JP2013197913A - 振動素子、振動子、電子デバイス、発振器、及び電子機器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基板10と、表裏一対の励振電極20a、20bと、を備えた振動素子であって、基板10は、平板状の基部12と、基部10の一方の面から厚さ方向に突出した第1凸部14と、他方の面から厚さ方向に突出した第2凸部16と、を有している。第1、及び第2凸部14、16は、基部12の厚さ方向の中心を通り且つ厚さ方向に直交する平面に対して非対称に形成されている。
【選択図】図1
Description
特許文献1には、ATカット水晶基板の表裏主面に形成する一対の励振電極の位置関係を変えることにより、ATカット水晶振動子の周波数温度特性を変化させた水晶振動子が開示されている。
つまり、水晶基板の表裏両面の電極にずれがない場合の周波数温度特性を基準として、電極を水晶基板のZ’軸の一方の方向にdだけずらすと、この水晶振動子の周波数温度特性は変曲点を中心に反時計回りに変化し、電極をZ’軸の他方の方向(逆方向)にdだけずらすと、周波数温度特性は変曲点を中心に時計回りに変化する。なお、電極のずれdの値が0.2mmの場合には、基準のカット角から角度ずれは約2’に相当し、ずれdが0.1mmの場合には角度ずれは約1’となると開示されている。
しかしながら、特許文献1に開示されているように、ATカット水晶基板の表裏の両主面に夫々形成されている励振電極を、Z’軸方向に沿って表裏で逆方向にずらして周波数温度特性を変える手法を用いる場合、要求される周波数温度特性の規格を満たすために、常備されている3種類のカット角の水晶基板から一種類を選択し、選択した水晶基板の表裏に配置する励振電極の互いのズレ量を適宜設計するので、励振電極パターンを形成するのに用いられる露光用マスクを数多く必要としなければならないという問題があった。
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、露光用マスクを最小限に減らし、小型でCI値の小さい(高Qの)振動素子、振動子、電子デバイス、発振器、及び電子機器を提供することにある。
−37.7×(dZ/Z)−1.0≦dθ≦−37.7×(dZ/Z)+1.0
の範囲内にあることを特徴する振動素子である。
振動基板(基板)10は、矩形平板状の基部12と、基部12の一方の面(表面)の略中央部から厚さ方向に突出した平板状(四角形状)の第1凸部14と、基部12の他方の面(裏面)の略中央部から厚さ方向に突出し、第1凸部14と同等の平面形状、及び同等の厚さを有した平板状(四角形状)の第2凸部16と、を有している。
基板10は、振動ウェハーに周知のフォトリソグラフィ、及びエッチング技法を適用して形成することができる。
図1に示す実施形態例では、基板10はY’軸に平行な方向(Y’軸方向)を厚み方向として、X軸に平行な方向(X軸方向)を長辺とし、Z’軸に平行な方向(Z’軸方向)を短辺とする矩形の形状を有する。基板10は、長辺、短辺の夫々の長さがX、Zであり、厚さがt’あるXZ’面に平行な矩形平板状の基部12を有する。基板10は、基部12の一方の面(+Y’軸方向の面)の略中央部から+Y’軸方向に突出した、X軸方向、Z’軸方向の長さが夫々Mx、Mzであり厚さがMdである平板状の第1凸部14と、基部12の他方の面(−Y’軸方向の面)の略中央部から−Y’軸方向に突出した、第1凸部14と同等の平面形状及び同等の厚さを有した平板状の第2凸部16と、を有している。第1、及び第2凸部14、16は、図1(b)に示すように、基部12の厚さ方向の中心を通り、且つ厚さ方向に直交する平面に対して非対称に形成されている。図1の実施形態例では、基板10のY’Z’断面は、その断面の重心位置に対して点対称の例である。
第1の重なり領域14aと、第2の重なり領域16aとは、基部12を挟んでZ’軸方向に沿って重なっており、それらの加算した厚さt1(=t’+2Md)によって厚みすべり振動の周波数がほぼ決まる。
第1の非重なり領域14bは、第1の重なり領域14aの側面から+Z’軸方向に突出しており、基部12の+Z’軸方向の平面(表面)と重なっている。また、第2の非重なり領域16bは、第2の重なり領域16aの側面から−Z’軸方向に突出しており、基部12の−Z’軸方向の平面(裏面)と重なっている。
このように構成したため、第1凸部14は、X軸方向に沿って並行に延びる各段差縁部14c、14dと、Z’軸方向に沿って並行に延びる二つの段差縁部と、を有した構造となっている。図1の実施形態例では、段差縁部14c、14dのうち、段差縁部14cが+Z’軸側の段差縁部であり、段差縁部14dが−Z’軸側の段差縁部である。
また、第2凸部16は、X軸方向に沿って並行に延びる段差縁部16c、16dと、Z’軸方向に沿って並行に延びる二つの段差縁部と、を有した構造となっている。図1の実施形態例では、段差縁部16c、16dのうち、段差縁部16cが+Z’軸側の段差縁部であり、段差縁部16dが−Z’軸側の段差縁部である。
このように基板10は、厚さ方向(Y’軸方向)に直交する面(XZ’面)に関し非対称な第1、及び第2凸部14、16を有しており、振動素子1は、厚みすべり振動を主振動とする1段型のメサ構造を有していると言える。基板10をこのように構造とすることにより、厚みすべり振動が励振されると、振動エネルギーが第1、及び第2凸部14、16の近傍に閉じ込められて、所謂閉じ込め効果を有することができる。
ずれ量が零、つまりdZ/Z=0の場合の周波数温度特性を基準特性として、ずれ量dZ/Zを変化させた場合に、周波数温度特性がどのように変動するかを、有限要素法(FEM)を用いてシミュレーションした。dZ/Z=0の場合は、第1、及び第2凸部14、16が、基部12を挟んで対称な状態、即ち基部12のY’軸方向(厚さ方向)の中心を通り、且つY’軸に直交するXZ’平面に対して対称に形成されている場合で、一般的な1段メサ構造の振動素子に相当する。このときの基準の周波数温度特性を、図4(b)に示す。
図3(b)は、ずれ量dZ/Zを−2.52%とした場合のシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)である。温度の−30℃近辺、+70℃近辺の二カ所で、高次の屈曲振動との結合があり、近似の三次曲線(破線)から外れている。
図3(c)は、ずれ量dZ/Zを−1.67%とした場合のシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)である。温度の−35℃近辺、+70℃近辺の二カ所で、高次の屈曲振動との結合があり、近似の三次曲線(破線)から外れている。
図4(b)は、ずれ量dZ/Zが0%の場合、即ち基準カット角(r面から3°4′30″)の基板10を用いた振動素子1の周波数温度特性であり、これを基準の周波数温度特性とした。10℃〜20℃、85℃の近傍で、主振動(厚みすべり振動)が高次の屈曲振動と結合しており、近似の三次曲線(破線)より若干外れている。
図4(c)は、ずれ量dZ/Zを0.83%とした場合のシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)である。主振動と高次の屈曲振動との結合により、−10℃〜0℃、65℃で近似の三次曲線(破線)より若干外れている。
図5(b)は、ずれ量dZ/Zを2.5%とした場合のシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)である。−20℃〜−10℃、50℃〜70℃近辺で近似の三次曲線(破線)より外れている。
図5(c)は、ずれ量dZ/Zを5.0%とした場合のシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)である。−20℃〜−10℃、40℃以上の温度で、高次の屈曲振動との結合により近似の三次曲線(破線)より外れている。
また、図3(a)から図5(c)までのシミュレーションにより求めた周波数温度特性(菱形点)は、主振動に高次の屈曲振動が結合するため、近似の三次曲線から外れているが、基板10の寸法X、Z、第1凸部(第2凸部)14(16)の寸法Mx、Mz、励振電極の寸法を調整することにより、高次屈曲振動の結合を小さくすることができ、実用に供せられる振動素子を構成することは可能である。
ATカット水晶振動子の周波数温度特性は、一般的に温度tの三次式で近似される。
df/f=Ct3+Bt2+At+K (1)
ここで、Kは定数項、A、B、Cは夫々1次、2次、3次の温度係数である。式(1)を、変曲点温度Tiを用いて、(t−Ti)に関する三次の冪級数で展開すると、次式のようになる。
df/f=Ci(t−Ti)3+Ai(t−Ti) (2)
周波数温度特性の温度係数は、1次温度係数Aiと三次温度係数Ciのみであり、周波数温度特性を端的に表現することができる。つまり正の係数の三次曲線と、負の係数を有する一次曲線との和で、周波数温度特性を表わすことができ、変曲点温度の近傍では一次温度係数が支配的となる。
主振動の厚みすべり振動に高次屈曲振動が結合しているため、図7、及び図8の曲線は滑らかさを欠いているが、図7に示す一次温度係数Aiは、ずれ量dZ/Zがマイナスからプラスへ変わる、つまり第1凸部の中心部C1が第2凸部の中心部C2に対し、−Z’軸側から+Z’軸側へ移るに応じて、一次温度係数Aiはその絶対値|Ai|が大きくなることが判明した。即ち、ずれ量dZ/Zを大きくすることにより、ATカット水晶振動素子の周波数温度特性を表わす三次曲線を、変曲点温度Tiを中心に時計回りに回転させる効果があることがシミュレーションの結果判明した。なお、図8において横軸の「ずれ量」は、ずれ量dZ/Zと同義である。図8に示す三次温度係数Ciは、ずれ量dZ/Zがマイナスからプラスへ大きくなるに応じて、少しずつ低減する傾向がある。従って変曲点温度Tiを中心とする近傍では、一次温度係数Aiが周波数温度特性を左右することになる。
y=−37.7×dZ/Z (3)
製造偏差を考慮すると、式(3)は式(4)のように幅を持たせることが妥当である。
y=−37.7×dZ/Z±1.0 (3)
ここでyの単位は分である(dZ/Zは単位を有さないため、式(3)の係数は分の単位を有することになる)。
なお、請求項においては、角度の概念を鮮明にするため、式(3)の「y」を「dθ」として表わしており、両者は同義である。つまり、dθ=−37.7×dZ/Z±1.0と表記している。
これに対して、本発明に係る振動素子1では、基板10の表裏両面に形成されている励振電極20a、20bは、Z’軸方向に対し互いにずれていない。つまり、励振電極20a、20bはY’軸方向に正確に対向しており、生じる電界の方向はY’軸方向に平行、つまり、主面に対して垂直であり、先行文献1のように斜めに傾いていない点で差異がある。
図12は、第3の実施形態の振動素子3の構成を示すZ’軸方向に沿った断面図である。図1に示した振動素子1と異なる点は、第1、及び第2凸部14、16のZ’軸方向両端縁(両側面)の形状を夫々2段構造の段差部とし、エネルギー閉じ込め効果をより大きくした構造である。図12に示した励振電極20a、20bは、一例であり、基部12の一部に跨るように励振電極20a、20bを広げてもよい。
また、第1、及び第2凸部14、16を設けた基板10の厚さ方向に沿った断面形状を、この断面の重心位置に対し点対称に構成されているので、励起される振動モード(厚みすべり振動)が安定し、第1、及び第2凸部14、16を対称な状態とした基板10の基準カット角から恰もカット角をずらしたかのような周波数温度特性が得られるという効果がある。
また、式(3)を用いることにより、要求仕様と、用意された水晶ウェハーから、適切なウェハーを選定し、第1、及び第2凸部のずれ量dZ/Zを容易に求めることができるという効果がある。
容器30は、キャビティー32内に振動素子1を収容することができる。容器30の材質としては、例えば、セラミック、ガラス等が挙げられる。キャビティー32は、振動素子1が動作するための空間であり、密閉され、減圧空間や不活性ガス雰囲気とされる。
図14(a)は、本発明の電子デバイス5に係る実施形態例の断面図である。電子デバイス5は、本発明の振動素子1と、感温素子であるサーミスタ38と、振動素子1及びサーミスタ38を収容する容器30と、を概略備えている。容器30は、容器本体30aと、蓋部材30cとを備えている。容器本体30aは、上面側に振動素子1を収容するキャビティー32が形成され、下面側にサーミスタ38を収容する凹部34aが形成されている。キャビティー32の内底面の端部に複数の素子搭載用パッド35aが設けられ、各素子搭載用パッド35aは内部導体37で複数の実装端子33と導通接続されている。素子搭載用パッド35aに導電性接着剤39を塗布し、この導電性接着剤39の上に振動素子1を載置して、各電極パッド24a、24bと、各素子搭載用パッド35aとを導電性接着剤39を介して電気的に接続し、固定する。容器本体30aの上部には、シールリング30bが焼成されており、このシールリング30bに蓋部材30cを載置し、抵抗溶接機を用いて溶接し、キャビティー32を気密封止する。キャビティー52内は真空にしてもよいし、不活性ガスを封入してもよい。
一方、容器本体30aの下面側略中央には凹部34aが形成され、凹部34aの上面には電子部品搭載用パッド35bが焼成されている。電子部品搭載用パッド35bにサーミスタ38を搭載し、半田等を用いて導通接続して電子デバイス5を構成する。なお、電子部品搭載用パッド35bは、内部導体37で複数の実装端子33と導通接続されている。
以上では、振動素子1とサーミスタ38とを容器30に収容した例を説明したが、容器30に収容する電子部品としては、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子、半導体素子のうち少なくとも一つを収容した電子デバイスを構成することが望ましい。
上記の説明では、振動素子1を用いて発振器を構成した実施形態例を説明したが、図13に示す振動子4と半導体素子(IC)58とを用いて発振器を構成してもよい。
標準的なICの発振回路を用意しておけば、上記のように素早く振動子が製造できるので、客先の要求納期に対応できるという効果がある。
スマートフォン100は、電子デバイス9を、例えば、基準クロック発振源などのタイミングデバイスとして用いる。スマートフォン100は、さらに、表示部(液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等)101、操作部102、および音出力部103(マイクロフォン等)を有することができる。スマートフォン100は、表示部101に対する接触検出機構を設けることで表示部101を操作部として兼用してもよい。
なお、スマートフォン(携帯電話)100に代表される電子機器は、上述したように、振動素子1を駆動する発振回路と、振動素子1の温度変化に伴う周波数変動を補正する温度補償回路と、を備えていることが好ましい。
これによれば、スマートフォン100に代表される電子機器は、振動素子1を駆動する発振回路と共に、振動素子1の温度変化に伴う周波数変動を補正する温度補償回路を備えていることから、発振回路が発振する共振周波数を温度補償することができ、温度特性に優れた電子機器を提供することができる。
また、本発明に係る振動素子を備えた電子機器は、上記スマートフォンに限らず、電子ブック、パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルスチールカメラ、ビデオカメラ、ビデオレコーダー、ナビゲーション装置、ベージャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器などのタイミングデバイスとして好適にも用いることができる。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
Claims (13)
- 厚みすべり振動で振動する振動部、前記振動部の外縁に沿って配置されている外縁部を含む基板を備え、
前記振動部は、
前記外縁部の一方の主面から突出している第1凸部と、
前記外縁部の一方の主面に対して裏面側の他方の主面から突出している第2凸部と、
を有し、
平面視において、前記第1凸部の一方の外縁は前記他方の主面の前記外縁部と重なっており、前記一方の外縁と対峙している他方の外縁は、前記第2凸部の主面と重なっていることを特徴とする振動素子。 - 請求項1において、
前記第1凸部の主面の外形と前記第2凸部の主面の外形とは同じであることを特徴とする振動素子。 - 請求項2において、
前記基板の厚さ方向に沿い、前記対峙する一方の外縁と他方の外縁を跨いだ断面形状は、前記断面の中心に対し点対称であることを特徴とする振動素子。 - 請求項1乃至3の何れか一項において、
前記基板は、回転Yカット水晶基板であることを特徴とする振動素子。 - 請求項4において、
前記一方の外縁と前記他方の外縁はZ’軸方向に対峙していることを特徴とする振動素子。 - 請求項4又は5において、
前記基板の前記Z’軸方向に沿った辺の長さをZとし、
Y’軸に方向に平面視で、前記第1凸部の前記Z’軸方向の中心と、前記第2凸部の前記Z’軸方向の中心との距離をdZとし、
前記距離dZを零としたときの前記基板のカット角からの角度偏差量をdθとしたとき、前記dθは、
−37.7×(dZ/Z)−1.0≦dθ≦−37.7×(dZ/Z)+1.0
の範囲内にあることを特徴する振動素子。 - 請求項1乃至6の何れか一項において、
前記第1凸部の前記一方の主面からの高さと第2凸部の前記他方の主面からの高さは同じであることを特徴とする振動素子。 - 表裏の励振電極は、
前記断面の中心を通る前記主面に平行な線に対し線対称であることを特徴とする振動素子。 - 請求項1乃至8の何れか一項に記載の振動素子と、
前記振動素子を搭載する容器と、
を備えていることを特徴とする振動子。 - 請求項1乃至8の何れか一項に記載の振動素子と、
電子素子と、
前記振動素子及び前記電子素子を搭載する容器と、
を備えていることを特徴とする電子デバイス。 - 請求項10において、
前記電子素子が、サーミスタ、コンデンサー、リアクタンス素子、及び半導体素子の少なくともいずれかであることを特徴とする電子デバイス。 - 請求項9に記載の振動子と、
前記振動子を駆動する発振回路と、
を備えていることを特徴とする発振器。 - 請求項1乃至8の何れか一項に記載の振動素子を備えていることを特徴とする電子機器。
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