JP2013181025A - 磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム - Google Patents

磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム Download PDF

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Abstract

【課題】オレフィンのジヒドロキシル化反応に際し、オスミウムのリーチングの少ない、酸化オスミウム活性種が強固に固定化された磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを提供する。
【解決手段】
【化1】
Figure 2013181025

(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規な磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム、このものを製造する方法、及びこのものから成るオレフィンのジヒドロキシル化反応用触媒に関するものである。
従来の有機合成反応は液相反応が中心であるが、液相反応では、触媒は反応溶液に溶解しているため、触媒の回収、再利用(リサイクル)が容易でなく、触媒のリサイクルを図るには、反応後の抽出などの後処理、さらには精製などの操作が必要とされる。また触媒の多くは金属を含有し、これが反応処理液に混入してくるため、そのままでは排出できず、環境保全の面からも問題がある。そこで触媒の回収、再利用が容易で、環境にも優しい新規固定化触媒やそれを用いる新しい合成手法が求められている。
最近触媒の回収、再利用を行うべく、固相固定型触媒やフルオラスタグを導入した触媒等が種々開発されている。しかしこれらを用いた場合も濾別による回収操作やフルオラス溶媒を用いた抽出操作が必要とされる(非特許文献1、2参照)。
例えばオレフィンのジヒドロキシル化反応に有効な固相固定型酸化オスミウム触媒として、ポリスチレン、無機層状化合物、シリカゲルなどを固相担体としたものが報告されている(非特許文献3、4、5参照)。
近年四酸化三鉄(マグネタイト)等の磁性ナノ粒子(非特許文献6)に触媒機能性部位を固定化した磁性ナノ粒子固定型触媒の合成プロセスにおける有用性が報告されている。反応後に磁石を反応容器に近づけると触媒は引き寄せられるので、デカンテーションにより反応生成物を含む反応溶液を取り出すことができ、さらに触媒が残った反応容器に反応溶媒と反応基質を加えることにより、触媒を再利用でき、触媒のリサイクルの操作が簡便である(非特許文献7、8、9参照)。
例えば、これまでに磁性ナノ粒子固定型パラジウム触媒や銅触媒などが報告されている。これらは対応するポリスチレン樹脂固定型触媒よりも触媒活性は高く、またリサイクルを4,5回程度行っても収率の低下は殆どない(非特許文献10、11参照)。
また最近、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム触媒も報告されている。この触媒は、触媒活性種となるOsO4 2-を、四級アンモニウム塩部位のハロゲン化物イオンとのイオン交換により磁性ナノ粒子に固定化したものであり、オレフィンのジヒドロキシル化反応において良好な活性を有し、反応後は磁石に引き寄せることにより、簡便かつ迅速に回収され、さらに再利用も可能である。しかしながら、この触媒は、オレフィンのジヒドロキシル化反応においてオスミウムの溶出(リーチング)が生じることが確認されており、リーチングの少ない、酸化オスミウム活性種の強固な固定化が望まれる(非特許文献12、特許文献1参照)。
特願2011−040484
「固定化触媒のルネッサンス」、2007年、p.1(シーエムシー出版) 「グリーンケミストリー・アンド・キャタリシス(Green Chemistry and Catalysis)」、2006年、p.309(WILEY−VCH) 「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)」、1998年、第63巻、p.6094 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティー(J.Am.Chem.Soc.)」、2002年、第124巻、p.5341 「アンゲバンテ・ケミー・インターナショナル・エディション(Angew.Chem.,Int.Ed.)」、2001年、第40巻、p.586 「ジャーナル・オブ・マグネティズム・アンド・マグネティック・マテリアルズ(J.Magn.Magn.Mater.)」、2004年、第270巻、p.1 「ニュー・ジャーナル・オブ・ケミストリー(New J.Chem.)」、2003年、第27巻、p.227 「アドバンスト・シンセシス・アンド・キャタリシス(Adv.Synth.Catal.)」、2007年、第349巻、p.2431 「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2007年、p.3404 「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2005年、p.4435 「ケミカル・コミュニケーション(Chem.Commum.)」、2007年、p.4809 「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron.Lett.)」、2011年、第51巻、p.3137
本発明は、このような事情のもとでなされたものであり、オレフィンのジヒドロキシル化反応に際し、オスミウムのリーチングの少ない、酸化オスミウム活性種が強固に固定化された磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムについて鋭意研究を重ねた結果、溶媒中において磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと四酸化オスミウムとを反応させると、酸化オスミウム活性種が共有結合により強固に固定化された新規な磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムが容易に得られること、そしてこの磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、オレフィンのジヒドロキシル化反応を効率的に促進し、さらに反応終了後磁石を近づけることにより引き寄せられ、回収、再利用可能な固定化酸化オスミウム触媒として有用であるとともに、オレフィンのジヒドロキシル化反応に際して、オスミウムのリーチングが少ないことを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
(1) 一般式(I)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
(2) 一般式(I)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わり、当該磁性ナノ粒子に固定化されるとともに、一般式(II)
Figure 2013181025
(式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物が、当該一般式中のSiに結合する3つのR3−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
(3) 磁性ナノ粒子が、M(II)Fe24(式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。)で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、(1)または(2)に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
(4) 下記の一般式(III)、
Figure 2013181025
下記の一般式(IV)
Figure 2013181025
及び/又は、下記の一般式(V)
Figure 2013181025
(これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表されるオスミウム酸エステル構造を含有する、(3)に記載のフェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
(5) 一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、(1)に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
(6) 一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化されるとともに、一般式(II)
Figure 2013181025
(式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物が、当該一般式中のSiに結合する3つのR3−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、(2)に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
(7) 磁性ナノ粒子が、M(II)Fe24(式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。)で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、(5)または(6)に記載の、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
(8) 下記の一般式(VII)、
Figure 2013181025
下記の一般式(VIII),
Figure 2013181025
及び/又は、下記の一般式(IX)
Figure 2013181025
(これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される四置換オレフィン骨格を含有する、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、(7)に記載の、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
(9) (1)〜(4)のいずれかに記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムから成るジヒドロキシル化反応用触媒。
本発明に係る磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、オレフィンのジヒドロキシル化反応における触媒として有効であり、反応終了後磁石に引き寄せることにより容易に回収でき、また再利用も可能である。本発明に係る磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、特許文献1に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩よりもジヒドロキシル化反応におけるオスミウムの溶出(リーチング)が抑えられ、実用性が高い。
本発明の新規な磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、下記の一般式(I)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムである。
この磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムについて、前記式中の置換基における各符号等で示される内容を具体的に説明することにより、それらの構造をさらに明らかにする。
(1)R1は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、直鎖状、分岐鎖状の何れであってもよい。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの基を挙げることができる。
(2)sは1〜6のいずれかの整数で、好ましくは3である。またuとvはいずれかが1でいずれかが0である。
(3)(Osの酸化構造)の1つの形態として、まず一般式(X)が挙げられる。
Figure 2013181025
上記の構造は四置換オレフィンと四酸化オスミウムより調製される環状オスミウム酸エステルである。このものは含水有機溶媒中で調製されるため、その水和構造も存在する形態として挙げられる。また酸化剤を用い高い酸化力を有する8価オスミウムへと調製するため、オスミウムが8価の酸化構造のものも主な形態として挙げられる。水和構造とオスミウムが8価の酸化構造について、それぞれ一般式(XI)及び一般式(XII)に示す。
Figure 2013181025
Figure 2013181025
さらに磁性ナノ粒子の表面に、下記の一般式(II)
Figure 2013181025
(式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物が、当該一般式中のSiに結合する3つのR3−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有することにより、このような構造を含まない場合と比べて、オレフィンのジヒドロキシル化反応における金属オスミウムの溶出(リーチング)がさらに抑止される。このリーチングの低下は、長鎖疎水性基の導入により、オスミウム固定化部位の加水分解に基づくオスミウムの溶出が抑止されるためと推察される。
前記式中の置換基における各符号で示される内容を具体的に説明することにより、それらの構造をさらに明らかにする。
(1)R2は炭素数が4〜22の炭化水素基を表し、炭化水素基は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基の中から選ばれる基である。
アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれであってもよい。具体的には、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、i−ペンチル、t−ペンチル、へキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニルなどの基を挙げることができる。
シクロアルキル基は、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル基等を挙げることができる。
アリール基は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、ナフタレン、アントラセン等を挙げることができる。置換基としてはアルキル基等が挙げられ、また2以上の置換基を有していて差し支えない。アルキル基としては炭素数1から3のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基を挙げることができる。
アラルキル基は、側鎖としてアルキル基を持つ芳香族炭化水素の側鎖から1個の水素原子が失われた構造であり、ベンジル基、フェネチル基、アントラセニルメチル基等である。
(2)R3は炭素数が1〜4のアルキル基を表し、直鎖状、分岐鎖状の何れであってもよい。具体的には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチルなどの基を挙げることができる。
支持体の磁性ナノ粒子としては、M(II)Fe24を組成とするフェライト、及びこれを含有する、フェライトを主成分とする磁性を有する鉄化合物を用いることができる。M(II)としては、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+及びCu2+が挙げられ、これらが単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。完全にこの構造でなくてもこの組成を含有する磁性ナノ粒子は何れも支持体と成り得る。例えば、シリカ(SiO2)で被覆したフェライトがこれに該当する。また、マグへマイト(γ−Fe23)を組成とする磁性ナノ粒子も支持体として用い得る。
以下に、磁性ナノ粒子としてフェライトを用いた場合を例にとって、磁性ナノ粒子支持体への有機基の固定化の形態を説明する。固定化の主な形態として、一般式(III)が挙げられる。
Figure 2013181025
(式中、M(II)は前記と同じ意味を示す。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
上記の構造は鉄酸化物の表面の3個の酸素原子とケイ素が結合し、固定化されている。しかしこの場合、必ずしも酸素3原子の3箇所で固定化している必要はなく、酸素2原子での2箇所や酸素1原子での1箇所での固定化もあり得る。またSi−O−Si結合により形成されたケイ素化合物のオリゴマーが鉄酸化物に固定化された構造もあり得る。固定化の様式は問わず、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子の表面に固定化されていればよい。酸素原子2個で固定化した構造とケイ素化合物の二量体が固定化した構造の一例をそれぞれ一般式(IV)及び一般式(V)に示す。
Figure 2013181025
(式中、M(II)は前記と同じ意味を示す。R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
Figure 2013181025
(式中、M(II)、R1は前記と同じ意味を示す。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムに導入されるオスミウムの含有量は、0.001〜5.0mmol/g、好ましくは、0.01〜2.0mmol/gである。
また本磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの一次粒子の粒径は、0.5〜1000nm、好ましくは5〜100nmであるが、一般に凝集していることが多い。
また本磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、この凝集を解くために、磁性ナノ粒子の表面が、オクタノール等の長鎖アルコールやオレイン酸等の長鎖カルボン酸等の界面活性剤で覆われていてもよい。
本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、下記の一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを溶媒中で反応させることにより製造することができる。
この製法では、四置換オレフィンと四酸化オスミウムとの反応により、オスミウム酸エステルとなることにより、酸化オスミウムが固定化される。この場合、反応に直接、四酸化オスミウムを用いてもよいし、オスミウム(VI)酸カリウムとN−メチルモルホリンN−オキシド(NMO)との反応により四酸化オスミウムを調製し、これをそのまま四置換オレフィンとの反応に用いてもよい。前者の場合、四置換オレフィンとの反応によりオスミウムは6価となるため、8価にすべくNMOの共存を必要とする。後者の場合、NMOを大過剰用いることにより、多くが8価まで酸化される。
反応溶媒としては水を用いてもよいし、有機溶媒との混合系でもよい。水と有機溶媒との混合系の場合、有機溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、アセトン、t−ブチルアルコールが好ましいが、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素、トルエン、キシレン等の炭化水素などでもよい。
この溶媒を用いて磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと四酸化オスミウムOsO4との反応を行うに際しては、好ましくは、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、四酸化オスミウムを溶媒に溶解させたところに、あるいはオスミウム(VI)酸カリウムとN−メチルモルホリンN−オキシドより四酸化オスミウムを溶媒中にて調製したところに磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンを添加し、十分に攪拌しながら反応させる。
反応条件については、反応温度は室温が好ましい。100℃まで加熱してもよいが、それぞれの溶媒の沸点により上限が異なる。また反応時間は、反応温度及び使用する溶媒等その他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは0.5〜50時間程度である。
また、四酸化オスミウムの使用量については、必ずしも限定する必要はないが、一般的には、原料の四置換オレフィン1モルあたり0.01〜5モル、好ましくは0.4〜1モルの範囲の四酸化オスミウムが用いられる。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけることにより、反応生成物は引き寄せられるので反応溶液をデカンテーションする。さらに溶媒で反応生成物を洗浄し、減圧下乾燥することにより、反応生成物が得られ、赤外線吸収スペクトル(IR)及び元素分析より目的物の生成が確認される。
本反応により、一段階で目的とする磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを製造することができる。
前記の製造方法において、原料物質に対応する
一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンは、一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される四置換オレフィンと、磁性ナノ粒子とを、溶媒中加熱することにより製造することができる。
加熱温度は、通常室温から200℃の範囲で選ばれるが、50℃から120℃が好ましい。溶媒の沸点によっては還流することが望ましい。また、反応中、反応液は撹拌するのがよい。
前項の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法における原料物質の内、(u,v)=(1,0)に対応する下記一般式(XIII)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数を示す。)
で表される四置換オレフィンは、一般式(XIV)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数を示す。)
で表される一級アミンと、式(XV)
Figure 2013181025
で表される酸塩化物を溶媒中で攪拌することにより製造することができる。この酸塩化物は、式(XVI)
Figure 2013181025
で表される対応するカルボン酸より、塩化オキザリルを用い、容易に調製することができる。
一般式(XIII)の合成反応に用いられる溶媒としては、一級アミンと酸塩化物を溶解し得るものであればよく、特に制限されない。例えば、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフランやトルエン、ベンゼン、キシレン等の炭化水素等が好ましく挙げられる。
加熱温度は、通常室温から150℃の範囲で選ばれるが、室温が好ましい。また、反応中、反応液は撹拌するのがよい。
下記一般式(XIII)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数を示す。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンは、一般式(XIV)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数を示す。)
で表される一級アミンと、磁性ナノ粒子とを、溶媒中加熱することにより、一般式(XIV)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数を示す。)
で表される一級アミンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を有する、磁性ナノ粒子固定型一級アミンを調製した後、式(XV)
Figure 2013181025
で表される酸塩化物を添加し溶媒中で攪拌することにより製造することもできる。
前項の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法における原料物質の内、(u,v)=(0,1)に対応する下記一般式(XVII)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される四置換オレフィンは、一般式(XVIII)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表されるヒドロシランと、式(XIX)
Figure 2013181025
で表されるイソプレンを遷移金属触媒存在下攪拌することにより製造することができる。
一般式(XVII)の合成反応に用いられる反応溶媒は、用いても用いなくてもよい。反応条件についてはアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、反応温度は室温でも加熱してもよいが、50℃〜120℃の範囲が望ましい。また反応時間は、反応温度等その他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは5〜50時間程度である。遷移金属触媒としては、トリス(ペンタンジオネート)ロジウム(III)やビス(アセチルアセトン)ニッケル(II)が好ましい。反応中反応液は撹拌するのがよい。
磁性ナノ粒子の表面に長鎖炭化水素基を有する磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンは、一般式(VI)
Figure 2013181025
(式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと下記の一般式(II)
Figure 2013181025
(式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物とを反応させることにより製造することができる。
反応溶媒は用いても用いなくてもよいが、反応溶媒を用いず炭化水素基を含有するケイ素化合物を大過剰(溶媒量)用いて反応を行うことが望ましい。反応条件については、反応温度は室温でも加熱してもよいが、80℃〜120℃の範囲が望ましい。また反応時間は、反応温度等その他の条件により異なり一概に定めることはできないが、好ましくは5〜50時間程度である。反応中反応液は撹拌するのがよい。これにより、長鎖炭化水素基を有する磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンが製造される。
導入された長鎖炭化水素基と四置換オレフィン骨格の割合(長鎖炭化水素基/四置換オレフィン(物質量比))は、一概に定めることはできないが、好ましくは0.2から4の範囲がよい。
磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを用いることにより、オレフィンのジヒドロキシル化反応が進行するから、本磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、ジヒドロキシル化反応用触媒として有用である。
本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムをこのような酸化触媒として用いた反応の1例について、以下に説明する。
前記触媒としての磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムと共酸化剤存在下に、一般式(XX)
Figure 2013181025
(式中、R4、R5、R6及びR7は、水素原子又は炭化水素基であって、これらのうち2つ以上が炭化水素基の場合、いずれか2つは互いに結合して環を形成してもよい)
で表されるオレフィンを溶媒中で反応させ、一般式(XXI)
Figure 2013181025
(式中、R4、R5、R6及びR7は前記と同じ意味を示す)
で表されるジオール体を製造することができる。
上記炭化水素基は特に限定されず、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
またこの反応は、通常、溶媒に触媒、原料物質及び共酸化剤を溶解させて行われる。共酸化剤には通常N−メチルモルホリンN−オキシド、フェリシアン化カリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド等が用いられる。反応は有機溶媒中に、ジヒドロキシル化反応に必要とされる水を添加して行われる。有機溶媒として好ましくはアセトン、アセトニトリル、ジオキサン、t−ブチルアルコール、ジクロロメタン等が単独もしくは組み合わせて用いられる。
また反応は、格別加熱することなく、室温程度で進行させることができるが、加熱により促進させるようにしてもよい。反応中、反応液は攪拌するのがよい。
このように、本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを用いたオレフィンのジヒドロキシル化反応は、有機溶媒中で行われるため、有機溶媒に溶解可能な広範なオレフィンへのジヒドロキシル化反応の適用が可能である。これに対し、後述の比較例1、2に示すとおり、特許文献1に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用いた場合、有機溶媒中ではオスミウムが多量にリーチングするため、数割程度以上の水を混合して用いる必要がある。このため、ベンゼン環を複数有するオレフィンや長鎖炭化水素基を有するオレフィンなど、有機溶媒でないと溶解しにくいオレフィンへの適用には不向きであり、反応に用い得るオレフィンが限定される。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけ磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムを引き寄せ、デカンテーションにより反応溶液を取り出すことにより、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム触媒を回収できる。そして再度反応容器に反応溶媒や反応基質等を添加することにより、触媒の再利用が可能である。また取り出した反応溶液を濃縮しカラムクロマトグラフィーによる分離精製により目的物質を得ることができる。
本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、特許文献1に記載の磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩よりもジヒドロキシル化反応におけるオスミウムの溶出(リーチング)が抑えられることを特長とし、実用性が高い。
従来、固定化酸化オスミウム触媒のリサイクルには、濾過操作や分液操作等が必要であったが、本磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム触媒は触媒を磁石に引き寄せ、反応溶液をデカンテーションするだけで回収でき、触媒オスミウムの溶出(リーチング)も少ない。反応容器に再度反応基質等を添加することにより再利用が可能であり、容易にリサイクルが実現される点が本触媒の利点である。
このように、本発明の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムは、ジヒドロキシル化反応用触媒として有用であり、これを用いることにより溶媒中において効率的にオレフィンのジヒドロキシル化反応を促進させることができる。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例では磁性ナノ粒子として、マグネタイト(Fe34)を用いた。マグネタイトは、上述の非特許文献6に記載の方法に従い合成した。
また、磁性ナノ粒子に対する四置換オレフィンの固定化は、上述の非特許文献9に記載された有機基の固定化方法に準じて行った。
マグネタイト固定型四置換オレフィンの合成の一例を、原料のアミド骨格を有する四置換オレフィンの調製も含め参考例として以下に記載する。
参考例1
アルゴン雰囲気下、塩化オキザリル(183.2mg)、N、N−ジメチルホルムアミド(30mg)と以下の構造式(XVI)
Figure 2013181025
で表されるカルボン酸(171.8mg)の脱水ジクロロメタン溶液(3.5mL)を室温で1時間撹拌した後、溶媒を真空留去し、以下の構造式(XV)
Figure 2013181025
で表される酸塩化物を得た。
次にアルゴン雰囲気下、調製した酸塩化物を脱水ジクロロメタン(4mL)に溶解させ、ジメチルアミノメチル−ポリスチレン(2.650g:2.7mmol/g)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(10mg)と3−アミノプロピルトリメトキシシラン(168.8mg)を順次加え、室温で90分攪拌した。反応終了後、ジメチルアミノメチル−ポリスチレンを濾過により取り除き、濾液の溶媒を真空留去し、以下の構造式
Figure 2013181025
で表される四置換オレフィンを得た。
次にアルゴン雰囲気下、マグネタイト(997mg)と調製した四置換オレフィンを脱気したエタノール(15mL)に加え、さらに超純水(80μL)を加え、1分間超音波をかけた後、メカニカルスターラーを用いて撹拌しながら20時間加熱還流した。反応終了後、磁石を近づけることにより、生成物を壁面に引き寄せ、反応溶液をデカンテーションし、さらに脱気したエタノールで5回洗浄した。その後70℃で真空乾燥し、目的物を得た(黒色粉末、900.4mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2934、1638、1032、581cm-1
元素分析:C 2.81%、H 0.48%、N 0.28%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で代表される、磁性ナノ粒子に有機基が固定化された化合物と同定された。なお、以下の構造式は、磁性ナノ粒子に対する有機基の固定化の主な形態である、磁性ナノ粒子中の鉄酸化物の表面の3個の酸素原子と有機基のケイ素が結合する形態で記載されているが、[0020]において述べたように、有機基の磁性ナノ粒子に対する結合形態はこれに限られるものではない。以下の実施例、参考例における構造式についても同様である。
Figure 2013181025
実施例1
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物K2OsO4・2H2O 32.0mgの水溶液(1.6ml)にN−メチルモルホリンN−オキシド208.4mgのジクロロメタン溶液(8mL)を加え、室温にて18時間攪拌した。
得られた四酸化オスミウム溶液にt−ブチルアルコール16mLと以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるマグネタイト(Fe34)固定型四置換オレフィン601.3mg(0.216mmol/g)を加え、室温にて7時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、t−ブチルアルコール−ジクロロメタンで5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量624.7mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2936、1632、1555、577cm−1
元素分析:C 3.39%、H 0.58%、N 0.39%、Os 1.81%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。なお、以下の構造式中の(Osの酸化構造)は、[0015]において述べたように、1つの構造には特定されない。以降の実施例における構造式についても同様である。
Figure 2013181025
長鎖炭化水素基を有するマグネタイト固定型四置換オレフィンの合成の一例を、参考例として以下に記載する。
参考例2
アルゴン雰囲気下、オクタデシルトリメトキシシラン5mLに以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるマグネタイト(Fe34)固定型四置換オレフィン2.6882gを加え、80℃で22時間撹拌し反応させた。
反応終了後、磁石を近づけることにより、生成物を壁面に引き寄せ、反応溶液をデカンテーションし、さらに脱気したエタノールで5回洗浄した。その後 70℃で真空乾燥し、目的物を得た(黒色粉末、2.7810g)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2920、2851、1638、1541、1018、579cm-1
元素分析:C 8.62%、H 1.40%、N 0.27%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
Figure 2013181025
長鎖炭化水素基/四置換オレフィン(物質量比)=1.23(参考例1および参考例2の元素分析値より)
実施例2
アルゴン雰囲気下、オスミウム(VI)酸カリウム二水和物K2OsO4・2HO62.7mgの水溶液(3ml)にN−メチルモルホリンN−オキシド403.3mgのジクロロメタン溶液(15mL)を加え、室温にて16時間攪拌した。
得られた四酸化オスミウム溶液にt−ブチルアルコール30mLと以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるマグネタイト(Fe34)固定型四置換オレフィン900.7mg(0.198mmol/g)を加え、室温にて8時間攪拌した。
反応後、磁石を反応容器に近づけ生成物を引き寄せデカンテーションし、t−ブチルアルコール−ジクロロメタンで5回洗浄後、生成物を減圧乾燥させることにより、目的物を得た(黒色粉末、収量908.3mg)。
このもののIR分析と元素分析の結果は次の通りである。
IR:2922、2853、1655、1024、619、571cm-1
元素分析:C 6.65%、H 1.07%、N 0.34%、Os 1.17%
これらの分析結果より、この生成物は以下の構造式で表される化合物と同定された。
Figure 2013181025
実施例3
アルゴン雰囲気下、t−ブチルアルコール1mL、ジクロロメタン0.5mLの混合溶液に、水23.5μL、実施例1で得られた磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム(0.0952mmol/g)106.0mg、トランス−β−メチルスチレン58.1mg、N−メチルモルホリンN−オキシド76.0mgを順次加え、室温にて8時間撹拌し、反応させた。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけデカンテーションし、さらに触媒をt−ブチルアルコール−ジクロロメタンで5回洗浄し反応液と合わせ、以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるジオールの生成とオスミウムの溶出(リーチング)それぞれを、1H NMRと蛍光X線で確認した(収率99%、リーチング2.5%)。
実施例4
アルゴン雰囲気下、t−ブチルアルコール1mL、ジクロロメタン0.5mLの混合溶液に、水23.5μL、実施例2で得られた磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム(0.0617mmol/g)158.5mg、トランス−β−メチルスチレン58.5mg、N−メチルモルホリンN−オキシド75.8mgを順次加え、室温にて8時間撹拌し、反応させた。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけデカンテーションし、さらに触媒をt−ブチルアルコール−ジクロロメタンで5回洗浄し反応液と合わせ、以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるジオールの生成とオスミウムの溶出(リーチング)それぞれを、1H NMRと蛍光X線で確認した(収率95%、リーチング2.0%)。
比較例1
特許文献1に記載の以下の構造式
Figure 2013181025
で表される磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用い、実施例3,4と同じ反応条件で1時間撹拌したジヒドロキシル化反応の結果を以下に示す。
収率95%、リーチング14.4%
当該磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用い、特許文献1、非特許文献12のように、有機溶媒と水の混合溶媒系(アセトン−水(2:1、v/v))でジヒドロキシル化反応を行った場合の結果も以下に示す。
収率91%、リーチング3.3%
実施例5
アルゴン雰囲気下、t−ブチルアルコール1mL、ジクロロメタン0.5mLの混合溶液に、水23.5μL、実施例2で得られた磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム(0.0617mmol/g)158.9mg、オレイン酸メチル147.3mg、N−メチルモルホリンN−オキシド78.8mgを順次加え、室温にて72時間撹拌し、反応させた。
反応終了後、磁石を反応容器に近づけデカンテーションし、さらに触媒をt−ブチルアルコール−ジクロロメタンで5回洗浄し反応液と合わせ、以下の構造式
Figure 2013181025
で表されるジオールの生成とオスミウムの溶出(リーチング)それぞれを、1H NMRと蛍光X線で確認した(収率94%、リーチング3.8%)。
比較例2
特許文献1に記載の以下の構造式
Figure 2013181025
で表される磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用い、実施例5と同じ反応条件で2時間撹拌したジヒドロキシル化反応の結果を以下に示す。
収率98%、リーチング27.3%
当該磁性ナノ粒子固定型オスミウム(VI)酸塩を用い、特許文献1、非特許文献12のように、有機溶媒と水の混合溶媒系(アセトン−水(7:1、v/v))で1.5時間撹拌したジヒドロキシル化反応の結果も以下に示す。
収率96%、リーチング6.6%

Claims (9)

  1. 一般式(I)
    Figure 2013181025
    (式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
  2. 一般式(I)
    Figure 2013181025
    (式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表される酸化オスミウムが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わり、当該磁性ナノ粒子に固定化されるとともに、一般式(II)
    Figure 2013181025
    (式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
    で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物が、当該一般式中のSiに結合する3つのR3−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
  3. 磁性ナノ粒子が、M(II)Fe24(式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。)で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
  4. 下記の一般式(III)、
    Figure 2013181025
    下記の一般式(IV)
    Figure 2013181025
    及び/又は、下記の一般式(V)
    Figure 2013181025
    (これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表されるオスミウム酸エステル構造を含有する、請求項3に記載のフェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウム。
  5. 一般式(VI)
    Figure 2013181025
    (式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項1に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
  6. 一般式(VI)
    Figure 2013181025
    (式中、R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表される構造を有する四置換オレフィンが、当該一般式中のSiに結合する3つのR1−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化されるとともに、一般式(II)
    Figure 2013181025
    (式中、R2は炭素数が4〜22の炭化水素基、R3は炭素数が1〜4のアルキル基である。)
    で表される、炭化水素基を含有するケイ素化合物が、当該一般式中のSiに結合する3つのR3−O−基の少なくとも1つが磁性ナノ粒子中の酸素原子と置き換わることにより、当該磁性ナノ粒子に固定化された構造を含有する、磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項2に記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
  7. 磁性ナノ粒子が、M(II)Fe24(式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。)で表される組成のフェライトを主成分とすることを特徴とする、請求項5または6に記載の、磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
  8. 下記の一般式(VII)、
    Figure 2013181025
    下記の一般式(VIII)、
    Figure 2013181025
    及び/又は、下記の一般式(IX)
    Figure 2013181025
    (これらの式中、M(II)は、Fe2+、Co2+、Ni2+、Mn2+、Zn2+、Mg2+またはCu2+であり、単独でも複数が組み合わされて含まれてもよい。R1は炭素数が1〜4のアルキル基である。sは1〜6のいずれかの整数、uとvはいずれかが1でいずれかが0である。)
    で表される四置換オレフィン骨格を含有する、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型四置換オレフィンと、四酸化オスミウムOsO4とを、溶媒中で反応させることを特徴とする、請求項7に記載の、フェライトを主成分とする磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムの製造方法。
  9. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載の磁性ナノ粒子固定型酸化オスミウムから成るジヒドロキシル化反応用触媒。
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