この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
接木苗製造装置1は、台木と穂木を接ぎ木する接木ロボット本体laを中心にその左側(図1の上側)に不図示の台木取込部(取込部)、同右側(図1の下側)に穂木取込部(取込部)2が配置され、接木ロボット本体laには、その前面の左右に台木取込部または穂木取込部2から台木、穂木としての苗をそれぞれ受ける台木前処理部(前処理部)3、穂木前処理部(前処理部)4、中央には、台木前処理部3または穂木前処理部4から受けた台木と穂木を接着する接着処理部7、この接着された接木苗を下方から送出する接木苗送出部8を配置して左右を略対称に構成し、穂木取込部2の手前側には操作パネルlpを設けたものである。
台木前処理部3は、空気圧で作動する台木側のロータリーアクチュエータ60の駆動により回転作動する台木搬送アーム61を備え、該台木搬送アーム61により台木取込部からの台木苗を把持し、台木搬送アーム61が90度回転して台木苗を切断位置62に搬送し、その後台木搬送アーム61が更に90度回転して台木苗を接合位置63に搬送する。
切断位置で台木切断装置64により台木苗を切断し、双子葉の片葉を切り落とす。
穂木前処理部4は、空気圧で作動する穂木側のロータリーアクチュエータ67の駆動により回転作動する穂木搬送アーム68を備え、該穂木搬送アーム68により穂木取込部2からの穂木苗を把持し、穂木搬送アーム68が90度回転して穂木苗を切断位置69に搬送し、その後穂木搬送アーム68が更に90度回転して穂木苗を接合位置63に搬送する。切断位置69で穂木切断装置70により穂木苗を切断し、胚軸の下側部を切り落とす。
接着処理部7は、接木苗の接合用のクリップ101を一つずつ繰り出すクリップフィーダ73と、台木苗及び穂木苗が接合位置63に到達した状態で該クリップフィーダ73で繰り出されるクリップ101を一つずつ供給して台木苗及び穂木苗を固定するクリップ供給装置74を備えている。尚、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が接合位置63に到達したとき、台木苗と穂木苗の各々の切断面が合致して苗を接合した状態となる。
クリップ101は、左右一対の把持部102と左右一対の開閉部103とを備え、この把持部102と開閉部103とが左右各々で一体となった左右のクリップ片を構成し、左右のクリップ片が把持部102と開閉部103との間で互いに接触して回動支点を構成し、左右の開閉部103を閉じると左右の把持部102が開く構成となっている。左右の把持部102は、スプリング104により閉じる側に付勢されており、外力がない状態では閉じる構成となっている。
クリップ供給装置74にはクリップ101の移送経路となるガイドレール105を備えており、振動式供給装置であるクリップフィーダ73によるクリップ101の繰り出し作用により把持部102が移送上手側となる所望の向きでクリップ101が一つずつガイドレール10へ供給され、ガイドレール105の移送始端部に設けた振動式移送装置46によりガイドレール105を振動させ、該ガイドレール105内で把持部102が移送上手側となる姿勢で連続的にクリップ101が移送される。ガイドレール105の終端部は左右幅が狭くなっており、ガイドレール105の終端部へクリップ101が移送されると該クリップ101が左右の開閉部を閉じて左右の把持部102を開く。そして、ガイドレール105の終端からクリップ101を受け継ぐクリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107が開くことで左右の開閉部103を開いて左右の把持部102を閉じる構成となっている。また、ガイドレール105の終端部に設けたクリップ押出装置108により、接合位置63へ順次クリップ101を供給する構成である。
ガイドレール105の移送終端部寄りの位置でクリップ押出装置108よりも移送上手側となる第一の所定位置には、クリップ101の有無を検出する光電式の第一クリップセンサ65を設けている。また、ガイドレール105の移送始端部寄りの位置で第一の所定位置よりも移送上手側となる第二の所定位置には、クリップ101の有無を検出する光電式の第二クリップセンサ66を設けている。そして、制御装置は、第一クリップセンサ65がクリップ101を検出しないとき、該第一クリップセンサ65からの入力に基づいて接木ロボット本体laの運転すなわち台木前処理部3、穂木前処理部4及び接着処理部7の運転を停止させると共に、後述する操作パネル1pの設定変更部54内に設けたランプを赤色で常時点灯させて警報する。これにより、クリップ101が接合位置63へ供給されない状態で接木作業を行って台木苗や穂木苗が無駄になることを防止でき、クリップフィーダ73へのクリップ101の補給を促す。また、第一クリップセンサ65がクリップ101を検出し且つ第二クリップセンサ66がクリップ101を検出しないことが第一クリップセンサ65及び第二クリップセンサ66から入力され、それから所定時間(10秒程度)経過すると、前記ランプを青色で点滅させて警報し、クリップフィーダ73内のクリップ101が無くなってクリップ101が減少したり、あるいはクリップフィーダ73の作動不良や移送経路上でクリップ101が詰まってクリップ101が適正に移送されなくなったことを知らせる。これにより、クリップフィーダ73へのクリップ101の補給あるいはクリップ101の詰まりの解消作業を促すことができ、接木作業を中断せずにクリップ101を補給でき、接木作業能率の向上が図れる。また、第二クリップセンサ66がクリップ101を検出するとき、該第二クリップセンサ66からの入力に基づいてクリップフィーダ73の作動を停止させる。これにより、クリップフィーダ73によりガイドレール105へ不必要にクリップ101が供給されず、無理に供給されることでガイドレール105内でクリップ101が破損することを防止できる。通常の運転状態では、第二クリップセンサ66がクリップ101を検出しない状態となる度に、クリップフィーダ73を作動させて前記第二の所定位置にクリップ101が供給され、第二クリップセンサ がクリップ101を検出する状態となる。尚、前記ランプは、通常の運転状態では青色で常時点灯する。
ガイドレール105の延長上の位置には、規制部材109を配置している。この規制部材109は、透明で樹脂製の上下方向に沿うプレートで形成され、接合位置63においてクリップ開閉装置106で開閉するクリップ101の前端(把持部102の先端)が接触する位置に配置されている。従って、接合位置63に移送されるクリップ101は、左右の把持部102を開いた状態で前端が規制部材109に接触し、それ以上移送されないように規制される。規制部材109は、ロータリーアクチュエータからなる規制部材移動装置110により前後に回動する移動用アーム111の先端部に固着され、接合位置63のクリップ101に対向して接触する規制位置から、その下側で前側に移動して前記規制位置から退避する退避位置へ回動する構成となっている。
従って、まず、退避位置にある規制部材109が、規制部材移動装置110により規制位置へ前側から移動する。台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68の伸張により台木苗及び穂木苗が左右から接合位置63へ供給され、苗を接合状態とする。このとき、規制部材109により苗を接合位置63の適正な位置へ案内される。尚、規制部材109の左右端部は、円弧状もしくはテーパ状に構成され、苗を引っ掛けずに円滑に案内し得る構成となっている。そして、クリップ押出装置108により接合位置63へクリップ101が左右の把持部102を開いた状態で供給されるが、該クリップ101は規制部材109に接触して適正な位置に位置決めされる。このクリップ101の開いた左右の把持部102の間の空間が把持領域となるが、この把持領域内に、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68により搬送された台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部が位置する。つまり、台木苗及び穂木苗の胚軸の接合部は、左右の把持部102と規制部材109とで囲まれた空間内に位置する。その後、クリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107が開くことで左右の開閉部103を開いて左右の把持部102を閉じ、台木苗及び穂木苗をクリップ101で挟持して固定するが、このときも規制部材109が規制位置にありクリップ101の飛び出しが規制されているので、左右の把持部を閉じる動作でクリップ101の姿勢や位置が不適正となるのを防止している。しかも、把持部102における所望の位置で苗を挟持することができる。左右の把持部102を閉じた後、規制部材109は規制部材移動装置110により退避位置に移動する。その後、クリップ押出装置108によりクリップ101が押し出されて当該クリップ101ごと接木苗が接木苗送出部8へ放出され、該接木苗送出部8により接木苗をコンテナへ搬送する。規制部材109は、透明であるので、邪魔にならずに作業者が苗の接合状況を容易に視認することができ、各部の調整等が不適正で発生する不良な接木苗の多量発生を防止する。ひいては、台木前処理部3、穂木前処理部4及び接着処理部7の各部の調整作業が容易に行え、調整作業時間の短縮化が図れる。
クリップ開閉装置106の左右の開閉操作部材107の下方には、接合位置63へ供給されるクリップ101を下側から支持する支持部材となる固定支持板121及び可動支持板122を設けている。固定支持板121は、ガイドレール105の延長上に配置され、接合位置63にある苗の胚軸の位置から左側にかけて設けられ、接合位置63から左右一方側となる台木前処理部側の部分を構成する。可動支持板122は、固定支持板121の前側(クリップ101の放出側)で接合位置63にある苗の胚軸の位置から右側にかけて設けられ、接合位置63から左右他方側となる穂木前処理部の部分を構成する。そして、固定支持板121の前端面121aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、固定支持板121は、前後方向において接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ101の移送上手側(後側)に位置し、固定支持板121の前端面121aが、接合位置63で接合される苗の胚軸にクリップ101の移送上手側で接する移送上手側の端面となる。また、可動支持板122の左端面122aは、接合位置63にある台木苗の胚軸に接する位置に配置されている。従って、可動支持板122は、接合位置63で接合される苗の胚軸よりもクリップ101の前後方向の移送下手側(前側)にまで至り、可動支持板122の左端面122aが、接合位置63で接合される苗の胚軸に穂木前処理部側で接する穂木前処理部側の端面となる。尚、可動支持板122は、固定支持板121の前端面121aよりも前側(クリップ101の放出側)へ台木苗の胚軸の軸径(3〜4mm)程度突出している。更に、可動支持板122は、長孔122bを介して左右位置調節可能に固定支持板121に取り付けられ、長孔122bに挿入する締結ボルト123を外せば取り外すこともできる。従って、可動支持板122の左右位置変更により可動支持板122の左端面122aの左右位置を変更できると共に、可動支持板122の取り外しにより可動支持板122の左端面122aを備えない状態に切替できる。
台木搬送アーム61による台木苗の切断位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の切断位置69への搬送作動は、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68がそれぞれの苗を共に把持するのに伴って同期して作動を開始するが、穂木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて穂木側のロータリーアクチュエータ67へのエア流量を少なくして穂木搬送アーム68の作動速度を台木搬送アーム61の作動速度よりも若干遅くして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングを台木搬送アーム61が切断位置62に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、穂木搬送アーム68が切断位置69に到達したことを穂木側のローリングアクチュエータ67に設けた穂木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、台木切断装置64及び穂木切断装置70が切断動作を開始する。これにより、台木搬送アーム61及び穂木搬送アーム68が各々切断位置62,69に確実に到達した状態で各々の切断装置64,70を作動させることができ、適正に苗を切断することができると共に、台木側の切断位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、台木苗よりも軽い穂木苗をゆっくりと搬送させることにより、穂木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、穂木苗における切断位置が不適正になって接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。従来は、台木搬送アームと穂木搬送アームを同じ作動速度で作動させるようにしていたので、台木側と穂木側のエアホースの長さや屈曲度合や傷み具合の相違等により、台木搬送アームと穂木搬送アームの内の一方の作動速度が遅くなると、作動速度が速い側で切断位置に到達することを検出するようにしたとき、作動速度が遅い側が切断位置に到達する前に切断装置が作動して、苗の切断が不適正となるおそれがある。
同様に、台木搬送アーム61による台木苗の接合位置62への搬送及び穂木搬送アーム68による穂木苗の接合位置69への搬送作動は、台木切断装置64及び穂木切断装置70の切断動作の完了に伴って同期して作動を開始するが、台木側の速度調整装置(流量制御弁)を作動させて台木側のロータリーアクチュエータ60へのエア流量を少なくして台木搬送アーム61の作動速度を穂木搬送アーム68の作動速度よりも若干遅くして、台木搬送アーム61が接合位置62に到達するタイミングを穂木搬送アーム68が切断位置69に到達するタイミングよりも遅らせる。そして、台木搬送アーム61が切断位置62に到達したことを台木側のローリングアクチュエータ60に設けた台木側の回転位置検出センサ(リードスイッチ)により検出すると、クリップ供給装置74がクリップ供給動作を開始する。これにより、台木苗及び穂木苗が各々接合位置63に確実に到達した状態でクリップを供給することができ、台木苗と穂木苗を適正に固定することができて接木苗の接合率の向上が図れると共に、穂木側の接合位置検出用の回転位置検出センサ(リードスイッチ)を省略できてコストダウンが図れる。また、片葉切断した状態の台木苗をゆっくりと搬送させることにより、台木苗のバランスが崩れて該苗の姿勢が悪化し、接木苗の接合状態が悪くなる不具合を防止できる。
台木切断装置64は、台木用の切断刃75と、切断する側の子葉の葉柄を支える葉柄支え具76と、残す側の子葉を上側から押さえる子葉押さえ具77を備える。台木用の切断刃75と葉柄支え具76は、空気圧で作動する台木用の前後移動用シリンダ78により移動して、切断位置62にある台木苗に近づき、葉柄支え具76が葉柄に接触して保持する(図6(2)参照)。尚、台木用の前後移動シリンダ78は台木苗側が高位となるよう傾斜しており、台木用の切断刃75と葉柄支え具76が下側寄りの位置から台木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。その後、空気圧で作動する子葉押さえ用ロータリーアクチュエータ79により子葉押さえ具77が下側に回動し、子葉押さえ具77の先端部に設けた子葉押さえローラ80により子葉を上側から押さえる(図6(3)参照)。その状態で、空気圧で作動する台木用の切断用シリンダ81により斜め上方向に切断軌跡となる直線移動軌跡で台木用の切断刃75を移動させ、台木苗の切除するべき部分となる胚軸及び片葉を切断する(図6(4)参照)。このとき、台木用の切断刃75は、苗の胚軸を通り抜けることなく切断箇所となる苗の切断面に接触して該切断面を覆う位置で停止し、台木苗の切除するべき部分と台木苗の残すべき部分を遮る遮断位置にある。そして、台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避させ、この台木用の切断刃75の移動により台木苗の切除するべき部分が台木苗の残すべき部分から離される(図6(5)参照)。その後、子葉押さえ具77を上側へ回動して元の位置に戻すと共に、台木用の切断用シリンダ81により台木用の切断刃75を斜め下方向に移動させて元の位置に戻す(図6(1)参照)。尚、台木用の切断用シリンダ81の取付角度を調節することにより、切断角度を容易に調節できる。
よって、切断後の台木苗の切除するべき部分を、移動する台木用の切断刃75により台木苗の残すべき部分から離しながら移動させることができ、樹液がしみ出た台木苗の切断面に切除するべき部分が付着して残ることを防止でき、接木苗の接合精度が向上し、また台木用の切断刃75を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させてから退避移動させる必要がないので切断工程の作業時間短縮が図れ、作業能率が向上し、良好な接木苗を得ることができる。特に、従来のように、台木用の切断刃75を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させることで、切断後の台木苗の切除するべき部分を台木用の切断刃75が再度切断し、その切断で生じた切れ屑が切断面に付着することを防止できる。また、切断軌跡の短縮により、台木用の切断刃75により作業者が怪我をすることも抑制される。
尚、台木用の前後移動シリンダ78の作動ストローク位置を検出するストロークセンサ又は台木苗の切断刃75を直接検出する切断刃センサの検出により、台木苗の切断刃75が前記遮断位置に到達したことに基づいて台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。また、台木苗の切断刃75を停止させず、台木苗の切断刃75を直線移動軌跡上で移動させながら前記遮断位置に到達した時点から台木用の前後移動シリンダ78により台木用の切断刃75及び葉柄支え具76を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。
穂木切断装置70は、穂木用の切断刃82と、切り落とす側(下側部)の胚軸を支える胚軸支え具83を備える。穂木用の切断刃82と胚軸支え具83は、空気圧で作動する穂木用の前後移動用シリンダ84により移動して、切断位置69にある穂木苗に近づき、胚軸支え具83が胚軸に接触して保持する(図7(2)参照)。尚、穂木用の前後移動シリンダ84は穂木苗側が高位となるよう傾斜しており、穂木用の切断刃82と胚軸支え具83が下側寄りの位置から穂木苗に近づいて苗の子葉に干渉しないように構成している。尚、穂木苗に近づいた状態で、穂木用の切断刃82は、子葉の裏側(下側)に位置する。そして、空気圧で作動する穂木用の切断用シリンダ85により斜め下方向に切断軌跡となる直線移動軌跡で穂木用の切断刃82を移動させ、穂木苗の切除するべき部分となる胚軸の下側部を切断する(図7(3)参照)。このとき、穂木用の切断刃82は、苗の胚軸を通り抜けることなく切断箇所となる苗の切断面に接触して該切断面を覆う位置で停止し、穂木苗の切除するべき部分と穂木苗の残すべき部分を遮る遮断位置にある。そして、穂木用の前後移動シリンダ84により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を斜め下方向に移動させて穂木苗から退避させ、この穂木用の切断刃82の移動により穂木苗の切除するべき部分が穂木苗の残すべき部分から離される(図7(4)参照)。その後、穂木用の切断用シリンダ85により穂木用の切断刃82を斜め上方向に移動させて元の位置に戻す(図7(1)参照)。尚、穂木用の切断用シリンダ85の取付角度を調節することにより、切断角度を容易に調節できる。
よって、切断後の穂木苗の切除するべき部分を、移動する穂木用の切断刃82により穂木苗の残すべき部分から離しながら移動させることができ、樹液がしみ出た穂木苗の切断面に切除するべき部分が付着して残ることを防止でき、接木苗の接合精度が向上し、また穂木用の切断刃82を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させてから退避移動させる必要がないので切断工程の作業時間短縮が図れ、作業能率が向上し、良好な接木苗を得ることができる。特に、従来のように、穂木用の切断刃82を切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させることで、切断後の穂木苗の切除するべき部分を穂木用の切断刃82が再度切断し、その切断で生じた切れ屑が切断面に付着することを防止できる。また、切断軌跡の短縮により、穂木用の切断刃82により作業者が怪我をすることも抑制される。
尚、穂木用の前後移動シリンダ85の作動ストローク位置を検出するストロークセンサ又は穂木苗の切断刃82を直接検出する切断刃センサの検出により、穂木苗の切断刃82が前記遮断位置に到達したことに基づいて穂木用の前後移動シリンダ85により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を穂木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。また、穂木苗の切断刃82を停止させず、穂木苗の切断刃82を直線移動軌跡上で移動させながら前記遮断位置に到達した時点から穂木用の前後移動シリンダ85により穂木用の切断刃82及び胚軸支え具83を台木苗から退避する側に移動させる構成としてもよい。
尚、台木切断装置64の台木用の切断刃75と穂木切断装置70の穂木用の切断刃82は、平面視で互いに接合位置63側ほど苗から離れるように斜めに配置され、切断する苗に対し前進角を有して移動して苗を切断する。これにより、苗の切断抵抗を抑えて苗の切断を円滑に行えると共に、接木苗を固定するクリップの把持部における先端側(接合位置における前側(切断位置側))から各々の苗を切断することになるので、切断時に苗の切断位置が位置ずれし易い切断終端がクリップの把持部における奥側(接合位置63における後側(切断位置62,69と反対側))となるが、クリップの把持部における奥側で苗の保持精度が高まるため、接木苗の接合率向上が図れる。
尚、前記台木取込部及び穂木取込部は互いに左右対称で同様の構成であるので、以下は、穂木取込部2について説明する。
穂木取込側については、穂木取込部2は、接木ロボット本体laの側方で苗ポットに育成した多数の穂木苗(苗)Wを格子配列したセルトレイを順次搬入移送する搬入機構11と、この搬入機構11上の穂木苗Wに対して進退機構12bにより進退動作可能に穂木苗Wを穂木として個々の把持しつつ胚軸をカットして把持動作する把持ハンド12と、この把持ハンド12を左右方向に横移動可能に支持する移送機構13と、その移送行程上に配した方向修正部材14等から構成する。また、穂木取込部2と穂木前処理部4との間の穂木受渡し位置(受渡し位置)Rには、穂木取込部2から移送された穂木苗Wを一時的に保持する受渡保持機構15を設ける。
詳細には、上記搬入機構11は、接木ロボット本体laの側方に沿って移送動作するべルトコンベヤ等により構成し、横一列の苗が取り出される度にセルトレイの配列ピッチで順次移送動作することにより、穂木苗Wを所定位置に搬入する。移送機構13は、接木苗製造装置1の片側位置で搬入機構11を横断して受渡保持機構15までの範囲で把持ハンド12を左右に位置制御可能に構成し、セルトレイの横一列の苗において受渡保持機構15側から苗を取り出すべく、把持ハンド12が受渡保持機構15へ苗を供給した後に次に取り出す苗(苗があるセル)の左右位置に順次左右移動する構成となっている。この移送機構13による移送行程に干渉するように、棒状部材または回動抵抗を抑えた縦軸ローラによる方向修正部材14を下垂状に配置する。この方向修正部材14は、移送機構13の左右移送経路の終端の直前位置で、受渡保持機構15に対向する位置より若干搬入機構11側に配置されている。また、受渡保持機構15には、把持ハンド12から受けた穂木苗Wを保持した際にその子葉展開方向を規制する整列部材16を設ける。これら受渡保持機構15と整列部材16とにより整列保持手段を形成する。
次に、穂木取込部2の把持ハンド12について詳細に説明する。
把持ハンド12は、拡大側面図を図11に示すように、穂木苗Wの胚軸Aの上段部と中段部を把持する上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびその下方に開閉動作により穂木苗Wの胚軸Aの下段部を切断するカッタ機構23を三段重ねに進退機構12bにより一体に進退動作可能に配置し、その側方に独立して上下動作可能に持上げ具24を備えて構成する。また、把持した胚軸Aの近傍で子葉Lと干渉しうる位置に回り止め用の棒状のストッパ25をカッタ機構23から立設する。上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23からなる上下三段の各ハンドの上下間隔を調節可能に設けており、苗の胚軸の長さに応じて各ハンドの上下間隔を変更して、徒長苗や苗の品種に対応して苗を適正に把持できる構成としている。
上段のハンド機構21は、把持状態の平面図を示す図12(a)のように、左右の開閉アーム21aの先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく左右方向の切欠Bを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成し、その隙間限度設定用の調節ボルト21bを設ける。中段のハンド機構22は、その把持状態の平面図を示す図12(b)のように、左右の開閉アーム22a,22aのその先端の把持位置に穂木苗の肥軸Aの径寸法より大きく前後方向の切欠Cを形成して穂木苗の胚軸Aを遊嵌保持可能に構成する。上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22により、穂木苗の把持位置精度を確保しつつ、穂木苗がその胚軸線で回動可能に把持する。
カッタ機構23は、その作動状態平面図(a)とそのB−B線断面図(b)を図13に示すように、左右の開閉アーム23a,23aの先端部に穂木苗の胚軸Aを切断する刃23bを形成し、かつ、切断後の胚軸Aの移動を拘束するように外周縁を高く形成する。刃23bは、左右の開閉アーム23a,23aのうち、接木ロボット本体laとは左右方向で反対側の開閉アーム23aに取り付けられている。接木ロボット本体la側の開閉アーム23aには、胚軸Aが開閉アーム23a,23aの基端側に入り込むのを規制する規制ガイド114を設けている。この規制ガイド114で胚軸Aを規制することにより、胚軸Aの位置ずれを防止して刃23bで円滑に切断できるようにしている。尚、規制ガイド114は、左右の開閉アーム23a,23a及び刃23bの上方に配置され、刃23b側へ胚軸Aが案内されるように刃23b側ほど開閉アーム23a,23aの基端側に位置する構成となっている。
上段のハンド機構21、中段のハンド機構22及びカッタ機構23は、穂木苗を穂木としてその根側を切断しつつその胚軸を回動可能に緩く把持する遊嵌把持機構を形成する。
前記持上げ具24は、第一の持上げ具41と第二の持上げ具42とを備えて構成される。前記第一の持上げ具41は、穂木苗Wの根元位置まで前下がりに傾斜するとともに、受渡保持機構15側すなわち苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動してくる側となる同穂木苗Wの側方から背後に達するように先端部41tを屈曲したロッドにより形成される。先端部41tとその基部に屈曲して延びる側部41sを略直角に設定することにより、図16の起立動作の正面図に示すように、持上げ具41の上行動作により倒れた胚軸Aを起立することができる。持上げ具41の支持部41bは、穂木苗に対する位置関係に合わせて前後位置と高さ位置を調節可能に構成する。
また、苗Wに対して前記第一の持上げ具41と左右反対側に第二の持上げ具42を設けている。この第二の持上げ具42は、受渡保持機構15とは反対側で苗を取り出すために把持ハンド12が左右移動する側となる苗の側方に位置するべく屈曲したロッドにより形成され、前後移動シリンダ43により進退動作可能に設けられている。苗の側方に位置する第二の持上げ具42の先端部42aは、前記第一の持上げ具41の先端部41tと同様に水平で、第一の持上げ具41の先端部41tより若干高位で且つ前後移動シリンダ43により突出させた状態で平面視で交差するように設けられている。従って、第一の持上げ具41の上行動作で第二の持上げ具42が共に上動し、苗の左右両側方及び後方の三方から苗を持ち上げて直立させることができ、把持ハンド12による穂木苗の把持を適正に行える。特に、セルのピッチが狭いセルトレイにおいて、第二の持上げ具42により把持ハンド12が左右移動した側の隣接苗側に苗が傾いたまま把持ハンド12で把持して移送するようなことを防止でき、苗が隣接苗と絡んだまま把持ハンド12で移送されて苗の把持姿勢が不適正になるようなことを防止できる。また、一方の持上げ具41の上下動機構で他方の持上げ具42も上下動させる構成としたので、この上下動機構の簡素化が図れる。また、第二の持上げ具42を平面視で中途部が把持ハンド12側(隣接苗から離れる側)に突出するように屈曲させた構成としているので、該第二の持上げ具42に干渉しないように把持ハンド12の開閉量を所定に維持できると共に、第二の持上げ具42が隣接苗と干渉しにくくなり、苗取り出しの円滑化が図れる。尚、第二の持上げ具42は、図18に示すように平面視で斜めの部分を設けて構成してもよい。
上記の持上げ具24では三方から苗を持ち上げる構成であるので、残りの一方側(把持ハンド12側)に倒れる苗を直立させることはできない。そこで、搬入機構11のセルトレイ上には、該セルトレイの左右幅にわたる倒れ規制具44を設けている。この倒れ規制具44は、セル内の培土を荒らしたり搬入機構11によるセルトレイの搬送抵抗になったりしないように回転自在のローラで構成され、把持ハンド12で取り出す苗の把持ハンド12側で適確に作用するようにセルの上方に位置する。
また、把持ハンド12の上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22に各々において、左右一対の開閉アーム21a,22aのうち受渡保持機構15側(右側)に位置する一方の開閉アーム21a,22aには、受渡保持機構15と左右反対側(左側、他方の開閉アーム21a,22a側)に延びる苗分離具45を固着して設けている。この苗分離具45は、棒材で構成され、左右方向(左側)に延びる基部45aと該基部45aから前側に屈曲して延びる先端部45bとを備え、開閉アーム21a,22aより若干上位に配置されている。苗分離具45の先端部45bは、一対の開閉アーム21a,22aが開いた状態では、前記他方の開閉アーム21a,22aの上方に位置し、略前後真直方向で若干把持方向内側に向かって延び左右の開閉アーム21a,22aの角度に対して把持方向内側に向く角度となる。一方、一対の開閉アーム21a,22aが閉じた状態では、他方の開閉アーム21a,22aより把持方向外側(左側)に位置し、先端へいくほど把持方向外側となる外向きの角度となる。従って、セルトレイの苗を把持するべく進退機構12bにより把持ハンド12が前進するときは、一対の開閉アーム21a,22aが開き、苗分離具45の先端部45bは把持しようとする苗に干渉しないように当該苗と隣接苗との間に挿入される。そして、一対の開閉アーム21a,22aを閉じると、苗分離具45の先端部45bは隣接苗側(左側)に回動して移動し、把持する苗と隣接苗とを離して苗の絡みを解くようになっている。
上記構成の把持ハンド12による穂木苗の取込動作は、図19の動作手順図に従って行う。
まず、図20(a)の準備状態の動作平面図に示すように、後退位置で上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23を閉状態に準備(S1)した上で、接木苗製造装置1の外側方向への移送機構13の横移動により、搬入機構11上の穂木苗Wの側方から第一の持上げ具41の先端部41tを穂木苗Wの背面位置に挿し入れ、その後前後移動シリンダ43を伸長し第二の持上げ具42を前側に突出させて平面視で先端部が苗の側方に位置させると共に第一の持上げ具41の先端部41tと交差させ、第一の持上げ具41及び第二の持上げ具42の上行動作(S2)により穂木苗Wの倒れを修正する。従って、把持ハンド12は、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22およびカッタ機構23が閉状態で横移動するので、横移動の際にセルトレイの苗に干渉しにくく、また横移動で取り出す苗とは別の苗を懐に収めてしまうようなことを防止でき、苗の取出不良を防止できる。上段のハンド機構21と中段のハンド機構22は、前記横移動の上手側を曲面状に形成しており、横移動で苗と干渉しにくいように且つ苗を傷めないようにしている。尚、持上げ具24は、上行動作(S2)前において、カッタ機構23の略同じ高さに位置する。これにより、カッタ機構23をセルの上面に近づけることができて該カッタ機構23が苗の根元を切断でき、冬期に育苗されるような胚軸が短い苗でも上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22で苗を適正に取り出すことができる。
次いで、図20(b)の把持状態の動作平面図に示すように、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23を開いて前進(S3)した上で上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22を閉じる(S4)ことにより上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22の先端の切欠B、Cに穂木苗Wの胚軸Aが遊嵌保持され、その後にカッタ機構23を閉じる(S5)ことにより、胚軸Aの下段部が切断されて穂木苗Wは回動可能に同カッタ機構23により下端が支持される。ここで、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23を後退(S6)した上で接木苗製造装置1の中心方向に横移動(S7)することにより、搬入機構11から穂木苗を個別に取込むことができる。尚、S6における上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の後退距離すなわち進退機構12bによる進退作動ストロークは、S6の行程によりセルトレイから取り出すべく把持する苗が隣接苗と完全に干渉しない長さに設定されている。
尚、上段のハンド機構21と中段のハンド機構22の間、中段のハンド機構22とカッタ機構23の間には、各々苗ガイド112を設けている。この苗ガイド112は、苗ガイド用シリンダ113により、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の前進に先立って前進し、これから取り出そうとする穂木苗Wが直立姿勢となるよう修正し、苗の取出し不良を防止するものである。苗ガイド112は、上段のハンド機構21、中段のハンド機構22およびカッタ機構23の後退と同時に後退する。
また、移送機構13による移送行程においては、図22の方向修正動作の平面図に示すように、穂木苗を把持した把持ハンド12が把持位置Bから受渡し位置Cまで横移動する際に、その移送行程に干渉するように配置した方向修正部材14の近傍を通過することにより、穂木苗Wの子葉展開方向が移送方向に対して大きく傾斜していると子葉が方向修正部材14と干渉することにより子葉展開方向が略移送方向に揃うように穂木苗が回動される。
前記移送機構13は、コンプレッサからの空気圧により摺動するエアシリンダにより把持ハンド12を横移動させる構成であり、前記シリンダに備えるストロークセンサにより把持ハンド12が搬入機構11及び該搬入機構11上のセルトレイの上方から離れて方向修正部材14の直前位置まで到達したことを検出すると、シリンダへ供給するエアの流量が少なく制御されて移送速度が減速され、移送終端部での移送速度が低速となる構成となっている。この移送速度が減速される位置は、取り出す苗(苗があるセル)の左右位置となる移送始端位置に拘らず同じ位置に設定されている。尚、把持ハンド12が次の苗を把持するべく受渡保持機構15の受渡し位置から搬入機構11上のセルトレイ側へ移動する戻り行程では、通常の速い移送速度で把持ハンド12が横移動する。持上げ具24は、移送機構13の移送速度が移送終端部で減速されるまでの間、持上げ状態に上昇したままであり、苗の移送で他の苗と干渉する等して該苗の姿勢が悪化するようなことを防止している。尚、移送機構13の移送速度が減速するのと同時にカッタ機構23より下位に下降し、苗受渡し行程において邪魔にならないようにしている。
尚、把持ハンド12が苗を取り出して上昇した状態で異常停止やオペレータによる中断操作等の停止状態となった後、リセット操作をすると、把持ハンド12が移送機構13により元の原点位置である受渡し位置Rに戻ろうとするが、把持ハンド12が上昇している状態であるので受渡し保持機構15に干渉することになってしまう。そこで、把持ハンド12が下降位置にあることを検出するセンサを設けており、リセット操作をしたときに、該センサにより把持ハンド12が下降位置にあることを検出したときのみ、移送機構13により把持ハンド12を受渡し位置Rに横移動させる構成となっている。
次に、受渡し位置Rに構成される受渡保持機構15と整列部材とによる整列保持手段について説明する。
受渡保持機構15は把持ハンド12の進出位置で穂木苗を受けるべく、進出動作する把持ハンド12に対向して配置される。その構成は、要部平面図を図23に、要部側面図(a)とそのB一B線断面図(b)を図24に示すように、受けた穂木苗の胚軸Aの上部を把持する上段ハンド機構31と、上段ハンド機構31の直ぐ下側で一方側(接合位置63側)に苗の胚軸Aを寄せて胚軸の位置を位置決めする位置決めハンド機構71と、その下方で胚軸Aの上下中間部を把持する中段ハンド機構32と、上段ハンド機構31及び位置決めハンド機構71の下側且つ中段ハンド機構32の上側で胚軸Aの過大な進入を規制するストッパ33と、これらを一体に高さ位置を調節する昇降機構34を受渡し位置Rに備える。
上段ハンド機構31の把持空間は、苗の胚軸の断面よりも大きい構成となっている。従って、上段ハンド機構31は、苗の胚軸の上部を前記把持空間である所定の融通空間内で移動可能に緩く把持する。位置決めハンド機構71は、前記融通空間内で融通する苗の胚軸Aを寄せて胚軸の位置を位置決めする。中段ハンド機構32は、把持空間が苗の胚軸の断面と略合致し、苗の胚軸を挟持して把持する。そして、先ず上段ハンド機構31が苗の胚軸の上部を緩く把持し、次に中段ハンド機構32が苗の胚軸の上下中間部を把持し、その後に位置決めハンド機構71が苗の胚軸を寄せて位置決めするべく、制御装置により上段ハンド機構31、位置決めハンド機構71及び中段ハンド機構32が所定のタイムラグで把持するべく作動する構成となっている。その後、苗の胚軸を把持した状態で中段ハンド機構32が所定量下動し、把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで下側へ引き下げる構成となっている。
受渡保持機構15の上方で穂木苗の子葉を受ける位置に整列部材16を配置する。整列部材16は、双葉状の子葉展開方向を規制する平板状の部材であり、その中心位置に上下に延びる突条によるガイド部35を形成する。このガイド部35は受けた穂木苗の子葉を左右に振り分けるために、断面形状が山形でその表面を平滑に低摩擦に形成する。
整列保持手段における受渡し動作は、把持ハンド12の進出動作によって受渡保持機構15に穂木苗Wを渡す際に、穂木苗Wの子葉L,Lが整列部材16に押し付けられるとともに、ガイド部35により子葉L,Lが左右に振り分けられて子葉展開軸線が整列部材16に沿うように整列される。
受渡保持機構15への受渡し動作を詳細に説明すると、搬入機構11から穂木苗を取込み、その胚軸を把持した把持ハンド12を受渡保持機構15の正面に位置を合わせた後、まず、図26に示すように、カッタ機構23を含めて把持ハンド12を閉じた状態、すなわち、胚軸Aの下端をカッタ機構23上に受けつつ上段のハンド機構21及び中段のハンド機構22が苗の胚軸を緩く把持した状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで一往復することにより、整列部材16を介して子葉展開方向が修正される。次いで、図26(b)に示すように、カッタ機構23を開くことにより把持ハンド12の上段のハンド機構21に子葉L,Lを受けて穂木苗Wの高さ位置を合わせる。この状態で進退機構12bの進退動作により受渡保持機構15の位置まで再度複数回(2回)往復することにより、整列部材16に子葉が当たって子葉展開方向が整列される。この整列動作の後、把持ハンド12を受渡保持機構15まで進出した上でカッタ機構23を閉じることにより、胚軸Aが所定位置で切断されて長さが揃えられる。
胚軸Aの切断の後にカッタ機構23を開くと共に、受渡保持機構15の上段ハンド機構31、位置決めハンド機構71及び中段ハンド機構32が穂木苗Wを把持し、次いで把持ハンド12による苗の胚軸の把持を解除して把持ハンド12を後退させ、受渡保持機構15の中段ハンド機構32の下動により苗を引き下げる。
このようにして受渡しの終了後に、把持ハンド12を搬入機構11側に戻すことにより、次の穂木苗についての取込みが可能となる。この一連の動作の繰返しにより、搬入機構11から穂木苗を順次取込んで接木ロボット本体1aにより接木処理することができる。尚、苗受渡し行程において、持上げ具24は、苗の受け渡しの邪魔にならないようにカッタ機構23より下位に下降している。
受渡保持機構15には、供給された苗を検出する苗検出センサ124と、苗を受渡保持機構15へ供給する位置から退避した通常位置にある把持ハンド12を検出する把持ハンド検出センサ125を設けている。苗検出センサ124は、上段ハンド機構31と中段ハンド機構32の間に配置され、側方から把持位置に供給された苗の胚軸を検出する光電式のセンサである。把持ハンド検出センサ125は、上方から把持ハンド12を検出する光電式のセンサである。
また、受渡保持機構15の直ぐ上側には、ハンド機構31,32が苗の胚軸を把持するのに連動して点灯する報知装置となる把持完了ランプ126と、ハンド機構31,32による苗の把持を解除するための把持解除操作具となる把持解除スイッチ127を設けている。
そして、台木取込部又は穂木取込部を使用して受渡保持機構15へ苗を自動的に供給する全自動接木作業をするときには、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ124が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ125が把持ハンド12を検出し且つ把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。また、台木取込部又は穂木取込部を使用せず、人手により受渡保持機構15へ苗を供給する半自動接木作業をするときには、受渡保持機構15の周辺を検出するべく把持ハンド検出センサ125の向きを変更調節すると共に、制御装置により、台木側及び穂木側の両方の苗検出センサ124が苗を検出し且つ把持ハンド検出センサ125が何も検出せず(作業者の手を検出せず)且つ把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されなければ、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、接木作業を行う。この全自動接木作業と半自動接木作業の切替は、モードスイッチ49の操作に連動して切り替えられる。尚、全自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ125の検出性能を高分解能の高精度で検出する状態に切り替えて定位置にある把持ハンド12を正確に検出し、半自動接木作業時は、把持ハンド検出センサ125の検出性能を低分解能の広範囲で検出する状態に切り替えて周辺に作業者の手がないことを判断する構成としている。この把持ハンド検出センサ125の検出性能の切替は、制御装置内に設けた増幅装置により行う。
尚、把持完了ランプ126が点灯した状態で把持解除スイッチ127が操作されると、操作された側のハンド機構31,32の把持を解除すると共に台木前処理部3及び穂木前処理部4による苗の搬送を中止する。
尚、作業者は、全自動接木作業と半自動接木作業の何れでも、中段ハンド機構32の苗の引き下げが不十分であるとき、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32が作動した後、中段ハンド機構32の下側の胚軸部分をつかんで更に苗を引き下げることができる。つまり、中段ハンド機構32内で滑らせながら把持した苗の胚軸Aを苗の上部にある子葉展開基部が上段ハンド機構31の上面に接触するまで下側へ引き下げ、苗の上下位置が所定位置となるように位置決めする。尚、中段ハンド機構32の把持面は、ゴムやスポンジ等の弾性体で構成してもよい。これにより、太い胚軸Aでは把持面の面積が大きくなり細い胚軸Aでは把持面の面積が小さくなるため、苗の大きさ(胚軸Aの太さ)に応じて中段ハンド機構32の把持力を異ならせて調節でき、苗の把持力を適度に得ながら苗の引き下げを適正に行える。
従って、先ず上段ハンド機構31が苗の胚軸の上部を緩く把持した後、中段ハンド機構32が苗を把持する前に子葉展開基部が上段ハンド機構31に近づくまで自重により苗が下降し、上段ハンド機構31及び中段ハンド機構32で把持された苗を、作業者が胚軸を把持して引き下げることにより、苗の子葉展開基部を上段ハンド機構31に揃えて苗の上下位置を調整できる。そして、位置決めハンド機構71が苗の胚軸を寄せて横方向の位置決めをすることができる。尚、位置決めハンド機構71が苗の位置決めをした後、作業者が苗を引き下げてもよい。
ところで、苗取込部2の作動を制御する操作パネル1pには、苗取込部2の電源の入切を行う電源スイッチ48と、作動モードを設定するモードスイッチ49と、搬入機構11で搬入するセルトレイの種類を設定するトレイ選択スイッチ50と、作動を開始させるスタートスイッチ51と、作動を停止させるストップスイッチ52と、各作動部を初期状態に復帰させるリセットスイッチ53と、セルトレイ上の苗位置及びセルトレイの苗列の数を任意に設定できる設定変更部54とを設けている。前記モードスイッチ49は、前記スタートスイッチ51の操作での作動域を選択する作動域選択手段であり、ストップスイッチ52を操作するまで連続的に順次苗を前処理部3へ供給するべく作動する自動位置と、1株の苗を前処理部3へ供給するまで作動するか又は接木ロボット本体laのみを作動する手動位置と、各作動行程ごとに作動するステップ位置とに切替操作できる。前記トレイ選択スイッチ50は、把持ハンド12が苗を取り出す左右方向の位置及び搬入機構11の搬送ピッチを切り替えて設定する設定切替手段であり、72穴セルトレイ用の72穴位置と、128穴セルトレイ用の128穴位置と、前記設定変更部54により任意に設定する手動設定位置(MS)とに切替操作できる。尚、前記72穴セルトレイとはセルが縦12列、横6列設けられたセルトレイであり、前記128穴セルトレイとはセルが縦16列、横8列設けられたセルトレイである。従って、これらのセルトレイの種類によってセルの配列ピッチが異なるため、各セルトレイに応じて前記トレイ選択スイッチ50により切り替える構成となっている。把持ハンド12はセルトレイの横一列の苗を受渡保持機構15側から順次取り出すが、この苗取出回数を操作パネル1p内の制御装置でカウントし、トレイ選択スイッチ50の設定に基づく横一列の回数になると、搬入機構11によりセルトレイを搬送する。これにより、横一列の苗を全て取り出したことを判断するために、把持ハンド12が取り出す苗の左右位置を確認するべく、制御装置(PLC)から移送機構13のエアシリンダへ左右位置の確認命令出力を行って該エアシリンダからの入力で判断するのに比較して、制御のスピードが向上し、作業能率の向上が図れる。
また、接木ロボット本体laには、該接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2からなる接木苗製造装置1の全体を一括で制御する制御装置を備える制御パネル55を設けている。この制御パネル55に、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2の作動の入切を行える切替スイッチ等の作動切替手段を設けている。この作動切替手段により、接木ロボット本体la、台木取込部及び穂木取込部2のうち、全部を作動させたり一部を作動させたりすることができ、様々な作業形態で接木苗製造作業が行える。例えば、胚軸長が短い場合に苗接合のための切断位置の精度を要する台木を人手で台木前処理部3へ精度良く供給したいとき、接木ロボット本体la及び穂木取込部2を作動させて台木取込部の作動を停止させることができる。あるいは、苗をセルトレイで育苗しなかった場合にその苗の取込部2を停止させて人手で苗供給したり、苗の接合を人手で行いたいときに取込部2を作動させて接木ロボット本体laの作動を停止させたりできる。尚、台木、穂木共に人手で供給したいときは、接木ロボット本体laのみを作動させればよい。
この接木苗製造装置1において、各苗を1株づつ供給する苗供給装置となる取込部2は、受けた苗の根側を切断しつつ苗の胚軸を回動可能に緩く保持可能な把持ハンド12による遊嵌保持機構と、この遊嵌保持機構を支持して横方向に移送動作する移送機構13と、この移送機構13における移送終端部で苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向を移送方向に合わせるための方向修正部材14を設け、前記移送機構13は、移送終端部での移送速度が低速となるよう前記方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で移送速度が減速される構成としている。
従って、前記遊嵌把持機構は、双葉状の展開子葉を有する苗を受けると、これを穂木または台木としてその根側を切断しつつ胚軸を回動可能に緩く把持し、この苗は遊嵌把持機構を支持する移送機構13により移送されるが、この移送速度は方向修正部材14に苗の子葉が干渉する直前で減速されて移送行程の終端部で低速となり、該移送行程の終端部で方向修正部材14が苗の子葉と干渉することによってその子葉展開方向が移送方向に揃えられる。
尚、台木側及び穂木側のうち、一方は把持ハンド12で受渡保持機構15へ苗を自動供給し、他方は人手により受渡保持機構15へ苗を供給するときは、一方で把持ハンド検出センサ125が把持ハンド12を検出し、且つ他方で把持ハンド検出センサ125が何も検出しないことを条件に、台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成とすればよい。
また、把持ハンド検出センサ125に代えて受渡保持機構15の苗を上方から検出する苗検出センサを設け、全自動接木作業では苗検出センサが苗を検出したことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始し、半自動接木作業では苗検出センサが作業者の手を検出しないことを条件に台木前処理部3又は穂木前処理部4が苗の搬送を開始する構成としてもよい。このときも、苗検出センサの検出性能を切り替える構成とすればよい。
ところで、台木取込部(取込部)と接木ロボット本体laの間に複数の台木苗を保持する台木苗供給装置150を設け、穂木取込部(取込部)2と接木ロボット本体laの間に複数の穂木苗を保持する穂木苗供給装置151を設けることができる。このときは、台木取込部(取込部)から台木苗供給装置150を介して台木用の受渡保持機構15へ台木苗を供給し、穂木取込部(取込部)2から穂木苗供給装置151を介して穂木用の受渡保持機構15へ穂木苗を供給する。尚、台木取込部(取込部)及び穂木取込部(取込部)2を設けず、作業者が台木苗供給装置150及び穂木苗供給装置151へ直接苗を供給する構成としてもよい。尚、台木苗供給装置150から台木前処理部3の台木搬送アーム61へ直接台木苗を供給し、穂木苗供給装置151から穂木前処理部4の穂木搬送アーム68へ直接穂木苗を供給する構成としてもよい。
台木苗供給装置150は、複数(4個)の台木苗保持ハンド152を有する台木回転テーブル153を備える。台木取込部(取込部)の把持ハンド12から又は人手により苗受取位置にある台木苗保持ハンド152へ苗が供給されると、台木苗保持ハンド152が苗を把持して保持し、台木回転テーブル153が適宜回転して苗を保持していない台木苗保持ハンド152を前記苗受取位置に移動させる。これを順次繰り返し、全ての台木苗保持ハンド152で苗を保持する。各々の台木苗保持ハンド152は所定の把持力で苗を把持するが、台木苗保持ハンド152の開閉量を検出して保持する苗の胚軸径を測定する胚軸径センサ154を各々設けており、胚軸径センサ154からの入力により、制御装置は各々の台木苗保持ハンド152が保持する苗の胚軸径を認識し得る。
同様に、穂木苗供給装置151は、複数(4個)の穂木苗保持ハンド155を有する穂木回転テーブル156を備える。穂木取込部(取込部)2の把持ハンド12から又は人手により苗受取位置にある穂木苗保持ハンド155へ苗が供給されると、穂木苗保持ハンド155が苗を把持して保持し、穂木回転テーブル156が適宜回転して苗を保持していない穂木苗保持ハンド155を前記苗受取位置に移動させる。これを順次繰り返し、全ての穂木苗保持ハンド155で苗を保持する。各々の穂木苗保持ハンド155は所定の把持力で苗を把持するが、穂木苗保持ハンド155の開閉量を検出して保持する苗の胚軸径を測定する胚軸径センサ154を各々設けており、胚軸径センサ154からの入力により、制御装置は各々の穂木苗保持ハンド155が保持する苗の胚軸径を認識し得る。
そして、制御装置により、台木苗供給装置150が保持する全ての台木苗の胚軸径と穂木苗供給装置151が保持する全ての穂木苗の胚軸径を比較し、胚軸径の差が第一の基準値である0.5mmより小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがあれば、当該台木苗を保持する台木苗保持ハンド152を苗供給位置へ移動させるべく台木回転テーブル153を回転させ、当該穂木苗を保持する穂木苗保持ハンド155を苗供給位置へ移動させるべく穂木回転テーブル156を回転させ、苗供給位置で台木苗保持ハンド152から台木用の受渡保持機構15又は台木搬送アーム61へ苗を供給し、苗供給位置で穂木苗保持ハンド155から穂木用の受渡保持機構15又は穂木搬送アーム68へ苗を供給し、接木ロボット本体laで接木する。尚、胚軸径の差が基準値である0.5mmより小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせが複数あれば、台木苗供給装置150又は穂木苗供給装置151へ先に供給された苗を優先的に選択して接木する構成となっている。胚軸径の差が第一の基準値である0.5mmより小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがないときは、胚軸径の差が第二の基準値である1.0mmより小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがあれば、上述と同様に苗を供給して接木する構成となっている。
台木苗及び穂木苗が接木ロボット本体laへ供給された後、供給により空になった台木苗保持ハンド152及び穂木苗保持ハンド155を苗受取位置へ移動させるべく台木回転テーブル153及び穂木回転テーブル156を回転させ、苗受取位置で台木苗保持ハンド152及び穂木苗保持ハンド155に苗が供給されると、前述と同様に苗を選択して接木ロボット本体laへ供給する。
従って、台木苗と穂木苗の互いの胚軸径が近似し切断して形成される接合面の面積が近似するので、接合面が合致しやすくなり、互いの相性が良い苗を選択して接合でき接合精度が向上する。尚、前述では苗の胚軸径に基づいて互いの相性が良い苗を選択する方法について説明したが、種々のセンサの測定による胚軸の断面形状(楕円度)や胚軸の硬度等に基づいて互いの相性が良い苗を選択してもよい。このとき、胚軸径と断面形状等、複数の条件に基づいて互いの相性が良い苗を選択してもよい。
制御装置により、台木苗供給装置150が保持する全ての台木苗の胚軸径と穂木苗供給装置151が保持する全ての穂木苗の胚軸径を比較し、胚軸径の差が第二の基準値である1.0mmより小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがないときは、ブザー音を発して警報する。これにより、互いの胚軸径が近似する苗の組み合わせがないとき、すなわち互いの相性が良い苗の組み合わせがないときは、無理に接木を行わないようにでき、接合不良な苗が発生することを予防できる。
以上により、この接木苗製造装置1は、台木苗を接合位置(63)へ搬送する台木前処理部(3)と、穂木苗を前記接合位置(63)へ搬送する穂木前処理部(4)と、前記接合位置(63)に搬送された台木苗と穂木苗を接着する接着処理部(7)を備え、台木前処理部(3)には台木苗を切断する台木切断装置(64)を設け、台木切断装置(64)は、切断刃(75)を所定の切断軌跡で移動させて台木苗の切断箇所に突入させることで切断し、切断刃(75)が前記切断箇所に位置する状態で台木苗の切除するべき部分がある側へ移動する構成としている。
よって、切断後の台木苗の切除するべき部分を、移動する切断刃(75)により台木苗の残すべき部分から離しながら移動させることができ、台木苗の切断面に切除するべき部分が付着して残ることを防止でき、接木苗の接合精度が向上し、また切断刃(75)が切断箇所を通り過ぎた位置まで移動させてから退避移動させる必要がないので、切断工程の作業時間短縮が図れ、良好な接木苗を得ることができる。
また、接着処理部(7)には、多数収容する接木苗の接合用のクリップ(101)から所定個数ずつ順に繰り出して供給する振動式供給装置(73)と、振動式供給装置(73)から供給されるクリップ(101)をガイドレール(105)に沿って前後方向へ移送する振動式移送装置(46)を設け、ガイドレール(105)の終端部でクリップ(101)を接合位置(63)へ一つずつ供給し、クリップ(101)により台木苗及び穂木苗を共に挟持して固定する構成とし、ガイドレール(105)には、第一の所定位置でクリップ(101)の有無を検出する第一クリップセンサ(65)と、第一の所定位置よりも移送上手側となる第二の所定位置でクリップ(101)の有無を検出する第二クリップセンサ(66)を設け、第一クリップセンサ(65)がクリップ(101)を検出しないとき、台木前処理部(3)、穂木前処理部(4)及び接着処理部(7)の運転を停止させ、第一クリップセンサ(65)がクリップ(101)を検出し且つ第二クリップセンサ(66)がクリップ(101)を検出しないことを条件に警報を発し、第二クリップセンサ(66)がクリップ(101)を検出するとき、振動式供給装置(73)の作動を停止させる制御装置を設けている。
よって、第一クリップセンサ(65)がクリップ(101)を検出しないとき、台木前処理部(3)、穂木前処理部(4)及び接着処理部(7)の運転を停止させるので、クリップ(101)がない状態で接木作業を行って台木苗や穂木苗が無駄になることを防止できる。また、第一クリップセンサ(65)がクリップ(101)を検出し且つ第二クリップセンサ(66)がクリップ(101)を検出しないことを条件に警報を発するので、振動式供給装置(73)から供給されるクリップ(101)が無くなって減少したことを知らせ、振動式供給装置(73)へのクリップ(101)の補給を促すことができ、接木作業を中断せずにクリップ(101)を補給でき、接木作業能率の向上が図れる。また、第二クリップセンサ(66)がクリップ(101)を検出するとき、振動式供給装置(73)の作動を停止させるので、振動式供給装置(73)によりガイドレール(105)へ不必要にクリップ(101)が供給されず、無理に供給されることでクリップ(101)が破損することを防止できる。
また、台木前処理部(3)又は穂木前処理部(4)へ供給する苗を一時的に保持する受渡保持機構(15)を設け、受渡保持機構(15)は、苗の胚軸の上部を所定の融通空間内で移動可能に緩く把持する上段ハンド機構(31)と、上段ハンド機構(31)の近くで一方側に苗の胚軸を寄せて前記融通空間内で胚軸の位置を位置決めする位置決めハンド機構(71)と、苗の胚軸の上下中間部を把持する中段ハンド機構(32)を備え、先ず上段ハンド機構(31)が苗の胚軸の上部を緩く把持し、次に中段ハンド機構(32)が苗の胚軸の上下中間部を把持し、その後に位置決めハンド機構(71)が苗の胚軸を寄せて位置決めする構成としている。
よって、先ず上段ハンド機構(31)が苗の胚軸の上部を緩く把持し、次に中段ハンド機構(32)が苗の胚軸の上下中間部を把持するので、中段ハンド機構(32)が苗を把持する前に子葉展開基部が上段ハンド機構(31)に近づくまで自重により苗が下降し、上段ハンド機構(31)及び中段ハンド機構(32)で把持された苗を、作業者が胚軸を把持して引き下げることにより、苗の子葉展開基部を上段ハンド機構(31)に揃えて苗の上下位置を調整できる。そして、位置決めハンド機構(71)が苗の胚軸を寄せて横方向の位置決めをすることができる。よって、接木苗の接合精度が向上する。
また、複数の台木苗を保持する台木苗供給装置(150)と、複数の穂木苗を保持する穂木苗供給装置(151)を設け、台木苗供給装置(150)及び穂木苗供給装置(151)には、各々保持する苗の胚軸径を測定する胚軸径センサ(154)を設け、胚軸径センサ(154)の胚軸径の測定に基づいて、接合する台木苗と穂木苗の組み合わせを決定し、その組み合わせに基づいて台木苗供給装置(150)から台木前処理部(3)へ台木苗を供給すると共に穂木苗供給装置(151)から穂木前処理部(4)へ穂木苗を供給する制御装置を設けている。
よって、台木苗と穂木苗を接合において、互いの相性が良い苗を選択して接合できるので、苗の接合精度が向上する。
また、複数の台木苗の胚軸径と複数の穂木苗の胚軸径を比較し、胚軸径の差が基準値より小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがあれば、当該台木苗を台木前処理部(3)へ供給すると共に当該穂木苗を穂木前処理部(4)へ供給し、新たに台木苗供給装置(150)へ供給された台木苗又は穂木苗供給装置(151)へ供給された穂木苗を含めて、複数の台木苗の胚軸径と複数の穂木苗の胚軸径を比較し、同様に胚軸径の差が基準値より小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがあれば、当該台木苗を台木前処理部(3)へ供給すると共に当該穂木苗を穂木前処理部(4)へ供給する作業を繰り返し、胚軸径の差が基準値より小さくなる台木苗と穂木苗の組み合わせがなければ、警報する構成としている。
よって、台木苗と穂木苗の互いの胚軸径が近似し切断して形成される接合面の面積が近似するので、接合面が合致しやすくなり接合精度が向上する。互いの胚軸径が近似する苗の組み合わせがないときは、無理に接木を行わないようにでき、接合不良な苗が発生することを予防できる。
ところで、接木苗製造装置1へ供給する台木苗及び穂木苗は、温度空調管理、二酸化炭素施肥管理、給液管理及び照明管理がなされた育苗室内で育苗される。育苗室内において、苗を育苗する複数のセルトレイを棚状に配置し、各々の棚(セルトレイ)上には人工照明を備える。人工照明として、波長450〜500nmで比較的波長の短い青色光を発する青色光照明(LED照明)と、波長650〜700nmで比較的波長の長い赤色光を発する赤色光照明(LED照明)を設けている。青色光は胚軸を硬化させるのに有効であり、赤色光は胚軸を伸長させるのに有効である。そして、例えばウリ科苗(きゅうり、南瓜等)を育苗するとき、セルトレイの播種後に育苗室に入庫してから発芽するまでの発芽期(2〜3日程度)は照明を消灯させて暗黒状態とし、発芽から子葉展開までの育苗初期(2〜3日程度)は赤色光の割合を高め(赤色光と青色光の比率が約2:1)、子葉展開から出庫前日ぐらいまでの育苗中期(2〜3日程度)は青色光の割合を高め(赤色光と青色光の比率が約1:2)、出庫直前の育苗終期(1〜2日程度)には再度赤色光の割合を高めることができる(赤色光と青色光の比率が約2:1)。尚、発芽期から育苗中期は1日あたり8〜12時間照明し、育苗終期には常時照明する。尚、発芽期も育苗初期と同様に赤色光の割合を高めて照明してもよい。従って、胚軸伸長期や育苗終期(接木作業直前)には赤色光の割合を高めることができる。尚、青色光照明と赤色光照明は、水平方向に沿う基盤パネル上に互いに交互に配置されて各々が千鳥状に配置され、セルトレイ全面にわたって均一な照明が得られる構成となっている。これにより、胚軸伸長期や育苗終期(接木作業直前)に光合成を促進することにより、胚軸の伸長(目標値50mm以上)や子葉面積の拡大や子葉展開角度の拡大(双子葉間の目標値110度以上)を図ることができ、接木に適した均一な苗を得ることができ、接木精度の向上が図れる。尚、給液管理では、赤色光の比率に比例して給液量を設定し、光合成の促進を図る。
ところで、育苗のために播種する種子を消毒するには、温湯・冷却設備となる種子消毒設備を使用して行える。種子消毒設備は、前工程から後工程の順に温湯消毒装置A、種子冷却装置B、乾燥装置Dを順次設けている。温湯消毒装置Aは、箱型の温湯槽となる温湯消毒槽1を設け、温湯消毒槽201の上方には多数の種子バケット202を循環移送する温湯用移送装置となる循環移送装置203を設けている。尚、前記温湯消毒槽201は、11個の種子バケット202を連ねて収容できる構成となっている。また、種子バケット202には、所定量ごとに種子を収容する網状の種子袋Pを入れるようになっている。尚、この種子消毒設備により種々の種子を消毒できるが、一般的には水稲用の種子(種籾)を消毒することが多い。
種子バケット202は、種子袋Pを投入可能な上方に向く開口を備え、温湯又は冷却水が通水可能に側面270及び底面271が網で構成され、直方体状の形状となっている。種子バケット202の底部となる底面271は、一端部に設けた回動支点軸272回りに開閉可能に構成され、収容する種子袋Pを放出できる構成となっており、他端部に設けた固定フック273により閉じた状態で固定する構成となっている。尚、固定フック273は、スプリングにより底面271を固定する側に付勢されている。尚、後述する循環移送装置203の下降装置203dに、固定フック273が温湯消毒槽201側、回動支点軸272が手前側(温湯消毒槽201とは反対側)となるように種子バケット202を装着し、温湯消毒槽201内での移送で固定フック273が移送下手側、回動支点軸272が移送上手側となるようにする。
温湯用移送装置となる循環移送装置203は移送始端側にあって多数の孔を形成する種子バケット202を下降させて温湯消毒槽201内の温湯に浸漬させる下降装置203dと、温湯消毒槽201内を浸漬した状態で種子バケット202を移送する移送装置203aと、移送終端側にあって温湯消毒槽201内を浸漬した種子バケット202を温湯消毒槽201の移送終端部上に上昇させる上昇装置203bと、上昇装置203bで上昇させた種子バケット202を下降装置203dまで戻す戻し装置203cを備えている。
移送装置203aは、種子バケット202の上端に設けた縁部202aを左右下側から受ける案内レール部204を備え、移送始端部には種子バケット202を移送させるためのチェン式の移送コンベア5を左右に設けている。移送コンベア205は、周回経路の適宜位置に種子バケット202を移送させる押し用突起205aを備え、該押し用突起205aが種子バケット202の縁部の左右に固着した左右方向の固着軸202bを移送方向に押すことで当該種子バケット202を移送し、移送下手側の種子バケット202が順次移送上手側の種子バケット202に押されて温湯消毒槽201内で種子バケット202が移送されていく構成となっている。
上昇装置203bは、案内レール部204の終端(移送終端)にある種子バケット202の固着軸202bが引っ掛かる持上げ用突起206aを備えるチェン式の上昇コンベア206を左右に設けている。従って、該上昇コンベア206の駆動により、案内レール部204の終端(移送終端)にある種子バケット202の固着軸202bが持上げ用突起206aに持上げられ、種子バケット202が上昇する構成となっている。上昇コンベア206は、持上げ用突起206aが固着軸202bに引っ掛かる上昇始端位置から種子バケット202を上昇させるにつれて移送装置203aの移送方向に移動させる斜めの移動経路(周回経路)を備えた側面視で三角形状の周回経路で周回する。そして、前記斜めの移動経路の途中には種子バケット202を傾かせるカム207を左右に設けており、種子バケット202の上昇で前記カム207が種子バケット202の縁部202aにおける固着軸202bの一方側(移送装置203aの移送上手側、温湯消毒槽201側)に上側から接触して押し下げることにより、固着軸202bを支点に種子バケット202をその下部が種子冷却装置B側に向くように傾かせる。種子バケット202が傾いた状態で、種子バケット202の底面271の移送下手側の端部にある固定フック273にフック解除カム274が接触し、固定フック273が一時的に解除されることにより底面271が自重により移送上手側の端部にある回動支点軸272回りに下側へ回動して底面271を開放し、種子バケット202内の種子袋Pを種子冷却装置Bの冷却バケット208へ放出する構成となっている。尚、回動支点軸272部分には底面271の回動位置を規制する回動ストッパを設けており、傾いた状態の種子バケット202の底面271を開放するとき、該底面271が冷却槽210側に下り傾斜姿勢となる位置で保持される構成となっている。尚、温湯消毒槽201の上端からカム207の位置にかけて、上昇あるいは傾斜する種子バケット202から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽201へ案内するガイド板209を設けている。このガイド板209により、種子バケット202から垂れ落ちる温湯を温湯消毒槽201へ戻して温湯消毒槽201内の熱の放出を抑えると共に、前記温湯が種子冷却装置Bの冷却槽210に垂れ落ちることによる冷却効率の低下を防止できる。そして、上昇コンベア206により、種子袋Pを種子冷却装置Bの冷却バケット208へ放出する放出位置を過ぎた位置に種子バケット202が到達するタイミングで、種子バケット202の底面271を閉じる閉鎖装置275が作動する。閉鎖装置275は、下側から底面271に接触して押し上げる閉鎖用シリンダで構成されている。閉鎖装置275により底面271を閉じると、底面271は固定フック273により自動的に閉鎖状態に保持される。
種子バケット202の底面271を開放することにより、種子バケット202から冷却バケット208へ円滑に種子を供給できるので、加温処理後に即座に冷却処理がなされないことによる種子の発芽障害や処理能率の低下を防止できる。また、底面271を開放すればよいので、種子バケット202を反転させる必要がなく、温湯消毒装置Aから種子冷却装置Bに種子袋Pを簡単に供給することができる。
戻し装置203c及び下降装置203dは、種子バケット202の固着軸202bが引っ掛かる搬送用突起211aを備えるチェン式の戻しコンベア211を左右に備えて構成されている。尚、前記搬送用突起211aは、戻しコンベア211の周回方向の前後に対向して配置され、前後の突起211aで固着軸202bを挟むようにして保持する構成となっている。従って、上昇装置203bの上昇コンベア206でその上端部に上昇した種子バケット202を、前記戻しコンベア211が、受け継いで移送装置203aの移送始端側に横移動した後、下降させてその下降経路の途中の種子袋供給位置rで待機させる。この種子袋供給位置rで、種子バケット202は温湯消毒槽201の上方に位置しており、作業者が当該種子バケット202に種子袋Pを供給するようになっている。そして、移送装置203aが作動して移送始端部に種子バケット202を収容するスペースができると、戻しコンベア211を作動させて前記種子袋供給位置rにある種子バケット202を下降させ、種子バケット202を戻しコンベア211の下端から温湯消毒槽201へ落下して供給する。尚、種子袋供給位置rで待機する種子バケット202は、下部の前側が温湯消毒槽201に取り付けたガイド212に接触し、上部の開口部が前側に向くように傾く。これにより、作業者が種子バケット202に種子(種子袋P)を容易に供給できる。更に、種子バケット202が傾いている分、種子バケット202が温湯消毒槽201の温湯に浸されない高さで且つ当該種子バケット202の前記開口部の高さを極力低く設定することができるため、種子バケット202への種子(種子袋P)の供給が容易である。
移送装置203a、上昇装置203b、戻し装置203c及び下降装置203dは種子バケット202を同時に間欠的に移送する構成であるが、移送装置203aは複数の種子バケット202を同時に移送し、上昇装置203b、戻し装置203c及び下降装置203dは各々単一の種子バケットを移送する構成であり、移送装置203a、上昇装置203b、戻し装置203c及び下降装置203dで各々の移送ピッチが異なる構成となっている。尚、下降装置203dは種子バケット202を種子袋供給位置rに移送した状態で停止する。従って、戻し装置203c及び下降装置203dの移送距離に対する移送時間が移送装置203aの移送距離に対する移送時間より短く設定されており、空の種子バケット202の数を減らすことにより、コストダウンが図れると共に、温湯消毒槽201の上方の空の種子バケット202の数が少ないため、作業者が温湯消毒槽201内の消毒状況や運転状況を視認するときに空の種子バケット202が邪魔になりにくく、容易に視認できる。
また、移送装置203aで間欠的に移送される種子バケット202の移送は、移送中の時間より移送停止状態の時間の方が長くなるように設定されている。従って、温湯消毒槽201内の後述する温水噴出口213の上方に種子バケット202を長く滞留させることができ、種子の殺菌効果を高めることができる。また、移送装置203aの移送停止時間を長くすることで、これに連動する上昇装置203b及び下降装置203dの停止時間を長く設定することができるので、種子袋供給位置rでの種子バケット202の停止時間を長く設定でき、停止している種子バケット202に種子(種子袋P)を容易に供給できる。また、前記移送装置203aの移送停止時間を調節する切替装置となる調節ダイヤル289により長時間加温状態と短時間加温状態とに切り替えできる構成となっており、この移送停止時間の切替により同一の種子バケット202が温湯消毒槽201に浸漬される総時間を変更できる。尚、短時間加温状態のときの種子バケット202の間欠的な移送時間の周期は、長時間加温状態のときの2分の1に設定される。従って、種子の品種に応じて種子の消毒時間を変更することができる(例えば、うるち米の種籾は10分間浸漬し、もち米の種籾は6分間浸漬する等)。これにより、移送装置203aの移送中の移送速度を変えずに容易に浸漬時間を変えることができる。尚、移送装置203a、上昇装置203b、戻し装置203c及び下降装置203dは、共通の駆動源である循環移送用モータ290により作動する。従って、調節ダイヤル289からの信号により制御部243を介して循環移送用モータ290へ出力される構成となっている。
温湯消毒槽201内の底部には所定間隔毎に温水噴出口213を配設し、間欠移送されながら停止している種子バケット202の停止位置下方に温水噴出口213を位置させ、種子バケット202に向けて温水を噴出し、温水が種子バケット202の孔を通過し網状の種子袋Pに収容する種子(種籾)に作用する構成としている。なお、温湯消毒槽201の底部を前後方向中間部に向けて下り傾斜に構成し、中間部に排水溝214を構成している。
温湯消毒槽201の後工程には種子冷却装置Bを設けている。この種子冷却装置Bには、前後方向に長い冷却槽210を設け、この冷却槽210には前側から後側に向けて複数の冷却バケット208を設けている。冷却バケット208は多数の孔を形成し、左右方向の軸208aにより回動自在に支持している。そして、冷却バケット208が軸208aを軸心に回動反転すると冷却バケット208内に収容する種子袋Pが次の冷却バケット208に収容される構成である。冷却バケット208を回動(反転)させる冷却移送用モータ261を、複数の冷却バケット208に対応して各々設けている。従って、冷却バケット208及び冷却移送用モータ261等により、冷却用移送装置を構成している。尚、冷却バケット208は、反転時に小さく2度回動して種子袋Pの排出を確実に行うようにしている。冷却槽210内には冷却区域となる各冷却バケット208の収容部ごとに槽内を仕切る仕切り壁216を設けている。従って、仕切り壁216は、複数の冷却バケット208どうしの間に設けられ、冷却槽210内を複数の冷却区域に分割する。また、仕切り壁216には、隣接する冷却バケット208の収容部間で流水を許容する開口部276を構成している。この開口部276は、複数の冷却バケット208の配列方向すなわち種子袋Pの移送方向において上下に交互に構成されている。すなわち、隣接する仕切り壁216において開口部が上下互い違いに配置されている。
冷却区域を構成するユニットを追加することにより冷却槽210内の冷却区域の個数を変更できる構成となっている。冷却槽210内に4箇所の冷却区域を構成した場合について説明すると、種子の移送下手側1番目(以下、種子の移送下手側から数えた順番として説明し、「種子の移送下手側」の記載を省略する。)の冷却区域と2番目の冷却区域の間の1番目の仕切り壁216は、下部に開口部276を構成し、上部では冷却水が流水しないように高く配置される。2番目と3番目の冷却区域の間の2番目の仕切り壁216は、流水を許容するよう上端部を低く配置して開口部276を構成し、下部では開口を設けず閉塞している。3番目と4番目の冷却区域の間の3番目の仕切り壁216は、1番目の仕切り壁216と同様に、下部に開口部276を構成し、上部では冷却水が流水しないように高く配置される。
そして、冷却槽210に新たな水を供給する冷却用給水口218が冷却槽210内において種子の移送下手側(排出シュート217側)の端部の位置で給水する構成となっており、冷却用給水口218からの冷却水は冷却槽210内において仕切り壁216で仕切られる種子の移送下手側の冷却区域から順次供給されていくことになる。更に詳述すると、先ず1番目の冷却区域の上部に冷却用給水口218が配置され、1番目の冷却区域の上部に冷却水が供給され、1番目の冷却区域から1番目の仕切り壁216の下部の開口部276を介して2番目の冷却区域へ冷却水が供給され、2番目の冷却区域から2番目の仕切り壁16の上部の開口部276を介して3番目の冷却区域へ冷却水が供給され、3番目の冷却区域から3番目の仕切り壁216の下部の開口部276を介して4番目の冷却区域へ冷却水が供給される。尚、4番目の冷却区域の上部に排水口234が配置され、4番目の冷却区域の上部から冷却槽210内の冷却水が排出される。従って、冷却槽210内において、冷却水の流水経路が上下にジグザク状となるので、冷却用給水口218から供給される冷却水が冷却槽210内にあまり滞留せずに排水口234から排出されるようなことを防止でき、隣接する仕切り壁216の間すなわち冷却区域内で冷却水が滞留しやすくなる。
尚、上述のように偶数の冷却区域を配列する場合は、冷却用給水口218及び排水口234を共に冷却区域の上部に配置すればよいが、3箇所等の奇数の冷却区域の場合は、冷却水の流水経路を上下にジグザク状にするために、冷却用給水口218と排水口234のうちの一方を冷却区域の上部に配置し、他方を冷却区域の下部に配置すればよい。
ところで、種子バケット202が上昇装置203bで上昇してカム207で傾く放出位置の直前に到達したことをセンサで検出すると、最も温湯消毒装置Aに近い冷却バケット208が反転してから元に戻り、その後、種子バケット202が放出位置へ上昇してカム207で傾く構成となっている。これにより、種子バケット202から冷却バケット208に種子を供給する直前に当該冷却バケット208の種子を次の冷却バケット208に供給することができ、冷却バケット208による種子の冷却時間を長くすることができて冷却効果を高めることができる。
また、種子バケット202の容積より冷却バケット208の容積が大きく設定されている。よって、種子バケット202の容積が小さいので、温湯消毒槽201内の種子バケット202が供給されない不要な部分を小さくして温湯を効率良く使用できる。また、冷却バケット208の容積が大きいので、後述する空気噴出口219からの空気により種子の攪拌が容易になり、冷却効果が高まる。
また、冷却槽210の冷却バケット208の下方には、空気噴出管220をそれぞれ設け、ブロワ221により空気噴出口219に空気を供給し、浸漬中の冷却バケット208に向けて空気を噴出する構成としている。また、温湯消毒槽201にも空気噴出管219を設けており、この空気噴出管219は、温水噴出口213を備える温水管222の上側で平面視で交差(直交)するように配置されている。温水管222は温湯消毒槽201の長手方向(前後方向)に延び、温水噴出口213が左右に温湯を噴出するので、温湯消毒槽201の短手方向(左右方向)の対流が前後方向の全体にわたって均等に発生し、温湯消毒槽201内の温度むらを抑えることができる。空気噴出管219は、停止する各種子バケット202の下方に位置しており、各種子バケット202へ向けて空気を噴出することにより全ての種子を均等に攪拌できる。
前記ブロア221は冷却槽210用と温湯消毒槽201用で共通であり、温湯消毒槽201の空気噴出管219へは温湯消毒槽201の外面(側面)で接触する前後に長い接触管223を介して空気が供給される。この接触管223により、温湯消毒槽201へ供給する空気の温度を上昇させることができ、温湯消毒槽201内の温度低下を防止している。
次に種子消毒の工程について説明する。
下降装置203dの途中の種子袋供給位置rに停止している種子バケット202に種子を収容した網状の種子袋Pを供給する。そして種子袋供給位置rから温湯消毒槽201内まで下降装置203dで種子バケット202を下降して温湯に浸漬する。
温湯消毒槽201内では種子バケット202は移送装置203aで移送され、移送装置203aは間欠駆動する。そして、種子バケット202は温水噴出口213に対向する位置に停止し、停止した状態で噴出する温水に晒され、種子袋P内の種子の消毒作用を促進するものである。
各温水噴出口213毎に設定時間停止しながら移送された種子バケット202は移送終端側で上昇装置203bによって引き上げられる。その上昇の途中で種子バケット202が傾斜し、種子バケット202内の種子袋Pは放出され、開いた種子バケット202の底面271に案内されて冷却槽210の始端側の冷却バケット208内に供給される。
空になった種子バケット202は上昇装置203bで引き続いて上方に移送され、次いで、戻し装置203cで移送始端側に向けて温湯消毒槽201の上方を間欠移送され、下降装置203dで再度種子袋供給位置rに循環移送される。
なお、循環移送装置203は間欠駆動の代わりに低速で連続的に駆動するように構成してもよい。
冷却槽210の冷却バケット208に供給された種子袋Pは冷却水により冷却される。冷却バケット208は循環移送装置203の間欠駆動と連動する構成とし、温湯消毒槽201から冷却槽210へ次の種子袋Pが供給される前に回動して次の冷却バケット208へ種子袋Pを供給し、温湯消毒槽201からの種子袋Pを受け入れる。すなわち、冷却終端側の冷却バケット208から順次回動反転することで種子袋Pを順に次の冷却バケット208に移送すると共に、冷却始端側の冷却バケット208に温湯消毒槽201からの種子袋Pを受け入れるようにしている。
そして、複数の冷却バケット208を順次通過した種子袋Pは排出シュート217から排出され、次工程の乾燥装置Dで乾燥される。
また、切替装置である調節ダイヤル289を長時間加温状態に切り替えると、各種子バケット202が冷却バケット208へ種子を供給する度に、冷却バケット208は種子を排出側へ移送する。切替装置289を短時間加温状態に切り替えると、複数(例えば2個)の種子バケット分の種子を同じ冷却バケット208へ供給し、種子バケット202から冷却バケット208へ種子を複数回(例えば2回)供給する度に、冷却バケット208は種子を排出側へ移送する。従って、温湯槽201での加温時間の変更に拘らず、冷却槽210での冷却時間は一定になる。
よって、種子を温湯槽201及び冷却槽210で移送させて高能率化を図ると共に、加温可能な時間が短い品種では短時間加温状態に切り替え、加温可能な時間が長い品種では長時間加温状態に切り替えることにより、加温により種子の発芽障害や消毒不足を防止しながら、加温時間の変更に拘らず冷却時間を一定にして適正な冷却効果を得ることができ、冷却不足による発芽障害や処理能率の低下を防止できる。
尚、短時間加温状態のとき、複数(例えば2個)の種子バケット分の種子(種子袋P)を同じ冷却バケット208へ供給し、冷却槽210において複数の種子バケット分の種子(種子袋P)をまとめて移送することになる。従って、種子バケット202から最も移送上手側の第一の冷却バケット208へ先に供給される種子袋Pは、前記第一の冷却バケット208内の低位で冷却水に確実に浸され且つ前記第一の冷却バケット208内での冷却時間を十分に得ることができて十分な冷却効果を得ることができるが、前記第一の冷却バケット208へ後から供給される種子袋Pは、第一の冷却バケット208内で先に供給した種子袋Pの上に載るので、第一の冷却バケット208内の高位で冷却水に確実に浸されず且つ前記第一の冷却バケット208内での冷却時間を十分に得ることができずに十分な冷却効果を得られないときは、冷却移送用モータ261により第一の冷却バケット208のみ種子バケット202と同期して反転させ、第一の冷却バケット208に種子袋Pを一つずつ供給することができる。これにより、温湯消毒直後に種子を確実に且つ十分に冷却することができ、初期冷却が不十分であったり遅れたりすることによる発芽不良の発生を防止できる。
また、循環移送装置203が設定時間毎に間欠駆動するため、一つの種子バケット202が温湯に浸漬する時間を一定にすることができ、かつ停止毎に温水にさらされるため、多数の種子袋Pに均一な消毒を効率よく行うことができる。そして、冷却バケット8と循環移送装置203は連動して駆動するため、種子袋Pを冷却水に浸漬する時間をも一定にすることができ多数の種子袋Pに均一な冷却を行うことができる。
また、温水噴出口213を温湯消毒槽201内全体にわたって設定間隔毎に配置することで、温湯消毒槽201内の温度むらを防止し、種子バケット202内の種子袋Pの種子に温湯の浸透が均等化し、温湯殺菌効果を高めることができる。また、種子バケット202を温湯消毒槽201内で間欠移送することにより、種子の浸漬、離水が迅速になり、浸漬殺菌時間が正確となり、殺菌効果を高めることができる。すなわち、本実施の形態では1つの種子バケット202は10箇所の温水噴出口213毎にその上方で停止して浸漬される。
また、冷却槽210内に空気を噴出させることで、冷却槽210内の冷却水の温度上昇を低減する防止することができ、冷却効果を大きくすることができる。
次に、温湯消毒槽201及び冷却槽210に使用する温湯及び冷却水の供給経路について説明する。温湯消毒槽201内には温湯オーバーフロー樋224を設け、温湯オーバーフロー樋224にオーバーフローした温湯は外部に排出される。また、温湯消毒槽201内には温湯オーバーフロー樋224とは別の温湯排出口225を設け、該温湯排出口225から戻り経路となる温湯戻り路226を介して切替弁227に供給される。従って、前記切替弁227の切替により、前記温湯排出口225から温湯を排出する状態に切り替える構成となっている。
そして、温湯戻り路226からの温湯は、切替弁227を介して給湯経路となる給湯路228に供給される。該給湯路228には、ポンプ229及びヒータとなるインラインヒータ230を設けている。尚、前記インラインヒータ230は、ボイラ231から各種バルブを備える蒸気供給路232を介して水蒸気が供給され、熱量を得る構成である。この給湯路228を介して温湯が温水噴出口213から温湯消毒槽201へ供給される。尚、温湯消毒槽201内の温湯の温度は温湯用水温センサ233により約60℃になるよう制御する。
また、冷却槽210の排水口234からオーバーフローした冷却水を、冷却水オーバーフロー経路となる還流路235を経由して回収槽236に還流するように構成している。回収槽236内の冷却水は、給水経路となる給水路237へ供給される。該給水路237は、開閉弁238を備え、前記切替弁227へ水を供給する構成となっている。そして、切替弁227の切替により、給水路237の水を給湯路228に供給する構成となっている。
従って、切替弁227は、給水路237からの水を給湯路228へ供給する水補給状態と、温湯戻り路226からの温湯を給湯路228へ供給する温湯循環状態とに切り替わる構成となっている。また、温湯消毒槽201には、水位計239と前述した温湯用水温センサ233とを設けている。よって、水位計239の検出により温湯消毒槽201内の水位が設定値より低いことが制御部240に入力されると、制御部240からの出力により、開閉弁238が開き、前記水補給状態に切替弁227が切り替えられ、ポンプ229が作動し、ボイラ231が作動してインラインヒータ230が作動し、回収槽236内の水を加温しながら温湯消毒槽201に補給するよう制御される。このとき、温湯用水温センサ233の検出により温湯消毒槽201内の温湯の温度が所望の温度に達している場合は、ボイラ229並びにインラインヒータ230を停止して、回収槽236内の水を加温せずに温湯消毒槽201に補給するようになる。水位計239の検出により温湯消毒槽201内の水位が設定値に達したことが制御部240に入力されると、制御部240からの出力により、開閉弁238が閉じ、ボイラ229並びにインラインヒータ230を停止して、水の補給を停止する。温湯消毒槽201内の水位が設定値に達している場合に、温湯用水温センサ233の検出により温湯消毒槽201内の温湯の温度が所望より低いことが制御部240に入力されると、制御部240からの出力により、前記温湯循環状態に切替弁227が切り替えられ、ポンプ229が作動し、ボイラ231が作動してインラインヒータ230が作動して、温湯消毒槽201内の温湯を循環しながら加熱し温湯が所望の温度(約60℃)となるよう制御される。
また、前記切替弁227は、給水路237からの水と温湯戻り路226からの温湯を混合して給湯路228へ供給する混合状態に切り替えることができる構成となっている。更に、前記混合状態において、給水路237からの水と温湯戻り路226からの温湯の混合割合を変更して調節できるようになっている。これにより、温湯消毒槽201内の水位や水温に応じて、所望の水位及び水温に精度良く制御することができるようにしている。また、温湯消毒槽201内の水位が設定値に達している場合でも、温湯消毒槽201内の温湯が種子により汚れているときには、給水路237からの水を温湯消毒槽201内に供給するようにし、汚れた温湯を温湯オーバーフロー樋224からオーバーフローさせて外部に排出することができる。よって、温湯消毒槽201内の温湯が汚れている場合に種子消毒作業を中断して前記温湯を入れ替えるようなことをせずに、種子消毒作業をしながら温湯消毒槽201内の温湯を入れ替えることができ、種子消毒の連続作業が行えて作業能率の向上が図れる。
この構成によると、熱効率の向上をはかり、使用水量の削減を図ることができる。特に、回収槽236に貯留する水は、次回の種子消毒作業開始時に温湯消毒槽201に水を張り込むのに使用でき、あるいは非作業時に洗浄用の水として温湯消毒槽201に張り込むことができる。
尚、温湯オーバーフロー樋224からオーバーフローする温湯は二方向切替弁291に供給され、一方に切り替えるとそのまま排出され、他方に切り替えると暖房用ポンプ292を介して放熱管293に供給されてから排出される。この放熱管293は温湯消毒槽201の前側に配置されているので、種子袋供給位置rで種子バケット202へ種子袋Pを供給する作業者用の暖房となり、作業者の足冷えを防止し作業環境の改善が図れる。
尚、上記とは別に、温湯消毒槽201に新たな水を供給するための給水手段となる消毒用給水口241を設けている。また、前述のように、冷却槽210に新たな水を供給するための給水手段となる冷却用給水口218を設けている。冷却用給水口218は、冷却槽210内の水温を検出する冷却用の水温センサ242の検出に基づいて、水温が所定温度より高いときに制御部243からの信号により自動的に開いて給水する構成となっている。これにより、冷却槽210内の水温を所望の温度に維持することができ、冷却効果を高めることができる。尚、冷却用給水口218は冷却槽210内において種子の排出側(排出シュート217側)の端部の位置で給水する構成となっているので、冷却用給水口218からの冷却水は冷却槽210内において仕切り壁216で仕切られる前記排出側の区画から順次供給され、前記排出側の区画ほど水温を低くして種子が順次水温が低い区画に搬送されていく構成にでき、冷却効果を高めることができる。また、冷却槽210の水を循環させながら冷却するチラー294も備えている。
また、作業開始時に温湯消毒槽201及び冷却槽210へ水を供給するときは、先ず制御部243からの信号により消毒用給水口241を開き、回収槽236に水があるときはポンプ229及びインラインヒータ230を作動させ、温湯消毒槽201内に水を充填し、インラインヒータ230により温湯消毒槽201内の水を加温しながら制御部243からの信号により冷却用給水口218を開いて冷却槽210へ水を供給する。これにより、温湯消毒槽201内の水を加温するのと同時に冷却槽210へ水を供給するので、作業開始までの準備時間を短縮でき、作業能率を向上させることができる。
尚、給湯路228においてポンプ229及びインラインヒータ230の下手側の分岐点で分岐されるチラー洗浄用路295を設けている。このチラー洗浄用路295は、更に二又に分岐してチラー294の吸込側経路と吐出側経路とに連通している。給湯路228の分岐点よりも下手側に温湯槽用弁296を設け、チラー294の吸込側経路と吐出側経路に各々洗浄用弁297を設けている。従って、作業終了後等、チラー294を洗浄するとき、温湯槽用弁296を閉じ、一方の洗浄用弁297を開き、ポンプ229を駆動することによって、チラー294に温湯を供給して該チラー294の内部配管等を洗浄できる。尚、洗浄用温湯の温度が低いときには、インラインヒータ230を作動させればよい。また、開く洗浄用弁297を切り替えることにより、正洗と逆洗との双方が行える。これにより、種籾のボウが詰まりやすく清掃が頻繁に必要なチラー294を良好に洗浄できる。
以上により、冷却槽210で温度上昇した水を排水口234から効率良く回収槽236に回収できるので、回収槽236から給水路237を介して給湯路228へ供給される水の温度を高めることになり、ヒータ230による加熱量を抑えることができ、ボイラ231の燃費の削減が図れてランニングコストの低減が図れる。また、仕切り壁216により冷却槽210の種子投入側の区画ほど水温が高くなるようにしているので、温度上昇した水をオーバーフロー口から効率良く排出できる。更に、各区画を経た上澄みの水をオーバーフロー口から回収できるので、きれいな水を温湯用として再利用することができる。
ところで、異常時等に緊急で種子を設備外へ排出するための緊急排出手段となる緊急排出スイッチ277を設けている。緊急排出スイッチ277が操作されたことが制御部240に入力されると、各種子バケット202が冷却バケット208へ種子を供給する度に冷却バケット208は種子を排出側へ移送する前記長時間加温状態に設定すると共に、循環移送用モータ290で駆動する循環移送装置203と冷却移送用モータ261で駆動する冷却用移送装置の間欠駆動における停止している時間となる間欠時間間隔を極めて短く設定する緊急排出モードに切り替わり、緊急排出モードの設定に基づいて制御部240から循環移送用モータ290及び冷却移送用モータ261へ出力し、種子袋Pを速やかに排出シュート217部へ排出する構成となっている。
これにより、温湯槽201内の温湯が必要以上に高温であるとき、種子を必要以上に高温の温湯に浸漬することによる加温過多で発生する種子割れ等の種子の損傷を防止できる。また、冷却槽210内の冷却水が所望の温度よりも低温であるとき、種子を必要以上に冷却することによる冷却過多で発生する種子障害を防止できる。また、温湯槽201内の温湯又は冷却槽210内の冷却水の水位が所望の水位でないとき、種子バケット202内の下部となる一部の種子のみが温湯に浸漬されて種子バケット202内で加温むらが発生したり、冷却バケット208内の下部となる一部の種子のみが冷却水に浸漬されて冷却バケット208内で冷却むらが発生したりするのを防止できる。ひいては、この加温むらや冷却むらの発生により、加温不足や冷却不足の種子が発生するのを防止できる。よって、種子の品質の劣化を極力回避でき、品質の劣化による損失を低減させることができる。また、温湯槽201内の温湯が低温であるとき、種子の消毒が不十分であるから、緊急排出モードにより素早く種子を設備外へ排出し、再度消毒の処理をし直したり、別の種子の消毒作業に取り掛かったりできる。また、冷却槽210内の冷却水が高温であるとき、種子の冷却が不十分であるから、緊急排出モードにより素早く種子を設備外へ排出し、別の種子の消毒作業に取り掛かることができる。消毒不良又は冷却不良と判断される種子は、品質が低下しているので廃棄する。
また、温湯消毒槽201内の温湯の温度が所望の温度よりも低温又は高温であることを温湯用水温センサ233が検出するとき、冷却槽210内の冷却水の温度が所望の温度よりも低温又は高温であることを水温センサ242が検出するとき、温湯消毒槽201内の温湯の水位が所望の水位に満たないことを水位計239が検出するとき、あるいは冷却槽210内の冷却水の水位が所望の水位に満たないことを冷却用水位計278が検出するとき、これらの温湯用水温センサ233、水温センサ242、水位計239及び冷却用水位計278からの入力信号に基づき制御部240により自動的に緊急排出モードに設定する。
次に、乾燥及び保管工程について説明する。冷却装置Bの排出シュート217から取り出した種子袋Pを、脱水機251で脱水し、次いで、網コンテナ246に段積みし、網コンテナ246を水切りし乾燥装置Dの乾燥室255に送り込んで乾燥する。次いで、放冷室253に網コンテナ246を送り込んで放冷し、低温貯蔵庫253に送り込み貯蔵する。この構成によると、網コンテナ246に種子袋Pを段積みしたままで連続して乾燥、放冷、貯蔵をすることができ、作業時間を短縮し作業能率を高めることができる。
次に、乾燥装置Dについて説明すると、乾燥室255の一側には乾燥受け台256を設け、他側には送風ファン257、出芽用暖房機258を設けている。乾燥室255の底部には温風通路244を設け、温風通路244を経由して暖房機258で温めた空気を送風ファン257で送り、乾燥受け台256に送り込むように構成している。
また網コンテナ246にコンテナシート248を敷き込んで多数の種子袋Pを段積みし、この網コンテナ246を乾燥受け台256に載置する。そして、網コンテナ246の上部にはダクトフード247を載置し、ダクトフード247の下部とコンテナシート248の上部とを、例えばファスナ249により密閉状に接続して簡易乾燥室を構成し、ダクトフード247の上部と送風ファン257とを循環通路245により接続し、乾燥風を循環するように構成している。
また、乾燥受け台256には、下側が狭く上側の網コンテナ246下部全面に向かって順次拡がる乾燥風路256aを仕切り板256bにより仕切り構成し、温風通路244から網コンテナ246に向けて乾燥風を均等に送り込み、段積み種子袋Pを均等に乾燥するように構成している。前記構成によると、網コンテナ246には下側から上側へ向けて均等な乾燥風が流れ、種子袋Pを均等に能率的に乾燥することができる。
尚、この種子消毒設備を使用して、例えば水煮用や缶詰用等の食品加工のために、別の処理物となるアスパラガスを茹でることもできる。
種子消毒設備で消毒された種子は、以下に説明する播種施設により播種することができる。この播種施設は、2階が育苗箱置場となっており、その育苗箱置場の育苗箱Cが育苗箱供給装置340によって1階に設置した播種設備341に1枚ずつ順次供給される。播種設備341は、育苗箱Cを一定方向に搬送する播種コンベヤ342に沿って、育苗箱に床土を入れて鎮圧・均平する床土供給装置343、水稲用の灌水装置344、床土の上に種籾を播種する水稲播種装置345、覆土を施す覆土供給装置346、野菜用の灌水装置347が設けられている。播種設備341によって播種等を施された育苗箱は、段積み設備215によってパレットPLの上に所定段数ずつ段積みされるとともに、その上に空の育苗箱が載せられる。そして、それをフォークリフトによって出芽室348に搬入して出芽させる。
水稲播種装置345の貯留する種籾の減少に伴って、種籾コンテナ350から自動的に該水稲播種装置345へ種籾を供給する種籾供給コンベア351を設けている。この播種施設には浸種水槽352を複数個設けており、水を張った該浸種水槽352内へ種籾を収容した状態の種籾コンテナ350を沈めて浸種して種子の芽出しを促進した後、その種子を水稲播種装置345へ供給するようになっている。
また、播種施設には土混合機360を設けており、土混合機360で各種培土を所望の混合比率で混合して得られた土を土供給コンベア361を介して床土供給装置343の床土タンクへ供給する構成となっている。また、床土供給装置343には、播種コンベヤ342上の育苗箱に供給されずに零れ落ちた土を回収して再度床土タンクへ戻す土リターン装置を設けている。これにより、零れ落ちた土を無駄なく使用できる利点があるが、何度も零れ落ちて土リターン装置のリターン経路で何回も循環された土は、育苗箱に入りにくい比較的粒径が大きい土が多く、育苗箱によって粒径が大きい土の割合が多くなることが考えられる。そこで、土リターン装置のリターン経路から分岐して土混合機360へ土を供給する土再生用経路と、育苗箱から零れ落ちた土を土再生用経路へ供給する土切替弁を設け、土リターン装置のリターン経路での循環時間が第一の所定時間(例えば5分)経過すると、土を土再生用経路へ供給するべく土切替弁を第二の所定時間(例えば2分)切り替え、リターン経路で何回も循環された土が育苗箱に入らないようにすると共に、当該土を土混合機360へ戻して粒径の小さい土へ再生する構成としている。これにより、リターン経路で何回も循環された土も再利用できると共に、育苗箱へ均一で適正な土を供給でき、良好な育苗が行える。
尚、前述では土リターン装置のリターン経路から分岐する土再生用経路を設けた構成について説明したが、土再生用経路を設けない構成とすることもできる。すなわち、床土供給装置343の床土タンクを育苗箱の搬送上手側の上手側タンクと育苗箱の搬送下手側の下手側タンクに2分割し、これに合わせて床土タンクから床土を繰り出す土繰出部も上手側繰出部と下手側繰出部を設け、土混合機360の土は土供給コンベア361を介して上手側タンクと下手側タンクに供給し、リターン経路は上手側タンクへのみ土を供給する構成とし、リターン経路を通過した土は上手側繰出部を介して育苗箱の下部へ供給されて育苗箱内に供給されやすい構成としている。これにより、育苗箱から零れ落ちる土は下手側繰出部から繰り出される新しい土の割合が極めて高くなり、何回もリターン経路を循環する土の発生ひいては粒径の大きい土の発生を抑え、育苗箱への土供給の均一化及び適正化を図ることができる。尚、リターン経路を通過した土が効率良く育苗箱へ供給されるべく、播種作業前に上手側タンクの土貯留量を下手側タンクの土貯留量よりも多くし、播種作業中は土供給コンベア361から上手側タンクへ新しい土が極力供給されないように土供給コンベア361を上手側タンク用コンベアと下手側タンク用コンベアに分割して構成し、制御装置により上手側タンク用コンベアと下手側タンク用コンベアの作動を制御する構成としてもよい。また、土供給コンベア361を、上述のように分割せず下手側タンクへのみ土を供給する構成としてもよい。
尚、上述では床土タンクを上手側タンクと下手側タンクに分割する構成について説明したが、育苗箱の搬送方向に向かって左右中央側タンクと左右両側タンクに分割し、リターン経路は左右中央側タンクへ土を回収する構成とすれば、リターン経路を通過した土は左右中央側タンク及び左右中央側繰出部を介して育苗箱の左右中央へ供給されて育苗箱内に供給されやすくなる。尚、この構成は、上述の上手側タンクを左右中央側タンクに読み替え、下手側タンクを左右両側タンクに読み替え、上手側繰出部を左右中央側繰出部に読み替え、下手側繰出部を左右両側繰出部に読み替えると、上述と同様の構成及び作用効果となるので、説明を省略する。尚、土繰出量を調節するシャッターを、左右中央側繰出部及び左右両側繰出部で各々設けてもよい。
尚、播種施設には上述とは別に土混合機360を設けており、この土混合機360で各種培土を所望の混合比率で混合して得られた土を土供給コンベア361を介して覆土供給装置346の覆土タンクへ供給する構成となっている。この覆土に関する構成は、上述した床土に関する構成と全く同様であるので説明を省略する。
播種された育苗箱は段積み設備215により段積みされる。この段積み設備215は、播種設備341で播種された育苗箱を引き続いて搬送して供給する播種育苗箱供給装置としての播種育苗箱供給コンベヤ302を備え、該播種育苗箱供給コンベヤ302に隣接して平行に育苗箱搬出コンベヤ304が配置されている。
播種育苗箱供給コンベヤ302の始端部には播種設備341の播種コンベヤ342の終端部が接続されており、播種コンベヤ342から播種育苗箱供給コンベヤ302に播種された育苗箱が1枚ずつ供給される。播種育苗箱供給コンベヤ302は、播種された育苗箱をその長手方向が搬送方向を向く状態で搬送する。播種育苗箱供給コンベヤ302の中間部には、水稲種子(籾)を播種した場合に、1枚ずつ搬送されてくる育苗箱を2段に積み重ねる第一育苗箱積重ね装置306と、2段になって搬送されてくる育苗箱を4段に積み重ねる第二育苗箱積重ね装置307が設けられている。
第一育苗箱積重ね装置306は、播種育苗箱供給コンベヤ302の育苗箱搬送路を挟んで両側に配置された上、下リフトスプロケット306a,306b,306a,306bにリフトチエン306c,306cを巻き掛け、このリフトチエン306c,306cに所定間隔でリフト爪306d,306dを取り付けている。また、育苗箱搬送路の上方には、前、後送出しスプロケット306e,306f,306e,306fに送出しチエン306gを巻き掛け、この送出しチエン306gに所定間隔で送出し爪306hを取り付けている。
1枚目の育苗箱Cが所定位置にくると、リフト爪306dが育苗箱の底部を支持して1ピッチ持ち上げ、次いで2枚目の育苗箱が所定位置にくると、これを次のリフト爪306dが1ピッチ持ち上げ、リフト爪306dで支持した状態で育苗箱を積み重ねる。このようにして育苗箱が2段に積み重ねられると、送出しチエン306gが作動して、送出し爪306hで押して搬送下手側に送り出す。
播種育苗箱供給コンベヤ302は、第一育苗箱積重ね装置306の位置で搬送上手側となる第一コンベヤ355と搬送下手側となる第二コンベヤ356に分割されている。そして、第一コンベヤ355上にある育苗箱をリフト爪306dがリフトし、送出し爪306hで第二コンベヤ356上へ育苗箱を送り出す構成となっている。第二コンベヤ356は、第一コンベヤ355よりも高位で、且つ始端側部分が搬送上手側が下位となるように若干傾斜し、これに続く下手側部分が水平に構成されている。第二コンベヤ356の始端は、送出し爪306hが押し出し作動するときの下側の育苗箱を受けるリフト爪306dの上面よりも低位に配置される。第二コンベヤ356の始端部の傾斜部分356aの終端及び下手側の水平部分356bは、送出し爪306hが押し出し作動するときの下側の育苗箱を受けるリフト爪306dの上面よりも高位で、且つ送出し爪306hが押し出し作動するときの上側の育苗箱を受けるリフト爪306dの上面よりも低位に配置されている。従って、送出し爪306hが上下2枚の育苗箱を押し出すとき、下側の育苗箱が第二コンベヤ356の始端部の傾斜部分356aで上側に案内されるので、上下の育苗箱の上下間隔が狭まり、上側の育苗箱がリフト爪306dから外れて下側の育苗箱に積み重なるときの落下量を極力小さくでき、上下の育苗箱が積み重なるときの衝撃を緩和でき、育苗箱内の培土や種子が偏ったり脱落したりするようなことを抑制できる。尚、前記落下量を適正に維持するため、リフト爪306dと送出し爪306hは機械的な連繋機構により高精度な作動タイミングで連繋して作動させることが望ましい。従来は、第二コンベヤ356は、水平で、且つ送出し爪306hが押し出し作動するときの下側の育苗箱を受けるリフト爪306dの上面と同じか該上面よりも低位に配置されていたので、上下の育苗箱が積み重なるときの落下の衝撃がある。
第二育苗箱積重ね装置307も、基本構成は第一育苗箱積重ね装置306と同じであるので、その構成および動作の説明を省略する。しかして、播種育苗箱供給コンベヤ302の終端部には4段重ねになった播種された育苗箱が供給されることとなる。
播種育苗箱供給コンベヤ302の終端部には、播種育苗箱取上げ位置A1,A2が設定されている。この播種育苗箱取上げ位置に対応して、育苗箱搬出コンベヤ304には播種育苗箱段積み位置B1−1,B1−2,B1−3,B2−1,B2−2,B2−3が設定されている。そして、播種育苗箱段積み装置である播種育苗箱段積みロボット308によって、播種育苗箱取上げ位置の育苗箱を播種育苗箱段積み位置に段積みする。
播種育苗箱段積みロボット308は、中間部で折り曲げ可能なロボットアーム308aの先端部に、4段重ねした育苗箱の長手方向両端をつかんで保持することのできる2組の育苗箱チャック308bが設けられている。ロボットアーム308a全体を上下に回動、及びロボットアーム308aの折り曲げ角度を変更することにより、各育苗箱チャック308bを播種育苗箱取上げ位置と播種育苗段積み位置との間を移動させるとともに上下位置を調節するようになっている。
育苗箱チャック308bは、チャック開閉シリンダ330で開閉させられる一対の把持爪331を備え、この一対の把持爪331で4段重ねになった育苗箱の短辺部を両側から挟み付けて把持する。把持爪331の下端部は鉤状になっていて、把持の際にはこの鉤状部331aが最下段の育苗箱の底部に引っ掛かるようになっている。また、前後駆動手段332で前後方向に移動させられる前後位置規制体333と左右駆動手段334で左右方向に移動させられる左右位置規制体335とが各2対ずつ設けられ、把持爪331による把持に先行して育苗箱の前後位置及び左右位置を適正になるよう修正するようになっている。このため、把持爪331が育苗箱Cを正確に把持できる。
なお、外面部に段Caが形成された育苗箱Cについては、この段の下側を把持爪331の鉤状下端部で支えるようにするため、一旦把持爪331が育苗箱を把持してから把持爪331を少しだけ上昇させて、鉤状部331aを段Caの下面に係合させる。これに対し、外面部に段が形成されていない育苗箱C′については、鉤状部331aの水平長を長くし、把持爪331が閉じるときに鉤状部331aが育苗箱の底面に差し込まれるように作動させる。制御プログラムを変更するだけで、いずれの育苗箱C,C′にも対応できる。
播種育苗箱供給コンベヤ302の前記播種育苗箱取上げ位置A1,A2には、それぞれの位置に育苗箱を停止させる第一育苗箱ストッパ311及び第二育苗箱ストッパ312が設けられている。第一育苗箱ストッパ311は固定状態で設けられ、第二育苗箱ストッパ312は播種育苗箱供給コンベヤ302の搬送面よりも下方に引っ込み可能に構成されている。
育苗箱搬出コンベヤ304は、パレット供給装置316にて供給される育苗箱段積み用のパレットPLを一対のベルトの上に載せて搬送するようになっている。パレットPLは、長手方向を搬送方向に向けて育苗箱を横に3列、縦に2列、計6枚並べられるスペースを有している。
育苗箱搬出コンベヤ304には、パレットPLの各育苗箱を並べる位置が前記播種育苗箱段積み位置B1−1,B1−2,B1−3,B2−1,B2−2,B2−3と合致するパレット停止位置でパレットPLを停止させる第一パレットストッパ318と、終端部でパレットPLを停止させる第二パレットストッパ320が設けられている。第一パレットストッパ318は育苗箱搬出コンベヤ304の搬送面よりも下方に引っ込み可能に構成され、第二パレットストッパ320は固定状態に設けられている。
この段積み設備215は、育苗箱の有無を検出するフォトセンサPH1〜11が適所に設けられており、その検出結果に基づき各部の作動を制御する。以下、その動作を説明する。
播種設備341によって播種された育苗箱Cは、播種設備341の播種コンベヤ342から播種育苗箱供給コンベヤ302に引き継がれる。1枚目の育苗箱が第一育苗箱積重ね装置306まで搬送されてPH1がONになると、第一育苗箱積重ね装置306のリフトチエンが作動して当該育苗箱を持ち上げる。2枚目の育苗箱が第一育苗箱積重ね装置306の下方まできてPH1が再度ONになると、次のリフト爪306dが2個目の育苗箱を持ち上げて2枚の育苗箱を積み重ねる。第一育苗箱積重ね装置306は、上記動作を繰り返して育苗箱を2段に積み重ねていく。
2段重ねの育苗箱が第二育苗箱積重ね装置307まで搬送されてPH2がONになると、第二育苗箱積重ね装置307のリフトチエンが作動して当該育苗箱を持ち上げる。次の2段重ねの育苗箱が第二育苗箱積重ね装置307の下方まできてPH2が再度ONになると、それを次のリフト爪が持ち上げて2段重ねの育苗箱の上に2段重ねの育苗箱を積み重ねる。第二育苗箱積重ね装置307は、上記動作を繰り返して育苗箱を4段に積み重ねていく。
4段重ねの育苗箱は、播種育苗箱取上げ位置A1,A2に向けて搬送される。そして、第一育苗箱ストッパ311及び第二育苗箱ストッパ312への搬送手前側にはそれぞれ減速用センサPH3−1,PH4−1及び停止用センサPH3−2,PH4−2を育苗箱の搬送上手側から順に設けている。初期状態では、第二育苗箱ストッパ312は播種育苗箱供給コンベヤ302の搬送面よりも下方に引っ込んだ状態となっており、1組目の育苗箱を第一育苗箱ストッパ311側の減速用センサPH3−1が検出すると播種育苗箱供給コンベヤ302の搬送速度を所定の速度に減速させ、その後第一育苗箱ストッパ311の直前にある停止用センサPH3−2が育苗箱Cを検出してから所定時間後に播種育苗箱供給コンベヤ302を停止させる。そして、2組目の育苗箱を第二育苗箱ストッパ312側の減速用センサPH4−1が検出すると播種育苗箱供給コンベヤ302の搬送速度を所定の速度に減速させ、その後第二育苗箱ストッパ312の直前にある停止用センサPH4−2が育苗箱Cを検出してから所定時間後に播種育苗箱供給コンベヤ302を停止させる。
これにより、搬送速度が減速した状態で育苗箱Cが育苗箱ストッパ311,312へ当たるので、育苗箱ストッパ311,312への衝突時の衝撃が抑えられ、育苗箱C内の土寄りや土の飛び出し等を防止すると共に、育苗箱ストッパ311,312による育苗箱Cの停止位置が安定する。また、育苗箱ストッパ311,312の直前位置に設けた停止用センサPH3−2,PH4−2が育苗箱Cを検出してから所定時間後に播種育苗箱供給コンベヤ302を停止させる構成とすることにより、育苗箱ストッパ311,312に当接するまで確実に育苗箱Cを搬送することができ、育苗箱ストッパ311,312による育苗箱Cの停止位置が更に安定する。このように育苗箱Cの停止位置を適正に安定させることにより、播種育苗箱段積みロボット308で適確に育苗箱Cを取上げることができ、取上げ作業のトラブルを防止することができる。
上記のようにして各取上げ位置A1,A2に4段重ねの育苗箱が供給されて播種育苗箱供給コンベヤ302が停止すると、段積みロボット308が所定の動作を行い、各取上げ位置の育苗箱を後述する育苗箱搬出コンベヤ304上の適正位置へ段積みする。具体的には、2組の育苗箱チャック308bが開いた状態で取上げ位置へ移動し、そこで育苗箱チャック308bが閉じて育苗箱をつかみ、次いで育苗箱をつかんだ育苗箱チャック308bが育苗箱搬出コンベヤ304上の適正位置まで移動し、そこで育苗箱チャック308bが開いて育苗箱を解放するように作動する。
育苗箱チャック308bを播種育苗箱供給コンベヤ302の取上げ位置から育苗箱搬出コンベヤ304上の適正位置へ移動させるためにロボットアーム308aが作動した時点において、停止用センサPH3−2,PH4−2のいずれかがONである場合は、「異常」として育苗箱段積み装置全体を停止させる。停止用センサPH3−2,PH4−2のいずれもがOFFである場合は、「正常」であると判断し、第二育苗箱ストッパ311を播種育苗箱供給コンベヤ302の搬送面よりも下方に引っ込ませる。これにて播種育苗箱供給コンベヤ302は初期状態となり、前記と同様に、各取上げ位置A1,A2に4段重ねの育苗箱がそれぞれ供給される。
パレット供給装置316は、フォトセンサPH7がOFFであるとき育苗箱搬出コンベヤ304にパレットPLを供給する。そして、搬出用モ−タ317の駆動により育苗箱搬出コンベヤ304を搬送作動させ、そのパレットPLがパレット停止位置まで移動すると、育苗箱搬出コンベヤ304の搬送面よりも上方に突出した状態にある第一パレットストッパ318によって受け止められる。これにより、フォトセンサPH7,8がONになり、段積みロボット308が播種育苗箱段積み位置にあるパレットPLに育苗箱の段積みを開始する。尚、最初のパレットPLが供給されたときは、フォトセンサPH7,8がONになると、搬出用モ−タ317の駆動を停止して育苗箱搬出コンベヤ304の作動を停止する構成となっている。段積みロボット308による育苗箱の段積みは、次のように実行される。
1組目の育苗箱は播種育苗箱供給コンベヤ302から最も遠い段積み位置B1−1,B2−1に載置する。2組目の育苗箱は1組目の育苗箱の上に載置する。以下同様に、所定段数になるまで育苗箱を段積みする。最も遠い段積み位置B1−1,B2−1に育苗箱が所定段数だけ載置されると、次は真ん中の段積み位置B1−2,B2−2に育苗箱を段積みする。そして最後に、一番手前の段積み位置B3−1,B3−2に育苗箱を段積みする。全播種育苗箱段積み位置B1−1,B1−2,B1−3,B2−1,B2−2,B2−3,B3−1,B3−2,B3−3に育苗箱が所定段数ずつ段積みされた時点で、第一パレットストッパ318が下降するとともに、搬出用モ−タ317が駆動して育苗箱搬出コンベヤ304が作動する。
育苗箱が所定段数ずつ段積みされたパレットPLは、フォトセンサPH11がOFFで育苗箱搬出コンベア304の終端部すなわちパレット取出位置の上にパレットPLが存在しない場合、パレットPLが育苗箱搬出コンベア304の終端部(パレット取出位置)まで送り込まれ第二パレットストッパ320によって停止させられる。上記条件を満たさない場合は、播種育苗箱段積み位置で待機する。このパレットPLを育苗箱搬出コンベア304の終端部まで搬送するのに伴って、次のパレットPLが育苗箱搬出コンベア304上で共に搬送されるが、フォトセンサPH8がOFFになって前のパレットPLが第一パレットストッパ318の位置を完全に通過したことを検出すると、第一パレットストッパ318が上方に突出し、該第一パレットストッパ318が次のパレットPLを受け止める。このとき、パレット供給装置316から播種育苗箱段積み位置までの距離より播種育苗箱段積み位置から育苗箱搬出コンベア304の終端部(パレット取出位置)までの距離の方が長いため、次のパレットPLが第一パレットストッパ318(播種育苗箱段積み位置)に到達した後も前のパレットPLが第二パレットストッパ320(パレット取出位置)に到達するまで育苗箱搬出コンベア304が作動し続ける。従って、次のパレットPLが第一パレットストッパ318(播種育苗箱段積み位置)に到達してフォトセンサPH7,8がONになると、育苗箱搬出コンベア304が作動している状態でも、段積みロボット308が播種育苗箱段積み位置にあるパレットPLに育苗箱の段積みを開始する。
このとき、育苗箱搬出コンベア304が作動しているため、播種育苗箱段積み位置にあるパレットPLは、第一パレットストッパ318で受け止められて育苗箱搬出コンベア304に対して滑りながら停止していても、育苗箱搬出コンベア304から振動を受けやすく、その振動で段積みロボット308によるパレットPLへの育苗箱の段積が不適正になるおそれがある。そこで、播種育苗箱段積み位置にパレットを固定できる固定装置319を設けており、該固定装置319により、播種育苗箱段積み位置にあるパレットPLを搬送方向に対して左右両側から挟んで押圧して固定し、該パレットPLの振動を低減するようにしている。この固定装置319は、パレットPLが第一パレットストッパ318(播種育苗箱段積み位置)に到達してフォトセンサPH7,8がONの状態で、且つ搬出用モ−タ117が駆動して育苗箱搬出コンベア304が作動している状態のときだけ作動するようになっている。これにより、パレットPLへの育苗箱の段積を適正に行えると共に、育苗箱搬出コンベア304により前のパレットPLをパレット取出位置へ搬送している状態でもパレットPLへの育苗箱の段積を行うことができるので、育苗箱の段積作業の作業能率が向上する。
更に、パレットPLが第一パレットストッパ318(播種育苗箱段積み位置)に到達してフォトセンサPH7,8がONの状態で、搬出用モ−タ317が駆動して育苗箱搬出コンベア304が作動している状態のときは、搬出用モ−タ317の駆動速度を超低速に減速して育苗箱搬出コンベア304の作動速度を超低速にし、育苗箱搬出コンベア304からの振動を抑制して、段積作業を開始する構成となっている。これにより、上述と同様にパレットPLへの育苗箱の段積を適正に行えると共に、育苗箱の段積作業の作業能率が向上する。尚、この実施の形態は、播種育苗箱段積み位置のパレットPLへの振動の伝達を抑制する構成として、固定装置319と育苗箱搬出コンベア304の作動速度の制御とを併用したが、何れか一方のみを採用してもよい。
尚、育苗箱群を載せたパレットPLが育苗箱搬出コンベア304の終端部(パレット取出位置)に送り込まれると、該パレットPLをフォークリフトですくい上げて育苗箱搬出コンベヤ304の延長方向に取り出し、出芽室348まで運搬する。
尚、播種育苗箱供給コンベヤ302は、第二育苗箱積重ね装置307の位置でも第一育苗箱積重ね装置306の位置と同様に搬送上手側のコンベヤと搬送下手側のコンベヤに分割構成されている。この搬送上手側のコンベヤは前述した第二コンベヤ356であり、搬送下手側のコンベヤは第三コンベヤ357となる。更に、段積みロボット308の取上げ位置A1,A2は別の第四コンベヤ358で構成されている。第二育苗箱積重ね装置307の直ぐ搬送下手側の位置には、第三コンベヤ357で搬送される育苗箱を検出する積重ね育苗箱センサ359を設けている。そして、第二育苗箱積重ね装置307の直ぐ搬送下手側の位置を育苗箱が通過したことを積重ね育苗箱センサ359が検出してから第一の所定時間経過後に、段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、第三コンベヤ357の搬送速度を中速まで低下させる。更に第二の所定時間経過後でも段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、第三コンベヤ357の搬送速度を最低速まで低下させる。更に第二育苗箱積重ね装置307の直ぐ搬送下手側の位置を次の育苗箱が通過したことを積重ね育苗箱センサ359が検出し、且つ段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、異常状態と判断して第三コンベヤ357の搬送駆動を停止する。段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げると、第三コンベヤ357の搬送速度を元の速度に復帰させる。尚、第三コンベヤ357は、第三コンベヤ用モータにより駆動し、この第三コンベヤ用モータの駆動速度制御や停止制御により速度変更や停止がなされる。
これにより、段積みロボット308が取上げ位置A1,A2で取り上げようとする育苗箱に、第三コンベヤ357で搬送される育苗箱が衝突して、段積みロボット308の育苗箱の取り上げが不適正になって適正に段積みできなくなることを防止する。しかも、上述のように、状況に応じて段階的に第三コンベヤ357の搬送速度を段階的に低下させる構成としたので、無闇に育苗箱の搬送を停止することによる作業能率の低下を防止できると共に、前工程である播種設備341の播種作業(播種コンベヤ342による育苗箱の搬送)を無闇に停止させずに継続して行え、播種作業を停止させることによる播種むら等の播種の不適正を防止できる。
尚、上述では、第二の所定時間経過後でも段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、第三コンベヤ357の搬送速度を最低速まで低下させる構成としたが、この時点で第三コンベヤ357による搬送を停止する構成としてもよい。また、別の方法として、第二育苗箱積重ね装置307の直ぐ搬送下手側の位置を育苗箱が通過したことを積重ね育苗箱センサ359が検出してから第一の所定時間経過後に、段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、第三コンベヤ357を停止し、第二育苗箱積重ね装置307の直ぐ搬送下手側の位置を次の育苗箱が通過したことを積重ね育苗箱センサ359が検出し、且つ段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、異常状態と判断して第三コンベヤ357及び第四コンベヤ358を含む播種育苗箱供給コンベヤ302、育苗箱積重ね装置並びに播種設備341を停止し、更に段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げると、第三コンベヤ357の搬送速度を元の速度に復帰させる構成とすることができる。尚、第三コンベヤ357を停止させるにあたっては、徐々に減速して停止させるのが望ましい。
従来は、第四コンベヤ358の始端位置に育苗箱が到達したことを育苗箱センサが検出し、且つ段積みロボット308が取上げ位置A1,A2から育苗箱を取り上げる作動を行うタイミングであるとき、即座に第三コンベヤ357及び第四コンベヤ358を含む播種育苗箱供給コンベヤ302、育苗箱積重ね装置並びに播種設備341を停止する構成としていたので、これらの停止の頻度が高くなり、作業能率の低下や播種の不適正を招くおそれがある。
尚、段積作業終了時、取上げ位置A1,A2に2枚ずつの育苗箱が供給されて完了すれば、段積みロボット308により通常通り段積すればよいが、供給される育苗箱の枚数に端数が発生することが考えられる。すなわち、取上げ位置A1に2枚の育苗箱が供給され、取上げ位置A2に1枚のみの育苗箱が供給されることが考えられるが、このときは段積みロボット308が取上げ位置A1,A2で共に育苗箱を取り上げて把持し段積することになるので、パレットPL上で段積されている育苗箱群の上に段積するときに上方からの下動で把持爪331、前後位置規制体333及び左右位置規制体335の構成部材が段積されている育苗箱群を引っ掛けたり該育苗箱群の土を掻き上げたりするおそれがない。しかしながら、取上げ位置A1に2枚の育苗箱が供給され取上げ位置A2に育苗箱が供給されないとき、あるいは取上げ位置A1に1枚の育苗箱が供給され取上げ位置A2に育苗箱が供給されないときは、取上げ位置A2側の把持爪131、前後位置規制体333及び左右位置規制体335の構成部材を段積されている育苗箱に干渉を防止する如く、スイッチ操作等により取上げ位置A2側の前記構成部材の作動を停止させることができる。これにより、取上げ位置A2側に育苗箱がなくても、取上げ位置A2側の前記構成部材が段積されている育苗箱群を引っ掛けたり該育苗箱群の土を掻き上げたりすることを防止できる。
最後に汚染物質洗浄設備370について説明する。この汚染物質洗浄装置370は、稲藁や落ち葉等、例えば放射性物質により汚染された物体を洗浄する設備であり、前述した種子消毒設備の温湯消毒装置Aと同様の構成である洗浄装置371と、洗浄装置371で洗浄された物体の水を切る水切り装置372を備えている。
洗浄装置371は、水を貯留する洗浄槽373と、循環移送経路で循環される洗浄バケット374を備え、洗浄バケット374が洗浄槽373内で順次移送される構成となっており、洗浄槽373の移送上手側で網袋に入れた物体を洗浄バケット374に供給し、洗浄槽373の移送下手側で洗浄バケット374の反転により洗浄槽373内で順次移送された物体が排出される。洗浄槽373の底部と左右両側には洗浄バケット373へ向けて空気を噴出する空気噴出口375を設け、物体及び水を振動させ攪拌させながら汚染物質を物体から取り除く構成となっている。ポンプ376の作動により、洗浄槽373の移送下手側に設けた給水口377から洗浄槽373内へ水が供給され、洗浄槽373の移送上手側に設けた排水口378から洗浄槽373内の水が排水され、汚染物質除去部379を介して再度給水口377へ供給する循環経路380を設けている。汚染物質除去部379は、物体から水に移った汚染物質を除去する構成であり、例えば、ゼオライトと凝集剤を使用する沈殿による除去方法や、籾殻を使用する吸着による除去方法にて汚染物質を除去する。尚、洗浄槽373の移送下手側から給水口377により水を供給するので、洗浄槽373の移送下手側の水は汚染度合が低くなり、洗浄槽373の移送下手側から排出される物体の洗浄を効率良く行える。
水切り装置372は、洗浄バケット374の反転により排出された物体を受けるメッシュ状の水切りコンベア381と、水切りコンベア381の上方から風を送る送風機382を備え、水切りコンベア381で物体を搬送しながら水切りし乾燥させる構成となっている。
この汚染物質洗浄設備370により、循環経路380の閉鎖回路で汚染物質を回収することができ、環境汚染を防ぐことができる。
尚、上述の洗浄装置371に代えて、水流で物体を搬送しながら洗浄する洗浄移送パイプ383を設けた構成とすることができる。水切り装置372からの水を汚染物質除去部379へ供給し、ポンプ376により再度洗浄移送パイプ383の移送上手側へ供給する構成となっている。物体は、網袋に収容せずに直接洗浄移送パイプ383内へ供給することができる。洗浄移送パイプ383の外周には適宜微量の空気を取り入れる空気取入口384を設け、空気取入口384からの微量の空気が洗浄移送パイプ383内に噴出されることにより、洗浄移送パイプ383内の物体及び水を振動させ攪拌する構成となっている。
更に、洗浄移送パイプ383の変形例として、九十九折に屈曲させ、洗浄移送パイプ383の移送経路を長くする構成も考えられる。これにより、小さいスペースで移送経路を長くすることができ、洗浄効率を向上させることができる。尚、洗浄移送パイプ383の屈曲部に空気取入口384を設けることで、空気取り入れの円滑化及び攪拌効果の向上が図れる。