JP2013199433A - 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物 - Google Patents

光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物 Download PDF

Info

Publication number
JP2013199433A
JP2013199433A JP2012066762A JP2012066762A JP2013199433A JP 2013199433 A JP2013199433 A JP 2013199433A JP 2012066762 A JP2012066762 A JP 2012066762A JP 2012066762 A JP2012066762 A JP 2012066762A JP 2013199433 A JP2013199433 A JP 2013199433A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
compound
ink
ink composition
water
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2012066762A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5972623B2 (ja
Inventor
Katsuyuki Yofu
克行 養父
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Corp
Original Assignee
Fujifilm Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fujifilm Corp filed Critical Fujifilm Corp
Priority to JP2012066762A priority Critical patent/JP5972623B2/ja
Publication of JP2013199433A publication Critical patent/JP2013199433A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5972623B2 publication Critical patent/JP5972623B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Ink Jet (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)
  • Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
  • Polymerisation Methods In General (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)

Abstract

【課題】水溶性の光重合開始剤として有用な化合物、および、それを含有するインク組成物の提供。
【解決手段】式(1)で表される化合物。
Figure 2013199433

[式中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つは、R12−X−*で表される基である(式中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。R12は置換基を表す。*はベンゼン環との結合部位を表す。)。また、R11は、アリール基及びヘテロ環基を除く置換基を表し、複数のR11は、同じであっても異なってもよい。]
【選択図】なし

Description

本発明は、光重合開始剤として有用な化合物に関する。また、本発明は、当該化合物を含有するインク組成物及びインクセットに関する。さらに、本発明は、当該インク組成物又はインクセットを用いた画像形成方法に関する。
近年、環境保護や安全性の観点から、溶剤等として従来広く用いられてきた揮発性有機化合物(VOC)の低減化が求められており、かわって、VOCの使用量を低減化しうる水系の光硬化システムが注目されている。印刷用インクの分野においても、媒体に水やアルコール等の水溶性溶媒を用いた水系の光硬化型インクが種々提案されており、インクジェット記録方式にも適用されている。
インクジェット記録方式は、印刷装置が安価であり、かつ、印刷時に版を必要とせず、必要とされる画像部のみにインクを吐出し記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、特に小ロット生産の場合にランニングコストが安いという利点がある。さらに、騒音が少なく、優れた画像記録方式として近年注目されている。
光硬化型インクジェット記録用インクは、通常、重合性化合物と重合開始剤とを含有する水性インクによって画像を形成し、光を照射することで画像を硬化させて定着させる。光源としては紫外(UV)領域の光を用いるのが一般的である。光照射によりインク成分の大部分が硬化するため、溶剤系インクと比べて乾燥性に優れ、また、画像がにじみにくいことから、種々の記録媒体に印字できる点で優れた方式である。
このような水系の光硬化型インクジェット記録用インクには、水溶性の光重合開始剤が用いられるが、現在のところ市販されている光重合開始剤の中で、水系で用いることができるものとしては、α−ヒドロキシアセトフェノン系(例えば、特許文献1)など、非常に種類が限られている。
さらに近年、省エネ・省スペースの観点から、従来の水銀灯等にかえて、UV光源のLED化が望まれている。しかし、前述のα−ヒドロキシアセトフェノン系光重合開始剤は吸収波長が短波長(280nm付近)であり、UV−LED光源(365nm付近)で重合を開始することができない。これに対し、365nm付近の光感度が高い光重合開始剤として、ベンジルケタール系の化合物が報告されている(例えば、特許文献2〜4)。しかし、これらの化合物も水等の水溶性溶媒への溶解性が未だ十分とは言えない。
特開平6−228218号公報 特開2008−247939号公報 特開2008−247940号公報 特開2009−138150号公報
本発明は、紫外線に対する高い感度と、水に対する高い溶解性とを併せ持ち、水溶性の光重合開始剤として有用な化合物を提供することを課題とする。特に、当該化合物は、365nm付近の波長の光に高い感度を有しており、UV−LED光源による感光に適している。
また、本発明は、当該化合物を光重合開始剤として配合した、光硬化性に優れたインク組成物を提供することを課題とする。さらに、本発明は、当該インク組成物を用いたインクセット、及び画像記録方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った。その結果、特定の構造を有するベンジルチオケタール化合物が、高い水溶性と紫外領域の光に対する優れた感光性とを備えること、そして、当該化合物を用いたインク組成物は紫外線光源、特にUV−LED光源に対し良好な硬化性を示すことを見出した。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。
すなわち、上記課題は下記の手段により解決された。
<1> 下記一般式(1)で表される化合物。
Figure 2013199433
(一般式(1)中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基である。R11は、アリール基及びヘテロ環基を除く置換基を表す。複数のR11は、同じであっても異なってもよい。)
Figure 2013199433
(一般式(2)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。R12は置換基を表す。*はベンゼン環との結合部位を表す。)
<2> 前記R12が、アルキル基、又は−Y−Zで表される基(Yは炭素原子数1〜10の2価の連結基を表し、Zは水溶性基を表す)である、<1>項記載の化合物。
<3> 前記Zの水溶性基が、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基である、<2>項記載の化合物。
<4> 前記Yが、アルキレン基、又は−R13OR14−で表される基(R13及びR14はそれぞれ独立にアルキレン基を表す)である<2>又は<3>項記載の化合物。
<5> 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である<1>〜<4>項のいずれか1項に記載の化合物。
Figure 2013199433
(一般式(3)中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜Rの少なくとも1つは、前記一般式(2)で表される基である。Yは炭素原子数1〜10の2価の連結基を表す。Zは水溶性基を表す。複数のY、Zは、同じであっても異なってもよい。)
<6> 前記Zの水溶性基が、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基である、<5>項記載の化合物。
<7> 前記Yが、アルキレン基、又は−R15OR16−で表される基(R15及びR16はそれぞれ独立にアルキレン基を表す)である、<5>又は<6>項記載の化合物。
<8> 前記R〜R10における置換基がアルキル基である<1>〜<7>項のいずれか1項に記載の化合物。
<9> 前記Rが前記一般式(2)で表される基である<1>〜<8>項のいずれか1項に記載の化合物。
<10> 前記R〜R10の少なくとも1つが、前記一般式(2)で表される基である<1>〜<9>項のいずれか1項に記載の化合物。
<11> <1>〜<10>項のいずれか1項に記載の化合物からなる光重合開始剤。
<12> <11>項記載の光重合開始剤、及び重合性化合物を含有するインク組成物。
<13> 前記重合性化合物が、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、及びビニル化合物から選ばれる少なくとも1種である<12>項に記載のインク組成物。
<14> 前記重合性化合物が、2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物である<12>又は<13>項に記載のインク組成物。
<15> 水系媒体を含有する<12>〜<14>項のいずれか1項に記載のインク組成物。
<16> 着色剤を含有する<12>〜<15>項のいずれか1項に記載のインク組成物。
<17> <12>〜<16>項のいずれか1項に記載のインク組成物と、該水性インク組成物を凝集する処理液とからなるインクセット。
<18> 前記処理液が、酸、多価金属塩、及びカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する<17>項記載のインクセット。
<19> <17>又は<18>項記載の処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、<12>〜<16>項のいずれか1項に記載のインク組成物を、記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、を含む画像形成方法。
<20> 前記記録媒体が塗工紙である<19>項記載の画像形成方法。
<21> 前記処理液付与工程がインク付与工程よりも先に行われる<19>又は<20>項記載の画像形成方法。
<22> 前記インク付与工程が、インクジェット記録方式によりインクを付与するものである<19>〜<21>項のいずれか1項に記載の画像形成方法。
本発明において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート及びメタクリレートの双方又はいずれかを表し、「(メタ)アクリルアミド」はアクリルアミド及びメタクリルアミドの双方又はいずれかを表す。
また、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明によれば、水溶性の光重合開始剤として有用な化合物を提供することができる。また、本発明によれば、当該化合物を光重合開始剤として配合した、光硬化性に優れたインク組成物を提供することができる。さらに、本発明によれば、当該インク組成物を用いたインクセット、及び画像記録方法を提供することができる。
本発明の化合物は、下記一般式(1)で表される。
なお、本発明において置換基に関してxxx基というときには、そのxxx基に任意の置換基を有していてもよい。また、同一の符合で示された基が複数ある場合は、互いに同じであっても異なっていてもよい。
Figure 2013199433
一般式(1)中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つには、下記一般式(2)で表される基が置換している。
〜R10の下記一般式(2)で表される基以外の置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(直鎖、分岐、環状(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基等)を含む)、アルケニル基(直鎖、分岐、環状(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基等)を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基(又はその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH))、ホスファト基(−OPO(OH)、又はその塩)、スルファト基(−OSOH、又はその塩)、その他の公知の置換基が挙げられる。以下、これらの置換基をまとめて「置換基R」という。
中でも、R〜R10として好ましくは、水素原子、脂肪族炭化水素基(より好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(より好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基である。さらに好ましくは、水素原子、アルキル基であり、特に好ましくは水素原子、無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜10であり、より好ましくは炭素原子数1〜5、特に好ましくは炭素原子数1〜3)である。
一般式(1)において、R〜Rの少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基である。
Figure 2013199433
一般式(2)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、R12は置換基を表す。また、*はベンゼン環との結合部位を表す。
12の置換基としては、前述の置換基Rが挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素基(より好ましくは置換されてよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(より好ましくは置換されてよいフェニル基)、又はヘテロ環基である。より好ましくは、置換されてよいアルキル基又はアルケニル基である。R12として特に好ましくは、アルキル基(無置換のアルキル基が好ましく、炭素原子数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である)、又は−Y−Zで表される基である。ここで、Yは、炭素原子数1〜10の2価の連結基を表し、Zは、水溶性基を表す。
は、好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは炭素原子数1〜3の2価の連結基である。当該連結基は、アルキレン基、又は−R13OR14−で表される基が好ましい。ここで、R13及びR14は、それぞれ独立にアルキレン基を表す。
の水溶性基としては、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、4級アンモニウム(塩)基、アンモニウム(塩)基などが挙げられる。これらの水溶性基は塩の状態であってもよく、水酸基、カルボン酸基、スルホン酸基等と塩を形成する対イオンの例としては、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)が、4級アンモニウム基やアンモニウム基等と塩を形成する対イオンの例としては、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)が、それぞれ挙げられる。以下、これらの水溶性基及びその塩を「水溶性基W」という。これらの中でも、Zは、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基であることが好ましい。
前記−Y−Zで表される基におけるYとZとの組み合わせとしては、Yがアルキレン基でありZが水酸基である組み合わせ、Yがアルキレン基でありZがカルボン酸(塩)基である組み合わせ、Yがアルキレン基でありZがスルホン酸(塩)基である組み合わせ、Yがアルキレン基でありZがアンモニウム(塩)基である組み合わせが好ましい。
一般式(1)中、R11は、アリール基及びヘテロ環基を除く置換基を表す。一般式(1)で表される化合物は、後述のように光等の活性エネルギー線の照射によってラジカルを発生する化合物であり、発生するラジカルの活性を考慮して、R11の置換基からはアリール基及びヘテロ環基が除かれる。
11の置換基として、具体的には前述の置換基Rからアリール基及びヘテロ環基を除いた基が挙げられる。好ましくは、脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは置換されてよいアルキル基又はアルケニル基である。R11として特に好ましくは、アルキル基(無置換のアルキル基が好ましく、炭素原子数は好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜3である)、又は下記一般式(3)の−Y−Zで表される基である。
一般式(1)中の複数のR11は、同じであっても異なってもよく、同じであることが好ましい。
前記一般式(1)で表される化合物は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2013199433
一般式(3)中、R〜R10は前記一般式(1)と同義であり、好ましい範囲も同様である。R〜Rの少なくとも1つは、前記一般式(2)で表される基である。
は前記Yと同義で、炭素原子数1〜10の2価の連結基を表す。また、好ましい範囲も前記Yと同様で、好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは炭素原子数1〜3の2価の連結基である。当該連結基は、アルキレン基、又は−R15OR16−(R15及びR16は、それぞれ独立にアルキレン基を表す)で表される基が好ましい。
は前記Zと同義で、水溶性基を表し、水溶性基としては前述の「水溶性基W」が挙げられる。また、好ましい範囲も前記Zと同様で、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基が好ましい。
また、YとZとの好ましい組み合わせも、前記YとZとの組み合わせと同様である。
一般式(3)中、複数のY、Zは、同じであっても異なってもよく、同じであることが好ましい。
本発明の一般式(1)又は(3)で表される化合物は、一般式(2)で表される基がベンゼン環のパラ位に置換している化合物であることが好ましい。すなわち、一般式(1)又は(3)において、少なくともRが一般式(2)で表される基であることが好ましい。さらには、R〜R10の少なくとも1つが一般式(2)で表される基であることが好ましく、少なくともRが一般式(2)で表される基であることがより好ましい。特に好ましくは、R及びRが少なくとも一般式(2)で表される基である化合物である。
一般式(1)又は(3)中に、一般式(2)で表される基が複数含まれる場合、複数のX、R12はそれぞれ同じであっても異なってもよく、同じであることが好ましい。
以下に、前記一般式(1)又は(3)で表される化合物(以下、まとめて「本発明の化合物」ともいう)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013199433
Figure 2013199433
Figure 2013199433
本発明の化合物は、ジアリールジケトン化合物とメルカプト化合物(チオール基を有する化合物)とを溶媒中で反応させることにより合成することができる。反応には適宜触媒を用いてもよい。
ジアリールジケトン化合物及びメルカプト化合物は、目的とする化合物の構造に応じて、対応する置換基(例えば、上述のR〜R11、一般式(2)で表される基等)で置換されているものを適宜用いることができる。このようなジアリールジケトン化合物は、市販品を入手、又は通常の合成方法により合成できる。ジアリールジケトン化合物の合成方法としては、例えば、特開2008−247940号公報等に記載の方法又はこれに準じた方法が例示できる。メルカプト化合物も市販品を入手、又は通常の合成方法により合成できる。
本発明の化合物は、後述の実施例で実証されているように、水やアルコール等の水溶性有機溶剤に対し良好な溶解性を示す。本発明の化合物の溶解度は、特に限定されないが、20℃における水への溶解度が2質量%以上であることが好ましく、2.5質量%以上であることがより好ましく、3質量%以上であることが特に好ましい。
また、本発明の化合物は、紫外領域の光、特に365nm付近の光に対して高い感度を示し、ラジカルを発生する。発生したラジカルは、重合性化合物の重合反応を促進する。これらの特性により、本発明の化合物は水溶性の光重合開始剤として好適に用いることができる。本発明の化合物の光重合開始剤としての使用態様として、下記に説明する光硬化型の水溶性インク組成物が例示できる。
<インク組成物>
本発明のインク組成物は、光重合開始剤として少なくとも前記一般式(1)又は(3)で表される本発明の化合物を含有し、さらに重合性化合物を含有してなる。本発明の化合物からなる光重合開始剤と重合性化合物とを含むことにより、硬化感度に優れたインク組成物が得られ、当該インク組成物を用いて記録媒体上に画像を形成した後、光等の活性エネルギー線を照射することで、耐ブロッキング性に優れた画像を形成することができる。
また、本発明の化合物からなる光重合開始剤は水溶性であるため、水や水溶性溶媒を媒体として用いた水性インク組成物に適している。この観点から、本発明のインク組成物は、上記の成分に加えて、水系媒体を含有することが好ましい。また、本発明のインク組成物は、着色剤(色材)を含有しないクリアインク(無色インク)組成物とすることも、着色剤を含有するインク組成物とすることもできるが、着色剤を含有することが好ましい。
また、本発明のインク組成物は、特にインクジェット用のインク組成物に適している。
以下、本発明のインク組成物の各成分について説明する。
[光重合開始剤]
本発明のインク組成物に用いる光重合開始剤は、前記一般式(1)又は(3)で表される本発明の化合物(以下、「本発明の光重合開始剤」ともいう)である。光重合開始剤は、本発明の化合物を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。インク組成物中の光重合開始剤の含有量は、固形成分の総量に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、「固形成分の総量」又は「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤成分を除いた成分の総質量をいう。
また、重合性化合物100質量部に対して、光重合開始剤を0.1〜30質量部用いることが好ましく、1〜20質量部用いることがより好ましく、5〜15質量部用いることがさらに好ましい。
[重合性化合物]
本発明のインク組成物に用いる重合性化合物は、本発明の光重合開始剤によって重合反応を開始しうる化合物であれば特に限定されず、分子内にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物等を利用できる。重合性化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマー等のいずれであってもよい。
重合性化合物は、インク組成物の吐出安定性の観点から、水溶性の化合物であることが好ましい。重合性化合物の溶解度は、特に限定されないが、25℃における水への溶解度が2質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、20質量%以上であることが特に好ましく、任意の割合で水と均一に混合するものが最も好ましい。
このような重合性化合物として、具体的には、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、マレイミド化合物、ビニルスルホン化合物、N−ビニルアミド化合物、それらの誘導体等が例示できる。これらの化合物は2官能以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物であり、特に好ましくは、2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物である。また、本発明のインク組成物には、これらの重合性化合物を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合は、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、ビニル化合物、マレイミド化合物、ビニルスルホン化合物、及びN−ビニルアミド化合物から選択される2種以上を混合して用いることが好ましく、その内、少なくとも1種が(メタ)アクリルアミド化合物であることがより好ましい。
また、上記重合性化合物は、水溶性向上の観点から、分子内にポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、イオン性基(例えばカルボキシル基、スルホ基など)、水酸基等を有していてもよい。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、単官能(メタ)アクリルアミド化合物及び多官能(メタ)アクリルアミド化合物のいずれも用いることができ、好ましくは多官能(メタ)アクリルアミド化合物である。以下に単官能(メタ)アクリルアミド化合物及び多官能(メタ)アクリルアミド化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2013199433
Figure 2013199433
Figure 2013199433
上記に例示してモノマーの中でも、硬化性、溶解性の観点から、monomer21、27、28、41、43、48が好ましい。
これらの(メタ)アクリルアミド化合物は、通常のアクリルアミド化合物の合成方法(例えば、参考文献としてJournal of the American Chemical Society, 1979, 101, 5383)を用いて合成することができる。
(メタ)アクリレート化合物としては、単官能(メタ)アクリレート化合物((メタ)アクリレート基を1つ有する化合物)及び多官能(メタ)アクリレート化合物のいずれも用いることができ、好ましくは多官能(メタ)アクリレート化合物である。
具体的には、単官能(メタ)アクリレート化合物として、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソアミルスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルジグリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート、シクロペンテニルアクリレート、シクロペンテニルオキシエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレート化合物としては、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールエチレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート(ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド2モル付加物をジアクリレート化した化合物)、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ビニル化合物として、具体的には、ジビニルベンゼン、N−ビニル−ε−カプロラクタム、スチレン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルホルムアミド、ビニルアルコール、アクロレイン、2−ビニルクロトンアルデヒド、2−ビニルフラン、3−ビニルフラン、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、3−メチルフェニルエーテル、ビニルアミン、アクリロニトリル、ビニルベンジルアルコール、ビニルベンジルアミン、酢酸ビニル、ビニルスルホン酸、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、シクロヘキサンカルボン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、メタクリル酸ビニル、ソルビン酸ビニル等が挙げられる。
インク組成物中の重合性化合物の含有量は、固形成分の総量に対して、1〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、1〜30質量%であることがさらに好ましい。
[水系媒体]
本発明のインク組成物は媒体を含有してもよく、水系媒体を含有することが好ましい。水系媒体は少なくとも水を含み、必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含んでなる。
水系媒体に用いられる水は、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水が好ましい。
また、インク組成物中の水の含有量は、目的に応じて適宜選択されうるが、通常、インク組成物の全質量に対して、10〜95質量%であることが好ましく、30〜90質量%であることがより好ましい。
−有機溶剤−
水系媒体は、水溶性有機溶剤を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また、浸透促進には、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
水溶性有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
インク組成物中の水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、1〜60質量%が好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−イソプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
乾燥防止や湿潤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
本発明に用いる水溶性有機溶剤は、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、下記構造式(I)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
Figure 2013199433
上記構造式(I)において、l、m、およびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、l+m+n=3〜15を満たし、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。l+m+nの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(I)中、AOは、エチレンオキシ(EO)および/又はプロピレンオキシ(PO)を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。前記(AO)、(AO)、および(AO)における各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
以下、前記構造式(I)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。なお、例示化合物中、「POP(3)グリセリルエーテル」との記載は、グリセリンにプロピレンオキシ基が合計で3つ結合したグリセリルエーテルであることを意味し、他の記載についても同様である。
Figure 2013199433
また、本発明のインク組成物に用いる水溶性有機溶剤は、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、以下に例示する水溶性有機溶剤であることも好ましい。

・n−CO(AO)−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・n−CO(AO)10−H AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・HO(AO)40−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3)
・HO(AO)55−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6)
・HO(PO)−H
・HO(PO)−H
・1,2−ヘキサンジオール
前記構造式(I)で表される水溶性有機溶剤及び上記に例示した水溶性有機溶剤の全水溶性有機溶剤中の含有割合は、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。この範囲内とすることにより、インクの安定性や吐出性を悪化させずにカールを抑制することができ好ましい。
[着色剤]
本発明のインク組成物は着色剤を含有することが好ましい。
本発明のインク組成物(以下、単に「インク」ということがある)は、単色画像の形成のみならず、多色画像(例えばフルカラー画像)の形成にも用いることができ、所望の1色又は2色以上を選択して画像形成することができる。フルカラー画像を形成する場合、インク組成物は、例えば、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、およびイエロー色調インクとして用いることができる。また、色調を整えるために、更にブラック色調インクとして用いてもよい。
また本発明のインク組成物は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の色調以外のレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)、白色(W)の色調のインク組成物や、いわゆる印刷分野における特色のインク組成物等として用いることができる。
上記の各色調のインク組成物は、着色材(例えば顔料)の色相を所望により変更することにより調製できる。
本発明のインク組成物は、着色剤として、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。インク着色性の観点からは、水に殆ど不溶であるか又は難溶である着色剤が好ましい。具体的には、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、さらに耐光性を考慮すると、顔料であることがより好ましい。
本発明のインク組成物に用いられる顔料の種類に特に制限はなく、通常の有機及び無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料として、具体的には、特開2007−100071号公報の段落番号[0142]〜[0145]に記載の顔料などが挙げられる。
また、本発明において着色成分として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを着色剤として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料およびこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(着色剤)はそのまま、あるいは必要に応じて分散剤を併用して用いることができる。分散剤としては後述する分散剤を好適に用いることができる。
上記の着色剤は、1種単独で使用してもよく、また、上記の複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
インク組成物中の着色剤(特に顔料)の含有量は、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
[分散剤]
本発明のインク組成物に用いる着色剤が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散された着色粒子(以下、単に「着色粒子」という)を構成していることが好ましい。
前記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤の何れでもよい。本発明においては、分散安定性とインクジェット方式に適用した場合の吐出性の観点から、水不溶性ポリマー分散剤であることが好ましい。
−水不溶性ポリマー分散剤−
本発明における水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)としては、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限は無く、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
本発明における親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
本発明における水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
本発明に用いる水不溶性ポリマー分散剤は、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
また、前記水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
本発明における着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料に対し、分散剤が10〜90質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
本発明における前記着色粒子は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えて、その他の分散剤を含んでいてもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。
本発明における着色粒子は、分散安定性と吐出性の観点から、前記顔料および前記水不溶性ポリマー分散剤を含んで構成されていることが好ましく、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマー分散剤で被覆されて構成されていることが好ましい。かかる着色粒子は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶媒(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで着色粒子分散物として得ることができる。
前記着色粒子分散物は、例えば、前記顔料と前記水不溶性ポリマー分散剤と該分散剤を溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、着色剤が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
有機溶剤は、前記分散剤を溶解または分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃下で水に対する溶解度が10〜50質量%以下であるものが好ましい。
前記着色粒子の分散物は、更に詳細には、下記の工程(1)および工程(2)を含む製造方法で製造することができるが、これに限定されるものではない。
工程(1):顔料、分散剤、および該分散剤を溶解または分散する有機溶剤と共に、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液を含有する混合物を分散処理する工程
工程(2):分散処理後の混合物から、前記有機溶剤の少なくとも一部を除去する工程
前記工程(1)では、まず、前記分散剤を有機溶剤に溶解または分散させて混合物を得る(混合工程)。次に、着色剤、塩基性物質を含み、水を主成分とする溶液、水、および必要に応じて界面活性剤等を、前記混合物に加えて混合、分散処理し、水中油型の分散物を得る。
前記塩基性物質は、ポリマーが有することがあるアニオン性基(好ましくは、カルボキシル基)の中和に用いられる。前記アニオン性基の中和度には、特に限定がない。通常、最終的に得られる着色剤粒子の分散物の液性が、例えばpHが4.5〜10であるものが好ましい。前記ポリマーの望まれる中和度により、pHを決めることもできる。
前記有機溶剤の好ましい例としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒が挙げられる。これらのうちアルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、第3級ブタノール、イソブタノール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、イソプロパノール、アセトンおよびメチルエチルケトンが好ましく、特に、メチルエチルケトンが好ましい。有機溶剤は、1種単独で用いても複数併用してもよい。
前記着色粒子の分散物の製造においては、二本ロール、三本ロール、ボールミル、トロンミル、ディスパー、ニーダー、コニーダー、ホモジナイザー、ブレンダー、単軸若しくは2軸の押出機等を用いて、強い剪断力を与えながら混練分散処理を行なうことができる。なお、混練、分散についての詳細は、T.C. Patton著”Paint Flow and Pigment Dispersion”(1964年 John Wiley and Sons社刊)等に記載されている。
また、必要に応じて、縦型もしくは横型のサンドグラインダー、ピンミル、スリットミル、超音波分散機等を用い、0.01〜1mmの粒径のガラス、ジルコニア等でできたビーズを用いた微分散処理を行うことにより得ることができる。
本発明における着色粒子分散物の製造方法における有機溶剤の除去は、特に方法が限定されるものではなく、減圧蒸留等の公知に方法により除去できる。
このようにして得られた着色粒子分散物における着色粒子は良好な分散状態を保ち、かつ、得られた着色粒子分散物は経時安定性に優れたものとなる。
本発明のインク組成物において、上記着色粒子は、1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明において着色剤(または着色粒子)の体積平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、着色剤(または着色粒子)の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、着色剤(または着色粒子)の体積平均粒径および粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
[他の重合開始剤]
本発明のインク組成物は、本発明の化合物以外の重合開始剤(以下、「他の重合開始剤」という)を任意量、含有してもよい。
他の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましい。このラジカル重合開始剤として具体的には、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機化酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。より具体的には、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
他の重合開始剤は、水不溶性の開始剤を水分散させたもの、水溶性の開始剤のいずれであってもよいが、水溶性の重合開始剤であることが好ましい。なお、ここでいう水溶性とは、25℃において水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の開始剤は、25℃において水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
他の重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
[樹脂粒子]
本発明のインク組成物は、樹脂粒子を含有することが好ましい。樹脂粒子を含むことにより、インク組成物の記録媒体への定着性、画像の耐擦性、耐ブロッキング性を効果的に向上させることができる。
また、樹脂粒子は、後述の処理液又はこれを乾燥させた紙領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、インク組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
本発明に用いる樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
本発明のインク組成物において、樹脂粒子は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
また樹脂粒子の平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
インク組成物中の樹脂粒子の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
[界面活性剤]
本発明のインク組成物は、必要に応じて、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体がより好ましい。
本発明のインク組成物をインクジェット記録方式に用いる場合、インク組成物の吐出を良好に行う観点から、インク組成物の表面張力が20〜60mN/mとなるよう界面活性剤(表面張力調整剤)の量を調整することが好ましく、より好ましくは20〜45mN/mとなる量であり、さらに好ましくは25〜40mN/mとなる量である。
インク組成物中の界面活性剤の含有量は、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、インク組成物の全質量に対して、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
[その他成分]
インク組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
インク組成物中の防黴剤の含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.02〜1.00質量%の範囲とするのが好ましい。
pH調整剤としては、調合されるインク組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
[インク組成物の物性]
本発明のインク組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
また、本発明のインク組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用い、インク組成物を25℃の条件下で測定される。
インク組成物のpHは、インク組成物の安定性の観点から、pH6〜11が好ましい。後述のインクセットとする場合は、処理液との接触によってインク組成物が高速で凝集することが好ましいため、pH7〜10がより好ましく、pH7〜9がさらに好ましい。
<インクセット>
本発明のインクセットは、上述した本発明のインク組成物と、当該インク組成物と接触して凝集体を形成可能な凝集剤を含有する処理液と、を含む。
重合性化合物及び本発明の重合開始剤を含むインク組成物と、凝集剤を含む処理液とを用いて画像を形成することにより、良好な画像品質で、硬化感度が高く、耐ブロッキング性に優れた画像が形成できる。
以下、インクセットの処理液について説明する。
[処理液]
インクセットの処理液は、インク組成物中の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含み、必要に応じてその他の成分を含んで構成される。
処理液に用いる凝集剤は、記録媒体上においてインク組成物と接触することにより、インク組成物を凝集(固定化)することができるものであり、固定化剤として機能する。例えば、処理液を記録媒体(好ましくは、塗工紙)に付与することにより記録媒体上に凝集剤が存在している状態で、インク組成物がさらに着滴して凝集剤に接触することにより、インク組成物中の成分を凝集させて、インク組成物を記録媒体上に固定化することができる。
凝集剤としては、酸性化合物、多価金属塩、カチオン性ポリマーを挙げることができる。これらは1種単独でも、2種以上を併用することができる。
[酸性化合物]
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。
これらの中でも、水溶性の高い酸性化合物が好ましい。また、インク組成物と反応してインク全体を固定化させる観点から、3価以下の酸性化合物が好ましく、2価以上3価以下の酸性化合物が特に好ましい。
酸性化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記処理液が酸性化合物を含む場合、処理液のpH(25℃)は、0.1〜6.8であることが好ましく、0.5〜6.0であることがより好ましく、0.8〜5.0であることがさらに好ましい。
前記酸性化合物の含有量は、前記処理液の全質量に対し、40質量%以下であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましく、15質量%〜35質量%であることがさらに好ましく、20質量%〜30質量%であることが特に好ましい。酸性化合物の含有量を15〜40質量%とすることでインク組成物中の成分をより効率的に固定化することができる。
酸性化合物の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい
[多価金属塩]
多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩、酸化物等を挙げることができる。
本発明において、前記多価金属塩を含む処理液が付与された記録媒体(好ましくは、塗工紙)にインク組成物を吐出したときのインク組成物の凝集反応は、インク組成物中に分散した粒子、例えば、顔料に代表される着色剤や、樹脂粒子等の粒子の分散安定性を減じ、インク組成物全体の粘度を上昇させることで達成することができる。例えば、インク組成物中の顔料や、樹脂粒子などの粒子がカルボキシル基等の弱酸性の官能基を有するとき、当該粒子は前記弱酸性の官能基の働きにより分散安定化しているが、当該粒子の表面電荷を、多価金属塩と相互作用させることにより減じ、分散安定性を低下することができる。したがって、処理液に含まれる固定化剤としての多価金属塩は、凝集反応の観点で、価数が2価以上、すなわち多価であることが必要であり、凝集反応性の観点で、3価以上の多価金属イオンからなる多価金属塩であることが好ましい。
以上の観点から、処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、およびZr4+などが挙げられる。これら多価金属イオンを処理液中に含有させるためには、前記多価金属の塩を用いればよい。
塩とは、上記のような多価金属イオンと、これらのイオンに結合する陰イオンとから構成される金属塩のことであるが、溶媒に可溶なものであることが好ましい。ここで、溶媒とは、多価金属塩とともに処理液を構成する媒質であり、例えば、水や前述の水溶性有機溶剤が挙げられる。
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO 、I、Br、ClO 、CHCOO、SO 2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
上記以外の多価金属塩としては、例えば、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。
本発明においては、反応性や着色性、さらには取り扱いの容易さなどの点から、多価金属イオンと陰イオンとの塩を用いることが好ましく、多価金属イオンとしては、Ca2+、Mg2+、Sr2+、Al3+およびY3+から選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらには、Ca2+が好ましい。
また、陰イオンとしては、溶解性などの観点から、NO が特に好ましい。
前記多価金属塩は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記多価金属塩の含有量は、前記処理液の全質量に対し、15質量%以上である。多価金属塩の含有量が15質量%以上とすることでより効果的にインク組成物中の成分を固定化することができる。より好ましくは、処理液の全質量に対して、15質量%〜35質量%であり、20質量%〜30質量%であることがさらに好ましい。
多価金属塩の記録媒体への付与量としては、インク組成物を凝集させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい
[カチオン性ポリマー]
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、及びポリグアニドから選ばれる少なくとも1種のカチオン性ポリマーである。
カチオン性ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン性ポリマーの中でも、凝集速度の観点で有利な、ポリグアニド(好ましくは、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)アセテート、ポリモノグアニド、ポリメリックビグアニド)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピリジン)が好ましい。
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、500〜500,000の範囲が好ましく、700〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、500以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
前記処理液はカチオン性ポリマーを含むが、処理液のpH(25℃)は、1.0〜10.0であることが好ましく、2.0〜9.0であることがより好ましく、3.0〜7.0であることがさらに好ましい。
カチオン性ポリマーの含有量は、前記処理液の全質量に対して、1質量%〜35質量%であることが好ましく、5質量%〜25質量%であることがより好ましい。
カチオン性ポリマーの塗工紙への付与量としては、インク組成物を安定化させるに足る量であれば特に制限はないが、インク組成物を固定化し易いとの観点から、0.5g/m〜4.0g/mであることが好ましく、0.9g/m〜3.75g/mであることがより好ましい。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記インクセットに含まれる処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、前記インクセットに含まれるインク組成物を、記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、を少なくとも含み、必要に応じてその他の工程をさらに含んで構成される。
[記録媒体]
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性インクを用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、日本製紙(株)製の「シルバーダイヤ」等の上質コート紙、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」、三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)、日本製紙株式会社製のユーライト等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
[処理液付与工程]
処理液付与工程では、前記インクセットに含まれる凝集剤を含む処理液が記録媒体上に付与される。処理液の記録媒体への付与は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができ、スプレー塗布、塗布ローラー等の塗布、インクジェット方式による付与、浸漬などの任意の方法を選択することができる。
具体的には、例えば、ホリゾンタルサイズプレス法、ロールコーター法、カレンダーサイズプレス法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるナイフコーター法;ゲートロールコーター法などのトランスファーロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、リバースロールコーター法、スクイズロールコーター法などに代表されるロールコーター法;ビルブレードコーター法、ショートデュエルコーター法;ツーストリームコーター法などに代表されるブレードコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;キャストコーター法;グラビアコーター法;カーテンコーター法;ダイコーター法;ブラシコーター法;転写法などが挙げられる。
また、特開平10−230201号公報に記載の塗布装置のように、液量制限部材を備えた塗布装置を用いることで塗布量を制御して塗布する方法であってもよい。
処理液を付与する領域は、記録媒体全体に付与する全面付与であっても、インク付与工程でインクが付与される領域に部分的に付与する部分付与であってもよい。本発明においては、処理液の付与量を均一に調整し、細線や微細な画像部分等を均質に記録し、画像ムラ等の濃度ムラを抑える観点から、塗布ローラー等を用いた塗布によって塗工紙全体に付与する全面付与が好ましい。
処理液の付与量を前記範囲に制御して塗布する方法としては、例えば、アニロックスローラーを用いた方法が挙げられる。アニロックスローラーとは、セラミックが溶射されたローラー表面をレーザーで加工しピラミッド型や斜線、亀甲型などの形状を付したローラーである。このローラー表面に付けられた凹みの部分に処理液が入り込み、紙面と接触すると転写されて、アニロックスローラーの凹みで制御された塗布量にて塗布される。
[インク付与工程]
インク付与工程では、前記インクセットに含まれるインク組成物が記録媒体上に付与される。インク組成物の付与方法としては、所望の画像様にインク組成物を付与可能な方法であれば、特に制限はなく公知のインク付与方法を用いることができる。例えば、インクジェット方式、謄写方式、捺転方式等の手段により、記録媒体上にインク組成物を付与する方法を挙げることができる。中でも、記録装置のコンパクト化と高速記録性の観点から、インク組成物をインクジェット方式によって付与する工程であることが好ましい。
[インクジェット方式]
インクジェット方式による画像形成では、エネルギーを供与することにより、記録媒体上にインク組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット方式には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
尚、前記インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
またインクジェット方式として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
本発明において、前記処理液付与工程とインク付与工程の実施順は特に制限はないが、画像品質の観点から、処理液付与工程後にインク付与工程が行われる態様であることが好ましい。すなわちインク付与工程は、処理液が付与された記録媒体上にインク組成物を付与する工程であることが好ましい。
[活性エネルギー線照射工程]
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に付与されたインク組成物に活性エネルギー線を照射する工程を含むことが好ましい。活性エネルギー線を照射することでインク組成物に含まれる重合性化合物が重合して、着色剤を含む硬化膜を形成する。これにより画像の耐擦性、耐ブロッキング性がより効果的に向上する。
記録媒体上に付与されたインク組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化する。これは、インク組成物に含まれる本発明の重合開始剤が活性エネルギー線の照射により分解して、ラジカルを発生し、それにより重合性化合物の重合反応が開始・促進されてインク組成物が硬化するためである。
処理液中に酸性化合物が含まれる場合は、この活性エネルギー線照射の際、当該化合物から供給される酸によりインク組成物がさらに凝集(固定化)し、画像部品質(耐擦性・耐ブロッキング性等)が向上する。
本発明においては、活性エネルギー線として、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが使用できる。前述のように、本発明の光重合開始剤は特に紫外領域の光に対して高い吸収を有しており、この観点から、活性エネルギー線の波長としては、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。また、LED、LDは小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
本発明においては、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源として、紫外LED(UV−LED)および紫外LD(UV−LD)を使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。
本発明で特に好ましい活性エネルギー線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
[インク乾燥工程]
本発明の画像形成方法においては、必要に応じて、記録媒体上に付与されたインク組成物中の溶媒(例えば、水、前述の水系媒体など)を乾燥除去するインク乾燥工程を備えていてもよい。インク乾燥工程は、インク溶媒の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
実施例I.前記一般式(1)で表される化合物の合成
一般式(1)で表される光重合開始剤の具体例として、下記化合物A−4、A−7、A−11、A−16、A−18、A−19、A−26を下記の方法で合成した。
Figure 2013199433
[化合物A−4の合成]
下記スキーム1に示すように、Chemische Berichte,1935,68,1588.;Tetrahedron,1970,26,1747記載の方法を参考にして化合物A−4を合成した。
p−アニシル1.0g(3.70mmol)、チオグリコール酸1.5ml(22.20mmol)をトルエン6ml中で攪拌し、p−トルエンスルホン酸一水和物0.42g(2.22mmol)を添加し、内温90℃で5時間加熱した。室温まで放冷し、析出物を吸引ろ過し、純水で洗浄した。これを真空乾燥することで、カルボン酸体を0.83g(1.90mmol、収率51%)得た。このカルボン酸体を純水6ml中で攪拌し、水酸化ナトリウム76mg(1.90mmol)添加した。室温中15分攪拌した後、純水をエバポレーターによって留去することで化合物A−4を0.91g得た。
Figure 2013199433
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行った。下記の結果から、化合物A−4であることを確認した。
H NMR(400MHz,DO):7.69(d,2H),7.32(d,2H),6.85(d,2H),6.68(d,2H),3.72(s,3H),3.69(s,3H),3.19(m,4H)
[水溶性光重合開始剤A−7の合成]
化合物A−4の合成におけるチオグリコール酸を、等モルの2−メルカプトエタンスルホン酸ナトリウムに変更すること以外は同様にして化合物A−7を合成した。
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行った。下記の結果から、化合物A−7であることを確認した。
H NMR(400MHz,DO):7.69(d,2H),7.31(d,2H),6.85(d,2H),6.68(d,2H),3.72(s,3H),3.69(s,3H),3.14−3.05(m,4H),2.80(m,4H)
[水溶性光重合開始剤A−11の合成]
下記スキーム2に示すように、Journal of Medicinal Chemistry, 1996, 39, 3418、及び特開2008−247940号公報に記載の方法を参考にしてジアリールジケトンを合成した後、2−メルカプトエタノールを用いて化合物A−11を合成した。
Figure 2013199433
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行い、化合物A−11であることを確認した。
[水溶性光重合開始剤A−16]
下記スキーム3に示すように化合物A−16を合成した。まず、特開2008−247940号公報に記載の方法を参考にして、下記スキーム3の出発物質であるジアリールジケトンを合成した。次に、これを用いて、化合物A−4の合成において、チオグリコール酸を等モルのメチルメルカプタンナトリウムに、トルエンを同量のテトラヒドロフランに、それぞれ変更した以外は同様にして化合物A−16を合成した。
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行い、化合物A−16であることを確認した。
Figure 2013199433
[水溶性光重合開始剤A−18]
下記スキーム4に示すように、2−(フェニルチオ)エタノールと塩化オキサリルから、特開2008−247940号公報記載の方法によりジアリールジケトンを合成し、これを用いて化合物A−4の合成と同様に化合物A−18を合成した。
Figure 2013199433
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行った。下記の結果から、化合物A−18であることを確認した。
H NMR(400MHz,DO):7.87(d,2H),7.59(d,2H),7.39(d,2H),7.28(d,2H),6.80(br,2H),4.24(m,4H),3.26(m,4H),3.20(m,4H)
[水溶性光重合開始剤A−19]
化合物A−18と同様にジアリールジケトンを合成し、これを用いて化合物A−7の合成と同様にして化合物A−19を合成した。
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行った。下記の結果から、化合物A−19であることを確認した。
H NMR(400MHz,DO):7.88(d,2H),7.60(d,2H),7.39(d,2H),7.28(d,2H),6.80(br,2H),4.24(m,4H),3.26(m,4H),3.10(m,4H),2.81(m,4H)
[水溶性光重合開始剤A−26の合成]
下記スキーム5に示すように、2,6−ジメチルフェノールと2−ブロモエタノールからJournal of Medicinal Chemistry, 1996, 39, 3418記載の方法を参考に、ジメチルフェノキシエタノールを合成し、これを用いて化合物A−18と同様の方法でジアリールジケトンを合成した。得られたジアリールジケトンを出発物質とし、A−4の合成におけるチオグリコール酸を、等モルの3−メルカプトプロピオン酸に変更する以外はA−4の合成と同様にしてA−26を合成した。
得られた化合物はH NMRを用いて同定を行い、化合物A−26であることを確認した。
Figure 2013199433
実施例II.クリアインク組成物の調製と感度の評価
上記で合成した化合物A−4、A−7、A−11、A−16、A−18、A−19、A−26を、水溶性光重合開始剤として用いて、下記のモノマー溶液(クリアインク組成物)を調製した。
[重合性化合物の調製]
下記に示す重合性化合物M−1〜M−6を合成した。
Figure 2013199433
[重合性化合物M−1の合成]
攪拌機を備えた1L容の三口フラスコにエチレンジアミン40.0g(666mmol)、水酸化ナトリウム90.0g(2250mmol)、水200g、アセトニトリル600mLを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド132.6g(1470mmol)を1時間かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でアセトニトリルを留去した。次に水層をクロロホルム400mlで3回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物M−1の白色固体を45.0g(266mmol、収率40%)得た。
[重合性化合物M−2の合成]
攪拌機を備えた1L容の三口フラスコに4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン40.0g(182mmol)、炭酸水素ナトリウム37.8g(450mmol)、水100g、テトラヒドロフラン200gを加えて、氷浴下、アクリル酸クロリド35.2g(389mmol)を20分かけて滴下した。滴下後、室温で5時間攪拌した後、得られた反応混合物から減圧下でテトラヒドロフランを留去した。次に水層を酢酸エチル200mlで4回抽出し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過を行い、減圧下溶媒留去することにより目的の重合性化合物M−2の固体を35.0g(107mmol、収率59%)得た。
[重合性化合物M−3の合成]
重合性化合物3の合成において、エチレンジアミンの代わりにジエチレントリアミンを等モル用いたこと以外は、重合性化合物M−1の合成と同様にして重合性化合物M−3を合成した。
[重合性化合物M−4〜M−6]
重合性化合物M−4及びM−5は東京化成工業株式会社より購入したものを、重合性化合物M−6は和光純薬工業株式会社より購入したものをそれぞれ使用した。
[モノマー溶液1〜14の調製]
重合性化合物M−1(500mg)、水溶性光重合開始剤A−4(50mg)をメタノール(2ml)に溶解させ、モノマー溶液1を調製した。
モノマー溶液1において、水溶性光重合開始剤A−4の代わりにA−7、A−11、A−16、A−18、A−19、A−26を同質量用いたこと以外は同様にして、それぞれモノマー溶液2〜7を調製した。
モノマー溶液1において、重合性化合物M−1の代わりにM−2、M−3を同質量用いたこと以外は同様にして、それぞれモノマー溶液8、9を調製した。
モノマー溶液5において、重合性化合物M−1の代わりにM−2、M−3を同質量用いたこと以外は同様にして、それぞれモノマー溶液10、11を調製した。
モノマー溶液1において、重合性化合物M−1の代わりにM−4〜M−6を同質量用いたこと以外は同様にして、それぞれモノマー溶液12〜14を調製した。
[比較用モノマー溶液15〜20の調製]
モノマー溶液1において、重合開始剤A−4又は重合性化合物M−1に代えて、表1に示す重合開始剤又は重合性化合物を同質量用いたこと以外は同様にして、比較用モノマー溶液15〜20を調製した。
なお、比較用化合物B−1〜B−5として、下記の化合物を用いた。
Figure 2013199433
比較用化合物B−1:イルガキュア(IRGACURE) 651(商品名、BASF・ジャパン社製)
[比較用化合物B−2の合成]
前述の化合物A−4の合成において、出発物質としてアニシルを等モルのベンジルに変更する以外は同様にして、比較用化合物B−2を合成した。
[比較用化合物B−3の合成]
化合物B−2の合成において、チオグリコール酸を等モルの3−メルカプトプロピオン酸に変更する以外は同様にして比較用化合物B−3を合成した。
比較用化合物B−4:イルガキュア(IRGACURE) 2959(商品名、BASF・ジャパン社製)
比較用化合物B−5:特開2008−247940号公報に記載の方法により合成して使用した。
実施例1〜14、比較例1〜6
上記で調製した重合開始剤及びモノマー溶液について、下記の性質を評価した。
[開始剤の水への溶解度]
モノマー溶液1〜20に用いた各重合開始剤について、20℃における水への溶解度を求めた。結果を表1に示す。
[光感度]
モノマー溶液1〜20(10μl)をそれぞれマイクロシリンジで銅薄膜上へ滴下し、これに紫外線照射装置として高圧水銀灯(EX250、HOYA−SCHOTT社製)を用いて60秒間露光した後、FT−IR(VARIAN社製、Varian 3100 FT−IR)によって重合率を求め、この値から相対感度(モル換算)を導いた(重合開始剤B−1を用いたモノマー溶液15を基準1.0とした)。結果を表1に示す。
Figure 2013199433
表1の結果から明らかなように、光重合開始剤A−4、A−7、A−11、A−16、A−18、A−19、A−26は水への溶解度が高く、これらの開始剤を用いたモノマー溶液1〜14は、光に対し良好な感度を示した。これに対し、比較化合物B−1、B−4、B−5は、溶解度が十分ではなく、B−2、B−3及びB−5を用いたモノマー溶液は十分な光感度を得られなかった。
実施例15〜18、比較例7〜9
先に調製したモノマー溶液1、2、5、10及び比較用モノマー溶液15、16、19(10μl)をそれぞれマイクロシリンジで銅薄膜上へ滴下し、これに365nmの光のみを透過するバンドパスフィルターを装着した紫外線照射装置(HOYA−SCHOTT社製、EX250)を用いて150秒間露光した後、FT−IR(VARIAN社製、Varian 3100 FT−IR)によって重合率を求め、この値から相対感度(モル換算)を導いた(比較例7(開始剤B−1)を基準1.0とした)。その結果を表2に示す。
Figure 2013199433
表2の結果から明らかなように、光重合開始剤A−4、A−7、A−18を用いたモノマー溶液1、2、5、10は、365nmの光に対しても良好な感度を示した。これに対し、比較化合物B−1、B−4は溶解度が十分ではなく、比較化合物B−2、B−4を用いたモノマー溶液16、19は、365nmの光に対して十分な感度を得られなかった。特に、モノマー溶液19は、表1の結果と比較して大幅に光感度が低下した。
実施例III.着色剤含有インク組成物の調製と感度の評価
[ポリマー分散剤P−1の合成]
攪拌機、冷却管を備えた1000ml容の三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。さらに、JIS規格(JISK0070:1992)に記載の方法により酸価を求めたところ、65.2mgKOH/gであった。
[樹脂被覆顔料の分散物の調製]
−樹脂被覆シアン顔料分散物−
ピグメント・ブルー15:3(フタロシアニンブルーA220、大日精化(株)製)10部と、上記ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が10.2質量%の樹脂被覆シアン顔料の分散物(着色粒子)を得た。
−樹脂被覆マゼンタ顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Chromophthal Jet Magenta DMQ(ピグメント・レッド122、BASF・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(着色粒子)を得た。
−樹脂被覆イエロー顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、Irgalite Yellow GS(ピグメント・イエロー74、BASF・ジャパン社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆イエロー顔料の分散物(着色粒子)を得た。
−樹脂被覆ブラック顔料分散物−
上記樹脂被覆シアン顔料分散物の調製において、顔料として用いたフタロシアニンブルーA220の代わりに、顔料分散体CAB−O−JETTM 200(カーボンブラック、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして樹脂被覆ブラック顔料の分散物(着色粒子)を得た。
実施例2−1:インクセット1の調製
[インクセット1の調製]
以下のようにして、インク処方1のシアンインク(C1)、マゼンタインク(M1)、イエローインク(Y1)、ブラックインク(K1)、および、処理液1をそれぞれ調製し、これらのインク組成物と処理液1とからなるインクセット1を得た。
[インク処方1]
(シアンインクC1の調製)
上記の樹脂被覆シアン顔料の分散物を用い、下記インク処方1となるように、樹脂被覆シアン顔料分散物、イオン交換水、重合開始剤、重合性化合物、及び界面活性剤を混合し、その後、5μmメンブランフィルタでろ過してインク処方1のシアンインクC1を調製した。
−インク処方1−
・樹脂被覆シアン顔料分散物 ・・・ 6%
・化合物A−4(水溶性光重合開始剤) ・・・ 3%
・重合性化合物M−2 ・・・ 10%
・オルフィンE1010 ・・・ 1%
(日信化学(株)製;界面活性剤)
・イオン交換水 ・・・ 全体で100%となるように添加。
pHメーターWM−50EG(東亜DKK(株)製)を用いて、シアン顔料インクC1のpH(25℃)を測定したところ、pH値は8.5であった。
(マゼンタインク(M1)の調製)
上記シアンインク(C1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物の代わりに、樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物を用いた以外は上記と同様にして、インク処方1のマゼンタインク(M1)を調製した。pH値は8.5であった。
(イエローインク(Y1)の調製)
上記シアンインク(C1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物の代わりに、樹脂被覆イエロー顔料の分散物を用いた以外は上記と同様にして、インク処方1のイエローインク(Y1)を調製した。pH値は8.5であった。
(ブラックインク(K1)の調製)
上記シアンインク(C1)の調製において、樹脂被覆シアン顔料の分散物の代わりに、顔料分散物CAB−O−JETTM200(カーボンブラック分散物、CABOT社製)を用いた以外は上記と同様にして、インク処方1のブラックインク(K1)を調製した。pH値は8.5であった。
[処理液1の調製]
以下の材料を混合して、処理液1を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液1のpH(25℃)を測定したところ、1.0であった。
−処理液組成−
・マロン酸 25.0%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶性有機溶媒)
5.0%
・イオン交換水 70.0%
実施例2−2〜2−6:インクセット2〜6の調製
インクセット1において、水溶性光重合開始剤A−4の代わりに、A−7、A−11、A−16、A−18、A−26を同質量用いたこと以外は同様にして、インク組成物C2〜C6、インク組成物M2〜M6、インク組成物Y2〜Y6、インク組成物K2〜K6をそれぞれ調製した。ここで、インク組成物C1、M1、Y1、K1からなるインクセットをインクセット1として、これと同様に、インク組成物C2〜C6、M2〜M6、Y2〜Y6、K2〜K6からなるインクセットをそれぞれインクセット2〜6とした。
実施例2−7、2−8:インクセット7,8の調製
インクセット1又は5において、それぞれ重合性化合物M−2の代わりにM−3を同質量用いたこと以外は同様にして、インクセット7、8を得た。
比較例2−1〜2−3:比較用インクセット9〜11
インクセット1において、光重合開始剤A−4の代わりにB−1、B−2、B−5を同質量用いたこと以外は同様にして、それぞれインクセット9〜11を得た。
[インクジェット記録]
記録媒体(塗工紙)として、特菱アート両面N(三菱製紙製)(坪量104.7g/m)を用意して、以下に示すようにして画像を形成し、形成された画像について以下の評価を行なった。
上記で調製したインクインクセット1〜10を用い、4色シングルパス記録によりライン画像とベタ画像を形成した。
このとき、ライン画像は、1200dpiの1ドット幅のライン、2ドット幅のライン、4ドット幅のラインをシングルパスで主走査方向に吐出することによりライン画像を形成した。
またベタ画像は、記録媒体をA5サイズにカットしたサンプルの全面にインク組成物を吐出することによりベタ画像を形成した。なお、記録する際の諸条件は下記の通りである。
(1)処理液付与工程
記録媒体の全面に、アニロックスローラー(線数100〜300/インチ)で塗布量が制御されたロールコーターにて付与量が、1.4g/mとなるように処理液1を塗布した。
(2)処理工程
次いで、下記条件にて処理液1が塗布された記録媒体について乾燥処理及び浸透処理を施した。
・風速:10m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
(3)インク付与工程
その後、処理液が塗布された記録媒体の塗布面に、下記条件にてインク組成物をインクジェット方式で吐出し、ライン画像、ベタ画像をそれぞれ形成した。
・ヘッド:1,200dpi/20inch幅のピエゾフルラインヘッドを4色分配置
・吐出液滴量:2.0pL
・駆動周波数:30kHz
(4)インク乾燥工程
次いで、インク組成物が付与された記録媒体を下記条件で乾燥した。
・乾燥方法:送風乾燥
・風速:15m/s
・温度:記録媒体の記録面側の表面温度が60℃となるように、記録媒体の記録面の反対側(背面側)から接触型平面ヒーターで加熱した。
(5)固定化工程
次に、高圧水銀ランプを用いて、記録画像に1000mJ/cmのエネルギーとなる条件で、活性エネルギー線としての紫外線を照射し、画像記録物を得た。
[評価]
得られた画像サンプルについて、以下のようにしてインクの硬化性試験、画像の耐ブロッキング試験を行った。結果を表3に示す。
[硬化感度]
未印字の特菱アート両面N(三菱製紙製)を文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけ(未印字の特菱アートと評価サンプルが接触する面積は150mm)、上記印画サンプルを3往復擦った(荷重260kg/mに相当)。擦った後の印画面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
A … 印字面に画像(色材)のはがれが視認できなかった。
B … 印字面に画像(色材)のはがれがわずかに認められた。
C … 印字面に画像(色材)のはがれが視認でき、実用上問題になるレベルであった。
[耐ブロッキング性]
ベタ画像が記録された記録媒体の2cm四方のベタ部を印字直後、記録していない記録媒体(特菱アート両面N(三菱製紙製)(以下、本評価において未使用サンプルという。)を重ねて荷重350kg/mをかけて、60℃、30%RHの環境条件下に、24時間放置した。未使用サンプルの白地部分へのインクの転写度合いを目視で観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
(評価基準)
A:インクの転写は全くなかった。
B:インクの転写はほとんど目立たなかった。
C:インクの転写が多少見られ、実用上の許容限界レベルであった。
D:インクの転写が顕著であった。
Figure 2013199433
表3の結果から明らかなように、光重合開始剤A−4、A−7、A−11、A−16、A−18、A−26を用いて形成された画像は、B−1、B−2、B−5を用いて形成された画像と比較して、硬化感度、耐ブロッキング性、共に良好であった。
実施例2−9、2−10
処理液1の代わりに下記組成の処理液2又は処理液3を用いる以外は、上記実施例2−1と同様にしてインクセットを調製し、画像形成を行った。
[処理液2の調製]
以下の材料を混合して、処理液2を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、pH調整後の処理液2のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
−処理液組成−
・ポリエチレンイミン(カチオン性ポリマー) 13.0%
・イオン交換水 87.0%
[処理液3の調製]
以下の材料を混合して、処理液3を作製した。東亜DKK(株)製のpHメーターWM−50EGにて、処理液3のpH(25℃)を測定したところ、4.0であった。
−処理液組成−
・硝酸マグネシウム :15%
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル : 4%
・オルフィンE1010(日信化学工業株式会社製) : 1%
・イオン交換水 :80%
得られた画像について実施例2−1と同様の評価を行った。その結果、処理液2又は処理液3を用いた場合も、実施例2−1と同様の良好な結果が得られた。

Claims (22)

  1. 下記一般式(1)で表される化合物。
    Figure 2013199433
    (一般式(1)中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、R〜Rの少なくとも1つは、下記一般式(2)で表される基である。R11は、アリール基及びヘテロ環基を除く置換基を表す。複数のR11は、同じであっても異なってもよい。)
    Figure 2013199433
    (一般式(2)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表す。R12は置換基を表す。*はベンゼン環との結合部位を表す。)
  2. 前記R12が、アルキル基、又は−Y−Zで表される基(Yは炭素原子数1〜10の2価の連結基を表し、Zは水溶性基を表す)である、請求項1記載の化合物。
  3. 前記Zの水溶性基が、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基である、請求項2記載の化合物。
  4. 前記Yが、アルキレン基、又は−R13OR14−で表される基(R13及びR14はそれぞれ独立にアルキレン基を表す)である請求項2又は3記載の化合物。
  5. 前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物。
    Figure 2013199433
    (一般式(3)中、R〜R10はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。R〜Rの少なくとも1つは、前記一般式(2)で表される基である。Yは炭素原子数1〜10の2価の連結基を表す。Zは水溶性基を表す。複数のY、Zは、同じであっても異なってもよい。)
  6. 前記Zの水溶性基が、水酸基、カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、又はアンモニウム(塩)基である、請求項5記載の化合物。
  7. 前記Yが、アルキレン基、又は−R15OR16−で表される基(R15及びR16はそれぞれ独立にアルキレン基を表す)である、請求項5又は6記載の化合物。
  8. 前記R〜R10における置換基がアルキル基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の化合物。
  9. 前記Rが前記一般式(2)で表される基である請求項1〜8のいずれか1項に記載の化合物。
  10. 前記R〜R10の少なくとも1つが、前記一般式(2)で表される基である請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物からなる光重合開始剤。
  12. 請求項11記載の光重合開始剤、及び重合性化合物を含有するインク組成物。
  13. 前記重合性化合物が、(メタ)アクリルアミド化合物、(メタ)アクリレート化合物、及びビニル化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項12に記載のインク組成物。
  14. 前記重合性化合物が、2官能以上の(メタ)アクリルアミド化合物である請求項12又は13に記載のインク組成物。
  15. 水系媒体を含有する請求項12〜14のいずれか1項に記載のインク組成物。
  16. 着色剤を含有する請求項12〜15のいずれか1項に記載のインク組成物。
  17. 請求項12〜16のいずれか1項に記載のインク組成物と、該水性インク組成物を凝集する処理液とからなるインクセット。
  18. 前記処理液が、酸、多価金属塩、及びカチオン性ポリマーから選ばれる少なくとも1種を含有する請求項17記載のインクセット。
  19. 請求項17又は18記載の処理液を、記録媒体上に付与する処理液付与工程と、請求項12〜16のいずれか1項に記載のインク組成物を、記録媒体上に付与して画像を形成するインク付与工程と、を含む画像形成方法。
  20. 前記記録媒体が塗工紙である請求項19記載の画像形成方法。
  21. 前記処理液付与工程がインク付与工程よりも先に行われる請求項19又は20記載の画像形成方法。
  22. 前記インク付与工程が、インクジェット記録方式によりインクを付与するものである請求項19〜21のいずれか1項に記載の画像形成方法。
JP2012066762A 2012-03-23 2012-03-23 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物 Expired - Fee Related JP5972623B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012066762A JP5972623B2 (ja) 2012-03-23 2012-03-23 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012066762A JP5972623B2 (ja) 2012-03-23 2012-03-23 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2013199433A true JP2013199433A (ja) 2013-10-03
JP5972623B2 JP5972623B2 (ja) 2016-08-17

Family

ID=49519958

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2012066762A Expired - Fee Related JP5972623B2 (ja) 2012-03-23 2012-03-23 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5972623B2 (ja)

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6015014633; Timpe, Hans Joachim: 'Light-induced polymer and polymerization reactions. 47. Photopolymer system with alpha-sulfonyldeoxyben' ANGEWANDTE MAKROMOLEKULARE CHEMIE 189, 1991, pp. 219-25 *

Also Published As

Publication number Publication date
JP5972623B2 (ja) 2016-08-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5611858B2 (ja) インク組成物および画像形成方法
JP5940673B2 (ja) 硬化性樹脂組成物、水溶性インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP5575594B2 (ja) インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP5300904B2 (ja) インク組成物及び画像形成方法
JP2012162655A (ja) インクセット及び画像形成方法
JP5241810B2 (ja) インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP2012207117A (ja) 黒色系インク組成物、インクセット及び画像形成方法
JP5398606B2 (ja) インク組成物およびインクセット、並びに画像形成方法
JP2013053082A (ja) 重合性化合物及びそれを含有する組成物
JP2013199508A (ja) インク組成物
JP5570924B2 (ja) インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP2011074143A (ja) インクセットおよび画像形成方法
WO2014148290A1 (ja) インク組成物、インクセット、及び画像形成方法
JP6318111B2 (ja) 光重合開始剤、及びそれを用いた、インク組成物、インクセット及び画像形成方法
JP5683910B2 (ja) インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP5591659B2 (ja) インク組成物、インクセットおよび画像形成方法
JP5972623B2 (ja) 光重合開始剤、及びそれを用いたインク組成物
JP2012097142A (ja) 黒色系インク組成物およびインクセット
JP2012097143A (ja) 黒色系インク組成物の製造方法
JP2012051977A (ja) 活性エネルギー線硬化型水性組成物、及びインクジェット画像形成方法
JP6022277B2 (ja) インク組成物の光硬化方法、インク組成物からなるインクセット、画像形成方法およびインク組成物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20140530

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20150421

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20150622

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20150622

RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20150622

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160105

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20160210

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20160210

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160621

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160713

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5972623

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees