以下、本発明を、車両用のステアリングホイールに内装されるエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図1〜図22を参照して説明する。
図1に示すように、車両の運転席よりも前方には、回転軸線L1を中心として回転するステアリングシャフト(操舵軸)11が、運転席側(後側、図1の左側)ほど高くなるように傾斜した状態で配設されている。ステアリングシャフト11の後端部には、ステアリングホイール12が一体回転可能に取付けられている。
なお、本実施形態では、ステアリングホイール12の各部について説明する際には、ステアリングシャフト11の回転軸線L1を基準とする。この回転軸線L1に沿う方向をステアリングホイール12の「前後方向」といい、回転軸線L1に直交する面に沿う方向のうち、ステアリングホイール12の起立する方向を「上下方向」というものとする。従って、ステアリングホイール12の前後方向及び上下方向は、車両の前後方向(水平方向)及び上下方向(鉛直方向)に対し傾いていることとなる。
また、回転操作されるステアリングホイール12の位置を特定するために、本実施形態では、車両が直進しているときのステアリングホイール12の状態、すなわち中立状態を基準に、「上」、「下」、「左」、「右」を規定するものとする。従って、ステアリングホイール12の左右方向は、車両の幅方向(車幅方向)と同一となる。
ステアリングホイール12は、リム部(ハンドル部、リング部と呼ばれることもある)13、パッドカバー20、ロアカバー14及びスポーク部(図1では隠れた箇所にあり、見えない)を備えている。パッドカバー20及びロアカバー14によってパッド部が構成されている。
リム部13は、上記ステアリングシャフト11を中心とした略円環状をなしている。パッドカバー20は、リム部13の中央部分に配置されている。ロアカバー14は、同中央部分においてパッドカバー20の前側に配置されている。スポーク部は、リム部13及びパッドカバー20間に設けられている。
ステアリングホイール12の上記構成部材(リム部13、スポーク部)の各内部、及びパッドカバー20とロアカバー14とによって囲まれた空間には、鉄、アルミニウム、マグネシウム、又はこれらの合金等によって形成された芯金15(図12参照)が配設されている。芯金15は、ステアリングホイール12の骨格部分をなすものである。
パッドカバー20とロアカバー14とによって囲まれた空間には、上記芯金15に加え、エアバッグ装置が配設されている。図3及び図4に示すように、エアバッグ装置は、車両の前面衝突(前突)等により、車両に対し前方から衝撃が加わった場合に、インフレータ(ガス発生器)80からガスGをエアバッグ60に供給し、そのエアバッグ60を運転者の前方で膨張させて、運転者に伝わる衝撃を緩和するための装置である。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール12の振動を抑制(制振)するための制振構造を有している。
エアバッグ装置は、上述したパッドカバー20、インフレータ80及びエアバッグ60を備えるほか、バックホルダ40、カップリテーナ70、支持プレート90及びガスプレート115を備えている。これらの部材のうちバックホルダ40はエアバッグ装置の骨格部分をなし、他の構成部材は、このバックホルダ40に取付けられる。なお、パッドカバー20はステアリングホイール12(パッド部)の構成部材の1つであるが、ここではエアバッグ装置の構成部材も兼ねている。次に、エアバッグ装置のこれらの構成部材について説明する。
<バックホルダ40>
図12及び図13に示すように、バックホルダ40は、硬質材料である金属の板材をプレス加工することによって形成されており、中央部に円形の挿入孔41を有している(図19参照)。バックホルダ40は、正面視で略矩形の外形形状を有している。なお、図11では、エアバッグ60の図示が割愛されている。バックホルダ40は、大きくは、ステアリングシャフト11の径方向についての外側部分を構成する基部42と、内側部分を構成する段差部43とからなる。段差部43は、前後方向については、基部42よりも後側に一定距離離れた箇所に位置している。
図11及び図20(B)に示すように、基部42において、挿入孔41の周りの複数箇所(6箇所)には、係止孔が形成されている。これらの係止孔は、挿入孔41の下側に設けられた一対の第1係止孔44と、挿入孔41の上側に設けられた一対の第2係止孔45と、挿入孔41の左右両側に1つずつ設けられた第3係止孔46とからなる。両第1係止孔44は、間に間隙をおいて左右方向にそれぞれ延びる長孔によって構成されている。両第2係止孔45は、間に間隙をおいて左右方向にそれぞれ延びる長孔によって構成されている。各第3係止孔46は、上下方向へ延びる長孔によって構成されている。両第1係止孔44及び両第2係止孔45は、挿入孔41を挟んで上下に相対向しており、両第3係止孔46は、挿入孔41を挟んで左右に相対向している。
基部42において係止孔44〜46とは異なる箇所には、被接触部47が設けられている。この被接触部47は、上記回転軸線L1に略直交する平板状に形成されている(図12、図13参照)。
上記基部42において、挿入孔41の周りの複数箇所(3箇所)には、取付孔48を有する取付部49が、それぞれステアリングシャフト11の径方向についての外方へ突出するように形成されている。取付部49毎の取付孔48には、車両に設けられたホーン装置(図示略)を作動させるためのホーンスイッチ機構HS(図12参照)が取付けられている。各ホーンスイッチ機構HSは、ステアリングホイール12の芯金15に支持されている。この支持により、エアバッグ装置は、芯金15に対しフローティング状態となり、各ホーンスイッチ機構HSを変形させることにより前後方向へ移動(変位)可能である。
段差部43において、挿入孔41の周りの複数箇所(4箇所)には、被締結部としてのボルト挿通孔51〜54が、等角度(90度)毎にあけられている。
<パッドカバー20>
図4及び図9に示すように、パッドカバー20は、蓋部22と、その蓋部22から前方へ突出する環状の収容壁部23とを有している。パッドカバー20は、合成樹脂によって形成されており、バックホルダ40の後側に配置されている。これらの蓋部22及び収容壁部23は、バックホルダ40との間に収容空間24を形成している。
蓋部22の後面の略中央部分には、横長略楕円形の凹部25が設けられている。この凹部25には、パッドカバー20の外観品質(意匠性)を高めるための硬質の装飾部材(図示略)が装着されている。
図2において破線で示すように、蓋部22には、その前側から溝を設けることにより、同蓋部22の他の箇所よりも厚みの小さな線状の破断予定部(以下「テアライン」という)26が形成されている。テアライン26は、正面視で装飾部(凹部25)から左右方向へ離れた箇所において、それぞれ上下方向に延びる2本の縦ライン部26Aと、上下方向についての略中央部分において、略左右方向に延びて両縦ライン部26Aに繋がる1本の横ライン部26Bとからなる。
横ライン部26Bの中間部分は、正面視で装飾部(凹部25)の上縁部から上方へ一定距離離れた箇所に設けられている。これは、エアバッグ60から高い押圧力を受けたときに、硬質樹脂製の装飾部に欠けや割れを生じさせることなく、テアライン26の設けられた箇所のみにおいて蓋部22を破断させるためである。
蓋部22は、上記テアライン26によって2つの領域に仕切られている。2つの領域とは、蓋部22の略下側の1つの第1領域Z1、及び蓋部22の略上側の1つの第2領域Z2である。第1領域Z1は凹部25を含み、第2領域Z2は凹部25を含んでいない。そのため、第1領域Z1は第2領域Z2よりも大きくなっている。
テアライン26の設けられた箇所では、蓋部22の厚みが小さいことから、蓋部22の他の箇所よりも強度が低くなっており、エアバッグ60が展開膨張したときに、このテアライン26において蓋部22が破断される。蓋部22において第1領域Z1の下部には、左右方向に延びるヒンジ部27が設定され、第2領域Z2の上部には、左右方向に延びるヒンジ部28が設定されている。なお、図4では、これらのヒンジ部27,28が点(・)によって示されている。
図3及び図4に示すように、収容壁部23の複数箇所(6箇所)には係止部が設けられている。これらの係止部は、収容壁部23の下側部に設けられた一対の第1係止部31と、収容壁部23の上側部に設けられた一対の第2係止部32と、収容壁部23の左右両側部に1つずつ設けられた第3係止部33とからなる。両第1係止部31は、上記両第1係止孔44とともに上記第1領域Z1の前方に位置している。また、両第2係止部32は、上記両第2係止孔45とともに上記第2領域Z2の前方に位置している。
両第1係止部31は、左右方向に互いに離間した状態で前方へ延びている。第2係止部32は、左右方向に互いに離間した状態で前方へ延びている。各第3係止部33は、収容壁部23の上下方向についての略中央部分から前方へ延びている。両第1係止部31及び両第2係止部32は上下に相対向しており、両第3係止部33は左右に相対向している。
図5及び図6に示すように、各係止部31〜33は、いずれも矩形板状をなす本体部34と、本体部34の前部においてステアリングシャフト11の径方向についての外方へ突出する爪部35とによって構成されている。
各係止部31〜33では、爪部35が基部42の前側で各係止孔44〜46よりも、ステアリングシャフト11の径方向についての外方に位置している。この爪部35と係止孔44〜46との位置関係により、パッドカバー20はバックホルダ40に係止され、後方への移動を規制されている。
各係止部31〜33の最大厚み(爪部35が最も多く膨出している箇所での厚み)T1は、各係止孔44〜46の幅W1よりも若干狭く設定されている。これは、各係止部31〜33を各係止孔44〜46に挿通させるために必要な条件である。
<エアバッグ60>
図4及び図9に示すように、エアバッグ60は、ガスにより膨張する袋体であり、強度が高く、かつ可撓性を有する織布等の布によって形成されている。エアバッグ60は、膨張したときに、ステアリングホイール12と運転者との間の領域を占有する大きさを有している。
エアバッグ60において、膨張したときに前側上部となる箇所には、ガスの排出孔(ベントホール、図示略)があけられている。ベントホールは、余剰のガスをエアバッグ60の外部へ排出して、エアバッグ60の内圧を、乗員の保護に適した値となるように調整(調圧)するためのものである。
エアバッグ60は、袋の開口61を自身の前端部に有している(図15参照)。エアバッグ60において開口61の周りで円環状をなす部分(以下「周辺部62」という)は、同エアバッグ60の他の箇所よりも強度を高められている。この周辺部62において開口61の周りの複数箇所(4箇所)には、ボルト挿通孔63が等角度(90度)毎にあけられている。この周辺部62は、バックホルダ40の段差部43の後側に配置されている。
エアバッグ60の上記周辺部62を除く多くの部分は、図示しないが、折り畳まれることによりコンパクトな形態にされて、上記収容空間24に配置されている。
<カップリテーナ70>
図16に示すように、カップリテーナ70は、特許請求の範囲におけるリテーナに相当するものであり、導電性を有する金属の板材をプレス加工することにより形成されている。カップリテーナ70は、バッグ取付部71、複数のアーチ部72、カバー部73及び複数のバッグ覆い部74を備えている。カップリテーナ70は、上記開口61を通じてエアバッグ60の内部に挿入されている。
バッグ取付部71は、カップリテーナ70の主要部をなす箇所であり、環状をなしている。バッグ取付部71は、正面視で略矩形の外形形状を有している。バッグ取付部71の大部分は略平板状をなしており、エアバッグ60の周辺部62の後側に配置されている。
バッグ取付部71において、周方向についての複数箇所(4箇所)には、締結部としてのボルト76〜79が等角度(90度)毎に挿通されて固定されている。これらのボルト76〜79としては、互いに同一の径を有するものが用いられている。
図4及び図8に示すように、各ボルト76〜79は、バッグ取付部71から前方へ延びており、エアバッグ60及びバックホルダ40の各ボルト挿通孔63,51〜54に挿通されている。エアバッグ60のボルト挿通孔63へのボルト76〜79の挿通により、同エアバッグ60がボルト76〜79を通じてカップリテーナ70に係止されている。また、バックホルダ40のボルト挿通孔51〜54へのボルト76〜79の挿通により、カップリテーナ70がバックホルダ40に係止されている。
図16に示すように、複数のアーチ部72は、バッグ取付部71の内縁部において、周方向についての複数箇所から、それぞれ互いに離間した状態で後方へ延びている。ここでの複数箇所は、上記各ボルト76〜79から周方向へ離れた箇所、表現を変えると、隣り合うボルト76〜79間となる箇所である。
カバー部73は、上記バッグ取付部71から後方へ離間した箇所に位置しており、ここに、各アーチ部72の後端部が繋がっている。カバー部73には、複数のガス放出口73Aが形成されている。
各バッグ覆い部74は、エアバッグ60の周辺部62を覆うためのものであり、バッグ取付部71の内縁部からステアリングシャフト11の径方向についての内方へ延出している。各バッグ覆い部74は、バッグ取付部71の内縁部であって、隣り合うアーチ部72間の略全領域にわたって設けられている。従って、各バッグ覆い部74は、バッグ取付部71の内縁部であって、ステアリングシャフト11の径方向について、少なくともボルト76〜79によるバッグ取付部71のバックホルダ40に対する締結部分の内方に位置していることとなる。
<インフレータ80>
図4及び図9に示すように、インフレータ80の主要部は、ステアリングシャフト11の回転軸線L1を中心とする略円柱状の本体部81によって構成されている。本体部81は、バックホルダ40の挿入孔41、カップリテーナ70において複数のバッグ覆い部74によって囲まれた空間、及びエアバッグ60の開口61のいずれよりも若干小径に形成されている。本体部81の後部は、挿入孔41、開口61等に挿入されている。
本体部81には、エアバッグ60を膨張させるためのガスGを発生するガス発生剤(図示略)が収容されている。本体部81の外周面には、複数のガス噴出孔82が周方向に略等角度毎に設けられており、ガスGが各ガス噴出孔82からステアリングシャフト11の径方向についての外方へ噴出される。
上記本体部81の外周面上であって、各ガス噴出孔82よりも前側、かつバックホルダ40の挿入孔41よりも前側となる箇所には、その外周面の全周にわたってフランジ83が形成されている。フランジ83において、本体部81の周りの複数箇所(4箇所)には、同フランジ83の他の箇所よりも径方向外方へ多く延出する取付片83Aが形成されており、ここに締結用挿通孔(リベット挿通孔)84があけられている(図7参照)。
また、インフレータ80の前部にはコネクタ85が組付けられており、インフレータ80への作動信号の入力配線となるハーネス87が、コネクタ85に接続されている(図3参照)。
なお、インフレータ80としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断してガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。
<支持プレート90>
支持プレート90は、硬質材料である金属の板材をプレス加工することによって環状に形成されており、中央部に連通孔91を有している。支持プレート90は、ステアリングシャフト11の径方向についての外側部分を含む同支持プレート90の大部分を構成する環状の支持基部92と、内側部分を構成する円弧状のカバー部93を備えている。支持基部92の大部分は、バックホルダ40の基部42の前側に配置されている。支持基部92の外形形状は、正面視で矩形状をなしている。
図4及び図8に示すように、支持基部92において、連通孔91の周りの複数箇所(4箇所)には、ボルト挿通孔94が等角度(90度)毎にあけられている(図14参照)。支持基部92の後側であって各ボルト挿通孔94と同一軸線上にはカラー(円筒状のスペーサ)95が配置されている。各カラー95は、支持プレート90の一部を構成するものとして用いられ、後述する弾性部97によって支持基部92とともに被覆されることで、同支持基部92に対し一体となっている。カラー95の内周面の後部は、後側ほど拡径するテーパ面95Aによって構成されている。
そして、カップリテーナ70から延びて、エアバッグ60及びバックホルダ40の各ボルト挿通孔63,51〜54に挿通されたボルト76〜79が、カラー95と、支持基部92のボルト挿通孔94とに挿通されている。支持基部92から前方へ露出する各ボルト76〜79にナット96が締付けられている。これらの締付けにより、カップリテーナ70及び支持プレート90がバックホルダ40に締結されている。このように締結された状態では、カップリテーナ70の複数のアーチ部72は、バッグ取付部71のボルト76〜79によるバックホルダ40に対する締結部分から周方向に離れた箇所、すなわち、隣り合うボルト76〜79間に位置する(図16参照)。また、エアバッグ60における開口61の周辺部62が、カップリテーナ70及びバックホルダ40によって前後から挟み込まれている。弾性部97の一部は、ステアリングシャフト11の径方向について、支持基部92の内側部から後方へ突出する弾性突部100となっている。弾性突部100は、インフレータ80の本体部81を非接触状態で取り囲んでいる。また、弾性突部100は、インフレータ80のフランジ83から前方へ離間している。
図12及び図13に示すように、支持基部92において、上記バックホルダ40の段差部43における被接触部47の前方となる箇所は、ステアリングシャフト11の回転軸線L1に対し略直交する平板状に形成されている。そして、バックホルダ40に組付けられた状態では、支持プレート90は上記箇所において、バックホルダ40の被接触部47に対し、弾性部97を介さず直接接触(メタルタッチ)、この場合、面接触するように構成されている。
カバー部93は、インフレータ80の前側外周部を離間状態で覆っている。カバー部93によって囲まれた空間は、主として、インフレータ80の上記ハーネス87を前方へ引き出す際に、同ハーネス87が配策される箇所である。
支持プレート90の多くの部分は、合成ゴム、エラストマー等の弾性材料からなる弾性部97によって被覆されている。支持プレート90には、支持基部92から後方へ突出するシール部98が、上記弾性部97の一部として設けられている。シール部98の後端部であって、ステアリングシャフト11の径方向についての複数箇所(本実施形態では2箇所)には、シール突起98Aが一体に設けられており、これらのシール突起98Aがバックホルダ40の段差部43に弾性変形した状態で接触している。この接触により、シール部98はバックホルダ40及び支持プレート90間をシールする。なお、図13中、シール突起98Aにおいて段差部43と重複している部分は、同シール突起98Aが弾性変形する前の状態を示している。
図4及び図7に示すように、支持プレート90には、上記インフレータ80を弾性支持するための構造が設けられている。詳しくは、支持基部92において、連通孔91の周りの複数箇所(4箇所)には、孔99が等角度(90度)毎にあけられている。支持基部92には、上記各孔99の内壁面から後方へ延びる筒状の弾性支持部101が設けられている。各弾性支持部101は、その前端部において、上記弾性部97に繋がっている。
これらの弾性支持部101は、上述したインフレータ80とともにダイナミックダンパを構成するものである。本実施形態では、これらの弾性支持部101をダイナミックダンパのばねとして機能させ、インフレータ80をダンパマスとして機能させるようにしている。
なお、各弾性支持部101は弾性部97とは別に形成されてもよい。この場合、各弾性支持部101は、例えば、加硫接着により支持基部92に固定されてもよい。また、各弾性支持部101の前端部の外周に縮径部が設けられ、この縮径部が支持基部92の孔99に嵌入されることにより、弾性支持部101が支持基部92に係止されてもよい。この場合には、孔99は、支持基部92に対する弾性支持部101の位置ずれを規制する。
ここで、各弾性支持部101の大きさ、径方向の厚み、前後方向の長さ等をチューニングすることで、ダイナミックダンパの上下方向や左右方向についての共振周波数が、ステアリングホイール12の上下方向や左右方向の振動について、狙いとする制振の周波数(制振したい周波数)に設定されている。
弾性支持部101の後端面には、金属製のリベット102が加硫接着等によって固定されている。リベット102の後部は、後端が開放された筒状をなしており、フランジ83の取付片83A毎の締結用挿通孔(リベット挿通孔)84に挿通されている。この挿通されたリベット102を通じ、フランジ83が弾性支持部101に係止されている。
支持プレート90には、バックホルダ40の各係止孔44〜46に挿通された、パッドカバー20の各係止部31〜33を同係止孔44〜46の内壁面に押付けるための構造が設けられている。次に、この構造について説明すると、図5及び図14に示すように、支持基部92の下縁部の2箇所には、それぞれ第1押付片103が後方へ延びるように曲げ形成されている。両第1押付片103は、上記両第1係止部31及び両第1係止孔44とともに上記第1領域Z1の前方に位置している(図4参照)。各第1押付片103の上記曲げ形成は、支持プレート90がバックホルダ40に組付けられた状態で、同第1押付片103が第1係止孔44内、又はその近傍で第1係止部31に当接するように行なわれている。
図6及び図14に示すように、支持基部92の上縁部の2箇所には、それぞれ第2押付片106が前方へ延びるように曲げ形成されている。より詳しくは、各第2押付片106は、前側ほど、ステアリングシャフト11の径方向について支持プレート90の外側に位置するように傾斜する第2傾斜部107を備えている。表現を変えると、第2傾斜部107は、前側ほど第2係止部32に近づくように傾斜している。両第2押付片106は、上記両第2係止部32及び両第2係止孔45とともに上記第2領域Z2の前方に位置している(図4参照)。各第2押付片106の上記曲げ形成は、支持プレート90がバックホルダ40に組付けられた状態で、先端部(角部)が第2係止孔45から前方へ離れた箇所で第2係止部32に当接するように行なわれている。
図10及び図14に示すように、支持基部92の左右両側縁部において、上下方向についての中央部には、第3押付片108がそれぞれ曲げ形成されている。より詳しくは、各第3押付片108は、後側ほど、ステアリングシャフト11の径方向について支持プレート90の外側に位置するように傾斜する第3傾斜部109と、第3傾斜部109の後端部に連続して形成され、かつ後方へ膨らむように湾曲する第3湾曲部110とを備えている。表現を変えると、第3傾斜部109は、後側ほど第3係止部33に近づくように傾斜している。各第3押付片108の先端部(角部)は前方を向いている。各第3押付片108の上記曲げ形成は、支持プレート90がバックホルダ40に組付けられた状態で、先端部(角部)が第3係止孔46内、又はその近傍で第3係止部33に当接するように行なわれている。上記のように構成された各第3押付片108は、全体としては後方へ延びている。
支持プレート90は、上記以外にも次の機能も有する。
(i)インフレータ80が前方へ過剰に移動した場合に受け止める機能。
(ii)インフレータ80の前方に配策されているハーネス87がそのインフレータ80に接触するのを規制して、ハーネス87との接触によりインフレータ80の振動が阻害されるのを抑制する機能。
<ガスプレート115>
図7及び図8に示すように、ガスプレート115は、金属の板材をプレス加工することにより環状に形成されている。ガスプレート115は、取付基部116及び受圧部117を備えている。
取付基部116は略円環状をなしていて、インフレータ80のフランジ83の後側かつ各ガス噴出孔82の前側に配置されている。取付基部116の周方向についての複数箇所(4箇所)には、締結用挿通孔118が等角度(90度)毎にあけられており、ここに上記リベット102の後部が挿通されている。
リベット102の後部は、図7において二点鎖線で示すように、ガスプレート115から後方へ露出している。リベット102の露出部分が、図7において実線で示すように後方から押し潰されて拡径させられる(かしめられる)ことで、リベット102がフランジ83に固定されるとともに、リベット102の拡径部分とフランジ83との間で取付基部116が挟み込まれている。このように、インフレータ80は、ガスプレート115と一緒に、リベット102によって複数の弾性支持部101に締結されている。インフレータ80は、これらの弾性支持部101により支持プレート90、ひいてはバックホルダ40に弾性支持されている。
上記支持プレート90の孔99は、リベット102を押し潰す際に、リベット102を前方から受け止めるための治具(図示略)の挿通孔として使用される。
なお、ガスプレート115は、フランジ83の弾性支持部101との締結部分とは異なる箇所において同フランジ83に固定されてもよい。
ガスプレート115の受圧部117は、ステアリングシャフト11の径方向については、インフレータ80の各ガス噴出孔82と、エアバッグ60の周辺部62との間に位置している。受圧部117は、各ガス噴出孔82から本体部81の径方向外方へ噴出されたガスGの向きを後方へ変え、かつ同ガスGの圧力を受けて前方へ向かう力Fを発生させるためのものである。受圧部117は、ガスプレート115の一部が上記取付基部116の内縁部で屈曲させられることにより形成されている。受圧部117は、後側ほどインフレータ80の本体部81から遠ざかるように略一定の角度で傾斜していて、テーパ状となっている。
ところで、上記の構成を有するエアバッグ装置では、上述したように、エアバッグ60に排気孔(ベントホール)が設けられている。このベントホールは、本来は、エアバッグ60が膨張したときに、同エアバッグ60の前側上部に位置すべきものである。ベントホールをこの箇所に位置させるためには、次の2つの条件が満たされる必要がある。
条件1:エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)で係止されていること。
条件2:上記の条件1を満たしたカップリテーナ70がバックホルダ40に対し、予め定められた姿勢(回転位相)で締結されていること。
これは、条件1を満たしていても、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し、誤った姿勢(回転位相)で締結されると、エアバッグ60が膨張したときにベントホールが正しい箇所(前側上部)に位置しないからである。
すなわち、図15に示すように、エアバッグ60の周辺部62において、ボルト挿通孔63が開口61の周りの複数箇所に等角度毎に設けられ、カップリテーナ70のバッグ取付部71において、複数のボルト76〜79が複数箇所に等角度毎に設けられている。このことから、ボルト76〜79が、バックホルダ40において予め定められたボルト挿通孔51〜54とは異なるボルト挿通孔51〜54に挿通されて締結に供される、すなわち、カップリテーナ70がバックホルダ40に誤組付けされるおそれがある。この場合、カップリテーナ70に係止されているエアバッグ60も、バックホルダ40に対し誤組付けされることとなる。その結果、エアバッグ60が膨張したときにベントホールが正しい箇所(前側上部)に位置しないおそれがある。
条件1を満たすために、エアバッグ60の周辺部62において、特定のボルト挿通孔63から周方向に一定距離離れた箇所には、1つの確認孔65があけられている。また、カップリテーナ70のバッグ取付部71において、3本のボルト77〜79から周方向に一定距離ずつ離れた箇所には、それぞれ被確認孔69があけられている。
これらの被確認孔69のいずれか1つは、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)とは異なる姿勢(回転位相)にされた状態で、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通されたとき、上記確認孔65と合致(連通)する。これに対し、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされた状態で、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通されたとき、いずれの被確認孔69も上記確認孔65と合致(連通)せず、カップリテーナ70のバッグ取付部71が確認孔65において露出する。そのため、確認孔65におけるカップリテーナ70の露出状況により、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通された状態が、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされたうえでなされたものか否かを確認することが可能である。
条件2を満たすために、バックホルダ40のボルト挿通孔51〜54は、図19に示すように、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相となったときに、同カップリテーナ70の全部のボルト76〜79が挿通可能となる箇所に設けられている。
より詳しくは、複数のボルト76〜79は、1つの特定締結部としての特定ボルト76と、残りの通常締結部としての3つの通常ボルト77〜79とからなる。図20(A)に示すように、ステアリングシャフト11の回転軸線L1と合致するインフレータ80の中心Cから、特定ボルト76の軸線までの距離をL2とし、同中心Cから各通常ボルト77〜79の軸線までの距離をL3とすると、L2>L3の関係を満たす箇所に、特定ボルト76及び通常ボルト77〜79が設けられている。
また、図20(B)に示すように、複数のボルト挿通孔51〜54は、1つの特定被締結部としての特定ボルト挿通孔51と、残りの通常被締結部としての3つの通常ボルト挿通孔52〜54とからなる。インフレータ80の中心Cから、特定ボルト挿通孔51の中心までの距離は上記距離L2と同一に設定され、同中心Cから各通常ボルト挿通孔52〜54の中心までの距離は上記距離L3と同一に設定されている。
こうした構成を採用するために、本実施形態では、図20(A),(B)に示すように、通常ボルト77〜79及び通常ボルト挿通孔52〜54が、基準位置から僅かに中心Cに近づく側に偏倚した箇所に設けられている。また、特定ボルト76及び特定ボルト挿通孔51が、基準位置から僅かにインフレータ80の中心Cから遠ざかる側に偏倚した箇所に設けられている。ここでの基準位置とは、全てのボルト及び全てのボルト挿通孔がインフレータの中心Cから等距離ずつ離れた箇所に設けられた一般的なバックホルダにおいて、それらのボルト及びボルト挿通孔の位置である。すなわち、本実施形態では、一般的なカップリテーナ及びバックホルダにおけるボルト及びボルト挿通孔に対し、特定ボルト76及び特定ボルト挿通孔51を径方向外方へ少しずらし、通常ボルト77〜79及び通常ボルト挿通孔52〜54を径方向内方へ少しずらしている。これは、次の理由による。仮に、通常ボルト77〜79及び通常ボルト挿通孔52〜54を、一般的なカップリテーナ及びバックホルダにおけるボルト及びボルト挿通孔と同じ箇所に設け、特定ボルト76及び特定ボルト挿通孔51のみを、インフレータ80の中心Cから大きく遠ざかる箇所に設けた場合には、バックホルダ40、ひいてはエアバッグ装置が大型化する。本実施形態では、この大型化を抑制するために、上記の配置が採用されている。
また、ボルト挿通孔51〜54の1つは他のボルト挿通孔51〜54よりも小径に形成されている。本実施形態では、3つの通常ボルト挿通孔52〜54のうち、インフレータ80の中心Cを挟んで、特定ボルト挿通孔51と対向しないもの(通常ボルト挿通孔54)が、他の通常ボルト挿通孔52,53及び特定ボルト挿通孔51よりも小径に形成されている。この通常ボルト挿通孔54以外のボルト挿通孔51〜53は、互いに同一の孔径に形成されている。
さらに、図3に示すように、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54の組合わせと、それらの近傍に位置する弾性支持部101とは、インフレータ80の中心C(ステアリングシャフト11の回転軸線L1)から略同じ距離離れた箇所ではあるが、インフレータ80の周方向に互いに離間した箇所に設けられている。
次に、上記のように構成された本実施形態のエアバッグ装置の作用について説明する。
最初に、エアバッグ装置の組付け作業について説明する。
この作業の1つに、エアバッグ60をカップリテーナ70に係止する作業がある。この作業に際しては、開口61を通じカップリテーナ70が、折り畳まれた状態のエアバッグ60内に挿入される。この段階では、ベントホールの位置が判りにくく、エアバッグ60の姿勢(回転位相)が判りにくい。図15及び図17(A),(B)に示すように、カップリテーナ70の複数本のボルト76〜79の全てが、エアバッグ60のボルト挿通孔63に挿通される。エアバッグ60は、ボルト挿通孔63に挿通されたボルト76〜79を通じてカップリテーナ70に係止される。
上記挿通の際、エアバッグ60は、可撓性を有する布によって形成されているため、これを変形させることで、4つのボルト挿通孔63の位置関係を変えることが可能である。そのため、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされていてもいなくても、全てのボルト76〜79を全てのボルト挿通孔63に挿通させることは一応可能である。
そこで、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされているかどうかを確認するために、確認孔65において導通検査が行なわれる。導通検査では、導通用の針が確認孔65に通される。確認孔65に対し、いずれかの被確認孔69が合致していて、カップリテーナ70が確認孔65において露出していない場合には、上記針がカップリテーナ70に接触せず、針を通じてカップリテーナ70に電流が流れない(導通しない)。このことから、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)とは異なる姿勢(回転位相)にされた状態で、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通されていることが確認される。また、図15において二点鎖線で示すように、確認孔65に対し、いずれの被確認孔69も合致しておらずカップリテーナ70が確認孔65において露出している場合には、上記針が確認孔65を通じカップリテーナ70の上記露出部分に接触し、針を通じてカップリテーナ70に電流が流れる(導通する)。この導通により、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされた状態で、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通されていることが確認される。
そして、導通検査により導通が確認されたもの、すなわち、エアバッグ60がカップリテーナ70に対し、予め定められた姿勢(回転位相)にされた状態で、ボルト76〜79がボルト挿通孔63に挿通されていることが確認されたもののみが、次作業に送られる。
次作業では、図18〜図20に示すように、カップリテーナ70のボルト76〜79をバックホルダ40のボルト挿通孔51〜54に挿通する作業が行なわれる。この作業に際しては、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し特定の回転位相となるように、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が回転操作される。この回転操作により、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相になると、特定ボルト76が特定ボルト挿通孔51に対向し、通常ボルト77〜79が通常ボルト挿通孔52〜54に対向する。特定ボルト挿通孔51及び特定ボルト76の干渉量(ラップ量)が許容値よりも小さく、特定ボルト76を特定ボルト挿通孔51に挿通することが可能となる。通常ボルト挿通孔52〜54及び通常ボルト77〜79の干渉量(ラップ量)が許容値よりも小さく、通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通することが可能となる。通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通することは、特許請求の範囲において、締結部を被締結部に係合させることに該当する。
また、上記回転操作により、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相とは異なる回転位相になると、特定ボルト76が特定ボルト挿通孔51と対向し、かつ通常ボルト77〜79が通常ボルト挿通孔52〜54と対向する状態とはならない。これは、特定ボルト76及び特定ボルト挿通孔51については、インフレータ80の中心Cからの距離L2が、通常ボルト77〜79及び通常ボルト挿通孔52〜54の中心Cからの距離L3とは異なる箇所(遠い箇所)に設けられているからである。
バックホルダ40は、上述したエアバッグ60とは異なり、硬質材料である金属の板材によって形成されているため、これを変形させて、特定ボルト挿通孔51及び通常ボルト挿通孔52〜54の位置関係を変えることは困難(実質上不可能)である。そのため、ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79についての少なくとも1つの組合わせに関し、ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79の干渉量(ラップ量)が許容値を越える。特定ボルト76を特定ボルト挿通孔51に挿通し、かつ通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通することが困難(実質上不可能)となる。その結果、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し特定の回転位相となっていないにも拘らず、特定ボルト76が特定ボルト挿通孔51に挿通され、かつ通常ボルト77〜79が通常ボルト挿通孔52〜54に挿通される現象(誤組付け)が起こりにくくなる。
そして、カップリテーナ70の上記回転操作により、カップリテーナ70をバックホルダ40に対し特定の回転位相にし、特定ボルト76を特定ボルト挿通孔51に挿通し、かつ通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通すると、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し、正しい姿勢(回転位相)で組付けられる。
ここで、仮に、全てのボルト挿通孔51〜54の孔径が同一であるとすると、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相とは異なる回転位相になった場合、本来は、全てのボルト挿通孔51〜54と全てのボルト76〜79とが対向する状態とはならない。ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79についての少なくとも1つの組合わせに関し、ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79の干渉量(ラップ量)が許容値を越え、ボルト76〜79をボルト挿通孔51〜54に挿通することが困難となる。
しかし、ボルト挿通孔51〜54の孔径の公差、カップリテーナ70におけるボルト76〜79の位置の公差等によっては、全てのボルト挿通孔51〜54と全てのボルト76〜79とが対向するおそれがある。ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79についての全ての組合わせに関し、ボルト挿通孔51〜54及びボルト76〜79の干渉量(ラップ量)が許容値よりも小さく、全ての組合わせにおいて、ボルト76〜79をボルト挿通孔51〜54に挿通することが可能となるおそれがある。
このような場合であっても、本実施形態では、ボルト挿通孔51〜54の1つ(通常ボルト挿通孔54)が他(特定ボルト挿通孔51、通常ボルト挿通孔52,53)よりも小径に形成されている。このことから、ボルト挿通孔51〜54とボルト76〜79との干渉量(ラップ量)が許容値を越え、ボルト76〜79をボルト挿通孔51〜54に挿通することが困難となる。その結果、カップリテーナ70のバックホルダ40に対する誤組付けがより一層起こりにくくなる。
上記のように、特定ボルト76が特定ボルト挿通孔51に挿通され、かつ通常ボルト77〜79が通常ボルト挿通孔52〜54に挿通されることで、カップリテーナ70のバッグ取付部71及びエアバッグ60の周辺部62がバックホルダ40の段差部43に近づく。そして、周辺部62が段差部43及びバッグ取付部71によって挟み込まれる。
続いて、図21及び図22に示すように、パッドカバー20をバックホルダ40に仮止めする作業が行なわれる。この作業に際しては、一対の第1係止部31が対応する第1係止孔44に挿入され、一対の第2係止部32が対応する第2係止孔45に挿入され、各第3係止部33が対応する第3係止孔46に挿入される。これらの挿入作業が、爪部35がバックホルダ40の基部42よりも前側に位置するまで行なわれることで、パッドカバー20がバックホルダ40に仮止めされる。
次に、支持プレート90を、バックホルダ40に組付ける作業が行なわれる。この組付け作業に供される支持プレート90は、弾性支持部101によりインフレータ80及びガスプレート115が弾性支持されたものである。この組付けに際しては、図21において下側の矢印で示すように、支持プレート90がバックホルダ40に前側から近づけられる。各第1押付片103が対応する第1係止部31に当接させられ、第2押付片106が第2係止部32に当接させられる。
ここで、支持プレート90をバックホルダ40に近づける方向を、組付方向というものとすると、組付方向と同じ方向である後方を向いている各第1押付片103の先端部(角部)が、対応する第1係止部31と干渉しやすい。これに対し、組付方向とは逆方向である前方を向いている各第2押付片106の先端部(角部)は対応する第2係止部32と干渉しにくい。従って、押付片103,106の先端部(角部)がともに、組付方向と同じ方向である後方を向いている場合に比べ、支持プレート90をバックホルダ40に近づけていった場合に起こる、押付片103,106の係止部31,32との干渉が少ない。
また、各第1押付片103の対応する第1係止部31との干渉の度合いは、各第1押付片103を第1係止部31に当接させる作業が、各第2押付片106を第2係止部32に当接させる作業と同時に行なわれる場合や、後に行なわれる場合に大きくなる。これは、各第2押付片106が第2係止部32に当接していて、各第1押付片103の動き代(可動範囲)が制限されて、狭くなるからである。
この点、本実施形態では、支持プレート90のバックホルダ40への組付けに際し、まず、支持プレート90は、各第1押付片103が各第2押付片106よりもバックホルダ40に近づくように傾斜させられた姿勢にされる。傾斜した姿勢の支持プレート90が、その姿勢を維持されながらバックホルダ40に近づけられると、各第2押付片106の第2係止部32との当接に先立ち、各第1押付片103が第1係止部31に当接される。このときの、各第1押付片103の先端部(角部)の第1係止部31との干渉の度合いは小さい。各第2押付片106が第2係止部32に当接しておらず、各第1押付片103の動き代(可動範囲)が広いからである。
また、支持プレート90が傾斜した姿勢では、各第1押付片103もまた後側ほど、ステアリングシャフト11の径方向について支持プレート90の内側(図21の上側)に位置するように(第1係止部31から遠ざかるように)傾斜した状態となる。そのため、各第1押付片103は、先端部(角部)においてではなく、それよりも前側において第1係止部31に当接する。従って、第1押付片103の先端部(角部)は、この点においても、第1係止部31と干渉しにくい。
次いで、各第1押付片103の第1係止部31との当接箇所を支点として、上記傾斜姿勢の支持プレート90が、図21の上側の矢印で示すように、バックホルダ40側(後側)へ回動される。この回動に伴い、各第2押付片106及び各第3押付片108(図22参照)がバックホルダ40に近づく。
支持プレート90の上記回動の過程で、同支持プレート90に固定された各カラー95が、カップリテーナ70に固定されたボルト76〜79に近づき、同ボルト76〜79が対応するカラー95に挿入される。この際、カラー95の内周面の後部が、後側ほど拡径するテーパ面95Aによって構成されているため、こうしたテーパ面95Aが形成されていない場合に比べ、ボルト76〜79がカラー95内に入り込みやすい。
また、支持プレート90の上記回動の過程で、インフレータ80の本体部81、及びガスプレート115の受圧部117が、バックホルダ40の挿入孔41、エアバッグ60の開口61、及びカップリテーナ70にそれぞれ挿入される。また、図9及び図10に示すように、左右の各第3押付片108が対応する第3係止孔46に挿入される。
この際、各第3押付片108は、全体としては後方へ延びているものの、その先端部(角部)が、上記組付方向とは逆方向である前方を向いている。そのため、各第3押付片108の先端部(角部)は、後方を向いている場合に比べ、第3係止部33と干渉を起しにくい。また、各第3押付片108では、第3湾曲部110が、先端部(角部)よりも、支持プレート90の回動方向についての前側に位置しているが、後方へ膨らむように湾曲している。そのため、第3湾曲部110は、支持プレート90の上記回動の際に各第3係止部33と干渉しにくい。
挿入される両第3押付片108は、第3湾曲部110の端部において、第3係止部33に対し、ステアリングシャフト11の径方向についての内側から弾性的に接触し、第3係止部33を第3係止孔46の内壁面に押付ける。
各第1押付片103が対応する第1係止部31に当接された状態で、支持プレート90がさらに回動されると、図4及び図6に示すように、第2押付片106が第2係止部32に当接される。このときには、上述したように、第2押付片106の先端部(角部)が前方を向いていることから第2係止部32と干渉しにくい。また、各第2押付片106では、第2傾斜部107が前側ほど、ステアリングシャフト11の径方向について支持プレート90の外側に位置するように(第2係止部32に近づくように)傾斜している。表現を変えると、第2傾斜部107は、その後側ほど第2係止部32との間隔が大きくなるように傾斜している。そのため、各第2押付片106は、第2傾斜部107の後端部ではなく前端部において第2係止部32に当接する。従って、第2傾斜部107の後端部の第2係止部32との干渉も抑制される。
このように、第1押付片103の第1係止部31に対する当接、及び第2押付片106の第2係止部32に対する当接がしやすい。そして、係止部31〜33の弾性に抗して、上記当接が行なわれることにより、第1係止部31が第1係止孔44の内壁面に押付けられるとともに、第2係止部32が第2係止孔45の内壁面に押付けられる。すなわち、各第1係止部31に対し、各第1押付片103が、ステアリングシャフト11の径方向についての内側から弾性的に当接することで、第1係止部31が第1係止孔44の内壁面に押付けられる。また、各第2係止部32に対し、各第2押付片106の第2傾斜部107の端部が、ステアリングシャフト11の径方向についての内側から弾性的に当接することで、第2係止部32が第2係止孔45の内壁面に押付けられる。
また、各第2押付片106の第2係止部32との当接と略同時に、各第3押付片108の略全体が第3係止孔46内に入り込み、第3係止部33が第3係止孔46の内壁面に押付けられる。
また、図12及び図13に示すように、支持プレート90から後方へ突出するシール部98が、複数のシール突起98Aにおいてバックホルダ40の段差部43に接触する。その後も支持プレート90の回動が続けられると、上記シール突起98Aが弾性変形させられ(押し潰され)、段差部43に弾性接触する。
金属の板材によって形成された硬質の基部42の被接触部47に対し、同じく金属の板材によって形成された硬質の支持プレート90が接触させられることで、支持プレート90のそれ以上の回動が規制されて、ステアリングシャフト11に沿う方向(前後方向)における支持プレート90の位置決めが行なわれる。この位置決めは、金属の板材同士の接触(メタルタッチ)により行なわれることから、支持プレート90が、弾性を有するシール部98(シール突起98A)において被接触部47に接触される場合よりも高い精度で行なわれる。
特に、本実施形態では、基部42の被接触部47と、支持プレート90において被接触部47の前方となる箇所とは、ともにステアリングシャフト11の回転軸線L1に略直交する平板状に形成されていることから、被接触部47と支持プレート90とは広い面で面接触することとなり、支持プレート90の上記位置決めがより一層精度よく行なわれる。
上記のように位置決めされた状態では、各第1押付片103は、図5に示すように第1係止孔44内、又はその近傍で第1係止部31に弾性的に当接し、第1係止部31を第1係止孔44の内壁面に押付ける。各第1押付片103は、第1係止部31が、ステアリングシャフト11の径方向についての内側へ撓むのを規制し、同第1係止部31を、爪部35が第1係止孔44に係止された状態に保持する。
また、各第2押付片106は、図6に示すように、第2傾斜部107の先端部(角部)において、第2係止部32に弾性的に接触し、第2係止部32を第2係止孔45の内壁面に押付ける。各第2押付片106は、第2係止部32がステアリングシャフト11の径方向についての内側へ撓むのを規制し、同第2係止部32を、爪部35が第2係止孔45に係止された状態に保持する。
さらに、各第3押付片108は、図10に示すように、第3湾曲部110の端部において、第3係止部33に対し径方向内側から弾性的に当接し、第3係止部33を第3係止孔46の内壁面に押付ける。各第3押付片108は、第3係止部33がステアリングシャフト11の径方向についての内側へ撓むのを規制し、同第3係止部33を、爪部35が第3係止孔46に係止された状態に保持する。
また、図8に示すように各ボルト76〜79が、対応するカラー95及びボルト挿通孔94を通り、そのボルト76〜79の先端部が支持プレート90から露出する。これらのボルト76〜79の露出部分にナット96が締付けられることにより、支持プレート90がバックホルダ40に組付けられて、ステアリングホイール12内にエアバッグ装置が内装される。
このエアバッグ装置では、インフレータ80が弾性支持部101及び支持プレート90を介してバックホルダ40に弾性支持されている。
上記エアバッグ装置では、カップリテーナ70及びバックホルダ40を締結するためのボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54と、インフレータ80を弾性支持する弾性支持部101とが、インフレータ80の径方向についての寸法に影響を及ぼす。ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54と、弾性支持部101とが上記径方向に離れるに従い、エアバッグ装置は、上記径方向に大きくなる傾向にある。
この点、本実施形態では、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54と、それらの近傍に位置する弾性支持部101とが、インフレータ80の中心Cから略同じ距離離れた箇所に位置する。こうした位置関係は、弾性支持部101をボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54に対し、インフレータ80の周方向に離間した箇所に設けることで実現されている。弾性支持部101と、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54との干渉は回避されている。
そのため、ステアリングシャフト11の径方向についてのエアバッグ装置の寸法は、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54と弾性支持部101とが、インフレータ80の中心から異なる距離離れた箇所に位置するものよりも小さくなる。
次に、エアバッグ装置、及びそのエアバッグ装置が内装されたステアリングホイール12の作用について説明する。
本実施形態のステアリングホイール12では、運転者が図12に示すパッドカバー20を前方へ押圧することにより、バックホルダ40がエアバッグ装置の他の構成部品を伴って前方へ変位する。この変位により、ホーンスイッチ機構HSが閉成して、ホーン装置が作動(鳴動)する。
また、車両に対し、前面衝突(前突)等による前方からの衝撃が加わらないときには、インフレータ80の各ガス噴出孔82からガスGが噴出されず、エアバッグ60が折り畳まれた状態に維持される。
上記エアバッグ60の非膨張時であって、車両の高速走行中や車載エンジンのアイドリング中に、ステアリングシャフト11を通じ、ステアリングホイール12に対し、上下方向や左右方向の振動が伝わる場合がある。この振動は、エアバッグ装置では、バックホルダ40、各弾性支持部101等を介してインフレータ80に伝わる。この際、図7及び図8に示すように、インフレータ80のフランジ83は、支持プレート90の弾性突部100から後方へ離れていて、両者83,100間の隙間が、インフレータ80の振動を許容する。
上記振動に応じて、エアバッグ装置では、インフレータ80がダイナミックダンパのダンパマスとして機能し、支持プレート90の各弾性支持部101がダイナミックダンパのばねとして機能する。
例えば、ステアリングホイール12が所定の周波数で上下方向へ振動すると、その周波数と同一又は近い共振周波数で各弾性支持部101が弾性変形しながら、インフレータ80と、これに一体に設けられたガスプレート115とを伴って上下方向に振動(共振)し、ステアリングホイール12の上下方向の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール12の上下方向の振動が抑制(制振)される。
また、ステアリングホイール12が所定の周波数で左右方向へ振動すると、その周波数と同一又は近い共振周波数で各弾性支持部101が弾性変形しながらインフレータ80とガスプレート115とを伴って左右方向へ振動し、ステアリングホイール12の左右方向の振動エネルギーを吸収する。この吸収により、ステアリングホイール12の左右方向の振動が抑制(制振)される。
このようにして、本実施形態では、ステアリングホイール12について、上下及び左右のいずれの方向についても振動が抑制(制振)される。
エアバッグ装置では、図9に示すように、ステアリングシャフト11の径方向についてインフレータ80の外側にカップリテーナ70のアーチ部72が位置する。表現を変えると、上記径方向については、インフレータ80とエアバッグ60との間にカップリテーナ70のアーチ部72が位置する。このアーチ部72は、エアバッグ60の非膨張時に、上記径方向についてのエアバッグ60の動きを規制し、同エアバッグ60のインフレータ80との干渉を抑制する。また、インフレータ80の後側にはカップリテーナ70のカバー部73が位置する。このカバー部73は、エアバッグ60の非膨張時にエアバッグ60の前方への動きを規制し、同エアバッグ60のインフレータ80との干渉を抑制する。そのため、インフレータ80の振動がエアバッグ60によって妨げられにくい。
ところで、前突等により車両に対し前方から衝撃が加わると、慣性により運転者が前傾しようとする。一方、エアバッグ装置では、前記衝撃に応じインフレータ80が作動させられ、各ガス噴出孔82からガスGが径方向外方へ噴出される。
上記のように噴出されたガスGは、後側ほど本体部81から遠ざかるように傾斜している受圧部117に当たり、流れの向きを、図7及び図8において実線の矢印で示すように、ステアリングシャフト11の径方向についての外方から後方へ変えられる。この向きを変えられたガスGは、エアバッグ60内に供給される。このガスGにより、エアバッグ60が後側(運転者側)へ向けて、折り状態を解消(展開)しながら膨張する。この展開膨張するエアバッグ60により、パッドカバー20の蓋部22に対し、後方へ向かう押圧力が加わる。蓋部22がテアライン26において破断されるまでは、エアバッグ60の展開膨張が規制される。
また、各ガス噴出孔82からのガスGの圧力は、上記のように傾斜している受圧部117によって受けられ、図7及び図8において白抜きの矢印で示すように、同受圧部117において前方へ向かう力Fが発生される。この力Fにより、ガス噴出孔82からのガスGの噴出開始直後からインフレータ80が各弾性支持部101を弾性変形させながら前方へ移動し、弾性突部100に接触する。この接触により、インフレータ80と支持プレート90との間がシールされた状態となり、連通孔91からのガス漏れが抑制される。
エアバッグ60がパッド部の内部(パッドカバー20及びロアカバー14間)で膨張するときには、その膨張がパッド部によって制限されるため、時間の経過に伴い同エアバッグ60の内圧が急激に上昇する。ガスGにより前方へ移動させようとする力がインフレータ80に加わるようになる。この力と、受圧部117による上記力Fとによって、インフレータ80は弾性突部100に強く接触する。そして、エアバッグ60の内圧は、同エアバッグ60がパッド部から飛び出す直前に最も高くなる。
上記展開膨張するエアバッグ60により、パッドカバー20の蓋部22に加わる押圧力が増大していくと、同蓋部22がテアライン26において破断される。この破断により、図4において二点鎖線で示すように、第1領域Z1は、その下部のヒンジ部27を支点として下方へ開き(回動し)、第2領域Z2は、その上部のヒンジ部28を支点として上方へ開く(回動する)。
この際、エアバッグ60からパッドカバー20に加わる後方へ向かう力は、第1領域Z1において第2領域Z2におけるよりも大きい。第1領域Z1が第2領域Z2よりも大きいからである(図2参照)。
一方、エアバッグ60から第1領域Z1に加わる上記力は、その第1領域Z1の前方に設けられた第1係止部31に伝わる。第1係止孔44に対する第1係止部31の係止箇所に対し、後方へ向かう大きな負荷が加わる。そのため、第1係止部31が第1係止孔44から抜け出ないようにするには、第1係止部31が第1押付片103によって第1係止孔44の内壁面に強く押付けられること、すなわち、第1係止部31が第1係止孔44に対し、大きな締結力で締結されていることが要求される。
また、エアバッグ60から第2領域Z2に加わる上記力は、その第2領域Z2の前方に設けられた第2係止部32に伝わる。第2係止孔45に対する第2係止部32の係止箇所に対し、後方へ向かう小さな負荷が加わる。そのため、第2係止部32が第2係止孔45から抜け出ないようにするには、第2係止部32が第2押付片106によって第2係止孔45の内壁面に押付けられる力は、第1係止部31が第1押付片103によって第1係止孔44の内壁面に押付けられる力ほど大きくなくてもすむ。すなわち、第2係止部32の第2係止孔45に対する締結力は、第1係止部31の第1係止孔44に対する締結力ほど大きくなくてもすむ。
ここで、係止孔44〜46に対する係止部31〜33の締結力は、係止孔44〜46において係止部31〜33が押付けられる内壁面と押付片103,106,108との間隔が小さいほど大きくなる。
この点、図5に示すように、後方へ向けて延びる第1押付片103と第1係止孔44の内壁面との間隔G1は、同図5において二点鎖線で示すように、第1押付片103が前方へ向けて延びる場合の同第1押付片103と第1係止孔44の内壁面との間隔G1Aよりも小さい。そのため、第1係止孔44に対する第1係止部31の締結力は、第1押付片103が前方へ向けて延びる場合よりも大きくなり、上記第1領域Z1が開く際に、第1係止部31と第1係止孔44との係止箇所に加わる負荷に見合ったものとなる。従って、第1係止部31が第1係止孔44から抜け出ることが、適切な大きさの締結力によって抑制される。
これに対し、図6に示すように、前方へ向けて延びる第2押付片106では、第2傾斜部107の先端部(角部)と第2係止孔45の内壁面との間隔G2が、上記間隔G1に比べて大きい。そのため、第2係止孔45に対する第2係止部32の締結力は、上記第1係止孔44に対する第1係止部31の締結力よりも小さくなるが、上記第2領域Z2が開く際に、第2係止部32と第2係止孔45との係止箇所に加わる負荷に見合ったものとなる。従って、第2係止部32が第2係止孔45から抜け出ることが適切な大きさの締結力によって抑制される。
また、図10に示すように、第3押付片108では、第3湾曲部110の先端部と第3係止孔46の内壁面との間隔G3が、上記間隔G1と同様小さい。そのため、第3係止孔46に対する第3係止部33の締結力が大きい。従って、第3係止部33が第3係止孔46から抜け出ることが適切な大きさの締結力によって抑制される。
上記のように、第1領域Z1が下方へ開き、第2領域Z2が上方へ開くと、両領域Z1,Z2間に開口36が生ずる。エアバッグ60は、この開口36を通じて後方へ向けて引き続き展開膨張する。前突の衝撃により前傾しようとする運転者の前方に、展開膨張したエアバッグ60が介在して運転者が受け止められ、その運転者の前傾が拘束されて、衝撃から保護される。
上記のように内圧の上昇したエアバッグ60が蓋部22を破断してパッドカバー20から飛び出すと、パッド部による上記膨張の制限がなくなる。そのため、エアバッグ60が急激に膨張し、そのエアバッグ60の内圧が急激に下降して負圧(大気圧よりも低い圧力)となる。
このときにも、各ガス噴出孔82から噴出されたガスGの圧力が受圧部117に受けられて、前方へ向かう力Fが発生される。しかし、この力Fは、負圧がインフレータ80を後方へ移動させようとする力よりも小さい。そのため、各弾性支持部101の弾性復元力によりインフレータ80が後方へ移動して、フランジ83が支持プレート90の弾性突部100から一時的に離れ、両者83,100間に隙間を生ずる。
しかし、ガス噴出孔82から噴出されたガスGは引き続き受圧部117に当たって、向きを後方へ変えられる。この向きを変えられたガスGにより、エアバッグ60の外部の空気が、上記隙間を通じてエアバッグ60の内部へ引き込まれる。フランジ83と弾性突部100との間の隙間では、エアバッグ60の外部から内部へ向かう空気の流れが生ずる。そのため、隙間が生じているにも拘らず、エアバッグ60内のガスGが上記隙間を通って連通孔91から漏れ出ることが抑制される。
そして、エアバッグ60内へガスGが継続して供給されることにより内圧が高くなっていくと、インフレータ80を前方へ移動させようとする力が増加していき、インフレータ80が弾性突部100において再び支持プレート90に接触し、連通孔91からのガス漏れが抑制される。
また、各ガス噴出孔82から噴出されたガスGの一部は、エアバッグ60の上記の固定部分に到達する前に受圧部117に当たり、後方へ向きを変えられる。その分、ガスGは、エアバッグ60のバックホルダ40に対する固定部分(周辺部62)に直接触れにくくなる。
また、ガスプレート115がインフレータ80のフランジ83に一体に設けられていることから、受圧部117はインフレータ80の位置に拘らず、各ガス噴出孔82に対し、ステアリングシャフト11の径方向についての外方に近接する箇所に常に位置する。そのため、インフレータ80の位置に拘らず、各ガス噴出孔82から噴出されたガスGが受圧部117に当たり、上述したガスGの向きを後方へ変える機能や、前方へ向かう力Fを発生させる機能が、充分に発揮される。
また、インフレータ80から噴出されたガスGの中には、支持プレート90及びバックホルダ40間を通ってエアバッグ装置の外部へ漏れ出ようとするものもある。しかし、図13に示すように、シール部98の複数のシール突起98Aがバックホルダ40に弾性接触しており、これらのシール突起98Aにより、上記ガスGの漏出が規制される。
ところで、上記エアバッグ60によるパッドカバー20の後方への押圧に伴い、バックホルダ40においてパッドカバー20の係止部31〜33が係止される箇所(係止孔44〜46の周辺部分)に対し、後方へ向かう力(引っ張り力)が加わり、同箇所が変形しやすい。基部42と段差部43とを備えるバックホルダ40では、パッドカバー20の係止される基部42に対し、上記後方へ向かう力(引っ張り力)が加わり、同基部42が変形しやすい。これに対し、段差部43は変形しにくい。これは1つには、段差部43が、基部42に対し、ステアリングシャフト11の径方向に離れていて、上記後方へ向かう力(引っ張り力)が段差部43に伝わりにくいことによる。また、段差部43がステアリングシャフト11に沿う方向について基部42とは異なる箇所(基部42の後方)に設けられていて、剛性が高められていることにもよる。本実施形態では、シール部98のシール突起98Aが、この変形しにくい段差部43に接触している。このことから、エアバッグ60の膨張に伴う基部42の変形にも拘らず、インフレータ80から噴出されたガスGは、支持プレート90及びバックホルダ40間から漏れ出にくい。
また、エアバッグ60の周辺部62はガスGに晒されると、そのガスGの熱の影響を受けやすい。この点、本実施形態のカップリテーナ70では、図8に示すように、バッグ覆い部74がバッグ取付部71の内縁部から、ステアリングシャフト11の径方向についての内側へ延出していて、エアバッグ60における開口61の周辺部62を覆っている。従って、こうしたバッグ覆い部74が設けられていない場合に比べ、エアバッグ60の周辺部62が露出しにくい。周辺部62は、高温のガスGに晒されにくく、ガスGの熱の影響を受けにくい。
特に、カップリテーナ70の複数のアーチ部72が、ボルト76〜79によるバッグ取付部71のバックホルダ40に対する締結部分から、周方向へ離れた箇所に設けられた本実施形態にあって、各バッグ覆い部74は、バッグ取付部71の内縁部であって、隣り合うアーチ部72間の略全領域にわたって設けられている。従って、エアバッグ60の周辺部62において、周方向についての広い領域がバッグ覆い部74によって覆われることとなり、同周辺部62は広い領域でガスGの熱の影響を受けにくくなる。
また、上記のように、各バッグ覆い部74が隣り合うアーチ部72間の略全領域にわたって設けられることで、周辺部62において、ボルト76〜79によるバッグ取付部71のバックホルダ40に対する締結部分の近傍部分もバッグ覆い部74によって覆われることとなる。
そのため、バッグ覆い部74が、バッグ取付部71の内縁部であって、バックホルダ40との締結部分に対応しない箇所に設けられる場合に比べ、締結部分でエアバッグ60の上記周辺部62が露出しにくく、高温のガスGに晒されにくい。その結果、バッグ取付部71のバックホルダ40との締結部分でエアバッグ60の周辺部62がガスGの熱の影響を受けにくく、エアバッグ60がバックホルダ40に取付けられた状態に維持される。
以上詳述した本実施形態によれば、次の効果が得られる。
(1)ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54の組合わせと、その組合わせの近傍に位置する弾性支持部101とを、インフレータ80の中心Cから略同じ距離離れた箇所に設けている(図3)。
そのため、インフレータ80の径方向について、エアバッグ装置のコンパクト化を図ることができる。
(2)複数のボルト76〜79及び複数のボルト挿通孔51〜54を、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相となったときにのみ挿通が可能となる箇所に設けている(図19)。
そのため、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し特定の回転位相となっていないにも拘らず、全てのボルト76〜79が全てのボルト挿通孔51〜54に挿通されて締結される現象(誤組付け)が起こるのを抑制することができる。
(3)特定ボルト76を、インフレータ80の中心Cからの距離L2が、通常ボルト77〜79の上記中心Cからの距離L3とは異なる箇所に設ける(図20(A))。また、特定ボルト挿通孔51を、インフレータ80の中心Cからの距離L2が、通常ボルト挿通孔52〜54の上記中心Cからの距離L3とは異なる箇所に設けている(図20(B))。
そのため、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相になったときには、特定ボルト76を特定ボルト挿通孔51に挿通させて締結し、通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通させて締結することが可能となる。
また、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相とは異なる回転位相になったときには、特定ボルト76を特定ボルト挿通孔51に挿通させて締結し、かつ、通常ボルト77〜79を通常ボルト挿通孔52〜54に挿通させて締結することを困難にすることができる。
(4)ボルト挿通孔51〜54の1つ(通常ボルト挿通孔54)を他(特定ボルト挿通孔51及び通常ボルト挿通孔52,53)よりも小径に形成している(図20(B))。
そのため、カップリテーナ70がバックホルダ40に対し特定の回転位相となっていない場合には、通常ボルト挿通孔54と通常ボルト79との干渉量(ラップ量)を大きくし、通常ボルト79の通常ボルト挿通孔54への挿通を困難にすることができる。その結果、カップリテーナ70のバックホルダ40に対する誤組付けをより一層起こりにくくすることができる。
(5)弾性支持部101を、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54から、インフレータ80の周方向に離間した箇所に設けている(図3)。
そのため、弾性支持部101と、ボルト76〜79及びボルト挿通孔51〜54とを、互いの干渉を避けながら、インフレータ80の中心Cから略同じ距離離れた箇所に位置させることができ、上記(1)の効果を得ることができる。
なお、本発明は次に示す別の実施形態に具体化することができる。
<リテーナについて>
・リテーナは、エアバッグ60が係止され、同エアバッグ60の周辺部62をバックホルダ40との間で挟み込んで締結することができることを条件に、形状等を適宜変更可能である。例えば、リテーナは、上記カップリテーナ70におけるアーチ部72、カバー部73、バッグ覆い部74の少なくとも1つが割愛されたものであってもよい。
<締結部及び被締結部について>
・カップリテーナ70に代えてバックホルダ40に締結部(ボルト76〜79)が設けられ、バックホルダ40に代えてカップリテーナ70に被締結部(ボルト挿通孔51〜54)が設けられてもよい。
・ステアリングシャフト11の径方向について、複数の締結部(ボルト76〜79)及び複数の被締結部(ボルト挿通孔51〜54)の位置は、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相となったときに係合が可能となる箇所であることを条件に変更可能である。
例えば、特定ボルト76及び特定ボルト挿通孔51は、インフレータ80の中心Cからの距離L2が、通常ボルト77〜79及び通常ボルト挿通孔52〜54の中心Cからの距離L3よりも短い箇所に設けられてもよい。
・締結部(ボルト76〜79)及び被締結部(ボルト挿通孔51〜54)は、インフレータ80の周りで等角度毎に設けられることを条件に、上記実施形態とは異なる数に変更可能である。例えば、通常ボルト77〜79、及び通常ボルト挿通孔52〜54は、それぞれ4以上設けられてもよい。
・締結部及び被締結部は相互に係合して締結されるものであることを条件に、ボルト及びボルト挿通孔とは異なるものに変更されてもよい。
<ボルト挿通孔51〜54の孔径について>
・ボルト挿通孔51〜54において孔径が他とは異なる対象が、上記実施形態(通常ボルト挿通孔54)とは異なるものに変更されてもよい。
・インフレータ80の中心Cからの距離L2,L3を異ならせるのみで、バックホルダ40に対しカップリテーナ70が特定の回転位相となったときにのみ、全てのボルト76〜79を全てのボルト挿通孔51〜54に挿通させることができる場合には、全てのボルト挿通孔51〜54の孔径が同一に設定されてもよい。
<インフレータ80について>
・インフレータ80の本体部81は、円筒状以外の筒状をなすものであってもよい。
<支持プレート90について>
・支持プレート90における各押付片103,106,108は、ステアリングシャフト11の径方向についての内側から各係止部31〜33に当接するものに限らず、同方向についての外側から各係止部31〜33に当接するものであってもよい。
<弾性支持部101について>
・支持プレート90の上記実施形態とは異なる箇所に弾性支持部101が設けられてもよい。また、支持プレート90における弾性支持部101の数が変更されてもよい。
・弾性支持部101は、円筒状をなすものに限らず、他の筒状、例えば円錐筒状をなすものであってもよい。
<受圧部117について>
・受圧部117は、インフレータ80におけるフランジ83の一部として形成されてもよい。
・受圧部117はインフレータ80に直接取付けられてもよい。例えば、インフレータ80の本体部81の外周面であって、各ガス噴出孔82よりも前方側となる箇所に凹部が設けられ、ガスプレート115が、取付基部116において凹部に係入(嵌入、圧入)されることで、受圧部117がインフレータ80に取付けられてもよい。
この場合、凹部は、本体部81の周方向に延びる溝部によって構成されてもよい。溝部は、本体部81の全周にわたって設けられてもよい。また、凹部は、本体部81の周方向について、互いに離間した箇所に設けられた複数の穴部によって構成されてもよい。
<その他>
・バックホルダ40、カップリテーナ70、支持プレート90及びガスプレート115の少なくとも1つは、プレス加工以外の形成手段、例えばダイカスト成形等によって形成されてもよい。
・本発明は、車両に限らず、航空機、船舶等の他の乗物におけるステアリングホイールに内装されるエアバッグ装置に適用することもできる。この場合、車両には、自家用車に限らず各種産業車両も含まれる。