JP2013172809A - 無針注射器 - Google Patents

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Abstract

【課題】生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して注射液投与をより効率的に行え、また、取り扱いが容易な無針注射器を提供する。
【解決手段】注射目的物質を封入する封入部と、封入部に封入された注射目的物質に対して加圧する加圧部と、加圧部によって加圧された注射目的物質が流れる流路を有し、該流路の開口端から注射器の外部の注射対象領域に対して注射目的物質を射出する射出部と、射出部の孔径より小さい孔径を有する微小細孔が一面から反対面に貫通した板状の微小細孔部であって、射出部から射出される注射目的物質が微小細孔を通過して注射対象領域側へ到達するように、射出部の外側に配置される微小細孔部と、射出部の外側に配置された微小細孔部を、該微小細孔部の更に外側から保持する、微小細孔部と異なる部材によって構成される保持部であって、注射対象領域と接する端面を含み、該端面の少なくとも一部が該注射対象領域に対応した形状を有する保持部と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する無針注射器に関する。
注射針を介することなく注射を行う無針注射器では、加圧ガスやバネにより薬剤等を含む注射液に対して圧力を加えることで注射成分の射出が行われる構成が採用される。そして、注射液を生体内の所望の領域に送り込めるよう、注射液に掛けられる加圧力が調整されることになる。ここで、無針注射器等を介して薬剤を生体内に注射する場合、特に注目されるのは、薬剤を皮膚内のランゲルハンス細胞に投与できる能力である。ランゲルハンス細胞は、皮膚の上側有棘層に通常に存在する樹状細胞である。これらの細胞は、皮膚の免疫応答に関与し、且つ皮膚からリンパ節へ移動することがわかっており、マクロファージに共通の受容体を有し、T及びBリンパ球に対する抗原提示細胞として機能する。そのため、ランゲルハンス細胞は、ワクチンの開発の促進、並びに自己免疫疾患及び拒絶反応防止治療のための処置に関連した免疫系研究において特に重要である。しかしながら、このランゲルハンス細胞は皮下の比較的浅い部位に存在することから、注射液を生体内部に直接運ぶ注射針を有していない無針注射器においては、ランゲルハンス細胞への注射液投与を効率的に行うことは、非常に有効である。
一方で、無針注射器では、皮下の比較的浅い部位への注射液投与をより効率的に行えるよう、注射液を生体の皮膚などの注射対象領域に運ぶための制御が必要となる。この制御は、加圧力や、注射液の射出口の径を適宜調整することで実現される。また、無針注射器では、注射液を射出する射出口を生体の皮膚などの注射対象領域に押しつけた際に、射出口と注射対象領域とが密着し、注射液が効率よく注射対象領域に運べることが必要である。
ここで、特許文献1には、無針注射器の関連技術として、針を用いないジェット注入薬物送達装置が開示されている。この特許文献1に記載の技術では、眼球に対して薬物を注入できるよう、眼球との当接端面が曲面形状となっている。
特開2007―44531号公報
無針注射器では、皮下の比較的浅い部位への注射液投与をより効率的に行えるよう、加圧力や、注射液の射出口の径を適宜調整する必要がある。また、無針注射器では、注射液を注射対象領域に押しつけた際に、射出口と注射対象領域とが密着し、注射液が効率よく注射対象領域に運べることが必要である。また、注射器としての利便性を確保する上では、構成が簡易であり、取り扱いが容易であることも必要である。この点、従来技術として、眼球との当接端面を曲面形状としたものも存在する。しかしながら、この従来技術に係る無針注射器を眼球のような球面以外の部位に使用すると、当接端面と注射対象領域との間に隙間ができることが懸念される。また、この従来技術は、複数のノズルを有するが、薬物を貯蔵する貯蔵部と、この複数のノズルの位置が適切に対応した状態でなければ、注射液を効率よく注射対象領域に運ぶことができなくなる。また、注射器の組み立ての際は、薬物を貯蔵する貯蔵部と複数のノズルとの位置が適切に対応した状態で固定される必要
があり、この作業が煩雑となることが想定される。
本発明では、上記した問題に鑑み、生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して注射液投与をより効率的に行え、また、取り扱いが容易な無針注射器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明では、生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して注射目的物質の投与をより効率的に行うため、無針注射器の当接端面の形状を注射対象領域の形状に対応させるとともに、注射液を注射対象領域へ供給するための孔(微小細孔)の径を小さくして、注射目的物質が到達する深さを浅く制御する部材を設けることとした。また、この孔が形成された部材は、注射目的物質の流路上に適切に配置された状態で、別部材からなる保持部で容易に保持できるようにした。
具体的には、本発明は、注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器であって、前記注射目的物質を封入する封入部と、前記封入部に封入された前記注射目的物質に対して加圧する加圧部と、前記加圧部によって加圧された前記注射目的物質が流れる流路を有し、該流路の開口端から前記注射器の外部の注射対象領域に対して前記注射目的物質を射出する射出部と、前記射出部の孔径より小さい孔径を有する微小細孔が、一面から反対面に貫通した板状の微小細孔部であって、前記射出部から射出される注射目的物質が前記微小細孔を通過して前記注射対象領域側へ到達するように、前記射出部の外側に配置される微小細孔部と、前記射出部の外側に配置された前記微小細孔部を、該微小細孔部の更に外側から保持する、前記微小細孔部と異なる部材によって構成される保持部であって、前記注射対象領域と接する端面を含み、該端面の少なくとも一部が該注射対象領域に対応した形状を有する保持部と、を備える。
本発明に係る無針注射器では、封入部に封入されている注射目的物質に対して加圧部によって圧力が加えられることで、封入部の流路から射出部の流路への注射目的物質の移動が促される。その結果、射出部から注射目的物質が注射対象領域に対して射出される。この注射目的物質は、注射対象領域の内部で効能が期待される成分を含むものであり、上記のように加圧部により加えられる圧力がその射出時の駆動源である。そのため、加圧部による射出が可能であれば、注射目的物質の無針注射器内の収容状態や、液体やゲル状等の流体、粉体、粒状の固体等の注射目的物質の具体的な物理的形態は問われない。
たとえば、注射目的物質は液体であり、また固体であっても射出を可能とする流動性が担保されればゲル状の固体であってもよい。更には、注射目的物質は、粉体の状態であってもよい。そして、注射目的物質には、生体の注射対象領域に送り込むべき成分が含まれ、当該成分は注射目的物質の内部に溶解した状態で存在してもよく、又は当該成分が溶解せずに単に混合された状態であってもよい。一例を挙げれば、送りこむべき成分として、抗体増強のためのワクチン、美容のためのタンパク質、毛髪再生用の培養細胞等があり、これらが射出可能となるように、液体、ゲル状等の流体に含まれることで注射目的物質が形成される。
また、注射目的物質への加圧源は加圧による射出が可能である限りにおいて、様々な加圧源を利用することができる。たとえば、バネ等による弾性力を利用したもの、加圧されたガスを利用したもの、火薬の燃焼で発生するガスの圧力を利用したもの、加圧のための電気的アクチュエータ(モータやピエゾ素子等)を利用したものが、加圧源として挙げられる。また、ユーザの手動によって加圧を達成させる形態も採用し得る。
射出部は、その開口端の開口面積を封入部の流路面積より小さくなるように形成するこ
とが好ましい。ここでいう面積は、注射目的物質の流れに対して垂直な方向における面積である。このように開口端の開口面積が設定されることで、加圧された注射目的物質は、より流路面積が小さい開口端に集約されて、射出時における注射目的物質にかかる圧力や流速を高めることができる。これにより、射出された注射目的物質が生体の注射対象領域の表面を貫通し、その内部を浸食していくことが可能となる。
そして、本発明に係る無針注射器では、射出部の外側に微小細孔部が配置されている。微小細孔部は、射出部とは異なる構造物としての「孔」としての微小細孔を有する。この微小細孔は、射出部孔径(上述の開口面積に相当)より小さい孔径を有する。射出部の開口端から射出された注射目的物質は、注射対象領域に到達する前に、この微小細孔部を経由する。微小細孔部は複数の微小細孔によって形成されていてもよく、その場合、換言すれば、射出部から射出された一本の流れが、微小細孔部によって複数のさらに細い流れ(液柱)に分割される。そのため、注射対象領域の表面には細い液柱となった注射目的物質が到達することになる。その結果、注射目的物質が到達する注射対象領域での深さを浅く調整することが可能となる。
また、本発明に係る無針注射器では、上記微小細孔部が、微小細孔部の更に外側から保持される。保持とは、換言すると、微小細孔部が無針注射器に接続された状態が維持されることである。なお、無針注射器と保持部との固定は、保持部が自身で行ってもよく、また、別部材が行ってもよい。保持部は、注射対象領域と接する端面を含み、その一部が注射対象領域に対応した形状を有する。注射対象領域に対応した形状とは、端面と注射対象領域との密着性を高めるために形成された形状であり、注射対象領域と完全に一致している必要はない。
本発明に係る無針注射器では、射出部の外側に微小細孔部及び保持部を配置させるという簡素な構成の採用によって、浅い部位への注射目的物質の注射が可能となる。そのため、無針注射器を安価に供給できる。つまり注射目的物質を射出するための射出部に相当する孔を可能な限り小さく加工することは技術的に困難を伴い、加工できる径の下限が自ずと決まってくる。しかし本発明では、比較的薄い板状の微小細孔部に注射目的物質を射出する微小細孔を形成するため、加工の自由度が上がり、さらに小さい径の穿孔も可能となる。これにより注射対象領域の浅い部分を含む所望の部位に注射目的物質を注射できることから、注射目的物質の効率的な注射、すなわち注射時の無駄な注射目的物質の消費抑制を図ることができる。また、微小細孔部の流路面積を適宜選択することで、加圧部による注射目的物質への加圧を調整しなくても、注射対象領域での注射深さを容易に制御することが可能となるため、目的に応じて異なる仕様(径、孔数等)の微小細孔部を使い分けるなどで、注射器としての活用度が向上する。また、無針注射器としての利便性を確保する上では、構成が簡易であるとともに、取り扱いが容易であることも必要である。この点、本発明に係る無針注射器は、保持部の端面が注射対象領域に対応した形状を有しており、保持部の端面と注射対象領域との間の密着性を高めることができる。そのため、使用者の熟練度に関わらず、注射目的物質を効率よく注射対象領域に注射することができる。また、注射目的物質を効率よく注射対象領域に運ぶ上では、射出部と微小細孔部の位置が適切に対応させる必要がある。この点、本発明に係る無針注射器では、微小細孔部と異なる部材からなる保持部で固定することができる。すなわち、射出部と微小細孔部の位置を適切に対応させた上で、保持部で保持することができる。つまり、位置合わせと固定(保持)を別々に行うことができるので、無針注射器の組み立て作業も容易となる。また、微小細孔部及び保持部の構成を注射対象領域や注射目的物質に応じて変更することで、用途に最適な無針注射器を提供することができる。
ここで、本発明に係る無針注射器において、前記保持部は、その内側の少なくとも一部が前記微小細孔部と接し、前記微小細孔およびその近傍の前記一面のみを前記開口部から
露出するように保持しており、前記加圧部による加圧の際、前記板状の微小細孔部の浮き上がりを抑制するようにしてもよい。加圧部による加圧の際には、板状の微小細孔部が浮き上がる(即ち、射出部から排出された注射目的物質の圧力を受けて、微小細孔部が前記射出口から離れるように変形する)ことが懸念される。仮に、微小細孔部が浮き上がると、射出部から射出された注射目的物質を効率よく注射対象領域に移動させることができなくなる。本発明に係る無針注射器では、保持部により浮き上がりを抑制でき、その結果、射出部から射出された注射目的物質を効率よく注射対象領域に移動させることができる。
また、本発明に係る無針注射器において、前記保持部は、前記注射対象領域に対応した形状としての帯状の凹部を有し、前記微小細孔部は、前記帯状の凹部に沿って配置された複数の微小細孔を有し、前記帯状の凹部は、前記複数の微小細孔を露出し、該複数の微小細孔を通過した注射目的物質を前記注射対象領域へ到達させる開口部を有するようにしてもよい。帯状の凹部とすることで、腕や足などの非球面の注射対象領域と保持部との密着性を高めることができる。また、微小細孔を複数形成することで、注射目的物質の広範囲への注射が可能となる。複数の微小細孔の配置パターンには、直線状、千鳥状、ランダムが例示される。なお、開口部は、複数の微小細孔に対して一つを形成してもよく、また、複数の微小細孔毎に形成してもよい。開口部を微小細孔毎に形成することで、板状の微小細孔部への加圧の際の浮き上がりをより効率よく抑えることができる。
また、本発明に係る無針注射器において、前記帯状の凹部は、前記開口部を有する底面部と、前記底面に連設する傾斜部とを含み、前記底面部の内側は、前記微小細孔部と接し、前記加圧部による加圧の際、前記板状の微小細孔部の浮き上がりを抑制するようにしてもよい。本発明に係る無針注射器は、凹部の形状をより具体化した一例である。傾斜部を備えることで、腕や足などの注射対象領域との密着性をより高めることができる。
また、本発明に係る無針注射器において、前記微小細孔部は、前記射出部から射出される注射目的物質が前記微小細孔を通過して前記注射対象領域側へ到達するように、前記射出部に対する前記微小細孔の位置を決定する微小細孔部の位置決め部を含むようにしてもよい。また、前記保持部は、前記帯状の凹部の開口部が、前記複数の微小細孔を露出するように、前記射出部に対する前記開口部の位置を決定する微小細孔部の位置決め部を含むようにしてもよい。微小細孔部の位置決め部や、保持部の位置決め部を備えることで、射出部に対する微小細孔部の位置や保持部に形成された開口部の位置を容易に決定することができ、利便性が更に向上する。
また、本発明に係る無針注射器は、前記保持部が前記微小細孔部を保持した状態で、前記保持部及び前記微小細孔部を固定する固定部を更に備える構成とすることができる。固定部の態様には、係合的な手法によるスナップフィット、螺合的な手法によるネジ込み、弾性部材による締め付け等が例示される。
ここで、本発明は、無針注射器の作動方法として特定することもできる。すなわち、本発明は、上述した無針注射器の作動方法であり、この作動方法は、加圧部により封入部に封入された注射目的物質に対して加圧を行うステップと、注射器の外部の注射対象領域に対して注射目的物質を射出する射出部に加圧部によって加圧された該注射目的物質を流し込むステップと、射出部から射出された注射目的物質を、さらにその外側に配置され、微小細孔を有する板状の微小細孔部を通過させるステップと、を含む。このとき微小細孔の孔径は射出部の孔径よりも小さくなるように、微小細孔部の一面から反対端面に穿孔させてもよい。また作動方法には、該微小細孔をさらに外側から保持し、端面の少なくとも一部が注射対象領域に対応した形状を有する保持部によって固定するステップを含めてもよい。無針注射器がこのように作動することで、上述したように、生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して効率的に注射を行うことが可能となる。なお、本発明に係る無針
注射器に関する技術思想は、当該無針注射器の作動方法に係る発明にも適用可能である。
また、本発明は、無針注射器の使用方法として特定することもできる。すなわち、本発明は、上述した無針注射器の使用方法であり、この使用方法は、射出部の外側に微小細孔部を配置するステップと、微小細孔部の外側から保持部で保持するステップとを含む。また、使用方法は、加圧部により封入部に封入された注射目的物質に対して加圧を行うステップと、注射器の外部の注射対象領域に対して注射目的物質を射出する射出部に加圧部によって加圧された該注射目的物質を流し込むステップと、射出部から射出された注射目的物質を、さらにその外側に配置され、微小細孔を有する板状の微小細孔部を通過させるステップと、を含むものでもよい。このとき微小細孔の孔径は射出部の孔径よりも小さくなるように、微小細孔部の一面から反対端面に穿孔させてもよい。また使用方法には、該微小細孔をさらに外側から保持し、端面の少なくとも一部が注射対象領域に対応した形状を有する保持部によって固定するステップを含めてもよい。無針注射器をこのように使用することで、上述したように、生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して効率的に注射を行うことが可能となる。また、無針注射器に関する技術思想は、当該無針注射器の使用方法に係る発明にも適用可能である。
生体等の注射対象領域の比較的浅い部位に対して注射液投与をより効率的に行え、また、取り扱いが容易な無針注射器を提供することが可能となる。
第一実施形態に係る無針注射器の概略構成を示す図である。 第一実施形態に係る加圧部(イニシエータ)の概略構成を示す図である。 第一実施形態に係る無針注射器の先端部の分解斜視図である。 第一実施形態に係る無針注射器の先端部の組立後の斜視図である。 第一実施形態に係る無針注射器の先端部を説明する図である 第一実施形態に係る無針注射器の先端部の凹部の断面図である。 第一変形例に係る無針注射器の先端部の凹部の断面図である。 第一実施形態に係る無針注射器の先端部の側面図である。 加圧の際の板部材が浮き上がりを説明する図である。 第二実施形態に係る無針注射器の概略構成を示す図である。 第二実施形態に係る無針注射器の先端部の分解斜視図である。 変形例に係る無針注射器のノズルを説明する図である。
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る無針注射器1(以下、単に「注射器1」という)について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
<第一実施形態>
ここで、図1は第一実施形態に係る無針注射器の概略構成を示す図である。なお、以降の記載においては、注射器1によって注射対象物に注射される注射目的物質を「注射液」と総称する。しかし、これには注射される物質の内容や形態を限定する意図は無い。注射目的物質では、注射対象領域である皮膚構造体に届けるべき成分が溶解していても溶解していなくてもよく、また注射目的物質も、加圧することでノズル4から皮膚構造体に対して射出され得るものであれば、その具体的な形態は不問であり、液体、ゲル状等様々な形態が採用できる。
注射器1は、注射器本体2を有し、該注射器本体2の中央部には、その軸方向に延在し
、軸方向に沿った径が一定である貫通孔14が設けられている。そして、貫通孔14の一端は、該貫通孔14の径より大きい径を有する燃焼室29に連通し、他端は、ノズル4が形成されたノズルホルダ5側に至る。更に、燃焼室29の、貫通孔14との連通箇所とは反対側に、加圧部(イニシエータ)20が、その点火部が該連通箇所に対向するように設置されている。
加圧部20は、注射器1における注射の駆動力源となるものであり、加圧部20が発生した圧力はピストン6、封止部材7を介して注射液MLへと伝えられることで、注射液MLの射出が開始される。図2は、加圧部(イニシエータ)20の一例を示す。加圧部20は電気式の点火装置であり、表面が絶縁カバーで覆われたカップ21によって、点火薬22を配置するための空間が該カップ21内に画定される。そして、その空間に金属ヘッダ24が配置され、その上面に筒状のチャージホルダ23が設けられている。該チャージホルダ23によって点火薬22が保持される。この点火薬22の底部には、片方の導電ピン28と金属ヘッダ24を電気的に接続したブリッジワイヤ26が配線されている。なお、二本の導電ピン28は互いが絶縁状態となるように、絶縁体25を介して金属ヘッダ24に固定される。さらに、絶縁体25で絶縁された二本の導電ピン28が延出するカップ21の開放口は、樹脂27によって導電ピン28間の絶縁性を良好に維持した状態で保護されている。
加圧部20では、外部電源によって二本の導電ピン28間に電圧印加されるとブリッジワイヤ26に電流が流れ、それにより点火薬22が燃焼する。このとき、点火薬22の燃焼による燃焼生成物はチャージホルダ23の開口部から噴出される。そこで、加圧部20では、加圧部20での点火薬22の燃焼生成物が燃焼室29内に流れ込むように、注射器本体2に対する加圧部20の相対位置関係が設計されている。また、イニシエータ用キャップ15は、加圧部20の外表面に引っ掛かるように断面が鍔状に形成され、且つ注射器本体2に対してネジ固定される。これにより、加圧部20は、イニシエータ用キャップ15によって注射器本体2に対して固定され、以て加圧部20での点火時に生じる圧力で、加圧部20自体が注射器本体2から脱落することを防止できる。
なお、注射器1において用いられる点火薬22として、好ましくは、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)、もしくはこれらの火薬のうちの複数の組合せからなる火薬が挙げられる。これらの火薬は、点火直後の燃焼時には高温高圧のプラズマを発生させるが、常温となり燃焼生成物が凝縮すると気体成分を含まないために発生圧力が急激に低下する特性を示す。適切な注射が可能な限りにおいて、これら以外の火薬を点火薬として用いても構わない。
ここで、燃焼室29内には、点火薬22の燃焼によって生じる燃焼生成物によって燃焼しガスを発生させる、円柱状のガス発生剤30が配置されている。ガス発生剤30の一例としては、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%からなるシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。このガス発生剤30は、上記点火薬22と異なり、燃焼時に発生した所定のガスは常温においても気体成分を含むため、発生圧力の低下率は上記点火薬22と比べて小さい。さらに、ガス発生剤30の燃焼時の燃焼完了時間は、上記点火薬22と比べて長いが、燃焼室29内に配置されるときの該ガス発生剤30の寸法や大きさ、形状、特に表面形状を調整することで、該ガス発生剤30の燃焼完了時間を変化させることが
可能である。これは、燃焼室29内に流れ込む点火薬22の燃焼生成物との接触状態が、ガス発生剤30の表面形状や、また燃焼室29内でのガス発生剤30の配置に起因する該ガス発生剤30と点火薬22との相対位置関係によって変化すると考えられるからである。
次に、貫通孔14には、金属製のピストン6が、貫通孔14内を軸方向に沿って摺動可能となるように配置され、その一端が燃焼室29側に露出し、他端には封止部材7が一体に取り付けられている。そして、注射器1によって注射される注射液MLは、該封止部材7と、別の封止部材8との間の貫通孔14内に形成される空間に収容される。したがって、封止部材7、8および貫通孔14によって、本発明に係る無針注射器の封入部が形成されることになる。この封止部材7、8は、注射液MLの封入時に該注射液が漏れ出さないように、且つピストン6の摺動に伴って注射液MLが円滑に貫通孔14内を移動できるように、表面にシリコンオイルを薄く塗布したゴム製のものである。
また、注射器1の先端側(図1の右側)には、注射液MLを射出するためのノズル4(点線で示す)が装着されたノズルホルダ5が設けられている。注射器1においては、ノズル4はいわゆる使い捨てタイプのノズルであり、注射液MLの射出が行われるごとに新たなノズルに取り換えられるように、ノズルホルダ5に対して脱着可能に保持される構成となっている。このノズルホルダ5はガスケット3を挟んで注射器本体2の端面に接続され、更に、注射器本体2側から外側に向けて順に、板部材50、保持部材60、固定部材70が設けられ、固定部材70で固定されている。板部材50、保持部材60、固定部材70については、後述する。
このノズルホルダ5が注射器本体2に取り付けられた状態のとき、ノズルホルダ5の封止部材8と対向する箇所に、封止部材8を収容可能な収容部10が形成されている。この収容部10は、封止部材8とほぼ同じ径を有し、封止部材8の長さより若干長い深さを有する。これにより、ピストン6に圧力がかかり注射液MLが封止部材7、8とともに注射器1の先端側に移動したときに、封止部材8が収容部10内に収容されることが可能となる。収容部10に封止部材8が収容されると、加圧された注射液MLが封入状態から解放されることになる。そこで、ノズルホルダ5の注射器本体2側に接触する部位に、解放された注射液MLがノズル4まで導かれるように流路11が形成されている。なお、図1に
示す第一実施形態では、流路11はノズルホルダ5において、収容部10を迂回するように形成されている。そして、ノズル4内の流路径は、貫通孔14、流路11の流路径と比べても小さくなっており、これにより、解放された注射液MLは、流路11を経てノズル4に流入し、そこで比較的細い流径を有する流れが形成され、注射対象物である生体の皮膚へ射出されることになる。また、収容部10が封止部材8を収容する深さを有することで、注射液MLの射出が封止部材8によって阻害されることを回避できる。
なお、ノズル4は、ノズルホルダ5に複数形成されてもよく、または、一つ形成されてもよい。複数のノズルが形成される場合には、各ノズルに対して解放された注射液MLが送り込まれるように、各ノズルに対応する流路が形成される。さらに、複数のノズル4が形成される場合には、その配置は特に制限されるものではない。なお、本実施の形態では、図3等に示すように、ノズルホルダ5において3個のノズル4が、注射器1の中心軸の周囲に等間隔で直線状に配置されている。また、ノズル4の径(開口端の直径)は、注射対象物、注射液MLに掛かる射出圧力、注射液MLの物性(粘性)、注射対象物への注射深さ等を考慮して適宜設定されるが、ノズル4は、例えば射出成型を利用して樹脂材料から製造されるため、その径は、小さくても直径はサブミリオーダーであり、例えば0.2mmである。
次に、図3から図9も参照しながら、注射器1の先端部の構成について説明する。第一
実施形態に係る注射器1では、注射器本体の端面に接続されたノズルホルダ5に対して、ノズル4の開口端を覆うように、注射器本体2側から外側に向けて、板部材50、保持部材60、固定部材70が設けられている。注射器1先端部には、外径が注射器本体2の外径よりも小さく形成され、周囲にネジ溝43が設けられたネジ溝部と、外径がネジ溝部の外径よりも更に小さく形成された端面が円形状のノズルホルダ5が設けられている。
板部材50(本発明の微小細孔部に相当する)は、各ノズル4に対応する位置に微小細孔51を有する。第一実施形態に係る板部材50は、端面が円形状であるノズルホルダ5に合わせてノズルホルダ5と同径の円形状である。また、第一実施形態に係る板部材50は、直線状に設けられた3つの各ノズル4に対応する位置に3つの微小細孔51を有する。微小細孔51の径は、ノズル4の径よりも小さく形成されている。このため、加圧された注射液MLは、射出時における注射液MLにかかる圧力が高められ、射出された注射液MLが生体の注射対象領域の表面を貫通し、その内部を浸食していくことが可能となる。微小細孔51は概ね円形であり、例えば、50μm〜100μmの大きさである。そして、このような大きさ・形状を有する微小細孔51が平面上に規則正しく10mmの間隔で3つ配列されている。
なお、第一実施形態では、板部材50には、ノズル4開口端部に設けられた突起41を収容する位置決め用孔52が設けられている。板部材50に設けられた位置決め用孔52は、本発明の微小細孔部の位置決め部に相当する。突起41と位置決め用孔52とを合わせる(位置決め用孔52に突起41を収容させる)ことで、位置合わせを容易に行うことができる。また、位置合わせを行った後における位置ずれ(第一実施形態では、特に固定部材70を螺合する際の回転方向の位置ずれ)を抑制することができる。
保持部材60は、板部材50を保持するもので、微小細孔51に対応する位置に帯状の凹部61を有する。この帯状の凹部61は、例えば人体の腕や足などの細長い注射対象領域を想定したものである。帯状の凹部61は、底面と底面に連接する傾斜部によって形成されている。帯状の凹部61の底面は、長方形に開口しており、この開口から板部材50の微小細孔51が露出している。図5に示すように、凹部61の底面の幅Bは、5mmから10mmとすることができる。このようにすることで、この開口からは、板部材50のうち、微細細孔51とその近傍の面のみが露出した状態となる。そして腕などの弾力性を有する注射対象領域を凹部61に押し当てた際、この注射対象領域が凹部61の内側側面によって押され、底面に向けて変形するようになる。そのため底面と注射対象領域の接触が増し、注射液MLを漏らさずに注射を行うことができる。
図6は、凹部の断面図を示す。第一実施形態では、凹部61は、端面に対して傾斜部(内側側面)が角度θを形成している。θは鈍角であり、110°から170°、より好ましくは、120°から160°になるように形成されている。また、底面と傾斜部とのなす角度も鈍角であり、110°から170°、より好ましくは、120°から160°になるように形成されている。
ここで、凹部61は、図7に示すように、傾斜部の断面を曲面によって構成してもよい。曲面とは、注射器本体2側に凸となる曲面である。傾斜部を曲面とすることで、傾斜部と腕などの注射対象領域との密着性がより向上する。なお、底面は、平面としてもよく、また、内側側面の曲率に合わせて曲面としてもよい。
図8は、第一実施形態に係る注射器1の先端部の側面図である。図8に示すように、保持部材60に帯状の凹部61が設けられることで、腕などの注射対象領域との密着性が向上されている。また、凹部61の底面の裏面(注射器本体2)は、板部材50の表面と接しており、加圧の際、板部材50の微小細孔51の浮き上がりを抑制している。すなわち
、図9に示すように、加圧の際には、板部材50が浮き上がることが懸念されるが、第一実施形態に係る注射器1では、保持部材60の凹部61に形成された開口からは、板部材50のうち、微細細孔51とその近傍の面のみが露出した状態となっており、板部材50の大部分はノズルホルダ5と保持部材60との間で挟持された状態であり、このような板部材50の浮き上がりを抑制できる。
また、保持部材60の端面の内側には、ノズル4の開口端部に設けられた突起41を収容する位置決め用孔63が設けられている(図3において点線で示す)。保持部材60に設けられた位置決め用孔63は、本発明の保持部の位置決め部に相当する。突起41と板部材の位置決め用孔52とを合わせ、更に突起41と保持部材60の位置決め用孔63を合わせることで、位置合わせを容易に行うことができる。
保持部材60の周囲には、固定部材70を固定した際、固定部材70の鍔72と接触する段差62が設けられている。段差62は、保持部材60の円形の端面よりも径方向に環状に突出している。固定部材70を固定した際にこの段差62と鍔72が接触することで、保持部材60の保持状態が維持される。すなわち、加圧によって板部材及び保持部材60が注射器本体2から離脱するのを抑制することができる。なお、段差62の外径は、ネジ溝43が設けられたネジ溝部の外径と同じである。保持部材60の段差62以外(本体部)の外径は、段差62の外径よりも小さく形成され、固定部材70の鍔72の内径よりもわずかに小さく形成されている。また、保持部材60の本体部の内径は、板部材50及びノズルホルダ5の外径よりも僅かに大きく形成されている。これにより、保持部材60の本体部の内部には、板部材50及びノズルホルダ5が収容可能である。
固定部材70は、ノズルホルダ5が注射器本体2の端面に接続され、かつ、保持部材60がノズルホルダ5及び板部材50を保持した状態で、ノズルホルダ5、保持部材60及び板部材50を固定する。注射器本体2の先端側周囲には、ネジ溝43が設けられており、固定部材70には、このネジ溝43接続されるネジ溝73が設けられている。具体的には、固定部材70は、筒部71と、筒部71の上部において内側に突出した鍔72とによって構成されている。筒部71の内径は、ノズルホルダ5の段差62の外径よりもわずかに大きく形成されている。また、筒部71の内側には、上記注射器本体2のネジ溝43と螺合するネジ溝73(点線で示す)が設けられている。また、鍔72の内径は、保持部材60の端面の外径よりもわずかに大きく形成され、保持部材60の端面が露出するようになっている。一方で、鍔72の内径は、段差62を通さない径であることから、注射器本体2からの保持部材60の離脱は抑制することができる。固定部材70を回転させ、注射器本体2のネジ溝43と固定部材70のネジ溝73とを接続することで、注射器本体2に対して、ノズルホルダ5、保持部材60及び板部材50を固定することができる。
<使用方法>
次に、本実施の形態に係る注射器1の使用方法について説明する。まず、注射器1の組立が完了していない場合には、注射器1の組立が行われる。具体的には、注射器本体2の先端の端面に(ノズルホルダ5の上から)板部材50、保持部材60、固定部材70が取り付けられる。ノズルホルダ5の先端の端面には突起41が設けられており、この突起41に板部材50に設けられた位置決め用孔52と保持部材60に設けられた位置決め用孔とを合わせることで、位置決めを容易に行うことができる。位置決め終了後、固定部材70を回転させ、注射器本体2の先端に形成されたネジ溝43と固定部材70のネジ溝73とを接続することで、注射器本体2に対して、ノズルホルダ5、保持部材60及び板部材50を固定することができる。
注射器1が組み立てられた状態で、凹部61に腕などの注射対象領域を接触させ、加圧部20により加圧すると、注射液MLが、ノズル4の開口端、板部材50の微小細孔51
を経て、生体の皮膚へと射出される。
ここで、注射液MLがノズル4から流れ出る際は、注射液MLはノズル4の径に相当する径の液柱となるが、その直後に板部材50へ至ることで、そこに設けられた複数の微小細孔51を通過する。その結果、注射液MLの流れは、板部材50に配列されている微小細孔51に従って細分化される。換言すれば、ノズル4からの注射液MLの流れは、微小細孔51によって、さらに小さい複数の流れに分割され、その複数の分割された流れが、注射器1からの注射液MLとして最終的に皮膚に到達する。
注射器1から射出された注射液MLの流れについては、注射液MLの流速が同じとするとその注射液の液柱径が小さくなるほど皮膚内で注射液MLが進行する距離、すなわち注射深さが小さくなる。そのため、板部材50で細分化された注射液MLは、細分化されない場合と比べて、注射対象物である皮膚での注射深さが浅くなり、皮膚の比較的浅い部位に対して効果的に注射液MLを届けることが可能となる。そして、注射深さについては、板部材50の微小細孔51の大きさを適宜選択することで、特にランゲルハンス細胞が存在する皮膚の浅い部位に対する注射を効果的に実現させることが可能となる。
<効果>
第一実施形態に係る注射器1によれば、ノズル4の外側に微小細孔51を有する板部材50、保持部材60、固定部材70を配置させるという簡素な構成の採用によって、浅い部位への注射液MLの注射が可能となる。また、微小細孔51は比較的厚さの薄い板部材50に形成されており、穿孔加工が容易であることから注射器1を安価に供給できる。また、所望の部位に注射液MLを注射できることから、注射液MLの効率的な注射、すなわち注射時の無駄な注射液MLの消費抑制を図ることができる。また、微小細孔51の径を適宜選択することで、加圧部20による注射液MLへの加圧を調整しなくても、注射対象領域での注射深さを容易に制御することが可能となる。第一実施形態に係る注射器1は、保持部材60が凹部61を有し、この凹部61は注射対象領域に対応した形状を有しており、保持部材60の端面と注射対象領域との間の密着性を高めることができる。また微小細孔51とその近傍のみを露出するように、保持部材60で板部材50を保持するため、注射器作動時の板部材50の浮き上がりを抑制できる。そのため、使用者の熟練度に関わらず、注射液MLを効率よく注射対象領域に注射することができる。また、注射液MLを効率よく注射対象領域に運ぶ上では、ノズル4と微小細孔51の位置を適切に対応させる必要があるが、第一実施形態に係る注射器1では、微小細孔51が形成された板部材50を異なる部材からなる保持部材60で固定することができる。すなわち、ノズル4と微小細孔51の位置を突起41と板部材の位置決め用孔52を用いてが適切に対応させ、更に突起41と保持部材60の位置決め用孔63を適切に対応させ、固定部材70で固定することができる。つまり、位置合わせと固定(保持)を別々に行うことができるので、位置決めと固定の双方を同時に行う場合の煩雑さが軽減され、注射器1の組み立て作業も容易となる。
<第二実施形態>
第二実施形態に係る注射器1は、注射器1の先端部の構成が第二実施形態に係る注射器1と異なる。なお、第一実施形態に係る注射器1と同様の構成については、同一符号を付し、説明は割愛する。
図10は、第二実施形態に係る無針注射器の概略構成を示す図である。また、図11は、第二実施形態に係る無針注射器の先端部の分解斜視図である。第二実施形態に係る注射器1では、ノズルホルダ5がガスケット3を挟んで注射器本体2の端面に、ホルダー用キャップ13を介して固定される。ホルダー用キャップ13はノズルホルダ5に対して引っ掛かるように断面が鍔状に形成され、且つ注射器本体2に対してネジ固定される。これに
より、ノズルホルダ5は、注射液MLの射出時に注射液MLに掛けられる圧力によって注射器本体2から脱落することが防止される。
第二実施形態に係る注射器1では、ホルダー用キャップ13で固定されたノズルホルダ5に対して、ノズル4の開口端を覆うように、注射器本体2側から外側に向けて、板部材50、保持部材60、固定部材70が設けられている。固定部材70は、ノズルホルダ5が注射器本体2の端面に接続され、かつ、保持部材60が板部材50を保持した状態で、ホルダー用キャップ13の周囲に設けられたネジ溝43と接続され、注射器1に対して保持部材60及び板部材50を固定する。なお、ホルダー用キャップ13、板部材50、段差62の外径は凡そ同じであり、固定部材70の筒部71の内径よりもわずかに小さく形成されている。
第二実施形態に係る注射器1の使用方法は、基本的には第一実施形態に係る注射器1の使用方法と同じである。相違点を中心に説明すると、注射器1の組立が完了していない場合には、第一実施形態と同じく、注射器1の組立が行われるが、その際、注射器本体2の先端の端面に、より詳細にはノズルホルダ5及びホルダー用キャップ13の上から、板部材50、保持部材60、固定部材70が取り付けられる。ノズルホルダ5の先端の端面には突起41が設けられており、この突起41に板部材50に設けられた位置決め用孔52と保持部材60に設けられた位置決め用孔とを合わせることで、位置決めを容易に行うことができる。位置決め終了後、固定部材70を回転させ、ホルダー用キャップ13の周囲に形成されたネジ溝43と固定部材70のネジ溝73とを接続することで、注射器本体2に対して保持部材60及び板部材50を固定することができる。
第二実施形態に係る注射器1によっても、第一実施形態の注射器1と同様の効果を得ることができる。すなわち、簡素な構成の採用によって、浅い部位への注射液MLの注射が可能となる。また、穿孔加工が容易であることから注射器1を安価に供給できる。また、注射時の無駄な注射液MLの消費抑制を図ることができる。また、注射対象領域での注射深さを容易に制御することができる。また、保持部材60の端面と注射対象領域との間の密着性を高めることができる。また、注射器作動時の板部材50の浮き上がりを抑制でき、使用者の熟練度に関わらず、注射液MLを効率よく注射対象領域に注射することができる。また、位置合わせと固定(保持)を別々に行うことができるので、位置決めと固定の双方を同時に行う場合の煩雑さが軽減され、注射器1の組み立て作業も容易となる。
<変形例>
なお、板部材50の微小細孔51は、概ね円形状を有しているが、微小細孔の面積がノズル4の開口端の面積と比べて小さければ、好ましくはノズル4の開口端に数個分の微小細孔が含まれる程度に小さければ、円形状以外の形状を有する微小細孔であっても構わない。例えば、微小細孔51は、楕円形状、正方形状、長方形状、多角形状であってもよい。また、上述した実施形態(第一実施形態、第二実施形態)では、微小細孔51が互いに所定の間隔を空けて直線状に配列されているが、流入する注射液MLが微小細孔を通って流出できるように、微小細孔が貫通したものでありさえすれば、板部材50における微小細孔51の配列の形態は限定されない。
また、第一実施形態では注射器本体2、第二実施形態ではホルダー用キャップ13と固定部材70をネジ溝43,73により接続したが、例えば、ネジ溝に代えて外周に溝を設け、この溝に係合する爪を固定部材70に設けたスナップフィットによって注射器本体2と固定部材70を接続してもよい。また、弾性部材による締め付けなどでもよい。
また、上述した実施形態では、3つのノズル4が直線状に配置された場合について説明したが、1つのノズル4が板部材50の3つの微小細孔51に跨るものでもよい。図11
は、変形例に係るノズルを示す。この変形例に係るノズル4aは、例えば第一実施形態で説明したノズル4と異なり、ノズル4aの形状が長方形である。そして、この長方形の一つのノズル4aが板部材50の3つの微小細孔51に跨っている。また、この長方形のノズル4aの縁に沿って、注射液MLの漏れを防ぐシール部材が設けられている。図11に示す変形例では、ノズル4aから射出された注射液MLの流れが3つの微小細孔51に分割され、分割された流れが、注射器1からの注射液MLとして最終的に皮膚に到達する。なお、長方形のノズル4aの開口端の面積は、3つの微小細孔51に跨る最小限とし、深さは注射液MLが3つの微小細孔に分割される流れを形成できる最小限とすることが好ましい。面積及び深さを最小限とすること、換言すると、ノズル4aの開口端部の窪みの体積を最小限とすることで、注射器1に残留する注射液MLの量を低減することができる。さらに、ノズル4aに対応することができる範囲において、微小細孔51の数や配置を変更させることが出来るため、注射対象領域にあわせて適宜最適な微小細孔51が形成された板部材50を交換可能である。
また、上述した実施形態では、加圧部20として、イニシエータ(点火装置)を備える注射器1を例に説明したが、注射器1は、バネの弾性力を利用した形態のものでもよい。この場合、加圧部20による加圧がバネの弾性力を利用した形態によるものであり、例えば、ユーザが、加圧部20の一端を、注射器本体2から突出した部分を押圧することで、加圧部20内で圧縮されたバネが解放され、それにより生じた弾性力がピストン6へと伝えられる構成が挙げられる。バネの弾性力を利用した加圧構成は、例えば特開2000−14780号公報に示すように従来技術によるものであり、注射の目的等に応じて加圧力を適宜調整する観点や、ユーザの利便性の観点等から、様々な変形例が採用できる。なお、注射器1は、加圧されたガスを利用した形態、加圧のための電気的アクチュエータ(モータやピエゾ素子等)を利用した形態、ユーザの手動によって加圧を達成させる形態も採用し得る。
<用途>
実施形態及び変形例に係る注射器1は、注射液MLを皮膚構造体に注射する場合の他、例えば、ヒトに対する再生医療の分野において、注射対象となる細胞や足場組織・スキャフォールドに培養細胞、幹細胞等を播種することが可能となる。例えば、特開2008−206477号公報に示すように、移植される部位及び再細胞化の目的に応じて当業者が適宜決定し得る細胞、例えば、内皮細胞、内皮前駆細胞、骨髄細胞、前骨芽細胞、軟骨細胞、繊維芽細胞、皮膚細胞、筋肉細胞、肝臓細胞、腎臓細胞、腸管細胞、幹細胞、その他再生医療の分野で考慮されるあらゆる細胞を、注射器1により注射することが可能である。
さらには、特表2007−525192号公報に記載されているような、細胞や足場組織・スキャフォールド等へのDNA等の送達にも、実施形態や変形例に係る注射器1を用いることができる。この場合、針を用いて送達する場合と比較して、本発明に係る注射器1を使用した方が、細胞や足場組織・スキャフォールド等自体への影響を抑制できるためより好ましいと言える。
さらには、各種遺伝子、癌抑制細胞、脂質エンベロープ等を直接目的とする組織に送達させたり、病原体に対する免疫を高めるために抗原遺伝子を投与したりする場合にも、実施形態や変形例に係る注射器1は好適に使用される。その他、各種疾病治療の分野(特表2008−508881号公報、特表2010−503616号公報等に記載の分野)、免疫医療分野(特表2005−523679号公報等に記載の分野)等にも、当該注射器1は使用することができ、その使用可能な分野は意図的には限定されない。
なお、上記した種々の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲に於いて可能な限
り組合せることができる。
1・・・・注射器
2・・・・注射器本体
4・・・・ノズル
5・・・・ホルダー
6・・・・ピストン
7、8・・・・封止部材
20・・・加圧部
22・・・・点火薬
29・・・・燃焼室
30・・・・ガス発生剤
50・・・板部材
51・・・微小細孔
60・・・保持部材
61・・・凹部
62・・・段差部
70・・・固定部材
71・・・筒部
72・・・鍔

Claims (7)

  1. 注射針を介することなく、注射目的物質を生体の注射対象領域に注射する注射器であって、
    前記注射目的物質を封入する封入部と、
    前記封入部に封入された前記注射目的物質に対して加圧する加圧部と、
    前記加圧部によって加圧された前記注射目的物質が流れる流路を有し、該流路の開口端から前記注射器の外部の注射対象領域に対して前記注射目的物質を射出する射出部と、
    前記射出部の孔径より小さい孔径を有する微小細孔が一面から反対面に貫通した板状の微小細孔部であって、前記射出部から射出される注射目的物質が前記微小細孔を通過して前記注射対象領域側へ到達するように、前記射出部の外側に配置される微小細孔部と、
    前記射出部の外側に配置された前記微小細孔部を、該微小細孔部の更に外側から保持する、前記微小細孔部と異なる部材によって構成される保持部であって、前記注射対象領域と接する端面を含み、該端面の少なくとも一部が該注射対象領域に対応した形状を有する保持部と、
    を備える、無針注射器。
  2. 前記保持部は、その内側の少なくとも一部が前記微小細孔部と接し、前記微小細孔およびその近傍の前記一面のみを前記開口部から露出するように保持しており、前記加圧部による加圧の際、前記板状の微小細孔部の浮き上がりを抑制する、
    請求項1に記載の無針注射器。
  3. 前記保持部は、前記注射対象領域に対応した形状としての帯状の凹部を有し、
    前記微小細孔部は、前記帯状の凹部に沿って配置された複数の微小細孔を有し、
    前記帯状の凹部は、前記複数の微小細孔を露出し、該複数の微小細孔を通過した注射目的物質を前記注射対象領域へ到達させる開口部を有する、
    請求項1又は2に記載の無針注射器。
  4. 前記帯状の凹部は、前記開口部を有する底面部と、前記底面に連設する傾斜部とを含み、
    前記底面部の内側は、前記微小細孔部と接し、前記加圧部による加圧の際、前記板状の微小細孔部の浮き上がりを抑制する、
    請求項3に記載の無針注射器。
  5. 前記微小細孔部は、前記射出部から射出される注射目的物質が前記微小細孔を通過して前記注射対象領域側へ到達するように、前記射出部に対する前記微小細孔の位置を決定する微小細孔部の位置決め部を含む、
    請求項1から4の何れか1項に記載の無針注射器。
  6. 前記微小細孔部は、前記射出部から射出される注射目的物質が前記微小細孔を通過して前記注射対象領域側へ到達するように、前記射出部に対する前記微小細孔の位置を決定する位置決め部を含み、
    前記保持部は、前記帯状の凹部の開口部が、前記複数の微小細孔を露出するように、前記射出部に対する前記開口部の位置を決定する保持部の位置決め部を含む、
    請求項3又は4に記載の無針注射器。
  7. 前記保持部が前記微小細孔部を保持した状態で、前記保持部及び前記微小細孔部を固定する固定部を更に備える請求項1から6の何れか1項に記載の無針注射器。
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