JP2013189658A - 機械構造部品およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上を達成することが可能な機械構造部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】機械構造部品である歯車は、金属焼結体からなる機械構造部品であって、ベース領域13と、最大引張応力または最大せん断応力が付加される位置である最大応力位置17を含み、かつ表面15を含むように形成され、ベース領域13よりも空孔率が小さい高密度領域14とを備え、表面15を含む領域には、硬化処理が施されることにより表面硬化層16が形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は機械構造部品およびその製造方法に関し、より特定的には、焼結体からなる機械構造部品およびその製造方法に関するものである。
焼結体からなる機械構造部品の製造方法の1つとして、原料金属粉末を、金型を用いてプレス成形することで目的の機械部品の形状に成形する粉末プレス成形法が挙げられる。粉末プレス成形法を用いて作製した焼結体からなる機械構造部品は、通常、相対密度(溶製材の真密度に対する焼結体の密度の割合)が85〜92%程度であり、多くの空孔が焼結体内部に残存している。焼結体中の空孔は、応力負荷時に溶製材におけるき裂のような振る舞いをする。すなわち、空孔は応力集中源となり、引張強度、圧縮強度、曲げ強度などの静的強度のほか、衝撃強度(靭性)や疲労強度をも低下させる。そのため、焼結体からなる機械構造部品は、溶製材からなるものと比較して、同じ材質であっても静的強度、靭性および疲労強度において劣るものとなりやすい。その結果、焼結体からなる機械構造部品の用途は限定されてきた。
応力集中源となる空孔を低減する、つまり焼結体の高密度化を図ることが、焼結体からなる機械構造部品の静的強度、靭性および疲労強度の向上につながる。
高密度の焼結体を得る技術として、2回成形2回焼結(2P2S)法が挙げられる(たとえば、特許文献1参照)。この方法は、一旦仮焼結した仮焼成形体を再び金型内で圧縮成形し、その後本焼結を施すことで高密度焼結体を得る方法である。また、高密度の焼結体を得る他の技術として、焼結後に後加工を施す焼結鍛造法が挙げられる(たとえば、特許文献2参照)。この方法は、焼結体を金型に入れた状態で熱間鍛造を施す方法で、より真密度に近い焼結体を得ることができる。
しかしながら、これらの方法では静的強度、靭性および疲労強度は向上する代わりに、熱履歴を加えることで残留応力の開放などに起因した形状の乱れが生じ、寸法精度が低下してしまうという問題が生じる。特に、焼結鍛造法においては、熱間鍛造を施すことによる更なる寸法精度の低下が問題となる。
これに対し、転造によって焼結体を緻密化することで曲げ強さと耐摩耗性の向上を図った技術が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。
特開平1−312056号公報 特開昭58−133301号公報 国際公開第92/05897号
しかしながら、焼結体からなる機械構造部品の適用範囲を広げるためには、寸法精度の低下を抑制しつつ、さらなる静的強度、靭性および疲労強度の向上が求められる。
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上を達成することが可能な機械構造部品およびその製造方法を提供することである。
本発明に従った機械構造部品は、金属焼結体からなる機械構造部品である。この機械構造部品は、ベース領域と、最大引張応力または最大せん断応力が付加される位置である最大応力位置を含み、かつ表面を含むように形成され、ベース領域よりも空孔率が小さい高密度領域とを備えている。そして上記表面を含む領域には、硬化処理が施されることにより表面硬化層が形成されている。
本発明の機械構造部品においては、最大応力位置を含む表面付近の空孔が低減されているため、応力負荷時における応力集中源が減少している。そのため、焼結体である機械構造部品内での亀裂の発生および進展が鈍化して、静的強度、靭性および疲労強度が向上する。また、本発明の機械構造部品においては、最大応力位置を含む表面付近に限定してベース領域よりも空孔率が小さい高密度領域が形成されており、機械構造部品全体を高密度化する必要がない。そのため、機械構造部品全体を高密度化する上記2P2S法や焼結後に熱間鍛造を施す方法を採用する必要がないため、高い寸法精度を確保することが可能となる。また、上記表面を含む領域には、表面硬化層が形成されているため、当該表面の静的強度および疲労強度がさらに向上している。このように、本発明の機械構造部品によれば、寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上を達成することが可能な機械構造部品を提供することができる。
なお、空孔率は、たとえば以下のように測定することができる。まず、機械構造部品を上記表面に垂直な断面において切断する。次に、切断面を研磨し、研磨された切断面を光学顕微鏡で観察し、画像データ(あるいは写真)を取得する。取得した画像データ(あるいは写真)を二値化処理し、たとえば空孔部が黒色、空孔部以外の領域が白色となるようにする。そして、黒色の領域の割合(面積率)を空孔率として算出する。また、上記最大応力位置とは、機械構造部品が正常に使用される際に、破損の直接的原因となる最大引張応力または最大せん断応力が負荷される位置を意味するものであって、たとえば歯車やスプロケットの歯元、転がり接触部材(カムなど)の接触表面下の最大せん断応力領域などを意味する。さらに、高密度領域に含まれる上記表面は、最大応力位置である表面領域または最大応力位置に最も近い表面領域を含んでいることが好ましい。
上記機械構造部品においては、上記表面に垂直な断面において、表面硬化層の厚みは高密度領域の厚みよりも小さくなっていてもよい。これにより、上記表面において発生した亀裂が表面硬化層を貫通した場合でも、空孔が少なく高靭性である高密度領域において亀裂の進展が鈍化する。その結果、機械構造部品の靭性および疲労強度を一層向上させることができる。
上記機械構造部品においては、上記硬化処理は浸炭焼入処理であってもよい。比較的容易に実施可能な浸炭焼入処理は、上記表面硬化層の形成に好適である。
上記機械構造部品においては、上記表面に垂直な断面において、高密度領域の厚みは100μm以上となっていてもよい。厚み100μm以上の高密度領域を形成することにより、静的強度、靭性および疲労強度をより確実に向上させることができる。
上記機械構造部品においては、上記表面に垂直な断面において、高密度領域の厚みは700μm以下となっていてもよい。700μmを超える厚みの高密度領域を形成した場合、亀裂敏感性が高くなり、疲労強度が低下するおそれがある。高密度領域の厚みを700μm以下とすることにより、このような問題の発生を抑制することができる。
上記機械構造部品においては、高密度領域の空孔率は2%未満であってもよい。これにより、静的強度、靭性および疲労強度をより確実に向上させることができる。
上記機械構造部品においては、ベース領域の空孔率は2%以上15%以下であってもよい。ベース領域の空孔率を2%以上とすることにより、上記2P2S法や焼結後に熱間鍛造を実施する方法を用いることなく、容易にベース領域を形成することができる。一方、ベース領域の空孔率を15%以下とすることにより、ベース領域に必要な強度を容易に確保することができる。
上記機械構造部品においては、上記表面の硬度はHRA75以上であってもよい。これにより、上記表面に高い強度を付与することが可能となる。
上記機械構造部品においては、冷間加工が実施されることにより上記高密度領域が形成されていてもよい。これにより、熱を加えることなく高密度領域を形成できるため、寸法精度の低下を抑制することができる。
上記機械構造部品においては、上記冷間加工は、冷間圧延加工であってもよい。冷間圧延加工は、上記高密度領域の形成に好適である。
上記機械構造部品においては、上記金属焼結体は鉄が主成分であってもよい。また、上記金属焼結体は、80質量%以上の鉄を含有するものであってもよい。このように鉄を主成分とする金属焼結体は、本発明の機械構造部品の材料として好適である。
上記機械構造部品は、動力伝達部品として用いられてもよい。寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上が達成された本発明の機械構造部品は、高い寸法精度および耐久性が求められる動力伝達部品に用いることができる。
上記機械構造部品においては、上記金属焼結体からなる試験片を作製してリング圧縮疲労試験を実施した場合、疲労強度が300MPa以上となることが好ましい。このように、高い疲労強度を有する金属焼結体は、本発明の機械構造部品の材料として好適である。なお、上記疲労強度は、後述の実施例に記載の方法により調査することができる。
本発明に従った機械構造部品の製造方法は、金属からなる原料粉末を準備する工程と、原料粉末を焼結することにより金属焼結体を作製する工程と、最大引張応力または最大せん断応力が付加される位置である最大応力位置を含み、かつ表面を含むように、他の領域よりも空孔率が小さい高密度領域を形成する工程と、上記表面を含む領域に、硬化処理を施すことにより表面硬化層を形成する工程とを備えている。これにより、上記本発明の機械構造部品を製造することができる。
上記機械構造部品の製造方法においては、高密度領域を形成する工程では、上記表面に対して冷間加工が実施されることにより高密度領域が形成されてもよい。これにより、寸法精度を維持しつつ高密度領域を容易に形成することができる。
上記機械構造部品の製造方法においては、金属焼結体を作製する工程では、相対密度が93%以上である金属焼結体が作製されてもよい。また、上記機械構造部品の製造方法においては、金属焼結体を作製する工程では、平均空孔径が100μm以下である金属焼結体が作製されてもよい。このようにすることにより、たとえば高密度領域が冷間加工にて形成される場合、少ない加工代で十分な緻密性を有する高密度領域を得ることができる。
上記機械構造部品の製造方法においては、原料粉末を準備する工程では、D50において100μm以下の粒度の原料粉末が準備されてもよい。このようにすることにより、金属焼結体の空孔を抑制することができる。一方、原料粉末を準備する工程では、D50において5μm以上の粒度の原料粉末が準備されてもよい。原料粉末の粒径が細かくなりすぎると、粉末同士や粉末と金型との間における摩擦が大きくなって成形性が悪化する。その結果、作製される圧粉体の密度がかえって低下し、金属焼結体の空孔が多くなるおそれがある。D50において5μm以上の粒度の原料粉末を採用することにより、このような成形性の悪化を抑制することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の機械構造部品およびその製造方法によれば、寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上を達成することが可能な機械構造部品およびその製造方法を提供することができる。
歯車の構造を示す概略図である。 歯車の歯の内部構造を示す概略部分断面図である。 歯車の歯元付近に存在する空孔を示す概略部分断面図である。 カムの構造を示す概略図である。 カムの内部構造を示す概略部分断面図である。 機械構造部品の製造方法の概略を示すフローチャートである。 試験片の断面写真である。 試験片の断面写真である。 試験片の断面写真である。 高密度領域の厚みとリング圧縮疲労強度との関係を示す図である。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
まず、歯車を例として、本発明の機械構造部品の一実施の形態について説明する。図1を参照して、動力伝達部品である歯車1は、円盤状の形状を有する本体部11と、本体部11から径方向に突出する複数の歯12とを備えている。歯車1は、金属焼結体からなっている。この金属焼結体は、鉄が主成分であってもよく、より具体的には80質量%以上の鉄を含有するものであってもよい。図2を参照して、歯車1が正常に使用される状態においては、歯元部分に破損の直接的な原因となり得る最大引張応力が付加される。すなわち、歯車1においては、歯元表面が最大応力位置17である。この歯車1は、ベース領域13と、最大応力位置17を含み、かつ表面15を含むように形成され、ベース領域13よりも空孔率が小さい高密度領域14とを備えている。より具体的には、高密度領域14は、歯12の歯元を含むように形成されている。そして、表面15を含む領域には、表面硬化層16が形成されている。この表面硬化層16は、たとえば浸炭焼入処理により形成された浸炭層である。
本実施の形態における歯車1においては、高密度領域14が形成されることにより最大応力位置17を含む表面15付近の空孔が低減されているため、応力負荷時における応力集中源が減少している。より具体的には、本実施の形態では、表面からの亀裂の発生および進展により破損の発生し易い歯元付近に高密度領域14が形成されて応力集中源である空孔が低減されている。そのため、焼結体である歯車1内での亀裂の進展が鈍化し、静的強度、靭性および疲労強度が向上している。また、歯車1においては、歯車1全体を高密度化するのではなく、最大応力位置17を含む表面15付近に限定して高密度領域14が形成されている。そのため、高密度領域14の形成に熱間鍛造などを用いることなく、たとえば冷間圧延などの冷間加工を用いて高密度領域14を形成することができる。そのため、歯車1の高い寸法精度を達成することができる。また、表面15を含む領域には、表面硬化層16が形成されているため、表面15の静的強度および疲労強度がさらに向上している。このように、本実施の形態における歯車1は、寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上が達成された機械構造部品となっている。
また、歯車1においては、図2に示すように、表面15に垂直な断面において、表面硬化層16の厚みは高密度領域14の厚みよりも小さくなっていることが好ましい。これにより、表面15において発生した亀裂が表面硬化層16を貫通した場合でも、空孔が少なく高靭性である高密度領域において亀裂の進展が鈍化する。その結果、歯車1の靭性および疲労強度を一層向上させることができる。なお、高密度領域14の厚みとは、高密度領域14において表面と表面から最も遠い領域との距離をいう。また、高密度領域14の厚みは、たとえばベース領域13に対して空孔率が10%以上低減されている領域の厚みとすることができる。
さらに、歯車1においては、表面15に垂直な断面において、高密度領域14の厚みは100μm以上であることが好ましい。これにより、静的強度、靭性および疲労強度をより確実に向上させることができる。一方、上記高密度領域14の厚みは700μm以下であることが好ましく、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがさらに好ましい。これにより、亀裂敏感性が高くなることを抑制し、高い疲労強度を確保することができる。
また、歯車1においては、高密度領域14の空孔率は2%未満であることが好ましい。これにより、静的強度、靭性および疲労強度をより確実に向上させることができる。一方、ベース領域13の空孔率は2%以上15%以下とすることができる。
さらに、歯車1においては、表面15の硬度はHRA75以上であることが好ましい。これにより、表面15に高い強度を付与することができる。
また、歯車1においては、冷間圧延加工などの冷間加工が実施されることにより上記高密度領域14が形成されることが好ましい。これにより、熱を加えることなく高密度領域14を形成できるため、寸法精度の低下を抑制することができる。
さらに、歯車1においては、歯車1を構成する金属焼結体からなる試験片を作製してリング圧縮疲労試験を実施した場合、疲労強度が300MPa以上となることが好ましい。これにより、歯車1の高い疲労強度を確保することができる。
また、図3を参照して、高密度領域14内においては、空孔19が歯車1の外周に沿って伸びる扁平形状を有していることが好ましい。より具体的には、Hoferの30°接線法における最大曲げ応力が作用する危険断面と呼ばれる部分に当たる歯元表面下に存在する空孔19を、危険断面に対して空孔19の長手方向が垂直になるように配向させることが好ましい。これにより、亀裂の進展方向における空孔19の幅が小さくなり、空孔19の亀裂進展促進効果が抑制されるため、疲労強度が向上する。
次に、本発明の他の実施の形態として、動力伝達部品であるカムに対して本願発明を適用した場合について説明する。この実施の形態におけるカムは、ベース領域、高密度領域、表面硬化層の構成において、上記歯車と基本的には同様の構成を有し、同様の効果を奏する。図4を参照して、本実施の形態におけるカム2は、金属焼結体からなっている。そして、カム2には、外周面に形成され、エンジン内において他の部品であるロッカーアームやプッシュロッドなどに接触する接触面25と、カム軸が挿入される貫通孔21とが形成されている。カム2が正常に使用される状態においては、接触面25下に破損の直接的な原因となり得る最大せん断応力が作用する領域が形成される。すなわち、当該最大せん断応力領域がカム2における最大応力位置27である。
図5を参照して、カム2は、ベース領域23と、最大応力位置27を含み、かつ接触面25を含むように形成され、ベース領域23よりも空孔率が小さい高密度領域とを備えている。より具体的には、高密度領域24は、外周面である接触面25の全域を含むように形成されている。そして、接触面25を含む領域には、硬化処理が施されることにより表面硬化層26が形成されている。また、本実施の形態においては、接触面25に垂直な断面において、表面硬化層26の厚みは高密度領域24の厚みよりも小さくなっている。
次に、上記歯車1およびカム2の製造方法の一例について説明する。図6を参照して、本実施の形態における機械構造部品の製造方法では、工程(S10)として原料粉末準備工程が実施される。この工程(S10)では、焼結体の原料粉末である金属粉末として、たとえばJIS Z 2550におけるP1064〜1084やP3074〜3106などの鉄系粉末が準備される。また、準備される金属粉末の粒度は、D50において5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下とすることができる。
次に、工程(S20)では、工程(S10)において準備された原料粉末が金型に充填されて成形される。これにより、所望の機械部品の形状に対応する形状を有する成形体が作製される。このとき、必要に応じて原料粉末に潤滑剤や焼結助剤を添加することができる。
次に、工程(S30)として焼結工程が実施される。この工程(S30)では、工程(S20)において作製された成形体が、たとえばアルゴンなどの不活性ガス雰囲気中において加熱されることにより、焼結される。これにより、歯車、カムなど所望の機械構造部品の概略形状を有する焼結体が得られる。このとき、相対密度が93%以上である金属焼結体が作製されることが好ましい。また、作製される金属焼結体は、平均空孔径が100μm以下であることが好ましい。
次に、工程(S40)として冷間塑性加工工程が実施される。この工程(S40)では、工程(S30)において得られた焼結体の所望の部位に対して冷間圧延加工などの冷間塑性加工が施される。具体的には、たとえば歯車の歯元付近やカムの接触面に対して冷間圧延が施されることにより、最大応力位置を含み、かつ表面を含むように、他の領域よりも空孔率が小さい高密度領域が形成される。
次に、工程(S50)として硬化処理工程が実施される。この工程(S50)では、工程(S40)において高密度領域が形成された焼結体の上記表面を含む領域に、たとえば浸炭焼入処理などの硬化処理を施すことにより表面硬化層を形成する。このとき、表面硬化層の厚みは、高密度領域の厚みよりも小さく形成されることが好ましい。
次に、工程(S60)として、仕上げ工程が実施される。この工程では、必要に応じて所望の領域に研磨などの仕上げ加工が実施される。以上の手順により、本実施の形態における機械構造部品の製造方法は完了し、上記歯車1、カム2などの機械構造部品が完成する。
本発明の機械構造部品の優位性を確認する実験を行なった。実験の手順は以下のとおりである。まず、以下の表1に示す3種類の金属粉末を原料粉末として準備し、表1の条件で成形、焼結を行なった。得られた焼結体に、表2に示す加工代で冷間圧延加工を施した後、当該焼結体を浸炭雰囲気中において870℃に加熱し30分間保持することにより、厚み120μmの浸炭層を表面に形成した。その後、焼入硬化した上で、150℃に加熱し90分間保持することにより、焼戻処理を行なった。以上の手順により、外径φ24mm×内径φ18mm×高さ7mm(肉厚3mm)のリング状試験片を作製した。また、上記冷間圧延加工は、試験片の内周面に対して施した(実施例1〜6)。また、比較のため、同様の手順において冷間圧延加工を省略した試験片も作製した(比較例1〜3)。
上記手順で得られた試験片に対してロックウェル硬度計による表面硬度測定、およびリング圧縮疲労試験を実施した。疲労試験の条件は応力比0.1、周波数20Hzとした。表面硬度測定および疲労試験の結果を表2に示す。また、実施例1、実施例3および比較例1の試験片の断面観察写真を、それぞれ図7、8および9に示す。さらに、疲労試験の結果から得られた高密度領域の厚みとリング圧縮疲労強度との関係を図10に示す。なお、疲労強度はJIS Z 2273に基づいて測定した。また、得られた疲労強度を、同一材料からなる比較例の試験片の疲労強度と比較し、向上の割合が10%以上20%未満のものをC、20%以上30%未満のものをB、30%以上のものをAと評価した。
図7〜図9を参照して、冷間圧延加工を施された図7および図8の試験片には、加工面31を含む領域に空孔39の存在数が著しく少ない高密度領域34が形成されていることが分かる。一方、加工が実施されなかった未加工面32側には、表面付近にまで空孔39が存在していることが確認される。
そして、表2を参照して、本発明の実施例に対応する実施例1〜6は、いずれも対応する比較例に比べて表面硬度が上昇するとともに、疲労強度が10%以上向上している。特に、実施例2においては、対応する比較例1の疲労強度が300MPaであったのに対し、疲労強度が450MPaとなり、向上率が50%という極めて顕著な効果が確認された。以上の実験結果から、本発明の機械構造部品によれば、高い疲労強度を有する機械構造部品を提供できることが確認された。
また、図10を参照して、高密度領域の厚みが大きくなりすぎると、かえって疲労強度が低下することが分かる。このことから、高密度領域の厚みは700μm以下程度にすることが好ましいといえる。
なお、上記実施の形態においては、本発明の機械構造部品の一例として歯車およびカムについて説明したが、本発明の範囲はこれに限られず、たとえばシャフトやスプロケットなどにも本発明を適用することができる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の機械構造部品およびその製造方法は、寸法精度の低下を抑制しつつ、静的強度、靭性および疲労強度の向上を達成することが求められる機械構造部品およびその製造方法に、特に有利に適用され得る。
1 歯車、2 カム、11 本体部、12 歯、13 ベース領域、14 高密度領域、15 表面、16 表面硬化層、17 最大応力位置、19 空孔、21 貫通孔、23 ベース領域、24 高密度領域、25 接触面、26 表面硬化層、27 最大応力位置、31 加工面、32 未加工面、34 高密度領域、39 空孔。

Claims (8)

  1. 金属焼結体からなる機械構造部品であって、
    ベース領域と、
    最大引張応力または最大せん断応力が付加される位置である最大応力位置を含み、かつ表面を含むように形成され、前記ベース領域よりも空孔率が小さい高密度領域とを備え、
    前記表面を含む領域には、硬化処理が施されることにより表面硬化層が形成されている、機械構造部品。
  2. 前記表面に垂直な断面において、前記表面硬化層の厚みは前記高密度領域の厚みよりも小さい、請求項1に記載の機械構造部品。
  3. 前記表面に垂直な断面において、前記高密度領域の厚みは700μm以下となっている、請求項1または2に記載の機械構造部品。
  4. 前記高密度領域の空孔率は2%未満である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の機械構造部品。
  5. 前記表面の硬度はHRA75以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の機械構造部品。
  6. 冷間加工が実施されることにより前記高密度領域が形成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の機械構造部品。
  7. 金属からなる原料粉末を準備する工程と、
    前記原料粉末を焼結することにより金属焼結体を作製する工程と、
    最大引張応力または最大せん断応力が付加される位置である最大応力位置を含み、かつ表面を含むように、他の領域よりも空孔率が小さい高密度領域を形成する工程と、
    前記表面を含む領域に、硬化処理を施すことにより表面硬化層を形成する工程とを備えた、機械構造部品の製造方法。
  8. 前記高密度領域を形成する工程では、前記表面に対して冷間加工が実施されることにより前記高密度領域が形成される、請求項7に記載の機械構造部品の製造方法。
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