しかしながら、上記した特許文献1のものでは、架線から給電を受ける場合に、車両側からトロリー方式で架線に接触する構成としているが、トロリー方式による給電システムでは、交差点での給電の問題や架線から離れる場合の動作などで複雑な制御が必要となるため、これを自動的に架線と接続する構成が十分に示されておらず、実用には困難な点も多いものであった。
本発明は上記事情を考慮してなされたものであり、その目的は、外部からの給電を自動的に行うことができ、これによって走行中においても架線から受電しながら走行できるようにした架線式電気自動車およびその走行システムを提供することにある。
上記した目的を達成するために、請求項1に記載の架線式電気自動車は、車体を移動させるための電気駆動部と、前記車体の移動時の制動制御をするための制動部と、前記電気駆動部に給電する蓄電池を備えた蓄電部と、前記車体の上部に車幅方向に並べて設けられ上下動可能な2個の電極を備えた架線接続部と、前記架線接続部の2個の電極を電力供給用の2本の架線にそれぞれ接続および離脱させるための制御をする架線接続制御部と、前記架線接続部の前記電極から前記架線を介して受電する受電部と、前記架線接続部の位置情報を取得する位置検出手段とを有し、前記架線接続制御部は、前記位置検出手段によって取得した位置データに基づいて前記架線の位置を認識し、前記受電部により受電する場合には前記架線接続部を上昇させて前記架線に接触させて給電を受けるように制御することを特徴とする。
上記構成によれば、道路上や各種の施設に給電用の架線が設けられていて、その敷設状況を情報として得ることができれば、それらの架線設備に対して自車の位置と架線との位置関係から、架線接続部の電極を架線接続制御部により自動的に接続させて受電部により受電することができる。これにより、停車中であれば蓄電部の蓄電池への充電作業を自動的に行わせることができる。また、走行中であれば、受電部により電気駆動部に直接給電して走行させることができ、さらには、蓄電部の充電も行うことができる。これにより、架線への接続を自動的に行えるようになると共に、走行中に受電できる場合には、走行用の蓄電池の電力容量を必要最小限にして車両の軽量小型化あるいは低価格化も図れるようになる。
請求項2に記載の架線式電気自動車は、上記発明において、前記架線接続制御部は、前記架線接続部を前記2本の架線に接続して前記受電部により受電したときに、前記位置検出手段によって取得した位置データが、非走行領域であった場合には、前記受電部に受電電力を前記蓄電部のみに給電することを特徴とする。
上記構成により、停車中に蓄電池への充電を行う場合に、架線に接続することにより受電部から受電電力を受けることができるので、充電用のケーブルなどを用いてコンセントに接続するなどの煩わしい作業をすることなく、自動的に蓄電池への充電を行うことができる。さらには、このような充電を自宅や会社などの場所のみならず、店舗やイベント会場などの駐車場に駐車している期間においても、駐車場に架線による給電を行える設備を設けることで、使用者が駐車をしたときに自動的に充電動作を行わせることができるようになる。
請求項3に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記2本の架線からの漏洩電波を受信する受信部と、前記受信部による受信信号に基づいて前記架線に対する前記架線接続部の左右方向の位置を検出する左右位置検出部と、前記架線接続部を左右方向に移動させる左右位置駆動部とを備え、前記架線接続制御部は、前記左右位置検出部により検出された前記架線接続部の左右方向の位置を前記左右位置駆動部により移動させて前記架線との接続状態を維持させることを特徴とする。
上記構成により、車両を走行させているときに位置検出手段による位置検出では、十分な精度が得られない場合でも、受信部により架線から出力される漏洩電波を受信してその受信信号に基づいて左右位置検出部により左右方向のずれ量を検出し、左右位置駆動部により架線に対して正しい位置に接続させることができる。
請求項4に記載の架線式電気自動車は、請求項3の発明において、前記受信部は、複数個のアンテナを備え、前記左右位置検出部は、前記受信部の前記複数個のアンテナで受信した前記架線の漏洩電波の振幅あるいは位相を比較することにより前記架線と前記架線接続部との相対位置を求め、これによって前記架線接続部の左右方向の位置を検出することを特徴とする。
上記構成によれば、複数個のアンテナにより架線からの漏洩電波を受信し、その受信信号に基づいて左右の位置を制御する場合に、2本の架線から受信する漏洩電波による受信信号の振幅あるいは位相の差を検出することにより、例えば振幅の差あるいは位相差が無くなることをもって中心位置を検出するなどして、制御すべき位置を正確に検出することができる。なお、架線からの漏洩電波としては、給電用の電力供給で直接発生する漏洩電波を利用することもできるし、架線に位置検出用の電波信号を重畳させるようにしても良い。
請求項5に記載の架線式電気自動車は、請求項4の発明において、前記受信部を構成する複数個のアンテナは、前記架線接続部の2つの電極の間に配置したことを特徴とする。これにより、2本の架線から出力される漏洩電波を受信する際に、架線接続部の左右方向のずれ量が所定範囲内であれば、アンテナの位置が架線の敷設位置から外れること無く受信レベルを大きく保持することができ、これによってアンテナによる受信信号の強度を確保して位置制御の精度を高めることができる。
請求項6に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線接続部は、前記2個の電極を電気的に上下移動させる第1機構と、前記2個の電極を空気圧制御により上下移動させる第2機構とを備えていることを特徴とする。これにより、架線接続部の上下動の制御を、第1機構により電気的に所定の位置まで確実に移動させ、第2機構により空気圧制御により上下動の制御を行うので、2個の電極の位置を弾力的に上下動の位置制御することができ、道路の凹凸や架線のたるみなどに柔軟に対応して確実に受電部により受電することができる。
請求項7に記載の架線式電気自動車は、請求項6の発明において、前記架線接続部の前記第2機構は、前記電極に連結された褶動部と、内部を加圧空気部および大気と連通する大気圧部に仕切るように前記褶動部が収容される圧力容器と、前記褶動部と前記圧力容器の底部との間に付勢力を与える付勢手段と、前記加圧空気部内を加圧して前記褶動部を上昇させ、且つ前記加圧空気部内を減圧して前記付勢手段の付勢力および前記褶動部の自重により前記褶動部を下降させる加圧減圧部とを備えていることを特徴とする。
上記構成によれば、架線接続部の第2機構により、2個の電極を圧力容器内の褶動部に連結し、加圧空気部の気圧を加圧減圧部による圧力調節により保持させて架線と接触させるので、2個の電極を弾力性をもって所定の圧力をかけながら架線に接触させた状態とすることができ、しかも、加圧減圧部が減圧すると、付勢手段の付勢力と自重によって架線との接触状態を開放させることができる。
請求項8に記載の架線式電気自動車は、請求項7の発明において、前記加圧空気部内の圧力が予め設定された圧力を超えると当該加圧空気部内の圧力を大気圧に開放する圧力開放手段を備えたことを特徴とする。これにより、架線接続部が架線に接続されている状態で、車両が道路上の物体を踏んだりあるいは物体に乗り上げたりした場合に、加圧空気部内の圧力が急激に上昇し、これに応じて内部の圧力が大気圧に開放される。この結果、架線接続部は急速に降下され、架線接続部が急激に上昇して架線に過大な押し上げ力を及ぼすのを防止することができる。
請求項9に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線接続制御部は、前記位置検出手段により検出された前記架線接続部の位置情報に基づいて受電可能な前記架線の位置に到達するまでの時間が所定以下になると前記架線接続部を前記架線に接続させるために上昇開始させることを特徴とする。
上記構成により、車両の走行位置が、架線が敷設された地点の近くに接近して到達するまでの時間が所定時間以内であることが予測されると、架線接続制御部により架線接続部の上昇を開始させる。これにより、車両が架線敷設位置に到達すると、架線接続部を架線に迅速に接続させることができ、これによって受電部により架線から給電を受けることができ、電気駆動部による走行を蓄電部の駆動から架線からの給電駆動に切り替えることができる。蓄電部による電気駆動部への給電を少しでも少なくして蓄電電力の保持をすることができ、架線が敷設されていない領域に移動した場合にその走行距離をより長くすることができる。
請求項10に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線接続制御部は、前記位置検出手段により検出された前記架線接続部の位置情報に基づいて前記架線が途切れることを識別すると、前記受電部を切断させた後に前記架線接続部を下降させることを特徴とする。
これにより、架線接続部の位置が架線の敷設された領域から外れて架線が途切れることが識別されると、架線接続制御部により、受電部を切断してから、架線接続部の接触を切断させるので、受電部を保護することが可能となる。また、架線が敷設されていない領域を架線接続部が上昇したままの状態で走行するのは、安定した走行を阻害する可能性があり、これを解消させることができるので、安定走行に寄与することができる。
請求項11に記載の架線式電気自動車は、請求項10の発明において、前記架線接続制御部は、前記架線接続部の位置情報から前記架線が途切れる位置までの距離が所定以下になると前記架線接続部の下降を開始させることを特徴とする。これにより、架線接続部の位置が架線の敷設された領域から外れて架線が途切れることが識別されると、現在位置から架線が途切れるまでの距離が所定以下になったときに架線接続制御部により、架線接続部を下降させる動作を開始するので、離脱の動作を円滑に実施することができる。
請求項12に記載の架線式電気自動車は、請求項10の発明において、前記架線接続制御部は、車両の走行方向および走行速度および予想される進行方向の情報から前記架線の敷設位置から離脱が推定されるときは、架線接続部を下降させることを特徴とする。これにより、架線接続部により架線に接続して受電部により給電を受けながら走行している状態で、架線から離脱することが推定されたときには、架線接続部を下降させることで架線接続部の電極が架線と接触している状態を早めに離脱させ、この後、再接続に移行させる状態とすることができる。
請求項13に記載の架線式電気自動車は、請求項10の発明において、前記架線接続制御部は、方向指示器がオンされた場合、受電部を切断させ、前記架線接続部を下降させることを特徴とする。
上記構成により、架線接続部により架線に接続して受電部により給電を受けながら走行している状態で、方向指示器がオン操作されると、車線変更や交差点の存在あるいは障害物が存在するなどして車両が架線が敷設された軌道を外れる可能性が高くなる。このとき、一旦架線接続部を下降させることで架線接続部の電極が架線と接触している状態を早めに離脱させ、この後、再接続に移行させる状態とすることができる。
請求項14に記載の架線式電気自動車は、請求項10の発明において、前記架線接続制御部は、前記架線が敷設された軌道から前記車両が外れることをハンドルの操作量により検出したときには、前記架線接続部の位置が前記架線への接続位置にある場合には、架線接続部を下降させてから、前記ハンドルの操作量に応じたタイヤの角度を駆動させることを特徴とする。
上記構成によれば、架線が敷設された領域から車両が離脱することがハンドルの操作量により検出されたときには、先に架線接続部を下降させてからタイヤの角度をハンドルの操作量に応じた角度に駆動させるので、架線接続部の一方の電極が一方の架線を離脱する際に他方の架線に接触するなどの不具合を回避させ、予期せぬ事故の発生を防止することができる。
請求項15に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線接続制御部は、前記架線接続部が前記架線に接続した状態で停車しているときに、アクセルが踏まれたことが検出されると、前記架線接続部を一旦下降させ、駆動電源を前記蓄電部に切り替えた後に発車させ、所定速度に達した後に前記架線接続部を再度上昇させて前記架線に接続させることを特徴とする。
上記構成によれば、架線接続部が架線に接続した状態で停車しているときに、アクセルが踏まれると、架線接続部が一旦下降させることで架線から離脱し、これによって架線接続部の電極が架線に接触したまま移動開始することによる摩擦力の大きい状態での接触状態で発生する摩耗を回避し、走行状態となってから再び架線接続部を架線に接触させることができる。
請求項16に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線接続制御部は、前記架線接続部を前記架線に接続した状態で、車両が停止するときには、前記架線接続部を一旦下降させ、車両が停止した後に前記架線接続部を再度上昇させて前記架線に接続させることを特徴とする。これにより、車両が停止する際においても、一旦架線接続部を架線から離脱させて停止させ、この後、蓄電部への充電を可能とするために、架線接続部を再度架線に接続させることができ、架線および架線接続部の摩耗を低減することができる。
請求項17に記載の架線式電気自動車は、上記各発明において、前記架線の情報を提供する車両制御センターとの間で通信を行う通信部として、無線方式で通信する無線通信部と、前記架線を介して有線通信方式で通信する有線通信部とを備え、前記無線通信部は、前記架線接続部による前記架線への接続がなされていない状態で前記有線通信部が前記架線を介した有線通信ができない状態のときに前記車両制御センターと通信をすることを特徴とする。
上記構成により、架線式電気自動車が架線が敷設されている場所に存在する場合には、架線に接続している状態であるから有線通信により通信が可能である。この状態のときには、有線通信部による通信を優先的に使用し、架線から外れる位置に存在したり、架線を通じた有線通信による通信ができない状態である場合には、無線通信部による無線通信を行う。これにより、無線通信を行う架線式電気自動車の台数を極力少なくして必要な無線帯域を低減することができる。
請求項18に記載の架線式電気自動車の走行システムは、請求項1ないし16のいずれかに記載の架線式電気自動車と、前記架線式電気自動車による前記架線への接続をするための情報を提供する車両制御センターとを有する架線式電気自動車の走行システムにおいて、前記架線式電気自動車は、前記車両制御センターとの間で通信を行う通信部として、無線方式で通信する無線通信部と、前記架線を介して有線通信方式で通信する有線通信部とを備え、前記無線通信部は、前記架線接続部による前記架線への接続がなされていない状態で前記有線通信部が前記架線を介した有線通信ができない状態のときに前記車両制御センターと通信をすることを特徴とする。
上記構成の架線式電気自動車の走行システムによれば、車両制御センターとの通信が可能な架線式電気自動車が、架線に接続をした状態では、有線通信部により架線を介して有線通信が可能であるので、こちらを優先して通信を行い、架線に接続されていない場合や有線通信部による有線通信ができないときには無線通信部により無線通信を行う。これにより、車両制御センターとの間で多数の架線式電気自動車が通信を行う場合において、無線通信の帯域において回線が不足するのを極力抑制することができる。
請求項19に記載の架線式電気自動車の走行システムによれば、請求項18の発明において、前記車両制御センターは、前記架線式電気自動車が前記架線と接続できない状況において前記無線通信部からデータの要求を受けたときに、データ提供の対象となる前記架線について、2本の架線の中央の位置についてその始点および終点の緯度データおよび経度データを含み、さらに現在地点からの架線の敷設位置を距離で表現し、その距離が近い部分のデータ密度が大きいデータとして提供することを特徴とする。
上記構成によれば、このシステムにおいて車両制御センターは、架線に接続できない位置に存在する架線式電気自動車の無線通信部からデータの要求を受けると、その架線までの距離とともに架線に接続するのに必要な情報として近い位置にある架線の情報の密度を高くしてデータを送信するので、受信した架線式電気自動車は、最寄りの架線への接続をスムーズ且つ迅速に行えるようになる。
請求項20に記載の架線式電気自動車の走行システムは、請求項18または19の発明において、前記車両制御センターは、前記架線式電気自動車が前記架線と接続可能な状況において前記無線通信部からデータの要求を受けたときに、データ提供の対象となる前記架線について、現在地点における前記架線式電気自動車の近傍の地点および終点の緯度データおよび経度データを含み、さらに現在地点に近い部分のデータ密度が大きいデータとして提供することを特徴とする。
上記構成によれば、車両制御センターは、通信相手となる架線式電気自動車とが架線に接続可能な状況にある場合に、2本の架線の中央に架線接続部がうまく接続できるように、架線に関する情報を提供する。これにより、架線式電気自動車が架線に近づいて接続可能な状態までくると、架線に対する接続すべき位置をデータとして取得して確実に架線との接続が行えるようになる。
請求項21に記載の架線式電気自動車の走行システムは、請求項18ないし20の発明において、前記架線式電気自動車は、前記架線式電気自動車が前記架線と接続状態にあるときに前記有線通信部から前記車両制御センターに対してデータを送信するときに、データ提供の対象となる前記架線について、前記架線接続部が当該2本の架線の中央位置に接続されている場合に、当該位置の緯度データ、経度データおよび高さのデータを含んだ情報として提供し、前記車両制御センターは、前記架線式電気自動車から受信する前記架線の情報を蓄積し、当該架線の位置データを修正することを特徴とする。
上記構成によれば、車両制御センターは、架線に接続された架線式電気自動車との通信において、架線に関するデータが要求されると、架線との接続状態を維持するのに必要な情報を提供することができるので、架線式電気自動車は正確なデータに基づいて架線との接続を維持させることができる。
以下、本発明を架線式電気自動車とそのシステムに適用した場合の一実施形態について、図1〜図21を参照しながら説明する。
図1はシステムの全体構成を示すもので、本システムにおいては道路上に給電用の架線を敷設し、架線式電気自動車(以下、単に「電気自動車」と称する)1は、架線から受電しながら走行したり、あるいは架線が敷設された道路から外れる場合には、蓄電池の電源を用いて走行したりする方式である。
電気自動車1は、道路上に敷設された架線部2から受電しながらその道路上を走行可能に構成されている。架線部2は、2本の架線3a、3bを備えていて、道路の随所に設けたれたトランス4から変電所5を経て発電所6から電力が供給される。この発電所6や変電所5は電気自動車1の架線部2に電力を供給する専用の施設とする必要はなく、一般の施設を利用することができる。
各架線部2には有線通信基地局7が配設されており、電気自動車1との間で有線通信が可能に構成されている。この有線通信基地局7は、有線通信センター8および通信網9を経由して車両制御センター10と接続可能に構成されている。また、架線部2が敷設されていない道路の随所には無線基地局11が設けられており、電気自動車1との間で無線通信が可能に構成されている。無線基地局11は、無線通信センター12および通信網9を経由して車両制御センター10と接続可能に構成されている。
車両制御センター10は、データベースを保有しており、電気自動車1の位置する緯度経度データに対応して架線部2の存在データを保持し、電気自動車1からの問い合わせの通信に対して必要な情報を提供する。そして、電気自動車1は、上記したように無線と有線の両方の手段で車両制御センター10に接続可能に構成されている。これらの使い分けは、基本的には、架線部2から受電してない場合には無線を使って無線基地局11に接続し、架線部2から受電している場合には架線部2を通じて有線で有線通信基地局7に接続する。
なお、常に無線で通信を行わないのは、多くの電気自動車1が走行する場合、トラフィックが多くなることを想定しており、トラフィックが多くなると無線通信に必要な帯域幅が足りなく懸念があるため、可能な範囲で通信トラフィックを有線通信側に分担させることで帯域幅の不足を解消しようというものである。
図2は電気自動車1の受電制御機能部1aの概略的構成を示している。この受電制御機器部1aは、架線接続制御部としての機能を備えたもので、後述する制御機能を実行するプログラムを予め記憶されており、これにしたがって以下に説明する各構成部分の動作の制御を行うように構成されている。また、受電制御機能部1aは、車両の走行状態を示す各種の信号として、例えば、方向指示器、ハンドル、アクセルなどの操作情報、走行速度や走行方向などの走行情報が入力され、これらによっても後述するような制御を行う。
図2において、架線接続部13は、架線部2の一対の架線3a、3bに電気的に接続して電力を受けるために一対の接続部13a、13bを備えている。架線接続部13の下部には架線接続部13を左右に移動させて左右方向の位置を正しい位置に保持して接続状態を維持させるための左右移動部14が設けられている。
受電部15は、架線接続部13が架線部2と接続状態にあるときに架線3a、3bを介して電力の供給を受けるためのものである。受電部15においては、必要に応じて受電した交流入力のノイズを除去するなどの波形整形処理を行う構成である。電力切替部16は、受電部15で受けた電力を駆動部17および蓄電部18のそれぞれに切り替えて供給するものである。
駆動部17は、モーターを含んだ駆動及び走行用の構成で電気自動車1の車輪1bを回転駆動させて走行させるための機能を有する。蓄電部18は、充電可能なバッテリなどで構成されるもので駆動部17の電源としても機能するものである。駆動部17は、後述するように、架線部2に接続された状態では架線部2から受電部15、電力切替部16を経由して受電して給電され、架線部2から外れた状態にあるときには蓄電部18から電力切替部16を経由して給電されて駆動する。
架線接続部13の接続部13a、13bにはそれぞれ位置検出用の受信部としてのアンテナ19a、19bが設けられており、架線部2の架線3a、3bのそれぞれから漏洩されている位置検出用の電波を受信し、これを左右位置検出部20に入力する。左右位置検出部20は、2本のアンテナ19a、19bにより受信した漏洩電波の強度を比較して最適位置からのずれを求める。左右位置駆動部21は、左右位置検出部20の検出結果に基づいて左右移動部14の進行方向に対する左右方向の位置を調節して最適な位置となるように制御する。
第1機構としての上下位置駆動部22は、架線接続部13の上下位置を調節するために電気的に駆動させる駆動機能部で、架線3a、3bへの接続時には架線接続部13を上方に駆動させ、離脱時には下方に駆動させる構成である。GPS位置検出部23は、電気自動車1の絶対座標位置である緯度/経度の情報をGPS衛星から送信される電波を受信して検出する。無線通信部としてのDB無線通信部24は、無線基地局11と通信する通信モジュールであり、車両制御センター10との間で通信を行う。有線通信部としてのDB有線通信部25は、架線部2を介して有線通信基地局7と通信を行い、車両制御センター10との間で通信を行う。
また、架線接続部13a、13bのそれぞれは、架線3a、3bと接触する電極としての架線接続端子26とこの架線接続端子26を上下動させ且つ振動を吸収させるための上下駆動部27を備えている。第2機構としての上下駆動部27は、架線接続端子26と左右移動部14との間に設けられ、架線接続端子26と架線3a(3b)とを適度な力で接触させ、車体が何らかの原因で上方に移動した場合には、架線接続端子26を下に移動させ、車体が下方に移動した場合には、架線接続端子26を上に移動させて架線3a(3b)との間の接触状態を適切な状態に維持させる。
次に、図3を参照してこれらの構成について説明する。上下駆動部27は、圧力容器27a内を内部に設けた褶動部27bにより、加圧空気部27c、大気圧部27dに仕切られた構成である。褶動部27bには架線接続端子26を上下動させるための軸27eが設けられると共に、加圧空気部27c側に付勢する付勢手段としてのねじりコイルばね27fが設けられている。加圧空気部27cは、上下位置駆動部22の加減圧部22aから加圧空気が内部に送り込まれるように構成され、これによってねじりコイルばね27fの付勢力に抗して褶動部27bを上方に移動させて軸27eに支持された架線接続端子26を架線3a(3b)に接触させる。加圧空気部27cは、上下位置駆動部22の加減圧部22aが減圧した場合には、ねじりコイルばね27fの付勢力によって褶動部27dを下降させる。さらに、加減圧部22aが加圧空気部27cを急激に大気圧に減圧した場合には、褶動部27bは急激に下降されて架線接続端子26は架線3a(3b)との接触状態が離脱状態に移行され、高速離脱動作を可能としている。なお、ねじりコイルばね27fは、褶動部27bが下降したときには圧縮状態に移行して下降時の衝撃を吸収する機能をもたせている。
次に、図4を参照して架線部2の両端部に設置された架線制御機28の構成について説明する。制御部29は架線制御機28の全体を制御するもので、MPU,メモリーなどを主体とした構成である。受電部30はトランス4に接続され例えば200Vの給電を受け、その電力を車両給電部31を介して架線3a、3bに供給可能に配設されている。これにより、架線部2に電気自動車1が接続されたときにはこれを検知して給電をするようになっている。
また、架線制御機28は、架線部2に接続される電気自動車1の台数などに応じて負荷変動が発生するのを検知して電圧を一定に保持する制御機能を備えている。車両通信部32は、架線3a、3bを介してこれに接続されている電気自動車1と有線通信を行う。車両通信部32には、有線通信基地局通信部33および架線通信部34が接続されている。有線通信基地局通信部33は、有線基地局7に接続されており、有線基地局7から有線通信センター8、通信網9を介して車両制御センター10と通信可能に設けられている。
架線通信部34は、隣接する他の架線制御機28の架線通信部34と接続され、隣接する架線制御機28の車両通信部32との間で通信を行ったり、あるいは隣接する架線制御機28を経由してさらにそれに接続された別の架線制御機28の車両通信部32と通信をしたりすることもできる。位置検出信号出力部35は、架線3a、3bに対して、位置検出信号として高周波の信号を出力しており、電気自動車1が漏洩電波として受信することで左右方向に正しく架線接続が可能となる。
図5は架線部2の連結状態を示すもので、これら架線部2に対して、架線制御機28は両端部にそれぞれ接続されている。分割された架線部2間は、架線制御機28間で架線通信部34により隣接するもの同士が接続される構成である。なお、各架線部2の両側の架線制御機28のうち、片方の架線制御機28のみが提供すればよい機能については、車両制御センター10の指示によって、片方の架線制御機28を予備機として機能させることもできる。また、架線制御機28は、それぞれ架線番号が付与されており、送信されるデータに対して、自己の架線番号を追加して送信することで、現在通信している電気自動車1がどの架線部2に接続しているのかが認識できるようにされている。
また、これにより、電気自動車1は、同一の架線部2内だけでなく、他の架線部2に接続している他の電気自動車1とも通信可能である。なお、架線制御機28は、遠くの架線部2に接続している電気自動車1の情報を通過させることのシステムとしての利点は少ない。そこで、架線制御機28は、例えば2〜3個離れた架線部2からのデータしか受け付けないよう、架線通信部34においてフィルタリングする。ただし、有線通信基地局7の故障の場合などでは、他の有線通信基地局7を経由して通信できるように、フィルタリング条件を変更することができる。全体としては、架線制御機28は、電気自動車1が車両制御センター10と接続する場合には有線通信基地局通信部33を経由して通信し、他の架線部2に接続している電気自動車1と通信する場合には架線通信部34が用いられる。
次に、上記構成の作用について図6〜図21も参照して説明する。
図6は、電気自動車1の受電制御機能部1aが、架線部2と接続または離脱する処理の全体的な動作について示したメインプログラムのフローチャートである。電気自動車1の受電制御機能部1aは、自己の電気自動車1の現在の状態について図6のフローチャートに従って判断し、該当する処理を実行する。
まず、受電制御機能部1aは、現在の電気自動車1の状態が自由走行中であるかないかを判定する(A1)。ここで、自由走行中とは、電気自動車1が架線部2に接続せずに、蓄電部18の蓄電池の電力で走行している状態の場合に相当する。受電制御機能部1aは、自由走行中である場合(A1で「YES」と判断)には、次に自由走行処理(A2)に進んで後述する自由走行処理(図7)を実行する。
また、受電制御機能部1aは、現在の電気自動車1の状態が自由走行中ではない場合(A1で「NO」と判断)には、現在の状態が架線走行中であるか否かを判定する(A3)。ここで、架線走行中とは、電気自動車1が架線部2に接続した状態で走行しており、電気自動車1は架線3a、3bから受電し、駆動および充電に架線部2から電力を受けている状態に相当する。受電制御機能部1aは、架線走行中である場合(A3で「YES」ト判断)には、次に架線走行処理(A4)に進んで後述する架線走行処理(図9)を実行する。
次に、受電制御機能部1aは、現在の電気自動車1の状態が架線走行中でもない場合(A3で「NO」と判断)には、現在の状態が架線停止中であるか否かを判定する(A5)。ここで、架線停止中とは、電気自動車1が架線部2に接続した状態で受電していて、且つ電気自動車1は停止している状態に相当する。この場合、受電制御機能部1aは、架線部2から受電した電力を、主に蓄電部18への充電に使用し、あるいは電気自動車1内において必要な電力に供している。また、道路上での状態としては、電気自動車1が信号交差点の手前で停止している場合、あるいは渋滞していて停止している場合などが想定される。道路から外れた場所に停止している状態としては、自宅やコンビニ、スーパーの駐車場、会社の駐車上などにおいて自動充電のための架線を有している場合が想定される。そして、受電制御機能部1aは、架線停止中である場合(A5で「YES」と判断)には、架線下停止中時処理(A6)に進んで後述する架線下停止時処理を実行する(図14)。
次に、受電制御機能部1aは、現在の電気自動車1の状態が架線下停止中でない場合(A5で「NO」と判断)には、現在の状態が自由停止中であるか否かを判定する(A7)。ここで、自由停止中とは、電気自動車1が架線3に接続していない状態で停止している場合に相当する。この状態は、道路上においては、架線部2が敷設されていない道路で停止している場合に相当し、道路外においては、架線部2が敷設されていない駐車場などで停止している場合に相当する。受電制御機能部1aは、自由停止中である場合(A7で「YES」と判断)には、架線外停止時処理に進んで後述する架線外停止時処理(A8)を実行する(図15)。
なお、電気自動車1のあらゆる場合について上記の状態判定により分類することができる。したがって、受電制御機能部1aは、自由停止中でもないことを判定した場合(A7で「NO」と判断)には、何らかの異常が発生している場合が想定されるため、ここで一旦制御動作を終了する。なお、この実施形態では、異常発生があった場合の処理には言及しないが、実際には別途異常発生時の処理について準備されていて、適切な処置ができるように構成されている。また、受電制御機能部1aは、上記のように各処理(A2、A4、A6、A8)を実行終了すると、再びA1に戻って電気自動車1の現在の状態を判定する処理を繰り返す。
以下、上記した各処理(A2、A4、A6、A8)を受電制御機能部1aが実行する内容について詳細に説明する。
<自由走行処理(A2)>
図7は、図6のステップA2の自由走行処理の処理内容を示している。この処理がなされるのは、電気自動車1が架線部2に接続せずに走行している場合である。受電制御機能部1aは、まず、GPS位置検出部23により現在の電気自動車1の位置を認識するための緯度経度情報を取得する(B1)。次に、受電制御機能部1aは、入手した緯度経度情報と自車のIDとを車両制御センター10に送信し、現在位置の近傍の架線部2の敷設状況を問い合わせる(B2)。
次に、受電制御機能部1aは、電気自動車1の現在位置と車両制御センター10から受信した情報に基づいて、架線部2に接続する状況にあるか否かを判断する(B3)。架線部2の敷設状況から近傍に架線部2が存在しない場合には、受電制御機能部1aは、架線部2への接続処理をする必要がない(B3で「NO」と判断)ので再びステップB1に戻って上記の処理を繰り返し実行する。
一方、電気自動車1の現在位置近傍に架線部2が存在してB3で「YES」と判断したときには、受電制御機能部1aは、架線接続処理を実行する(B4)。この架線接続処理は後述するように図8に示すフローチャートに従って実行される。この架線接続処理を実行することで電気自動車1は架線部2に接続した状態に移行し、受電制御機能部1aは、走行中の電源として使用していた蓄電部18の蓄電池から架線部2を介して得られる受電電力で走行するように切り替え(B5)、制御内容が自由走行中の状態から架線下走行中の状態に切り替わる。また、このとき、受電制御機能部1aは、電源として用いていた蓄電部18の蓄電池に対して架線部2から供給される電力により充電動作を開始する(B6)。
次に、上記説明中で述べた架線接続処理について図8のフローチャートを参照して説明する。受電制御機能部1aは、まず、架線接続部13の接続部13a13bを上下位置駆動部22により一旦接続準備位置まで上昇させた位置で停止させる(C1)。次に、受電制御機能部1aは、2本の架線3a、3bからの漏洩電波をアンテナ19a、19bにより受信し、左右位置検出部20によりその結果を解析して、架線3a、3bに対してアンテナ19a、19bの左右方向の位置すなわち架線接続部13の位置が中央位置にあるか否かを判定する(C2)。
受電制御機能部1aは、上記の判定結果が中央位置でないと判断した場合(C2で「NO」と判断)には、左右位置駆動部21により左右移動部14を移動制御して架線接続部13を中央位置に移動させる(C3)。受電制御機能部1aは、この処理を繰り返し実施することで架線接続部13の位置が中央位置になる(C2で「YES」と判断)と、上下位置駆動部22により接続位置まで接続部13を上昇させる(C4)。
この状態で、受電制御機能部1aは、実際に接続部13a、13bがそれぞれ架線3a、3bに接続状態となって架線受電できているか否かを判定する(C5)。受電できていない場合(C5で「NO」と判断)には、受電制御機能部1aは、一旦接続部13を上下位置駆動部22により下降させ(C6)、再びステップC1から上記処理を繰り返す。そして、接続部13が架線部2に接続されて架線受電できている場合(C5で「YES」と判断)には、受電制御機能部1aは、通信手段をDB有線通信部25による通信を行うように切り替え(C7)、この後処理を終了する。
<架線走行処理(A4)>
次に、図6のステップA4で行う架線走行処理について図9を参照して説明する。この処理がなされるのは、電気自動車1が架線部2に接続した状態で架線部2側から受電しながら走行している場合である。受電制御機能部1aは、まず接続部13の進行方向に対する左右方向の位置が中央位置にあるか否かを前述同様の方法により検出し(D1)、中央位置にない場合には前述同様にして接続部13が中央位置となるように移動制御する(D2)。
接続部13の位置が中央位置に制御された状態になると(D1で「YES」と判断あるいはD2を経て)、受電制御機能部1aは、GPS位置検出部23によって現在位置を緯度経度データとして取得し、車両制御センター10に架線状況を問合せる(D3)。これらの処理は図7のステップB1、B2の処理と同様である。次に、受電制御機能部1aは、車両制御センター10からの架線状況を受信した結果、架線部2への接続を継続しないと判断した場合(D4で「NO」と判断)には、後述する架線離脱処理を行い(D5)、この後、架線下停止処理(D6)を経て処理を終了する。ここで、架線下において架線離脱をした場合には、架線下において停車するときに充電を行う関係で、架線下で停止する処理を行うことで対応し、自由走行に移行する場合には架線下で停止する処理を実行した際に自由走行に移行できるように処理を終了する。
また、受電制御機能部1aは、上記の処理で、車両制御センター10からの架線状況を受信した結果、架線部2への接続を継続可能と判断した場合(D4で「YES」と判断)には、続いて、ウインカ操作や車線変更のためのハンドル操作など架線離脱の操作が行われた否かの判定を行う(D7、D8)。これは、現在の電気自動車1の走行状態において架線部2が走行方向に存在していてこのまま継続して走行する場合には架線離脱することなく受電しながら走行できるが、運転者の運転操作によって架線部2から離脱するケースを認識しようというものである。
すなわち、ウインカが操作された場合(D7で「YES」と判断)や、ウインカの操作がない場合でも、ハンドル操作によって架線部2から離脱してしまう場合(D8で「YES」、D9)が後述するようにして判定されると(D10で「YES」の場合)、受電制御機能部1aは、前述の架線離脱処理(D5)に移行し、架線下停止処理(D6)を経て処理を終了する。
また、ハンドル操作がなされない場合(D8で「YES」と判断)や、ハンドル操作による架線離脱操作が行われていない場合(D10で「NO」と判断)には、受電制御機能部1aは、信号によって予め定められた時間内に停止がなされるか否かの判定を行う(D11)。詳細な説明は省略するが、受電制御機能部1aは、車両制御センター10に、信号までの距離や、信号が変わるまでの時間、あるいは先行する電気自動車1の数量などを問合せ、現在の走行速度と勘案して、車両が予め定められた時間内に停止する場合(D11で「YES」と判断)には、架線離脱処理(D5)を行った後、架線下停止処理(D6)を行って処理を終了する。
また、受電制御機能部1aは、信号停止はないと判定した場合(D11で「NO」と判断)には、続いて、予め定められた時間内に渋滞停止があり得るかを判定する(D12)。これも詳細な説明を省略するが、架線下に存在している先行する電気自動車1の数量や速度や自車速度などから判断し、渋滞によって、車両が予め定められた時間内に停止すると判断した場合(D12で「YES」と判断)には、先と同様に架線離脱処理(D5)および架線下停止処理(D6)を実施して終了し、そうでない場合には、ステップD1に戻り、上記の処理を繰り返し実行する。
次に、上記したステップD5で実施する架線離脱処理について図10を参照して説明する。受電制御機能部1aは、まず、蓄電部18の蓄電池への充電を停止させ、受電部15から蓄電部18への充電経路を電力切替部16により切断させる(E1)。次に、受電制御機能部1aは、電力切替部16により駆動部17の駆動電力を受電電力から蓄電部18の蓄電池による電力で供給するように切り替える(E2)。この後、受電制御機能部1aは、架線接続部13を上下位置駆動部22により下降させ(E3)、さらにDB有線通信部25による通信を停止してDB無線通信部24による通信を行う状態に切り替えて(E4)、処理を終了する。
また、前述したステップD6で実施する架線下停止処理について図11を参照して説明する。これは、前述のように電気自動車1が架線部2に接続した状態で通行しているときに、信号停止や渋滞時などで停車する場合の処理である。受電制御機能部1aは、まず、電気自動車1の現在位置の上部に架線部2が存在しているか否かを確認するため、GPS位置検出部23によって現在位置を緯度経度データとして取得し(F1)、車両制御センター10に架線状況を問合せる(F2)。
架線部2の敷設状況から近傍に架線部2が存在しない場合には、受電制御機能部1aは、架線部2への接続処理をする必要がない(F3で「NO」と判断)ので処理を終了する。一方、電気自動車1の現在位置近傍に架線部2が存在してF3で「YES」と判断したときには、電気自動車1が停止するまで待機し(F4)、停止した場合(F4で「YES」と判断)には、受電制御機能部1aは、再び架線接続処理を実行して(F5)架線接続部13を架線部2に接続させる。
なお、この場合の架線下での接続処理では、電気自動車1の停止中において、後の自由走行時に必要な電力を確保するために蓄電部18の蓄電池に架線部2から充電を行わせるためである。また、架線に接続したままで停止させず、一旦離脱した後に再度接続処理を行うのは、電気自動車1の停止時には架線部2と架線接続部13との間の接触状態による摩擦で摩耗が大きく発生するのを防止するためである。
次に、図9のステップD9で示したハンドル操作判定処理について図12および図13を参照して説明する。この処理では、運転者によるハンドルの操作状況から架線離脱をするか否かを判断する。受電制御機能部1aは、ハンドルの切り角が標準よりも大きいか否かを判断し(G1)、大きい場合(G1で「YES」と判断)には急ハンドルを切った場合であるから、電気自動車1が架線部2から離脱すると判断して(G7)、処理を終了する。
また、受電制御機能部1aは、ハンドルの切り角が標準の範囲であった場合(G1で「NO」と判断)には、電気自動車1の走行状態から架線部2の位置から離脱するか否かを判断する。これは、図13に示すように、電気自動車1のハンドルの切り角が少ない場合でも、架線部2の敷設位置がカーブしていて、電気自動車1が現在位置P1から進行方向にそのまま進んだ場合には架線部2から離脱するような場合を検出するためである。
まず、受電制御機能部1aは、電気自動車1の速さを検出し(G2)、速さ情報に基づいて次の位置を予測するための予測秒数を決定し(G3)、予測秒数後の電気自動車1の予測位置P2を計算する(G4)。一方、受電制御機能部1aは、車両制御センター10から受信している情報に基づいて、架線部2の位置PPを計算し(G5)、電気自動車1が架線部2に追従して走行するか否かを判断する(G6)。受電制御機能部1aは、電気自動車1が架線部2に追従していると判断した場合(G6で「YES」と判断)には、処理を終了し、追従していないと判断した場合(G6で「NO」と判断)には架線離脱であると判断して離脱処理を行わせる(G7)。
<架線下停止時処理(A6)>
次に、図6のステップA6で示した架線下停止時処理について図14を参照して説明する。この処理がなされるのは電気自動車1が、架線部2が敷設されている位置に停車または駐車している場合であり、その状態から発進する処理を含んでいる。これは、例えば道路上での停車状態あるいは自宅で駐車している場合などに相当する。
受電制御機能部1aは、電気自動車1が架線下で停止している際に、まず現在の位置をGPS位置検出部23により検出し(H1)、続いて入手した現在位置情報と自車のIDとを車両制御センター10に送信して架線部2の敷設状況を問い合わせる(H2)。問い合わせの結果に基づいて、受電制御機能部1aは、電気自動車1が架線部2に接続可能な位置に存在するか否かを判断する(H3)。電気自動車1の現在位置が架線下にない場合(H3で「NO」と判断)には、受電制御機能部1aは処理を終了する。
また、電気自動車1の現在位置が架線下にある場合(H3で「YES」と判断)には、受電制御機能部1aは、運転者による走行開始の操作があったか否かを判断(H4)し、ない場合(H4で「NO」と判断)には再びステップH1に戻って上記の処理を繰り返す。そして、走行開始の操作があった場合(H4で「YES」と判断)には、受電制御機能部1aは、接続された状態にある架線接続部13を一旦予備位置まで下降させ(H5)て、架線離脱処理(H6)を行わせる。この架線離脱処理は、前述した図10に示した一連の処理である。ただし、この場合にはステップE3の「架線接続部下降」は含まれない。
この後、受電制御機能部1aは、電気自動車1の走行速度が運転開始時から一定速度に達するまで待機し(H7)、一定速度に達すると(H7で「YES」と判断)、前述同様にして現在の電気自動車1の位置検出および架線状況の問合せの処理を行なって架線部2の下に存在しているか否かの判断を行う(H8)。受電制御機能部1aは、電気自動車1が架線下に存在する場合(H8で「YES」と判断)には架線接続処理(H9)を行った後処理を終了し、電気自動車1が架線下に存在していない場合(H8で「NO」と判断)にはそのまま処理を終了する。上記したステップH9の架線接続処理は前述した図8に示す一連の処理を実行する。
なお、前述のステップH7で電気自動車1の走行速度が一定速度に達したときに架線下に存在する場合とは、電気自動車1が道路上の架線部2の下で走行している場合に相当し、架線部2の下にいない場合とは、自宅やコンビニ、会社などの架線が敷設されていない駐車場に駐車していた場合などに相当する。
また、電気自動車1が架線部2に接続した状態から、そのまま走行させず、一旦接続部13を下降させた後に、一定速度に達したときに再接続させているのは、停止した状態から接続状態のまま動きだすと静止摩擦が大きいため架線3a、3bと架線接続部13a、13bとの間の摩耗が増大するので、このような摩耗の発生を極力低減して保護をすることで架線および架線接続部の長寿命化を図る目的で実施するものである。
<架線外停止時処理(A8)>
次に、図6のA8における架線外停止時処理について図15を参照して説明する。この処理がなされるのは、電気自動車1が、架線部2が敷設されていない場所に停止している状態にある場合であり、その状態から発進する処理を含んでいる。受電制御機能部1aは、前述同様にして電気自動車1が現在架線部2が敷設されている位置に停止しているか否かを判断する(I1〜I3)。
受電制御機能部1aは、電気自動車1が架線部2の下に存在する場合(I3で「YES」と判断)には、そのまま処理を終了する。また、電気自動車1が架線部2の下に存在していない場合(I3で「NO」と判断)には、受電制御機能部1aは、走行開始の操作があった否かを判定し(I4)、走行開始の操作があった場合(I4で「YES」と判断)にはそのまま処理を終了し、走行開始の操作がなかった場合(I4で「NO」と判断)には、ステップI1に戻って上記の処理を繰り返し実行する。
以上のようにして図6のフローチャートに従って判断された電気自動車1のすべての状態に対応して架線部2との接続関係を適切に制御することができる。
次に、上記の制御の説明中では簡略的に述べた内容として、電気自動車1の走行中における架線部2との接続を保持する制御について図16〜図18を参照して説明する。図16は走行中の電気自動車1の架線接続部13と架線部2との間を良好な接続状態に保持するために左右位置駆動部21による位置制御をする場合の内容を示したフローチャートである。
受電制御機能部1aは、位置制御のための架線3a、3bのそれぞれから漏洩されている電波を2本のアンテナ19a、19bから左右位置検出部20に受信させる(J1)。受信した電波の受信レベルあるいは位相を検出し、そのレベルに基づいて架線接続部13の位置(中心位置N)が架線部2の位置(中心位置M)に対してどちらにずれているかを判断する。受電制御機能部1aは、左寄りにずれている場合(J2で「YES」と判断)には、左右位置駆動部21により架線接続部13の位置を右に移動するように制御し(J3)、右寄りにずれている場合(J2で「NO」、J4で「YES」と判断)には、左に移動するように制御する(J5)。
図17(a)〜(c)は架線接続部13の位置と架線部2の位置とを相対的に示すもので、(a)は架線接続部13の中央位置Nが架線部2の中央位置Mとほぼ一致する位置にある場合、(b)は架線接続部13が左にd1だけずれている場合、(c)は架線接続部13が右にd2だけずれている場合を示している。
架線3a、3bから漏洩している電波を、架線接続部13が(a)の位置にあるときに受信すると、アンテナ19a、19bでそれぞれ受信する電波の受信レベルはほぼ同じレベルとなる。これに対して、架線接続部13が(b)の位置あるいは(c)の位置にあるときには、電波の放射レベルが距離に反比例するので、図18(a)に示すように、近づいた側のアンテナの受信レベルが高く、遠ざかる側のアンテナの受信レベルが低くなる。この結果、アンテナ19a、19bの受信レベルの差から架線接続部13の中心位置Nと架線部2の中心位置Mとのずれ量d1あるいはd2を特定することができる。
なお、このずれ量については、図18(b)に示すように、アンテナ19aの受信レベルを縦軸にとり、アンテナ19bの受信レベルを横軸にとったときに、電波の受信レベルをプロットすると、両者の値が等しいときつまり45°の傾きの線上に位置するとき(図17(a)の位置)に中央位置Mに一致し、アンテナ19aの受信レベルが大きい場合には、図17(b)の位置すなわち左寄り領域に該当し、アンテナ19bの受信レベルが大きい場合には、図17(c)の位置すなわち右寄り領域に該当する。
次に、自宅の駐車場などに設置されている充電のための架線制御機の動作について図19を参照して説明する。なお、この架線制御機については、図示はしていないが架線部2と同様に給電のための架線3a、3bに相当する一対の給電部が設けられ、また給電対象となる電気自動車1の存在の有無を検出する検出部が設けられている。また、給電のための制御を制御部により実施する。
電気自動車1側においては、GPS位置検出部23あるいはDB無線通信部24などの通信機能を利用して上方に位置する給電部の存在を架線部2と同様にして認識することができ、給電部を認識すると、給電を受けるために架線給電部13を給電部に接続するための処理を行なって給電可能な状態となる。
これに対して、自宅に設置された架線制御機の制御部は、検出部により電気自動車1が給電部に接続されている否かを判定する(K1)。制御部は、給電部に電気自動車1が接続されていることを判定(K1で「YES」と判定)すると、現在給電動作を行なっているか否かを判断し(K2)、給電中である場合(K2で「YES」と判断)には上記ステップK1に戻って上記処理を繰り返す。また、給電動作を行なっていない場合(K2で「NO」と判断)には、制御部は、給電部に接続されている電気自動車1が登録されている車両であるか否かを判断する(K3)。
給電部に接続された電気自動車1が登録されていない車両である場合(K2で「NO」と判断)には、制御部は、ステップK1に戻り、上記の処理を繰り返し実施し、登録されている車両である場合(K3で「YES」と判断)には、制御部は、電気自動車1への給電動作を開始させる(K4)。これにより、電気自動車1においては、受電制御機能部1aにより、給電部から受電するための処理動作を開始して蓄電部18の蓄電池への充電動作を開始させ、あるいは車内設備の内の給電により動作可能な設備などへの給電を行わせる。
また、制御部は、検出部により電気自動車1が給電部に接続されていないことを判定すると(K1で「NO」と判断)、このとき給電動作を行なっていなければ(K5で「NO」と判断)再びステップK1に戻って上記処理を繰り返し、給電動作をしていた場合(K5で「YES」と判断)には、給電動作を停止し(K6)、再びステップK1に戻って上記処理を繰り返す。ステップK5で「NO」と判断されるのは、自宅で給電中だった電気自動車1が給電動作を停止して電気自動車1が給電部から外れた位置に移動した場合などに相当する。自宅などの駐車場の給電部が、電気自動車1に給電するときにのみ通電するのは、架線が屋外に設置されるための不測の事故を避けるためである。
次に、上記した図6の処理で、電気自動車1の受電制御機能部1aが、車両制御センター10との間で行う通信に用いるデータのパケット構造について図20を参照して説明する。データパケットの構成としては、電気自動車1から車両制御センター10への問合せパケットの構成(a)、車両制御センター10から電気自動車1への応答パケットの構成のうち未接続時の応答パケットの構成(b)、接続時の応答パケットの構成(c)がある。
まず、問合せパケットの構成(a)は、車両ID、現在位置、走行情報、架線接続情報、発信時刻の情報が含まれている。ここで、車両IDは、電気自動車1に割り当てられている固有IDであり、例えばナンバープレートと同じ文字列により設定される。現在位置は、電気自動車1の現在位置であり、緯度/経度データであり、GPS位置検出部23により検出したデータである。走行情報は、速さ、進行方向、タイヤの切り角などの情報である。ここで、速さはスピードメータ表示のデータである。進行方向はGPS位置検出部23で得た緯度/経度データからその延長方向を計算して算出したデータ、あるいはジャイロを具備して検出したデータである。タイヤの切り角は、直進しているのか、左右に移動しているのかを示すデータであり、切り角センサーから得るデータである。架線接続情報は、電気自動車1が架線部2に接続しているか否かの情報で、架線部2に接続していれば、架線接続時の情報が得られ、逆に接続していなければ、架線未接続時の情報が得られる。
次に、車両制御センター10からの応答で未接続時の応答パケットの構成(b)は、車両ID、区分、始点位置最短位置、終点位置、10m位置、20m位置、50m位置、100m位置の情報が含まれる。ここで、車両IDは、問合せ時に電気自動車1側から送信した車両IDのデータであり、アプリケーションレベルで、自車に来た応答であるかを確認するのに用いる。区分は架線の高さを示すデータで、低車高車向けと高車高車向けの区別を示しているが、道路からの具体的な高さで示しても良い。この区分については別途説明する。
始点位置は、近在に敷設されている架線部2の始端の位置を示すデータであり、緯度/経度データで提供される。最短位置は、複数車線ある道路の内の一部のみに架線部2が設けられている場合で、電気自動車1(100)が架線の敷設されていない車線を走行しているときに接続可能な最短位置を示している。終点位置は、架線部2の終端の位置データで、緯度/経度データおよび終端までの距離データである。終端位置は、架線接続部13を架線部2に接続している状態で離脱するときに必要な距離を確保するためのデータである。10m、20m、50m、100m位置は緯度/経度データで示される。ここで示している距離は架線部2の始点または最短位置からの架線の長さである。
次に、車両制御センター10からの応答で接続時の応答パケットの構成(c)は、上記した未接続時の応答パケットの構成とデータ構成としてはほぼ同様であり、上記のデータに加えて架線離脱制御情報が付加されている。未接続時の応答パケットの構成と異なるところは、次の通りである。現在位置は電気自動車1からの問合せ時に電気自動車1側から発信した位置の情報である。これにより、例えば通信トラフィックの輻輳などで応答が遅れた場合などでも、それに応じたデータ処理が可能となる。
そして、架線部2に接続した状態で設けるデータの特徴的である架線離脱制御情報は、標準切り角と架線接線方向のデータからなる。ここで、標準切り角は、当該位置での標準的なタイヤ(ハンドル)の切り角である。道路が直線状であって架線部2もこれにそって直線的に敷設されている場合には、切り角はゼロとなる。これに対して、道路がカーブしていて架線部2もカーブに沿って湾曲して敷設されている場合には、その湾曲に応じて電気自動車1もカーブを切って走行することで、架線部2に追従する必要がある。
従って、架線部2が直線的に敷設されている場合に切り角が大きいときは架線部2から離脱することになり、架線部2がカーブして敷設されている場合に切り角がゼロで直進するときも同様に架線部2から離脱することになる。ここで、架線接線方向は架線部2が敷設されている方向を示しており、架線部2との離脱処理が必要か否かを判断に用いる。
次に、前述した区分について図21(a)、(b)を参照して具体的に説明する。電気自動車1としては、図示のように、バスやトラックなどの車高が高い大型車両100と、乗用車に代表される車高が低い普通車両200とがある。したがって、大型車両100および普通車両200が前述したような同一の架線3a、3bに接続するには、大型車両100の架線接続部13c、13dの高さに合わせることになるが、これでは普通車両200では高すぎて架線接続部13の伸長可能な長さを大きくする必要があり、車両の走行安定性の観点から望ましくない。
そこで、図21(a)、(b)に示したように、架線部2に架線3a、3bに加えて高い位置に架線3c、3dを設ける構成としている。架線3a、3bの設置高さは大型車両100の架線接続部13c、13dの架線接続端子26を非接続時の収納位置に下げたときの高さHよりも少し高い位置で大型車両100がそのまま通過可能となる高さに設定する。架線3c、3dの設置高さは大型車両100の架線接続部13c、13dを接続位置に上昇させたときに接続可能な高さに設定する。
また、このように大型車両100の架線接続部13c、13dに対応した架線3c、3dを架線部2に設ける場合には、4本の架線3a〜3dが並行して設けられる構成を採用することになる。
このような本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
第1に、電気自動車1の上部に架線接続部13を設け、位置検出手段により道路や駐車場などに敷設されている架線部2の位置を検出して架線接続部13の位置を調整して架線3a、3bに接続させ、これによって、受電部15により駆動部17を駆動させるための電力を受けたり、あるいは蓄電部18の蓄電池の充電を行ったりすることができる。このように、架線部2への接続を自動的に行えるので、走行中においては、架線部2が敷設された位置を走行することで蓄電部18の消耗を低減させることで長距離の走行が可能となり、あるいは蓄電部18の充電容量を少なくして小型軽量化を図ることができる。また、停車中においては、従来のように充電用のコードのプラグなどを充電用のコンセントに挿し込む必要がなくなり、使い勝手が良くなる。
第2に、架線接続部13による架線部2への接続方式として、アンテナ19a、19bを設け、2本の架線から漏洩する電波を受信し、左右位置検出部20によりその振幅差あるいは位相差などから架線3a、3bの位置を特定し、左右位置駆動部21により架線接続部13の位置を左右方向に制御して架線3a、3bとの接続状態を維持させるので、電気自動車1の走行する軌道が多少ずれた場合でも、架線接続部13を精度よく架線部2に接続した状態とすることができる。
第3に、アンテナ19a、19bの配置位置を2個の架線接続端子26の内側に位置させる構成としたので、2本の架線3a、3bから出力される漏洩電波を受信する際に、架線接続部13の左右方向のずれ量が所定範囲内であれば、アンテナ19a、19bの位置が架線3a、3bの敷設位置から外れること無く受信レベルを大きく保持することができ、これによってアンテナ19a、19bによる受信信号の強度を確保して位置制御の精度を高めることができる。
第4に、架線接続部13を、電気的に上下駆動する上下位置駆動部22と空気圧制御により上下駆動する上下駆動部27とにより上下動させる構成としたので、架線接続部13の上下動の制御を、上下位置駆動部22により電気的に所定の位置まで確実に移動させ、上下駆動部27により空気圧制御により上下動の制御を行うので、2個の電極の位置を弾力的に上下動の位置制御することができ、道路の凹凸や架線のたるみなどに柔軟に対応して架線部2への接続状態を保持でき、これによって、確実に受電部15により受電することができる。
第5に、上下駆動部27の構成を、圧力容器27a、褶動部27b、加圧空気部27cなどで構成し、ねじりコイルばね27fで付勢力を与える構成としたので、2個の架線接続端子26を弾力性をもって所定の圧力をかけながら架線3a、3bに接触させた状態とすることができ、しかも、加圧空気部27cが減圧すると、ねじりコイルばね27fの付勢力によって架線3a、3bとの接触状態を開放させることができる。
第6に、加圧空気部27c内の圧力が予め設定された圧力を超えると内部の圧力を大気圧に開放するので、架線接続部13が架線3a、3bに接続されている状態で、電気自動車1が道路上の物体を踏んだりあるいは物体に乗り上げたりした場合に、内部の圧力を大気圧に開放して架線接続部13を下降させて、架線3a、3bに過大な押し上げ力を及ぼすのを防止することができる。
第7に、受電制御機能部1aにより、GPS位置検出部23により検出された架線接続部13の位置情報から受電可能な架線部2の位置に到達するまでの時間が所定以下になると架線接続部13を架線3a、3bに接続させるために上昇開始させるので、電気自動車1が架線敷設位置に到達したときに、架線接続部13を架線3a、3bに迅速に接続させることができ、これによって受電部15により架線3a、3bからすぐに給電を受けることができる。また、これにより、駆動部17が蓄電部18から給電されていたのを架線3a、3bからの給電駆動に切り替えて走行することができる。
第8に、受電制御機能部1aにより、架線接続部13の位置情報からこの後架線3a、3bが途切れることを識別すると、受電部15を切断させた後に架線接続部13を下降させるので、架線3a、3bから離脱する際に受電部15による受電動作を切断して保護し、且つ、架線接続部13を架線3a、3bから接触するなどの支障を来すことなく確実に離脱させることができる。
第9に、受電制御機能部1aにより、架線3a、3bが途切れるまでの距離が所定以下になると架線接続部13を下降開始させるので、架線3a、3bからの離脱の動作を迅速且つ円滑に実施することができる。
第10に、受電制御機能部1aにより、方向指示器がオンされたときには、車線変更や交差点の存在あるいは障害物が存在するなどして架線3a、3bが敷設された軌道を外れる可能性が高くなることを予想し、一旦架線接続部13を下降させるので、架線接続部13の架線接続端子26が架線3a、3bとの接触状態を迅速に離脱させることができる。
第11に、受電制御機能部1aにより、架線3a、3bが敷設された領域から離脱することがハンドルの操作量により検出されたときには、先に架線接続部13を下降させてからタイヤの角度をハンドルの操作量に応じた角度に駆動させるので、架線接続部13の一方の架線接続端子26が一方の架線3aを離脱する際に他方の架線3bに接触するなどの不具合を回避させ、予期せぬ事故の発生を防止することができる。
第12に、受電制御機能部1aにより、架線接続部13が架線3a、3bに接続した状態で停車しているときに、アクセルが踏まれたことが検出されると、架線接続部13を一旦下降させ、前記蓄電部18による給電状態に切り替えた後に発車させ、所定速度に達した後に架線接続部13を再度上昇させて架線3a、3bに接続させるので、移動開始時の大きな摩擦による摩耗を回避することができる。
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した一実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
交差点などの架線部2が複雑に交差する状況が発生する場所では、架線3a、3bを交差点内に敷設しない環境とすることで、簡潔な構成で架線部2の敷設環境を設定することができ、このような環境においても、架線式電気自動車1は、架線接続部13を架線部2の有無の環境に適切に対応して離脱および接続の動作を自動的に行えるので、支障なく走行することができる。
道路上に架線部2が敷設されていない環境においても、蓄電部18への充電を行うための架線部2が設けられる環境であれば充電用のコードを用いないで架線接続部13による自動的に充電動作を行わせることができる電気自動車として利用することができる。
架線接続部13を上下動させる構成は、電気的に上下動させる構成のみを使用する構成としても良いし、空気圧により上下動させる構成のみを使用する構成としても良い。
架線3a、3bから漏洩する電波を用いて位置を検出する例を示したが、別途位置検出用の電波信号を出力する構成としても良い。
2本のアンテナ19a、19bを設ける構成としたが、検出精度を考慮して3本以上設けて正確な位置を検出する構成としても良い。また、架線部2から、2本の架線3a、3bの個別の位置検出用の電波信号を送信するシステムでは、1本のアンテナによって個別の電波信号の受信強度や位相差を検出して位置制御をすることができる。
付勢手段は、ねじりコイルばね27f以外に、種々のばねあるいは付勢力を与える手段を用いることができる。