先ず、本願発明に係る露光装置10の概略的な構成について説明する。図1は、本願発明に係る露光装置の一例としての露光装置10の構成を模式的に示す説明図である。露光装置10は、図1に示すように、光軸方向に沿って出射側から順に、光源11と、コールドミラー12と、露光シャッタ13と、紫外線バンドパスフィルタ14と、インテグレータレンズ15と、コリメータレンズ16と、平面鏡17と、マスクステージ18と、マスクブラインド19と、歪曲補正板20と、投影レンズ21と、倍率補正部22と、投影露光ステージ23と、を有する。この露光装置10は、本実施例では、後述するように、露光光として紫外線を用いている。
光源11は、露光に用いる露光光としての紫外線の照射のために設けられており、本実施例では、水銀ランプ11aが回転楕円鏡(回転楕円反射鏡)11bの第1焦点位置に配置されて構成されている。この光源11では、水銀ランプ11aから出射された出射光を、回転楕円鏡11bの第2焦点位置に集光させるようにその回転楕円鏡11bで反射してコールドミラー12へと進行させる。
コールドミラー12は、入射した光のうち、赤外領域以上の波長帯域の光を透過させるとともに、そこよりも短い波長帯域の光を反射するものであり、入射した光から赤外領域の熱線を分離することができる。このため、光源11からの出射光は、コールドミラー12により赤外領域の熱線が分離されつつ反射されて、露光シャッタ13もしくは紫外線バンドパスフィルタ14へと進行する。
その露光シャッタ13は、コールドミラー12により反射された出射光の透過および遮断の切り替えを可能とすべく、コールドミラー12から紫外線バンドパスフィルタ14へと向かう光路(後述する照射光路)上に出し入れ自在とされている。この露光シャッタ13は、光路上から退避されると後述するように対象ワーク24の露光を可能とし、光路上に位置されると後述する対象ワーク24の露光を停止させる。
紫外線バンドパスフィルタ14は、入射した光のうち紫外線のみの透過を許すものであり、本実施例では、波長365nmの水銀のスペクトル線であるi線の透過を許すi線バンドパスフィルタにより構成されている。このため、コールドミラー12により反射された出射光は、紫外線バンドパスフィルタ14により紫外線(i線)の波長帯域のみの光(実際には、i線の波長帯域の近傍の強度が高い光)とされて、インテグレータレンズ15へと進行する。なお、i線以外にも、h線、i線とh線の組み合わせ、またはその間の波長を利用することができる。
インテグレータレンズ15は、入射した光の照度ムラを打ち消して照射面において周辺部まで均一で明るい照度分布とする。このため、紫外線バンドパスフィルタ14を経て紫外線(i線)の波長帯域のみの光とされた出射光は、インテグレータレンズ15により均一な照度分布とされてコリメータレンズ16へと進行する。なお、このインテグレータレンズ15と紫外線バンドパスフィルタ14とは、配置を逆転させても同様の作用を得ることができる。
コリメータレンズ16は、入射した光を平行光(光束)として出射する。このため、インテグレータレンズ15を経て均一な照度分布とされた出射光は、コリメータレンズ16により平行光とされて平面鏡17へと進行し、その平面鏡17により反射されてマスクステージ18へと進行する。
マスクステージ18は、パターンが形成されたマスク18aを、平面鏡17により反射された出射光の光路上に位置させつつ当該光路の光軸に直交する方向に移動可能に保持する。また、マスクステージ18は、図示は略すが、マスク18aの取り外しが可能とされており、マスク18aとは異なるパターンが形成されたマスクへの交換が可能とされている。本実施例では、マスク18aを含む交換対象とされる各マスクに、複数のマスク側アライメントマーク18bが設けられている。この各マスク側アライメントマーク18bは、後述する対象ワーク24の複数のワーク側アライメントマーク24aに対応する位置関係とされている。このため、平面鏡17により反射された出射光は、マスク18aを透過することにより、マスク18aに形成されたパターンの形状に応じたものとされて投影レンズ21へと進行する。
このことから、露光装置10では、光源11から、コールドミラー12、露光シャッタ13、紫外線バンドパスフィルタ14、インテグレータレンズ15、コリメータレンズ16および平面鏡17を経る光路が、マスク18aを露光光としての紫外線(i線)で照射するための照射光学系として機能する。
このマスクステージ18と投影レンズ21との間に、マスクブラインド19と歪曲補正板20とが設けられている。マスクブラインド19は、マスク18aを経た出射光の光路上に進退自在に設けられており、マスク18aのマスクパターンのうち所望の領域のみを透過した光(後述するマスクパターン像)を、投影露光ステージ23に載置された後述する対象ワーク24上に適切に形成すべく、マスク18aのマスクパターンに応じて適宜光路上に進出される。
歪曲補正板20は、マスク18a(適宜マスクブラインド19も)を経た出射光の光路上に設けられており、基本的に投影レンズ21において後述するように高精度に収差補正されて設定されていても残存する歪曲収差を補正する。この歪曲補正板20は、後述するように投影レンズ21がマスク18aのパターンを拡大して対象ワーク24の表面に結像させる設定とされていることから、後述する投影光学系において投影レンズ21に対して当該投影レンズ21の開口数が大きく設定された側に配されていることとなる。歪曲補正板20は、円板状の平行平面板に凹凸状の自由曲面20aが設けられて形成されている。その円板状の平行平面板は、マスク18aを経て投影レンズ21へと進行する出射光の光路(後述する投影光学系の光路)に対して、その光軸に直交する方向で見て全域に渡って存在させることのできる大きさ寸法とされている。このため、マスク18aを経た出射光は、歪曲補正板20を透過して投影レンズ21へと進行する。この歪曲補正板20の形成(その自由曲面20aの設定)の方法については、後に詳細に説明する。
投影レンズ21は、投影露光ステージ23上の後述する対象ワーク24に、マスク18aに形成されたパターンを適切に露光するためのものであり、マスクステージ18に保持されたマスク18aのパターンの像(以下、マスクパターン像ともいう)を、適宜変倍して投影露光ステージ23に載置された後述する対象ワーク24の表面に形成する。すなわち、投影レンズ21は、投影露光ステージ23に載置された状態の対象ワーク24の表面を結像面として、当該結像面とマスク18aとを光学的に共役な位置関係としている。この投影レンズ21は、本実施例では、マスク18aのパターンを拡大して対象ワーク24の表面に結像させるいわゆる拡大光学系として設定されている。投影レンズ21は、大きい側(マスク18a側)の開口数(NA)が大略0.1(本実施例では、0.06〜0.12とすることが好ましい)に設定されている。
投影レンズ21は、明確な図示は略すが、円筒状の保持筒の内方に複数のレンズ(レンズ群)が保持されて構成されている。この投影レンズ21(そのレンズ群)は、露光光である紫外線(i線)に対して高精度に収差補正されて設定されている。これは、露光装置10では、上述したように、露光光として紫外線(i線)を用いることによる。このため、投影レンズ21は、マスク18aおよび歪曲補正板20を透過した出射光が入射されると、マスク18aのパターンを拡大したマスクパターン像を、投影露光ステージ23上の結像面(後述する対象ワーク24上)に適切に形成する。
この投影レンズ21と投影露光ステージ23との間に、倍率補正部22が設けられている。この倍率補正部22は、投影露光ステージ23上に載置される後述する対象ワーク24における歪みに応じて、投影露光ステージ23上の結像面に形成するマスクパターン像を変形させるものである。倍率補正部22は、光路に直交する面で見て、任意の方向での倍率を適宜変化させることにより、結像面でのマスクパターン像を変形させる。倍率補正部22の構成については、後に詳細に説明する。
このように、露光装置10では、マスクブラインド19、歪曲補正板20、投影レンズ21および倍率補正部22が、所定のパターンが形成されたマスク18aを透過した露光光としての紫外線を、投影露光ステージ23上の結像面(後述する対象ワーク24上)にマスクパターン像として結像させる投影光学系として機能する。
投影露光ステージ23は、マスクパターンの露光のために対象ワーク24が載置される。この投影露光ステージ23は、載置される対象ワーク24の表面を投影レンズ21の結像面に一致させて対象ワーク24を保持することができるとともに、保持した対象ワーク24を投影光路に直交する面に沿って移動させることが可能とされている。この投影露光ステージ23における対象ワーク24の移動は、本実施例では、投影露光ステージ23の内方に設けられた駆動制御部(図示せず)の制御下で行われる。なお、投影露光ステージ23における対象ワーク24の移動は、手動により行うものであってもよい。本実施例では、対象ワーク24は、プリアライメントされた状態で投影露光ステージ23上に載置される。このプリアライメントとは、対象ワーク24を投影光学系における基準位置とするものであり、対象ワーク24に対するマスクパターンの露光位置に要求される位置精度を満たすものではない。
その対象ワーク24は、シリコンウエハやガラス基板やプリント基板等に、紫外線(i線)に対して光反応するフォトレジスト等の感光材料が塗布または張り付けられて形成されている。このため、対象ワーク24は、紫外線(i線)の照射により露光可能とされている。本実施例では、対象ワーク24に、複数のワーク側アライメントマーク24aが設けられている。この各ワーク側アライメントマーク24aは、本実施例では、対象ワーク24の表面が凹状とされて形成されており、上述した各マスク側アライメントマーク18bと対応されて設けられている。
この露光装置10では、照射光学系において、光源11から出射された出射光が、コールドミラー12、紫外線バンドパスフィルタ14、インテグレータレンズ15、コリメータレンズ16および平面鏡17を経て、マスクステージ18へと到達することにより、マスクステージ18に保持されたマスク18aを紫外線(i線)で一様に照射する。すると、露光装置10では、投影光学系すなわちマスクブラインド19、歪曲補正板20、投影レンズ21および倍率補正部22の機能により、投影露光ステージ23上の結像面に、紫外線(i線)によるマスクパターン像が適切に形成される。このことから、露光装置10では、対象ワーク24を結像面に沿う適切な位置とすることにより、対象ワーク24にマスクパターン像を適切に露光することができる。このマスクパターン像に対する対象ワーク24の位置、すなわち光学的に投影光学系(主に、投影レンズ21)を経たマスク18aに対する対象ワーク24の位置は、投影露光ステージ23が保持する対象ワーク24を結像面上で適宜移動させることにより、調整する(アライメントする)ことができる。
この露光装置10では、マスクステージ18にマスク18aを設置し、対象ワーク24をプリアライメントされた状態で投影露光ステージ23上に載置し、マスク18aに対する対象ワーク24の位置のアライメントを開始する。このとき、図示を略すアライメントカメラ装置を用いて、投影露光ステージ23上の結像面(対象ワーク24上)にマスクパターン像におけるマスク側アライメントマーク18b(マスク側アライメントマーク像)と、対象ワーク24のワーク側アライメントマーク24aと、の位置関係を取得する。その後、各マスク側アライメントマーク像と各ワーク側アライメントマーク24aとの位置関係に基づいて、投影光学系を経たマスク18aに対する対象ワーク24のX軸方向の位置ずれ量dxと、Y軸方向の位置ずれ量dyと、X−Y平面上で見た回転ずれ角dθと、を算出する。本実施例では、この各ずれ量の算出は、上述した駆動制御部(図示せず)が画像解析により行う。そして、マスクステージ18に保持されたマスク18aを固定したまま、その算出された各ずれ量を打ち消すように投影露光ステージ23が保持した対象ワーク24を投影光路に直交する面に沿って移動する。これにより、アライメントが終了し、投影光学系を経たマスク18aに対する対象ワーク24の位置を適切なものとすることができる。これにより、投影光学系を経たマスク18aに対する対象ワーク24の位置のアライメントを行うことができる。
次に、倍率補正部22の構成について説明する。倍率補正部22は、本実施例では、図1から図3に示すように、第1方向倍率補正機構31と第2方向倍率補正機構32と放射方向倍率補正機構33とを備える。その第1方向倍率補正機構31は、結像面でのマスクパターン像を第1方向に変形させる、すなわち結像面でのマスクパターン像の第1方向の倍率を変化させる。また、第2方向倍率補正機構32は、結像面でのマスクパターン像を第2方向に変形させる、すなわち結像面でのマスクパターン像の第2方向の倍率を変化させる。ここで、第1方向は、結像面上における任意の方向(投影光学系の光軸に直交する方向)とされており、本実施例ではX軸方向とする。また、第2方向は、結像面上において第1方向(X軸方向)に直交する方向とされており、本実施例ではY軸方向とする。さらに、本実施例では、X−Y平面に直交する方向、すなわち投影光学系の光軸に平行な方向をZ軸方向とし、対象ワーク24から投影レンズ21に向かう方向(図1および図3を正面視して上側)をZ軸方向の正側とする。放射方向倍率補正機構33は、結像面上において投影光学系の光軸を中心とする放射方向であって、第1方向および第2方向に対して45度の傾斜を為す4つの方向の倍率を変化させる。
この倍率補正部22では、第1方向倍率補正機構31が、露光光(紫外線(i線))の透過を許す材料からなる第1平行平面板34を有する。その第1平行平面板34は、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で見てX軸方向(第1方向)を長辺としかつY軸方向(第2方向)を短辺とする長方形状を呈し、Z軸方向での厚さ寸法が全体に均一な平行平面板とされている。また、第2方向倍率補正機構32は、露光光(紫外線(i線))の透過を許す材料からなる第2平行平面板35を有する。その第2平行平面板35は、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で見てY軸方向(第2方向)を長辺としかつX軸方向(第1方向)を短辺とする長方形状を呈し、Z軸方向での厚さ寸法が全体に均一な平行平面板とされている。さらに、放射方向倍率補正機構33は、露光光(紫外線(i線))の透過を許す材料からなる第3平行平面板36を有する。その第3平行平面板36は、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で見て、第1平行平面板34および第2平行平面板35の長辺よりも短い大きさ寸法であって、それらの短辺よりも長い大きさ寸法の辺で構成された正方形状を呈し、Z軸方向での厚さ寸法が全体に均一な平行平面板とされている。
倍率補正部22では、図1および図3に示すように、投影光学系の光路中で投影レンズ21側(Z軸方向正側)から順に、第1方向倍率補正機構31の第1平行平面板34と、第2方向倍率補正機構32の第2平行平面板35と、放射方向倍率補正機構33の第3平行平面板36と、が、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で所定の間隔を置いて設けられている。この第1平行平面板34、第2平行平面板35および第3平行平面板36は、本実施例では、石英ガラス材料を用いて形成され、極めて高い精度で平行平面板とされている。なお、図2では、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で見て、第1平行平面板34と第2平行平面板35と第3平行平面板36とが互いに重なり合う領域を二点鎖線(符号ET参照)で示している。この領域は、投影光学系における有効投影領域ETとなり、投影レンズ21および倍率補正部22を経た露光光(紫外線(i線))は、有効投影領域ETを通して対象ワーク24に照射される。
その第1方向倍率補正機構31は、図2から図4に示すように、第1平行平面板34に加えて、一対の第1拘束部材37と一対の第1加圧挟持部材(加圧部材)38とを有する。また、第2方向倍率補正機構32は、第2平行平面板35に加えて、一対の第2拘束部材39と一対の第2加圧挟持部材(加圧部材)41とを有する。この第1方向倍率補正機構31と第2方向倍率補正機構32とは、第1平行平面板34と第2平行平面板35との延びる方向の差異に伴って、両第1拘束部材37および両第1加圧挟持部材38と両第2拘束部材39および両第2加圧挟持部材41との配置位置が異なることを除くと、その構成は同一であることから、以下では、第1方向倍率補正機構31の構成について説明し、第2方向倍率補正機構32の詳細な説明は省略する。
両第1拘束部材37は、第1平行平面板34をY軸方向(短辺方向)に横切る拘束支持枠部材42と一対の拘束円筒部材43とを有する。その拘束支持枠部材42は、Y軸方向に長尺な平板状の下枠部材42aと上枠部材42bとが、Y軸方向で見た第1平行平面板34の両側で長尺な棒状の2つの連結枠部材42cによりZ軸方向で連結されて構成されている。この両第1拘束部材37では、下枠部材42aと上枠部材42bと両連結枠部材42cとにより、第1平行平面板34を案内する案内口42d(図4参照)が形成されている。その下枠部材42aと上枠部材42bとには、Z軸方向で対向する位置に、Y軸方向に延びる溝部42eが設けられている。
一対の拘束円筒部材43は、鉄等の材料からなる円柱形状の円柱芯材43aと、その円柱芯材43aを被覆する被覆樹脂43bと、から構成されている。この拘束円筒部材43は、一方が下枠部材42aの溝部42eに、他方が上枠部材42bの溝部42eに配されている。両拘束円筒部材43は、第1平行平面板34のZ軸方向に交差する両平坦面に接しており、拘束支持枠部材42と協働して第1平行平面板34のZ軸方向での位置を固定しつつ、当該第1平行平面板34のZ軸方向への撓み変形を可能としている。
一対の第1加圧挟持部材38は、X軸方向で見た第1平行平面板34の両端位置、すなわち各第1拘束部材37よりもX軸方向の外側に設けられている。この両第1加圧挟持部材38は、第1平行平面板34をY軸方向(短辺方向)に横切る挟持枠部材44と一対の挟持円筒部材45とを有する。その挟持枠部材44は、Y軸方向に長尺な平板状の下枠部材44aと上枠部材44bとが、X軸方向で見た第1平行平面板34の外側で長尺な平板状の連結枠部材44cによりZ軸方向で連結されて構成されている。その下枠部材44aと上枠部材44bとには、Z軸方向で対向する位置に、Y軸方向に延びる溝部44dが設けられている。連結枠部材44cは、図示は略すが第1駆動アームに連結されている。この第1駆動アームは、倍率補正部22を駆動させる、すなわち第1方向倍率補正機構31による第1方向の倍率の調整のために各第1加圧挟持部材38(その連結枠部材44c)をZ軸方向に移動させることができる。
一対の挟持円筒部材45は、鉄等の材料からなる円柱形状の円柱芯材45aと、その円柱芯材45aを被覆する被覆樹脂45bと、から構成されている。この挟持円筒部材45は、一方が下枠部材44aの溝部44dに、他方が上枠部材44bの溝部44dに配されている。両挟持円筒部材45は、第1平行平面板34のZ軸方向に交差する両平坦面に接しており、挟持枠部材44と協働して第1平行平面板34の端部を保持している。
この第1方向倍率補正機構31では、Z軸方向で固定された各第1拘束部材37に対して、図示を略す第1駆動アームにより各第1加圧挟持部材38(その連結枠部材44c)をZ軸方向に移動させることにより、その各第1加圧挟持部材38のZ軸方向での位置に応じて、各第1拘束部材37の挟持円筒部材45を支点として第1平行平面板34をX−Z平面に沿いつつZ軸方向に撓み変形させることができる(図5参照)。なお、その図5(a)では、マスクパターン像の投影光路の外縁を二点鎖線の円で示している。このため、第1方向倍率補正機構31では、例えば、図5(b)に示すように、一対の拘束円筒部材43(第1拘束部材37)に対して一対の第1加圧挟持部材38をZ軸方向正側へと移動させると、第1平行平面板34がX軸方向で見た両端位置が相対的にZ軸方向正側に存在するように湾曲変形するので、その第1平行平面板34の湾曲率に応じて、結像面でのマスクパターン像をX軸方向すなわち第1方向に拡大させること、すなわち投影レンズ21による拡大倍率を第1方向で拡大補正することができる。また、図示は略すが第1平行平面板34を逆方向に湾曲させると、その湾曲率に応じて結像面でのマスクパターン像を第1方向(X軸方向)に縮小させること、すなわち投影レンズ21による拡大倍率を第1方向で縮小補正することができる。このため、第1方向倍率補正機構31では、対象ワーク24(その表面)に対するマスクパターン像の第1方向のずれ量に応じて適宜第1平行平面板34を湾曲させることにより、第1方向の倍率補正を行うことができ、対象ワーク24(その表面)に適切にマスクパターン像を投影させることができる。
また、第2方向倍率補正機構32では、上述したように配された位置関係を除くと第1方向倍率補正機構31と同様の構成であることから、Z軸方向で固定された各第2拘束部材39に対して、図示を略す第2駆動アームにより各第2加圧挟持部材41をZ軸方向に移動させることにより、その各第2加圧挟持部材41のZ軸方向での位置に応じて、各第2拘束部材39の挟持円筒部材(図示せず)を支点として第2平行平面板35をY−Z平面に沿いつつZ軸方向に撓み変形させることができる。このため、第2方向倍率補正機構32では、対象ワーク24(その表面)に対するマスクパターン像の第2方向のずれ量に応じて適宜第2平行平面板35を湾曲させることにより、第2方向の倍率補正を行うことができ、対象ワーク24(その表面)に適切にマスクパターン像を投影させることができる。
放射方向倍率補正機構33は、図6から図8に示すように、第3平行平面板36に加えて、4つの第3拘束部材46と4つの第3加圧挟持部材(加圧部材)47とを有する。その4つの第3拘束部材46は、Z軸方向で正方形状とされた第3平行平面板36の各辺の中点36b(図6参照)の位置に設けられており、それぞれが等しい構成とされている。
各第3拘束部材46は、図7に示すように、拘束支持枠部材48と樹脂製半球部材49とから構成されている。拘束支持枠部材48は、下枠部分48aと上枠部分48bと連結枠部分48cとを有し、投影光学系の光軸と第3平行平面板36との交点と各中点36bとを結ぶ線および投影光学系の光軸を含む平面上で見た断面形状がコ字形状(U字形状)とされている。樹脂製半球部材49は、樹脂材料から形成された半球形状を呈し、拘束支持枠部材48の下枠部分48aと上枠部分48bと連結枠部分48cとのそれぞれにおいて内方へと突出して設けられている。このため、各樹脂製半球部材49は、拘束支持枠部材48と協働して第3平行平面板36の各辺の中点36b(その周辺)をX軸、Y軸、Z軸方向の三方向から保持している。
4つの第3加圧挟持部材47は、図6に示すように、Z軸方向で正方形状とされた第3平行平面板36の4つの角36aの近傍の各角部36Aに設けられており、それぞれが等しい構成とされている。この各第3加圧挟持部材47は、Z軸方向で見て、X軸方向に長尺な第1平行平面板34と、Y軸方向に長尺な第2平行平面板35と、の双方が存在しない位置に設けられている(図2参照)。
各第3加圧挟持部材47は、図8に示すように、加圧支持枠部材51と一対の加圧ボール52とから構成されている。加圧支持枠部材51は、下枠部材51aと上枠部材51bと連結枠部材51cとを有し、X−Z平面上の断面形状がコ字形状(U字形状)とされている。その下枠部材51aと上枠部材51bとには、Z軸方向で見て対向する位置に凹所51dが設けられている。また、連結枠部材51cは、図示は略すが第3駆動アームに連結されている。この第3駆動アームは、倍率補正部22を駆動させる、すなわち放射方向倍率補正機構33による、結像面上の投影光学系の光軸から各角36aへと向かう4つの放射方向(結像面上でX軸方向およびY軸方向と45度の傾斜を為す2つの方向)の倍率の調整のために各第3加圧挟持部材47(その連結枠部材51c)をZ軸方向に移動させることができる。
一対の加圧ボール52は、鉄等の材料からなる球状の球状鉄芯52aと、その球状鉄芯52aを被覆する被覆樹脂52bと、から構成されている。この加圧ボール52は、一方が下枠部材51aの凹所51dに、他方が上枠部材51bの凹所51dに配されている。両加圧ボール52は、第1平行平面板34のZ軸方向に交差する各平坦面に接しており、加圧支持枠部材51と協働して第1平行平面板34の角部36Aを保持している。
この放射方向倍率補正機構33では、Z軸方向で固定された各第3加圧挟持部材47に対して、図示を略す第3駆動アームにより各第3加圧挟持部材47(その連結枠部材51c)をZ軸方向に移動させることにより、その各第3加圧挟持部材47のZ軸方向での位置に応じて、第3平行平面板36における隣り合う2辺の中点36bを結ぶ線分K(図6参照)を底辺としかつ当該2辺が交わる角36aを頂点とする4つの三角形領域KB(角部36A)(図6参照)を個別にZ軸方向に撓み変形させることができる。このため、放射方向倍率補正機構33では、いずれか1つの第3加圧挟持部材47を対応する加圧支持枠部材51に対してZ軸方向正側へと移動させると、第3平行平面板36における当該加圧支持枠部材51が保持する角部36Aの近傍の角36aを頂点とする三角形領域KB(角部36A)をZ軸方向正側に存在するように湾曲変形させることができる。このため、その三角形領域KBの湾曲率に応じて、結像面上の投影光学系の光軸から当該角36aへと向かう方向に、結像面でのマスクパターン像を拡大させること、すなわち投影レンズ21による拡大倍率を拡大補正することができる。また、その三角形領域KBを逆方向に湾曲させると、その湾曲率に応じて結像面上の投影光学系の光軸から当該角36aへと向かう方向に、結像面でのマスクパターン像を縮小させること、すなわち投影レンズ21による拡大倍率を縮小補正することができる。
この放射方向倍率補正機構33では、例えば、4つの角36aのうち、正方形状を呈する第3平行平面板36の一の対角線を形成する2つの角36aを頂点とする三角形領域KB(角部36A)をZ軸方向正側へと撓み変形させるとともに、他の2つの角36aを頂点とする三角形領域KB(角部36A)をZ軸方向負側へと撓み変形させることにより、結像面でのマスクパターン像を菱形形状に変形させることができる。また、放射方向倍率補正機構33では、例えば、4つの角36aのうち、正方形状を呈する第3平行平面板36の1辺の両端に位置する2つの角36aを頂点とする三角形領域KB(角部36A)をZ軸方向正側へと撓み変形させるとともに、他の2つの角36aを頂点とする三角形領域KB(角部36A)をZ軸方向負側へと撓み変形させることにより、結像面でのマスクパターン像を台形形状に変形させることができる。さらに、放射方向倍率補正機構33では、各三角形領域KB(角部36A)を個別にZ軸方向に撓み変形させることにより、結像面上の投影光学系の光軸から当該角36aへと向かう4つの放射方向の倍率補正を個別に行うことができる。
このため、放射方向倍率補正機構33では、第3平行平面板36の各三角形領域KB(角部36A)を適宜湾曲させることにより、結像面上の投影光学系の光軸から4つの角36aへと向かう4つの放射方向の倍率補正を適宜行うことができ、対象ワーク24(その表面)に適切にマスクパターン像を投影させることができる。
このことから、倍率補正部22では、第1方向倍率補正機構31と第2方向倍率補正機構32と放射方向倍率補正機構33とを適宜組み合せて、第1方向、第2方向および結像面上の投影光学系の光軸から4つの角36aへと向かう4つの放射方向の倍率補正を適宜行うことにより、対象ワーク24(その表面)上により適切にマスクパターン像を投影させることができる。換言すると、倍率補正部22では、放射方向倍率補正機構33が結像面上の投影光学系の光軸から4つの角36aへと向かう4つの放射方向で適宜倍率補正を行うことができるので、第1方向倍率補正機構31や第2方向倍率補正機構32では補正しきれない対象ワーク24(その表面)に対するマスクパターン像のずれを補正することができる。なお、倍率補正部22では、第1方向倍率補正機構31の第1平行平面板34と、第2方向倍率補正機構32の第2平行平面板35と、放射方向倍率補正機構33の第3平行平面板36と、が適宜交換可能とされている。
ここで、倍率補正部22では、X軸方向に長尺な第1平行平面板34の両端に第1加圧挟持部材38が設けられ、Y軸方向に長尺な第2平行平面板35の両端に第2加圧挟持部材41が設けられ、かつX軸方向に長尺な第1平行平面板34とY軸方向に長尺な第2平行平面板35との双方が存在しない位置に各第3加圧挟持部材47が設けられていることから、Z軸方向(投影光学系の光軸方向)で第1方向倍率補正機構31、第2方向倍率補正機構32および放射方向倍率補正機構33を接近させて設けることができるので、全体のコンパクト化を図ることができる。また、倍率補正部22は、投影レンズ21と対象ワーク24との間に設けられていることから、対象ワーク24に形成した感光材料から発生するガス等が飛散したとしても、これらのガス等が投影レンズ21(そのレンズ群)や歪曲補正板20に付着することを防止することができる。ここで、倍率補正部22では、上述したように、第1方向倍率補正機構31の第1平行平面板34と、第2方向倍率補正機構32の第2平行平面板35と、放射方向倍率補正機構33の第3平行平面板36と、が適宜交換可能とされていることから、ガス等が付着しても大きな問題となることはない。また、第1平行平面板34、第2平行平面板35および第3平行平面板36は、投影レンズ21や倍率補正部22、特に投影レンズ21と比較すると極めて安価であることから、自身の交換を招いたとしても投影レンズ21(そのレンズ群)や歪曲補正板20へのガス等の付着を防止することは大変効果的である。
次に、歪曲補正板20の構成について説明する。歪曲補正板20は、本実施例では、図1に示すように、露光光である紫外線(i線)の透過を許す材料からなる円板状の平行平面板におけるZ軸方向正側に凹凸状の自由曲面20aが設けられて形成されている。この自由曲面20aは、基本的に投影レンズ21において上述したように高精度に収差補正されて設定されていても残存する歪曲収差を補正すべく、その位置、傾斜方向および傾斜角度が設定されている。この自由曲面20aの設定方法について以下で説明する。
先ず、自由曲面20aの設定の概念について、図9から図11を用いて説明する。図9は、露光装置10において、露光光がマスク18aのマスクパターンを透過し、投影レンズ21を経て対象ワーク24上(投影露光ステージ23上の結像面)にマスクパターン像として結像される投影光学系において、投影レンズ21の残存する歪曲収差の影響が生じている様子を模式的に示す説明図である。図10は、図9と同様に模式的に示す投影光学系において、投影レンズ21の残存する歪曲収差によるずれ量Dと歪曲補正板20の自由曲面20aの傾斜θとの関係を説明するための説明図である。図11は、図9および図10と同様に模式的に示す投影光学系において、投影レンズ21の残存する歪曲収差および倍率補正部22の収差によるずれ量D´と、歪曲補正板20の自由曲面20aの傾斜θ´と、の関係を説明するための説明図である。なお、図10および図11では、理解容易のために自由曲面20aを平坦な傾斜面で示している。
ここで、図9に示すように、マスク18aのマスクパターンの所望の点Qに対して、投影レンズ21を経て対象ワーク24上(投影露光ステージ23上の結像面)に結像される理想位置(設計位置)が点Qiであるとする。しかしながら、投影光学系では、投影レンズ21に歪曲収差が残存することにより、点Qを対象ワーク24上において点Qdの位置に結像したものとする。このため、対象ワーク24上における点Qdと点Qiとの間隔が、マスクパターンの点Qに対応する位置に対する対象ワーク24上での投影レンズ21の残存する歪曲収差量すなわちずれ量Dとなる。
ここで、図10に示すように、屈折率nの透過材料からなり傾斜θの自由曲面20a(図示の例では、平坦な傾斜面)を有する歪曲補正板20を用いてこの歪曲収差(ずれ量D)を打ち消すものとする。その傾斜θは、歪曲補正板20のZ軸方向負側の平坦面を投影光学系の光軸方向(Z軸方向)に直交させた際に自由曲面20aとX−Y平面(Z軸方向負側の平坦面)とが為す角度を示している。このとき、マスク18aの点Qから歪曲補正板20の自由曲面20aまでのZ軸方向(投影光学系の光軸方向)で見た間隔を間隔Lとする。また、投影レンズ21における変倍率(拡大倍率)をαとする。すると、ずれ量Dは次式(1)で示すことができる。
D=α×L×sin(n−1)θ ・・・(1)
このことから、マスク18aに対する歪曲補正板20の配置位置を設定するとともに、対象ワーク24上における実際の結像位置と理想的な結像位置(設計位置)とのずれ量を測定することで、歪曲補正板20における自由曲面20aの傾斜を求めることができる。
本実施例では、歪曲補正板20の自由曲面20aは、投影レンズ21の残存する歪曲収差に加えて、倍率補正部22の各平行平面板、すなわち第1方向倍率補正機構31の第1平行平面板34と第2方向倍率補正機構32の第2平行平面板35と放射方向倍率補正機構33の第3平行平面板36との表面形状に起因する収差を補正すべく設定する。この各平行平面板(第1平行平面板34、第2平行平面板35および第3平行平面板36)における表面形状に起因する収差とは、各平行平面板の表面の凹凸に起因する結像に関する特性、すなわち対象ワーク24上に形成されるマスクパターン像における各平行平面板の表面の凹凸に起因する理想状態からの偏差のことをいう。これは、倍率補正部22の各平行平面板は、上述したように極めて高い精度で平行平面板とされているが、Z軸方向(光軸)に直交する2つ表面を平坦面とする加工精度には限界があることから、極めて小さなものではあるが凹凸(理想的な平坦面に対する傾斜)が生じてしまう。このような各平行平面板の両表面に存在する凹凸は、投影レンズ21に残存する歪曲収差と同様に、対象ワーク24上に形成されるマスクパターン像に影響を及ぼしてしまう虞があることによる。
このため、投影光学系では、図11に示すように、投影レンズ21の残存する歪曲収差に加えて、倍率補正部22の各平行平面板における表面形状に起因する収差により、点Qを対象ワーク24上において点Qd´の位置に結像したものとする。このため、対象ワーク24上における点Qd´と点Qiとの間隔が、マスクパターンの点Qに対応する位置に対する対象ワーク24上での投影レンズ21の歪曲収差および倍率補正部22の収差による収差量すなわちずれ量D´となる。ここで、屈折率nの透過材料からなり傾斜θ´の自由曲面20a(図示の例では、平坦な傾斜面)を有する歪曲補正板20を用いてこの収差(ずれ量D´)を打ち消すものとする。その傾斜θ´は、上述した傾斜θと同様に定義したものであり、倍率α、間隔L、屈折率nは、上述したものと同様である。すると、ずれ量D´は次式(2)で示すことができる。
D´=α×L×sin(n−1)θ´ ・・・(2)
このことから、マスク18aに対する歪曲補正板20の配置位置を設定するとともに、対象ワーク24上における実際の結像位置と理想的な結像位置(設計位置)とのずれ量を測定することで、歪曲補正板20における自由曲面20aの傾斜を求めることができる。
次に、自由曲面20aの設定方法の一例について説明する。先ず、図示は略すが、マスクステージ18にマスク18aに変えて、投影光学系において残存している収差を測定するためのテストパターンを保持させる。このテストパターンは、投影レンズ21および倍率補正部22を経た露光光(紫外線(i線))のうち対象ワーク24に照射されてマスクパターン像を形成する投影光学系の有効投影領域ETにおいて、その全域に渡り適宜配された複数の点における対象ワーク24上でのずれ量を測定するためのものである。本実施例では、図12に示すように、有効投影領域ETにおいて、投影光学系の光軸を中心としてX軸方向で見た5つの座標位置とY軸方向で見た5つの座標位置とで表すことのできる25個の点Q1〜点Q25のずれ量を測定するものとしている。
その後、テストパターンを透過した露光光(紫外線(i線))を、投影レンズ21および倍率補正部22を経て対象ワーク24(投影露光ステージ23上の結像面)上に結像させることで、対象ワーク24上にテストパターン像を形成する。すると、テストパターン像における点Q1〜点Q25から、理想的な点Q1〜点Q25の結像位置との偏差を求めることができるので、各点(点Q1〜点Q25)におけるずれ量(D(D´))とその向きとを測定により取得することができる。図13は、この各点(点Q1〜点Q25)におけるずれ量(D(D´))とその向きとの一例をX−Y座標上にベクトル(各点を基点とする矢印)で示したものである。なお、この図13は、理解容易のために、各ずれ量の大きさ(ベクトル量(矢印の長さ寸法))をX−Y座標の大きさ寸法とは異なる基準量で示している。なお、本実施例では、このテストパターンを用いた収差(偏差)を測定する際、倍率補正部22で倍率補正を行っていない状態、すなわち各平行平面板(第1平行平面板34、第2平行平面板35および第3平行平面板36)を湾曲変形させていない状態としている。
この図13に示す各点(点Q1〜点Q25)におけるずれ量(D(矢印の長さ寸法))を、その他の既知の値(投影レンズ21の倍率α、テストパターン(マスク18a)から歪曲補正板20(その自由曲面20a)までの間隔L、歪曲補正板20の屈折率n)とともに上述した式(2)に用いることにより、各点(点Q1〜点Q25)に対応する位置での歪曲補正板20の自由曲面20aでの傾斜(θ)を求めることができる。また、この図13に示す各点(点Q1〜点Q25)における矢印の向きから、各点(点Q1〜点Q25)に対応する位置での歪曲補正板20の自由曲面20aとしての傾斜方向を求めることができる。その各点(点Q1〜点Q25)における傾斜およびその向きに基づいて、隣接する各点間の形状(曲面)を算出することにより、自由曲面20aを設定することができる。この隣接する各点間の形状(曲面)は、周知の補完式を用いて求めることができ、滑らかに繋ぐものとすることが望ましい。
その後、屈折率nの透過性の材料からなる円板状の平行平面板(20)の一方の面に、設定した自由曲面20aを形成することで、歪曲補正板20を形成することができる。この自由曲面20aの形成は、種々の方法もしくは装置を用いて形成することができるが、本実施例では、MRF(MagnetoRheological Finishing)装置80(図14参照)を用いて形成している。このMRF装置80は、図14に示すように、回転ホイール82を回転自在に保持する本体部81と、研磨液調整部83と、供給ポンプ84と、供給ノズル85と、吸引部86と、吸引ポンプ87と、被研磨部材保持部88と、を備える。その本体部81は、回転させた回転ホイール82の上部(被研磨部材保持部88が対向される側)に所定の磁場を形成する。研磨液調整部83は、研磨材を含む磁気粘弾性流体Sの調整を行う。この研磨液調整部83は、供給路89により供給ポンプ84を経て供給ノズル85に接続されるとともに、吸引ポンプ87を経て吸引部86に接続されている。
その供給ポンプ84は、供給路89を通じて、研磨液調整部83から磁気粘弾性流体Sを供給ノズル85へと送る。その供給ノズル85は、供給ポンプ84からの圧力により、磁気粘弾性流体Sを回転ホイール82の上部へと供給する。その磁気粘弾性流体Sは、本体部81により形成された磁場により、回転する回転ホイール82の表面上を流れるように当該表面に保持される。吸引部86は、回転ホイール82の上部であって、その回転方向で見た供給ノズル85の下流側において、回転ホイール82の表面に保持された磁気粘弾性流体Sを吸引により回収する。吸引ポンプ87は、吸引部86における吸引力を生成するとともに、供給路89を通じて磁気粘弾性流体Sを研磨液調整部83に送る。被研磨部材保持部88は、研磨を行う被研磨部材(歪曲補正板20)を保持するとともに、保持した被研磨部材を回転ホイール82の上部に対して自在な角度で接近させることができる。
このため、MRF装置80では、屈折率nの透過性の材料からなる円板状の平行平面板(20)を被研磨部材保持部88で設定した自由曲面20aの形状に応じた角度で保持させることで、回転する回転ホイール82の表面上を流れる磁気粘弾性流体Sにより当該自由曲面20aを形成することができ、その自由曲面20aを有する歪曲補正板20を形成することができる。露光装置10では、このように形成した歪曲補正板20を、投影光学系の投影レンズ21に対してその開口数が大きく設定された側で上述した間隔L(図1および図11参照)となる位置に設けることにより、投影レンズ21の残存する歪曲収差と倍率補正部22の各平行平面板の表面形状に起因する収差とによる影響が打ち消されたマスクパターン像を、対象ワーク24(投影露光ステージ23上の結像面)上に形成することができる。
このように、本発明に係る一実施例としての露光装置10では、歪曲補正板20を投影光学系において投影レンズ21に対してその開口数が大きく設定された側に設けるものであることから、開口数が小さく設定された側に設けることに比較して、歪曲補正板20の光軸に直交する面(X−Y平面)に平行な方向で見た大きさ寸法を小さなものとすることができる。このため、より高い精度の自由曲面20aを有する歪曲補正板20を形成することができ、より高い精度で投影レンズ21の残存する歪曲収差の影響を打ち消すことができる。これは、被研磨部材(歪曲補正板20)の大きさ寸法が巨大化するほど、自由曲面20aの加工精度が低下することによる。
また、露光装置10では、歪曲補正板20を投影光学系において投影レンズ21に対してその開口数が大きく設定された側に設けるものであることから、開口数が小さく設定された側に設けることに比較して、歪曲補正板20の光軸に直交する面(X−Y平面)に平行な方向で見た大きさ寸法を小さなものとすることができるので、歪曲補正板20の製造コストの増大を抑制することができる。
さらに、露光装置10では、歪曲補正板20を投影光学系において拡大光学系とされた投影レンズ21に対してその開口数が大きく設定された側に設けるもの、すなわち投影レンズ21とマスク18aとの間に設けるものであることから、歪曲補正板20に入射することなくその自由曲面20aで反射された露光光が投影光学系における迷光となることを大幅に抑制することができる。これは、歪曲補正板20を投影レンズ21と対象ワーク24との間に設けた場合、その自由曲面20aで反射された露光光が再び投影レンズ21内へと進行し、その内方において予期せぬ影響を及ぼす(所謂迷光となる)虞があることによる。
露光装置10では、歪曲補正板20を投影レンズ21とマスク18aとの間に設けるものであることから、歪曲補正板20を投影レンズ21と対象ワーク24との間に設ける場合とは異なり、対象ワーク24に形成した感光材料から発生するガス等が飛散したとしても、これらのガス等が歪曲補正板20に飛散して付着することを防止することができる。
露光装置10では、歪曲補正板20を投影レンズ21とマスク18aとの間に設けるものであることから、投影レンズ21における倍率の変更のための動作や、倍率補正部22における倍率補正のための動作を歪曲補正板20で阻害することを防止することができる。
露光装置10では、歪曲補正板20の自由曲面20aが、投影レンズ21の残存する歪曲収差に加えて、倍率補正部22の各平行平面板の表面形状に起因する収差の影響も併せて打ち消すべく設定されていることから、より適切なマスクパターン像を対象ワーク24(投影露光ステージ23上の結像面)上に形成することができる。特に、本実施例では、倍率補正部22が、3つの平行平面板(第1平行平面板34、第2平行平面板35および第3平行平面板36)を有する構成とされていることから、より効果的である。
露光装置10では、歪曲補正板20の自由曲面20aにより投影レンズ21の残存する歪曲収差と倍率補正部22の各平行平面板の表面形状に起因する収差との影響を打ち消すとともに、その倍率補正部22により投影光学系の光軸を中心とする放射方向の倍率を個別に変化させることができることから、より適切なマスクパターン像を対象ワーク24上に形成することができる。
露光装置10では、投影レンズ21は、大きい側の開口数が大略0.1に設定されていることから、その開口数が大きく設定された側に歪曲補正板20を設けても、解像力の劣化を極めて小さなものとすることができる。
露光装置10では、歪曲補正板20の自由曲面20aを、露光光としての紫外線(i線)のみに対して高精度に収差補正する設定とすればよいことから、容易に高精度な光学性能を有するものとすることができる。このため、対象ワーク24上に極めて精度良くマスクパターンを形成することができる。
したがって、本発明に係る露光装置10では、変倍光学系とされた投影レンズ21に対して、簡単な構成で製造コストの上昇を防止しつつ投影レンズ21における歪曲収差を補正することができる。
なお、上記した実施例では、本発明に係る露光装置の一例としての露光装置10について説明したが、パターンが形成されたマスクに露光光を照射し、該マスクを透過した露光光を投影レンズで変倍しつつ対象ワークに結像させて、該対象ワーク上に所定のマスクパターンを露光する露光装置であって、前記マスクから前記投影レンズを経て前記対象ワークに至る光路上には、前記投影レンズに対して該投影レンズの開口数が大きく設定された側に、該投影レンズの歪曲収差を打ち消す凹凸状とされた自由曲面を有し露光光の透過を許す歪曲補正板が設けられている露光装置であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
また、上記した実施例では、テストパターンにおける各点の傾斜およびその向きを測定する際に投影光学系の光軸上に倍率補正部22を存在させていたが、投影レンズ21に残存する歪曲収差のみを打ち消すべく歪曲補正板20の自由曲面20aを設定するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。その場合、投影光学系の光軸上から倍率補正部22を取り除いてテストパターンにおける各点の傾斜およびその向きを測定すればよい。
さらに、上記した実施例では、自由曲面20aを歪曲補正板20のZ軸方向正側の面に形成するものとしていたが、Z軸方向負側の面に形成するものであっても、両面に形成して双方の協働により収差を補正するものであってもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、倍率補正部22において、各第3拘束部材46を第3平行平面板36の各辺の中点36bに配置する構成としていたが、各辺の中間位置であって各第3加圧挟持部材47の間に設けられていればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
上記した実施例では、倍率補正部22が、第1方向倍率補正機構31と第2方向倍率補正機構32と放射方向倍率補正機構33とを備える構成とされていたが、例えば第1方向倍率補正機構31および第2方向倍率補正機構32に変えて複数の放射方向倍率補正機構33を設ける構成としてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
以上、本発明の露光装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。