一般的に証明書類の貴重印刷物では、偽造防止効果を与えるために様々な技術が適用されているが、近年、カラー複写機の高画質化及びカラー製版技術のコンピュータ化に伴い、証明書類の偽造技術が多様化する傾向にある。これに伴って、証明書類の偽造防止策も高度化することによって対応してきた。しかし、その一方で、偽造防止策に費やす製造コストが高く、偽造防止効果を確認する環境を得るために、特殊な機械器具から成る専用設備を導入する等、真偽判定において高コストとなる場合があった。
低コストで真偽判定を可能にする有用な方法に、印刷物上に判別具を重ねて真偽判定を行う技術がある。つまり、不可視画像が施されている印刷物に判別具を重ねることによって、不可視画像を可視画像として発現させるもので、この判別具の主な形態は、平行線スクリーンを印刷した透明シート(以下「万線フィルタ」という。)や、レンチキュラーレンズ等が挙げられる。この判別具を用いて不可視画像を発現させる技術は、主に二種類の方法があり、点位相変調(Dot phase modulation)と線位相変調(Line phase modulation)とが存在する。
このような万線フィルタから成る判別具を重ね合わせることにより潜像画像が発現する印刷物とその真偽判別方法としては、万線(又は網点)画線で印刷した背景画像部と、背景画像部と異なる位相の万線(又は網点)画線で印刷した潜像画像部とを有する印刷物が存在する。当該印刷物の背景画像部と潜像画像部は、区分けして視認することが一見困難であるが、万線フィルタを印刷物に所定の位置で重ね合わせた場合には、背景画像部と潜像画像部を区分けして視認することができる方法が知られている。
点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、第1の方向と第2の方向に位相変調されたパターンが形成された印刷物と、当該印刷物の第1の方向と万線状フィルタの万線状パターンの方向とを一致するように万線状フィルタを重ね合わせることにより形成される第1の多階調画像と、万線状フィルタの重ね合わせる角度を印刷物の第2の方向に一致するように変えると第2の多階調画像が形成された印刷物及び画像形成法がある(例えば、特許文献1参照)。
また、点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、基材上に、レンズアレイ(ハエの目レンズ、ハニカムレンズ、レンチキュラーレンズ等)を重ねることにより画像が現れるドットパターンを構成するそれぞれのドットが、少なくとも二種類以上のスクリーン線数で、かつ、少なくとも二種類以上のスクリーン角度の網点から成る印刷物において、真正物であればドットパターンを構成するそれぞれのドットの網点面積率が同じであるため、レンズアレイを重ねることにより不可視画像が発現し、複写物の場合は、コピーすることによりスクリーン線数の大きさ又は網点角度で再現されるドットが潰れ、ドットの濃度が変化することにより不可視画像と異なる画像が発現する印刷物がある(例えば、特許文献2参照)。
また、海外の点位相変調(Dot phase modulation)の一例としては、アストロン・デザイン社(オランダ)のイソグラム(Isogram)がある(例えば、非特許文献1340頁参照)。これは、一見して均一な濃度を有する平たんな模様の中に、拡大すると微細な網点の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねるとネガポジ状のどちらかに可視画像化された不可視画像が現れる。しかし、これは、均一な濃度を有する平たんな模様故に、鮮明に画像を発現させることができない。
また、本出願人等は、点位相変調(Dot phase modulation)を用いた印刷物に関する特許出願を行っている。これは、基材上に複数の等色の画素が規則的に配列されて二つの潜像模様が形成された潜像印刷物であって、複数の画素において、第1の方向に位相をずらして配列された第1の領域による第1の潜像模様(不可視画像)と、機能性を有するインキにより印刷された第2の領域による第2の潜像模様(不可視画像)とを有するものである(例えば、特許文献3参照)。
線位相変調(Line phase modulation)の一例としては、基材上に、線部と非線部を有し、同一ピッチ及び幅から成る万線パターンに対し、万線位相を1/2ピッチずらして形成された潜像部を備えている複数種の潜像万線パターンが、それぞれ異なる角度で重ね合わせて印刷された潜像を有する印刷物であって、複数種の潜像万線パターンがそれぞれ色違いであることを特徴とする印刷物と、印刷物の万線パターンと同一ピッチのフィルムを複数種の不可視画像に重ね合わせることにより潜像部を可視画像化されたものがある(例えば、特許文献4参照)。
また、海外の線位相変調(Line phase modulation)を用いた印刷物には、ユラ社(ハンガリー)のHIT(Hidden Image Technology)がある(非特許文献1341頁参照)。一見して均一な濃度を有する平たんな模様の中に、微細な万線の位相によって不可視画像が施され、印刷物上に専用のシートを重ねると、ネガポジ状のどちらかに可視画像化された不可視画像が現れる。なお、この方法では通常視でも不可視画像が確認できてしまうおそれがあるため、カムフラージュ模様として万線の一部の画線幅を変化させて可視画像を設けている。また、白抜き画線によって可視画像を設けても良い。ただし、このカムフラージュ模様は、専用のシートを重ねて不可視画像を可視画像化した際、カモフラージュ模様も可視画像として同時に発現しているので、不可視画像の発現時の視認性を阻害するという問題がある。
また、一般的に、点位相変調(Dot phase modulation)又は線位相変調(Line phase modulation)により形成された模様は、平たんな形状となっている。
また、本願発明者らは、第1の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第1の画線及び第2の画線と、第1の方向と直交する第2の方向に沿って、中心を境に対向するように配置された第3の画線及び第4の画線とを有する画線要素が、一定のピッチで複数マトリックス状に配置されており、各々の画線要素における第1の画線と第2の画線、第3の画線と第4の画線は、ネガポジの関係にあり、第1の画線又は第2の画線により第1の不可視画像が形成され、第3の画線又は第4の画線により第2の不可視画像が形成されることを特徴とする偽造防止用印刷物を既に出願している(例えば、特許文献5参照)。
この特許文献5による偽造防止用印刷物は、通常の観察において可視画像を設けることが可能で豊かなデザイン性と、簡易な判別具における潜像の高い視認性を有し、低コストで製造できるという優れた効果があるものの、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策としては不十分であった。
また、本願発明者らは、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として、1つの第1の領域と、前記第1の領域に隣接する1つの第2の領域とが複数組配置され、各々の前記第2の領域の周囲が、複数の前記第1の領域に囲まれ、前記第1の小域は、前記第2の領域より面積が大きく、前記第2の領域は赤外線吸収色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と赤外線吸収色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の前記第2の領域における前記第2aの領域と前記第2bの領域との比率に応じて、複数の前記第2の領域における前記第2aの領域により階調画像が形成されていることを特徴とする網点印刷物を既に出願している(例えば、特許文献6参照)。
さらに、本願発明者らは、特定の波長において吸収する又は発光する第1の色材で印刷した第1の線画と、前記特定の波長において吸収しない又は発光しない可視光下では第1の色材と同色に見える第2の色材で印刷した第2の線画で構成され、前記第1の線画と前記第2の線画はそれぞれ画線幅の違う背景領域と潜像領域で構成され、前記第2の線画の潜像領域は前記第1の線画の潜像領域と形状及び大きさが等しく、前記第1の線画と前記第2の線画が重なり、背景領域と潜像領域の濃度が等しいことを特徴とする偽造防止印刷物を既に出願している(例えば、特許文献7参照)。
この特許文献6及び7による印刷物は、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として優れた効果があるものの、特定の波長において吸収する又は発光する色材、例えば赤外線吸収色素の有無を判別するという特殊性から、判別具が光学系機械部品又は特定の電磁波を受信する機械部品で構成した特殊な装置となるため、特許文献1乃至6にあるような簡易な判別ができないという問題がある。
一方、印刷物の生産コストを特に考慮しない方法としては、可視できる一般印刷用のインキのような印刷材料が適用可能な印刷物上の模様に対する光学読み取り方法がある。比較的に容易な光学読み取り方法としては、OCR、OMR、バーコード、二次元コード等が公知であるが、これらの光学読み取り方法で用いられる図形は何ら意匠性を備えておらず、既存製品に用いる場合は、デザイン、仕様の変更が要求される。
また、これらの光学読み取り方法は広く市中に出回っている方法でもあり、符号が印刷画線として可視できるため、解読、改ざんの危険性も予想され、偽造、変造防止策として用いるには不十分である。
さらに、同じく光学読み取り方法でデザイン等の意匠性を変えずに読み取り用情報を付与する方法として、一般に電子すかしと呼ばれる一連の技術がある。電子すかしは、コンシールドイメージ、デジタルすかしとも呼ばれ、主な用途として、高機能化したコピー技術やDTP技術におけるドキュメント・ファイルもしくはその印刷物に著作権情報を埋め込む技術である。印刷物における公知の代表的な技術としては、周波数利用型と呼ばれる方法がある。
電子すかしは複製物においてもその周波数特性の劣化が少ないと言われ、最近では著作権保護の目的でインターネット上に配信されるデジタルイメージに施されることが多い。また、印刷物においてもその効果を奏することから、ポスターなどに利用されることも多くなってきた。
電子すかしが最も効果を発揮できるのは、連続階調(写真階調)模様である。連続階調(写真階調)模様は多値画像データであるから、十分な冗長度が存在するので周波数利用型に限らず画素置換型、画素空間利用型、量子化誤差拡散型等の多くの方法が提案され、文献、特許出願も数多く、今日注目を集めている技術の一つである。
しかしながら、電子すかしの多くは一般商業印刷の画像分解能を対象に設計されているため、複製物においては元の情報がそのままコピーされるという特徴があり、複製物の著作権を示すための施策としては適しているが、オリジナルとコピーを区別することはできず、物品を真贋判定する技術としては不十分である。
そこで、本発明者らは、「真偽判別可能な印刷物及び判別方法、並びに該印刷物への情報の埋め込み方法」(特許文献8)、「真偽判別可能な印刷物及びその作成方法」(特許文献9)及び「印刷物、該印刷物の検知方法及び検知装置、並びに認証方法及び認証装置」(特許文献10)により、地紋、彩紋模様のような自由な曲線群から成る印刷画線を、機械的に識別することを特徴とする印刷物を既に出願している。しかし、これらの発明は線表現による彩紋模様などに適用される技術であるため、連続階調(写真階調)模様に適用することはできない。
以下、本発明の実施の形態1〜4による偽造防止用印刷物について、図面を用いて説明する。しかし、本発明は、以下に述べる実施の形態1〜4に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
本発明の偽造防止用印刷物は、第1の真偽判別方法、第2の真偽判別方法及び第3の真偽判別方法の三種類を備えたものであり、第1の真偽判別方法として図1に示されたように、印刷物1に第1の判別具2を重ね合わせることで現出された画像から成る第1の不可視情報i1(第1の不可視画像5)を視認することにより、容易に真偽性を判別することができるものである。また、第2の真偽判別方法として、第2の判別具6にて現出された画像から成る第2の不可視情報i2(不可視画像7)を視認することにより、容易に真偽性を判別することができるものである。さらに、第3の真偽判別方法として、判別装置Rにて抽出された数値からなる第3の不可視情報i3を認証することにより、容易に真偽性を判別することができるものである。
また、本発明の偽造防止用印刷物は、少なくとも三色以上の色インキが用いられるものである。第1の色インキと第2の色インキとは同色であり、第1の色インキは赤外線吸収性色素を含む色材から成り、第2の色インキは赤外線吸収性色素を含まない色材から成る。また、同色である第1の色インキと第2の色インキとに対し、第3の色インキは明度が高くなっている。第1の真偽判別方法と第2の真偽判別方法は、低明度の第1の色インキと第2の色インキとが用いられ、第3の真偽判別方法としては、高明度の第3の色インキが用いられるのが特徴である。ここでいう高明度とは、L*a*b*色表系のL値が70以上が好ましく、低明度とは、L*a*b*色表系のL値が50以下が好ましい。ただし、あくまでも目安であり、低明度の色インキと高明度の画線の色インキはL*a*b*色表系のL値が少なくとも20以上離れていれば十分な効果が望まれる。
第1の真偽判別方法の第1の判別具2は、透明性を有するフィルタに複数の直線が万線状に一方向に沿って形成された万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等である。なお、ここで、可視画像とは、通常の可視光のもとで目視により視認され得る画像であり、第1の不可視情報とは、通常の可視光のもとで目視により視認され得ない、あるいは極めて視認され難い画像であり、万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等を重ねることで視認されるものである。また、第2の真偽判別方法の第2の判別具6は、赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置(IRビューアとも呼ばれる)等である。さらに、第3の真偽判別方法の判別装置Rは、主に光学式スキャナ等から成る読み取り手段R1、入力手段R2、演算手段R3、表示手段R4を搭載したものである。これにより、印刷模様3に備わる空間周波数から算出された数値的な不可視情報を得るものである。
図1に示された印刷物1の印刷模様3を通常の可視条件において目視により観察すると、図2に示されたように、任意の図形及び文字等から成る印刷模様3の可視画像が視認される。そして、第1の真偽判別方法として、印刷物1上に第1の判別具2を所定の角度(これを0度とする。)を持って重ね合わせると、図3(a)に示されたような第1の不可視画像5aが可視画像となって発現される。また、印刷物1上に第1の判別具2を所定の角度(これを90度とする。)を持って重ね合わせると、図3(b)に示されたような第2の不可視画像5bが可視画像となって発現される。これにより、図1で示された印刷模様3の可視画像がほとんど見えなくなり、第1の不可視画像5a又は第2の不可視画像5bが可視画像となって印刷模様3の可視画像と入れ替わるように観察される。また、万線フィルタ又はレンチキュラーレンズ等の第1の判別具2が印刷模様3と重なる位置の違いによって、第1の不可視画像5aはポジ又はネガ状態に視認される。ネガ又はポジ状のどちらかに見えるのは、第1の判別具2と印刷物1との間の相対的な位置によって生ずるものであり、本発明の効果の範囲内である。
また、第2の真偽判別方法として、印刷物1に赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置である第2の判別具6を用いて赤外線視すると、図3(c)に示されたような第2の不可視情報である不可視画像7が可視画像となって発現される。これにより、図1で示された印刷模様3がほとんど見えなくなり、第2の不可視情報である不可視画像7が可視画像となって印刷模様3の可視画像と入れ替わるように観察される。
さらに、第3の真偽判別方法として、図2に示された印刷模様3は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図2に示した印刷物上にある印刷模様3に含まれる画線Dは、例えば、80μmの間隔dから成る同心円万線で配置され、画線Dを構成する同心円万線は細画線かつ、明度の高い例えば、イエロー(Y)の色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い画線A、画線A’、画線B、画線B’及び画線Cが同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、画線Dを構成する同心円万線が視認されることはない。画線A、画線A’、画線B、画線B’及び画線Cは、画線Dを形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分から成る同心円万線と異なる形状を成す画線群によって形成される。図3(d)は、印刷模様3から得たRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。なお、空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図3(d)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図3(d)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1が見られる。これは、図2に示された間隔dが逆空間上に現れたものである。FFTパターン上の強度ピークの逆空間距離については、画像入力に関わる各種パラメータ、すなわち、図2に示された印刷物上にある領域g1に備わる80μmの間隔dを実空間距離としたとき、画像の一辺のピクセル数と、画像の解像度がわかっていれば、数1によっても容易に算出できる。
印刷模様3から得たRGB画像には図2に示された画線Dが含まれるため、画線Dに備わる同心円万線の画線の間隔がもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図3(d)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。また、画線A、画線A’、画線B、画線B’及び画線Cは、縦の寸法Svと横の寸法Shとで囲われた領域、すなわちユニットの中にあるため、縦の寸法Svがもたらす強度ピークの逆空間距離qvは、図3(d)に示されているようにFFTパターンの中心から64ピクセルの位置に現れる。さらに、横の寸法Shがもたらす強度ピークの逆空間距離qhは、図3(d)に示されているようにFFTパターンの中心から64ピクセルの位置に現れる。このように、画線Dと、画線A、画線A’、画線B、画線B’及び画線Cとでは、異なる空間周波数として顕著に現れる。
(1)実施の形態1
本発明の実施の形態1による偽造防止用印刷物について説明する。
図4(a)は、本実施の形態1における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成における部分的な拡大と、印刷物に印刷された印刷模様3を構成するマトリックス状に配置された構成が解るように簡易的に示した模式図である。ここで、縦の寸法Svは、例えば、340μmというように1mm以下の大きさである。図4(a)の画線は、ユニットと称する最小単位であり、画線A1、画線A2、画線A1’及び画線A2’とで構成されている。この図4(a)の画線が、印刷物の表面上においてマトリックス状に規則的に配置される。画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とは、対を成しており、相互にオンオフの関係にある。このオンオフの関係とは、例えば、一方が黒(オン)のときは他方は白(オフ)、一方が有着色のときは他方は無着色であり、基本的には双方ともに黒又は双方ともに白であることがないということである。そして、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とは、面積が同一である。このような画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線A1及び/又は画線A2のみにより不可視画像(ネガ又はポジ)、画線A1’及び/又は画線A2’のみにより不可視画像(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。なお、本発明でいう面積が同一とは、画線面積率が略同一であるものを含むものである。
また、図4(a)に示された画線Cは、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とで面積が同一又は大きく、この画線Cにより可視画像(デザイン:模様)を形成し、図2に示されたような任意の図形及び文字から成る印刷模様3の可視画像を構成する画線となり、画線Cは画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’に挟まれるように配置されている。さらに、図4(a)に示された画線Cは、ユニット横方向を長手方向とし、寸法Shを最大幅とする長方形である。すなわち、ユニットの近傍部によって画線Cを備えた領域が横一直線状に連結されているものである。
なお、図4(a)では、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とのそれぞれの境界がグラデーションで示されているのは、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’との領域が、第2の不可視情報である不可視画像7の構成によって可変することを示すものである。すなわち、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とのそれぞれの領域の割合は、第2の不可視情報である不可視画像7を構成する連続階調によって変化する。
また、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とは、可視光の波長領域においては黒色となって視認される。画線A1及び画線A1’は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成され、画線A2及び画線A2’は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成されている。本実施の形態では、第2の不可視情報である不可視画像7の連続階調を画線A1及び画線A1’で、赤外線吸収性色素を含む色材にて構成されている。具体的な画線構成については後述にて詳細に説明する。
図2に示された印刷物1の印刷模様3は、図4(a)に示されたユニットが縦ステップ数vと横ステップ数hをもってマトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置されたものである。なお、本実施の形態でいうステップ数とは、印刷模様3上で繰り返されるユニットの数のことを指すもので、ステップ数に何ら制限はなく、このステップ数によって可視画像及び不可視画像の解像度と比例している。また、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とが横方向に並ぶことによって、画線A1及び/又は画線A2群から成る平行万線と、画線A1’及び/又は画線A2’群から成る平行万線とが形成される。すなわち、図4は、線位相変調(Line phase modulation)によって、第1の不可視情報を施している状態となっているものである。しかし、この状態では肉眼視で、複数の画線A1及び/又は画線A2と複数の画線A1’及び/又は画線A2’とがマトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’との双方がオン(有着色)になることで濃度が高く(濃く)見えたり、また、複数の画線A1及び/又は画線A2と、複数の画線A1’及び/又は画線A2’とがマトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’との双方がオフ(無着色)になることで濃度が低く(淡く)見えたりして、肉眼視では濃度が不均衡となって見えることもある。
この濃度が不均衡に見えるのを緩和するため、図4(a)に示された画線E1及び/又は画線E2と、画線a1及び/又は画線a2とを、それぞれ画線Cの領域中に配置している。画線a1及び/又は画線a2は、画線A1及び/又は画線A2の半分の画線面積であり、画線A1及び/又は画線A2に対してユニット縦方向上に配列し、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線A1’及び/又は画線A2’とに挟まれるように配置されている。一方、画線E1及び/又は画線E2は、画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積であり、画線A1’及び/又は画線A2’に対してユニット縦方向上に配列し、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とに挟まれるように配置されている。これにより、第1の不可視画像5a用の画線と濃度の不均衡が緩和されている。なお、画線E1と、画線a1は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成され、画線E2と、画線a2は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成されている。
図5に示されたアルゴリズムによって最小単位であるユニット[h,v]ごとに、画線の削除並びに追加を実行するものである。ここで、図面の表記を簡単にするため、画線A1及び/又は画線A2を総じて画線Aとし、画線A1’及び/又は画線A2’を総じて画線A’とし、画線E1及び/又は画線E2を総じて画線Eとし、画線a1及び/又は画線a2を総じて画線aと表記している。なお、[v]はユニットを縦上から数えたステップ数で、[h]はユニットを横左から数えたステップ数である。まず、ステップf1にて、マトリックス状に配置した列ごとのユニット[h,v]において順次画線A[h,v]と、画線A’[h,v]の検知が行われる。なお、画線A[h,v]と、画線A’[h,v]を検知する方法は、例えば、印刷模様3がビットマップ形式の二値画像の場合、処理すべきユニット内において、一般的にラベリングと呼ばれる処理によって、画線A[h,v]及び/又は画線A’[h,v]を識別しても良い。
次に、ステップf2にて、ユニット[h,v]に画線A’[h,v]を有し、かつ、ユニット[h,v+1]に画線A[h,v+1]を有する条件に一致したとき、ステップf3にて、ユニット[h,v]における本来配置される位置である画線A’[h,v]の削除が行われる。すなわち、図6(a)に示されるように、ユニット[h,v]、ユニット[h,v+1]、ユニット[h,v+2]の配置の際、ユニット[h,v]の画線A’[h,v]とユニット[h,v+1]の画線A[h,v+1]が隣接している場合、図6(b)に示されるように、ユニット[h,v]の画線A’[h,v]が削除される。また、ステップf2の条件に一致しない場合はf4に移行する。
次に、ステップf4にて、ユニット[h,v]に画線A[h,v]を有し、かつ、ユニット[h,v+1]に画線A’[h,v+1]を有する条件に一致したとき、ステップf5にて、ユニット[h,v]における画線a[h,v]の追加を行う。すなわち、図7(b)に示されるように、ユニット[h,v]とユニット[h,v+1]の中間に、詳細には、画線Aと画線A’の中間に画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積を有する画線aが追加される。これにより、ユニット[h,v]とユニット[h,v+1]間における肉眼視での濃度の不均衡が緩和される。なお、本発明でいう半分の画線面積とは、略半分の画線面積を含むものである。
次に、ステップf6にて、ユニット[h,v]に画線A’[h,v]を有し、ユニット[h,v+1]に画線がなく、かつ、ユニット[h,v+2]に画線A[h,v+2]を有する条件に一致したとき、ステップf7にて、ユニット[h,v+1]における画線E1及び/又は画線E2[h,v+1]の追加を行う。すなわち、図7(c)に示されるように、ユニット[h,v+1]の画線A[h,v+1]が配置される位置に隣接する領域に、詳細には、画線A’と画線Aの中間に画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積を有する画線Eが追加される。これにより、ユニット[h,v]とユニット[h,v+2]間における肉眼視での濃度の不均衡が緩和される。
次に、ステップf8にて、ユニット[h,v]に画線A’[h,v]を有し、ユニット[h,v+1]に画線がなく、かつ、ユニット[h,v+2]に画線A’[h,v+2]を有する条件に一致したとき、ステップf9にて、ユニット[h,v+1]における画線E1及び/又は画線E2[h,v+1]と、画線a[h,v+1]の追加を行う。すなわち、図7(d)に示されるように、ユニット[h,v+1]の画線A[h,v+1]が配置される領域に隣接する位置に、詳細には、画線A’と画線Aの中間に画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積を有する画線Eが追加され、ユニット[h,v+1]の画線A’[h,v+1]が配置される領域に隣接する位置に、詳細には、画線A’と画線Aの中間に画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積を有する画線aが追加される。これにより、ユニット[h,v]とユニット[h,v+2]間における肉眼視での濃度の不均衡が緩和される。
この状態で、例えば、レンチキュラーレンズから成る第1の判別具2を印刷物1上の印刷模様3に重ね合わせ、正面から目視で観察することによって、印刷模様3に施されている第1の不可視情報
を可視画像として発現させることができる。なお、本実施の形態1では、寸法Svが340μmで、印刷模様3がオフセット印刷によりコート紙に印刷されている。しかし、寸法Sv、印刷物の基材、印刷方法、印刷材料及び印刷装置等について何ら限定するものでない。
ここで、本実施の形態1を簡単に説明するため、図3(a)で示された第1の不可視画像5aと、図3(c)で示された第2の不可視情報である不可視画像7を、さらに模式的な表現にて説明する。図8(a)は、印刷模様3の領域内における可視画像のもととなる画像として、例えば、「ア」の文字を用いたものである。一方、図8(b)は、第1の不可視画像のもととなる画像として、例えば「A」の文字を用いたものである。また、第2の不可視情報である不可視画像のもととなる画像として、例えば、緩やかな連続階調を表現したものである。可視画像の分解能については特に制限はないが、本実施の形態の効果をより高める方法として、画像の最小画素寸法として、図8(a)に示された画像は、ユニットの縦の寸法Sv及び横の寸法Shのそれぞれ半分が適当である。また、図8(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報の分解能については、ユニットの縦の寸法Sv及び横の寸法Shのそれぞれが一致していることが適当である。以下、図8にて示された画像をもとに本実施の形態を詳細に説明する。
図9(a)は、図8(a)に示された可視画像を、図4(a)に示された画線Cによって構成したもので、マトリックス状に構成した画線の大きさの違いによって「ア」の文字を表現したものである。なお、画像の最小画素寸法は、ユニットの縦の寸法Sv及び横の寸法Shの半分であることから、画線Cによって構成した可視画像は、図8(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報に対して倍の分解能を有している。また、画線Cは、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)のいずれかあるいは混合したインキで印刷されている。一方、図9(b)は、第1の不可視情報及び第2の不可視情報を構成する画線の配置である。図5に示されたアルゴリズムによって、図8(b)に示された第1の不可視情報である「A」の文字を埋め込んだ画線の画線の配置となっている。さらに、第2の不可視情報は第1の不可視情報に含まれている。すなわち、図4に示された画線A1、画線A2、画線A1’及び画線A2’の濃度が不均衡に見えるのを緩和するための画線E1及び/又は画線E2と、画線a1及び/又は画線a2によって構成されている。またさらに、第3の真偽判別方法のための第3の不可視情報として画線A1、画線A2、画線A1’及び画線A2’に対し、画線Dは明度の高い、例えば、イエロー(Y)で印刷され、間隔dは寸法Sよりも短い距離となっている。画線Dについては後述にて詳細に説明する。
図9(b)に示された画線構成を、図10にてさらに詳細に説明する。図10(a)は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成された画線群が示されたもので、画線A1、画線A1’、画線E1及び画線a1によって、図8(b)に示された第2の不可視情報のもととなる画像として、例えば、緩やかな連続階調を表現されたものである。一方、図10(b)は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成された画線群が示されたもので、画線A2、画線A2’、画線E2及び画線a2によって、図8(b)に示された第2の不可視情報のもととなる画像のネガ状態を表現されたものである。図10(a)の画線群と図10(b)の画線群を併せて備えたものが図9(b)の画線群ということになる。
図11(a)に示された印刷模様3は、図9(a)に示された可視画像及び第3の不可視情報と、図9(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報が合成されたものである。まず、第1の真偽判別方法として、図11(a)に示されたように、印刷物上の所定の位置に、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおける各レンズの中心線8が画線A1及び画線A2の中心、すなわち、図4における線L1に一致するように載置する。この場合、図11(b)に示されたようにレンチキュラーレンズの作用によって画線A1及び画線A2が拡大された状態となるため、画線A1及び画線A2により構成されている画像(模様)を確認することができることとなる。その際、可視画像を構成していた画線Cは、レンチキュラーレンズの各レンズの中心線8と一致せず、第1の判別具2の真上から視認されることはない。これにより、図2に示された印刷模様3の可視画像が図3(a)に示されたような第1の不可視画像5aへとスイッチすることとなる。また、画線A1’及び画線A2’が拡大されるように、縦軸方向に沿って第1の判別具2の各レンズの中心線8が、図4における線L2と一致するように移動させた場合、画線A1’及び画線A2’により視認された第1の不可視画像がネガポジ反転して視認される。なお、画線Dは明度の高いイエロー(Y)で印刷されていることから、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおけるイエロー(Y)は、明度差の違いによりほとんど視認されることはなく、第1の真偽判別方法に何ら影響されることはない。
図12(a)に示された印刷模様3は、図9(a)に示された可視画像及び第3の不可視情報と、図9(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報が合成されたものである。まず、第2の真偽判別方法として、図1で示されたような第2の判別具6、例えば赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置等を用いて赤外線視すると、図12(b)に示されたような第2の不可視情報が可視画像となって発現される。すなわち、赤外線視された場合、赤外線吸収性色素を含まない画線C、画線A2、画線A2’、画線E2及び画線a2は印刷物1の基材における表面反射光のみとなり、赤外線吸収性色素を含む画線A1、画線A1’、画線E1及び画線a1だけが確認され、第2の不可視情報が可視画像となって観察される。すなわち、赤外線視においては赤外線吸収性色素を含む画線と含まない画線とでは、相互にオンオフの関係にある。赤外線吸収性色素を含む色材から成る画線A1、画線A1’、画線E1及び画線a1は黒(オン)であり、赤外線吸収性色素を含まない色材から成る画線C、画線A2、画線A2’、画線E2及び画線a2は白(オフ)と認識され、基本的には双方ともに黒又は双方ともに白であることがないということである。これにより、それぞれ異なる第1の真偽判別方法と第2の真偽判別方法を備えた偽造防止用印刷物となる。そして、マトリックス状に配置するユニットの数が多いほど画像の分解能が高くなり、図3(c)に示されたような第2の不可視情報の不可視画像7を表現することを可能にしている。
また、ユニットの構成としては、図4(b)に示される画線構成であっても良い。図4(b)は、図4(a)で示された濃度が不均衡に見えるのを緩和するための画線E1及び/又は画線E2と、画線a1及び/又は画線a2とを、それぞれ画線C領域に挟まれるように配置している。すなわち、図4(b)に示された画線a1及/又は画線a2と、画線E1及び/又は画線E2とは、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とに対してユニット横方向において寸法Shの半分の長さをもってずれて配置されている。画線a1及び/又は画線a2は、画線A1及び/又は画線A2の半分の画線面積であり、画線A1及び/又は画線A2に対してユニット縦方向上に配列し、マトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1’及び/又は画線A2’と、画線A1’及び/又は画線A2’とに挟まれるように配置されている。一方、画線E1及び/又は画線E2は、画線A及び/又は画線A’の半分の画線面積であり、画線A1’及び/又は画線A2’に対してユニット縦方向上に配列し、マトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1及び/又は画線A2と、画線A1及び/又は画線A2とに挟まれるように配置されている。これにより、第1の不可視画像用の画線の濃度の不均衡を緩和するための画線がユニット横方向において横一直線状に連結されているものである。この図4(b)に示されたユニットの画線構成においても同様の効果を奏するものである。
第3の真偽判別方法については、印刷模様3に備わる空間周波数から算出された数値的な不可視情報を得ることができる。上記記載と同様であるため詳細な説明は省略する。
(2)実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2による偽造防止用印刷物について説明する。実施の形態1では、第1の不可視情報である第1の不可視画像5aと第2の不可視情報とが発現する例であるが、実施の形態2では、第1の不可視情報である第1の不可視画像と第2の不可視情報に加え、第1の判別具2によって第1の不可視情報である第2の不可視画像5bが発現する例を説明するものである。
図13は、本実施の形態2における印刷物に対する印刷模様の一画線の構成における部分的な拡大と、印刷物に印刷された印刷模様3を構成するマトリックス状に配置された構成が解るように簡易的に示した模式図である。ここで、縦の寸法Sv及び横の寸法Shは、例えば、340μmというように1mm以下の大きさである。図13の画線は、ユニットと称する最小単位であり、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とにより、第1の不可視画像及び第2の不可視画像が構成されている。この図13に示す画線が、印刷物の表面上においてマトリックス状に規則的に配置される。画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とは、対を成しており、相互にオンオフの関係にある。一方、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とは、対を成しており、相互にオンオフの関係にある。そして、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’とは、面積が同一であり、かつ、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とは、面積が同一である。このような画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とが存在することで通常の可視条件下では視認されず、画線Aのみにより第1の不可視画像5a(ネガ又はポジ)、画線A’のみにより第1の不可視画像5a(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成され、さらに、画線B1及び/又は画線B2のみにより第2の不可視画像5b(ネガ又はポジ)、画線B1’及び/又は画線B2’のみにより第2の不可視画像5b(ポジ又はネガ)がそれぞれ形成されている。
また、実施の形態1と同様に、図13に示された画線Cにより可視画像(デザイン:模様)を形成し、図2に示されたような任意の図形及び文字から成る印刷模様3の可視画像を構成する画線となり、画線Cが画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とに挟まれるように配置されている。
なお、図13では、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とのそれぞれの境界がグラデーションで示されているのは、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’との領域が、第2の不可視情報である不可視画像7の構成によって可変することを示すものである。すなわち、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’とのそれぞれの領域は、第2の不可視情報である不可視画像7を構成する連続階調によって変化する。
また、画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’は、可視光の波長領域においては黒色となって視認される。画線A1、画線A1’、画線B1及び画線B1’は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成され、画線A2、画線A2’、画線B2及び画線B2’は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成されている。本実施の形態では、第2の不可視情報である不可視画像7の連続階調を画線A1、画線A1’、画線B1及び画線B1’で、赤外線吸収性色素を含む色材にて構成されている。
図2に示された印刷物1の印刷模様3は、図13に示されたユニットが縦ステップ数vと横ステップ数hをもってマトリックス状に縦横隙間なく、連続的に、かつ、規則的に配置されたものである。なお、この状態では、肉眼視で複数の画線A1及び/又は画線A2と、複数の画線A1’及び/又は画線A2’とがマトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’との双方がオン(有着色)になることで濃度が高く(濃く)見えたり、また、複数の画線A1及び/又は画線A2と、複数の画線A1’及び/又は画線A2’と、複数の画線B1及び/又は画線B2と、複数の画線B1’及び/又は画線B2’とがマトリックス状に配置されたユニットの近傍部にて画線A1及び/又は画線A2と、画線A1’及び/又は画線A2’と、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’との双方がオフ(無着色)になることで濃度が低く(淡く)見えることで、肉眼視では、濃度が不均衡となって見えることもある。
この濃度が不均衡に見える状態を緩和するため、図13に示された画線E1及び/又は画線E2と、画線a1及び/又は画線a2と、画線b1及び/又は画線b2とを、それぞれ画線Cの領域中に配置している。なお、画線E1、画線a1及び画線b1は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成され、画線E2、画線a2及び画線b2は、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成されている。
また、画線E1、画線a1及び画線b1の画線の生成については、図5に示されたアルゴリズムに準拠するものであり、画線A1及び/又は画線A2を総じて画線Aとし、画線A1’及び/又は画線A2’を総じて画線A’とし、画線E1及び/又は画線E2を総じて画線Eとし、画線a1及び/又は画線a2を総じて画線aと表記している。さらに、ユニットの縦横の関係を反対にし、画線B1及び/又は画線B2を総じて画線Aとし、画線B1’及び/又は画線B2’を総じて画線A’とし、画線E1及び/又は画線E2を総じて画線Eとし、画線b1及び/又は画線b2を総じて画線aと表記して図5に示されたアルゴリズムで処理することにより、画線B1及び/又は画線B2と、画線B1’及び/又は画線B2’の関係から成る画線E1及び/又は画線E2と、画線b1及び/又は画線b2とが生成される。
図14(a)は、図8(a)に示された可視画像を、図13に示された画線Cによって構成したもので、マトリックス状に構成した画線の大きさの違いによって「ア」の文字を表現したものである。なお、画像の最小画素寸法は、ユニットの縦の寸法Sv及び横の寸法Shの半分であることから、画線Cによって構成した可視画像は、図8(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報に対して倍の分解能を有している。また、画線Cは、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のいずれかあるいは混合したインキで印刷されている。一方、図14(b)は、第1の不可視情報及び第2の不可視情報を構成する画線の配置である。図5に示されたアルゴリズムによって、図8(b)に示された第1の不可視画像5aである「A」の文字及び、第2の不可視画像5b「B」の文字を埋め込んだ画線の配置となっている。さらに、第2の不可視情報である不可視画像7は第1の不可視画像5a及び第2の不可視画像5bに含まれている。すなわち、図13に示された画線A1、画線A2、画線A1’、画線A2’、画線B1、画線B2、画線B1’及び画線B2’と、濃度が不均衡に見えるのを緩和するための画線E1及び/又は画線E2と、画線a1及び/又は画線a2と、画線b1及び/又は画線b2とによって構成されている。またさらに、第3の真偽判別方法のための不可視情報として画線A1、画線A2、画線A1’及び画線A2’に対し、画線Dは明度の高いイエロー(Y)で印刷され、間隔dは寸法Sよりも短い距離となっている。画線Dについては後述にて詳細に説明する。
図14(b)に示された画線構成を、図15にてさらに詳細に説明する。図15(a)は、赤外線吸収性色素を含む色材、例えばブラック(Bk)インキで構成された画線群が
示されたもので、画線A1、画線A1’、画線B1、画線B1’、画線E1、画線a1及び画線b1によって、図8(b)に示された第2の不可視情報のもととなる画像として、例えば、緩やかな連続階調を表現されたものである。一方、図15(b)、赤外線吸収性色素を含まない色材、例えばシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の減法混色によって混合されたインキで構成された画線群が示されたもので、画線A2、画線A2’、画線B2、画線B2’、画線E2、画線a2及び画線b2によって、図8(b)に示された第2の不可視情報のもととなる画像のネガ状態を表現されたものである。図15(a)の画線群と図15(b)の画線群を併せて備えたものが図14(b)の画線群ということになる。
図16(a)に示された印刷模様3は、図14(a)に示された可視画像及び第3の不可視情報と、図14(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報が合成されたものである。まず、第1の真偽判別方法として、図16(a)に示されたように、印刷物上の所定の位置に、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおける各レンズの中心線8が画線A1及び画線A2の中心、すなわち、図13における線L1に一致するように載置する。この場合、図16(b)に示されたようにレンチキュラーレンズの作用によって画線A1及び画線A2が拡大された状態となるため、画線A1及び画線A2により構成されている「A」の文字を確認することができることとなる。その際、可視画像を構成していた画線Cは、レンチキュラーレンズの各レンズの中心線8と一致せず、第1の判別具2の真上から視認されることはない。また、画線A1’及び画線A2’が拡大されるように、縦軸方向に沿って第1の判別具2の各レンズの中心線8が、図13における線L2と一致するように移動させた場合、画線A1’及び画線A2’により視認された第1の不可視画像5aがネガポジ反転して視認される。なお、画線Dは明度の高いイエロー(Y)で印刷されていることから、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおけるイエロー(Y)は、明度差の違いによりほとんど視認されることはなく、第1の真偽判別方法に何ら影響されることはない。
また、図17(a)に示された印刷模様3は、図14(a)に示された可視画像及び第3の不可視情報と、図14(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報が合成されたものである。まず、第1の真偽判別方法として、図17(a)に示されたように、印刷物上の所定の位置に、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおける各レンズの中心線8が画線B1及び画線B2の中心、すなわち、図13における線L3に一致するように載置する。この場合、図17(b)に示されたようにレンチキュラーレンズの作用によって画線B1及び画線B2が拡大された状態となるため、画線B1及び画線B2により構成されている「B」の文字を確認することができることとなる。その際、可視画像を構成していた画線Cは、レンチキュラーレンズの各レンズの中心線8と一致せず、第1の判別具2の真上から視認されることはない。また、画線B1’及び画線B2’が拡大されるように、縦軸方向に沿って第1の判別具2の各レンズの中心線8が、図13における線L4と一致するように移動させた場合、画線B1’及び画線B2’により視認された第2の不可視画像5bがネガポジ反転して視認される。なお、画線Dは明度の高いイエロー(Y)で印刷されていることから、第1の判別具2であるレンチキュラーレンズにおけるイエロー(Y)は、明度差の違いによりほとんど視認されることはなく、第1の真偽判別方法に何ら影響されることはない。
図18(a)に示された印刷模様3は、図14(a)に示された可視画像及び第3の不可視情報と、図14(b)に示された第1の不可視情報及び第2の不可視情報が合成されたものである。まず、第2の真偽判別方法として、図1で示されたような第2の判別具6、例えば赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置等を用いて赤外線視すると、図18(b)に示されたような第2の不可視情報である不可視画像7が可視画像となって発現される。すなわち、赤外線視された場合、赤外線吸収性色素を含まない画線A2、画線A2’、画線B2、画線B2’、画線C、画線E2、画線a2及び画線b2は印刷物1の基材における表面反射光のみとなり、赤外線吸収性色素を含む画線A1、画線A1’、画線B1、画線B1’、画線E1、画線a1及びb1だけが確認され、第2の不可視情報として不可視画像7が可視画像となって観察される。これにより、それぞれ異なる第1の真偽判別方法と第2の真偽判別方法を備えた偽造防止用印刷物となる。
ここで第1の判別具2は、レンチキュラーレンズにかかわらず、例えば、万線フィルタであっても同様の効果が得られる。この万線フィルタの場合は、フィルタ上の万線に該当する部分が可視画像を構成する画線を隠蔽することで、第1の不可視情報を構成する画線のみを確認することができることとなるが、可視画像を完全には隠蔽することができずに若干視認されてしまうことがある。ただし、これによって本発明の効果を損なうことはないため、簡易的に判別を行うには、万線フィルタを用いても充分である。
実施の形態1及び実施の形態2の可視画像を構成する画線Cは、意匠性を備え、単色の模様の他、網点、グレースケール的に適当な濃度で着色された相対的な写真階調、ランダム・ドットのディザ法等公知の表現方法から成る連続階調画像を適用できる。すなわち、連続階調を有する有意味な可視画像は、ハイライトからシャドーの連続階調を有していれば顔画像、文字、数字、図柄、絵柄、ロゴマーク等、特に限定されるものではない。可視画像は、文字、数字、図柄、絵柄、ロゴマーク等、特に限定されるものではない。なお、身分証明書、入場券等の本人確認が必要とされる印刷物を形成する場合は、連続階調を有する有意味な可視画像を顔画像とし、第1の不可視情報、第2の不可視情報及び第3の不可視情報を個人情報や発行日とすることが好ましい。本発明の連続階調を有する偽造防止用印刷物の印刷方式は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ、オフセット印刷機等、特に限定されるものではない。本発明の連続階調を有する偽造防止用印刷物の基材は、紙、プラスチック等、特に限定されるものではない。
(3)実施の形態3
本実施の形態3は、第3の真偽判別方法において不可視情報の情報量を増やすための施策である。図19は、印刷模様3に二種類の画線領域をもって構成された状態が示されたもので、本発明の画線構成をより詳細に説明するために印刷模様3の一部を部分的に拡大し、かつ説明し易いように画線Dを黒ベタで表現した模式図である。
図19に示された二種
類の画線領域で構成された印刷模様3は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、図20(a)に示された1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図19に示された印刷物上にある高明度の色インキから成る画像の領域g1は、80μmの間隔d1から成る同心円万線で配置され、領域g2は、100μmの間隔d2から成る同心円万線で配置され、領域g1及び領域g2を構成する同心円万線は細画線かつ、明度の高い色インキで印刷されているため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い画線A1及び/又は画線A2、画線A1’及び/又は画線A2’、画線B1及び/又は画線B2、画線B1’及び/又は画線B2’及び画線Cが同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、領域g1及び領域g2を構成する同心円万線が視認されることはない。画線A1及び/又は画線A2、画線A1’及び/又は画線A2’、画線B1及び/又は画線B2、画線B1’及び/又は画線B2’、画線C及び画線Eは、画線Dを形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分によって形成される。なお、間隔d1及び間隔d2は、ユニットの寸法Sよりも小さいことが望ましい。
図20(b)は、図20(a)に示されたRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図20(b)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図20(b)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1と逆空間距離qd2が見られる。
数1の算出でも示されるように、図20(a)のRGB画像には図19に示された領域g1が含まれているため、領域g1に備わる同心円万線の画線の間隔d1がもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図20(b)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。さらに、図20(a)のRGB画像には図19に示された領域g2も含まれているため、領域g2に備わる同心円万線の画線の間隔d2がもたらす強度ピークの逆空間距離qd2は、図20(b)に示されているようにFFTパターンの中心から217ピクセルの位置に現れる。
また、図21は、印刷模様3に三種類の画線領域をもって構成された状態が示されたもので、本発明の画線構成をより詳細に説明するために印刷模様3の一部を部分的に拡大し、かつ説明し易いように画線Dを黒ベタで表現した模式図である。
図21に示された三つの領域で構成された印刷模様3は、光学式スキャナにて解像度1200dpiで画像入力され、図22(a)に示された1024×1024ピクセルから成る24ビットのRGB画像が生成される。図21に示された印刷物上にある高明度の色インキから成る画像の領域g1は、80μmの間隔d1から成る同心円万線で配置され、領域g2は、100μmの間隔d2から成る同心円万線で配置され、領域g3は、130μmの間隔d3から成る同心円万線で配置され、領域g1、領域g2及び領域g3を構成する同心円万線は細画線かつ、明度の高い色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線で構成されていることは視認できない。さらに、明度の低い画線A1及び/又は画線A2、画線A1’及び/又は画線A2’、画線B1及び/又は画線B2、画線B1’及び/又は画線B2’、画線C及び画線Eが同時に刷り重なっているため、それらがカモフラージュ模様となり、領域g1、領域g2及び領域g3を構成する同心円万線が視認されることはない。画線A、画線A’、画線B、画線B’及び画線Cは、画線Dを形成した同心円万線の周波数成分とは異なる周波数成分によって形成される。なお、間隔d1、間隔d2及び間隔d3は、ユニットの寸法Sよりも小さいことが望ましい。
図22(b)は、図22(a)に示されたRGB画像のうちのBチャンネルをフーリエ変換して得られたFFTパターンである。空間周波数の特徴をわかりやすく説明するため、図22(b)のFFTパターンの第IV象限には、周波数強度グラフを重ねて表示している。図22(b)の周波数強度グラフに示されたように、強度ピークの逆空間距離qd1と逆空間距離qd2と逆空間距離qd3が見られる。
数1の算出でも示されるように、図22(a)のRGB画像には図21に示された領域g1が含まれているため、領域g1に備わる同心円万線の画線の間隔d1がもたらす強度ピークの逆空間距離qd1は、図22(b)に示されているようにFFTパターンの中心から271ピクセルの位置に現れる。さらに、図22(a)のRGB画像には図21に示された領域g2も含まれているため、領域g2に備わる同心円万線の画線の間隔d2がもたらす強度ピークの逆空間距離qd2は、図22(b)に示されているようにFFTパターンの中心から217ピクセルの位置に現れる。またさらに、図22(a)のRGB画像には図21に示された領域g3も含まれているため、領域g3に備わる同心円万線の画線の間隔d3がもたらす強度ピークの逆空間距離qd3は、図22(b)に示されているようにFFTパターンの中心から167ピクセルの位置に現れる。
また、図23は、図22の模式図と同様に、三種類の領域から成り、図21の画線Dと同じく、80μmの間隔d1から成る同心円万線で配置された領域g1と、100μmの間隔d2から成る同心円万線で配置された領域g2と、130μmの間隔d3から成る同心円万線で配置された領域g3とによって構成されている。図23の模式図に示されたように、領域g1、領域g2、領域g3それぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ領域g1、領域g2、領域g3のそれぞれが、同心円万線の中心点Pから均等に三等分されて配置されている。この場合においても、領域g1、領域g2、領域g3の空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
つまり、図21及び図23の同心円画線を用いた偽造防止用印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴としている。
さらに、図24は、図22及び図23の模式図と同様に、三種類の領域から成り、図23の画線Dと同じく、80μmの間隔d1から成る同心円万線で配置された領域g1と、100μmの間隔d2から成る同心円万線で配置された領域g2と、130μmの間隔d3から成る同心円万線で配置された領域g3とによって構成されている。図24の模式図に示されたように、領域g1、領域g2、領域g3それぞれの同心円万線の中心点Pが異なり、かつ領域g1、領域g2、領域g3のそれぞれが、同じ領域面積を持って配置されている。この場合においても、領域g1、領域g2、領域g3の空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
つまり、図24の同心円画線を用いた偽造防止用印刷物は、同心円万線が配置される領域が、複数分割され、複数に分割された各領域は、領域ごとに異なる中心点を有して同心円万線が形成され、複数分割された各領域の同心円万線の画線の間隔は、領域ごとに異なることを特徴としている。
なお、図21、図23及び図24の模式図に示されたそれぞれの領域は、実施の形態1に示されたように、同心円万線の間隔d1の範囲でそれぞれ個々の画線の中心線から画線幅を連続的に違えることによって連続階調が表現されるものである。
上記説明では、最も明度の高い所定の色要素であるイエロー(Y)に同心円万線からなる画線Dを形成し、残りの色素であるシアン(C)及びマゼンタ(M)に所定の位置から成る画線Cを形成して説明しているが、本発明は上記構成に限定されることなく、複数の色要素のうち、最も明度の高い所定の色要素を抽出し、所定の色要素から成る画像が埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように形成すればよい。また、同心円万線の画線の間隔が、前記ユニットの寸法よりも小さく、50μm〜350μmであることが好ましい。
本発明の偽造防止用印刷物は、同心円万線の画線の間隔は、埋め込むべき情報ごとに、あらかじめ設定された複数組の間隔の中から選択されている。例えば、図29のデータテーブルに示されたように、図3(d)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 1が適用され、図20(b)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 2が適用され、図22(b)に示されたFFTパターンを得るためのデータとしてはCode 3が適用される。このデータテーブルに埋め込むべき情報が多く登録されているほど真偽判別用の情報を活用できるものである。
本発明は、面表現の領域において同心円万線、すなわち規則性を有する複数本の細画線を有することにより、スキャナ、複写機等のデジタル機器による高解像度入力画像では識別可能であるが、人間にとって視覚で認識困難な微細かつ規則性を有する部分を付与し、得られた印刷物に対してデジタル機器上で証券用線画の間隔の相関を分析し、印刷物に埋め込まれた情報を識別することで真偽判別が可能であり、また、その情報に基づき偽造等に利用する複写機等デジタル機器の動作停止等のアクションを可能とするものである。
(4)実施の形態4
本実施の形態4は、複数の領域がリング状に配置し、かつ、それぞれの領域の境界において、それぞれの領域に備わる同心円万線が自然な連続性が保たれている位置関係について述べるものである。本実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明における領域に備わる同心円万線は、イエローのような明度の高い色インキで印刷されるので、肉眼視において全体的な連続階調は視認できても画線形状を識別できるものではない。しかし、画線の位置関係により更に識別できないようにすることもできる。図25は、中心点Pから同じ距離を持って形成された同心円万線に見えるが、実際には図21、図23及び図24の模式図と同様に、三種類の領域によって構成されている。図21の画線Dと同じく、80μmの間隔d1から成る同心円万線で配置された領域g1と、100μmの間隔d2から成る同心円万線で配置された領域g2と、130μmの間隔d3から成る同心円万線で配置された領域g3とによって構成されている。
図25(a)の模式図は、領域g1、領域g2、領域g3それぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ中心点Pから領域g1、領域g2、領域g3の順にリング状に配置されたものである。まず、領域g1は中心点Pから間隔d1で形成された同心円万線である。領域g1の外側に、領域g1の同心円万線の間隔d1と領域g2の同心円万線の間隔d2との平均値からなる補間間隔X1が設けられ領域g2がリング状に配置される。領域g2は間隔d2で形成された同心円万線である。領域g2の外側に、領域g2の同心円万線の間隔d2と領域g3の同心円万線の間隔d3との平均値からなる補間間隔X2が設けられ領域g3がリング状に配置される。領域g3は間隔d3で形成された同心円万線である。
一方、図25(b)の模式図は、領域g3、領域g2、領域g1それぞれの同心円万線の中心点Pが等しく、かつ中心点Pから領域g3、領域g2、領域g1の順にリング状に配置されたものである。まず、領域g3は中心点Pから間隔d3で形成された同心円万線である。領域g3の外側に、領域g3の同心円万線の間隔d3と領域g2の同心円万線の間隔d2との平均値からなる補間間隔X2が設けられ領域g2がリング状に配置される。領域g2は間隔d2で形成された同心円万線である。領域g2の外側に、領域g1の同心円万線の間隔d1と領域g1の同心円万線の間隔d1との平均値からなる補間間隔X1が設けられ領域g1がリング状に配置される。領域g1は間隔d1で形成された同心円万線である。
これにより、図25(a)及び図25(b)の画線構成は、領域g1、領域g2及び領域g3が順にリング状に配置していながらも、それぞれの領域の境界において同心円万線が自然な連続性が保たれている。また、図25(a)及び図25(b)の画線構成はそれぞれ等しく、領域g1、領域g2、領域g3の空間周波数の特徴を明瞭に識別することができる。
なお、図25(a)及び図25(b)の模式図に示されたそれぞれの領域は、実施の形態1に示されたように、同心円万線の間隔d1の範囲でそれぞれ個々の画線の中心線から画線幅を連続的に違えることによって連続階調が表現されるものである。
つまり、図25の同心円画線を用いた偽造防止用印刷物は、同心円万線が配置される領域が、リング状に複数分割され、複数に分割された各領域は、同一の中心点を共有する同心円万線が形成され、複数に分割された各領域の境界において、隣り合う一方の領域に備わる同心円万線の間隔と、他方の領域に備わる同心円万線の間隔との平均値からなる補間領域が設けられ、境界において同心円万線の連続性が保たれていることを特徴とする。
(5)実施の形態5
上述した実施の形態1及び実施の形態2で示されたように、本発明は連続階調画像に対して、画像を含む不可視情報を付与するもので、本実施の形態5では、印刷物の発給装置について説明する。
情報を付与された印刷物が示されたものである。身分証明書型の印刷物4における印刷面上の一部に、カード台紙模様9と顔写真画像部10と模様部11とが併せて印刷されている。模様部11は、上述した実施の形態1乃至実施の形態4で示されたいずれか方法によって得られた印刷模様3と同様である。
次に本実施の形態5に示される印刷物の発給装置について説明する。
本実施の形態5における印刷物の発給装置は、図27の組織図に示されるように、可視情報入力手段M1、第1の不可視情報入力手段M2、第2の不可視情報入力手段M3、第3の不可視情報入力手段M4、印刷手段M5、表示手段M6、編集手段M7、書式データベースM8及び通信インターフェースM9を備えている。
可視情報入力手段M1は、カメラ、デジタルカメラ、スキャナ等、特に限定されるものではない。また、書式データベースM8又は通信インターフェースM9によってあらかじめ個人情報等が入力されたデータベースサーバから画像、テキスト又はカード台紙模様9等の可視情報を得ることができる。
第1の不可視情報入力手段M2は、キーボード等からの入力、また、後述する書式データベースM8と同じパソコン内に登録されている画像又はテキストの不可視情報が入力されたデータベース、通信インターフェースM9によってあらかじめ不可視情報が入力された外部のデータベースサーバから不可視情報を得ることができる。
第2の不可視情報入力手段M3は、キーボード等からの入力、また、後述する書式データベースM8と同じパソコン内に登録されている画像又はテキストの不可視情報が入力されたデータベース、通信インターフェースM9によってあらかじめ不可視情報が入力された外部のデータベースサーバ、又は可視情報入力手段M1から入力された可視画像情報のコピーから不可視情報を得ることができる。
第3の不可視情報入力手段M4は、キーボード等からの入力、また、後述する書式データベースM8と同じパソコン内に登録されている画像又はテキストの不可視情報が入力されたデータベース、通信インターフェースM9によってあらかじめ不可視情報が入力された外部のデータベースサーバ、又は可視情報入力手段M1から入力された可視画像情報のコピーから不可視情報を得ることができる。
印刷手段M5は、インクジェットプリンタ、レーザプリンタ等、特に限定されるものではない。
表示手段M6は、パソコンのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。
編集手段M7は、可視情報構成手段M7a、第1の不可視情報構成手段M7b、第2の不可視情報構成手段M7c、第3の不可視情報構成手段M7d及び画像合成手段M7eを有する。可視情報構成手段M7aは可視情報入力手段M1で得られた画像を所定の画線データに変換し、第1の不可視情報構成手段M7bは第1の不可視情報入力手段M2で得られた画像を所定の画線データに変換し、第2の不可視情報構成手段M7cは第2の不可視情報入力手段M3で得られた画像を所定の画線データに変換し、第3の不可視情報構成手段M7dは第3の不可視情報入力手段M4で得られた画像を所定の画線データに変換し、画像合成手段M7eは可視情報構成手段M7aで得られた画線データと、第1の不可視情報構成手段M7bで得られた画線データと、第2の不可視情報構成手段M7cで得られた画線データ及び第3の不可視情報構成手段M7dで得られた画線データを合成する。
書式データベースM8は、可視情報入力手段M1、第1の不可視情報入力手段M2、第2の不可視情報入力手段M3及び第3の不可視情報入力手段M4以外の印刷に必要なデータが格納されている。
通信インターフェースM9は、RS−232C、IEEE1394等、特に限定されるものではない。
本実施の形態による作製方法は、図27に示された作製装置を用いて、図28のフローチャートに示された処理ステップによって実行されるものである。
まず、ステップf1では、可視画像情報入力手段M1にて本発明の真偽判別可能な印刷物の印刷画像のモチーフとなるRGBカラー画像を入力する。入力されるのはビットマップ多値画像であり、画素数等に何ら制限はない。さらに、ステップf5に示されたカラー画像の色分解は、図27に示された編集手段M7に含まれる可視情報構成手段M7aによって行われる。ステップf5は、可視情報構成手段M7aによって入力されたカラー画像を印刷可能な所定の色チャンネルに色分解され、所定の色チャンネルを最も明度の高い色要素と、残りの色素に区分けする。
次に、ステップf3では、第1の不可視情報入力手段M2にて、第1の不可視情報の入力を行う。次に、第1の不可視情報構成手段M7bにおいて図13に示された画線A1、画線A1’、画線A2、画線A2’、画線B1、画線B1’、画線B2、画線B2’、画線E1、画線a1’、画線E2、画線a2’の領域に配置される不可視画像が生成される。第1の不可視画像の適用は、図27に示された、編集手段M7に含まれる画像合成手段M7eによって行われる。同様に、ステップf4では、第2の不可視情報入力手段M3にて、第2の不可視情報の入力を行う。次に、第2の不可視情報構成手段M7cにおいて図13に示された画線A1、画線A1’、画線A2、画線A2’、画線B1、画線B1’、画線B2、画線B2’、画線E1、画線a1’、画線E2、画線a2’の領域に配置される不可視画像が生成される。第2の不可視画像の適用は、図27に示された、編集手段M7に含まれる画像合成手段M7eによって行われる。
次に、ステップf2では、第3の不可視情報入力手段M4にて埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報を入力する。例えば、入力される情報は、キーボード等からの入力、また、書式データベースM8と同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベース(図示せず)、通信インターフェースによってあらかじめ情報が入力された外部データベースサーバ(図示せず)から情報を得ることができる。なお、同じパソコン内に登録されている情報が入力されたデータベースは、記憶手段(図示せず)に設けられ、埋め込むべき情報に応じた周波数成分が抽出されるように設定された所定の間隔を有する同心円万線の情報が保存されている。
さらに、ステップf6では、図27に示された編集手段M7に含まれる可視情報構成手段M7aによって、シアン用画像とマゼンタ用画像によって形成される画線Cが生成され、ステップf7では、第2の不可視情報構成手段M7cによって、抽出された情報を最も明度の高い所定の色要素に同心円万線データを生成する。例えば、入力された埋め込むべき情報によって定義されたイエロー用画像のための画線Dが生成される。
次に、ステップf9乃至11において、ステップf5の色分解で得られた最も明度の高い所定の色要素及び残りの色素に各チャンネル出力がされる。次に、ステップf13乃至15において、ステップf9乃至11で作製した各チャンネル出力を各画線に適用させる。例えば、シアン用画像は、ステップf9においてドキュメント・ファイルのシアンチャンネルに出力され、また、ステップf5の色分解で得られたマゼンタ用画像は、ステップf10においてドキュメント・ファイルのマゼンタチャンネルに出力され、さらに、ステップf5の色分解で得られたイエロー用画像は、ステップf11においてドキュメント・ファイルのイエローチャンネルに出力される。
そしてさらに、ステップf8の画線A1、画線A1’、画線B1、画線B1’の生成で得られたブラック用画像は、ステップf12においてドキュメント・ファイルのブラックチャンネルに出力される。ステップf8で得られた画線A1、画線A1’、画線B1、画線B1’、画線E1、画線a1は、ステップf16においてブラックチャンネルに適用される。
そして、ステップf6で得られた画線Cは、ステップf13においてシアンチャンネルに適用され、ステップf14においてマゼンタチャンネルに適用される。そしてさらに、ステップf7で得られた画線Dは、ステップf15においてイエローチャンネルに適用される。さらに、ステップf8で得られた画線A2、画線A2’、画線B2、画線B2’、画線E2、画線a2はステップf13乃至15においてそれぞれ適用される。
次に、図27に示された編集手段M7に含まれる画像合成手段M7eによって、個々に得られた画線データを合成してドキュメント・ファイルを生成する。例えば、ステップf17の各チャンネルの合成と、ステップf18のドキュメント・ファイルに書き出しが行われる。こうして生成されたドキュメント・ファイルが、それぞれの色インキで基材に刷り重なることにより情報を埋め込んだカラー印刷物が得られるものである。
最後に印刷手段M5によって、赤外線吸収色素を含む色材であるブラックを用いて画線A1、画線A1’画線E1及び画線a1が印刷され、赤外線吸収色素を含まない色材であるシアン、マゼンタを用いて画線A2、画線A2’、画線E2、画線a2及び画線Cが印刷され、赤外線吸収色素を含まない色材であるイエローを用いて画線A2、画線A2’、画線E2、画線a2及び画線Dが印刷される。また、顔写真画像部10及び書式データベースM8から得たカード台紙模様9のその他の模様においては、赤外線吸収色素を含まない色材を用いて印刷される。
図30は、身分証明書の印刷物4において第1の判別具2及び第2の判別具6を用いて真偽判別を行っている状態が示されたものである。これにより、模様部11を第1の真偽判別方法における第1の判別具2を用いた場合には第1の不可視情報i1が可視画像となって視認でき、模様部11を第2の真偽判別方法における第2の判別具6を用いた際には第2の不可視情報i2が可視画像となって視認できる。そして、模様部11を第3の真偽判別方法における判別装置Rを用いた際には第3の不可視情報i3が認証できる。
図30(a)は、レンチキュラーレンズによる第1の判別具2を、身分証明書型の印刷物4の模様部11に重ねた状態を示したものである。第1の判別具2によって第1の不可視情報i1のタイムスタンプ情報が現れている。また、図30(b)は、赤外線視するカメラ(または光学式スキャナ)を搭載した画像入力・表示装置による第2の判別具6を用い、身分証明書型の印刷物4の模様部11を赤外線視したものである。第2の判別具6によって第2の不可視情報i2として施してあった顔写真が可視画像となって確認できる。本実施の形態3では、第2の不可視情報i2として施してあった顔写真は顔写真画像部10に示された顔写真と同じであることを確認している。すなわち、カードの偽造防止の運用例としては、第2の判別具6において、模様部11に埋め込まれていた第2の不可視情報i2が顔写真画像部10に示された顔写真と一致を目視で確認することにより、身分証明書型の印刷物4の持ち主が本人であることが証明される。また、第1の判別具2において、模様部11に埋め込まれていた第1の不可視情報i1が発行日時のタイムスタンプ情報と一致を目視で確認することにより、身分証明書型の印刷物4が正しい日時を有する真正なものであることが証明される。さらに、図30(c)は、主に光学式スキャナ等から成る読み取り手段R1、入力手段R2、演算手段R3、表示手段R4から成る判別装置Rを用い、身分証明書型の印刷物4の模様部11を光学式スキャナで画像入力し、明度の高いイエロー(Y)の色インキで印刷されてあるため目視では同心円万線に備わる情報を認証するものである。判別装置Rにて抽出された数値からなる第3の不可視情報i3を認証することにより、容易に真偽性を判別することができる。