JP2013200239A - 糖鎖アレイの品質評価方法および保存方法 - Google Patents

糖鎖アレイの品質評価方法および保存方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質を評価する方法を提供すること、および当該糖鎖アレイの品質を劣化させない保存の方法を提供すること
【解決手段】 シアル酸の加水分解を指標として、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質を評価しうること、および、乾燥条件下でシアロ糖鎖を含む糖鎖アレイを保存することでその品質劣化を防止しうることを見出した。
【選択図】 なし

Description

本発明は、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質評価方法および保存方法に関する。
生化学分野において、近年、核酸、タンパク質に続く第三の鎖として糖鎖分子が注目されている。特に、細胞の分化や癌化、免疫反応や受精などと糖鎖分子との関わりが研究され、新たな医薬や医療材料を創製しようとする試みが続けられている。
糖鎖は多くの毒素、ウィルス及びバクテリアなどの病原性外来因子受容体であり、また、癌のマーカーとしても注目されている。このため、これらの分野においても同様に、新たな医薬や医療材料を創製しようとする試みが続けられている。
しかしながら、糖鎖は、研究の重要性を認識されながら、その複雑な構造や多様性から、第一、第二の鎖である核酸、タンパク質に比較して研究の進行が著しく遅れている。この研究を推進する目的で、糖鎖を精製する方法が種々開発されている。
一方、糖鎖は、それ単独で直接機能を発揮するというより、細胞レセプターに対するリガンドとして、細胞レセプターを通じて機能する場合も多く確認されている。そこで、糖鎖に対するレセプターの解析に供するために、種々の糖鎖を固定化するための基材が開発されている(例えば特許文献1、2、3)。
しかしながら、これら基材に固定化された糖鎖の品質を評価する方法について言及している報告はほとんどない。
特にシアル酸を含有する多糖であるシアロ糖鎖においては、レセプターの認識特異性に大きく関与するシアル酸の脱離が起こりやすいことから、シアロ糖鎖を固定化した基材の品質管理を行う方法とシアロ糖鎖の劣化を防止する方法の開発が望まれている。
特開2007−527539号公報 特開2008−231013号公報 特開2008−530538号公報
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質を評価する方法を提供することにある。さらなる本発明の目的は、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質を劣化させる原因を解明し、その品質を劣化させない保存の方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、まず、各種シアロ糖鎖を固定化した糖鎖アレイの作製を行った。ここで糖鎖アレイに固定化するシアロ糖鎖として、シアル酸の結合数が異なる各種ガングリオシドを用いた。次いで、こうして作製した糖鎖アレイにつき、様々な条件にて、その品質の劣化の程度を評価した。
品質劣化処理後に、標識したコレラトキシンBサブユニットを用いて、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドであるGM1aを検出した結果、加湿条件下では、各種ガングリオシドのシアル酸の加水分解が進行し、シアル酸が複数結合しているガングリオシドについては、GM1aまで加水分解されたものが検出された。また、加湿条件下では、GM1aについても、そのシアル酸の加水分解が検出された。一方、乾燥条件下では、各種ガングリオシドにおけるシアル酸の加水分解は顕著に抑制された。以上から、本発明者らは、シアル酸の加水分解を指標として、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質を評価しうること、そして、乾燥条件下でシアロ糖鎖を含む糖鎖アレイを保存することでその品質劣化を防止しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、シアル酸の加水分解を指標とした糖鎖アレイの品質評価方法およびシアル酸の加水分解を抑制するための糖鎖の保存方法に関し、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1)シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイの品質を評価する方法であって、シアロ糖鎖におけるシアル酸の加水分解を検出することを含み、当該加水分解が検出された場合に品質が劣化していると評価され、当該加水分解が検出されない場合に品質が劣化していないと評価される方法。
(2)糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にガングリオシドが含まれる、(1)に記載の方法。
(3)糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にシアル酸の結合数が異なる2種以上のガングリオシドが含まれ、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドを検出することによってシアル酸の加水分解を検出する、(2)に記載の方法。
(4)コレラトキシンBサブユニットを用いてシアル酸が1つ結合しているガングリオシドであるGM1aを検出する、(3)に記載の方法。
(5)シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイを保存する方法であって、乾燥条件下で保存することを特徴とする方法。
(6)糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にガングリオシドが含まれる、(5)に記載の方法。
(7)糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にシアル酸の結合数が異なる2種以上のガングリオシドが含まれる、(6)に記載の方法。
本発明により、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質の評価を簡便に行うことが可能となった。また、本発明により、シアロ糖鎖を含む糖鎖アレイの品質の劣化を効果的に防止することが可能となった。
本発明は、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイの品質を評価する方法を提供する。
本発明において「糖鎖アレイ」とは、複数の糖鎖を基板上に配置した器具を意味する。本発明における糖鎖アレイは、以下の方法で製造することができる。
まず、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖を基板上に固定化する。本発明において「シアロ糖鎖」とは、シアル酸を含有する多糖を意味する。本発明におけるシアロ糖鎖としては、例えば、ガングリオシド、N−結合型糖鎖、O−結合型糖鎖などが挙げられるが、これらに制限されない。
本発明において「ガングリオシド」とは、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質をいう。代表的なガングリオシドとしては、GM1a、GM1b、GM2、GM3、GM4などのシアル酸が1つ結合しているもの、GD1a、GD1b、GD2、GD3などのシアル酸が2つ結合しているもの、GT1a、GT1b、GT1c、GT2、GT3などのシアル酸が3つ結合しているもの、GQ1b、GQ1cなどのシアル酸が4つ結合しているもの、GP1cなどのシアル酸が5つ結合しているものなどが挙げられ、それらの構造は公知である。
本発明における「基板」としては、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖を固定化しうるものであれば特に制限はないが、好ましくは、糖鎖を捕捉する官能基を含む高分子化合物で被覆された基板である。
本発明において基板上に被覆する「糖鎖を捕捉する官能基を含む高分子化合物」としては、特に制限はないが、一級アミノ基を有するユニットを含む高分子化合物が好ましい。当該高分子化合物は、さらに、親水性を保持するためのユニットおよび疎水性基を有するユニットを含むことが好ましい。この形態の基板においては、親水性を保持するためのユニットが検出対象物質の基板への物理的吸着(非特異的吸着)を抑制する役割を、疎水性基を有するユニットが高分子化合物を基板に結合させる役割を、それぞれ果たす。
本発明の高分子化合物に含まれる一級アミノ基を有するユニットは、特に構造を限定されるものではないが、下記一般式〔1〕の構成単位の右部の構成単位で表されるように、(メタ)アクリル残基とオキシルアミノ残基を含むスペーサーYを解した構造であることが好ましい。オキシルアミノ基の場合、Zは酸素原子を、ヒドラジド基の場合、ZはNHを、セミカルバジド基の場合、ZはNH(C=O)NHを、チオセミカルバジドの場合、NH(C=S)NHを示す。nは本来自然数であるが、各成分の組成割合として標記される場合がある。アルキレングリコール残基を含むスペーサーYの構造は、特に制限されるものではないが、下記一般式〔2〕または〔3〕であることが好ましく、より好ましくは〔2〕である。
本発明の高分子化合物に含まれる一級アミノ基を有するユニットの組成割合(l,m,nの和に対するnの比率)は、高分子の全ユニットに対して、1〜94mol%が好ましく、より好ましくは2〜90mol%、最も好ましくは、20〜40%である。組成値が下限地を下回ると糖鎖を十分量固定化できなくなる。また、上限値を上回ると非特異吸着が増加する。
高分子化合物に含まれる親水性のユニットはホスホリルコリン基に代表されるもので、特に構造を限定するものではないが、前記一般式〔1〕のユニットは、構成単位の左部の構成単位で示されように、(メタ)アクリル残基とホスホリルコリン基が炭素数1〜10のアルキレンオキシ基Xの連鎖を介して結合した構造であることが好ましい。中でもXはエチレンオキシ基であることが最も好ましい。式中のアルキレンオキシ基の繰り返し数は1〜20の整数であり、繰り返し数2以上20以下の場合は、繰り返されるアルキレンオキシ基の炭素数は同一であっても、異なっていてもよい。lは本来自然数であるが、各構成成分の組成割合として表記される場合がある。
高分子化合物に含まれるホスホリルコリン基を有するユニットの組成割合は(l,m,nの和に対するlの比率)は、高分子の全ユニットに対して、5〜98mol%が好ましくより好ましくは10〜90mol%、最も好ましくは10〜80%である。組成比が下限値を下回ると親水性が弱くなり非特異吸着が多くなる。一方、上限値を上回ると水溶性が高まり、アッセイ中に高分子化合物が溶出してしまう可能性がある。
本発明の高分子化合物に含まれる疎水性基を有するユニットは、特に構造を限定しないが、前記一般式[1]の構成単位の中央部の構成単位で表されるように、(メタ)アクリル基残基に疎水性基が結合した構造であることが好ましい。疎水基は特に限定されないが、アルキル基や芳香族類が挙げられる。より好ましくは、前記アルキル基が炭素数2〜10のアルキル基である。アルキル基は特に構造を限定されるものではなく、直鎖であっても、分岐していても、環状になっていてもよい。高分子化合物に疎水性基を有するユニットが含まれていることにより、プラスチックなど、疎水性の基板に対しても濡れ性が向上し、ムラなく塗布できるようになる。また、疎水性が増すことから、アッセイ中に該高分子化合物が溶出してしまうことを防止することができる。式中、mは本来自然数であるが、各構成成分の組成割合として表記される場合がある。
高分子化合物に含まれる疎水性基を有するユニットの組成割合は(l,m,nの和に対するmの比率)は、高分子の全ユニットに対して、10〜90mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、最も好ましくは20〜80%である。上限値を上回ると非特異吸着が増加する恐れが出てくる。
本発明の高分子化合物の合成方法は、特に限定されるものではないが、合成の容易さから、少なくとも一級アミノ基を予め保護基にて保護したモノマー、ホスホリルコリン基を有するモノマー、疎水性基を有するモノマーをラジカル共重合する工程、該工程により得られた高分子化合物から保護基を除去する工程、を含む製造方法が好ましい。あるいは、少なくとも一級アミノ基を導入しうる官能基を有するモノマー、ホスホリルコリン基を有するモノマー、および疎水性基を有するモノマーをラジカル共重合する工程、該工程により得られた高分子化合物に一級アミノ基を導入する工程、を含む製造方法が好ましい。
一級アミノ基を予め保護基にて保護したモノマーは、特に構造を限定しないが、下記一般式[4](式中、R3は水素原子またはメチル基、Yはアルキレングリコール残基を含むスペーサー、Zは酸素原子またはNH、Wは保護基を示す。)で表されるように、(メタ)アクリル基と、オキシルアミノ基またはヒドラジド基が、アルキレングリコール残基を含むスペーサーYを介した構造であることが好ましい。
保護基Wとしてはアミノ基を保護基できるものであれば何ら制限を受けるものではなく、任意に用いることができる。中でもt―ブトキシカルボニル基(Boc基)やベンジロキシカルボニル基(Z基、Cbz基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)などが好適に用いられる。
具体的なモノマーの例としては、下記式で表されるようなものである。
脱保護化は、トリフルオロ酢酸や塩酸、無水フッ化水素を用いれば、一般的な条件で行うことができる。
ホスホリルコリン基を有するモノマーとしては、特に構造を限定しないが、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシエチルホスホリルコリン、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルホスホリルコリン、10−(メタ)アクリロイルオキシエトキシノニルホスホリルコリン、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスホリルコリンなどが挙げられるが、入手性から2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンが好ましい。
疎水性基を有するモノマーの具体的な例としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ネオペンチル(メタ)アクリレート、iso−ネオペンチル(メタ)アクリレート、sec−ネオペンチル(メタ)アクリレート、ネオペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、iso−ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、iso−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、iso−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、iso−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、iso−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、iso−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレート、iso−テトラデシル(メタ)アクリレート、n−ペンタデシル(メタ)アクリレート、iso−ペンタデシル(メタ)アクリレート、n−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、iso−ヘキサデシル(メタ)アクリレート、n−オクタデシル(メタ)アクリレート、iso−オクタデシル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかで最も好ましいのが、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n―ブチルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレートである。
一方、高分子化合物を重合した後に一級アミノ基を導入する方法としては、何ら制限を受けるものではないが、少なくともホスホリルコリン基を有するモノマー、疎水性基を有するモノマー、およびアルコキシ基を有するモノマーをラジカル共重合した後に、該高分子化合物に導入されたアルコキシ基とヒドラジンを反応させて、ヒドラジド基を生成する方法が簡便で好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基などが好適である。
具体的なアルコキシ基を有するモノマーの例としては、下記式で表されるようなものである。
本発明の高分子化合物の合成溶媒としては、それぞれのモノマーが溶解するものであればよく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノールなどアルコール類、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、シクロヘキサノン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。
重合開始剤としては通常のラジカル開始剤ならいずれでもよく、例えば、2,2’−アゾビスイソブチルニトリル(以下「AIBN」という)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウリルなどの有機過酸化物などを挙げることができる。
本発明の高分子化合物の分子量は、高分子化合物と未反応の単量体との分離精製が容易になることから、数平均分子量は5000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。
脱保護は前述のトリフルオロ酢酸や塩酸、無水フッ化水素を用いれば、一般的な条件で行うことができるが、脱保護の時期に関しては、以下の通りである。
通常は重合が完了し、高分子化合物が作製できた段階で行うことが一般的であり、重合終了後に脱保護を行うことで該高分子化合物を得ることができる。
一方、本発明においては、基板表面に該高分子化合物を被覆することにより糖鎖の非特異的吸着を抑制する性質、及び糖鎖を固定化する性質を容易に付与することが可能である。
この場合、脱保護を行った一級アミノ基を持つ高分子化合物を被覆することも可能であるが、反応性の高い一級アミノ基を持つ高分子材料を溶液にして被覆することは、場合によっては作業中に一級アミノ基が反応して不活化することも考えられる。
従って、脱保護する直前で高分子化合物を精製し、基板表面を被覆した後に、脱保護の反応を行い、基板表面上に一級アミノ基が存在する状態を形成することが望ましい。
基板表面への高分子化合物の被覆は、例えば有機溶剤に高分子化合物を0.05〜50重量%濃度になるように溶解した高分子溶液を調製し、浸漬、吹きつけなどの公知の方法で基板表面に塗布した後、室温下ないしは加温下にて乾燥させることにより行われる。
有機溶剤としてはエタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノール、シクロヘキサノールなどアルコール類、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、シクロヘキサノンなどを挙げることができる。これらの溶媒は、単独または2種以上の組み合わせで用いられる。中でも、エタノール、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブチルアルコール、n−ペンタノールシクロヘキサノールなどアルコール類がプラスチック基板を変性させず、乾燥させやすいため好ましい。
本発明に用いる「基板」としては、スライド形状基板、96穴プレート、容器、マイクロフルイディスク基板が好ましい。例えば、プラスチック製基板、ガラス製基板、金属蒸着膜を有する基板などを用いることができる。プラスチック製基板の具体例としては、ポリスチレン、環状ポリオレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートを素材とした基板などが挙げられる。
特に、蛍光観察に用いる基板としては、環状ポリオレフィンポリマー、シクロオレフィンポリマーが有用である。前記基板を用いる場合においては、前記高分子化合物の疎水基が、シクロヘキシル基であると、基板との相互作用が良好で、同じ組成比の高分子材料を他の基板(例えばポリスチレンやガラス基板)に塗布した場合に比べ、吸着量が高くバックグランド値が低い良好な結果となる。
また、環状ポリオレフィンポリマーに、前記高分子化合物を塗布する場合、アミノオキシモノマー100mol%の高分子化合物に関しては、塗布することができない。一方、ポリスチレンポリマーには塗布可能であるが、夾雑物の非特異的吸着は抑制されず汎用性に乏しい。
糖鎖の基板への固定化方法としては、スポッターを使用して糖鎖が溶解した溶液を点着する方法、糖鎖が溶解した溶液を容器などに分注して固定化する方法などがある。
糖鎖を溶解する溶液としては各種緩衝材が好適に用いられる。特に限定されないが、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、トリス塩酸緩衝剤、トリス酢酸緩衝剤、PBS緩衝剤、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、HEPES(N−2−hydroxyetylpiperazine−N’−ethanesulphonic acid)緩衝剤、MOPS(3−(N−morpholino)propanesulphonicacid)緩衝剤などが用いられる。
糖鎖を溶解する場合、溶液のpHとしては、2〜8であることが好ましい。糖鎖の溶液中の濃度としては特に限定されないが、0.0001mg/mlから10mg/mlであることが好ましい。糖鎖の溶液を固定化する温度としては0℃から100℃が好ましい。
本発明における「基板」として、例えば、糖鎖を捕捉する官能基を含む高分子化合物で被覆された基板を用いる場合には、基板を被覆している高分子化合物における余剰官能基をキャッピングする工程を含むことができる。
本発明において「余剰官能基」とは、糖鎖が捕捉されなかった官能基を意味する。余剰官能基のキャッピングは、例えば、酸無水物との反応やオキソ酸との縮合により行うことができる。酸無水物は特に限定されないが、反応性からカルボン酸無水物が好ましい。カルボン酸無水物の例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸などが挙げられるが、中でも無水酢酸、無水コハク酸がより好ましい。具体的には、1〜30mg/mLの無水コハク酸または無水酢酸水溶液に10分〜一晩浸漬する。また、オキソ酸も特に限定されないが、反応性からカルボン酸が好ましい。カルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸などが挙げられるが、中でもギ酸、酢酸が好ましい。この場合、弱酸性条件下、水溶性カルボジイミドを用いて縮合するのが簡便である。
本発明においては、こうして製造された、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイが、シアロ糖鎖におけるシアル酸の加水分解により、品質劣化することが見出された。従って、本発明における品質を評価する方法は、糖鎖アレイ上のシアロ糖鎖におけるシアル酸の加水分解を検出することを含むものである。
シアル酸の加水分解の検出は、例えば、シアロ糖鎖に結合活性を有する物質であって、シアロ糖鎖におけるシアル酸の加水分解により、その結合活性が減少または消失する物質を用いることにより行うことができる。このような物質としては、シアロ糖鎖またはシアル酸が加水分解された糖鎖を認識するタンパク質(例えば、毒素、抗体、レクチンなど)が挙げられる。シアロ糖鎖を認識するタンパク質としては、例えば、SNA、MAL、WGAなどのレクチン(J−オイルミルズ、VECTOR Laboratoriesなどから市販されている)、コレラトキシン、ボツリヌストキシン、シガトキシン、百日咳毒素などの毒素やヘマグルチニンなどのインフルエンザウィルスが持つタンパク質(The American Society For Microbiology, Volume 2, Number 10, 2007, 489−497)などを用いることができる。
本実施例において、加湿条件下では、各種ガングリオシドにおけるシアル酸の加水分解が進行し、シアル酸が複数結合しているガングリオシドについては、シアル酸が1つにまで加水分解されたものが検出された。また、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドについても、そのシアル酸の加水分解が検出された。このように糖鎖アレイに固定化する糖鎖に、シアル酸の結合数が異なる2種以上のガングリオシドが含まれる場合には、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドを検出することによって、シアル酸の加水分解を検出することができる。コレラトキシンBサブユニットは、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドであるGM1aの検出に好適に用いることができる。
こうして検出した結果、シアル酸の加水分解が検出された場合には、糖鎖アレイの品質が劣化していると評価され、一方、シアル酸の加水分解が検出されなかった場合には、糖鎖アレイの品質が劣化していないと評価される。
また、本発明者らは、本実施例に示す通り、糖鎖アレイを乾燥条件下で保存することによって、糖鎖アレイの品質の劣化を防止し得ることを見出した。従って、本発明は、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイを保存する方法であって、乾燥条件下で保存することを特徴とする方法をも提供するものである。
ここで「乾燥条件」とは、湿度が40%以下、好ましくは30%以下(例えば、20%以下、10%以下、5%以下、3%以下、1%以下、0%)の条件である。
糖鎖アレイを乾燥条件下で保存する方法としては、例えば、真空包装して乾燥材を同梱する方法が挙げられる。乾燥条件下における温度条件は、通常、−80〜4℃であるが、−80〜−20℃であることがシアル酸の加水分解による品質劣化を防止する上で好ましい。ただし、本実施例に示す通り、乾燥条件下においては、上記より高い温度での保存も可能である。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例> コレラトキシンBサブユニットによるマイクロアレイ上で劣化した糖鎖の検出
(糖鎖固定化マイクロアレイの作製)
マイクロアレイの作製には住友ベークライト製、環状ポリオレフィン樹脂製のスライドガラス形状のプラスチックス基板を使用した。
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−シクロヘキシルメタクリレート−N−[2−[2−[2−(t−ブトキシカルボニルアミノオキシアセチルアミノ)エトキシ]エトキシ]エチル]−メタクリルアミド共重合体の1.0重量%エタノール溶液にスライドを浸漬して高分子化合物を塗布した。
塗布後、2M HClで37℃、2時間処理し、Boc基を脱保護した。
(糖鎖の固定化)
GM1a、GD1a、GD1b、GT1a、GT1cの5種類の糖鎖(ELICITYL社、GLY096、GLY098、GLY099、GLY100、GLY101)を下記溶液で0.25mMに調製し、基板上にスポットした後に80℃で1時間反応させて基板に糖鎖を固定化した。
溶液:100mM NaOAc buffer(pH5.0)+界面活性剤(0.01%TritonX−100、0.01%PVA(重合度=1500))
(官能基のキャッピング)
基板を水洗した後、10mg/mLの無水コハク酸(和光純薬工業製、198−04355)水溶液に浸漬し、室温にて1時間静置した。その後基板を水洗し、乾燥させた。
(糖鎖の劣化処理)
基板を下記の条件で1週間保存した。
(1)真空包装して乾燥材を同梱し、−20℃にて保存
(2)加湿条件下で、37℃にて保存
(3)加湿条件下で、60℃にて保存
(4)真空包装して乾燥材を同梱し、60℃にて保存
(固定糖鎖の検出)
GM1aと特異的に結合するコレラトキシンBサブユニットの蛍光標識体であるChorela Toxin Subunit B Alexa Fluor 555 Conjugate(Invitrogen社、C34776)を下記溶液で10μg/mLに調製した。
溶液:50mM Tris・HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM CaCl、MnCl、MgCl、0.05%Tween20
基板上に溶液をアプライし、室温で1時間反応した。反応後、下記溶液で洗浄した後に更に純水で洗浄し、基板を乾燥させた。
溶液:50mM Tris・HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM CaCl、MnCl、MgCl
測定はマイクロアレイリーダー、ScanArrayLite(PerkinElmer製)を用いてAlexa Fluor 555の蛍光強度を測定した(Laser=90、PMT=45)。
結果を表1に示す。
加湿条件下ではGD1a、GD1b、GT1aおよびGT1cをスポットした領域におけるシグナルが上昇した。これはシアル酸の加水分解により、これらの糖鎖がGM1aに変化したことが原因と考えられる。
GM1aをスポットしたグリッドにおいてもシグナルが減少した。これはシアル酸の加水分解により、GM1aに対するコレラトキシンBサブユニットの結合が減少したことが原因と考えられる。
以上から、加湿条件下では、各種ガングリオシドのシアル酸が加水分解され、シアル酸が複数結合したガングリオシドについては、シアル酸が1つにまで加水分解されたものが生じることが判明した。
本発明によれば、シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイの品質を簡便に評価することができ、また、当該糖鎖アレイを効果的に保存することができるため、本発明は、糖鎖アレイの品質管理に大きく貢献しうるものである。

Claims (7)

  1. シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイの品質を評価する方法であって、シアロ糖鎖におけるシアル酸の加水分解を検出することを含み、当該加水分解が検出された場合に品質が劣化していると評価され、当該加水分解が検出されない場合に品質が劣化していないと評価される方法。
  2. 糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にガングリオシドが含まれる、請求項1に記載の方法。
  3. 糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にシアル酸の結合数が異なる2種以上のガングリオシドが含まれ、シアル酸が1つ結合しているガングリオシドを検出することによってシアル酸の加水分解を検出する、請求項2に記載の方法。
  4. コレラトキシンBサブユニットを用いてシアル酸が1つ結合しているガングリオシドを検出する、請求項3に記載の方法。
  5. シアロ糖鎖を含む複数の糖鎖が固定化された糖鎖アレイを保存する方法であって、乾燥条件下で保存することを特徴とする方法。
  6. 糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にガングリオシドが含まれる、請求項5に記載の方法。
  7. 糖鎖アレイに固定化されるシアロ糖鎖にシアル酸の結合数が異なる2種以上のガングリオシドが含まれる、請求項6に記載の方法。
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