヤは、カーカスコードを横材のみで構成している。また、比較例1の空気入りタイヤは、カーカスコード全体を横材および各斜材の3軸織物で構成している。また、比較例2の空気入りタイヤは、カーカスコード全体を横材、縦材および各斜材の4軸織物で構成している。一方、実施例1〜実施例9の空気入りタイヤは、カーカスコードの所定範囲(タイヤ赤道面からタイヤ幅方向両外側にトレッド展開幅の1/2の105[%]の範囲)を、横材、縦材および各斜材の4軸織物で構成し、かつ当該範囲のタイヤ幅方向両外側を横材で構成している。実施例5〜実施例9の空気入りタイヤは、斜材の弾性率を好ましい範囲とした。実施例2、実施例3、実施例6〜実施例9の空気入りタイヤは、縦材の弾性率を好ましい範囲とした。
なお、従来例、比較例、および各実施例において、横材、縦材および各斜材の50[mm]あたりの打ち込み本数は50本としている。また、横材、縦材および各斜材の繊維の重さは、1670デシテックス[T/2]としている。
図4の試験結果に示すように、実施例1〜実施例9の空気入りタイヤは、それぞれベルト層使用量、操縦安定性、タイヤ重量、転がり抵抗が改善されていることが分かる。
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
6 カーカス層
7 ベルト層
61 カーカスコード
61a 縦材
61b 横材
61c,61d 斜材
CL タイヤ赤道面(タイヤ赤道線)
CW 所定範囲
TDW トレッド展開幅
また、本発明の空気入りタイヤは、前記縦材を、芳香族ポリアミド繊維または脂肪族ポリアミド繊維で形成し、前記横材を、ポリエステル繊維で形成し、各前記斜材を、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、セルロース繊維または炭素繊維で形成することを特徴とする。
また、本実施の形態の空気入りタイヤ1は、縦材61aを、芳香族ポリアミド(アラミド)繊維または脂肪族ポリアミド(ナイロン)繊維で形成し、横材61bを、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維やポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリエステル繊維で形成し、各斜材61c,61dを、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール(PBO)繊維、ポリケトン(PK)繊維、レーヨンなどのセルロース繊維または炭素繊維で形成することが好ましい。

Claims (4)

  1. トレッド部から両タイヤ幅方向端部を各ビード部に延在させたカーカス層を備え、タイヤ赤道面からタイヤ幅方向両外側に、トレッド展開幅の1/2の95[%]以上120[%]以下の範囲において、前記カーカス層のカーカスコードを、タイヤ周方向に対して実質的に0[°]の縦材と、タイヤ周方向に対して実質的に90[°]の横材と、タイヤ周方向に対して20[°]以上30[°]以下であって互いに交差する2つの斜材とが織られた4軸織物で構成し、かつ前記範囲のタイヤ幅方向両外側を前記横材で構成することを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記斜材を、弾性率100[GPa]以上の繊維で形成することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記縦材を、弾性率1[GPa]以上20[GPa]以下の繊維で形成することを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記縦材を、芳香族ポリアミド繊維または脂肪族ポリアミド繊維で形成し、前記横材を、ポリエステル繊維で形成し、各前記斜材を、ポリパラフェニレンベンゾオキサゾール繊維、ポリケトン繊維、セルロール繊維または炭素繊維で形成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の空気入りタイヤ。
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