本実施形態の複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaN結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さいため、支持基板11の主面11m上に形成された単結晶膜13の主面13m上に、主面13mの面積が大きくても、転位密度が低く結晶性が良好なGaN系膜を成膜することができる。また、支持基板11がエッチング溶液に溶解するため、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaN系膜を成膜した後、支持基板11をエッチング溶液により除去することにより、単結晶膜13の主面13m上に成膜された転位密度が低く結晶性が良好なGaN系膜が効率よく得られる。
ここで、GaN結晶は、六方晶系のウルツ鉱型の結晶構造を有するため、a軸方向の熱膨張係数とc軸方向の熱膨張係数とが異なる。複合基板およびその主面上に成膜されるGaN系膜の反りを低減するためには、支持基板の主面内の熱膨張係数と成膜されるGaN系膜の主面内の熱膨張係数とが一致または近似している必要がある。このため、支持基板の熱膨張係数に対比されるべきGaN結晶の熱膨張係数は、成膜されるGaN系膜の主面がc軸に垂直な場合はGaN結晶のa軸方向の熱膨張係数であり、成膜されるGaN系膜の主面がa軸に垂直な場合はGaN結晶のc軸方向の熱膨張係数である。通常、複合基板の単結晶膜の主面はc軸方向に垂直であることから、成膜されるGaN系膜の主面はc軸方向に垂直であるため、支持基板の主面内の熱膨張係数はGaN結晶のa軸方向の熱膨張係数と対比される。
支持基板11は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaN結晶の熱膨張係数に比べて0.8倍より大きく1.2倍より小さく、かつ、フッ化水素酸などのエッチング溶液で溶解するものであれば特に制限はなく、単結晶であっても、多結晶であっても、非結晶であってもよい。支持基板11は、その熱膨張係数の調整が容易で、フッ化水素酸に溶解する観点からZrO2などの金属酸化物、SiO2などのケイ素酸化物およびSi3N4などのケイ素窒化物の少なくともいずれかを含むことが好ましく、硝酸に溶解する観点からTiNなどの金属窒化物を含むことが好ましい。
さらに、支持基板11は、その原料の種類と比率とを変動することによりその熱膨張係数の調整が容易で上記の範囲内にある熱膨張係数が容易に得られる観点から、金属酸化物、ケイ素酸化物およびケイ素窒化物の少なくともいずれかを含む焼結体がより好ましい。たとえば、Al2O3−SiO2系焼結体、MgO−SiO2系焼結体、Al2O3−MgO−SiO2系焼結体(Al2O3−MgO−SiO2焼結体の他、Al2O3−MgAl2O4−SiO2焼結体なども含む)、ZrO2−SiO2系焼結体(ZrO2−SiO2焼結体の他、ZrSiO4−SiO2焼結体なども含む)、Y2O3−ZrO2−SiO2系焼結体、CeO2−ZrO2−SiO2系焼結体、CaO−ZrO2−SiO2系焼結体、MgO−ZrO2−SiO2系焼結体、Y2O3−Al2O3−SiO2系焼結体、Y2O3−ZrO2−Al2O3−SiO2系焼結体、CeO2−ZrO2−Al2O3−SiO2系焼結体、CaO−ZrO2−Al2O3−SiO2系焼結体、MgO−ZrO2−Al2O3−SiO2系焼結体、SrTiO3−Al2O3−SiO2系焼結体(SrTiO3−Al2O3−SiO2焼結体の他、「SrAl2Si2O8−Al2O3」焼結体なども含む)、Y2O3−ZrO2−MgO−SiO2系焼結体、Si3N4−TiN系焼結体などがさらに好ましい。
ここで、SZ(安定化ジルコニア)とは、ジルコニアを安定化させるための安定化剤が添加されたジルコニアをいい、添加されて固溶した安定化剤により結晶構造中に酸素空孔が形成されて立方晶および正方晶が室温でも安定または準安定となり、昇降温による破壊が抑制され、また、安定剤が添加されていないジルコニアに比べて強度および靭性などの機械的特性に優れる。また、安定化剤は、ジルコニアを安定化させる物質であれば特に制限はないが、ジルコニアを安定化させる効果が大きい観点から、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)などのアルカリ土類元素の酸化物、イットリア(Y2O3)、セリア(CeO2)などの希土類元素の酸化物が好ましい。すなわち、SZとしては、安定剤としてカルシア(CaO)が添加されたカルシア安定化ジルコニア(CaO安定化ZrO2、以下CaSZともいう)、マグネシア安定化ジルコニア(MgO安定化ZrO2、以下MSZともいう)、イットリア安定化ジルコニア(Y2O3安定化ZrO2、以下YSZともいう)、セリア安定化ジルコニア(CeO2安定化ZrO2、以下CeSZともいう)などが、好ましい。
このとき、支持基板11およびGaN結晶の熱膨張係数は、一般に、それらの温度により大きく変動することから、如何なる温度または温度領域における熱膨張係数によって決めるかが重要である。本発明においては、複合基板上に反りの小さいGaN系膜を製造することを目的とするものであり、室温から昇温させてGaN系膜の成膜温度で複合基板上にGaN系膜を成膜した後室温まで降温させて複合基板上に成膜されたGaN系膜を取り出すことから、室温からGaN系膜の成膜温度までにおける支持基板およびGaN結晶の平均熱膨張係数を、それぞれ支持基板およびGaN結晶の熱膨張係数として取り扱うことが適正と考えられる。しかしながら、GaN結晶は、不活性ガス雰囲気中においても、800℃を超えると分解が起こる。このため、本発明においては、支持基板およびGaN結晶の熱膨張係数は、室温(具体的に25℃)から800℃までにおける平均熱膨張係数により決定することにする。
本実施形態のGaN系膜の製造方法によれば、エッチング溶液に溶解する支持基板11と、支持基板11の主面11m側に配置されている単結晶膜13と、を含み、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaN結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい複合基板10を用いて、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaN系膜20を成膜した後、複合基板10の支持基板11をエッチング溶液に溶解して除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaN系膜が効率よく得られる。
上記の複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaN結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい支持基板11と単結晶膜13を含んでいるため、単結晶膜13の主面13m上に主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaN系膜を成膜することができる。また、上記の複合基板10は、支持基板11がエッチング溶液に溶解するため、支持基板11を除去することにより、主面の面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaN系膜を効率よく取り出すことができる。
また、複合基板10の支持基板11の主面11m側に単結晶膜13を配置する方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11m上に単結晶膜13を成長させる方法(第1の方法)、支持基板11の主面11mに、下地基板の主面上に成膜させた単結晶膜13を貼り合わせた後下地基板を除去する方法(第2の方法)、支持基板11の主面11mに単結晶(図示せず)を貼り合わせた後その単結晶を貼り合わせ面から所定の深さの面で分離することにより支持基板11の主面11m上に単結晶膜13を形成する方法(第3の方法)などが挙げられる。支持基板が多結晶の焼結体である場合には、上記の第1の方法が困難であるため、上記の第2および第3のいずれかの方法が好ましく用いられる。上記の第2の方法において、支持基板11に単結晶膜13を貼り合わせる方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11mに直接単結晶膜13を貼り合わせる方法、支持基板11の主面11mに接着層12を介在させて単結晶膜13を貼り合わせる方法などが挙げられる。上記の第3の方法において、支持基板11に単結晶を貼り合わせる方法には、特に制限はなく、支持基板11の主面11mに直接単結晶を貼り合わせる方法、支持基板11の主面11mに接着層12を介在させて単結晶を貼り合わせる方法などが挙げられる。
上記の複合基板10を準備する工程は、特に制限はないが、効率的に品質の高い複合基板10を準備する観点から、たとえば、図3を参照して、上記の第2の方法においては、支持基板11を準備するサブ工程(図3(A))と、下地基板30の主面30n上に単結晶膜13を成膜するサブ工程(図3(B))と、支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせるサブ工程(図3(C))と、下地基板30を除去するサブ工程(図3(D))と、含むことができる。
図3(C)では、支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせるサブ工程において、支持基板11の主面11m上に接着層12aに形成し(図3(C1))、下地基板30の主面30n上に成長させられた単結晶膜13の主面13n上に接着層12bを形成した(図3(C2))後、支持基板11上に形成された接着層12aの主面12amと下地基板30上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnとを貼り合わせることにより、接着層12aと接着層12bとが接合して形成された接着層12を介在させて支持基板11と単結晶膜13とが貼り合わされる(図3(C3))。しかし、支持基板11と単結晶膜13とが互いに接合可能なものであれば、支持基板11と単結晶膜13とを、接着層12を介在させることなく直接貼り合わせることができる。
支持基板11と単結晶膜13とを貼り合わせる具体的な手法としては、特に制限はないが、貼り合わせ後高温でも接合強度を保持できる観点から、貼り合わせ面を洗浄しそのまま貼り合わせた後600℃〜1200℃程度に昇温して接合する直接接合法、貼り合わせ面を洗浄しプラズマやイオンなどで活性化させた後に室温(たとえば25℃)〜400℃程度の低温で接合する表面活性化法などが好ましく用いられる。
上記の複合基板の準備工程において準備された複合基板10は、支持基板11の主面11m内の熱膨張係数が、GaN結晶の熱膨張係数に比べて、0.8倍より大きく1.2倍より小さい支持基板11と単結晶膜13を含んでいるため、単結晶膜13の主面13m上に主面20mの面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaN系膜20を成膜することができる。
GaN系膜を成膜する方法には、特に制限はないが、転位密度が低いGaN系膜を成膜する観点から、MOCVD(有機金属化学気相堆積)法、HVPE(ハイドライド気相成長)法、MBE(分子線エピタキシ)法、昇華法などの気相法、フラックス法、高窒素圧溶液法などの液相法などが好ましく挙げられる。
GaN系膜を成膜する工程は、特に制限はないが、転位密度が低いGaN系膜を成膜する観点から、複合基板10の単結晶膜13の主面13m上にGaN系バッファ層21を形成するサブ工程と、GaN系バッファ層21の主面21m上にGaN系単結晶層23を形成するサブ工程と、を含むことが好ましい。ここで、GaN系バッファ層21とは、GaN系膜20の一部分であり、GaN系膜20の別の一部分であるGaN系単結晶層23の成長温度に比べて低い温度で成長させられる結晶性が低いまたは非結晶の層をいう。
GaN系バッファ層21を形成することにより、GaN系バッファ層21上に形成されるGaN系単結晶層23と単結晶膜13との間の格子定数の不整合が緩和されるため、GaN系単結晶層23の結晶性が向上しその転位密度が低くなる。この結果、GaN系膜20の結晶性が向上しその転位密度が低くなる。
なお、単結晶膜13上にGaN系膜20として、GaN系バッファ層21を成長させることなく、GaN系単結晶層23を成長させることもできる。かかる方法は、単結晶膜13とその上に成膜するGaN系膜20との間の格子定数の不整合が小さい場合に好適である。
上記の複合基板の準備工程において準備された複合基板10は、支持基板11がフッ化水素酸に溶解するため、フッ化水素酸に溶解させて支持基板11を除去することにより、単結晶膜13の主面13m上に成膜された主面20mの面積が大きく反りが小さく結晶性が良好なGaN系膜20が得られる。ここで、単結晶膜13がGaN単結晶膜などのGaN系単結晶膜で形成されている場合には、全体がGaN系材料で形成されているGaN系膜が得られる。
(実施例I)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
HVPE法により成長させた、転位密度が1×106cm−2、Si濃度が1×1018cm−2、酸素濃度が1×1017cm−2、炭素濃度が1×1016cm−2のGaN単結晶から、サイズが2×2×20mm(長手方向がa軸、長手方向に平行な面がc面およびm面のいずれかで構成され、面方位の精度は±0.1°以内)の評価用サンプルを切り出した。
上記の評価用サンプルについて、室温(25℃)から800℃まで昇温したときの平均熱膨張係数をTMA(熱機械分析)により測定した。具体的には、(株)リガク製TMA8310を用いて示差膨張方式により窒素ガス流通雰囲気下で評価サンプルの熱膨張係数を測定した。かかる測定により得られたGaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αGaNは、5.84×10−6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、ZrO2とSiO2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のZrO2−SiO2系焼結体A〜Mを準備した。かかる13種類のZrO2−SiO2系焼結体IA〜IMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもZrSiO4、ZrO2およびSiO2が存在していた。また、上記13種類のZrO2−SiO2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、ZrO2−SiO2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
ZrO2−SiO2系焼結体IAは、ZrO2とSiO2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)が4.25×10−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数αGaNに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaN比という)が0.728であった。ZrO2−SiO2系焼結体IBは、ZrO2とSiO2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10−6/℃、αS/αGaN比が0.813であった。ZrO2−SiO2系焼結体ICは、ZrO2とSiO2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10−6/℃、αS/αGaN比が0.856であった。ZrO2−SiO2系焼結体IDは、ZrO2とSiO2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10−6/℃、αS/αGaN比が0.890であった。ZrO2−SiO2系焼結体IEは、ZrO2とSiO2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10−6/℃、αS/αGaN比が0.925であった。ZrO2−SiO2系焼結体IFは、ZrO2とSiO2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10−6/℃、αS/αGaN比が0.959であった。ZrO2−SiO2系焼結体IGは、ZrO2とSiO2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10−6/℃、αS/αGaN比が0.993であった。ZrO2−SiO2系焼結体IHは、ZrO2とSiO2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.027であった。ZrO2−SiO2系焼結体IIは、ZrO2とSiO2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10−6/℃、αS/αGaN比が1.084であった。ZrO2−SiO2系焼結体IJは、ZrO2とSiO2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10−6/℃、αS/αGaN比が1.142であった。ZrO2−SiO2系焼結体IKは、ZrO2とSiO2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.199であった。ZrO2−SiO2系焼結体ILは、ZrO2とSiO2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10−6/℃、αS/αGaN比が1.241であった。ZrO2−SiO2系焼結体IMは、ZrO2とSiO2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10−6/℃、αS/αGaN比が1.284であった。
上記13種類のZrO2−SiO2系焼結体IA〜IMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IA〜IMとした。すなわち、13種類の支持基板IA〜IMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のZrO2−SiO2系焼結体IA〜IMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表1にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
上記の下地基板30の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMGガスおよびNH3ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度1000℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、図3(A)の支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、かかる支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m上の厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12aとした。これにより、支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、接着層12aである平坦な主面12amを有する厚さ0.2μmのSiO2層が得られた。
また、図3(C)中の(C2)を参照して、図3(B)の下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13であるGaN膜の主面13n上に厚さ2μmのSiO2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ2μmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ0.2μmのSiO2層だけ残存させて、接着層12bとした。
次いで、図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれに形成された接着層12aの主面12amおよび下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、接着層12aの主面12amと接着層12bの主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IA〜IMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である複合基板IA〜IMが得られた。
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板10である複合基板IA〜IMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。かかるGaN系膜20の成膜においては、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびNH3ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用して、まず、500℃で、GaN系バッファ層21として厚さ0.1μmのGaNバッファ層を成長させ、次いで、1050℃で、GaN系単結晶層23として厚さ5μmのGaN単結晶層を成長させた。ここで、GaN単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、複合基板IA〜IMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIA〜IMおよびIRを10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却後に成膜装置から取り出されたウエハIA〜IMおよびIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaN膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaN膜の転位密度は、L(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×108cm−2であった。ウエハIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×108cm−2であった。これらの結果を表1にまとめた。表1において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIA〜ILを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板11である支持基板IA〜ILおよび接着層12であるSiO2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜A〜Lが得られた。なお、ウエハIA〜ILから支持基板IA〜ILおよびSiO2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IA〜ILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IA〜ILの反りの大小関係には、ウエハIA〜ILにおける反りの大小関係が維持されていた。
表1を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIB〜IK)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaN比)<1.15)(ウエハIE〜IJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaN比)<1.1)(ウエハIF〜II)がより好ましい。
(実施例II)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αGaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10−6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)とSiO2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のYSZ−SiO2系焼結体IIA〜IIMを準備した。ここで、YSZは、YSZに対するY2O3(イットリア)の含有率が30モル%のものを用いた。かかる13種類のYSZ−SiO2系焼結体IIA〜IIMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもYSZおよびSiO2が存在していた。また、上記13種類のYSZ−SiO2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、YSZ−SiO2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
YSZ−SiO2系焼結体IIAは、YSZとSiO2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)が4.25×10−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数αGaNに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaN比という)が0.728であった。YSZ−SiO2系焼結体IIBは、YSZとSiO2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10−6/℃、αS/αGaN比が0.813であった。YSZ−SiO2系焼結体IICは、YSZとSiO2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10−6/℃、αS/αGaN比が0.856であった。YSZ−SiO2系焼結体IIDは、YSZとSiO2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10−6/℃、αS/αGaN比が0.890であった。YSZ−SiO2系焼結体IIEは、YSZとSiO2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10−6/℃、αS/αGaN比が0.925であった。YSZ−SiO2系焼結体IIFは、YSZとSiO2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10−6/℃、αS/αGaN比が0.959であった。YSZ−SiO2系焼結体IIGは、YSZとSiO2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10−6/℃、αS/αGaN比が0.993であった。YSZ−SiO2系焼結体Hは、YSZとSiO2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.027であった。YSZ−SiO2系焼結体IIIは、YSZとSiO2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10−6/℃、αS/αGaN比が1.084であった。YSZ−SiO2系焼結体IIJは、YSZとSiO2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10−6/℃、αS/αGaN比が1.142であった。YSZ−SiO2系焼結体IIKは、YSZとSiO2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.199であった。YSZ−SiO2系焼結体IILは、YSZとSiO2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10−6/℃、αS/αGaN比が1.241であった。YSZ−SiO2系焼結体IIMは、YSZとSiO2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10−6/℃、αS/αGaN比が1.284であった。
上記13種類のYSZ−SiO2系焼結体IIA〜IIMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IIA〜IIMとした。すなわち、13種類の支持基板IIA〜IIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のYSZ−SiO2系焼結体IIA〜IIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表2にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例Iと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例Iと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例Iと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例Iと同様にして、下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IIA〜IIMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板IIA〜IIMが得られた。
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例Iと同様にして、複合基板10である複合基板IIA〜IIMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、GaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、複合基板IIA〜IIMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIIA〜IIMおよびIIRを得た。
得られたウエハIIA〜IIMおよびIIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を実施例Iと同様にして測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハIIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハIICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハIIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×108cm−2であった。ウエハIIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハIILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハIIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×108cm−2であった。これらの結果を表2にまとめた。表2において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIIA〜IILを、実施例Iと同様にして、支持基板11である支持基板IIA〜IILおよび接着層12であるSiO2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜IIA〜IILを得た。なお、ウエハIIA〜IILから支持基板IIA〜IILおよびSiO2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IIA〜IILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IIA〜IILの反りの大小関係には、ウエハA〜Lにおける反りの大小関係が維持されていた。
表2を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIIB〜IIK)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaN比)<1.15)(ウエハIIE〜IIJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaN比)<1.1)(ウエハIIF〜III)がより好ましい。
(実施例III)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αGaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10−6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、CaSZ(カルシア安定化ジルコニア)とSiO2との所定のモル比の混合物をアルゴンガス雰囲気下一軸方向に50MPaの圧力をかけて1700℃で1時間焼結させることにより、13種類のCaSZ−SiO2系焼結体IIIA〜IIIMを準備した。ここで、CaSZは、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率が30モル%のものを用いた。かかる13種類のCaSZ−SiO2系焼結体IIIA〜IIIMには、X線回折により確認したところ、いずれについてもCaSZおよびSiO2が存在していた。また、上記13種類のCaSZ−SiO2系焼結体のそれぞれからサイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、CaSZ−SiO2系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
CaSZ−SiO2系焼結体IIIAは、CaSZとSiO2とのモル比が82:18であり、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)が4.25×10−6/℃であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数αGaNに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaN比という)が0.728であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIBは、CaSZとSiO2とのモル比が77:23であり、平均熱膨張係数αSが4.75×10−6/℃、αS/αGaN比が0.813であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIICは、CaSZとSiO2とのモル比が71:29であり、平均熱膨張係数αSが5.00×10−6/℃、αS/αGaN比が0.856であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIDは、CaSZとSiO2とのモル比が69:31であり、平均熱膨張係数αSが5.20×10−6/℃、αS/αGaN比が0.890であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIEは、CaSZとSiO2とのモル比が66:34であり、平均熱膨張係数αSが5.40×10−6/℃、αS/αGaN比が0.925であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIFは、CaSZとSiO2とのモル比が63:37であり、平均熱膨張係数αSが5.60×10−6/℃、αS/αGaN比が0.959であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIGは、CaSZとSiO2とのモル比が58:42であり、平均熱膨張係数αSが5.80×10−6/℃、αS/αGaN比が0.993であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIHは、CaSZとSiO2とのモル比が57:43であり、平均熱膨張係数αSが6.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.027であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIIは、CaSZとSiO2とのモル比が53:47であり、平均熱膨張係数αSが6.33×10−6/℃、αS/αGaN比が1.084であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIJは、CaSZとSiO2とのモル比が46:54であり、平均熱膨張係数αSが6.67×10−6/℃、αS/αGaN比が1.142であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIKは、CaSZとSiO2とのモル比が42:58であり、平均熱膨張係数αSが7.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.199であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIILは、CaSZとSiO2とのモル比が38:62であり、平均熱膨張係数αSが7.25×10−6/℃、αS/αGaN比が1.241であった。CaSZ−SiO2系焼結体IIIMは、CaSZとSiO2とのモル比が35:65であり、平均熱膨張係数αSが7.50×10−6/℃、αS/αGaN比が1.284であった。
上記13種類のCaSZ−SiO2系焼結体IIIA〜IIIMから、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、13種類の支持基板IIIA〜IIIMとした。すなわち、13種類の支持基板IIIA〜IIIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ対応する13種類のCaSZ−SiO2系焼結体IIIA〜IIIMの25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数に等しい。結果を表3にまとめた。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例Iと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例Iと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例Iと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例Iと同様にして、下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である支持基板IIIA〜IIIMのそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板A〜Mが得られた。
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例Iと同様にして、複合基板10である複合基板IIIA〜IIIMの単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、GaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、複合基板IIIA〜IIIMおよびサファイア基板のそれぞれにGaN膜が成膜されたウエハIIIA〜IIIMおよびIIIRを得た。
得られたウエハIIIA〜IIIMおよびIIIRについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を実施例Iと同様にして測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハIIIAは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が680μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多であった。ウエハIIIBは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハIIICは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハIIIDは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が400μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2.5×108cm−2であった。ウエハIIIEは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIIIFは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIIGは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIIHは、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIIIは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が15μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少であり、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIIIJは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIIIKは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が3×108cm−2であった。ウエハIIILは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が745μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度が4×108cm−2であった。ウエハIIIMは、支持基板に割れが発生し、十分なGaN膜が得られなかった。ウエハIIIRは、GaN膜側が凸状に反り、反り量が750μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少であり、GaN膜の転位密度は4×108cm−2であった。これらの結果を表3にまとめた。表3において、「−」は、その物性値が未測定であることを示す。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られたウエハIIIA〜IIILを、実施例Iと同様にして、支持基板11である支持基板IIIA〜IIILおよび接着層12であるSiO2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20であるGaN膜IIIA〜IIILを得た。なお、ウエハIIIA〜IIILから支持基板IIIA〜IIILおよびSiO2層が除去されることにより形成されたGaN系膜20であるGaN膜IIIA〜IIILにおいても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、GaN膜IIIA〜IIILの反りの大小関係には、ウエハIIIA〜IIILにおける反りの大小関係が維持されていた。
表3を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIIIB〜IIIK)、反り小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaN比)<1.15)(ウエハIIIE〜IIIJ)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaN比)<1.1)(ウエハIIIF〜IIII)がより好ましい。
(実施例IV)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αGaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10−6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、1気圧、1700℃で10時間焼結する常圧焼結および2000気圧、1700℃で1時間焼結するHIP(熱間等方位圧プレス)により製造された57種類のYSZ(イットリア安定化ジルコニア)−ムライト系焼結体IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8のそれぞれのX線回折によりY2O3、ZrO2およびムライト(3Al2O3・2SiO2〜2Al2O3・SiO2、具体的にはAl6O13Si2)の存在の有無および比率を確認した。また、上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体のそれぞれから、サイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、YSZ−ムライト系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
YSZ−ムライト系焼結体IVA0は、YSZおよびムライトの全体に対するYSZの含有率(以下、YSZ含有率という)が0質量%、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)が未測定であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数αGaNに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaN比という)が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVB1は、YSZ含有率が20質量%、YSZに対するY2O3(イットリア)の含有率(以下、Y2O3含有率という)が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.40×10−6/℃、αS/αGaN比が0.753であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB2は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.58×10−6/℃、αS/αGaN比が0.784であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB3は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが4.68×10−6/℃、αS/αGaN比が0.801であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB4は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが4.69×10−6/℃、αS/αGaN比が0.803であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB5は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが4.72×10−6/℃、αS/αGaN比が0.808であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB6は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが4.81×10−6/℃、αS/αGaN比が0.823であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB7は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが5.06×10−6/℃、αS/αGaN比が0.866であった。YSZ−ムライト系焼結体IVB8は、YSZ含有率が20質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVC1は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.48×10−6/℃、αS/αGaN比が0.767であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC2は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.62×10−6/℃、αS/αGaN比が0.791であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC3は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.26×10−6/℃、αS/αGaN比が0.901であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC4は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.27×10−6/℃、αS/αGaN比が0.903であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC5は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.31×10−6/℃、αS/αGaN比が0.909であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC6は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.40×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.925であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC7は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが5.69×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.974であった。YSZ−ムライト系焼結体IVC8は、YSZ含有率が25質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVD1は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.56×10−6/℃、αS/αGaN比が0.781であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD2は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.65×10−6/℃、αS/αGaN比が0.796であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD3は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.55×10−6/℃、αS/αGaN比が0.950であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD4は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.56×10−6/℃、αS/αGaN比が0.952であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD5は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.60×10−6/℃、αS/αGaN比が0.959であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD6は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.70×10−6/℃、αS/αGaN比が0.976であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD7は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.027であった。YSZ−ムライト系焼結体IVD8は、YSZ含有率が30質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVE1は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.77×10−6/℃、αS/αGaN比が0.816であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE2は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.86×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.832であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE3は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.80×10−6/℃、αS/αGaN比が0.993であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE4は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.81×10−6/℃、αS/αGaN比が0.995であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE5は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.85×10−6/℃、αS/αGaN比が1.002であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE6は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.96×10−6/℃、αS/αGaN比が1.020であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE7は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.27×10−6/℃、αS/αGaN比が1.074であった。YSZ−ムライト系焼結体IVE8は、YSZ含有率が35質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVF1は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.97×10−6/℃、αS/αGaN比が0.851であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF2は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが5.07×10−6/℃、αS/αGaN比が0.868であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF3は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが6.05×10−6/℃、αS/αGaN比が1.036であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF4は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが6.06×10−6/℃、αS/αGaN比が1.038であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF5は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが6.10×10−6/℃、αS/αGaN比が1.045であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF6は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが6.21×10−6/℃、αS/αGaN比が1.064であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF7は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.54×10−6/℃、αS/αGaN比が1.120であった。YSZ−ムライト系焼結体IVF8は、YSZ含有率が40質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVG1は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.99×10−6/℃、αS/αGaN比が0.854であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG2は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが5.09×10−6/℃、αS/αGaN比が0.872であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG3は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが6.07×10−6/℃、αS/αGaN比が1.039であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG4は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが6.08×10−6/℃、αS/αGaN比が1.041であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG5は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが6.12×10−6/℃、αS/αGaN比が1.048であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG6は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが6.23×10−6/℃、αS/αGaN比が1.067であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG7は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.56×10−6/℃、αS/αGaN比が1.123であった。YSZ−ムライト系焼結体IVG8は、YSZ含有率が70質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
YSZ−ムライト系焼結体IVH1は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH2は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH3は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH4は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH5は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH6は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH7は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。YSZ−ムライト系焼結体IVH8は、YSZ含有率が100質量%、Y2O3含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体から、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、57種類の支持基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8とした。すなわち、上記57種類の支持基板についてのYSZおよびムライトの全体に対するYSZの含有率(YSZ含有率)、YSZに対するY2O3(イットリア)の含有率(Y2O3含有率)25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ上記57種類のYSZ−ムライト系焼結体についてのYSZ含有率、Y2O3含有率および25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数にそれぞれ等しい。結果を表4〜10にまとめた。表4〜10において、「−」は、その物性値が未測定または非算出であることを示す。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。
上記の下地基板30の主面30n上に、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜をMOCVD法により成膜した。成膜条件は、原料ガスとしてTMGガスおよびNH3ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用し、成膜温度1000℃、成膜圧力は1気圧とした。なお、こうして得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)中の(C1)を参照して、図3(A)の支持基板11である57種類の支持基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8、IVH1〜IVH8のそれぞれの主面11m上に厚さ300nmのSiO2膜をCVD(化学気相堆積)法により成膜した。次いで、上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m上の厚さ300nmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ270nmのSiO2層を残存させて、接着層12aとした。これにより、上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11mの空隙が埋められ、接着層12aである平坦な主面12amを有する厚さ270nmのSiO2層が得られた。
また、図3(C)中の(C2)を参照して、図3(B)の下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13であるGaN膜の主面13n上に厚さ300nmのSiO2膜をCVD法により成膜した。次いで、この厚さ300nmのSiO2膜を、CeO2スラリーを用いて研磨することにより、厚さ270nmのSiO2層だけ残存させて、接着層12bとした。
次いで、図3(C)中の(C3)を参照して、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれに形成された接着層12aの主面12amおよび下地基板30であるSi基板上に成膜された単結晶膜13上に形成された接着層12bの主面12bnをアルゴンプラズマにより清浄化および活性化させた後、接着層12aの主面12amと接着層12bの主面12bnとを貼り合わせて、窒素雰囲気下300℃で2時間熱処理した。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である57種類の複合基板IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8、IVH1〜IVH8が得られた。
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、複合基板10である上記57種類の複合基板の単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれMOCVD法によりGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。かかるGaN系膜20の成膜においては、原料ガスとしてTMG(トリメチルガリウム)ガスおよびNH3ガスを使用し、キャリアガスとしてH2ガスを使用して、まず、500℃で、GaN系バッファ層21として厚さ50nmのGaNバッファ層を成長させ、次いで、1050℃で、GaN系単結晶層23として厚さ50nmのGaN単結晶層を成長させた。ここで、GaN単結晶層の成長速度は1μm/hrであった。その後、上記57種類の複合基板のそれぞれにGaN膜が成膜された57種類のウエハIVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8を10℃/minの速度で室温(25℃)まで冷却した。
室温まで冷却後に成膜装置から取り出された上記57種類のウエハについて、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。ここで、ウエハの反りの形状および反り量は、GaN膜の主面をCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞により測定した。GaN膜のクラック本数密度は、ノマルスキー顕微鏡を用いて単位長さ当りのクラック本数を測定し、1本/mm未満を「極少」、1本/mm以上5本/mm未満を「少」、5本/mm以上10本/mm未満を「多」、10本/mm以上を「極多」と評価した。GaN膜の転位密度はCL(カソードルミネッセンス)による暗点の単位面積当たりの個数を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハIVA0は、GaN膜のクラック本数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表4にまとめた。
ウエハIVB1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が670μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVB2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVB3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が655μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVB4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVB5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が645μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVB6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が610μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVB7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVB8は、GaN膜のクラック本数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表4にまとめた。
ウエハIVC1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が665μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVC2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が657μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVC3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が390μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVC4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が385μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVC5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が380μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVC6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVC7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIVC8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表5にまとめた。
ウエハIVD1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVD2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVD3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が250μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVD4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が240μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVD5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIVD6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIVD7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVD8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表6にまとめた。
ウエハIVE1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVE2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が520μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVE3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVE4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIVE5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が1μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハIVE6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が7μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVE7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVE8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表7にまとめた。
ウエハIVF1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVF2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVF3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVF4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVF5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVF6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVF7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVF8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表8にまとめた。
ウエハIVG1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が510μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVG2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が490μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハIVG3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVG4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVG5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVG6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVG7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハIVG8は、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表9にまとめた。
ウエハIVH1〜IVH8は、いずれも、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表10にまとめた。
4.支持基板の除去工程
図2(C)を参照して、上記で得られた57種類のウエハを、10質量%のフッ化水素酸水溶液に浸漬することにより、支持基板11である上記57種類の支持基板および接着層12であるSiO2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20である57種類のGaN膜IVA0、IVB1〜IVB8、IVC1〜IVC8、IVD1〜IVD8、IVE1〜IVE8、IVF1〜IVF8、IVG1〜IVG8およびIVH1〜IVH8が得られた。なお、上記57種類のウエハから上記57種類の支持基板およびSiO2層がそれぞれ除去されることにより形成されたGaN系膜20である上記57種類のGaN膜においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、上記57種類のGaN膜の反りの大小関係には、それぞれ対応する上記57種類のウエハにおける反りの大小関係が維持されていた。
表4〜10を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハIVB3〜IVB7、IVC3〜IVC7、IVD3〜IVD7、IVE1〜IVE7、IVF1〜IVF7およびIVG1〜IVG7)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaN比)<1.15)(ウエハIVC3〜IVC7、IVD3〜IVD7、IVE3〜IVE7、IVF3〜IVF7およびIVG3〜IVG7)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaN比)<1.1)(ウエハIVC7、IVD3〜IVD7、IVE3〜IVE7、IVF3〜IVF6およびIVG3〜IVG6)がより好ましい。
また、表4〜10から、上記57種類の複合基板10の上記57種類の支持基板11のYSZ含有率およびY2O3含有率と上記57種類の複合基板10のGaN系単結晶層23上に成長させるGaN系膜20のクラック本数密度との関係を表11にまとめた。
表11を参照して、複合基板の支持基板に含まれるムライト(Al2O3−SiO2複合酸化物)およびYSZ(イットリア安定化ジルコニア)の全体に対するYSZの含有率が20質量%以上40質量%以下のとき、より好ましくは25質量%以上35質量%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が著しく減少した。さらに、YSZに対するY2O3(イットリア)の含有率が5モル%以上のとき、より好ましくは6モル%以上50モル%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が極めて著しく減少した。
(実施例V)
1.GaN結晶の熱膨張係数の測定
GaN結晶のa軸方向の25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αGaNは、実施例Iと同様にして測定したところ、5.84×10−6/℃であった。
2.複合基板の準備工程
(1)支持基板を準備するサブ工程
図3(A)を参照して、支持基板11の材料として、1気圧、1700℃で10時間焼結する常圧焼結および2000気圧、1700℃で1時間焼結するHIP(熱間等方位圧プレス)により製造された57種類のCaSZ(カルシア安定化ジルコニア)−ムライト系焼結体VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8のそれぞれのX線回折によりCaO、ZrO2およびムライト(3Al2O3・2SiO2〜2Al2O3・SiO2、具体的にはAl6O13Si2)の存在の有無および比率を確認した。また、上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体のそれぞれから、サイズが2×2×20mm(長手方向は焼結体から切り出される支持基板の主面に実質的に平行な方向)の測定用サンプルを切り出した。ここで、CaSZ−ムライト系焼結体は方向特異性がないため、切り出し方向は任意とした。それらの測定用サンプルについて、上記と同様にして、室温(25℃)から800℃まで昇温下時の平均熱膨張係数αSを測定した。
CaSZ−ムライト系焼結体VA0は、CaSZおよびムライトの全体に対するCaSZの含有率(以下、CaSZ含有率という)が0質量%、25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数αS(以下、単に平均熱膨張係数αSという)が未測定であり、GaN結晶のa軸方向の平均熱膨張係数αGaNに対する焼結体の熱膨張係数αSの比(以下、αS/αGaN比という)が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VB1は、CaSZ含有率が20質量%、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率(以下、CaO含有率という)が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.40×10−6/℃、αS/αGaN比が0.753であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB2は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.58×10−6/℃、αS/αGaN比が0.784であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB3は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが4.68×10−6/℃、αS/αGaN比が0.801であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB4は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが4.69×10−6/℃、αS/αGaN比が0.803であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB5は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが4.72×10−6/℃、αS/αGaN比が0.808であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB6は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが4.81×10−6/℃、αS/αGaN比が0.823であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB7は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが5.06×10−6/℃、αS/αGaN比が0.866であった。CaSZ−ムライト系焼結体VB8は、CaSZ含有率が20質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VC1は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.48×10−6/℃、αS/αGaN比が0.767であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC2は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.62×10−6/℃、αS/αGaN比が0.791であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC3は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.26×10−6/℃、αS/αGaN比が0.901であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC4は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.27×10−6/℃、αS/αGaN比が0.903であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC5は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.31×10−6/℃、αS/αGaN比が0.909であった。CaSZ−ムライト系焼結体C6は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.40×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.925であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC7は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが5.69×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.974であった。CaSZ−ムライト系焼結体VC8は、CaSZ含有率が25質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VD1は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.56×10−6/℃、αS/αGaN比が0.781であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD2は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.65×10−6/℃、αS/αGaN比が0.796であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD3は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.55×10−6/℃、αS/αGaN比が0.950であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD4は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.56×10−6/℃、αS/αGaN比が0.952であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD5は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.60×10−6/℃、αS/αGaN比が0.959であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD6は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.70×10−6/℃、αS/αGaN比が0.976であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD7は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.00×10−6/℃、αS/αGaN比が1.027であった。CaSZ−ムライト系焼結体VD8は、CaSZ含有率が30質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VE1は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.77×10−6/℃、αS/αGaN比が0.816であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE2は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが4.86×10−6/℃であり、αS/αGaN比が0.832であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE3は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが5.80×10−6/℃、αS/αGaN比が0.993であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE4は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが5.81×10−6/℃、αS/αGaN比が0.995であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE5は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが5.85×10−6/℃、αS/αGaN比が1.002であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE6は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが5.96×10−6/℃、αS/αGaN比が1.020であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE7は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.27×10−6/℃、αS/αGaN比が1.074であった。CaSZ−ムライト系焼結体VE8は、CaSZ含有率が35質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VF1は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.97×10−6/℃、αS/αGaN比が0.851であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF2は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが5.07×10−6/℃、αS/αGaN比が0.868であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF3は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが6.05×10−6/℃、αS/αGaN比が1.036であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF4は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが6.06×10−6/℃、αS/αGaN比が1.038であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF5は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが6.10×10−6/℃、αS/αGaN比が1.045であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF6は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが6.21×10−6/℃、αS/αGaN比が1.064であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF7は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.54×10−6/℃、αS/αGaN比が1.120であった。CaSZ−ムライト系焼結体VF8は、CaSZ含有率が40質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VG1は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが4.99×10−6/℃、αS/αGaN比が0.854であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG2は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが5.09×10−6/℃、αS/αGaN比が0.872であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG3は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが6.07×10−6/℃、αS/αGaN比が1.039であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG4は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが6.08×10−6/℃、αS/αGaN比が1.041であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG5は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが6.12×10−6/℃、αS/αGaN比が1.048であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG6は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが6.23×10−6/℃、αS/αGaN比が1.067であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG7は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが6.56×10−6/℃、αS/αGaN比が1.123であった。CaSZ−ムライト系焼結体VG8は、CaSZ含有率が70質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
CaSZ−ムライト系焼結体VH1は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が0モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH2は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が3モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH3は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が5モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH4は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が6モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH5は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が10モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH6は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が20モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH7は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が50モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。CaSZ−ムライト系焼結体VH8は、CaSZ含有率が100質量%、CaO含有率が100モル%、平均熱膨張係数αSが未測定であり、αS/αGaN比が非算出であった。
上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体から、直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmの支持基板をそれぞれ切り出して、それぞれの支持基板の両主面を鏡面に研磨して、57種類の支持基板VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8とした。すなわち、上記57種類の支持基板についてのCaSZおよびムライトの全体に対するCaSZの含有率(CaSZ含有率)、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率(CaO含有率)25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数は、それぞれ上記57種類のCaSZ−ムライト系焼結体についてのCaSZ含有率、CaO含有率および25℃から800℃までにおける平均熱膨張係数にそれぞれ等しい。結果を表12〜18にまとめた。表12〜18において、「−」は、その物性値が未測定または非算出であることを示す。
(2)下地基板上に単結晶膜を成膜するサブ工程
図3(B)を参照して、下地基板30として、実施例IVと同様に、鏡面に研磨された(111)面の主面30nを有する直径5インチ(127mm)で厚さ0.5mmのSi基板を準備した。かかる下地基板30の主面30n上に、実施例IVと同様にして、単結晶膜13として厚さ0.4μmのGaN膜を成膜した。得られた単結晶膜13の主面13mは、(0001)面からのオフ角が±1°以内の面方位を有していた。
(3)支持基板と単結晶膜とを貼り合わせるサブ工程
図3(C)を参照して、実施例IVと同様にして、支持基板11と単結晶膜13とを接着層12を介在させて貼り合わせた。
(4)下地基板を除去するサブ工程
図3(D)を参照して、実施例IVと同様にして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの裏側(単結晶膜13が貼り合わされていない側)の主面および側面をワックス40で覆って保護した後、10質量%のフッ化水素酸および5質量%の硝酸を含む混酸水溶液を用いて、エッチングにより下地基板30であるSi基板を除去した。こうして、支持基板11である上記57種類の支持基板のそれぞれの主面11m側に単結晶膜13であるGaN膜が配置された複合基板10である57種類の複合基板VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8、VH1〜VH8が得られた。
3.GaN系膜の成膜工程
図2(B)を参照して、実施例IVと同様にして、複合基板10である上記57種類の複合基板の単結晶膜13であるGaN膜の主面13m(かかる主面は(0001)面である。)上および直径4インチ(101.6mm)で厚さ1mmのサファイア基板の主面(かかる主面は(0001)面である。)上に、それぞれGaN系膜20としてGaN膜を成膜した。こうして、上記57種類の複合基板のそれぞれにGaN膜が成膜された57種類のウエハVA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8を得た。
得られた上記57種類のウエハについて、実施例IVと同様にして、ウエハの反り、GaN膜のクラック本数密度および転位密度を測定した。なお、本実施例においてGaN膜に発生したクラックは、膜を貫通しない微小なものであった。
ウエハVA0は、GaN膜のクラック本数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表12にまとめた。
ウエハVB1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が670μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVB2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVB3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が655μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVB4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVB5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が645μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVB6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が610μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVB7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVB8は、GaN膜のクラック本数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表12にまとめた。
ウエハVC1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が665μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVC2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が657μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVC3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が390μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVC4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が385μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVC5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が380μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVC6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が350μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVC7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハVC8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表13にまとめた。
ウエハVD1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が660μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVD2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が650μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVD3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が250μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVD4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が240μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVD5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が230μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハVD6は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が180μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハVD7は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVD8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表14にまとめた。
ウエハVE1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が630μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVE2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が520μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVE3は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が150μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVE4は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が120μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハVE5は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が1μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極少、GaN膜の転位密度が1×108cm−2であった。ウエハVE6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が7μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVE7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVE8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表15にまとめた。
ウエハVF1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が500μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVF2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が480μmであり、GaN膜のクラック本数密度が多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVF3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVF4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVF5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVF6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVF7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が少、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVF8は、GaN膜のクラック数密度が少であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表16にまとめた。
ウエハVG1は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が510μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVG2は、GaN膜側が凹状に反り、反り量が490μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が5×108cm−2であった。ウエハVG3は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が10μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVG4は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVG5は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が11μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVG6は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が12μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVG7は、GaN膜側が凸状に反り、反り量が110μmであり、GaN膜のクラック本数密度が極多、GaN膜の転位密度が2×108cm−2であった。ウエハVG8は、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表17にまとめた。
ウエハVH1〜VH8は、いずれも、GaN膜のクラック数密度が極多であり、反り形状、反り量およびGaN膜の転位密度が未測定であった。結果を表18にまとめた。表18において、「−」はその物性値が実測定であることを示す。
4.支持基板の除去
図2(C)を参照して、上記で得られた57種類のウエハを、実施例IVと同様にして、支持基板11である上記57種類の支持基板および接着層12であるSiO2層を溶解させることにより除去して、単結晶膜13であるGaN膜の主面13m上に成膜されたGaN系膜20である57種類のGaN膜VA0、VB1〜VB8、VC1〜VC8、VD1〜VD8、VE1〜VE8、VF1〜VF8、VG1〜VG8およびVH1〜VH8が得られた。なお、上記57種類のウエハから上記57種類の支持基板およびSiO2層がそれぞれ除去されることにより形成されたGaN系膜20である上記57種類のGaN膜においても反りがCorning Tropel社のFM200EWaferを用いて観察される光干渉縞による測定により認められ、上記57種類のGaN膜の反りの大小関係には、それぞれ対応する上記57種類のウエハにおける反りの大小関係が維持されていた。
表12〜18を参照して、主面内の熱膨張係数αSがGaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.8倍より大きく1.2倍より小さい(すなわち、0.8<(αS/αGaN比)<1.2)支持基板を有する複合基板を用いることにより(ウエハVB3〜VB7、VC3〜VC7、VD3〜VD7、VE1〜VE7、VF1〜VF7およびVG1〜VG7)、反りが小さく転位密度が低く結晶性の良好なGaN膜を成膜することができた。また、GaN膜の反りおよび転位密度をさらに低減する観点から、複合基板の支持基板の主面内の熱膨張係数αSは、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.9倍より大きく1.15倍より小さいこと(すなわち、0.9<(αS/αGaN比)<1.15)(ウエハVC3〜VC7、VD3〜VD7、VE3〜VE7、VF3〜VF7およびVG3〜VG7)が好ましく、GaN結晶の熱膨張係数αGaNの0.95倍より大きく1.1倍より小さいこと(すなわち、0.95<(αS/αGaN比)<1.1)(ウエハVC7、VD3〜VD7、VE3〜VE7、VF3〜VF6およびVG3〜VG6)がより好ましい。
また、表12〜18から、上記57種類の複合基板10の上記57種類の支持基板11のCaSZ含有率およびCaO含有率と上記57種類の複合基板10のGaN系単結晶層23上に成長させるGaN系膜20のクラック本数密度との関係を表19にまとめた。
表19を参照して、複合基板の支持基板に含まれるムライト(Al2O3−SiO2複合酸化物)およびCaSZ(カルシア安定化ジルコニア)の全体に対するCaSZの含有率が20質量%以上40質量%以下のとき、より好ましくは25質量%以上35質量%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が著しく減少した。さらに、CaSZに対するCaO(カルシア)の含有率が5モル%以上のとき、より好ましくは6モル%以上50モル%以下のとき、複合基板の単結晶膜上に成膜したGaN系膜のクラック本数密度が極めて著しく減少した。
なお、上記実施例においては、複合基板上に非ドーピングのGaN膜を成膜した例を示したが、ドーピングによりn型またはp型の導電性が付与されたGaN膜を成膜した場合、ドーピングにより比抵抗が高められたGaN膜を成膜した場合にも、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
また、GaN膜に替えてGaxInyAl1−x−yN膜(0<x<1、y≧0、x+y≦1)などのGaN系膜を成膜した場合にも上記実施例と同様の結果が得られた。特に、GaN膜に替えてGaxInyAl1−x−yN膜(0.5<x<1、y≧0、x+y≦1)を成膜する場合には、上記実施例とほぼ同一の結果が得られた。
また、GaN系膜(具体的にはGaxInyAl1−x−yN膜(x>0、y≧0、x+y≦1)など)は、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて複数成膜することもできる。すなわち、GaN膜に替えてGaxInyAl1−x−yN膜(x>0、y≧0、x+y≦1)などのGaN系膜を、Ga、In、AlなどのIII族元素の組成比を変えて、複数成膜することができる。
本発明の実施においては、GaN系膜の成膜の際にELO(Epitaxial Lateral Overgrowth;ラテラル成長)技術などの公知の転位低減技術を適用できる。
また、複合基板にGaN系膜を成膜した後に、複合基板の支持基板などを除去する際には、GaN系膜を別の支持基板に転写してもよい。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。