以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
図1は、本発明の実施例に係る幾何学量測定装置が搭載される平面研削盤100の正面図であり、図2は、その右側面図である。平面研削盤100は、主に、本体ベッド1、X軸テーブル2、立軸砥石用コラム3、立軸砥石ヘッド4、砥石ヘッド回転用モータ5、砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7、テーブル移動用アクチュエータ8、センサヘッド9、表示装置10、入力装置11、及び制御装置12を含む。
本体ベッド1は、X軸テーブル2をX軸方向に移動可能に支持する台座である。具体的には、本体ベッド1は、X軸テーブル2の下面に取り付けられるラック(図示せず。)とかみ合うピニオン(図示せず。)をその上面に有する。
X軸テーブル2は、図示しない駆動機構によって、本体ベッド1上をX軸方向に摺動させられるテーブルであり、その上面で被研削物であり且つ被測定物であるワークW(例えば、定盤である。)を支持する。本実施例では、X軸テーブル2は、ラックアンドピニオン機構により駆動されるが、ボールねじ機構等の他の駆動機構により駆動されてもよい。
立軸砥石用コラム3は、立軸砥石ヘッド4を上下方向(Z軸方向)及び左右方向(Y軸方向)に移動可能に支持する装置である。
立軸砥石ヘッド4は、垂直方向(Z軸方向)に平行に延びる砥石軸40を有する砥石ヘッドである。なお、砥石軸40の先端には、砥石車41が取り付けられる。
砥石ヘッド回転用モータ5は、立軸砥石ヘッド4の砥石軸40を回転させるモータであり、例えば、ACサーボモータが用いられる。
砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6は、立軸砥石ヘッド4をZ軸方向に移動させるための上下移動機構を駆動するアクチュエータである。本実施例では、砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6は、図1の矢印AR1で示すように、立軸砥石ヘッド4をZ軸方向に移動させるボールねじ機構におけるボールねじ軸又はボールねじナットを回転させるためのACサーボモータである。
砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7は、立軸砥石ヘッド4をY軸方向に移動させるための左右移動機構を駆動するアクチュエータである。本実施例では、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7は、図2の矢印AR2で示すように、立軸砥石ヘッド4をY軸方向に移動させるボールねじ機構におけるボールねじ軸又はボールねじナットを回転させるためのACサーボモータである。
テーブル移動用アクチュエータ8は、X軸テーブル2をX軸方向に移動させるためのテーブル移動機構を駆動するアクチュエータである。本実施例では、テーブル移動用アクチュエータ8は、図1の矢印AR3で示すように、X軸テーブル2をX軸方向に移動させるボールねじ機構におけるボールねじ軸又はボールねじナットを回転させるためのACサーボモータである。
なお、上下移動機構、左右移動機構、及びテーブル移動機構は、ラックアンドピニオン機構等の他の機構であってもよい。
センサヘッド9は、被測定物としての研削加工後のワークWの表面の真直度又は平面度を測定するための装置であり、立軸砥石ヘッド4に取り付けられる。また、センサヘッド9は、X軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも3つの距離センサと、Y軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも3つの距離センサとを含む。本実施例では、センサヘッド9は、永久磁石等を用いて立軸砥石ヘッド4に脱着可能に取り付けられる。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。センサヘッド9は、例えば、立軸砥石ヘッド4に脱着不能に取り付けられてもよい。この場合、センサヘッド9は、平面研削盤100による研削加工が行われる際に専用のカバーが被せられ、外部環境から隔離される。
図3は、センサヘッド9を鉛直下方(−Z方向)から見たセンサヘッド9の底面図であり、距離センサの配置例を示す。
図3に示すように、センサヘッド9は、三角柱形状の本体部9sと、X軸に平行な方向に距離Dbずつ間隔を空けて本体部9s上に配置される3つの距離センサ9a、9b、9cと、Y軸に平行な方向に距離Daずつ間隔を空けて本体部9s上に配置される3つの距離センサ9c、9d、9eとを含む。なお、距離センサ9cは、2つのセンサ列の双方に含まれる。そのため、センサヘッド9は、5つの距離センサ9a〜9eを含む。なお、距離Daと距離Dbとは、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
図4及び図5は、センサヘッドの別の構成例を示す図であり、図3に対応する。
図4のセンサヘッド9Aは、底面が十字形状の多角柱である本体部9Asと、X軸に平行な方向に距離Dbずつ間隔を空けて本体部9As上に配置される3つの距離センサ9a、9b、9cと、Y軸に平行な方向に距離Daずつ間隔を空けて本体部9As上に配置される3つの距離センサ9d、9b、9eとを含む。なお、距離センサ9bは、2つのセンサ列の双方に含まれる。そのため、センサヘッド9Aは、センサヘッド9と同様、5つの距離センサ9a〜9eを含む。なお、距離Daと距離Dbとは、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
図5のセンサヘッド9Bは、底面がT字形状の多角柱である本体部9Bsと、X軸に平行な方向に距離Dbずつ間隔を空けて本体部9Bs上に配置される3つの距離センサ9a、9b、9cと、Y軸に平行な方向に距離Daずつ間隔を空けて本体部9Bs上に配置される3つの距離センサ9d、9e、9bとを含む。なお、距離センサ9bは、2つのセンサ列の双方に含まれる。そのため、センサヘッド9Bは、センサヘッド9、9Aと同様、5つの距離センサ9a〜9eを含む。なお、距離Daと距離Dbとは、同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。
なお、上述の実施例では、センサヘッド9、9A、9Bは、何れも2つのセンサ列の双方に含まれる距離センサを1つ有し、距離センサの数を減らすようにするが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、センサヘッド9は、個々に独立したセンサ列を形成する6つの距離センサを含むようにしてもよい。
ここで、再び図1及び図2を参照して、平面研削盤100の構成要素の説明を継続する。
表示装置10は、各種情報を表示するための装置であり、例えば、液晶ディスプレイ等である。
入力装置11は、平面研削盤100に各種情報を入力するための装置であり、例えば、キーボード、タッチパネル、ジョイスティック、リモートコントローラ、エスカッションボタン等である。
制御装置12は、平面研削盤100の動きを制御するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)等を備えたコンピュータである。
図6は、平面研削盤100に搭載される幾何学量測定装置50の構成例を示すブロック図である。幾何学量測定装置50は、主に、砥石ヘッド回転用モータ5、砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7、テーブル移動用アクチュエータ8、センサヘッド9、表示装置10、入力装置11、及び制御装置12で構成される。
制御装置12は、例えば、研削制御部120、幾何学量測定制御部121、及び偶然誤差表示部122を機能要素として有し、各機能要素に対応するプログラムをROM又はRAMから読み出しながら、各機能要素に対応する処理をCPUに実行させる。
研削制御部120は、平面研削盤100によるワークWの研削加工を制御する機能要素である。具体的には、研削制御部120は、入力装置11を通じて入力される研削深さ、研削幅等の各種情報に基づいて、ワークWに対する立軸砥石ヘッド4の動作内容を決定する。そして、研削制御部120は、決定した動作内容に応じた制御信号を適切なタイミングで砥石ヘッド回転用モータ5、砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7、及びテーブル移動用アクチュエータ8のそれぞれに対して出力しながら、平面研削盤100によるワークWの研削加工を制御する。
幾何学量測定制御部121は、幾何学量測定装置50によるワークWの幾何学量の測定を制御する機能要素である。具体的には、研削制御部120は、入力装置11を通じて入力される測定範囲、サンプリング間隔、走査ライン間隔、目標測定繰り返し回数等の各種情報に基づいて、ワークWに対するセンサヘッド9の動作内容を決定する。なお、目標測定繰り返し回数は、被測定物を測定するために同じ走査ラインを何回走査するかを示す自然数である。繰り返し回数が多いほど、累積の偶然誤差が小さくなり、測定値に対する信頼度が高くなる。そして、幾何学量測定制御部121は、決定した動作内容に応じた制御信号を適切なタイミングで砥石ヘッド上下送り用アクチュエータ6、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7、及びテーブル移動用アクチュエータ8のそれぞれに出力しながら、センサヘッド9をワークWに対して相対移動させる。また、幾何学量測定制御部121は、その相対移動の際に、センサヘッド9を用いて距離データを取得し、取得した距離データを制御装置12のRAMに記録する。その後、幾何学量測定制御部121は、RAMに記録した距離データに基づいて、逐次2点法又は逐次3点法により、ワークWの幾何学量を測定する。
偶然誤差表示部122は、センサヘッド9による距離データの測定の際に累積する偶然誤差を算出して表示する機能要素である。
具体的には、偶然誤差表示部122は、例えば、入力装置11を通じて入力される測定範囲、測定対象(真直度か平面度か)、目標測定繰り返し回数等の各種入力情報と、予め設定されるセンサ間隔、サンプリング間隔等の各種設定情報とに基づいて、偶然誤差を算出し、算出した偶然誤差を表示装置10に表示する。
より具体的には、偶然誤差表示部122は、逐次2点法に基づいてワークWの幾何学量(例えば、真直度又は平面度である。)を測定する場合、以下の式(1)に基づいて、距離データの測定の際に累積する偶然誤差の最大値σを算出する。
ここで、Nは、最大サンプリング回数であり、測定範囲の最大長さLをサンプリング間隔sで除した値である。また、Jは、センサ間隔をサンプリング間隔sで除した値であり、σ
Sは、距離センサのそれぞれの出力に含まれる偶然誤差の標準偏差である。
また、偶然誤差表示部122は、逐次3点法に基づいてワークWの幾何学量を測定する場合、以下の式(2)に基づいて、距離データの測定の際に累積する偶然誤差の最大値σを算出する。
なお、本実施例では、式(1)及び式(2)の何れにおいても、センサ間隔とサンプリング間隔sとが等しいためJは値1である。また、標準偏差σ
Sは、距離センサの特性に応じて予め設定される値である。また、累積の偶然誤差は、最初の距離データの取得の際、及び、最後の距離データの取得の際にゼロとなり、中間での距離データの取得の際に最大になるものと仮定する。すなわち、累積の偶然誤差の最大値σは、中間での距離データの取得の際の値に相当する。
また、偶然誤差表示部122は、式(1)又は式(2)に基づいて算出した累積の偶然誤差の最大値σを、目標測定繰り返し回数の値に応じて調整する。具体的には、偶然誤差表示部122は、目標測定繰り返し回数の値が大きいほど、累積の偶然誤差の最大値σが小さくなるように調整する。例えば、偶然誤差表示部122は、目標測定繰り返し回数が4回の場合、目標測定繰り返し回数が1回の場合における累積の偶然誤差の最大値の2分の1を、累積の偶然誤差の最大値として採用する。距離センサの分解能レベルの偶然誤差は、一般的に正規分布になることが知られており、同じ条件での測定をN回繰り返して得た測定結果の平均値における偶然誤差は、確率の法則により1/√Nになるためである。
また、累積の偶然誤差の許容最大値σMAXが入力装置11を通じて入力されている場合、偶然誤差表示部122は、式(1)又は式(2)に基づいて算出した累積の偶然誤差の最大値σが許容最大値σMAX以下となるように、目標測定繰り返し回数を決定してもよい。この場合、偶然誤差表示部122は、決定した目標測定繰り返し回数と共に、累積の偶然誤差の最大値σを表示装置10に表示する。
また、偶然誤差表示部122は、平面度を測定する際の累積の偶然誤差の最大値σを表示装置10に表示する場合には、走査ラインの交差数が多いほど、累積の偶然誤差の最大値σが小さくなるように調整してもよい。走査ラインの交差点に対応する測定点では、重複した測定が行われるためである。
ここで、図7及び図8を参照しながら、幾何学量測定装置50がワークWの幾何学量を測定する処理(以下、「第1幾何学量測定処理」とする。)について説明する。なお、図7は、第1幾何学量測定処理の流れを示すフローチャートであり、幾何学量測定装置50は、例えば、入力装置11を通じた第1幾何学量測定処理の開始命令に応じてこの第1幾何学量測定処理を実行する。また、図8は、センサヘッド9のワークWに対する相対位置の推移を示す図である。なお、図8において、白丸から黒丸に延びる破線矢印は、センサヘッド9のワークWに対する相対移動の経路を示し、実線矢印は、X軸テーブル2によるワークWの+X方向への移動量を示す。また、白丸及び黒丸は、基準位置Ptを表す白丸を除き、センサヘッド9による測定点を表す。また、図8は、図8(A)〜図8(E)の順に、センサヘッド9のワークWに対する相対位置が移動することを示す。
最初に、制御装置12の幾何学量測定制御部121は、入力装置11を通じて入力される測定範囲、サンプリング間隔SD、走査ライン間隔LD、及び目標測定繰り返し回数を取得する(ステップS1)。
測定範囲は、第1幾何学量測定処理の対象となるワークW上の範囲であり、例えば、開始座標Ps(Xs、Ys)、終了座標Pe(Xe、Ye)で指定される。また、測定範囲は、測定長さX1及び測定幅Y1で指定されてもよい。
サンプリング間隔SDは、センサヘッド9によるサンプリングの間隔である。本実施例では、センサヘッド9がY軸方向に走査されるため、例えば、Y軸に平行な方向のセンサ間隔Daがサンプリング間隔SDとして採用される。
走査ライン間隔LDは、センサヘッド9の走査ライン間の距離である。本実施例では、センサヘッド9がY軸方向に走査されるため、走査ライン間隔LDは、走査ライン間のX軸方向における距離を意味し、例えば、X軸に平行な方向のセンサ間隔Dbが走査ライン間隔LDとして採用される。
その後、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてセンサヘッド9の基準位置Ptの座標(Xt、Yt)を決定し(図8(A)参照。)、センサヘッド9を基準位置Ptに移動させる(ステップS2)。具体的には、幾何学量測定制御部121は、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7及びテーブル移動用アクチュエータ8のうちの少なくとも1つに制御信号を出力し、センサヘッド9及びX軸テーブル2の少なくとも1つを駆動させ、センサヘッド9を基準位置Ptに移動させる。
その後、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてY軸方向に沿う走査距離を決定した上で、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7及びセンサヘッド9に制御信号を出力し、図8(A)に示すように、センサヘッド9を基準位置Ptから−Y方向に走査距離だけ移動させる。この移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、サンプリング間隔SD毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS3)。以下、距離の測定を伴うセンサヘッド9の相対移動を「スキャン移動」と称する。
センサヘッド9が−Y方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、テーブル移動用アクチュエータ8に対して制御信号を出力し、図8(B)に示すように、X軸テーブル2を走査ライン間隔LDだけ+X方向に移動させる(ステップS4)。その結果、センサヘッド9は、ワークWに対して、走査ライン間隔LDだけ−X方向に相対的に移動する。以下、距離の測定を伴わないセンサヘッド9の相対移動を「ステップ移動」と称する。
その後、幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したか否かを判定する(ステップS5)。幾何学量測定制御部121は、例えば、X軸テーブル2を更に走査ライン間隔LDだけ+X方向に移動させた場合にセンサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部からはみ出ると判断した場合に、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したと判定する。
センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達していないと判定した場合(ステップS5のNO)、幾何学量測定制御部121は、ステップS3及びステップS4の処理を再び実行する。
具体的には、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてY軸方向に沿う走査距離を決定した上で、図8(C)に示すように、センサヘッド9を+Y方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、サンプリング間隔SD毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS3)。
センサヘッド9が+Y方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、図8(D)に示すように、X軸テーブル2を走査ライン間隔LDだけ+X方向に移動させる(ステップS4)。その結果、センサヘッド9は、ワークWに対して、走査ライン間隔LDだけ−X方向に相対的にステップ移動する。
幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したと判定するまでこれらの処理を繰り返す。
一方、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したと判定した場合(ステップS5のYES)、幾何学量測定制御部121は、ステップS2〜ステップS5までの処理の繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になったか否かを判定する(ステップS6)。
繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になっていないと判定した場合(ステップS6のNO)、幾何学量測定制御部121は、ステップS2〜ステップS5の処理を繰り返す。
繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になったと判定した場合(ステップS6のYES)、幾何学量測定制御部121は、RAMに記録された距離データに基づいて、逐次3点法により、ワークWの平面度を算出する(ステップS7)。
その後、幾何学量測定制御部121は、表示装置10に対して制御信号を出力し、算出したワークWの平面度を表示装置10上に表示させる。
これにより、幾何学量測定装置50は、X軸方向におけるスキャン移動を実行することなく、X軸方向及びY軸方向の双方におけるセンサヘッド9の運動誤差を取り除いた状態で、ワークWの平面度を算出することができる。
なお、第1幾何学量測定処理では、Y軸に平行な方向のセンサ間隔Daがサンプリング間隔SDとして採用され、X軸に平行な方向のセンサ間隔Dbが走査ライン間隔LDとして採用される。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、センサ間隔Daの自然数倍の距離がサンプリング間隔SDとして採用されてもよく、センサ間隔Dbの自然数倍の距離が走査ライン間隔LDとして採用されてもよい。
また、第1幾何学量測定処理では、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7によりボールねじ機構を用いてスキャン移動を実行し、テーブル移動用アクチュエータ8によりボールねじ機構を用いてステップ移動を実行する。しかしながら、油圧シリンダ機構のような、ボールねじ機構よりも位置決め精度が低い機構を用いてテーブル移動用アクチュエータ8がX軸テーブル2を移動させる構成では、ステップ移動は、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7によりボールねじ機構を用いて実行されてもよい。この場合、スキャン移動は、テーブル移動用アクチュエータ8により油圧シリンダ機構を用いて実行される。位置決め精度が高いほうの機構を用いてステップ移動を実行することで、ステップ間隔のばらつきを抑えるためである。なお、センサヘッド9は、スキャン移動の際に継続的に距離を測定する構成であれば、サンプリング間隔毎の測定点の位置決めに高い精度を要求することはない。
このように、位置決め精度が高いほうの機構を用いてステップ移動を実行することにより、幾何学量測定装置50は、X軸方向(ステップ移動の方向)に並ぶ3つ1組の測定点の距離データを繋ぎ合わせて算出される真直度の信頼性を向上させることができる。また、幾何学量測定装置50は、1つの測定点を複数回のステップ移動を挟んで測定し、その測定結果を合成して真直度を算出する場合のその真直度の信頼性を向上させることができる。また、幾何学量測定装置50は、X軸方向(ステップ移動の方向)に関する真直度とY軸方向(スキャン移動の方向)に関する真直度とを組み合わせて算出される平面度の信頼性を向上させることができる。
なお、油圧シリンダ機構は、等速性に関しては、ボールねじ機構と同等であるため、スキャン移動に悪影響を及ぼすことはない。
また、スキャン移動が砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7ではなくテーブル移動用アクチュエータ8により実行される場合、立軸砥石ヘッド4及びセンサヘッド9は、スキャン移動の際に静止したままの状態となる。そのため、センサヘッド9は、距離測定の際に、センサヘッド9と制御装置12とを繋ぐケーブルのケーブルテンションの変動や環境振動の影響を受けにくい。その結果、センサヘッド9は、ノイズのより少ない距離データを出力することができる。
次に、図9及び図10を参照しながら、幾何学量測定装置50がワークWの幾何学量を測定する処理の別の例(以下、「第2幾何学量測定処理」とする。)について説明する。なお、図9は、第2幾何学量測定処理の流れを示すフローチャートであり、図7に対応する。幾何学量測定装置50は、例えば、入力装置11を通じた第2幾何学量測定処理の開始命令に応じてこの第2幾何学量測定処理を実行する。また、図10は、センサヘッド9のワークWに対する相対位置の推移を示す図であり、図8に対応する。図10は、図10(A)〜図10(E)の順に、また、図10(F)〜図10(J)の順に、センサヘッド9のワークWに対する相対位置が移動することを示す。
最初に、幾何学量測定制御部121は、入力装置11を通じて入力される測定範囲、X方向サンプリング間隔SDx、Y方向サンプリング間隔SDy、X方向走査ライン間隔LDx、Y方向走査ライン間隔LDy、及び目標測定繰り返し回数を取得する(ステップS11)。
測定範囲は、第2幾何学量測定処理の対象となるワークW上の範囲であり、例えば、開始座標Ps(Xs、Ys)、終了座標Pe(Xe、Ye)で指定される。また、測定範囲は、測定長さX1及び測定幅Y1で指定されてもよい。
X方向サンプリング間隔SDxは、センサヘッド9がワークWに対してX軸に平行な方向に相対移動する際のセンサヘッド9によるサンプリングの間隔である。本実施例では、X軸テーブル2がX軸に平行な方向に移動することによって、静止中のセンサヘッド9がワークWに対してX軸に平行な方向に相対移動するため、例えば、X軸に平行な方向のセンサ間隔DbがX方向サンプリング間隔SDxとして採用される。
Y方向サンプリング間隔SDyは、センサヘッド9がワークWに対してY軸に平行な方向に相対移動する際のセンサヘッド9によるサンプリングの間隔である。本実施例では、センサヘッド9がY軸に平行な方向に走査されることによって、センサヘッド9がワークWに対してY軸に平行な方向に相対移動するため、例えば、Y軸に平行な方向のセンサ間隔DaがY方向サンプリング間隔SDyとして採用される。
X方向走査ライン間隔LDxは、センサヘッド9のX軸に平行な走査ライン間のY軸方向における距離である。本実施例では、例えば、X軸に平行な方向のセンサ間隔DbがX方向走査ライン間隔LDxとして採用される。
Y方向走査ライン間隔LDyは、センサヘッド9のY軸に平行な走査ライン間のX軸方向における距離である。本実施例では、例えば、Y軸に平行な方向のセンサ間隔DaがY方向走査ライン間隔LDyとして採用される。
その後、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてセンサヘッド9の基準位置Ptの座標(Xt、Yt)を決定し(図10(A)参照。)、センサヘッド9を基準位置Ptに移動させる(ステップS12)。具体的には、幾何学量測定制御部121は、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7及びテーブル移動用アクチュエータ8のうちの少なくとも1つに制御信号を出力し、センサヘッド9及びX軸テーブル2の少なくとも1つを駆動させ、センサヘッド9を基準位置Ptに移動させる。
その後、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてY軸方向に沿う走査距離を決定した上で、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7及びセンサヘッド9に制御信号を出力し、図10(A)に示すように、センサヘッド9を基準位置Ptから−Y方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、Y方向サンプリング間隔SDy毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS13)。
センサヘッド9が−Y方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、テーブル移動用アクチュエータ8に対して制御信号を出力し、図10(B)に示すように、X軸テーブル2をX方向走査ライン間隔LDxだけ+X方向に移動させる(ステップS14)。その結果、センサヘッド9は、ワークWに対して、X方向走査ライン間隔LDxだけ−X方向に相対的にステップ移動する。
その後、幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したか否かを判定する(ステップS15)。
センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達していないと判定した場合(ステップS15のNO)、幾何学量測定制御部121は、ステップS13及びステップS14の処理を再び実行する。
具体的には、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてY軸方向に沿う走査距離を決定した上で、図10(C)に示すように、センサヘッド9を+Y方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、Y方向サンプリング間隔SDy毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS13)。
センサヘッド9が+Y方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、図10(D)に示すように、X軸テーブル2をX方向走査ライン間隔LDxだけ+X方向に移動させる(ステップS14)。その結果、センサヘッド9は、ワークWに対して、X方向走査ライン間隔LDxだけ−X方向に相対的にステップ移動する。
幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したと判定するまでこれらの処理を繰り返す。
一方、センサヘッド9が測定範囲のX軸方向の端部に達したと判定した場合(ステップS15のYES)、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてY軸方向に沿う走査距離を決定した上で、図10(F)に示すように、センサヘッド9を−Y方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、Y方向サンプリング間隔SDy毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する。
その後、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてX軸方向に沿う走査距離を決定した上で、テーブル移動用アクチュエータ8及びセンサヘッド9に制御信号を出力し、図10(G)に示すように、センサヘッド9を+X方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、X方向サンプリング間隔SDx毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS16)。
センサヘッド9が+X方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、砥石ヘッド左右送り用アクチュエータ7に対して制御信号を出力し、図10(H)に示すように、センサヘッド9をY方向走査ライン間隔LDyだけ−Y方向にステップ移動させる(ステップS17)。
その後、幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部に達したか否かを判定する(ステップS18)。幾何学量測定制御部121は、例えば、センサヘッド9を更にY方向走査ライン間隔LDyだけ−Y方向にステップ移動させた場合にセンサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部からはみ出ると判断した場合に、センサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部に達したと判定する。
センサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部に達していないと判定した場合(ステップS18のNO)、幾何学量測定制御部121は、ステップS16及びステップS17の処理を再び実行する。
具体的には、幾何学量測定制御部121は、測定範囲に基づいてX軸方向に沿う走査距離を決定した上で、図10(I)に示すように、センサヘッド9を−X方向に走査距離だけスキャン移動させる。このスキャン移動中、センサヘッド9における5つの距離センサ9a〜9eのそれぞれは、X方向サンプリング間隔SDx毎に距離を測定し、測定結果としての距離データを制御装置12のRAM上に記録する(ステップS16)。
センサヘッド9が−X方向に走査距離だけスキャン移動した後、幾何学量測定制御部121は、図10(J)に示すように、センサヘッド9をY方向走査ライン間隔LDyだけ−Y方向にステップ移動させる(ステップS17)。
幾何学量測定制御部121は、センサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部に達したと判定するまでこれらの処理を繰り返す。
一方、センサヘッド9が測定範囲のY軸方向の端部に達したと判定した場合(ステップS18のYES)、幾何学量測定制御部121は、ステップS12〜ステップS18までの処理の繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になったか否かを判定する(ステップS19)。
繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になっていないと判定した場合(ステップS19のNO)、幾何学量測定制御部121は、ステップS12〜ステップS18の処理を繰り返す。
繰り返し回数が目標測定繰り返し回数になったと判定した場合(ステップS19のYES)、幾何学量測定制御部121は、RAMに記録された距離データに基づいて、逐次3点法により、ワークWの平面度を算出する(ステップS20)。
その後、幾何学量測定制御部121は、表示装置10に対して制御信号を出力し、算出したワークWの平面度を表示装置10上に表示させる。
なお、第2幾何学量測定処理では、Y軸に平行な方向のセンサ間隔DaがY方向サンプリング間隔SDy及びY方向走査ライン間隔LDyとして採用され、X軸に平行な方向のセンサ間隔DbがX方向サンプリング間隔SDx及びX方向走査ライン間隔LDxとして採用される。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、センサ間隔Daの自然数倍の距離がY方向サンプリング間隔SDy又はY方向走査ライン間隔LDyとして採用されてもよく、センサ間隔Dbの自然数倍の距離がX方向サンプリング間隔SDx又はX方向走査ライン間隔LDxとして採用されてもよい。
また、第2幾何学量測定処理では、ステップ移動がX軸方向及びY軸方向の双方で行われ、スキャン移動もX軸方向及びY軸方向の双方で行われる。そのため、ステップ移動の方向に並ぶ3つ1組の測定点の距離データを繋ぎ合わせて真直度を算出する必要はない。その結果、ステップ間隔毎の測定点の位置決め精度に対する要求を緩和させることができる。
次に、幾何学量測定装置50がワークWの幾何学量を測定する処理の別の例(以下、「第3幾何学量測定処理」とする。)について説明する。
第3幾何学量測定処理では、第1幾何学量測定処理の場合と同様に、幾何学量測定装置50は、センサヘッド9をY軸方向にスキャン移動させ、且つ、センサヘッド9をX軸方向にステップ移動させながら、測定点が格子状に並ぶように、各測定点で距離を測定する。
これにより、幾何学量測定装置50は、1回目のスキャン移動の際に3つ1組の距離センサ9c〜9eのそれぞれが取得した距離データより、逐次3点法に基づいてセンサヘッド9の運動誤差を取り除いた状態で、第1の走査ラインに関するワークWの真直度を算出できる。これは、幾何学量測定装置50が、第1の走査ライン上の各測定点におけるピッチング誤差及び並進誤差を把握していることを意味する。
そこで、幾何学量測定装置50は、第2及び第3の走査ライン上の各測定点におけるピッチング誤差及び並進誤差が、第1の走査ライン上の対応する測定点におけるピッチング誤差及び並進誤差と同じであると仮定する。
そして、幾何学量測定装置50は、1回目のスキャン移動の際に距離センサ9bが取得した距離データ、すなわち、第2の走査ライン上の各測定点における距離データから、第1の走査ライン上の対応する測定点におけるピッチング誤差及び並進誤差を取り除いた値を、真直度の算出に用いる距離データとする。
同様に、幾何学量測定装置50は、1回目のスキャン移動の際に距離センサ9aが取得した距離データ、すなわち、第3の走査ライン上の各測定点における距離データから、第1の走査ライン上の対応する測定点におけるピッチング誤差及び並進誤差を取り除いた値を、真直度の算出に用いる距離データとする。
その結果、幾何学量測定装置50は、センサヘッド9の1回のスキャン移動により、3本の走査ラインに関するワークWの真直度を算出できる。したがって、幾何学量測定装置50は、1回のステップ移動によるステップ間隔をセンサ間隔の3倍とすることができ、ワークWの平面度をより短時間で効率的に算出できる。すなわち、距離センサ9c〜9eのそれぞれは、2回目のスキャン移動では、第2の走査ラインではなく、第4の走査ライン上の各測定点における距離データを取得する。
なお、幾何学量測定装置50は、X軸方向(ステップ移動の方向)に等間隔に並ぶ距離センサの数を4つ以上にすることによって、ステップ間隔をさらに大きくし、ワークWの平面度の算出に要する時間をさらに短縮させてもよい。
以上の構成により、幾何学量測定装置50は、ワークWの表面上の測定範囲に対し、X軸に平行な方向に並ぶ3つの距離センサとY軸に平行な方向に並ぶ3つの距離センサとを備えたセンサヘッド9を所定の走査ライン間隔で自動的に走査させながら、距離データを取得する。すなわち、幾何学量測定装置50は、一連の走査により、X軸に平行な複数のX方向測定ラインのそれぞれの上に並ぶ測定点の距離データ、及び、Y軸に平行な複数のY方向測定ラインのそれぞれの上に並ぶ測定点の距離データを取得する。そのため、幾何学量測定装置50は、複数のX方向測定ライン及び複数のY方向測定ラインのそれぞれに対して、逐次3点法による真直度測定を実行することができ、ひいては、ワークWの表面上に格子状に並ぶ測定ラインに基づいて逐次3点法による平面度測定を実行することができる。その結果、幾何学量測定装置50は、ワークWの真直度や平面度の測定効率を高めることができる。また、幾何学量測定装置50は、逐次3点法を利用するため、センサヘッド9の運動真直度(運動誤差)を取り除いた状態で、ワークWの真直度や平面度を算出することができる。
また、一連の走査において、幾何学量測定装置50は、センサヘッド9の向きの変更を要求することなく、逐次3点法による真直度や平面度の測定に必要な距離データを取得することができる。その結果、幾何学量測定装置50は、機器剛性を高めることができる。
また、幾何学量測定装置50は、ラインビーム形状の投光ビームを発するレーザ変位計を距離センサとして採用することによって、測定値に対するノイズの影響を低減させることができる。所定幅のラインビーム内の変位量を平均化した値をラインビームの中心にある測定点の測定値として出力するためである。
また、幾何学量測定装置50は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに対して45度傾斜するラインビーム形状を採用することによって、測定値に対するノイズの影響がX方向測定ライン及びY方向測定ラインの何れか一方に偏るのを防止することができる。ノイズの原因の1つである研削痕は、被測定物の延在方向又はその直交方向、すなわち、X軸又はY軸に平行な方向に形成され易いためである。
次に、図11を参照しながら、幾何学量測定装置50が、距離データを取得する際に累積する偶然誤差を算出して表示する処理(以下、「第1偶然誤差表示処理」とする。)について説明する。なお、図11は、第1偶然誤差表示処理の流れを示すフローチャートであり、幾何学量測定装置50は、入力装置11を通じてワークWの真直度又は平面度の測定を開始させるための命令を受けた場合に、この第1偶然誤差表示処理を実行する。
最初に、制御装置12の偶然誤差表示部122は、センサ間隔、サンプリング間隔、走査速度、及び、偶然誤差の標準偏差等の設定情報を取得する(ステップS21)。これらの設定情報は、制御装置12のNVRAMに予め登録されており、第1偶然誤差表示処理の際には変更不能となっている。なお、これらの設定情報は、表示装置10に表示されるセンサパラメータ画面等の専用の画面を介して変更できるように用意されてもよい。
図12は、センサパラメータ画面の構成例を示す図であり、センサ間隔、サンプリング間隔、及び、偶然誤差の標準偏差が設定可能な状態を示す。センサパラメータ画面は、測定者が入力装置11に対して所定の操作を行うことによって表示装置10に表示される。
その後、偶然誤差表示部122は、測定対象、測定範囲、走査ライン間隔、及び目標測定繰り返し回数等の各種入力情報を取得する(ステップS22)。具体的には、偶然誤差表示部122は、入力画面を表示装置10に表示し、測定者による各種入力情報の入力を促す。
図13は、入力画面の構成例を示す図であり、測定対象、測定範囲、走査ライン間隔、及び目標測定繰り返し回数が入力可能な状態を示す。なお、図13の入力画面は、測定対象を選択するためのラジオボタンを有し、被測定物の真直度を測定する場合の「直線」、又は、被測定物の平面度を測定する場合の「平面」を測定者が選択できるようにする。
また、偶然誤差表示部122は、測定対象が選択され、且つ、測定範囲が入力された段階で、走査方法選択画面を表示装置10に表示し、測定者による走査方法の選択を促すようにしてもよい。この場合、操作者は、走査方法を複数の選択肢から選択するだけでよく、走査ライン間隔及び目標測定繰り返し回数の値を入力する必要はない。
図14は、走査方法選択画面の構成例を示す図であり、6つの走査方法の中から1つの走査方法を測定者が選択できるように、6つの走査方法のそれぞれを表す6つのイメージのそれぞれに対応する6つのラジオボタンを示す。
具体的には、図14の走査方法選択画面は、目標測定繰り返し回数が1回である3つの走査方法のそれぞれに対応する3つのラジオボタンを上段に配置し、目標測定繰り返し回数が2回である3つの走査方法のそれぞれに対応する3つのラジオボタンを下段に配置する。言い換えると、図14の走査方法選択画面は、X軸に平行な方向及びY軸に平行な方向の走査ライン間隔が何れも200mmである2つの走査方法のそれぞれに対応する2つのラジオボタンを最左列に配置し、走査ライン間隔が何れも400mmである2つの走査方法のそれぞれに対応する2つのラジオボタンを最右列に配置する。また、X軸に平行な方向の走査ライン間隔が400mmであり、Y軸に平行な方向の走査ライン間隔が200mmである2つの走査方法のそれぞれに対応する2つのラジオボタンを中央列に配置する。
その後、偶然誤差表示部122は、取得した設定情報及び入力情報に基づいて、累積の偶然誤差の最大値(測定精度)σと測定に要する時間(測定時間)とを予測値として導き出し、それらの予測値を入力画面(図13参照。)上に表示する(ステップS23)。
具体的には、偶然誤差表示部122は、例えば、測定範囲の最大長さLが1000mm、サンプリング間隔sが100mm、偶然誤差の標準偏差σsが0.01μmの場合、上述の式(2)を用いて、累積の偶然誤差の最大値(測定精度)σがおよそ±0.16μmであることを導き出す。また、偶然誤差表示部122は、測定範囲及び走査ライン間隔から算出される走査距離と、設定情報である走査速度とに基づいて、ワークWの平面度を測定するために要する時間(測定時間)を導き出す。
測定者は、入力画面(図13参照。)の下部領域に表示される測定精度及び測定時間を確認し、それらの値が許容できるものであれば、図示しない開始ボタンを押下することによって、幾何学量測定装置50による実際の測定を開始させる。
なお、測定者は、表示された測定精度が所望の値でない場合には、設定情報又は入力情報の値を変更することによって、測定精度を調整することができる。測定時間についても同様である。
具体的には、走査ライン間隔の増大は、測定精度を低下させる一方で、測定時間を短縮させる効果があり、目標測定繰り返し回数の増大は、測定時間を延長させる一方で、測定精度を高める効果がある。また、走査速度の増大は、測定精度を低下させる一方で、測定時間を短縮させる効果がある。
実際の測定の後、幾何学量測定装置50は、取得した距離データに基づいて等高線(コンター)図を表示装置10に表示する。具体的には、幾何学量測定装置50は、等高線の高度間隔を測定精度に応じた値とし、測定精度を反映した表示を行うようにする。なお、幾何学量測定装置50は、高度毎に色分けして等高線図を表示してもよい。
以上の構成により、第1偶然誤差表示処理を実行する幾何学量測定装置50は、測定結果として得られる幾何学量がどの程度の偶然誤差を含むのか、すなわち、測定精度がどの程度であるかを、実際の測定が行われる前に測定者に提示することができる。そのため、測定者は、所望の測定精度で測定が行われるように、目標測定繰り返し回数等の測定条件を変更することができる。
また、幾何学量測定装置50は、選択可能な複数の測定条件のそれぞれを分かり易く表すイメージを表示するので、測定者による測定条件の入力(選択)を支援することができる。
次に、図15を参照しながら、幾何学量測定装置50が、距離データを取得する際に累積する偶然誤差を算出して表示する処理の別の例(以下、「第2偶然誤差表示処理」とする。)について説明する。なお、図15は、第2偶然誤差表示処理の流れを示すフローチャートであり、幾何学量測定装置50は、入力装置11を通じてワークWの真直度又は平面度の測定を開始させるための命令を受けた場合に、この第2偶然誤差表示処理を実行する。
最初に、制御装置12の偶然誤差表示部122は、センサ間隔、サンプリング間隔、走査速度、及び、偶然誤差の標準偏差等の設定情報を取得する(ステップS31)。
その後、偶然誤差表示部122は、測定対象及び測定範囲を取得する(ステップS32)。具体的には、偶然誤差表示部122は、測定対象及び測定範囲を入力するための入力画面を表示装置10に表示し、測定者による測定対象及び測定範囲の入力を促す。
その後、偶然誤差表示部122は、累積の偶然誤差の許容最大値を取得する(ステップS33)。具体的には、偶然誤差表示部122は、累積の偶然誤差の許容最大値を入力するための専用の画面を表示装置10に表示し、測定者による許容最大値の入力を促す。なお、偶然誤差表示部122は、許容最大値を入力するための入力フォームを入力画面上に表示してもよい。
その後、偶然誤差表示部122は、取得した設定情報と測定対象及び測定範囲とに基づいて、累積の偶然誤差の最大値(測定精度)σを予測値として算出する(ステップS34)。この場合、偶然誤差表示部122は、目標測定繰り返し回数を1回として、予測値を算出する。
その後、偶然誤差表示部122は、算出した予測値と許容最大値とに基づいて目標測定繰り返し回数を決定する(ステップS35)。具体的には、偶然誤差表示部122は、予測値が許容最大値を上回るか否かを判断し、予測値が許容最大値以下の場合には、最終的な目標測定繰り返し回数を1回に決定する。一方、予測値が許容最大値を上回る場合、偶然誤差表示部122は、目標測定繰り返し回数を2回として予測値を算出し直す。偶然誤差表示部122は、予測値が許容最大値以下となるまで目標測定繰り返し回数を1回ずつ増大させ、予測値が許容最大値以下となったときの目標測定繰り返し回数を最終的な目標測定繰り返し回数として決定する。なお、偶然誤差表示部122は、目標測定繰り返し回数に代えて或いは加えて、走査ライン間隔を用いて同様の処理を行うようにしてもよい。具体的には、偶然誤差表示部122は、予測値が許容最大値以下となるまで、走査ライン間隔を最小値から徐々に増大させながら予測値を繰り返し算出する。
その後、偶然誤差表示部122は、最終的な目標測定繰り返し回数を表示装置10に表示し、且つ、そのときの累積の偶然誤差の最大値σを測定精度として表示装置10に表示する(ステップS36)。
測定者は、表示装置10に表示される目標測定繰り返し回数や走査ライン間隔を確認し、それらの値が許容できるものであれば、図示しない開始ボタンを押下することによって、幾何学量測定装置50による実際の測定を開始させる。
なお、上述の実施例では、幾何学量測定装置50は、測定条件を決定するために、累積の偶然誤差(測定精度)の許容最大値を取得するが、測定精度の許容最大値に代えて或いは加えて、測定時間の許容最大値を取得してもよい。
以上の構成により、第2偶然誤差表示処理を実行する幾何学量測定装置50は、実際の測定が行われる前に、測定結果として得られる幾何学量の測定精度又は測定時間を、測定者が望むレベルに調整することができる。
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
例えば、上述の実施例では、Y軸に平行な方向のセンサ間隔Da及びX軸に平行な方向のセンサ間隔Dbが何れも固定されているが、センサ間隔Da及びセンサ間隔Dbのうちの少なくとも一方は調整可能あってもよい。
また、上述の実施例では、センサヘッド9をX軸方向に移動できない構成が採用されているが、センサヘッド9をX軸方向及びY軸方向に移動可能な構成が採用されてもよい。
同様に、上述の実施例では、X軸テーブル2(ワークW)をY軸方向に移動できない構成が採用されているが、X軸テーブル2(ワークW)をX軸方向及びY軸方向に移動可能な構成が採用されてもよい。
また、上述の実施例では、平面研削盤100による研削加工、及び、幾何学量測定装置50による幾何学量測定が何れも制御装置12によって制御されるが、別々の制御装置によって制御されてもよい。すなわち、幾何学量測定装置50は、平面研削盤100の制御装置から独立した専用の制御装置を備えるようにしてもよい。
また、上述の実施例において、センサヘッド9に搭載される距離センサのそれぞれは、所定のサンプリング間隔で距離を測定し、その測定値を出力する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。距離センサのそれぞれは、例えば、継続的に距離を測定しながら、ローパスフィルタ(逐次平均)等を適用して複数の測定値を一纏めにし、所定のサンプリング間隔毎にその一纏めにした測定値を出力するようにしてもよい。
また、上述の実施例では、幾何学量測定装置50は、立軸砥石ヘッド4を備えた平面研削盤100に搭載されるが、横軸砥石ヘッドを備えた平面研削盤に搭載されてもよい。また、幾何学量測定装置50は、被測定物に対してセンサヘッド9をX軸方向及びY軸方向に相対移動させる機構を備える他の工作機械に搭載されてもよい。
また、上述の実施例では、センサヘッド9は、X軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも3つの距離センサと、Y軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも3つの距離センサとを含む。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、センサヘッド9は、X軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも2つの距離センサと、Y軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも2つの距離センサとを含むものであってもよい。また、センサヘッド9は、X軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも2つの距離センサのみを含むものであってもよく、Y軸に平行な方向に等間隔に配置される少なくとも2つの距離センサのみを含むものであってもよい。