JP2013200449A - 鍵盤楽器用の白鍵 - Google Patents

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【課題】反りやねじれの測定を適正に行える鍵盤楽器用の白鍵を提供する。
【解決手段】上面部の前端に、前木口部11よりも前方に突出する前ツバ部14が形成された鍵盤楽器用の白鍵10において、前ツバ部14の下面に溝部15を設けた。溝部15を、均一の深さで白鍵10の幅方向に延ばし下面のみが開口した凹部で構成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、上面部の前端に前木口面よりも前方に突出する前ツバ部が形成された鍵盤楽器用の白鍵に関する。
従来から、電子オルガンや電子ピアノ等の鍵盤楽器においては、プラスチックの成形体からなる複数の白鍵と黒鍵とを用いて鍵盤が構成されている(例えば、特許文献1参照)。この鍵盤楽器の白鍵と黒鍵とは、前後方向に延びており、下面には凹部が形成されている。また、白鍵の上面部における前端には、白鍵の前端面を構成する前木口部よりも前方に突出する前ツバ部が形成されている。このような鍵盤楽器においては、各鍵が均一な状態で直線状に並んでいることが重要であり、特に白鍵においては、前端部の上下位置および前後位置が一致していることと、前端部に傾きがなくどの方向から見ても直線状に並んでいることが要求される。
このため、例えば、支持台とダイヤルゲージとを備えた測定装置を用いて白鍵の反りやねじれを測定し、良好な白鍵のみを黒鍵とともに鍵盤楽器に設置することが行われている。この測定装置の支持台には白鍵の後部に形成された凹部に係合できる上下に延びる棒状の支持部と、白鍵の前部側下部の両側を支受する断面形状が三角形の水平方向に延びる棒状の支受部とが備わっている。このため、支持棒と支受部とに白鍵を支持させ、ダイヤルゲージを白鍵の上面に沿って移動させることにより白鍵の反りやねじれを測定することができる。
特開平10−240259号公報
しかしながら、前述した従来の白鍵では、支持台によって支持される白鍵の前端側部分が、白鍵の下部における前木口部よりも後方部分になるため、精度のよい測定を行うことが難しいという問題がある。すなわち、白鍵を射出成形によって成形する場合、前木口部を挟んで後部側と前部側とでは、材料の流れに変化が生じることが多く、前木口部を挟んで後部側を基準に測定した場合と前部側を基準にして測定した場合とでは異なる結果がでてしまう。そして、鍵盤においては、各白鍵の前端部を揃えることが重要であるため、白鍵の前木口部よりも後方部分を支受してその部分を基準として測定した場合には、好適な結果が得られ難くなる。
本発明は、前述した問題に対処するためになされたもので、その目的は、反りやねじれの測定を適正に行える鍵盤楽器用の白鍵を提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
前述した目的を達成するため、本発明に係る鍵盤楽器用の白鍵の構成上の特徴は、上面部(13)の前端に前木口部(11,11a)よりも前方に突出する前ツバ部(14,14a)が形成された鍵盤楽器用の白鍵(10,10a)において、前ツバ部の下面に凹部(15,15a,15b)を設けたことにある。
本発明に係る鍵盤楽器用の白鍵では、前木口部よりも前方に突出する前ツバ部の下面に凹部を設けている。このため、白鍵の反りやねじれを測定する際に、白鍵の前端近傍に位置する凹部を利用して白鍵を支受することができる。これによって、白鍵の反りやねじれの適正な測定が可能になる。白鍵や黒鍵は射出成形によって成形されるが、その際、金型の樹脂注入口は、一般に白鍵や黒鍵の長手方向の一方に対応する部分に設けられている。この場合、注入口の近傍では材料の流れの跡が縞模様になって表れるフローマーク等の外観不良が出やすいため、高品質が要求される高級志向の白鍵や黒鍵になるほど注入口が後部側に設けられる傾向がある。
また、白鍵においては、通常、後部から前木口部を構成する前壁部までは上面部と両側面部とからなる断面形状が門形の部分で構成され、前木口部で前面が閉塞されている。そして、前木口部の前側上端部に前方に突出した前ツバ部が形成されている。このため、前木口部の前後で成形用樹脂材料の流動条件が極端に変化し、成形後の冷却の際に歪みが生じる等の影響がでる。そして、鍵盤楽器においては、各白鍵の前端部を揃えることが重要であるため、前木口部よりも前方部分を支受してその部分を基準として測定することにより、精度が高く信頼性のある好適な結果が得られるようになる。
また、鍵盤楽器に備わっている白鍵の形状としては、種々のものがあるが、目視できる範囲での外観に関しては殆ど共通しており、特に、前木口部の前側上端部に前方に突出した前ツバ部が形成されている点では、殆どの白鍵が共通している。このため、白鍵における前木口部よりも前方に突出する前ツバ部の下面に凹部を設けることにより、殆どの白鍵において同様の測定が行えるようになり、測定方法の違いをなくすことができる。また、白鍵の長手方向が異なる場合には、測定装置における白鍵の後部を支持する部材の位置を調節することで対応できる。さらに、凹部が白鍵の前端近傍に設けられているため視認性もよくなり、測定装置への設置もし易くなる。また、前木口部の近傍に凹部を形成することにより、成形時に、白鍵の上面部における前木口部の近傍にヒケが発生することが防止される。これによって、不良品の発生を減少させることができるという効果も生じる。
また、本発明に係る鍵盤楽器用の白鍵の他の構成上の特徴は、凹部が、均一の深さで白鍵の幅方向に延びる溝部(15)で構成されていることにある。本発明によると、白鍵の幅方向に延びる凹部の深さが均一になっているため、白鍵の上面における幅方向の傾きを精度よく測定することができる。また、この場合、溝部で構成される凹部が下面のみが開口した凹部で構成されていることが好ましい。これによると、白鍵の側方から凹部が見えないため、凹部を設けることによって、白鍵の美観が低下することを防止できる。
また、本発明に係る鍵盤楽器用の白鍵のさらに他の構成上の特徴は、凹部が、白鍵の幅方向に間隔を保ち均一の深さに形成された複数の穴部(15a,15b)で構成されていることにある。この場合、白鍵の幅方向の両側部分に一対の穴部を設けることが好ましい。本発明によっても、白鍵の反りやねじれの適正な測定が可能になる。また、凹部を設ける部分を必要最小限にできるため、凹部を設けることによって、前ツバ部の強度が低下することを防止できる。
本発明の第1実施形態に係る白鍵を備えた鍵盤楽器の要部を示した側面図である。 白鍵の前端側部分を示した断面図である。 白鍵の前ツバ部に形成された溝部を下方側から見た状態を示した斜視図である。 第1実施形態に係る白鍵の反りやねじれを測定する状態を示した説明図である。 従来の白鍵の反りやねじれを測定する状態を示した説明図である。 本発明の第2実施形態に係る白鍵の前ツバ部に形成された穴部を下方側から見た状態を示した斜視図である。
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。図1は、鍵盤楽器に備わっている本実施形態に係る白鍵10と、黒鍵20とを示している。白鍵10は、鍵本体から表層部までが合成樹脂で一体成形されており、略四角棒状に形成されている。この白鍵10は、本体部分が下方を開放させて長手方向に直交する断面が門形になるように形成されており、その前端部には、前木口部11が形成され、後端部には、後壁部12が形成されている。また、上面部13の前端部には、前木口部11の上方から前方に突出する前ツバ部14が形成されている。この前ツバ部14は、側方から見た形状が略半円状になって、白鍵10の幅方向に延びている。
そして、図2および図3に示したように、前ツバ部14の下面における前木口部11との境界部分に、本発明に係る凹部を構成する溝部15が形成されている。すなわち、溝部15は、後面が前木口部11の前面に沿った垂直面で構成され、前面が後面の上端から傾斜して前方側下方に延びる傾斜面で構成されており、これによって、溝部15の前後の面の断面形状は略V形に形成されている。また、溝部15の両側は、前ツバ部14の両側面の近傍まで延びてその端部は、前ツバ部14の側面部の下部によって閉塞されている。
後壁部12の後方には、鍵盤楽器の本体側に設けられた取付部(図示せず)に取付けられる支点部が設けられており、後壁部12と支点部とが連結部12aによって連結されている。そして、白鍵10の両側面部16のうちの一方の側面部16(図4に示した側面部の反対側の側面部)の中央から後部側にかけての部分に黒鍵20を配置するための黒鍵配置用凹部17が形成されている。また、白鍵10の上面部13は、押鍵時の感触を良好なものにするために滑らかな鏡面状に形成されている。
白鍵10における前後方向の中央よりもやや前部側部分の下面には、略垂直下方に延びる側面視がL形のガイド18が白鍵10の本体部分と一体的に形成されている。このガイド18は、鍵盤楽器の本体側に設けられたハンマー機構に連結され押鍵時に所定の質量感を出すために設けられている。また、ガイド18の下面に、下方に突出したスイッチ駆動部19が形成されている。スイッチ駆動部19は、白鍵10の下方に設置されたプリント基板の鍵スイッチを押圧するためのものであり、鍵スイッチに対向するように配置される。
このように構成された白鍵10は、支点部を介して鍵盤楽器の取付部に取付けられ、連結部12aが撓むことによって支点部を支点とし前端部を上下に揺動可能にして支持される。また、黒鍵20は、前後方向の長さおよび左右の幅が白鍵10よりも短く、高さが白鍵10よりも高くなっており、上面部21、前面部22、後面部23および左右の側面部24を備えている。そして、複数の白鍵10と複数の黒鍵20が所定の配置で設置されることにより鍵盤が形成される。なお、黒鍵20も合成樹脂で一体成形されている。
このような鍵盤を構成する白鍵10および黒鍵20は、ともに射出成形によって成形され、その際、金型における白鍵10および黒鍵20の後部側に対応する部分から前部側に対応する部分に向かって成形用樹脂材料が注入される。この場合、白鍵10においては、溝部15が形成されていることによって、前木口部11の近傍でヒケが発生することが防止され不良品の発生率が大幅に低下するようになる。また、黒鍵20は、形状が単純であるため元々白鍵10よりも不良品の発生率は低い。
成形された白鍵10については、図4に示した測定装置30を用いて、反りやねじれの測定が行われる。なお、図4には簡略化した白鍵10を示しており、図1に示した白鍵10とは多少異なっている。この測定装置30は、定盤31の上面に棒状の支持部32と立板状の支受部33とを設置するとともに、定盤31の上面にダイヤルゲージ34を移動可能に設置して構成されている。
また、白鍵10の後部には下方が開放された小さな凹部(図示せず)が形成されており、支持部32は、この凹部に着脱自在に係合して白鍵10の後部を支持する。支受部33は、支持部32と間隔を保って定盤31の上面から垂直方向に延びており、先端には、白鍵10の溝部15に嵌合できる先鋭部33aが形成されている。この支持部32に後部に設けられた凹部を係合させ、支受部33の先鋭部33aに溝部15を嵌合させた状態で、白鍵10を支持部32と支受部33とに設置したときに、上面部13の上面が定盤31の上面に対して略平行するように、支持部32と支受部33とは、定盤31に設置されている。
すなわち、上面部13の上面における溝部15の上部に位置する部分および後部に設けられた凹部の上部に位置する部分が含まれるように平面を形成したときに、この平面と定盤31の上面とが平行する。また、ダイヤルゲージ34は、定盤31の上面でスライド移動が可能になった、移動支持台(図示せず)に支持されており、目盛板と指針とを備えた本体34aと、本体34aから延び伸縮可能になった測定子34bとを備えている。指針と測定子34bとの間には歯車が設けられており、測定子34bの伸縮が歯車に拡大されて指針に伝えられる。
このため、測定子34bの先端を上面部13に接触させながらダイヤルゲージ34を定盤31の上面で移動させることにより、白鍵10の反りやねじれを正確に測定することができる。この場合、白鍵10の全体に反りやねじれがないことも重要であるが、特に、支持部32に支持された後部に対して、支受部33に支受された前端側部分に反りやねじれがないことが重要である。これによって、白鍵10を鍵盤楽器の取付部に取付けたときに、各白鍵10の前端部が直線状に揃うようになる。これによって、適正に配置された鍵盤楽器を得ることができる。
これに対して、溝部が備わっていない従来の白鍵40では、図5に示したように、測定装置50を用いて、反りやねじれの測定が行われていた。この測定装置50では、支受部53が、白鍵40の前端側部分の下部を支えることができる左右に長く断面形状が三角形になった棒状部材で構成されている。この測定装置50のそれ以外の部分の構成は、前述した測定装置30と同一である。したがって、同一部分に同一符号を記している。この場合、白鍵40の前端側の測定基準となる部分は、前木口部41よりも後方になる。このため、前木口部41を挟んで前部側と後部側とにねじれが生じていた場合には、白鍵40を鍵盤楽器の取付部に取付けたときに、各白鍵40の前端部が直線状に揃わないことが生じる。
このように、本実施形態に係る鍵盤楽器用の白鍵では、白鍵10における前木口部11よりも前方に突出する前ツバ部14の下面に溝部15を設けている。このため、白鍵10の反りやねじれを測定する際に、白鍵10の前端近傍に位置する溝部15を利用して白鍵10を支受することができ、これによって、白鍵10の反りやねじれの適正な測定が可能になる。また、前木口部11の近傍に溝部15を形成することにより、成形時に、白鍵10の上面部13における前木口部11の近傍にヒケが発生することを防止でき、これによって、不良品の発生を減少させることができる。
さらに、溝部15が、均一の深さで白鍵10の幅方向に延びているため、白鍵10の上面における幅方向の傾きを精度よく測定することができる。また、溝部15は、前ツバ部14の両側面の近傍まで延びて、その両端は白鍵10の幅方向の両端に近いところに位置しており、これによって、白鍵10を安定した状態で設置できるようになる。この結果、測定の精度が向上する。このように、溝部15の両端は、前ツバ部14の両側面の近傍まで延びていることが好ましい。また、溝部15の両端が、前ツバ部14の側面部の下部によって閉塞されているため、支受部33の先鋭部33aに溝部15を嵌合させたときに、白鍵10の前後左右の位置が決まるようになり、測定中に位置がずれることがなくなる。これによっても、測定の精度が向上するとともに、再現性が高まるという効果が生じる。
また、溝部15が下面のみが開口しているため、白鍵10の側方から溝部15が見えなくなり、溝部15を設けることによって、白鍵10の美観が低下することを防止できる。なお、白鍵10の中には、黒鍵配置用凹部17が備わっていないものもあるが、その白鍵10の場合も、前述した黒鍵配置用凹部17が備わった白鍵10と同様に成形され、同様に反りやねじれを測定される。
(第2実施形態)
図6は本発明の第2実施形態に係る白鍵10aを示している。この白鍵10aでは、本発明に係る凹部が溝部でなく一対の穴部15a,15bで構成されている。穴部15a,15bは、前木口部11aの前部に形成された前ツバ部14aの下面における左右両側部分に形成されておりともに直径および深さが同一に設定されている。また、穴部15a,15bは、ともに前木口部11aと前ツバ部14aとの境界線の近傍で、その境界線から同じ距離の位置に形成されている。さらに、この穴部15a,15bも白鍵10aの幅方向の両端に近いところに設けることが好ましい。
この白鍵10aのそれ以外の部分の構成については、前述した白鍵10と同一である。この白鍵10aの反りやねじれを測定する際には、前述した測定装置30における支受部33に代えて穴部15a,15bに嵌合できる一対の棒状の支受部を設ける。これによっても、前述した第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、本発明に係る鍵盤楽器用の白鍵は、前述した実施形態に限るものでなく、適宜変更実施が可能である。例えば、前述した第1実施形態においては、溝部15の両側を前ツバ部14の両側部で塞いでいるが、溝部15を前ツバ部14の両側に貫通させてもよい。これによると、溝部15を支受部33に支受させる操作がし易くなる。また、第2実施形態では、一対の穴部15a,15bを設けているが、この穴部は、3個または4個等、2個以上の複数個設けてもよい。
さらに、前述した実施形態では、白鍵10,10aを合成樹脂で一体成形されたものとしているが、この白鍵としては、鍵本体と表層部とが別体となり、樹脂成形で形成された鍵本体の表面に、木質、皮革、人工象牙等の材料からなる表層部を貼り付けたものなど、どのような材料で構成されたものでも使用できる。また、本発明に係る白鍵は、複数の白鍵を櫛歯型に連結して構成される白鍵ユニットであってもよい。この場合、測定装置としては、支持部と支受部33とを備えたものを使用する。
10,10a…白鍵、11,11a…前木口部、13…上面部、14,14a…前ツバ部、15…溝部、15a,15b…穴部。

Claims (4)

  1. 上面部の前端に前木口部よりも前方に突出する前ツバ部が形成された鍵盤楽器用の白鍵において、
    前記前ツバ部の下面に凹部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器用の白鍵。
  2. 前記凹部が、均一の深さで前記白鍵の幅方向に延びる溝部で構成されている請求項1に記載の鍵盤楽器用の白鍵。
  3. 前記溝部で構成される凹部が下面のみが開口した凹部で構成されている請求後2に記載の鍵盤楽器用の白鍵。
  4. 前記凹部が、前記白鍵の幅方向に間隔を保ち均一の深さに形成された複数の穴部で構成されている請求後1に記載の鍵盤楽器用の白鍵。
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