JP2013194115A - ポリエステル重合触媒、及びそれを用いて製造されたポリエステル樹脂 - Google Patents

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惠一朗 戸川
Takeshi Takasugi
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Abstract

【課題】 本発明は、アンチモン化合物を触媒主成分として用いないポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル樹脂からなる繊維、フィルム、シート、並びに中空成形体を提供すること、特に、延伸の熱固定(ヒート・セット)時に容器表面の肌荒れの発生が少なく、結晶化速度を速め長期にわたって生産した場合でも表面光沢と透明性が低下しない中空成形体を提供することを目的とする。
【解決手段】 ゲルマニウム化合物、ヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および特定の構造で表されるリン化合物を含むポリエステル重合触媒を用いることにより解決できる。
【選択図】 なし

Description

本発明はポリエステル重合触媒、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂の製造方法、及びポリエステル樹脂からなる成形体に関するものであり、さらに詳しくは、アンチモン化合物を触媒主成分として用いない新規のポリエステル重合触媒、及びこれを用いて製造されたポリエステル樹脂、並びにポリエステル樹脂の製造方法に関するもので、透明性および色調に優れ、更にはポリエステル中空容器の容器表面の肌荒れが防止され、表面光沢に優れた分子配向熱固定ポリエステル中空容器及びフィルム、シート、繊維を提供するものでもある。
特に本発明のポリエステル樹脂から、連続的に中空容器を成形した際、該中空容器は優れた透明性を長期間にわたり維持すると言う特性を有する。
ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等に代表されるポリエステルは、機械的特性、及び化学的特性に優れており、それぞれのポリエステルの特性に応じて、例えば衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用などのフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気・電子部品のケーシング、その他エンジニアリングプラスチック成形品等の広範な分野において使用されている。代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸とアルキレングリコールを主構成成分とするポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)の場合には、テレフタル酸もしくはテレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル化もしくはエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレートを製造し、これを高温、真空下で触媒を用いて重縮合する重縮合法等により、工業的に製造されている。
従来から、このようなポリエステルの重縮合時に用いられるポリエステル重合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価で、かつ優れた触媒活性をもつ触媒であるが、これを主成分、即ち、実用的な重合速度が発揮される程度の添加量にて使用すると、重縮合時に金属アンチモンが析出するため、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するという問題点を有している。このような経緯で、アンチモンを全く含まないか或いはアンチモンを触媒主成分として含まないポリエステルが望まれている。
なおポリエステル中の上記の異物は以下のような問題を起こす。
(1)フィルム用のポリエステルにおいては、金属アンチモンの析出は、ポリエステル中の異物となり、溶融押し出し時の口金汚れの原因になるだけでなく、フィルムの表面欠点の原因にもなる。また、中空の成形品等の原料とした場合には、透明性の優れた中空成形体を得ることが困難である。
(2)繊維用のポリエステル中の異物は、繊維中に強度低下をもたらす異物となり、製糸時の口金汚れの原因となる。ポリエステル繊維の製造においては、主に操業性の観点から、異物の発生のないポリエステル重合触媒が求められる。
ポリエステルの重合触媒として、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物が広く知られているが、触媒活性に優れかつ溶融成形時に熱劣化をほとんど起こさない熱安定性並びに耐加水分解性に優れたポリエステルを与える重合触媒を用いたポリエステル樹脂が望まれており、アルミニウム系触媒を用いて改良する方法が提案されている(例えば、特許文献1、2、3参照。)。しかし、二軸延伸ブロー容器を成形後に熱固定(ヒート・セット)時に容器表面の肌荒れが発生し、表面光沢と透明が十分とは言えない。
ポリエステルの重合触媒としては、上記した種々の触媒が知られているが、ゲルマニウム化合物やアルミニウム化合物を用いた場合には、得られるポリエステル中空成形体の透明性が特に優れている。しかし、これらを用いた場合でも、中空成形体を長期にわたって生産した場合、その透明性を維持することが難しいと言う課題がある。
更に、ポリエチレンテレフタレート樹脂のボトル容器は、通常、射出成形したプリフォームをブロー金型内で延伸ブロー成形して成形されるが、果汁飲料等のように熱充填を必要とする内容物の容器の場合には、ボトルの耐熱性を上げるために、プリフォーム又はボトルの口栓部を熱処理して結晶化させることが行われており、又、小容量の容器の場合には、ボトル胴部の密度を上げるために、ブロー金型の温度を120〜180℃程度の高温に設定して胴部の結晶化を促進することが行われている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート樹脂は、結晶化速度が遅いため、ボトル成形時のこれら処理に時間を要すると共に、透明性の低下を伴うという問題があり、従来よりその改良が強く望まれている。
特許第3461175号公報 特開2003−261663号公報 特開2003−261666号公報
本発明は、アンチモン化合物を触媒主成分として含まず、ゲルマニウムを主たる金属成分とし、触媒活性に優れ、かつ触媒の失活もしくは除去をすることなしに、溶融成形時の熱劣化が効果的に抑制されて熱安定性、熱酸化安定性に優れ、さらには耐加水分解性にも優れたポリエステルを与えるポリエステル重合触媒を提供する。更には、本発明は、前記触媒を使用したポリステル樹脂を用いたフィルム、ボトル等の中空成形品、繊維等の溶融成形を行う際の熱安定性、熱酸化安定性、並びに耐加水分解性が改善されており、バージンの樹脂を使用しても更には成形時に発生する屑を再利用しても品位に優れた製品が得られるポリエステル樹脂、並びに前記ポリエステル重合触媒を使用したポリエステルの製造方法を提供する。本発明の大きな目的は、アンチモン化合物を触媒主成分として用いない新規のポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル樹脂からなる繊維、フィルム、シート、並びに中空成形体を提供することにあり、特に、延伸の熱固定(ヒート・セット)時に容器表面の肌荒れの発生が少なく、更に結晶化速度を速め、成型時に筋の発生がなく、透明性を低下させることなく成形体に耐熱性を付与でき長期にわたって生産した場合でも表面光沢と透明性が低下しない中空成形体を提供することにある。
本発明は、ゲルマニウム化合物、ヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および下記(式A)で表されるリン化合物を含むことを特徴とするポリエステル重合触媒である。
((式A)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
また本発明は、上記ポリエステル重合触媒を用いて製造されたことを特徴とするポリエステル樹脂である。
この場合において、ポリエステル樹脂中に含まれるヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および(式A)で表されるリン化合物を含めた全リン化合物のリン原子の量が、ポリエステル樹脂質量に対して10から200ppmであることができる。
この場合において、該ポリエステル樹脂は、下記実施例の項に記載する連続成形評価法によって、ポリエステル樹脂から得られた延伸中空成形体のヘイズ(厚み0.3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することができる。
さらに本発明は、上記に記載のポリエステル重合触媒を用いることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法である。
また、本発明は、上記記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形体、フィルム、または繊維である。
本発明のポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル樹脂からなる繊維、フィルム、シート、並びに中空成形体は、特に、延伸の熱固定(ヒート・セット)時に容器表面の肌荒れの発生が少なく長期にわたって生産した場合でも表面光沢と透明性が低下しない利点を有する。
本発明の評価に用いる容器の側面図 図1の容器の底面図 図1の容器の線A−Aにおける断面図
本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステル重合触媒に用いられる重縮合触媒を構成するゲルマニウム化合物としては、金属ゲルマニウムのほか、公知のゲルマニウム化合物は限定なく使用できる。
具体的には、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウムなどが挙げられ、これらのうち二酸化ゲルマニウムが好ましい。二酸化ゲルマニウムは結晶性、非結晶性でも良い。
ゲルマニウム化合物の添加量は、生成ポリエステル樹脂の質量に対してゲルマニウム原子の残存量として、10〜500ppmが好ましく、更に好ましくは30〜400ppmで、最も好ましくは40〜350ppmである。10ppm未満では重合性が低下する傾向にあり、500ppmを超えるとポリマーの透明性が悪くなる傾向にある。
ヒンダードフェノール構造を有するリン化合物としては、下記(化式1)で示されるリン化合物が上げられる。
(化式1)中、X1、X2は、それぞれ、水素、炭素数1〜4のアルキル基、または1価以上の金属を表す。
また、X1は、金属が2価以上であって、X2が存在しなくても良い。さらには、リン化合物に対して金属の余剰の価数に相当するアニオンが配置されていても良い。
金属としては、Li,Na,K、Ca,Mg,Alが好ましい。
上記の化学式(化式1)にて示される化合物の具体例としては、化学式(化式2)、(化式3)で表されるリン化合物がある。
上記の化学式(化式2)にて示される化合物としては、Irgamod295(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、また(化式3)にて示される化合物としては、Irgamod195(ビーエーエスエフ社製)が市販されており、使用可能である。
前記(式A)で表されるリン化合物は、例えば上記化学式(化式2)や(化式3)のリン化合物をポリエステルの構成原料である芳香族ジカルボン酸やアルキレングリコールなどと混合し、加熱処理することにより、一部分解を伴い得られる化合物である。(化式2)や(化式3)のリン化合物は、その構造から明らかなように、熱酸化分解を抑制する効果を持つ。
また、ポリエステル樹脂からボトルを連続生産する際の、ボトルヘイズの悪化の原因としては、ポリエステル樹脂中の添加物の析出やポリエステルの分解物の析出が考えられる。詳細は不明であるが、式Aで表されるリン化合物は、高分子量であるため、ボトルの連続生産の際にもマイグレーションしにくく、かつポリエステルの分解を抑制する効果を持つため、ボトルヘイズの悪化を抑制できるものと推定している。
本発明に用いられるゲルマニウム化合物と(式A)のリン化合物を併用することにより、十分な触媒効果を発揮する触媒が得られ、尚かつ、得られたポリエステル樹脂を用いて下記に記載する中空容器連続成形評価法により、測定法の項に説明する延伸ブロー条件にて、極限粘度が0.60〜0.88デシリットル/グラムのポリエステル樹脂から延伸中空成形体を5000本以上連続生産した時の該延伸中空成形体のヘイズ(厚み3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することができる。
該ポリエステル樹脂の極限粘度は、好ましくは0.60〜0.88デシリットル/グラム、より好ましくは0.62〜0.85デシリットル/グラム、更に好ましくは0.65〜0.83デシリットル/グラムである。即ち、粘度がこの範囲よりも低いと、容器の機械的強度や耐衝撃性が不十分であり、一方上記範囲よりも高いと、有底プリフォームへの射出成形が困難となる傾向にある。
本発明では、得られるポリエステル樹脂の質量に対する前記化学式(式A)で表されるリン化合物のリン原子の含有量は、1〜200ppm(得られるポリエステル樹脂の質量に対する(式A)で表されるリン化合物のリン原子の質量)が好ましく、より好ましくは、3〜100ppm、更に好ましくは3〜80ppm、最も好ましくは3〜50ppmである。(式A)で表されるリン化合物のリン原子の含有量が、200ppmを超えると昇温時結晶化温度(Tc1)が低くなり、延伸中空成形体の透明性が悪くなる傾向にあり、1ppm未満では下記に記載する中空容器連続成形評価法により極限粘度が0.60〜0.88デシリットル/グラムのポリエステル樹脂から延伸中空成形体を5000本以上連続生産した時の該延伸中空成形体のヘイズ(厚み0.3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することが難しくなる。
本発明においては、ポリエステル樹脂中に含まれるヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および(式A)で表されるリン化合物を含めた全リン化合物のリン原子の量が、ポリエステル樹脂質量に対して10から200ppmであることが好ましく、30〜195ppmであることがより好ましい。
本発明に係るポリエステル樹脂に用いられるヒンダードフェノール構造を有するリン化合物と(式A)のリン化合物を併用することにより、得られたポリエステル樹脂を用いて下記に記載する中空容器連続成形評価法により測定法の項に説明する延伸ブロー条件にて、極限粘度が0.60〜0.88デシリットル/グラムのポリエステル樹脂から延伸中空成形体を5000本以上連続生産した時の該延伸中空成形体のヘイズ(厚み3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することができる。
(リン化合物(式A)の特性と合成)
重縮合の工程でリン化合物は分解していく。リン化合物の分解物としては様々なものがあるが、本発明者らの検討の結果、特にヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、主に(化式2)や(化式3)のt−Bu基が外れたものにテレフタル酸が縮合反応したもので、(式A)構造のものがTc1に大きな影響を与え、更には延伸中空成形体を5000本以上連続生産した時の該延伸中空成形体のヘイズ(厚み3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することが判った。
分解による(式A)の生成は、重縮合の温度が高く、時間が長いほど、分解とテレフタル酸との縮合が進行するため、温度と時間を特定の範囲とすることが好ましい。
即ち、[重縮合温度−240](℃)×重縮合時間(分)で表される温度時間積は、1000〜6500(℃×分)が好ましく、より好ましくは2000〜6300(℃×分)であり、更に好ましくは2500〜6200(℃×分)であり、特に好ましくは3000〜6100(℃×分)であり、最も好ましくは3500〜6000(℃×分)である。
上記範囲を超えると、ヒンダードフェノール構造を有するリン化合物の分解が進み、(式A)構造のリン化合物が200ppmを超え、Tc1を170℃以上にすることが困難となることがある。また、上記範囲以下では現実的な溶融重縮合が困難である。
ここで、240℃以上の温度としたのは、重縮合の時間として有意差が認められる5〜10分の時間で、リン化合物の分解にも有意差が生じる温度が240℃以上だからである。
なお、ここでの温度時間積は、各重縮合缶での平均滞留時間と缶内温度の積であり、複数の重縮合缶を用いる場合は、それぞれの反応缶で温度時間積を計算し、合計したものである。また、缶内の入り口付近−出口付近で温度勾配がある場合は、平均の温度を採る。
本発明においてゲルマニウムもしくはその化合物に加えて少量のアルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物から選択される少なくとも1種を第2金属含有成分として共存させることが好ましい態様である。かかる第2金属含有成分を触媒系に共存させることは、触媒活性を高め、従って反応速度をより高めた触媒成分が得られ、生産性向上に有効である。
アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物を添加する場合、その使用量M(モル%)は、ポリエステルを構成する全ポリカルボン酸ユニットのモル数に対して、1×10−6以上1.0モル%未満であることが好ましく、より好ましくは5×10−6〜0.5モル%であり、さらに好ましくは1×10−5〜0.3モル%であり、特に好ましくは、1×10−5〜0.1モル%である。アルカリ金属、アルカリ土類金属の添加量が少量であるため、熱安定性低下、異物の発生、着色、耐加水分解性の低下等の問題を発生させることなく、反応速度を高めることが可能である。アルカリ金属、アルカリ土類金属並びにその化合物の使用量Mが1.0モル%以上になると熱安定性の低下、異物発生や着色の増加、並びに耐加水分解性の低下が製品加工上問題となる場合が発生する。Mが1×10−6未満では、添加してもその効果が明確ではない。
本発明においてゲルマニウムもしくはその化合物に加えて使用することが好ましい第2金属含有成分を構成するアルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Li,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種であることが好ましく、このうちLi,Na,Mgないしその化合物から選択される少なくとも1種の使用がより好ましい。アルカリ金属やアルカリ土類金属の化合物としては、例えば、これら金属のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、蓚酸などの飽和脂肪族カルボン酸塩、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸塩、安息香酸などの芳香族カルボン酸塩、トリクロロ酢酸などのハロゲン含有カルボン酸塩、乳酸、クエン酸、サリチル酸などのヒドロキシカルボン酸塩、炭酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホスホン酸、炭酸水素、リン酸水素、硫化水素、亜硫酸、チオ硫酸、塩酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸などの無機酸塩、1−プロパンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸塩、ラウリル硫酸などの有機硫酸塩、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、iso−プロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシなどのアルコキサイド、アセチルアセトネートなどとのキレート化合物、水素化物、酸化物、水酸化物などが挙げられる。
本発明のポリエステル重合触媒は、さらに、コバルト化合物をコバルト原子としてポリエステルに対して10ppm未満の量で添加する事が好ましい態様である。
コバルト化合物はそれ自体ある程度の重合活性を有していることは知られているが、前述のように十分な触媒効果を発揮する程度に添加すると得られるポリエステルの明るさの低下や熱安定性の低下が起こる。本発明によれば得られるポリエステルは、色調並びに熱安定性が良好であるが、コバルト化合物を上記のような少量で添加による触媒効果が明確でないような添加量にて添加することにより、得られるポリエステルの明るさの低下を起こすことなく着色をさらに効果的に消去できる。なお本発明におけるコバルト化合物は、着色の消去が目的であり、添加時期は重縮合のどの段階であってもよく、重縮合反応終了後であってもかまわない。
コバルト化合物としては特に限定はないが、具体的にはたとえば、酢酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、コバルトアセチルアセトネート、ナフテン酸コバルトおよびそれらの水和物などが挙げられる。その中でも特に酢酸コバルト四水塩が好ましい。
本発明のポリエステル重合触媒は、重縮合反応のみならずエステル化反応およびエステル交換反応にも触媒活性を有する。たとえば、テレフタル酸ジメチルなどのジカルボン酸のアルキルエステルとエチレングリコールなどのグリコールとのエステル交換反応による重縮合は、通常チタン化合物や亜鉛化合物などのエステル交換触媒の存在下で行われるが、これらの触媒に代えて、もしくはこれらの触媒に共存させて、本発明に使用される触媒を用いることもできる。また、本発明に使用される触媒は、溶融重縮合のみならず固相重合や溶液重縮合においても触媒活性を有しており、いずれの方法によってもポリエステルを製造することが可能である。
本発明のポリエステル重合触媒は、重合反応の任意の段階で反応系に添加することができる。たとえばエステル化反応もしくはエステル交換反応の開始前および反応途中の任意の段階あるいは重合反応の開始直前あるいは重縮合反応途中の任意の段階で反応系への添加することが出きる。特に、ゲルマニウムないしその化合物は重縮合反応の開始直前に添加することが好ましい。
本発明のポリエステル重合触媒は、アンチモン化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、スズ化合物などの他の重合触媒1種または2種以上を、これらの成分の添加が前述の様なポリエステルの特性、加工性、色調など製品に問題が生じない添加量の範囲内において共存させて用いることは、重縮合時間の短縮による生産性を向上させる際に有利であり、好ましい。
ただし、アンチモン化合物としては重縮合して得られるポリエステルに対してアンチモン原子として50ppm以下の量で添加可能である。より好ましくは30ppm以下の量で添加することである。アンチモンの添加量を50ppmより多くすると、金属アンチモンの析出が起こり、ポリエステルに黒ずみや異物が発生するため好ましくない。
アルミニウム化合物としては重縮合して得られるポリマーに対して50ppm以下の範囲で添加する事が可能である。より好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは20ppm以下の量で添加することである。
チタン化合物としては重縮合して得られるポリマーに対して10ppm以下の範囲で添加する事が可能である。より好ましくは5ppm以下、さらに好ましくは2ppm以下の量で添加することである。チタンの添加量を10ppmより多くすると得られるレジンの熱安定性が著しく低下する。
本発明に使用される重縮合触媒を用いてポリエステルを重縮合する際には、アンチモン化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物、スズ化合物を使用できる。
本発明で用いられるアンチモン化合物、チタン化合物、アルミニウム化合物およびスズ化合物は特に限定はない。
本発明で用いられる重縮合触媒の添加方法は、粉末状ないしはニート状での添加であってもよいし、エチレングリコールなどのグリコール類のスラリー状もしくは溶液状での添加であってもよく、特に限定されない。また、ゲルマニウムもしくはその化合物と他の成分、好ましくは本発明で用いられるリン化合物とを予め混合した混合物あるいは錯体として添加してもよいし、これらを別々に添加してもよい。またゲルマニウム金属もしくはその化合物と他の成分、好ましくはリン化合物とを同じ添加時期に重縮合系に添加してもよく、それぞれの成分を別々の添加時期に添加してもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、主たる繰り返し単位がエチレンテレフタレ−トであるポリエステルであって、好ましくはエチレンテレフタレ−ト単位を85モル%以上含む線状ポリエステルであり、さらに好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95%モル以上含む線状ポリエステルである。
前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのジカルボン酸としてはイソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル―4,4―ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルエーテルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン―p,p’―ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸や蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、1,3ーシクロブタンジカルボン酸、1,3ーシクロペンタンジカルボン酸、1,2ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,3ーシクロヘキサンジカルボン酸、1,4ーシクロヘキサンジカルボン酸、2,5ーノルボルナンジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などに例示される脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸を用いることが出来る。これらのジカルボン酸は、カルボン酸成分のうち、0〜15モル%、好ましくは0〜5モル%の範囲で用いることができる。
また、前記ポリエステルが共重合体である場合に使用される共重合成分としてのグリコールとしては、例えば、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジエタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジ−n−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの脂肪族グリコール、ヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビスフェノール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)エタン、ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族グリコールなどが挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂を構成する3官能以上の多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、メチルシクロへキセントリカルボン酸、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、4,4’−(ヘキサフロロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)2,2’−ビス[(ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物(BSAA)などをあげることができる。また、本発明の共重合ポリエステルを構成する3官能以上のポリオールとしては、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールプロパンを挙げることができる。これらの中から、1種または2種以上を選択して使用できる。
本発明によるポリエステル樹脂の製造は、触媒として本発明のポリエステル重合触媒を用いる点以外は従来公知の工程を備えた方法で行うことができる。例えば、PETを製造する場合は、テレフタル酸とエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を直接反応させて水を留去しエステル化した後、減圧下に重縮合を行う直接エステル化法、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコール及び必要により他の共重合成分を反応させてメチルアルコールを留去しエステル交換させた後、減圧下に重縮合を行うエステル交換法により製造される。さらに必要に応じて極限粘度を増大させる為に固相重合を行ってもよい。固相重合前の結晶化促進のため、溶融重合ポリエステルを吸湿させたあと加熱結晶化させたり、また水蒸気を直接ポリエステルチップに吹きつけて加熱結晶化させたりしてもよい。
前記溶融重縮合反応は、回分式反応装置で行っても良いし、また連続式反応装置で行っても良い。これらいずれの方式においても、エステル化反応、あるいはエステル交換反応は1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。溶融重縮合反応も1段階で行っても良いし、また多段階に分けて行っても良い。固相重合反応は、溶融重縮合反応と同様、回分式装置や連続式装置で行うことが出来る。
また本発明のポリエステル樹脂に共重合されたジエチレングリコ−ル量は該ポリエステルを構成するグリコ−ル成分の好ましくは0.5〜7.0モル%、より好ましくは1.0〜5.0モル%、さらに好ましくは1.5〜4.0モル%である。ジエチレングリコ−ル量が7.0モル%を越える場合は、熱安定性が悪くなり、成形時に分子量低下が大きくなったり、またアセトアルデヒド含有量やホルムアルデヒド含有量の増加量が大となり好ましくない。またジエチレングリコ−ル含有量が0.5モル%未満の場合は、得られた成形体の透明性が悪くなる。
また、本発明のポリエステル樹脂の環状3量体の含有量は、好ましくは0.70重量%以下、より好ましくは0.50重量%以下、さらに好ましくは0.40重量%以下、特に好ましくは0.35重量%以下である。本発明のポリエステルから耐熱性の中空成形体等を成形する場合、環状3量体の含有量が0.70重量%を超える場合には、加熱金型表面へのオリゴマー付着が急激に増加し、得られた中空成形体等の透明性が非常に悪化する。また、下限は製造上の問題から、0.20重量%であることが好ましい。
また、本発明のポリエステル樹脂のアセトアルデヒドなどのアルデヒド類の含有量は、好ましくは30ppm以下、より好ましくは10ppm以下であることが望ましい。アルデヒド類含有量が50ppmを超える場合は、このポリエステルから成形された成形体等の内容物の香味保持性の効果が悪くなる。また、これらの下限は製造上の問題から、0.1ppbであることが好ましい。ここで、アルデヒド類とは、アセトアルデヒドやホルムアルデヒドである。エチレングリコール以外のグリコール類を共重合する場合には、それぞれに対応したアルデヒド類が挙げられる。
特に、本発明のポリエステル樹脂を構成するのがエチレンテレフタレ−トを主繰返し単位とするポリエステルであり、ミネラルウオータ等の低フレーバー飲料用の容器の材料として用いられる場合には、前記ポリエステル樹脂のアセトアルデヒド含有量は10ppm以下、好ましくは6ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である。アセトアルデヒド含有量が30ppmを超える場合は、このポリエステルから成形された中空成形体等の内容物の風味や臭い等が悪くなる。
シート状物あるいはフィルム用として用いる場合は、滑り性、巻き性、耐ブロッキング性などのハンドリング性を改善するために、無機粒子、有機塩粒子や架橋高分子粒子などの不活性粒子を含有させることが出来る。また、これらの粒子は無機・有機又は親水・疎水等の表面処理がされたもの、されていないもの、どちらを使っても良いが、例えば粒子の分散性を向上させる等の目的で、表面処理した粒子を用いる方が好ましい場合がある。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、ソジュウムカルシウムアルミシリケート、疎水処理シリカ、無機処理シリカ、有機処理シリカ、ガラス粉、シリコン等が挙げられる。
有機塩粒子としては、蓚酸カルシウムやカルシウム、バリウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム等のテレフタル酸塩等が挙げられる。
架橋高分子粒子としては、ジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他に、ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの有機粒子を用いても良い。
本発明のポリエステル樹脂には、必要に応じて公知の紫外線吸収剤、酸素捕獲剤、離型剤、安定剤、帯電防止剤などの各種の添加剤などを配合してもよい。
本発明に係るポリエステル樹脂は、一般的に用いられる溶融成形法を用いて、中空成形体、フィルム、シート状物、繊維、その他の成形体などを成形したり、また溶融押出法によって別の基材上にコートした被覆物を形成することができる。
本発明に係るポリエステル樹脂からなるシート状物を少なくとも一軸方向に延伸することにより機械的強度を改善することが可能である。本発明のポリエステル樹脂からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。また圧空成形、真空成形により、カップ状やトレイ状に成形することもできる。
中空成形体を製造するにあたっては、本発明のポリエステル樹脂から成形したブリフォームを延伸ブロー成形してなるもので、従来PETのブロー成形で用いられている装置を用いることができる。具体的には例えば、射出成形または押出成形で一旦プリフォームを成形し、そのままあるいは口栓部、底部を加工後、それを再加熱し、ホットパリソン法あるいはコールドパリソン法などの二軸延伸ブロー成形法が適用される。
耐熱性延伸ブロー成形体を製造する際の成形温度、具体的には成形機のシリンダー各部およびノズルの温度は通常260〜290℃の範囲である。延伸温度は通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で、延伸倍率ば通常縦方向に1.5〜3.5倍、円周方向に2〜5倍の範囲で行えばよい。得られた中空成形体は、そのまま使用できるが、特に果汁飲料、ウーロン茶などのように熱充填を必要とする飲料の場合には一般的に、さらにブロー金型内で熱固定し、さらに耐熱性を付与して使用される。熱固定は通常圧空などによる緊張下、100〜200℃、好ましくは120〜180℃で、数秒〜数時間、好ましくは数秒〜数分間行われる。
前記中空成形体の胴部は、密度法による結晶化度が20%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは33%以上となるように熱固定されていることが重要であり、これにより成形体の耐熱性が顕著に向上し、内容物を熱間充填し或は瓶詰品とパストライザー滅菌に付する場合の熱変形や熱収縮を改善し得るものである。
また、本発明のポリエステル樹脂は、これを溶融押出し後に切断した溶融塊を圧縮成形して得たプリフォームを延伸ブロー成形する、所謂、圧縮成形法による延伸中空成形体の製造にも用いることができる。
本発明のポリエステル樹脂からなる延伸フィルムは射出成形もしくは押出成形して得られたシート状物を、通常PETの延伸に用いられる一軸延伸、逐次二軸延伸、同時二軸延伸のうちの任意の延伸方法を用いて成形される。
延伸フィルムを製造するに当たっては、延伸温度は通常は80〜130℃である。延伸は一軸でも二軸でもよいが、好ましくはフィルム実用物性の点から二軸延伸である。延伸倍率は一軸の場合であれば通常1.1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍の範囲で行い、二軸延伸であれば縦方向および横方向ともそれぞれ通常1.1〜8倍、好ましくは1.5〜5倍の範囲で行えばよい。また、縦方向倍率/横方向倍率は通常0.5〜2、好ましくは0.7〜1.3である。得られた延伸フィルムは、さらに熱固定して、耐熱性、機械的強度を改善することもできる。熱固定は通常緊張下、120℃〜240、好ましくは150〜230℃で、通常数秒〜数時間、好ましくは数十秒〜数分間行われる。
本発明のポリエステル樹脂は、公知のフィルム製膜法によってフィルムを形成し得る。フィルム製膜法としては、未延伸フィルムを縦方向又は横方向に延伸する一軸延伸法やインフレーション法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法などの二軸延伸法を行い、次いで熱固定処理する方法が用い得る。例えば、逐次二軸延伸法としては、縦延伸及び横延伸または横延伸及び縦延伸を順に行う方法のほか、横−縦−縦延伸法、縦−横−縦延伸法、縦−縦−横延伸法などの延伸方法を採用することができる。また、同時二軸延伸法としては、従来の同時二軸延伸法でもよいが、リニアモーター方式により駆動される新規の同時二軸延伸法が好ましい。なお、多段階に分けて同時二軸延伸してもよい。また、熱収縮率をさらに低減するために、必要に応じて、縦弛緩処理、横弛緩処理などを施してもよい。熱収縮率を低減するためには、熱固定処理時の温度および時間を最適化するだけでなく、縦弛緩処理を熱固定処理の最高温度より低い温度で行うことが好ましい。また、本発明のポリエステル樹脂が優れた静電密着性を有している場合は、該フィルムの製造時のキャスティング工程には静電密着法を採用するのが好ましい実施態様である。
また、本発明のポリエステル樹脂からなるシート状物は、それ自体公知の手段にて製造することができる。例えば、押出機とダイを備えた一般的なシート成形機を用いて製造することができる。
また、このシート状物は、圧空成形、真空成形によりリカップ状やトレイ状に成形することもできる。また、本発明のポリエステルからのポリエステル成形体は、電子レンジおよび/またはオ−ブンレンジ等で食品を調理したり、あるいは冷凍食品を加熱するためのトレイ状容器の用途にも用いることができる。この場合は、シ−ト状物をトレイ形状に成形後、熱結晶化させて耐熱性を向上させる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、主な特性値の測定法を以下に説明する。
(1)ポリエステル樹脂の極限粘度(IV)
1,1,2,2−テトラクロルエタン/フェノール(2:3重量比)混合溶媒中30℃での溶液粘度から求めた。
(2)ゲルマニウムの定量方法
厚みが5mm、内径50mmのステンレス製円形リング中でポリエステルを融点+20℃に加熱して溶融させてサンプルピスを作成し、蛍光X線分析により、元素量を求め、ppmで表示した。なお、量の決定の際にはあらかじめ各元素量既知のサンプルから求め検量線を使用した。
(3)リンの定量方法(モリブデンブルー比色法)
1.硫酸、硝酸、過塩素酸による湿式分解を行った。
2.1の操作後、アンモニア水で中和した。
3.2で調整した溶液にモリブデン酸アンモニウム及び硫酸ヒドラジンを加えた。
4.島津製作所製紫外−可視吸光光度計UV−1700を用いて、波長830nmでの吸光度を測定した。
(4)リン化合物(式A)量の定量方法
試料410mgをHFIP+C6D6(1+1)混合溶媒2.6mlに溶解し、リン酸の25%重アセトン溶液10μlを添加して、遠心処理した。上清にトリフロロ酢酸105〜110mgを添加後、すぐにP−NMR測定によって求めた。
(5)ポリエステル樹脂の環状3量体の含有量(以下「CT含有量」という)
試料をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロフォルム混合液に溶解し、さらにクロロフォルムを加えて希釈した。これにメタノールを加えてポリマーを沈殿させた後、濾過した。濾液を蒸発乾固し、ジメチルフォルムアミドで定容とし、液体クロマトグラフ法よりエチレンテレフタレート単位から構成される環状3量体を定量した。
(6)中空容器連続成形評価法
試料ポリエステルを真空乾燥機で乾燥して水分率を100ppm以下とし、名機製作所製150C−DM型射出成形機及びプリフォーム(金型温度5℃)用金型を用いて有底プリフォーム(PF)を成形した。
M−150C−DM射出成形機による可塑化条件としては、フィードスクリュウ回転数=70%、スクリュウ回転数=120rpm、背圧0.5MPa、シリンダー温度はホッパー直下から順に45℃、250℃、及び、ノズルを含めた以降のシリンダー温度(以下、Sxとする)を290℃に設定した。また成形品重量が28.4±0.2gになるように射出圧力及び保圧を調整した。次いで、プリフォームの口栓部を、フロンテア(株)製NC−01口栓部結晶化装置で加熱結晶化させた。更に前記プリフォームをシデル社製のSBO Lab N゜1045タイプ 1Lab ブロー成形機を用いて、160℃に設定した金型内で圧力36barの空気を吹込みながら30秒の成形サイクルにて750bphで縦方法に2.5倍、周方向に3.8倍の倍率で二軸延伸ブローし、引き続き、前記金型内で3.1秒熱固定して、容量が500ccの延伸中空容器(胴部肉厚0.3mm、図1、図2、図3)を連続成形した。
前記の中空容器を示す図1(側面図)、図2(底面図)及び図3(断面図)において、この熱固定二軸延伸ポリエステル容器1は、未延伸のノズル(首部)2、円錐台状の肩部3、筒状の胴部4及び閉ざされた底部5から成っている。この胴部4の主たる部分には、相対的に径が大で且つ周長の短いピラー状凸部7と、相対的に径が小で且つ周長の長いパネル状凹部6とが短い連結部を介して周方向に交互に多数個設けられている。ピラー状凸部7は容器軸方向(高さ方向)に延びており、従ってパネル状凹部6はこのピラー状凸部7で仕切られた容器軸方向に長い角が丸められた長方形の形状を有している。
成形初期、3000本目、5000本目及び9000本目の延伸中空成形体の胴部からの試料を中心線より、横22mm×縦55mmになるように切り取り、ヘイズ測定に供した。
(7)延伸中空成形体のヘイズ(霞度%)
(6)の胴部試料を日本電色(株)製ヘイズメーター、modelNDH2000で測定した。0.3mm換算の成形前後のヘイズを求めた。
(8)成形体の結晶化度
硝酸カルシウム/水混合溶液の密度勾配管で30℃の条件下で、胴部のサンプルの密度を求めた。これにより、以下の式に従い、結晶化度を算出した。
結晶化度(X)=ρ/ρ×(ρ−ρam)/(ρ−ρam)×100
ρ:測定密度(g/cm
ρam:非晶密度(1.335g/cm
ρ:結晶密度(1.455g/cm
(9)成形体の昇温時の結晶化温度(Tc1)
セイコー電子工業株式会社製の示差熱分析計(DSC)、RDC−220で測定。上記(6)のプリフォーム口栓部からの試料4mgを使用。昇温速度20度C/分で昇温し、その途中において観察される結晶化ピークの頂点温度を測定し、昇温時結晶化温度(Tc1)とする。
(リン化合物(式A)の合成)
Irgamod295(ビーエーエスエフ社製)をエチレングリコールとともにフラスコに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温160℃で50時間加熱した後、更に、テレフタル酸ジメチルをIrgamod295に対して等モル量と、酢酸Mnを反応物の合計重量に対して800ppm仕込み、160℃で50時間加熱した。その後、ノルマルヘキサンにて、数回再沈結晶化精製後、カラム分集にて純度98%以上の下記化学式(式A−1)のリン化合物を得た。このリン化合物は、上記「リン化合物(式A)量の定量方法」での定量のための標準物質としても用いた。
(実施例1)
(1)リン化合物の調製例
リン化合物として、上記(化式2)で表されるIrgamod295(ビーエーエスエフ社製)を、エチレングリコールとともに調合タンクに仕込み、窒素置換下攪拌しながら液温175℃で2時間半加熱し、50g/lのリン化合物(化式2)のエチレングリコール溶液を調製した。同様にして、上記(式A−1)のリン化合物を、50g/lのリン化合物(式A−1)のエチレングリコール溶液を調製した。
(2)エステル化反応及び重縮合
3基の連続エステル化反応器及び3基の重縮合反応器よりなり、かつ第3エステル化反応器から第1重縮合反応器への移送ラインに高速攪拌器を有したインラインミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置に、高純度テレフタル酸1質量部に対してエチレングリコール0.75質量部を混合して調整されたスラリーを連続的に供給し、第1エステル化反応器の反応温度255℃、170kPa、第2エステル化反応器の反応温度261℃、第3エステル化反応器の反応温度266−267℃にて反応させて、低次縮合物を得た。
該低次縮合生成物を、3基の反応器よりなる連続重縮合装置に連続して移送し、初期重合反応器の反応温度268℃、中期重合反応器の反応温度270℃、0.567kPa、後期重合反応器の反応温度274℃、0.168kPaにて重縮合を行い、IVが0.554dl/gのPETを得た。このときの重縮合時間は計190分であり、温度時間積は5640℃・分となった。ポリエステル樹脂は、ストランド状に押し出し、水中で冷却した後カットし、振動型篩い器で水滴を除去した後、連続ホッパー型乾燥機に投入して140℃の乾燥窒素ガスで12時間乾燥させた。なお、製品は前バッチの影響を排除して高品位な製品を確保するため、運転開始後または条件変更後30時間以上経過したものを採取した。
インラインミキサーからは、前記方法にて二酸化ゲルマニウム溶液(0.6g/1000gエチレングリコール溶液)を、重縮合終了後の残留量が得られるポリエステル樹脂の質量に対して、ゲルマニウム原子として100ppmとなるように、リン化合物(化式2)のエチレングリコール溶液を、重縮合終了後の残留量が、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、全リン原子として45ppmとなるように、リン化合物(式A−1)のエチレングリコール溶液を、得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として2ppmとなるように添加した。
チップは切断面が短径2,5mm長径3.0mmの俵型で長さ3.3mm(いずれも10粒をノギスで測った平均値)であり、平均重量36.2mgであった。水分含有量は50ppmであった。
溶融重合で得られたポリエステルペレットを、減圧乾燥(13.3Pa以下、80℃、12時間)した後、引き続き結晶化処理(13.3Pa以下、130℃、3時間、さらに、13.3Pa以下、160℃、3時間)を行った。放冷後のこのポリエステルペレットを固相重合反応器内で、系内を13.3Pa以下、215℃に保ちながら固相重合を行い、IVが0.77dl/gのポリエステルペレットを得た。
こうして得られたPETの評価結果を表1に示す。
(実施例2〜5)
実施例1のポリエステル樹脂の合成に準じた方法で、表1に記載のポリエステル樹脂を得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
3基の連続エステル化反応器及び3基の重縮合反応器よりなり、かつ第3エステル化反応器から第1重縮合反応器への移送ラインに高速攪拌器を有したインラインミキサーが設置された連続式ポリエステル製造装置に、高純度テレフタル酸1質量部に対してエチレングリコール0.75質量部を混合して調整されたスラリーを連続的に供給し、第1エステル化反応器の反応温度255℃、170kPa、第2エステル化反応器の反応温度261℃、第3エステル化反応器の反応温度266−267℃にて反応させて、低次縮合物を得た。
該低次縮合生成物を、3基の反応器よりなる連続重縮合装置に連続して移送し、初期重合反応器の反応温度268℃、中期重合反応器の反応温度270℃、0.567kPa、後期重合反応器の反応温度274℃、0.168kPaにて重縮合を行った後、260℃に温度を落とし、リン化合物として、上記(化式2)で表されるIrgamod295(ビーエーエスエフ社製)を得られるポリエステル樹脂の質量に対して、リン原子として46ppmとなるように添加後20分間攪拌取り出しを実施した所、IVが0.554dl/gのPETを得た。このときの温度時間積は520℃・分となった。ポリエステル樹脂は、ストランド状に押し出し、水中で冷却した後カットし、振動型篩い器で水滴を除去した後、連続ホッパー型乾燥機に投入して140℃の乾燥窒素ガスで12時間乾燥させた。なお、製品は前バッチの影響を排除して高品位な製品を確保するため、運転開始後または条件変更後30時間以上経過したものを採取した。
インラインミキサーからは、前記方法にて二酸化ゲルマニウム溶液(0.6g/1000gエチレングリコール溶液)を、重縮合終了後の残留量が得られるポリエステル樹脂の質量に対して、ゲルマニウム原子として10ppmとなるようにとなるように添加した。
チップは切断面が短径2.5mm長径3.0mmの俵型で長さ3.3mm(いずれも10粒をノギスで測った平均値)であり、平均重量36.2mgであった。水分含有量は50ppmであった。
溶融重合で得られたポリエステルペレットを、減圧乾燥(13.3Pa以下、80℃、12時間)した後、引き続き結晶化処理(13.3Pa以下、130℃、3時間、さらに、13.3Pa以下、160℃、3時間)を行った。放冷後のこのポリエステルペレットを固相重合反応器内で、系内を13.3Pa以下、215℃に保ちながら固相重合を行い、IVが0.77dl/gのポリエステルペレットを得た。得たレジンを用いて、プリフォーム成形を実施してTc1は180℃であった。次に上記条件にて、二軸延伸成形ボトルによる評価を実施した。ボトル胴部の結晶化度は32%、上記(6)記載の連続ブロー成形した1本目のボトル胴部の0.3mm換算のヘイズは1.1%、3000本目は1.5%、5000本目は3.1%、9000本目は3.6%で透明性が低下した。結果を表1に示す。
本発明のポリエステル重合触媒を用いて製造されたポリエステル樹脂からなる繊維、フィルム、シート、並びに中空成形体は、特に、延伸の熱固定(ヒート・セット)時に容器表面の肌荒れの発生が少なく、結晶化速度を速め長期にわたって生産した場合でも表面光沢と透明性が低下しない利点を有しており、産業界に寄与すること大である。
1:二軸延伸ポリエステル容器
2:ノズル部
3:肩部
4:胴部
5:底部
6:パネル状凹部
7:ピラー状凸部

Claims (8)

  1. ゲルマニウム化合物、ヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および下記(式A)で表されるリン化合物を含むことを特徴とするポリエステル重合触媒。

    ((式A)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜30の炭化水素基、水酸基を有する炭素数1〜30の炭化水素基を表す。)
  2. 請求項1に記載のポリエステル重合触媒を用いて製造されたことを特徴とするポリエステル樹脂。
  3. ポリエステル樹脂中に含まれるヒンダードフェノール構造を有するリン化合物、および(式A)で表されるリン化合物を含めた全リン化合物のリン原子の量が、ポリエステル樹脂質量に対して10から200ppmであることを特徴とする請求項2に記載のポリエステル樹脂。
  4. 連続成形評価法によって、ポリエステル樹脂から得られた延伸中空成形体のヘイズ(厚み0.3mm換算)が、5000本目まで3.0%以下を維持することを特徴とする請求項2に記載のポリエステル樹脂。
  5. 請求項1に記載のポリエステル重合触媒を用いることを特徴とするポリエステル樹脂の製造方法。
  6. 請求項2または3に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする中空成形体。
  7. 請求項2または3に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とするフィルム。
  8. 請求項2または3に記載のポリエステル樹脂からなることを特徴とする繊維。
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