JP2013189543A - 磁気冷凍材料、蓄冷材料及びそれを用いた冷凍システム - Google Patents
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Abstract
【課題】2〜25K近傍で有効な新たな磁気冷凍材料及び蓄冷材料を提供する。また、液体ヘリウムを使わずに2K程度の温度を生成する冷凍システムを提供する。
【解決手段】磁気冷凍材料としてErCr2Si2またはErMn2Si2を使用する。また、該磁気冷凍材料を使った磁気冷凍システムとクライオポンプを組み合わせることで、液体のヘリウムは使わずに2K程度の温度を生成することができる。
【選択図】図4
【解決手段】磁気冷凍材料としてErCr2Si2またはErMn2Si2を使用する。また、該磁気冷凍材料を使った磁気冷凍システムとクライオポンプを組み合わせることで、液体のヘリウムは使わずに2K程度の温度を生成することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、磁気冷凍及び蓄冷に用いる磁性材料並びに冷凍システムに関する。
極低温は、現在、様々な分野に使われている。
例えば、超伝導電磁石を利用する、磁気共鳴画像装置(Magnetic Resonance Imaging system:MRI)や磁気浮上式高速鉄道輸送では、超伝導状態を保つため絶対温度4K程度に超伝導電磁石を冷却している。
例えば、超伝導電磁石を利用する、磁気共鳴画像装置(Magnetic Resonance Imaging system:MRI)や磁気浮上式高速鉄道輸送では、超伝導状態を保つため絶対温度4K程度に超伝導電磁石を冷却している。
また、次世代の燃料として有望な水素は、液化して体積を小さくして運搬効率を上げる必要があり、液体水素の貯蔵容器を20K程度の温度に保つことが安全性を高める上で重要である。
極低温を生成する方法として、沸点が4.2Kの液体へリウムを寒剤として利用する方法がよく使われる。液体ヘリウムは、現在、超伝導電磁石を利用する様々な分野で使われている。しかし、世界的なヘリウム需要の高まりと共にヘリウム価格は高騰している。
別の極低温生成方法として、クライオポンプを利用したクライオクーラーがある。クライオクーラーは気体ヘリウムなどを利用して、容易に10K程度の温度を生成することができる。クライオクーラーでヘリウムを使う場合は、気体ヘリウムであるため、液体ヘリウムを使う方法よりも量が少なくて済む。
さらに別の極低温生成方法として磁気冷凍システムがあり、エネルギー効率が高く環境負荷が低いため注目されている。
磁気冷凍システムは、磁気熱量効果を利用した冷凍システムである。磁性体は磁場が無い状態では、磁気モーメントが様々な方向を向いており、磁気エントロピーが大きい常磁性状態である。磁性体を一定温度に保ったまま磁場をかけると、磁気モーメントが揃った磁化された状態、すなわち磁気エントロピーが小さな状態に変化する(等温磁気エントロピー変化)。磁性体が磁化された状態で磁場を取り去ると、磁気モーメントは再び様々な方向を向き、磁気エントロピーが大きくなる。このとき、磁場の変化を外部との熱のやりとりをしない断熱状態で行うと、磁気エントロピーの上昇を補うために周りから熱を奪い温度が下がる(断熱温度変化)。磁場の変化による磁性体の磁気エントロピー変化及び温度変化を磁気熱量効果呼び、磁気冷凍システムはこの磁気熱量効果を利用して低温を生成する。
磁気冷凍システムでは磁場が大きいほど大きな温度変化を得ることができるが、印加する磁場が2Tより大きい場合は、一般に、超伝導電磁石が必要になり、超伝導磁石を使用するには液体ヘリウムが必要となる。
磁気冷凍に使用する磁性体は、低磁場で大きな磁気熱量効果を示すことに加えて、温度ヒステリシス及び磁場ヒステリシスが小さいことが望ましい。
現在研究が進められている磁気冷凍材料には様々な物がある。Gd5(Si2Ge2)、La(Fe1-xSix)13Hy、MnAsなどを母材とした材料は、室温近傍で磁気熱量効果が大きい物質である。非特許文献1及び3から5に記載のGdCo2B2、DySb、ErCo2は、温度40K以下の極低温で大きな磁気熱量効果を示すことが知られている。また、20K以下に好適な磁気冷凍材料としては,例えば特許文献1があり,MNから選択される1種以上の元素からなることを特徴とする希土類窒化物を利用している。
現在研究が進められている磁気冷凍材料には様々な物がある。Gd5(Si2Ge2)、La(Fe1-xSix)13Hy、MnAsなどを母材とした材料は、室温近傍で磁気熱量効果が大きい物質である。非特許文献1及び3から5に記載のGdCo2B2、DySb、ErCo2は、温度40K以下の極低温で大きな磁気熱量効果を示すことが知られている。また、20K以下に好適な磁気冷凍材料としては,例えば特許文献1があり,MNから選択される1種以上の元素からなることを特徴とする希土類窒化物を利用している。
ところで、非特許文献2にはErCr2Si2とErMn2Si2について外部磁場がない場合の比熱を測定したデータが開示されている。それによると、ErCr2Si2とErMn2Si2の比熱は外部磁場がない場合、大きな温度変化を示す。しかし、その転移温度は非常に低く、ErCr2Si2が1.9K、ErMn2Si2が4.6Kである。
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SaensunonB, Nishimura K and Stewart G A 2007 Proceedings of the 31st Annual CondensedMatter and Materials Meeting, Wagga Wagga, Australia
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本発明が解決しようとする課題は、磁気冷凍システムに使用し、2〜25Kの温度を生成する磁気冷凍材料を提供すること、さらに、液体ヘリウムを使わずに2〜25Kを生成する冷凍システムを提供することである。
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、三元金属間化合物ErCr2Si2及びErMn2Si2が、低磁場において温度ヒステリシス及び磁場ヒステリシス無しに大きな磁気エントロピー変化を示すことを見いだし、本物質を磁気冷凍システムの磁性材料として利用することを考えついた。
また、三元金属間化合物ErCr2Si2及びErMn2Si2が極低温で磁場を受けてもなお比熱が大きいことから、蓄冷材に利用することもできる。
さらに、本発明の磁性材料は、2T程度の小さな磁場でも大きな磁気熱量効果を持つため、超伝導電磁石を用いずに十分な磁気冷凍効果を発揮することができる。すなわち、磁性材料にErCr2Si2及びErMn2Si2を利用した磁気冷凍装置を、クライオクーラーと組み合わせると、液体ヘリウムを使わずに2〜25Kという極低温を生成できる。
つまり、三元金属間化合物ErCr2Si2及びErMn2Si2は2〜25Kに適用範囲を持つ磁気冷凍システムの磁性材料に好適である。また、液体ヘリウムを使わずに10K程度を生成できる冷凍システムを一段目の冷凍機として利用し、二段目の冷凍機として三元金属間化合物ErCr2Si2及びErMn2Si2を利用した磁気冷凍装置を使うことによって、液体ヘリウムを使用せずに2〜25K程度の極低温を生成できる。
本発明の磁気冷凍材料ErCr2Si2および/またはErMn2Si2は、所定の成分配合になるように原料を溶解し素形材を得る。具体的には、希土類金属エルビウム(Er)と、3d遷移金属クロム(Cr)もしくは3d遷移金属マンガン(Mn)と、ケイ素(Si)を原料としてアルゴンガス雰囲気中にてアーク炉で溶解することにより得ることができる。得られた物質は、X線粉末回折装置により回折パターンを測定し、ThCr2Si2型の体心正方晶の結晶構造を有していることを確認することが望ましい。
磁気熱量効果の大きさは、等温磁気エントロピー変化量ΔSMや断熱温度変化量ΔTadで表す。ΔSMは、近似的には、等温磁化曲線から次式のマクスウェル関係式を用いて計算する。
ΔSMは、モル比熱の温度変化を、外部磁場を変えてそれぞれ測定し、次の熱力学公式に当てはめて算出することもできる。
ΔSMの算出は、モル比熱の温度及び磁場依存を測定して数2を利用する方がより正確であるが、実験が難しい。磁化を測定して数1を利用する方法は、実験は簡易であるが、モル比熱を数2に当てはめて算出する方法に比べて一般にΔSMの値が大きくなり、その誤差は、外部磁場が小さいほど大きくなる。
ΔTadは測定したモル比熱の磁場依存C(T,H)を使って算出する。すなわち、磁場を印加した状態で比熱を測定してC(T,H)を求め、その実験値を温度で積分することでゼロ磁場及びそれぞれの磁場でのエントロピーを求める。求めた各磁場でのエントロピーをエントロピー−温度グラフとして曲線に描く。このとき、外部磁場H1のエントロピー曲線とエントロピー一定の値Sを表す水平線を引いた時の交点の温度をT(S)H1とする。同様にしてゼロ磁場の場合のエントロピー曲線とエントロピー値Sを表す水平線との交点から温度T(S)H0を定める。これらの値を次の熱力学公式に当てはめてΔTadを算出する。
本発明の磁気冷凍材料2種を粉末状にし、混ぜてから圧力をかけ、固めて使用することもできる。また、他の磁気冷凍材料に混ぜて使用することもできる。
本発明の別の側面である蓄冷材料は、ErCr2Si2および/またはErMn2Si2が25K以下でもなお大きな比熱を持っていることを利用している。そのため、この材料を、例えば液体ヘリウムを使うシステムの蓄冷材として使うことができる。
クライオポンプと、本発明の磁気冷凍材料を用いた磁気冷凍装置を組み合わせた冷凍システムについて図10を用いて説明する。
本冷凍システムは、クライオポンプを備えた真空容器11内部に磁性体容器と励磁消磁機構を設けたものである。
磁性体容器は、少なくとも1つの端面に磁性部材31を、少なくとも1つの端面に断熱材33を有している。該磁性体容器は、断熱材33を介してクライオポンプステージ23に接している。また、前記磁性部材31には、磁気冷凍材料を使用する。
励磁消磁機構は、前記磁性体容器に磁場を印加または除去するために設けられ、永久磁石41と機械的熱スイッチ42を備えており、真空容器内を移動することができるように作成する。例えば、図10の例では、移動は可動棒44で行う。
試料は、励磁冷却プロセスの後に断熱冷却プロセスを行って冷却する。図10(a)は、励磁冷却プロセスの際の概念図である。まず、磁性体容器の内部空間32に試料を入れ、真空容器11内部に納める。粗引用ポンプ13でクライオポンプが起動できる程度に真空容器11内部を粗引きする。クライオポンプが起動できるようになったら、可動棒44を動かすことにより、磁性部材31に永久磁石41による磁場が印加されるように励磁消磁装置の位置を調整する。このとき、励磁消磁装置の熱スイッチ42が磁性部材31及びクライオポンプステージ23に接するようにする。磁場が印加したことによって磁性部材31が発熱するので、熱スイッチ42によりクライオポンプを起動する。クライオポンプにヘリウム、水素等の10〜20K程度の温度では凝縮しない蒸気圧の高い気体を用いると、冷却が進み、クライオポンプステージ23が10K程度まで冷却される。
励磁冷却プロセスによる試料の冷却が止まったら、次に断熱冷却プロセスを行う。図10(b)のように、可動棒44を動かすことによって、励磁消磁機構の位置を移動させる。このとき、永久磁石41から磁性部材31に印加される磁場ができるだけ小さくなるように励磁消磁機構と磁性体容器の位置を離す。この操作により、磁気冷却効果が起き、断熱材33により磁性容器がクライオポンプステージから熱的に絶縁されているため、さらに試料が冷却される。
本磁気冷凍システムは、超伝導電磁石を用いないため、液体のヘリウムは必要ない。従って、磁性部材31にErCr2Si2および/またはErMn2Si2を、永久磁石41に2T程度の強力な永久磁石を用いることで、液体ヘリウムを用いずに2〜25K程度の極低温を生成することができる。低温で2Tを示すことのできる永久磁石として、例えばネオジム系希土類永久磁石が挙げられる。
以下に実施例で本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
質の高いErCr2Si2の多結晶を得るため、原料のEr、Cr、Siを、タングステン電極を用いてアルゴン雰囲気においてアーク炉で溶解する。化学当量に相当する高純度のEr、Cr、Siを、均質にするため水冷式銅炉で6回溶解した。得られた物質を、真空石英管内部において1073Kで7日間、アニールした。できあがった試料を理学電気製RINT 2200X線粉末回折装置により回折パターンを測定し、単相のThCr2Si2型体心正方晶の結晶構造を有していることを確認した。格子間距離はa軸が3.887Å、c軸が10.615Åだった。比熱を測定するために、サンプルを1ミリメートル角の立方体形に成形した。
磁化の測定にはカンタム・デザイン製MPMS−7 超伝導量子干渉計(superconducting quantum interference device:SQUID)を用いた。比熱は、カンタム・デザイン製PPMS−9物理特性測定装置(physical properties mesurement system)を用いて熱緩和法により測定した。
図1(a)は、外部磁場が0.1Tの時のErCr2Si2の磁化率の逆数の温度依存性を示す図である。図によると高い温度領域では、キュリー・ワイス則に従っていることが分かる。有効磁気モーメントは、9.7μB/f.u.と見積もられ、この値はEr3+の自由イオンモーメント9.58μBに近い。図1(a)の差し込み図は、ゼロ磁場で冷却した後に磁場を印加した場合(zero field cooling:ZFC)と磁場中で冷却した場合(field cooling:FC)のErCr2Si2の磁化の温度依存性である。磁場は0.1T印加し、温度は2Kから25Kまでである。ZFCの場合とFCの場合とで違いは観察されず、これは温度ヒステリシスがないことを示している。図1(b)は、温度2KにおけるErCr2Si2の磁気ヒステリシス曲線で、差し込み図は低磁場領域の拡大図である。磁化は低磁場で急速に増加し、2T以下で飽和する。また、磁化の磁場依存性は、磁場を上げていった場合と下げていった場合でほぼ違いが無く、磁場ヒステリシスが無いことが分かる。
図2(a)は、磁場を増加させながら測定した場合のErCr2Si2の磁化の磁場依存性を示した図である。磁化の磁場依存性の振る舞いは、温度が違うと急激に変わり、これは大きな可逆の磁気熱量効果を表している。図2(b)は磁化(M)−磁場(H)等温線をH/M−M2に変換したグラフである。このプロットをアロット・プロットという。Banerjee基準によると、アロット・プロットが全区間に亘って正の傾きの場合は磁気相転移が二次である。図2(b)によればErCr2Si2のアロット・プロットは正であるので、ErCr2Si2においては二次磁気相転移が起きていることが分かる。
図3は、外部磁場が0T、2T、3T、4T、5Tの場合のErCr2Si2のモル比熱の温度依存性を表す図である。ゼロ磁場における温度0.5Kから2Kまでの熱容量は、カンタム・デザイン製PPMS−9のHe3オプションで測定した。熱容量のピークを示す位置はゼロ磁場では1.9Kだが,外部磁場をかけることによりピーク位置は急速に高い温度へとシフトする。外部磁場が高くなるに伴い、熱容量のピークを示す温度は高くなり、グラフの山の形は幅が広くなり、ピークは低くなる。これは、二次磁気相転移を起こす物質に典型的な振る舞いである。
図4(a)と図4(b)は外部磁場をさまざまな値からゼロに変化させた場合のErCr2Si2の等温磁気エントロピー変化量−ΔSM及び断熱温度変化ΔTadの温度依存性を示した図である−ΔSMは数2を使って算出した。等温磁気エントロピー変化量の最大値−ΔSM maxは外部磁場が2Tからゼロに変化する場合は24.1J/kg・K、3Tから変化する場合は27.2J/kg・K、4Tから変化する場合は28.8J/kg・K、5Tから変化する場合は29.7J/kg・Kで、ヘリウムの沸点4.5K近傍で最大値を取る。ΔTadはエントロピー曲線を用い、数3の関係式で算出した。−ΔSM maxに対応する断熱温度変化量の最大値ΔTad maxは、外部磁場が2Tからゼロに変化する場合は8.4K、3Tから変化する場合は12.3K、4Tから変化する場合は15.2K、5Tから変化する場合は17.4Kである。
図4(b)から、ErCr2Si2を磁気冷凍材料に用いた場合、初期温度を13Kにしたうえで、磁場を2Tから0Tに断熱変化させると、温度は8.5K下がる。つまり、断熱状態で磁場を2Tからゼロに消磁すると、温度は4.5Kとなる。また、初期温度を8Kにして、磁場を2Tから0Tに断熱変化させると、温度の変化量は6Kであるから最終的に温度は2Kとなる。
ErMn2Si2の多結晶試料は、原料のEr、Mn、Siを、アルゴン雰囲気においてアーク炉で溶解することで生成した。化学当量に相当する高純度のEr、Mn、Siを、均質にするため水冷式銅炉で4回溶解した。各回の融解作業の際、Mnが原因で重さが減る。これはMnの融点での蒸気圧が相対的に高いためである。そこで、アーク溶解前後の仕込み量の変化を計量し、減少量が1%を越えていた場合は減少した重さ分のMnを追加してから溶解した。得られた物質を、真空石英管内部において1073Kで7日間、アニールした。できあがった試料を理学電気製RINT 2200X線粉末回折装置により回折パターンを測定し、単相のThCr2Si2型体心正方晶の結晶構造を有していることを確認した。格子間距離はa軸が3.896Å、c軸が10.415Åだった。比熱を測定するために、サンプルを1ミリメートル角の立方体形に成形した。
磁化の測定にはカンタム・デザイン製MPMS−7 SQUIDを用いた。比熱は、カンタム・デザイン製PPMS−9を用いて熱緩和法により測定した。
図5は、外部磁場が1Tの時のErMn2Si2の磁化率の逆数の温度依存性を示す図である。図5の差し込み図に示した、dM/dTの温度依存性のグラフの傾きが最小になる温度がキュリー温度Tc〜6.5Kである。磁化率の逆数の温度依存性からキュリー温度で常磁性体から反強磁性体に転移していることが分かる。有効磁気モーメントは、12.5μB/f.u.と見積もられ、この値はEr3+の自由イオンモーメント9.58μBよりも明らかに大きい。図1の差し込み図には、温度を上げながら測定した磁化と温度を下げながら測定した磁化も示した。この図からErMn2Si2の磁化には温度依存性がほぼ見られないことが分かる。
図6(a)はさまざまな外部磁場を掛けた場合のErMn2Si2の磁化の温度依存性である。この図から印加する外部磁場が大きくなればなるほどキュリー温度Tcは高くなっていることが分かる。図6(b)は、温度2Kと4KにおけるErMn2Si2の磁気ヒステリシス曲線で、差し込み図は低磁場領域の拡大図である。磁化は低磁場で急速に増加してから緩やかな増加に転じ、外部磁場7Tまでの測定では飽和していない。また、磁化の磁場依存性は、磁場を上げていった場合と下げていった場合でほぼ違いが無く、磁場ヒステリシスが無いことが分かる。
図7(a)は、外部磁場を増加させながら測定した場合のErMn2Si2の等温磁化の磁場依存性を示した図である。磁場は0から7Tまでの範囲で変化させた。転移温度は、温度の違いによって急激に変わっており、これは大きな可逆の磁気熱量効果を表している。図7(b)はいくつかの温度で測定したデータを用いたTc近傍をアロット・プロットに変換したグラフである。アロット・プロットが全区間に亘って正であるので、ErMn2Si2も二次磁気相転移が起きていることが分かる。
図8は、外部磁場が0T、1T、2T、5Tの場合のErMn2Si2のモル比熱の温度依存性を表す図である。熱容量のピークを示す位置はゼロ磁場では4.5Kだが,外部磁場をかけることによりピーク位置は急速に高い温度へとシフトする。外部磁場が高くなるに伴い、熱容量のピークを示す温度は高くなり、グラフの山の形は幅が広くなり、ピークは低くなる。これは、ErMn2Si2が二次磁気相転移を起こす物質であることを示している。
図9(a)は外部磁場をさまざまな値からゼロに変化させた場合のErMn2Si2の等温磁気エントロピー変化量−ΔSMの温度依存性を示した図である。−ΔSMは磁化M(H,T)を測定して数1に代入する近似を使った計算方法とモル比熱C(T,H)を測定して数2に代入する正確な方法で計算して比べた。磁化で算出すると−ΔSMはモル比熱で算出する場合に比べて大きな値を取ることが分かり、特に外部磁場が小さいと誤差が大きい。実施例では外部磁場が5Tの場合の−ΔSMの最大値はほぼ一致した。測定磁化を利用して数1を使う方法で計算した値を用いると、等温磁気エントロピー変化量の最大値(−ΔSM max)は、外部磁場が1Tからゼロに変化する場合は14.5J/kg・K、2Tから変化する場合は20.0J/kg・K、5Tから変化する場合は25.2J/kg・K、7Tから変化する場合は26.8J/kg・Kである。
図9(b)は外部磁場をさまざまな値からゼロに変化させた場合のErMn2Si2の断熱温度変化ΔTadの温度依存性を示した図で、モル比熱の測定結果から算出した。断熱温度変化量の最大値(ΔTad max)は、外部磁場が1Tからゼロに変化する場合は2.5K、2Tから変化する場合は5.4K、5Tから変化する場合は12.9Kである。
図9(b)から、ErMn2Si2を磁気冷凍材料に用いた場合、初期温度を13Kにしたうえで、磁場を2Tから0Tに断熱変化させると、温度は5.4K下がり、最終的に7.6Kとなる。
表1は本発明の磁気冷凍材料ErCr2Si2およびErMn2Si2と、非特許文献1及び3から5に記載された物質の、磁気冷凍材料としての適用温度と、外部磁場を0Tから2Tに変化させた場合及び外部磁場を0Tから5Tに変化させた場合における、断熱温度変化量の最大値を比較した表である。この表から、本発明の磁気冷凍材料が他の物質に比べて同程度からより大きな温度変化を示すことが分かる。
本発明の磁気冷凍材料の特筆すべき点は、比較的小さな2Tの磁場変化においても、大きなΔTad maxを示すことである。このため、本磁気冷凍材料を使った磁気冷凍装置は、超伝導電磁石を使わずに十分な磁気冷凍効果を発揮することができる。すなわち、本磁気冷凍材料を、クライオクーラーと組み合わせた磁気冷凍装置に適用すると、液体のヘリウムを用いることなく2〜25K程度の極低温を生成する冷凍システムを実現することができる。
本発明の磁気冷凍材料は、20K以下に好適で、大きな断熱温度変化を示す。また、本材料は、冷凍システムや蓄冷材料に使用することができる。
さらに、本材料を使えば、液体ヘリウムを使用することなく、2〜25Kの温度を生成する冷凍機器を作製することが可能となる。
さらに、本材料を使えば、液体ヘリウムを使用することなく、2〜25Kの温度を生成する冷凍機器を作製することが可能となる。
11 真空容器
12 コンプレッサーユニット
13 粗引用ポンプ
21 クライオパネル(凝縮パネル)
22 クライオパネル(吸着パネル)
23 クライオポンプステージ
31 磁性材料
32 磁性体容器内部
33 断熱材
41 永久磁石
42 熱スイッチ
44 可動棒
12 コンプレッサーユニット
13 粗引用ポンプ
21 クライオパネル(凝縮パネル)
22 クライオパネル(吸着パネル)
23 クライオポンプステージ
31 磁性材料
32 磁性体容器内部
33 断熱材
41 永久磁石
42 熱スイッチ
44 可動棒
Claims (5)
- ErCr2Si2および/またはErMn2Si2を含んでいる磁気冷凍材料。
- 磁気熱量効果を示す磁気冷凍材料として請求項1に記載の磁気冷凍材料を使用する磁気冷凍システム。
- ErCr2Si2および/またはErMn2Si2を含んでいる蓄冷材料。
- クライオポンプを備えた真空容器内部に、磁性体容器と前記磁性体容器に磁場を印加及び除去する励磁消磁機構とクライオポンプステージとを備えた冷凍システムにおいて、
前記磁性体容器は、少なくとも1つの端面に磁性部材を有し、かつ、少なくとも1つの端面に断熱材を有しており、
前記励磁消磁機構は、熱スイッチと永久磁石とを有し、前記真空容器内を移動可能であり、
前記クライオポンプステージと前記磁性体容器は前記断熱材が設けられた端面で接しており、
前記励磁消磁機構は、前記磁性部材及び前記クライオポンプステージに熱スイッチで接することができることを特徴とする冷凍システム。 - 前記磁性部材にErCr2Si2および/またはErMn2Si2を含んだ磁気冷凍材料を使用する請求項4に記載の冷凍システム。
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---|---|---|---|
JP2012056485A JP2013189543A (ja) | 2012-03-13 | 2012-03-13 | 磁気冷凍材料、蓄冷材料及びそれを用いた冷凍システム |
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