JP2012051977A - 活性エネルギー線硬化型水性組成物、及びインクジェット画像形成方法 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型水性組成物、及びインクジェット画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、保存安定性に優れた活性エネルギー硬化型水性組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明の活性エネルギー線硬化型水性組成物は、下記一般式で示される部分構造を有する重合性化合物、及び水を含有する。

(式中、Rは、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。Lは、−CO−、−SO−、−COO−又は−CONH−を表す。Aは、−(OCHCH−又は−(OCHCH(OH)CH−を表す。mは1〜3の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な活性エネルギー線硬化型水性組成物、及びインクジェット画像形成方法に関する。
カラー画像を記録する画像記録の方法として、インクジェット技術が知られている。インクジェット技術は、オフィスプリンタ、ホームプリンタ等の分野に適用されてきたが、近年では商業印刷分野での応用がなされつつある。
そのインクジェットに用いられるインク組成物として、紫外線等の活性エネルギーによりインク組成物を硬化させて画像を形成させる活性エネルギー線硬化型水性インクが提供されている。このインクには、顔料、水、活性エネルギー線により重合する重合性化合物及び、当該重合性化合物の重合を開始させる重合開始剤等が含まれている。
このうち、重合性化合物としては、(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物、ビニルスルホン系化合物など種々の化合物が提供されている。しかしながら、アクリルアミド系化合物、ビニルスルホン系化合物等は、その化合物の合成が困難などといった理由で高コストであり、工業的に不利である。
一方、(メタ)アクリレート系化合物は、コストの観点では比較的問題が少ない。このようなアクリレート系化合物としては、例えば、特許文献1には種々のものが例示されている。
なお、水性インク以外の非水系組成物としては、脂環式アルキル置換基を有する(メタ)アクリレートを含有するインクジェット用インク組成物が提案されている(特許文献2)。
特開2000−186242号公報 特開2006−160916号公報
しかしながら、特許文献1の(メタ)アクリレート化合物は、その組成物中で長時間放置又は保存しておくと、(メタ)アクリレート化合物そのものが水等の溶媒によって(メタ)アクリル酸とアルコールとに加水分解してしまう。そのため、組成物製造当初と比較すると、組成物のpHの低下に起因して顔料等の分散物の分散安定性等が劣化し、吐出不良等の問題を生じることとなる。従って、保存安定性の点で改善の余地がある。
特許文献2では、水を実質的に含まない非水性のインク組成物に関するものである。従って、特許文献2に記載の(メタ)アクリレート化合物は、水に対する保存安定性についてはなんら検討されていない。
従って、本発明は、上記に鑑みなされたものであり、加水分解が抑制された良好な保存安定性を有する活性エネルギー線硬化型組成物を提供することを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記問題に鑑みて、鋭意検討した。その結果、特定の構造を有する(メタ)アクリレート化合物が耐加水分解性に優れること等に新たな知見を発見し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の活性エネルギー線硬化型水性組成物、インク組成物及びインクジェット画像形成方法に関する。
項1.下記一般式(1)で示される部分構造を有する重合性化合物、及び水を含有する、活性エネルギー線硬化型水性組成物。
(式中、Rは、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。Lは、−CO−、−SO−、−COO−又は−CONH−を表す。Aは、−(OCHCH−又は−(OCHCH(OH)CH−を表す。mは1〜3の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)
項2.前記重合性化合物が下記一般式(2)または一般式(3)で表される重合性化合物である、項1に記載の水性組成物。
(式中、R、L、A、m及びnは前記と同一である。Yは、水素原子、−OR、−NR、−COOR,−C(O)−Rまたは−NHC(O)−Rを表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。Yは、水素原子、−OR´、−NR´、−COOR´,−C(O)−R´または−NHC(O)−R´を表し、R´は水素原子またはアルキル基を表す。
Zは、下記のいずれかで表される構造、メラミン残基、イソシアヌル残基又はp+q価のポリオール残基を表す。
は、−(CHCHO)na−又は−(CHCH(OH)CHO)na−を表す。naは0〜10の整数を示す。 pは2〜6の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。ただし、2≦p+q≦6である。)
項3.着色剤及び重合開始剤をさらに含有する、項1又は2に記載の水性組成物。
項4.前記重合性化合物の含有量が水性組成物に対して1〜40質量%である、項1〜3のいずれか1項に記載の水性組成物。
項5.水の含有量が水性組成物に対して50〜99質量%である、項1〜4のいずれか1項に記載の水性組成物。
項6.項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型水性組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与する工程、及び当該水性組成物が付与された記録媒体上に活性エネルギー線を照射する工程、を備えた、インクジェット画像形成方法。
本発明によれば、保存安定性に優れた活性エネルギー硬化型水性組成物を提供することができる。
1.水性組成物
本発明の活性エネルギー線硬化型水性組成物は、下記一般式(1)で示される部分構造を有する重合性化合物及び水を含有する。
は、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。好ましくは、重合性等の観点から、水素原子である。
Lは、下記構造のいずれかを示す。
*が、一般式(1)中の−NH−との結合位置である。
2mにおいて、mは1〜3までの整数を示す。C2mとしては、−CH−、−CHCH−、−CH(CH)−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)−、−CH(CH)CH−、−C(CH−等が挙げられる。好ましくは、−CH−、−CHCH−又は−CHCHCH−である。
Aは、**−(OCHCH−又は**−(OCHCH(OH)CH−を表す。好ましくは、**−(OCHCH−である。**が一般式(1)中の−(C2m)−との結合位置である。
nは0〜10(好ましくは0〜5)までの整数を示す。
シクロヘキサン環上に置換している−NH−の置換位置は限定的でなく、オルト位、メタ位及びパラ位のいずれであってもよいが本発明ではオルト位またはパラ位が好ましく、特にパラ位が好ましい、すなわち下記構造であることが特に好ましい。
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、上記一般式(1)で示される部分構造を有する重合性化合物を含有することにより、保存安定性、特に水中における保存安定性に優れる。このメカニズムは下記のように推察される。従来のアクリルエステル(例えば、CH=CH−COOR、(Rは直鎖アルキル基)では、水の存在によって、CH=CH−COOHと、HORとに分解されやすく、この加水分解によって水中のpHが大きく変化し、顔料の分散安定性が劣化してしまう。ところが、本発明では、アクリルエステル構造に直結する箇所(上記ではR部分に相当)にシクロヘキサン環が結合され、さらに当該シクロヘキサン環に−NH−基等が直結されている。このため、立体障害の大きいシクロヘキサン環等により、加水分解しにくく、その結果、pHの変化が抑制され、分散安定性に優れて、良好な保存安定性を発揮すると推察される。また、親水性の高い−NH−L−基等によって水溶性を確保している。なお、本発明は上記の推察メカニズムに限定されるものではない。
本発明の重合性化合物において、一般式(1)の基以外の残基としては限定的でないが、加水分解しにくい基であることが好ましい。例えば、水素、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、アシル基、カルボキシル基およびその共役塩基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、シアノ基、ヘテロアリール基等のほか、1価のポリオール残基等が挙げられる。
また、他端にも一般式(1)で表される基がもう一つ結合された2官能重合性化合物でもよい。この場合、(一般式(1)で表される基)−Z−(一般式(1)で表される基)として表され、−Z−としては、例えば、−O−、−S−、2価のポリオール残基などが挙げられる。
さらには、他端に一般式(1)で表される基が2つ以上結合された3官能以上の重合性化合物でもよい、この場合、例えば、Z´(X価の基)−(一般式(1)で表される基)として表され、Z´としては、X価のポリオール残基など等が挙げられる。なお、一般式(1)で表される基が複数存在する場合、当該基は同一であっても同一でなくともよい。
そのほか、本発明の一般式(1)の重合性化合物は、その他端の残基部分をポリビニルアルコール、アガロース等の糖鎖とすることにより、一般式(1)で表される基を有する重合性高分子としてもよい。さらに、残基部分にシリカ等の無機粒子またはポリスチレン等の有機粒子とすることにより、本発明の重合性化合物が、一般式(1)で表される基が粒子表面に修飾された粒子であってもよい。
好ましい具体例としては、例えば、下記一般式(2)の単官能重合性化合物、又は一般式(3)の2官能以上である多官能重合性化合物が挙げられる。
一般式(2)において、R、L、A、m、n等は前記一般式(1)に記載のR、L、A、m、n等と好ましいものを含めて同一である。
は、水素原子、−OR、−NR、−COOR、−C(O)−Rまたは−NHC(O)−Rを表し、Rは水素原子またはアルキル基等を表す。好ましくは、水素原子または−ORである。
で表される基中のRの炭素数は限定的でないが、例えば1〜8、好ましくは1〜2である。
において、−NR等のアルキル基を複数有する場合、2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。また、2つのアルキル基が結合して環を形成していてもよく、その場合、エーテル結合(−O−)等を有したへテロ環であってもよい。エーテル結合を有している場合の具体例としては、モルホリノ基等が挙げられる。
好ましくは下記一般式(2a)である。
一般式(3)において、R、L、A、m、n等は前記一般式(1)に記載のR、L、A、m、n等と好ましいものを含めて同一である。
は、水素原子、−OR´、−NR´、−COOR´、−C(O)−R´または−NHC(O)−R´を表し、R´は水素原子またはアルキル基等を表す。好ましくは、水素原子である。
で表される基中のR´の炭素数は限定的でないが、例えば1〜8、好ましくは1〜2である。
において、−NR´等のアルキル基を複数有する場合、2つのアルキル基は同一であっても異なっていてもよい。また、2つのアルキル基が結合して環を形成していてもよく、その場合、エーテル結合等を有したへテロ環であってもよい。エーテル結合を有している場合の具体例としては、モルホリノ基等が挙げられる。
は、***−(CHCHO)na−又は***−(CHCH(OH)CHO)na−を表す。naは0〜10(好ましくは0〜5)の整数を示す。好ましくは、***−(CHCHO)−である。***が一般式(3)中の−Z−との結合位置である。
Zは、下記(a)〜(c)のいずれかで表される構造、もしくはメラミン残基(下記構造(d))、イソシアヌル残基(下記構造(e))またはp+q価のポリオール残基である。なお、Zがエーテル結合(a)またはスルフィド結合(b)である場合、p=2かつq=0であり、Zがアミノ結合(c)またはイソシアヌル残基(e)である場合、p+q=3であり、Zがメラミン残基(d)である場合、p+q=6である。
ポリオール残基は、ポリオールが有する水酸基のうちp+q個の水酸基から各々の水素を除いた残基をいう。
ポリオールとしては2以上の水酸基を有していれば限定的でなく、例えば、炭素数2〜10(好ましくは炭素数2〜5)のポリオールが挙げられる。水酸基の数は例えば、2〜6(好ましくは2〜4)である。
具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、チオジグリコール等のジオール類;
グリセリン、1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等のトリオール類;
ジトリメチロールプロパン、ジトリメチロールエタン、ペンタエリスリトールのテトラオール類;ジペンタエリスリトール等が挙げられる。
その他のポリオールとしては、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース等の単糖類やそのデオキシ糖、アルドン酸、アルダル酸誘導体等が挙げられる。さらには、ポリビニルアルコールやそのオリゴマーが挙げられる。
これらの中でも好ましくは、ジオール類、トリオール類、テトラオール類であり、最も好ましくはジオール類である。
pは2〜6(好ましくは2〜4の整数を示し、qは0〜2(好ましくは0)の整数を示す。ただし、2≦p+q≦6である。なお、p及び/又はqが2以上の場合、複数あるR、L、A、A、Y、m、n、na等は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
好ましくは下記一般式(4a)である。
本発明の具体例を下記に示すが、本発明は下記の具体例に限定されるものではない。
本発明の重合性化合物の中でも、LogPが1.0以下のものが好ましい。より好ましくは、−1.0〜0.7であり、最も好ましくは−0.5〜0.5である。この範囲であることにより、水溶性と製造適性とを両立させる点で優れる。
本発明において、LogPは、水とオクタノール中での分配係数として測定されるが、計算によっても求めることができる。本発明においてはCS Chem Draw Pro 12.0のChemPropを用いて計算された値を用いる。
本発明の水性組成物における上記本発明の重合性化合物の含有量は、例えば固形分換算で1〜40質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、10〜25質量%の範囲であることがさらに好ましい。
上記一般式(1)の化合物は、例えば、R置換シクロヘキサノール(Rは「−NH−L−(C2m)−A−部分構造」である。)に アクリル酸、アクリレート、アクリル酸無水物、アクリル酸クロリド等を反応させる等によって得ることができる。
これらの製造方法及び製造条件等は、例えば、文献『機能性アクリレートの選び方・使い方事例集』(株式会社技術情報学会発行)、p32〜37等を参考にすることができる。
(その他の重合性化合物)
本発明の水性組成物においては、本発明の効果を損なわない範囲で、前記一般式(1)の重合性化合物以外のその他の重合性化合物を含んでいてもよい。
その他の重合性化合物としては、ラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物であり、分子中にラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を少なくとも1つ有する化合物であって、前記一般式(1)の重合性化合物以外の化合物であればどのようなものでもよく、モノマー、オリゴマー、ポリマー等の化学形態を持つものが含まれる。
またその他の重合性化合物は1種のみ用いてもよく、また目的とする特性を向上するために任意の比率で2種以上を併用してもよい。
エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸およびそれらの塩または誘導体、エチレン性不飽和基を有する無水物、アクリロニトリル、スチレン、更に種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、ならびに、不飽和ポリウレタン等のラジカル重合性化合物が挙げられる。
中でも、水性組成物の吐出安定性の観点から、水溶性のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物であることが好ましい。尚、ここでいう水溶性とは、前記一般式(1)の重合性化合物における水溶性と同義である。
水溶性のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物の例としては、アクリル酸およびメタクリル酸、ならびに、そのエステル誘導体、アミド誘導体およびその塩から選ばれる少なくとも1種が好ましく、アクリル酸のモノエステルおよびメタクリル酸のモノエステル(以下、「モノアクリレート」ということがある)、アクリル酸とポリオール化合物とのエステルおよびメタクリル酸とポリオール化合物とのエステル(以下、「多官能アクリレートモノマー」または「多官能アクリレートオリゴマー」ということがある)、アクリルアミドおよびメタクリルアミドならびにその誘導体が挙げられる。
上記水溶性のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物は、水溶性付与の観点から、ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖、イオン性基(例えばカルボキシル基、スルホ基など)、および水酸基の少なくとも1種を有することも好ましい。
前記水溶性のエチレン性不飽和結合を有する重合性化合物が、ポリ(エチレンオキシ)鎖、ポリ(プロピレンオキシ)鎖を有する場合、エチレンオキシ単位、およびプロピレンオキシ単位のユニットの数は1〜10の範囲であることが好ましく、より好ましくは1〜5の範囲である。ユニットの数が10以下であることで硬化した時の皮膜の硬度や記録媒体に対する密着性等が向上する。
具体的には、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、カルビトールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、N,N−ジメチルアミノアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びこれらの4級化化合物、N−メチロールアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリルアミド、4−アクリロイルモルホリン、N−[1,1−ジメチル−2−(ソジオオキシスルホニル)エチル]アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、エポキシアクリレート等のアクリル酸化合物、グリシジルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、N,N−ジメチルアミノメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタアクリルアミド等のメタクリル酸化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニル化合物、その他、アリルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のアリル化合物などが挙げられる。
本発明における水性組成物におけるその他の重合性化合物を含む場合は、その含有量は、例えば固形分換算で50質量%未満の範囲であることが好ましく、0.5〜40質量%の範囲であることがより好ましく、1.0〜30質量%の範囲であることがさらに好ましい。
また上記一般式(1)で表される部分構造を有する重合性化合物に対するその他の重合性化合物の含有比率としては、固形分換算で0〜80質量%の範囲であることが好ましく、0〜70質量%の範囲であることがより好ましく、0〜60質量%の範囲であることがさらに好ましい。
(重合開始剤)
本発明の水性組成物は、重合開始剤の少なくとも1種を含有することが好ましい。前記重合開始剤としては、公知の重合開始剤を特に制限なく使用することができる。本発明における重合開始剤としては、光重合開始剤を使用することが好ましい。
本発明で使用され得る好ましい光重合開始剤としては、(a)芳香族ケトン類、(b)アシルホスフィン化合物、(c)芳香族オニウム塩化合物、(d)有機過酸化物、(e)チオ化合物、(f)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(g)ケトオキシムエステル化合物、(h)ボレート化合物、(i)アジニウム化合物、(j)メタロセン化合物、(k)活性エステル化合物、(l)炭素ハロゲン結合を有する化合物、並びに(m)アルキルアミン化合物等が挙げられる。
重合開始剤の具体例としては、例えば、加藤清視著「紫外線硬化システム」(株式会社総合技術センター発行:平成元年)の第65〜148頁に記載されている重合開始剤などを挙げることができる。
本発明における重合開始剤としては、水不溶性の開始剤を水分散させたもの、水溶性の開始剤のいずれであっても使用可能であるが、水溶性の重合開始剤であることが好ましい。尚、重合開始剤における水溶性とは、25℃において蒸留水に0.5質量%以上溶解することを意味する。前記水溶性の重合開始剤は、25℃において蒸留水に1質量%以上溶解することが好ましく、3質量%以上溶解することがより好ましい。
本発明において重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の水性組成物における重合開始剤の含有量は、固形分換算で0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.5〜20質量%の範囲であることがより好ましく、1.0〜15質量%の範囲であることがさらに好ましい。
また、本発明の水性組成物における重合開始剤の含有量は、前記重合性化合物100質量部に対して、好ましくは0.01〜35質量部、より好ましくは0.1〜30質量部、さらに好ましくは0.5〜30質量部の範囲で含有されるのが適当である。なお、ここで重合開始剤の含有量とは、水性組成物における重合開始剤の総含有量を意味し、重合性化合物の含有量とは、水性組成物における重合性化合物(一般式(1)の重合性化合物および必要に応じて含まれるその他の重合性化合物)の総含有量を意味する。
(着色剤)
本発明における水性組成物は、着色剤の少なくとも1種を含む水性インク組成物であることが好ましい。本発明における着色剤としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である着色剤であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、更に、耐光性の観点から顔料であることがより好ましい。
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機および無機顔料を用いることができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、多環式顔料などがより好ましい。前記アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、などが挙げられる。前記多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ぺリレン顔料、ぺリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、などが挙げられる。前記染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート、などが挙げられる。
また前記無機顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、カーボンブラック、などが挙げられる。これらの中でも、カーボンブラックが特に好ましい。なお、前記カーボンブラックとしては、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたものが挙げられる。
本発明に用いることができる顔料として具体的には、例えば、下記に記載の顔料などが挙げられる。
オレンジ又はイエロー用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、米国特許4311775記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
また、ブラック用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
また本発明において着色剤として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料およびこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(着色剤)はそのまま、あるいは必要に応じて分散剤を併用して用いることができる。分散剤としては後述する分散剤を好適に用いることができる。
上記の顔料は、1種単独で使用してもよく、また、上記した各群内もしくは各群間より複数種を選択して組み合わせて使用してもよい。
着色剤(特に顔料)の水性インク組成物中における含有量としては、色濃度、粒状性、インク安定性、吐出信頼性の観点から、水性インク組成物の全質量に対して、1〜25質量%となる量が好ましく、1〜10質量%となる量がより好ましい。
(分散剤)
本発明における着色剤が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散された着色粒子を構成していることが好ましい。前記分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性ポリマー分散剤でも水不溶性ポリマー分散剤の何れでもよい。
本発明においては、分散安定性とインクジェット方式に適用した場合の吐出性の観点からは、水不溶性ポリマー分散剤であることが好ましい。
−水不溶性ポリマー分散剤−
本発明における水不溶性ポリマー分散剤(以下、単に「分散剤」ということがある)としては、水不溶性のポリマーであって、顔料を分散可能であれば特に制限は無く、従来公知の水不溶性ポリマー分散剤を用いることができる。水不溶性ポリマー分散剤は、例えば、疎水性の構成単位と親水性の構成単位の両方を含んで構成することができる。
前記疎水性の構成単位を構成するモノマーとしては、スチレン系モノマー、アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
また前記親水性構成単位を構成するモノマーとしては、親水性基を含むモノマーであれば特に制限はない。前記親水性基としては、ノニオン性基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を挙げることができる。尚、ノニオン性基としては、水酸基、(窒素原子が無置換の)アミド基、アルキレンオキシド重合体(例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等)に由来する基、糖アルコールに由来する基等が挙げられる。
本発明における親水性構成単位は、分散安定性の観点から、少なくともカルボキシル基を含むことが好ましく、ノニオン性基とカルボキシル基を共に含む形態であることもまた好ましい。
本発明における水不溶性ポリマー分散剤として、具体的には、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。ここで「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
本発明において水不溶性ポリマー分散剤としては、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含むビニルポリマーであることが好ましく、疎水性の構成単位として少なくとも芳香族基含有モノマーに由来する構成単位を有し、親水性の構成単位としてカルボキシル基を含む構成単位を有するビニルポリマーであることがより好ましい。
前記水不溶性ポリマー分散剤の重量平均分子量としては、顔料の分散安定性の観点から、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
本発明における着色粒子における分散剤の含有量は、顔料の分散性、インク着色性、分散安定性の観点から、顔料に対し、分散剤が10〜100質量%であることが好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜50質量%が特に好ましい。
前記着色粒子中の分散剤の含有量が、上記範囲であることにより、顔料が適量の分散剤で被覆され、粒径が小さく経時安定に優れた着色粒子を得やすい傾向となり好ましい。
本発明における前記着色粒子は、前記水不溶性ポリマー分散剤に加えてまたは前記水不溶性ポリマー分散剤に代えて、その他の分散剤を使用してもよい。例えば、従来公知の水溶性低分子分散剤や、水溶性ポリマー等を用いることができる。前記水不溶性ポリマー分散剤以外の分散剤の含有量は、前記分散剤の含有量の範囲内で用いることができる。例えば、特に、水溶性ポリマー分散剤を顔料表面の一部に被覆して顔料を水溶液中に分散させた後に当該水溶性ポリマー分散剤同士を架橋させて得られる着色粒子も、製造適性の観点からは好ましい。
本発明における着色剤は、分散安定性と吐出性の観点から、前記顔料および前記水不溶性ポリマー分散剤を含んで構成されていることが好ましく、顔料の表面の少なくとも一部が水不溶性ポリマー分散剤で被覆されて構成されていることが好ましい。かかる着色剤は、例えば、顔料、分散剤、必要に応じて溶媒(好ましくは有機溶剤)等を含む混合物を、分散機により分散することで着色粒子分散物として得ることができる。
前記着色粒子分散物は、例えば、前記顔料と前記水不溶性ポリマー分散剤と該分散剤を溶解または分散する有機溶剤との混合物に、塩基性物質を含む水溶液を加える工程(混合・水和工程)の後、前記有機溶剤を除く工程(溶剤除去工程)を設けて分散物として製造することができる。これにより、着色剤が微細に分散され、保存安定性に優れた着色粒子の分散物を作製することができる。
有機溶剤は、前記分散剤を溶解または分散できることが必要であるが、これに加えて水に対してある程度の親和性を有することが好ましい。具体的には、20℃下で水に対する溶解度が10質量%以上50質量%以下であるものが好ましい。
本発明において着色剤(または着色粒子)の体積平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。体積平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、体積平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、着色剤(または着色粒子)の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ着色剤を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、着色剤(または着色粒子)の体積平均粒径および粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明において、上記着色剤(または着色粒子)は1種単独で、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(水系媒体)
本発明における水性組成物は水系媒体として少なくとも水を含む。必要に応じて有機溶剤の少なくとも1種を含んで構成されていてもよい。
本発明における水としては、イオン交換水、蒸留水などのイオン性不純物を含まない水を用いることが好ましい。また、水性組成物における水の含有率は、目的に応じて適宜選択されるが、通常、10〜99質量%であることが好ましく、50〜99質量%であることがより好ましく、30〜90質量%であることが特に好ましい。
−有機溶剤−
本発明における水系媒体は水溶性有機溶剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。水溶性有機溶剤を含有することで、乾燥防止、湿潤あるいは浸透促進の効果を得ることができる。乾燥防止には、噴射ノズルのインク吐出口においてインクが付着乾燥して凝集体ができ、目詰まりするのを防止する乾燥防止剤として用いられ、乾燥防止や湿潤には、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤が好ましい。また水溶性有機溶剤は、紙へのインク浸透性を高める浸透促進剤として用いることができる。
水溶性有機溶剤の例としては、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルカンジオール(多価アルコール類);糖アルコール類;エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1〜4のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル類等が挙げられる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
乾燥防止や湿潤の目的としては、多価アルコール類が有用であり、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
浸透促進の目的としては、ポリオール化合物が好ましく、脂肪族ジオールが好適である。脂肪族ジオールとしては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが好ましい例として挙げることができる。
また本発明における水溶性有機溶剤としては、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、下記構造式(1a)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
構造式(1a)において、l、m、およびnは、それぞれ独立に1以上の整数を表し、l+m+n=3〜15を満たし、l+m+nは3〜12の範囲が好ましく、3〜10の範囲がより好ましい。l+m+nの値は、3以上であると良好なカール抑制力を示し、15以下であると良好な吐出性が得られる。構造式(1a)中、AOは、エチレンオキシ(EO)およびプロピレンオキシ(PO)の少なくとも一方を表し、中でもプロピレンオキシ基が好ましい。前記(AO)、(AO)、および(AO)における各AOはそれぞれ同一でも異なってもよい。
以下、前記構造式(1a)で表される化合物の例を示す。但し、本発明はこれに限定されるものではない。尚、例示化合物中、「POP(3)グリセリルエーテル」との記載は、グリセリンにプロピレンオキシ基が合計で3つ結合したグリセリルエーテルであることを意味し、他の記載についても同様である。
さらに本発明における水溶性有機溶剤は、記録媒体におけるカール発生抑制の点から、以下に例示する水溶性有機溶剤であることもまた好ましい。
・n−CO(AO)−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)・n−CO(AO)10−H AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:1)
・HO(AO)40−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=1:3)
・HO(AO)55−H(AO=EO又はPOで、比率はEO:PO=5:6)
・HO(PO)−H
・HO(PO)−H
・1,2−ヘキサンジオール
前記構造式(1a)で表される化合物および上記例示化合物の全水溶性有機溶剤中に占める含有割合は、3質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、更に5質量%以上が好ましい。前記範囲とすることにより、インクの安定性や吐出性を悪化させずにカールを抑制することができ好ましい。
本発明において水溶性有機溶剤は、1種単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
また水溶性有機溶剤の水性組成物中における含有量としては、1質量%以上60質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上40質量%以下である。
(樹脂粒子)
本発明における水性組成物は、樹脂粒子の少なくとも1種を含有していてもよい。樹脂粒子を含むことにより、水性組成物の記録媒体への定着性、画像の耐擦性、耐ブロッキング性を効果的に向上させることができる。
また樹脂粒子は、既述の処理液又はこれを乾燥させた記録媒体上の領域と接触した際に凝集、又は分散不安定化してインクを増粘させることにより、水性組成物、すなわち画像を固定化させる機能を有することが好ましい。このような樹脂粒子は、水および有機溶剤の少なくとも1種に分散されているものが好ましい。
本発明における樹脂粒子としては、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン系樹脂、パラフィン系樹脂、フッ素系樹脂等あるいはそのラテックスを用いることができる。アクリル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、スチレン系樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋スチレン系樹脂を好ましい例として挙げることができる。
また樹脂粒子はラテックスの形態で用いることもできる。
樹脂粒子の重量平均分子量は1万以上、20万以下が好ましく、より好ましくは10万以上、20万以下である。
また樹脂粒子の体積平均粒径は、10nm〜1μmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、20〜100nmの範囲が更に好ましく、20〜50nmの範囲が特に好ましい。
樹脂粒子のガラス転移温度Tgは30℃以上であることが好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上がさらに好ましい。
樹脂粒子の添加量はインクに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜20質量%がより好ましく、0.1〜15質量%がさらに好ましい。
また、樹脂微子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布を持つもの、又は単分散の粒径分布を持つもの、いずれでもよい。また、単分散の粒径分布を持つ樹脂粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
(界面活性剤)
本発明における水性組成物は、必要に応じて、界面活性剤の少なくとも1種を含むことができる。界面活性剤は、表面張力調整剤として用いることができる。
表面張力調整剤として、分子内に親水部と疎水部を合わせ持つ構造を有する化合物等が有効に使用することができ、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤のいずれも使用することができる。更に、上記の分散剤(高分子分散剤)を界面活性剤としても用いてもよい。
本発明においては、インクの打滴干渉抑制の観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましく、中でもアセチレングリコール誘導体がより好ましい。
界面活性剤(表面張力調整剤)を水性組成物に含有する場合、界面活性剤はインクジェット方式により水性組成物の吐出を良好に行う観点から、水性組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整できる範囲の量を含有するのが好ましく、表面張力の点からはより好ましくは20〜45mN/mであり、更に好ましくは25〜40mN/mである。
界面活性剤の水性組成物中における界面活性剤の具体的な量としては、前記表面張力となる範囲が好ましいこと以外は特に制限はなく、1質量%以上が好ましく、より好ましくは1〜10質量%であり、更に好ましくは1〜3質量%である。
(その他の成分)
水性組成物は、上記の成分に加え、必要に応じて更にその他成分として各種の添加剤を含むことができる。
前記各種の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、褪色防止剤、防黴剤、pH調整剤、防錆剤、酸化防止剤、乳化安定剤、防腐剤、消泡剤、粘度調整剤、分散安定剤、キレート剤、固体湿潤剤等の公知の添加剤が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
褪色防止剤としては、各種の有機系および金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
防黴剤は、水性組成物中の含有量が0.02〜1.00質量%である範囲とするのが好ましい。
pH調整剤としては、調合される水性組成物に悪影響を及ぼさずにpHを所望の値に調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなど)、アルカリ金属水酸化物(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アンモニウム水酸化物(例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物など)、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などが挙げられる。
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
〜水性組成物の物性〜
本発明における水性組成物の表面張力(25℃)としては、20mN/m以上60mN/m以下であることが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、更に好ましくは、25mN/m以上40mN/m以下である。
表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学株式会社製)を用い、水性組成物を25℃の条件下で測定される。
また、本発明における水性組成物の25℃での粘度は、1.2mPa・s以上15.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2mPa・s以上13mPa・s未満であり、更に好ましくは2.5mPa・s以上10mPa・s未満である。
粘度は、VISCOMETER TV−22(TOKI SANGYO CO.LTD製
)を用い、水性組成物を25℃の条件下で測定される。
2.画像形成方法
本発明の画像形成方法は、前記の活性エネルギー硬化型水性組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与する付与工程、及び当該水性組成物が付与された記録媒体上に活性エネルギー線を照射する照射工程、を少なくとも含み、必要に応じてその他の工程(例えば処理液付与工程など)をさらに含んで構成されていてもよい。
[記録媒体]
本発明の画像形成方法に用いる記録媒体には、特に制限はないが、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる上質紙、コート紙、アート紙などのセルロースを主体とする一般印刷用紙を用いることができる。セルロースを主体とする一般印刷用紙は、水性組成物を用いた一般のインクジェット法による画像記録においては比較的インクの吸収、乾燥が遅く、打滴後に色材移動が起こりやすく、画像品質が低下しやすいが、本発明のインクジェット記録方法によると、色材移動を抑制して色濃度、色相に優れた高品位の画像の記録が可能である。
記録媒体としては、一般に市販されているものを使用することができ、例えば、王子製紙(株)製の「OKプリンス上質」、日本製紙(株)製の「しおらい」、及び日本製紙(株)製の「ニューNPI上質」等の上質紙(A)、日本製紙(株)製の「シルバーダイヤ」等の上質コート紙、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」及び日本製紙(株)製の「オーロラコート」等のコート紙(A2、B2)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)等が挙げられる。また、インクジェット記録用の各種写真専用紙を用いることも可能である。
上記の中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、好ましくは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体であり、より好ましくは0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
記録媒体の中でも、一般のオフセット印刷などに用いられるいわゆる塗工紙が好ましい。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。塗工紙は、通常の水性インクジェットによる画像形成においては、画像の光沢や擦過耐性など、品質上の問題を生じやすいが、本発明のインクジェット記録方法では、光沢ムラが抑制されて光沢性、耐擦性の良好な画像を得ることができる。特に、原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙を用いるのが好ましい。より具体的には、アート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
[付与工程]
本発明における付与工程では、本発明の水性組成物が記録媒体上に付与される。水性組成物の付与方法としては、所望の画像媒体に水性組成物を付与可能な方法であれば特に制限はなく公知のインク付与方法を用いることができる。例えば、インクジェット方式、謄写方式、捺転方式等の手段により、記録媒体上に水性組成物を付与する方法を挙げることができる。中でも、記録装置のコンパクト化と高速記録性の観点から、水性組成物をインクジェット方式によって付与する工程であることが好ましい。
(インクジェット方式)
インクジェット方式による画像形成では、エネルギーを供与することにより、記録媒体上に水性組成物を吐出し、着色画像を形成する。なお、本発明に好ましいインクジェット記録方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット方式には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用するドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式等のいずれであってもよい。
また、インクジェット方式で用いるインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。さらに前記インクジェット方式により記録を行う際に使用するインクノズル等についても特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができる。
尚、前記インクジェット方式には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
またインクジェット方式として、短尺のシリアルヘッドを用い、ヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行うシャトル方式と、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式とがある。ライン方式では、記録素子の配列方向と直交する方向に記録媒体を走査させることで記録媒体の全面に画像記録を行うことができ、短尺ヘッドを走査するキャリッジ等の搬送系が不要となる。また、キャリッジの移動と記録媒体との複雑な走査制御が不要になり、記録媒体だけが移動するので、シャトル方式に比べて記録速度の高速化が実現できる。
[活性エネルギー線照射工程]
本発明の画像形成方法は、記録媒体上に付与された水性組成物に活性エネルギー線を照射する工程を含む。活性エネルギー線を照射することで水性組成物に含まれる重合性化合物が重合して、硬化膜を形成する。
記録媒体上に付与された水性組成物は、活性エネルギー線を照射することで硬化する。
ここで、使用される活性エネルギー線は、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光、赤外光などが使用される。活性エネルギー線の波長としては、例えば、200〜600nmであることが好ましく、300〜450nmであることがより好ましく、350〜420nmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線の出力としては、5000mJ/cm以下であることが好ましく、10〜4000mJ/cmであることがより好ましく、20〜3000mJ/cmであることがさらに好ましい。
活性エネルギー線源としては、水銀ランプやガス・固体レーザー等が主に利用されており、紫外線光硬化型インクジェット記録用インクの硬化に使用される光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプが広く知られている。しかしながら、現在環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更にLED(UV−LED)、LD(UV−LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、光硬化型インクジェット用光源として期待されている。
また、発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)を活性エネルギー線源として用いることが可能である。特に、紫外線源を要する場合、紫外LEDおよび紫外LDを使用することができる。例えば、日亜化学(株)は、主放出スペクトルが365nmと420nmとの間の波長を有する紫色LEDを上市している。
本発明で特に好ましい活性エネルギー線源は、UV−LEDであり、特に好ましくは、350〜420nmにピーク波長を有するUV−LEDである。
[乾燥工程]
本発明の画像形成方法においては、必要に応じて、記録媒体上に付与された水性組成物中の溶媒(例えば、水、水溶性有機溶剤等)を乾燥除去する乾燥工程を備えていてもよい。乾燥工程は、溶媒の少なくとも一部を除去できれば特に制限はなく、通常用いられる方法を適用することができる。
例えば、乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行える。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
また、乾燥工程は、付与工程の後に行われればよく、活性エネルギー線照射工程の前でも、後であってもよい。本発明においては、硬化感度と耐ブロッキング性の観点から、活性エネルギー線照射工程の前に行われることが好ましい。
[処理液付与工程]
本発明の画像形成方法においては、必要に応じて、凝集剤を含む処理液を記録媒体上に付与する処理液付与工程をそなえていてもよい。
本発明において、前記処理液付与工程と水性組成物の付与工程の実施順は特に制限はないが、画像品質の観点から、処理液付与工程後に水性組成物の付与工程が行われる態様であることが好ましい。すなわち水性組成物の付与工程は、処理液が付与された記録媒体上に水性組成物を付与する工程であることが好ましい。
処理液の記録媒体への付与は、公知の液体付与方法を特に制限なく用いることができ、スプレー塗布、塗布ローラー等による塗布、インクジェット方式による付与、浸漬などの任意の方法を選択することができる。
具体的には、例えば、ホリゾンタルサイズプレス法、ロールコーター法、カレンダーサイズプレス法などに代表されるサイズプレス法;エアーナイフコーター法などに代表されるナイフコーター法;ゲートロールコーター法などのトランスファーロールコーター法、ダイレクトロールコーター法、リバースロールコーター法、スクイズロールコーター法などに代表されるロールコーター法;ビルブレードコーター法、ショートデュエルコーター法;ツーストリームコーター法などに代表されるブレードコーター法;ロッドバーコーター法などに代表されるバーコーター法;キャストコーター法;グラビアコーター法;カーテンコーター法;ダイコーター法;ブラシコーター法;転写法などが挙げられる。
また、特開平10−230201号公報に記載の塗布装置のように、液量制限部材を備えた塗布装置を用いることで塗布量を制御して塗布する方法であってもよい。
(凝集剤)
本発明に使用できる好ましい処理液の一例は、水性組成物中の成分を凝集させる凝集剤を含んでなる。本発明における凝集剤としては、例えば酸性化合物、多価金属塩、カチオン性ポリマー等を挙げることができる。これらは1種単独でも、2種以上を併用することもできる。
−酸性化合物−
酸性化合物としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、およびこれらの化合物の誘導体、ならびにこれらの塩等が好適に挙げられる。
−多価金属塩−
本発明に使用できる好ましい多価金属塩は、アルカリ土類金属、亜鉛族金属等の2価以上の金属を含む化合物であり、Ca2+、Cu2+、Al3+等の金属イオンの酢酸塩、酸化物等を挙げることができる。
本発明における処理液に用いることのできる多価金属塩は、以下に示す多価金属イオンと陰イオンとの塩、ポリ水酸化アルミニウムおよびポリ塩化アルミニウムのいずれか1種以上であることが好ましい。
多価金属イオンとしては、例えば、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Sr2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、およびZr4+などが挙げられる。
前記多価金属イオンと塩を形成するための好ましい陰イオンとしては、例えば、Cl、NO 、I、Br、ClO 、CHCOO、SO 2−などが挙げられる。
多価金属イオンと陰イオンとは、それぞれ単独種または複数種を用いて多価金属イオンと陰イオンとの塩を形成することができる。
−カチオン性ポリマー−
カチオン性ポリマーとしては、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、及びポリグアニドから選ばれる少なくとも1種のカチオン性ポリマーである。
カチオン性ポリマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記カチオン性ポリマーの中でも、凝集速度の観点で有利な、ポリグアニド(好ましくは、ポリ(ヘキサメチレングアニジン)アセテート、ポリモノグアニド、ポリメリックビグアニド)、ポリエチレンイミン、ポリ(ビニルピリジン)が好ましい。
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、500〜500,000の範囲が好ましく、700〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは1,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、500以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
<重合性化合物1の合成>
4−アセトアミドシクロヘキサノール(cis/trans mixture)25.5g、トリエチルアミン24.4ml、クロロホルム150mlを酢酸エチル200mlに加えて混合した後、水浴下で攪拌しながらアクリル酸クロリド14.2mlを滴下した。滴下終了後、さらに室温で8hr攪拌したのち、析出した塩を濾別した。この濾液に塩化アンモニア水溶液200mlを加えて分液し、得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて十分に脱水してから、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=1/9→0/10(v/v))で精製することで、下記の本発明の重合性化合物1(白色固体11.3g、収率34%)を得た。
<重合性化合物2の合成>
trans−4−アミノシクロヘキサノール21.4g、2−メトキシエトキシ酢酸24.8gを酢酸エチル200mlに加えて混合した。氷浴下でジイソプロピルカルボジイミド23.4gを滴下した後、室温で一昼夜攪拌混合した。析出したジイソプロピルウレアを濾別した後、濃縮した。得られたオイルにクロロホルム500mlを加え、塩化アンモニア水溶液200ml、続いて炭酸水素ナトリウム水溶液200mlで分液抽出を行った。得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて十分に脱水してから、ろ過、濃縮することで、淡黄色液体32.3g(収率76%)を得た。
この淡黄色液体32.3g及びトリエチルアミン21.4mlをクロロホルム300mlに加えて混合した後、水浴下で攪拌しながらアクリル酸クロリド12.5mlを滴下した。室温で8hr攪拌したのち、塩化アンモニア水溶液200mlを加えて分液し、得られた有機層に硫酸マグネシウムを加えて十分に脱水してから、ろ過、濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル/メタノール=10/0→9/1(v/v))で精製することで、下記の本発明の重合性化合物2(淡黄色液体25.9g、収率65%)を得た。
<重合性化合物3の調製>
2−メトキシエトキシ酢酸をジグリコール酸に変更した以外は実施例2と同様の方法で、下記の本発明の重合性化合物3を得た。
<重合性化合物4の調製>
2−メトキシエトキシ酢酸をニトリロ三酢酸に変更した以外は実施例2と同様の方法で、下記の本発明の重合性化合物4を得た。
<マゼンタインク組成物(M−1)の調製>
(ポリマー分散剤P−1の合成)
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコにメチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、ここにメチルエチルケトン50gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、ベンジルメタクリレート60g、メタクリル酸10g、及びメチルメタクリレート30gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン2gにジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液は大過剰量のヘキサンに2回再沈殿し、析出した樹脂を乾燥し、ポリマー分散剤P−1を96g得た。
得られた樹脂の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は44,600であった。
(樹脂被覆顔料の分散物の調製)
ピグメント・レッド122(Chromophthal Jet Magenta DMQ、BASFジャパン社製)10部と、上記ポリマー分散剤P−1を5部と、メチルエチルケトン42部と、1mol/L NaOH水溶液5.5部と、イオン交換水87.2部とを混合し、ビーズミルにより0.1mmφジルコニアビーズを用いて2〜6時間分散した。
得られた分散物を減圧下、55℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去することにより、顔料濃度が15wt%の樹脂被覆マゼンタ顔料の分散物(着色粒子)を得た。
上記の顔料濃度15wt%の樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M)を用い、下記表1の組成となるように、樹脂被覆マゼンタ顔料分散物(M)、水溶性有機溶剤、イオン交換水、重合開始剤、重合性化合物、及び界面活性剤を混合し、その後、5μmメンブランフィルタ(ミリポア社製マイレックSLSV025NB)でろ過して本発明のマゼンタインク組成物M−1を調製した。
pHメーター(METTLER TOLEDO製SevenEasy pH)を用いて、マゼンタインク組成物M−1のpH(25℃)を測定したところ、pH値は8.27であった。
(マゼンタインク組成物(M−2)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、重合性化合物2を用いた以外は上記と同様にして、本発明のマゼンタインク組成物(M−2)を調製した。pH値は8.30であった。
(マゼンタインク組成物(M−3)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、重合性化合物3を用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク組成物(M−3)を調製した。
このマゼンダインク組成物の安定性評価(後述)を行ったところ、ΔpHが約−0.2であり、分散安定性がAであった。
(マゼンタインク組成物(M−4)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、重合性化合物4を用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク組成物(M−4)を調製した。
このマゼンダインク組成物の安定性評価(後述)を行ったところ、ΔpHが約−0.2であり、分散安定性がAであった。
<比較例のマゼンタインク組成物>
(マゼンタインク組成物(R−1)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、NKエステルA−400(新中村化学工業)を用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク組成物(R−1)を調製した。pH値は8.37であった。
(マゼンタインク組成物(R−2)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、メトキシエチルアクリレートを用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク組成物(R−2)を調製した。pH値は8.73であった。
(マゼンタインク組成物(R−3)の調製)
上記マゼンタインク組成物(M−1)の調製において、重合性化合物1の代わりに、ヒドロキシエチルアクリレートを用いた以外は上記と同様にして、マゼンタインク組成物(R−3)を調製した。pH値は8.16であった。
<安定性評価>
50℃恒温槽中で4hr静置後、インクの分散状態を目視で評価した。表には、分散状態を保っている場合をA、凝集固化し流動性を完全に失った場合をBで示した。また、経時後のpHを測定するとともに、初期pHとの差分をΔpHとして下表2に示した。
<インクジェット画像形成>
本発明のインク組成物(M−1)を、インクジェットプリンター(IPSIO GX5000、(株)リコー製)のカートリッジに詰め、同機にて、記録支持体(OKトップコート+、王子製紙(株)製)にインク組成物を吐出し、乾燥し、UV光(アイグラフィックス(株)製 メタルハライドランプ、最大照射波長 365nm)を積算照射量3J/cmになるように照射したところ、良好な画像(硬化膜)が得られた。インク組成物(M−2)〜(M−4)も同様に行ったところ、良好な画像が得られた。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示される部分構造を有する重合性化合物、及び水を含有する、活性エネルギー線硬化型水性組成物。

    (式中、Rは、水素原子、メチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
    Lは、−CO−、−SO−、−COO−又は−CONH−を表す。
    Aは、−(OCHCH−又は−(OCHCH(OH)CH−を表す。
    mは1〜3の整数を示し、nは0〜10の整数を示す。)
  2. 前記重合性化合物が下記一般式(2)または一般式(3)で表される重合性化合物である、請求項1に記載の水性組成物。

    (式中、R、L、A、m及びnは前記と同一である。
    は、水素原子、−OR、−NR、−COOR,−C(O)−Rまたは−NHC(O)−Rを表し、Rは水素原子またはアルキル基を表す。
    は、水素原子、−OR´、−NR´、−COOR´,−C(O)−R´または−NHC(O)−R´を表し、R´は水素原子またはアルキル基を表す。
    Zは、下記のいずれかで表される構造、メラミン残基、イソシアヌル残基又はp+q価のポリオール残基を表す。

    は、−(CHCHO)na−又は−(CHCH(OH)CHO)na−を表す。naは0〜10の整数を示す。
    pは2〜6の整数を示し、qは0〜2の整数を示す。ただし、2≦p+q≦6である。)
  3. 着色剤及び重合開始剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載の水性組成物。
  4. 前記重合性化合物の含有量が水性組成物に対して1〜40質量%である、請求項1〜 3のいずれか1項に記載の水性組成物。
  5. 水の含有量が水性組成物に対して50〜99質量%である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型水性組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与する工程、及び
    当該水性組成物が付与された記録媒体上に活性エネルギー線を照射する工程、
    を備えた、インクジェット画像形成方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2013161298A1 (ja) * 2012-04-27 2013-10-31 コニカミノルタ株式会社 活性光線硬化型インクジェットインク及びこれを用いた画像形成方法

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