JP2013211300A - 磁性材料及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】磁気特性と熱的安定性に優れたフッ素を含有する磁性材料を提供する。
【解決手段】Th2Zn17構造を有するSm−Fe系材料にフッ素を導入する過程で、その結晶構造を制御し、材料を構成するSm−Fe−F相において、Fの配合比がモル比で1%未満となる第1グループと、Fの配合比がモル比で1%以上且つ4%未満となる第2グループとで相を構成し、第2グループが占める体積比を、磁性材料全体の50%以上とする。また、前記磁性材料の表面より1〜2.5μmの範囲において、前記第1グループより前記第2グループを多く形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐熱性の向上したフッ素を含有する磁性材料に関する。
特許文献1〜3には、従来のフッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を含む希土類磁石について開示されている。また、特許文献4のブラジル特許には、Sm2Fe17をフッ化している例が記載されている。
特開2011−014600号公報 特開2010−034335号公報 特開2007−116088号公報 PI9701631−4A
上記特許文献1〜3は、Nd−Fe−B系磁性材料やSm−Fe系磁性材料にフッ素を含有する化合物を反応させたものであり、これにより磁気特性の向上または低下の防止を行うものである。ここで用いられているフッ化物は希土類元素を含有しており、磁性材料を構成する粒子の表面に希土類元素を浸透させることをその効果発現の原理としている。
しかし希土類元素は希少資源であり、その使用量の削減が求められている。
一方、特許文献4ではSm−Fe系磁性材料にフッ素ガスを作用させ、その磁気的性質を向上させることも開示されているが、そのキュリー温度は155℃と低く、その熱的安定性については確認されていない。また使用しているフッ素ガスの反応性が極めて高いため、反応に際してはその濃度を極めて低く保ったまま進行させる必要があり、そのため反応時間は数日から数十日に及ぶ。しかしこのように処理した場合にもSm−Fe系材料が有していた構造の一部破壊が生じており、実用的な磁性材料を得ることはできない。
本発明では希土類元素の使用量を削減し、かつ、磁気特性や熱的安定性が向上した磁性材料を提供することを目的とする。
Th2Zn17構造を有するSm−Fe系材料にフッ素を導入する過程で、その結晶構造を制御し、材料を構成するSm−Fe−F相において、Fの配合比がモル比で1%以上且つ4%未満となる相が占める体積比を50%以上とする。
本発明により、希土類元素の使用量を削減し、かつ、磁気特性や熱的安定性が向上した磁性材料を提供することを目的とする。
本発明(熱処理有り)と比較材(熱処理無し)の磁性材料に対するX線回折測定による構造解析結果を示す図である。 フッ化反応後の粉末断面における電子線マイクロアナライザーによる組成分布結果を示す図である。 フッ化処理後の粉末のX線回折パターンを示す図である。 フッ化処理前後の粉末の磁化曲線を示す図である。 フッ化処理前後の粉末の磁化の温度依存性を示す図である。 フッ化処理前後の粉末の単位温度当りの磁化の評価結果を示す図である。 X線回折測定から求めた格子体積とキュリー点の相関を示す図である。 比較例の磁性材料に対するX線回折測定による構造解析結果を示す図である。
本発明者等は、Sm−Fe系材料の磁気特性を向上する要因として、主相となるSm2Fe17相にフッ素を導入して形成される反応相(F)の配合比(モル比)が重要である知見を見出した。Sm2Fe17相にフッ素を導入する際には、Fの配合比が0≦X1<1のSm2Fe17X1と、Fの配合比が1≦X2<4のSm2Fe17X2の組成の異なる相が形成される可能性がある。両者の特性を比較すると、Fの配合比が1≦X2<4のSm2Fe17X2の方が熱的安定性が高く、磁性材料中に占めるSm2Fe17X2相の割合を増やすことが、磁気特性改善に有効であることがわかった。
本発明の磁性材料は、Sm−Fe系材料にフッ素を導入する過程で、その結晶構造を制御し、材料を構成するSm−Fe−F相において、Fの配合比がモル比で1%以上且つ4%未満となる相が占める体積比を50%以上とすることで、磁気的性質の向上と熱的安定性を改善することを特徴とする。すなわち、Th2Zn17X1で表され、0≦X1<1の範囲にある複数の相からなる第1グループと、Th2Zn17X2で表され、1≦X2<4の範囲にある複数の相からなる第2グループと、で相を構成し、磁性材料全体に対する第2グループの体積比は50%以上となる。
本発明の磁性材料の特徴は、Sm2Fe17等のTh2Zn17型の結晶構造を有する化合物の内部に、フッ素を導入して磁気特性を改善することにある。フッ素はTh2Zn17型結晶の格子間位置に侵入し、結晶構造を変えることなく格子間隔を広げることで、結晶格子を体積膨張させて、飽和磁化を増加させる。Sm2Fe17以外に結晶構造を変えることなくフッ素が侵入する材料は、RE2Fe17、REFe12、REFe19(REはYを含む希土類元素の少なくとも1種)である。具体的には、Y2Fe17、La2Fe17、Ce2Fe17、Pr2Fe17、Nd2Fe17、Eu2Fe17、Gd2Fe17、Tb2Fe17、Dy2Fe17、Ho2Fe17、Er2Fe17、Tb2Fe17、Lu2Fe17、(Sm、Y)2Fe17、(Sm、La)2Fe17、(Sm、Ce)2Fe17、(Sm、Pr)2Fe17、(Sm、Nd)2Fe17、(Sm、Eu)2Fe17、(Sm、Gd)2Fe17、(Sm、Tb)2Fe17、(Sm、Dy)2Fe17、(Sm、Ho)2Fe17、(Sm、Er)2Fe17、(Sm、Tb)2Fe17、(Sm、Lu)2Fe17、NdFe12、NdFe19、(Nd、Sm)Fe12、(Nd、Sm)Fe19である。これらの化合物には結晶構造が維持される範囲内でCoやNiでFeの一部を置換したり、Ti、V、Cr、Mn、Nb、Zr、Al、Coの中の1種または2種の元素でFeを置換して分解温度を800℃以上にすることが可能である。
磁性材料としてSm2Fe17を考える場合、フッ素(F)を結晶格子間に侵入させて形成される物質はSm2Fe17xの3元系相となる。実際のプロセスでSm2Fe17xを合成した場合に形成される相としては、Fの配合比が0≦X1<1のSm2Fe17X1と、Fの配合比が1≦X2<4のSm2Fe17X2が存在するが、磁性材料の特性、特に高温下での相安定性はFの配合比により大きな影響を受ける。熱的安定性が高いのは1≦X2<4のSm2Fe17X2相であり、600℃で熱処理を行った後でも、Sm2Fe17X2相は分解せず安定に存在する知見が得られた。
一方でFの配合比が0≦X1<1のSm2Fe17X1相の熱的安定性は低く、200℃以上高温下で使用した際に、結晶格子からのFの解離・放出が活発化する。このような高温下でのFの放出を抑制して、磁性材料の高温安定性を高める方法として、材料中に占めるSm2Fe17X2相の割合を増やすこと、具体的にはSm2Fe17X2相が占める体積比を50%以上とすることが重要であることを明らかとした。
Sm2Fe17X2相の特徴として、F原子の結晶格子内への侵入による結晶格子の膨張がある。F原子を含まないSm2Fe17相の結晶格子体積が0.80nm3未満である一方で、Sm2Fe17X2相の結晶格子体積は約0.84nm3かそれ以上に増加し、Fの侵入により結晶格子体積は4%以上増加する。Sm2Fe17X2相の結晶格子体積は、X線回折装置を用いて結晶構造評価を行い求めることができる。X線回折の測定条件として、回折角2θを5〜100°の範囲とし、ステップ幅を0.01°、走査速度0.5°/分にて結晶構造評価を行い、得られたSm2Fe17X2相の結晶回折ピークから結晶面間隔を精度良く求めて、結晶格子体積を導出する。
本発明の磁性材料を得るためには、Sm−Fe系希土類磁性材料とフッ化物を、高温下で反応させるプロセス(以下、フッ化処理という)を使用する。希土類磁性粉末とフッ化物粉末とを混合してるつぼに入れて、るつぼを加熱炉内部に設置する。反応前に加熱炉内部を真空排気した後に、アルゴンガス等の不活性ガスを加熱炉内部に導入、フローさせた状態で、混合粉を入れたるつぼを150〜250℃で一定時間加熱する。加熱保持の段階でフッ化物から解離したフッ素が磁性粉末の表面から内部に侵入、拡散することで飽和磁化の高い磁性材料が生成される。
原料となる磁性粉末の代表的な材料にはSm2Fe17化合物が挙げられる。一方のフッ化物としては融点が300℃以下で、加熱時に比較的低温でフッ素が解離する物質、例えばXeF(融点150℃)等を用いることが好ましい。高融点のフッ化物を使用した場合、フッ化処理の際のSm2Fe17粉と反応するフッ素の割合が低下して、Sm2Fe17X2相の生成が抑止されて磁気特性の低下を招くことから好ましくない。
一方でXeF2等のフッ化物はSm2Fe17磁性粉との反応性が高く、室温中で混合、保持した際にもフッ素がSm2Fe17磁性粉表面に付着して、SmF2、Sm37、SmF3等のSmF系2元化合物を容易に生成する。これらのSmF系2元化合物の生成はSm2Fe173相の生成を妨げて、磁気特性の低下に繋がることから好ましくない。SmF系2元化合物の生成を防止するには、フッ化処理前のSm2Fe17とフッ素との反応を抑制する必要がある。本発明ではこの課題への解決法として、素材のSm2Fe17粉を有機溶媒中に事前に浸漬し、その中にXeF2等のフッ化物を投入、混合した後にフッ化処理するプロセスを見出した。
Sm2Fe17磁性粉を事前に有機溶媒に浸漬することで、磁性粉の酸化を防ぐ一方で、フッ化物を混入した際の磁性粉との接触を防ぐことにより、加熱前の磁性粉とフッ素の反応を抑制する効果がある。有機溶媒に浸漬したSm2Fe17磁性粉とフッ化物の混合粉をフッ化処理する際に、有機溶媒の沸点を5〜30℃超える温度で一定時間加熱することで、有機溶媒を揮発させ除去する。その後に混合粉を再度昇温して150〜250℃で加熱する。このプロセスの特徴として、Sm2Fe17磁性粉とフッ素の主たる反応が有機溶媒の融点以上の高温で生じるため、フッ素がSm2Fe17磁性粉内部まで容易に拡散し、磁気特性に優れたSm2Fe173相を優先的に生成することが可能となる。有機溶媒としては、沸点が50℃以上でフッ化物の融点以下にある物質ならば特に制限は無く、具体的にはヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、メタノール、その他の物質を用いることが好ましい。
上記手法で生成されるSm2Fe17X2相は、高温での安定性に優れており、600℃までの加熱でも分解しないことが特徴である。フッ化処理終了後の混合粉表面には過剰なフッ素がSmF3等の形態で残存しているが、これらの過剰なフッ素を含む化合物は高温で熱処理することで、分解、脱理による除去が可能となる。過剰なフッ素化合物を除去するための熱処理は、真空中で実施することが好ましく、温度は400〜600℃の範囲とすることが好ましい。熱処理温度が400℃未満の場合は、過剰なフッ素化合物の除去が十分でなく、磁性材料の使用中にフッ素が脱理する可能性があるため好ましくない。また熱処理温度が600℃を超える場合は、Sm2Fe17X2相の分解が生じて、磁気特性が低下することから好ましくない。
本発明の磁性材料において、十分な磁化特性を得るためには、磁性材料粉末中に占めるSm2Fe17X2(F配合比:1≦X2<4)の体積比が50%以上であることが好ましい。主相であるSm2Fe17X2の他に、Sm2Fe17X1(F配合比:0≦X1<1)、α−Fe、SmとFを含むSmF系元化合物、Sm酸化物、SmとFを含む複合酸化物、等の相を磁性材料粉末中に含むことができる。α−Feやα−Feと同じbcc構造の鉄合金は、Sm2Fe17Xと磁気的に結合することにより残留磁束密度が増加する。α−Feの量は1〜20体積%の範囲が望ましく、1%未満では残留磁束密度の増加効果は0.01T未満と小さく、20%を超えると交換結合が十分でないため残留磁束密度が低下する。SmとFを含むSmF系元化合物は、耐食性を向上させ、Sm2Fe17Xの磁化反転を抑制する効果がある。
本発明の磁性材料は高キュリー温度、高残留磁束密度であることからボンド磁石や加熱成形磁石を作成でき、これらの磁石は、家電・産業用モータ、電気自動車・ハイブリッド自動車のモータ、ハードディスクドライブなどの電子機器などに適用できる。
以下実施例を説明する。
図1は本発明(熱処理有り)と比較例(熱処理無し)の磁性材料に対するX線回折測定による構造解析結果を示す。
平均粉末径が15μmのSm2Fe17粉末とXeF2粉末を原料とし、Sm2Fe17粉末を入れた黒鉛製のるつぼにヘキサンを加えて、Sm2Fe17粉末がヘキサンに浸漬した状態で12時間以上保持した。その後にヘキサンの上澄みを流して、XeF2粉末をSm2Fe17粉末に対し、重量比20%で添加、混合した。その後にるつぼを加熱炉内にセットして、Arガスをフローさせた雰囲気中で80℃まで加熱し、30分間保持することでヘキサンを揮発させた。保持終了後に再度140℃まで加熱を行い、1時間保持した。この粉末を真空雰囲気中で、前記加熱保持温度よりも高温の600℃で熱処理した後に、X線回折による結晶構造解析を行った(図1)。
X線回折の結果、本発明の磁性材料において、Sm2Fe17と結晶構造は同じであるが、結晶格子定数がフッ化処理前よりも増加した構成相の存在を確認した。解析の結果Sm2Fe17Xにおいてフッ素の配合比X=3のSm2Fe173相と、フッ素の配合比X=0.6のSm2Fe170.6相の2相が存在し、回折ピーク高さはSm2Fe170.6よりもSm2Fe173の方が大きいことを確認した。昇温脱理法によるガス分析を行った結果、室温から600℃までの領域でフッ素を含むガス成分の検出は確認されず、これらのフッ素を含む構成相は熱的に極めて安定であることを確認した。
比較として、真空雰囲気中での600℃熱処理を実施せず、フッ化処理したままの状態の粉末に対し、X線回折による結晶構造解析を行った。真空熱処理無しの場合は、Sm2Fe170.6のみが検出され、Sm2Fe173の回折ピークは非常に小さいことがわかった。本粉末に対し昇温脱理法によるガス分析を行った結果、200℃から600℃にかけてフッ素ガスの放出が確認された。
上記の結果から、フッ化処理直後に生成されるSm2Fe170.6相は熱的に不安定なことがわかった。フッ化処理後に真空雰囲気中での600℃で熱処理を行うことで、フッ素配合比の高いSm2Fe173相の体積比が増加する一方で、Sm2Fe170.6相の体積比は減少する。その過程で粉末に含まれる過剰なフッ素の一部が放出されることで、本発明の磁性材料は600℃に至るまで、熱的な構造変化の無い安定な状態を得ることができると推測される。
平均粒径が10μmのSm2Fe17粉をXeF2と混合する。Sm2Fe17粉には0.5質量%のCoが含有している。Sm2Fe17粉とXeF2の混合モル比は1:1である。混合時の酸化防止のため、アルゴン雰囲気中のグローブボックス中にあるヘキサン溶液内で混合し、XeF2粉は粒径1mm以下に粉砕した。この混合粉末をアルゴン雰囲気の容器内に移し、80℃で30分間加熱保持した。さらに150℃で0.5〜1時間保持後に20℃に冷却した。
図2(1)(2)は、反応後の粒径5.5μmの粉末について、電子線マイクロアナライザーを使用して、波長分散型検出器を用いて組成分布を調べた結果を示す。測定した粉末は、樹脂埋め後に断面を切断加工して研磨したものであり、典型的な分析結果を示す。
図2(1)よりFe及びSmの濃度がほぼ一定であることがわかる。またF(フッ素)とO(酸素)の濃度を拡大して示した(2)の結果から、Fが両端で高濃度になっていることがわかる。フッ素濃度は粉末の外周側で高く、外周側の粉末表面から1〜1.5μmの範囲までSm2Fe17Fx2(1<X2<4)が形成されることがわかった。また粉末中心部は、Sm2Fe17Fx1(0≦X1<1)の組成である。処理時間を長くすること及び処理前に水素還元処理を実施することにより、中心部のSm2Fe17Fx1(0≦X1<1)の組成部を小さくすることが可能である。
図3はフッ化処理後の粉末のX線回折パターンを示す。Sm2Fe17Fx2(1<X2<4)の回折パターンは600℃の熱処理後も確認でき、Sm2Fe17Fx2の分解は実施例1と同じく、600〜750℃の間で進行することが判明した。さらに耐熱性を高めるためには、α−Feの成長抑制及び酸素濃度低減が効果的である。尚、昇温脱ガス分析の結果から、750℃までフッ素を含有する分子種は分解ガスとして認められなかった。
図4は実施例2で作製した磁性粉末のフッ化処理前後の磁化曲線を示す。フッ化処理後の磁化は増大し、飽和に必要な磁場が増加している。α−Feが多く含有する粉を機械的に分離し、粉砕することで保磁力が発現する。
図5はフッ化処理前後の粉末の磁化の温度依存性を示す。具体的には0.1Tの磁場で測定した磁化の温度依存性を示す。図5において昇温時にはα−Feのキュリー点に達する前に3ケ所([1]、[2]、[3])に変曲点が認められる。昇温時に測定された変曲点が消失し、1つの変曲点が認められる。昇温時に認められた[3]の変曲点付近について図中左下(昇温)及び右上(降温)に拡大して示す。[3]の変曲点は昇温時に確認されるが降温時には認められない。[4]は昇温時の[2]に近い温度でみられる変曲点である。
図6はフッ化処理前後の粉末の単位温度当りの磁化の評価結果を示す。具体的には、図4の結果から求めた磁化の単位温度当りの変化(ΔI/ΔT)を示す。図4の磁化の値から単位温度当りの磁化を算出したものであり、極小値がキュリー点を表す。昇温時には(1)137℃、[2]210℃及び[3]403℃に極小となり、降温時には205℃に極小値をとる。未処理粉のキュリー点は130℃であり、[1]137℃はSm2Fe17に相当する。X線回折結果において750℃でSm2Fe17X2が消失することから、[4]403℃がSm2Fe17X2のキュリー点である。昇温時の[2]210℃及び降温時[4]205℃はSm2Fe17x1のキュリー点と考えられる。
図7はX線回折測定から求めた格子体積とキュリー点の相関を示す。図7ではフッ化処理前のSm2Fe17粉及びフッ化処理したSm2Fe17粉のX線回折パターンから求めたSm2Fe17、Sm2Fe17Fx1及びSm2Fe17FX2の格子体積とキュリー点をプロットした。Sm2Fe17FX2(X>1)の格子体積は、0.838nm3でキュリー点402℃を示す。図中の点線はSm2Fe17系侵入型化合物(侵入元素は窒素、炭素、炭素及び窒素、炭素及び水素、窒素及び水素、炭素と窒素及び水素)のキュリー点及び格子体積との関係を示す。実側値は点線の関係にほぼ一致している。これはSm2Fe17系侵入型化合物において、侵入元素がフッ素の場合も磁気体積効果がキュリー点上昇に寄与していることを示している。フッ素の電気陰性度の効果による磁化増大ならびに磁気異方性エネルギーの増大には、上記のSmFe系あるいはSmFeCo系にフッ素を捕獲するプラス電荷を有し易い元素を規則格子内の希土類原子位置(ここではSm原子位置)に隣接して配置させることが有効であると考える。
実施例2に記載したSm2Fe17粉、XeF2と同様のフッ化プロセスを用いて、磁性粉末を試作した。その際のアルゴン雰囲気中の150℃での加熱を6時間行った後に20℃に冷却して粉末を回収した。フッ化処理後の粒径6μmの粉末に対して、電子線マイクロアナライザーを使用して、波長分散型検出器を用いて、粉末内部の組成分布を調べた結果、フッ素濃度の高いSm2Fe17Fx2(1<X2<4)の領域は、外周側の粉末表面から2.0〜2.5μmの範囲まで及んでいた。粉末中心部はSm2Fe17Fx1(0≦X1<1)の組成であったが、断面に占めるSm2Fe17Fx1の面積は22%であり、78%がSm2Fe17Fx2に相当することを確認した。フッ素濃度の決定には、フッ化していない試料のフッ素のシグナルをゼロとしてバックグラウンド補正をしており、その精度は±0.5wt%である。
〔比較例〕
図8は比較例の磁性材料に対するX線回折測定による構造解析結果を示す。平均粉末径が15μmのSm2Fe17粉末とXeF2粉末を原料とし、Sm2Fe17粉末に対してXeF2粉末を重量比20%で混合し、黒鉛製のるつぼに入れてArガスをフローさせた雰囲気中で加熱した。加熱保持温度、保持時間はそれぞれ140℃、1時間とした。この粉末を真空雰囲気中で、前記加熱保持温度よりも高温の600℃で熱処理した後に、X線回折による結晶構造解析を行った。
X線回折の結果、比較例においては、主な構成相はSm2Fe17であり、他にFを含む相としてSmF3、Sm37、SmF2の存在を確認した。Fを含む相の中でSmF3の存在量が他の2相よりも最も多いことがわかった。主相のSm2Fe17は結晶格子定数が原料粉の状態とほぼ同一であったことから、フッ化処理による結晶内部へのフッ素の侵入はほとんど生じていないことが推測された。フッ化処理の段階で生成されるのはSmF3、Sm37、SmF2であり、Sm2Fe173はほとんど生成されないことがわかった。
比較例では原料粉末を混合する際に、Sm2Fe17粉末とXeF2粉末がヘキサンを介さずに直接に接触することから、加熱実施前にフッ素がSm2Fe17と反応して、SmF3、Sm37、SmF2の相が生成されたと推測される。これらの相が室温でSm2Fe17粉末表面に生成されたことにより、加熱を行った際のフッ素のSm2Fe17相内部への拡散が阻害された可能性が推測される。
この分析により、本発明のように原料のSm2Fe17粉末をヘキサンに浸漬した後に、XeF2粉末と混合してフッ化処理を行うことで、Sm2Fe17相内部にフッ素が侵入して格子体積を増大した相(比較例では生成されなかった相)が生成されることがわかった。

Claims (9)

  1. Th2Zn17型構造を有する結晶格子の侵入位置にフッ素が存在する磁性材料において、
    Th2Zn17X1で表され、0≦X1<1の範囲にある複数の相からなる第1グループと、
    Th2Zn17X2で表され、1≦X2<4の範囲にある複数の相からなる第2グループと、で相を構成し、
    前記磁性材料全体に対する前記第2グループの体積比は50%以上であることを特徴とする磁性材料。
  2. 請求項1に記載の磁性材料において、
    前記Th2Zn17はSm2Fe17であることを特徴とする磁性材料。
  3. 請求項1または2に記載の磁性材料において、
    前記磁性材料の中心部より外周側の方が、フッ素の濃度が高いことを特徴とする磁性材料。
  4. 請求項1乃至3のいずれかに記載の磁性材料において、
    前記磁性材料の表面より1〜2.5μmの範囲の位置において、前記第1グループより前記第2グループの方が多く形成されていることを特徴とする磁性材料。
  5. 磁性材料の製造方法において、
    Th2Zn17粉末を有機溶媒に浸漬する工程と、
    前記Th2Zn17粉末と、フッ素化合物との混合体を製造する工程と、
    前記混合体を前記有機溶媒の沸点を超える温度で加熱して前記有機溶媒を揮発させる工程と、
    前記混合体を150〜250℃で加熱してフッ化処理する工程と、
    前記混合体を400〜600℃で加熱して過剰なフッ素化合物を除去する工程と、を有することを特徴とする磁性材料の製造方法。
  6. 請求項5に記載の磁性材料の製造方法において、
    前記Th2Zn17粉末はSm2Fe17粉末であることを特徴とする磁性材料の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の磁性材料の製造方法において、
    前記フッ化処理する工程により、Th2Zn173が生成することを特徴とする磁性材料の製造方法。
  8. 請求項5乃至7のいずれかに記載の磁性材料の製造方法において、
    前記有機溶媒は沸点が50℃以上でフッ素化合物の融点以下の物質であることを特徴とする磁性材料の製造方法。
  9. 請求項5乃至7のいずれかに記載の磁性材料の製造方法において、
    前記有機溶媒はヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン及びメタノールのうちのいずれかであることを特徴とする磁性材料の製造方法。
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