JP2013167478A - 屈折率測定方法及び屈折率測定装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 コロイド液の見掛けの屈折率を高精度に測定することが可能な屈折率測定方法及び屈折率測定装置を提供すること。
【解決手段】 屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させ、前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを求め、前記入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求めることを特徴とする。
【選択図】 図2
【解決手段】 屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させ、前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを求め、前記入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求めることを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
本発明は、コロイド液の見掛けの屈折率を測定する屈折率測定方法及び屈折率測定装置に関する。
従来から、代表的な屈折率測定法として、最小偏角法、臨界角法などが知られている。また、コロイド液の一種である牛乳の屈折率を測定した一例として、Michelson干渉計とSLDを組み合わせた計測システムが知られている(非特許文献1参照)。
白石知久、石田聡、井村俊彦、斎田吉裕、中島吉則、"白色懸濁液の濃度評価に関する研究"、[online]、埼玉県産業技術総合センター研究報告 第6巻(2008)、[平成23年5月30日検索]、インターネット<URL:http://www.saitec.pref.saitama.lg.jp/research/h19/soushutsu/sou-r/312a.pdf>
最小偏角法及び臨界角法では、希釈したコロイド液を用いればコロイド液本来の屈折率を測定することはできるが、コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下とコロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じる見掛けの屈折率を測定することはできない。またこれらの方法によりコロイド液本来の屈折率を測定する場合には、コロイド液中を伝播する光は激しく散乱し、光電変換後の電気信号の信号対雑音比(SN比)は大きく低下し、精密測定が困難になる。また、Michelson干渉計を用いた測定法でも、最小偏角法及び臨界角法と同様にコロイド液の見掛けの屈折率を測定することはできない。
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コロイド液の見掛けの屈折率を高精度に測定することが可能な屈折率測定方法及び屈折率測定装置を提供することにある。
(1)本発明は、コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下と、コロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じるコロイド液の見掛けの屈折率を測定する屈折率測定方法において、
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する直線偏光をP波光もしくはP波状態の光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させ、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを求め、
前記入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求めることを特徴とする。
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する直線偏光をP波光もしくはP波状態の光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させ、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを求め、
前記入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求めることを特徴とする。
本発明において、コロイド液の見掛けの屈折率とは、コロイド液に入射する光が実際に感じる屈折率であって、コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下とコロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じる混合層の屈折率をいう。
本発明によれば、コロイド液の見掛けの屈折率を高精度に測定することができる。
(2)また本発明において、
に基づいて前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求めるようにしてもよい。
(3)本発明は、コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下と、コロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じるコロイド液の見掛けの屈折率を測定する屈折率測定装置において、
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する光をP波光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させる光照射部と、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度を検出する光検出部と、
前記屈折率測定に適したスペクトル幅の狭い非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を算出する演算処理を行う演算処理部とを含むことを特徴とする。
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する光をP波光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させる光照射部と、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度を検出する光検出部と、
前記屈折率測定に適したスペクトル幅の狭い非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を算出する演算処理を行う演算処理部とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、コロイド液の見掛けの屈折率を高精度に測定することができる。
(4)また本発明において、
前記演算処理部が、
前記演算処理部が、
に基づいて前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を算出するようにしてもよい。
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.見掛けの屈折率の定義および測定方法
本実施形態の屈折率測定方法及び屈折率測定装置が採用する測定原理を説明する。
本実施形態の屈折率測定方法及び屈折率測定装置が採用する測定原理を説明する。
まず、コロイド液の見掛けの屈折率を定義する。コロイド液は、コロイド微粒子を含む液体で、その微粒子のサイズは、約1nmから1000nmの大きさである。以下、代表的なコロイド液である牛乳を例にとって説明する。
図1(A)に示すように、牛乳は、ラクトースやその他の成分を含む水溶液に、乳脂肪粒子やカゼイン(タンパク質)粒子(どちらもコロイド粒子)が分散したものである。これらの粒子は静電的斥力により、互いに反発するため液中で均一に分散する。ただし、牛乳表面は空気と接触しているために、空気側からの斥力が働かない。したがって、表面に最も近い微粒子の一部は、空気中に押し出され、表面付近における粒子密度は、内部の牛乳よりもやや低いことが予想される。牛乳表面付近のコロイド粒子密度の低い領域と表面の凹凸とそれを取り巻く気体(多くの場合は空気)とで構成される範囲を、ここでは牛乳の混合層と定義する。混合層は非常に薄く、コロイド粒子密度のむらや表面の凹凸は近赤外光から近紫外光までの波長に比べて非常に小さいため、表面に入射する光は、当該むらや凹凸を感じることなく、図1(B)に示すように、一様な屈折率をもつ混合層を感じることになる。ここでは、当該混合層の屈折率を牛乳の見掛けの屈折率と定義する。
牛乳以外のコロイド液も牛乳と同様にコロイド粒子密度の低い領域と表面の凹凸とそれを取り巻く気体(多くの場合は空気)とで構成される薄い表面層を形成する。本実施形態では、コロイド液の当該表面層を混合層と呼び、当該混合層の屈折率をコロイド液の見掛けの屈折率と定義する。コロイド液の見掛けの屈折率は、本発明が初めて提案するものであり、これを測定した報告は皆無である。コロイド液の見掛けの屈折率は、コロイド粒子のサイズや水溶液との体積比率等、コロイド液の物理的知見を得るうえで重要な指標となり得るものである。
次に、コロイド液の見掛けの屈折率を測定する方法の一例について説明する。図2は、本実施形態の屈折率測定装置の構成の一例を示す図である。
図2に示す屈折率測定装置は、半導体レーザダイオードからなる光源10と、中心部に光源10を配置した回転ステージ12と、光電センサ(フォトディテクタ)からなる光検出器20と、演算装置40とを含む。測定対象であるコロイド液は、上面が開放された容器に注入されており、コロイド液表面が空気(気体)に曝された状態となっている。
本実施形態では、光源10(光照射部)からの屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波状態のレーザ光をコロイド液の表面に斜入射させる。コロイド液表面で反射したP波状態の非散乱反射光は、入射角度θ1と等しい反射角度θ1の方向に進む。ここで、光源10としては、多波長発振するArイオンレーザやHe−Neレーザ、広波長帯位置で連続発振する色素レーザやチタンサファイアレーザなどが適している。また、Xeランプやハロゲンランプなどで発光したインコヒーレント光を、波長フィルタ或いは分光器で狭帯域スペクトルを選択し、レーザ光の代わりに用いることも可能である。
光検出器20は、コロイド液表面で反射した非散乱反射光を光電変換して、光強度情報(検出信号)として演算装置40に出力する。
コロイド液表面の反射点O(入射光と反射光の交点)では、散乱光が発生するため、受光面積が小さく高感度な光検出器20を用いることが好ましい。ここで、散乱光が全ての方向に均一に散乱する、非散乱光は広がらずに正反射する、光検出器20の受光面積は入射光の断面積と一致する、入射光量が大きく光検出器の熱雑音は無視される、と仮定すると、検出信号の信号対雑音(SN)比(SNR)は、次式のように表される。
ここで、aは非散乱光量であり、bは全散乱光量であり、Dはコロイド液表面の反射点Oから光検出器20までの距離であり、Sは光検出器20の受光面積である。例えば、S=0.5mm2、D=150mmと仮定すると、a/b=0.01としても、検出信号のSNRは、
となり、十分なSN比で非散乱光の強度を計測することができる。
非散乱反射光の強度を十分確保した状態で、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波状態の直線偏光を混合層に入射させ、非散乱反射光の強度が最小になる入射角度θminを計測する。空気の屈折率は明らかであるから、別の計測法でコロイド液本来の屈折率を予め計測しておけば、コロイド液の見掛けの屈折率(すなわち、混合層の屈折率n2)を導出することができる。導出方法については、次節で述べる。
本実施形態では、回転ステージ12によってP波光の入射角度θ1を変化させ、入射角度θ1の変化に応じて、回転機構(図示せず)によって光検出器20を回転させることで、コロイド液表面で反射した非散乱の反射光が光検出器20に入射するように構成している。
なお、ブリュースター角付近になると前記P波状態の反射光の強度が非常に小さくなるため反射光を探すことが困難になるが、例えば、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いS波光(電界の振動方向がP波光の電界の振動方向と直交する直線偏光)を用いて反射光を探し出し、その後P波光に切り替えることにより、ブリュースター角付近においても測定精度を保つことができる。
図2に示す演算装置40は、演算処理部42と記憶部44とを含む。演算処理部42は、コロイド液表面からの屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波状態の非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを用いて、コロイド液の見掛けの屈折率n2を算出する演算処理を行う。また演算処理部42は、P波光の入射角度θ1を変化させるたびに検出された反射光の強度情報に基づいて、入射角度θminを求めるようにしてもよい。
記憶部44は、種々のデータを一時記憶する機能を有し、例えば、光検出器20から出力された光強度情報を、P波光の入射角度θ1と対応付けて記憶してもよい。
次に、屈折率の測定に先立って、回転ステージ12の回転角度を定める手順について図3を用いて説明する。
まず、コロイド液の代わりに水を容器に注入し、回転ステージ12を回転させてレーザ光を水面に照射する。次に、レーザ光を通過させるアパーチャAPを設置する。この状態を維持しつつ、水面からの反射光が再びアパーチャを通過するように、回転ステージ12の回転角度及びアパーチャAPの位置を調節する。水面からの反射光の強度が最大になれば、光源10からのレーザ光は水面に対して垂直に入射していることになり、レーザ光の入射角度をθ1とすると、θ1=0°の状態となる。これを確認するために、光源10と水面との間にビームスプリッタBSを設置し、ビームスプリッタBSで反射した光を光検出器22で光電変換し、その検出信号をオシロスコープで観察する。θ1=0°の状態に近づくほど、光源10への戻り光も増大するため、光源10は不安定になり、検出信号が大きく乱れる。すなわち、光検出器22で検出される検出信号の揺らぎが最大になるように回転ステージ12の回転角度を調節し、この状態をθ1=0°の状態と定め、図2の測定系を用いてコロイド液の見掛けの屈折率の測定を行う。サンプルのコロイド液の散乱が小さく、非散乱反射光の強度を十分確保できる場合には、水を用いずに直接コロイド液を用いて図3の水面の反射光強度を観測する手順と同様の手順で回転ステージ12の回転角度の調整を行ってもよい。
なお、図2、図3に示す例では、回転ステージ12の中心部に光源10を配置して光照射部を構成する場合について説明したが、図4に示すように、光源10に接続された光ファイバ14と、光ファイバ14から出射する光を平行光に変換する光学系16と、P波光を透過させる偏光板18とを、回転ステージ12に配置して、光照射部を構成してもよい。ここで、光ファイバ14の出射口は回転ステージ12の中心CPに固定されている。また、回転ステージ12の回転運動の力が光ファイバ14の入出射口に加わらないように、光ファイバ14の出射口と出射口の間の少なくとも一部は非固定状態となっている。
2.解析方法
測定した入射角度から、コロイド液の見掛けの屈折率を求める解析法として、下記の2つの解析法を考案した。
(1)混合層内における光の多重反射を考慮した多重反射解析法
(2)上記多重反射を無視した単反射解析法
手法の名称が示す通り、(2)の方法よりも、(1)の方法のほうが、厳密な解析法である。そこで、ここでは(1)の多重反射解析法の原理を詳細に説明し、コロイド液では、(1)と(2)の方法が同じ結論に到達することを明らかにする。
測定した入射角度から、コロイド液の見掛けの屈折率を求める解析法として、下記の2つの解析法を考案した。
(1)混合層内における光の多重反射を考慮した多重反射解析法
(2)上記多重反射を無視した単反射解析法
手法の名称が示す通り、(2)の方法よりも、(1)の方法のほうが、厳密な解析法である。そこで、ここでは(1)の多重反射解析法の原理を詳細に説明し、コロイド液では、(1)と(2)の方法が同じ結論に到達することを明らかにする。
多重反射解析法は、図5に示すように、コロイド液の表面にコロイド粒子密度がコロイド液内部の粒子密度よりも少し低いコロイド液と空気からなる混合層を想定し、空気と混合層の界面30および混合層とコロイド液の界面32からの非散乱の反射光同士の干渉を考慮して反射光強度を解析する方法である。界面30における屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光の電界反射率をr1、界面32におけるP波光の電界反射率をr2、界面30の法線とP波光34とのなす角度(入射角)をθ1とし、界面30で屈折したP波光の進行方向と界面30の法線とのなす角度(界面30における屈折角)をθ2とし、界面32で再び屈折したP波光の進行方向と界面32の法線とのなす角度(界面32における屈折角)をθ3とし、隣り合う反射光の位相差をψとすると、多重反射干渉光の規格化強度Rp(P波状態の入射光の強度を1と定義したときの、多重反射干渉光の強度)は、次式で与えられる。
ここで、αは混合層の散乱係数と吸収係数を合わせた減衰係数であり、Lは、P波光が界面30から界面32まで混合層中を進む距離である。exp(−αL)は、混合層中の光の減衰を表すから、ここではαLを遮光度と呼ぶことにする。
空気の屈折率をn1、混合層の屈折率をn2、コロイド液の屈折率をn3とすると、r1、r2は、以下のフレネルの式で与えられる。
空気の屈折率をn1、混合層の屈折率をn2、コロイド液の屈折率をn3とすると、r1、r2は、以下のフレネルの式で与えられる。
ここで、θ1、θ2、θ3の間には、つぎのスネルの法則が成立する。
また、混合層の厚さをd、入射光の真空中での波長をλとすると、ψとLは、次式で結ばれる。
式(3)〜(8)を用いると、規格化強度Rpと混合層への入射角度θ1との関係を解析できる。一例として、空気の屈折率n1=1.0002765、コロイド液の屈折率n3=1.5、混合層の複合係数α、P波光が界面30から界面32まで混合層中を進む距離L=50nm、および入射光の真空中の波長λ=632.8nmを与え、混合層の屈折率n2および混合層の遮光度αLをパラメータとして、多重反射干渉光の規格化強度Rpと入射角度θ1の関係を計算した。n2=1.4の計算結果の一例を図6に示す。表1と表2に示すパラメータの組み合わせについて図6と同様の計算を行い、Rpが最小になる入射角度θminを求めた。
混合層の屈折率n2をパラメータとし、θminと遮光度αLの関係を計算した結果を図7に示す。図7は、混合層の屈折率n2とコロイド液の屈折率n3の値が接近するほど、θminはαLの影響を受けないことを示している。例えば、n2/n3=1.49/1.5=0.993あるいはn2/n3=1.495/1.5=0.997のとき、αLが変化しても、θminの変化率は0.1%あるいは0.05%である。実際のコロイド液中のコロイド粒子の数は、分散媒(コロイド液からコロイド粒子を除いた溶液)の粒子数に比べて格段に小さいため、コロイド液の性質は、分散媒の性質とほとんど変わらないという特徴をもつ。このため、実際のコロイド液のn2/n3は、0.997よりも1に近いと考えられる。コロイド液のこの性質と図7の計算結果より、コロイド液のθminは、遮光度αLとほぼ無関係に定まることが明らかになった。
コロイド液のθminがαLと無関係に定まるということは、理論上ではαL→0あるいはαL→∞のどちらでも構わないことを意味している。ただしαL→0では、混合層が無い状態になるため、その屈折率は、コロイド液本来の屈折率にならなければならない。これまでの考察で、混合層の存在とその屈折率は、コロイド液本来の屈折率とは異なることが明らかであるから、ここでは、αL→∞を採用する。この関係を式(3)に代入すると、
となる。これは、フレネルの公式から反射率を計算できることを示しており、図5のコロイド液のモデルは、図8の2層モデルに簡略化されることになる。2層モデルの反射率が最小になる角度は、ブリュースター(Brewster)角になるため、近似的に以下の式が成立する。
以上の考察から、コロイド液の見掛けの屈折率n2は、コロイド液面に入射する屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光の非散乱反射光の強度が最小になる角度θminを計測し、これを式(10)のBrewsterの法則に当てはめれば、コロイド液の見掛けの屈折率を求めることができる。したがって、本節の冒頭に述べた多重反射解析法と単反射解析法は、どちらも同じ結果になることが明らかになった。
3.測定結果
図2の測定系を用いて、精製水の屈折率と、乳脂肪率が異なる5種類の牛乳の見掛けの屈折率を測定した。光源10として、InGaAlP半導体レーザ(波長:670.0nm、出力:3mW)を用いた。半導体レーザを4/1000°刻みで回転角度を遠隔制御可能な電動式回転ステージの中心に固定し、出射口にはP波光を選択する偏光フィルムを貼り付けた。
図2の測定系を用いて、精製水の屈折率と、乳脂肪率が異なる5種類の牛乳の見掛けの屈折率を測定した。光源10として、InGaAlP半導体レーザ(波長:670.0nm、出力:3mW)を用いた。半導体レーザを4/1000°刻みで回転角度を遠隔制御可能な電動式回転ステージの中心に固定し、出射口にはP波光を選択する偏光フィルムを貼り付けた。
まず、測定精度をチェックするため、精製水の屈折率を測定した。温度18℃の精製水を測定したときの光検出信号(反射光強度を光検出器20で光電変換した電気信号)と入射角度θ1との関係を図9に示す。光検出信号の電圧が最小となる入射角度θminは、53.100°であり、式(10)より、精製水の屈折率は1.33166であった。測定結果は、公表値(理科年表、波長670nm、温度18℃において1.33054)と非常に近く、本実施形態の測定系で水の屈折率を精度よく測定できることを確認した。
次に、乳脂肪率がそれぞれ0.1%(無脂肪)、1.8%(低脂肪)、2.3%(中脂肪)、3.0%(中脂肪)、3.7%(高脂肪)である5種類の牛乳の見掛けの屈折率を測定した。図10に、測定温度を18℃として乳脂肪2.3%の牛乳を測定したときの反射光強度の光検出信号と入射角度θ1との関係を示す。5種類の牛乳のそれぞれについて測定した非散乱の反射光強度が最小となる入射角度θminと、入射角度θminに基づき求めた見掛けの屈折率を表3に示す。
図11は、乳脂肪率と牛乳の見掛けの屈折率との関係を示す測定結果である。本実施形態の手法によれば、コロイド液表面からの反射光の強度を測定するため、大きな吸収率をもつコロイド液も測定することができる。
表3、図11の測定結果に示す屈折率が、牛乳の見掛けの屈折率であって、牛乳の屈折率でないことを確かめるために、他の測定系を用いて牛乳の屈折率を測定した。表2の見掛けの屈折率と合わせて、屈折率測定結果を表4に示す。なお、測定温度は全て18℃である。
表4の測定結果を見ると、見掛けの屈折率が牛乳本来の屈折率よりも小さくなっている。このことは、牛乳と空気との界面は水平面ではなく、牛乳表面に凹凸が存在するという当初の考え方を支持している。すなわち、本実施形態の手法により、牛乳本来の屈折率ではなく、牛乳と空気とを構成要素とする牛乳表面の混合層の屈折率(コロイド液表面の凹凸によって生じる見掛けの屈折率)を高精度で測定できることを示している。
ここで、コロイド液表面の混合層におけるコロイド液の体積をV3、混合層における空気の体積をV1、混合層の体積をV2(V2=V1+V3)として、混合層においてコロイド液が占める割合をΓ(Γ=V3/V2)と定義すると、クラウジウス‐モソッティの関係(Clausius-Mosotti relation)より、次式が成立する。
測定されたコロイド液の見掛けの屈折率とコロイド液の屈折率とを式(11)、(12)に代入することで、混合層においてコロイド液が占める割合Γを求めることができる。各乳脂肪率における割合Γの結果を表4に示す。
ここで、図1(A)に示すように、牛乳表面から乳脂肪粒子やカゼイン粒子のみが突出しているのであれば、Γの値は乳脂肪率(0.1%〜3.7%)に近い値となるはずであるが、表4は、この考えと大きく異なる結果を示している。表4の結果を合理化するために、例えば図12に示すように、牛乳表面において水溶液が水平面から突出した乳脂肪粒子やカゼイン粒子を覆っている、といった物理モデルを考えることができる。このように、コロイド液の見掛けの屈折率を精密に測定することができれば、コロイド物理やコロイド化学に新しい知見をもたらすことが期待できる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
10 光源、12 回転ステージ、20 光検出器、22 光検出器、30 界面、32 界面、34 P波光、40 演算装置、42 演算処理部、44 記憶部
Claims (4)
- コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下と、コロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じるコロイド液の見掛けの屈折率を測定する屈折率測定方法において、
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する光をP波光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させ、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminを求め、
前記入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を求める、屈折率測定方法。 - コロイド液表面付近のコロイド粒子密度の低下と、コロイド粒子によるコロイド液表面の凹凸とによって生じるコロイド液の見掛けの屈折率を測定する屈折率測定装置において、
コロイド液の表面の法線と入射光の進行方向を含む入射面と直交する方向に電界が振動する光をP波光と定義し、屈折率測定に適したスペクトル幅の狭いP波光をコロイド液の表面に入射させる光照射部と、
前記コロイド液の表面からの非散乱の反射光の強度を検出する光検出部と、
前記屈折率測定に適したスペクトル幅の狭い非散乱の反射光の強度が最小になる入射角度θminと、前記コロイド液の表面と接触している気体の屈折率n1とに基づいて、前記コロイド液の見掛けの屈折率n2を算出する演算処理を行う演算処理部とを含む、屈折率測定装置。
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JP (1) | JP2013167478A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104390939A (zh) * | 2014-12-16 | 2015-03-04 | 湖南师范大学 | 一种用于检测微流体系统中液体折射率的传感器及方法 |
CN105092529A (zh) * | 2015-09-15 | 2015-11-25 | 宁波大学 | 介质折射率的测量装置及其测量方法 |
-
2012
- 2012-02-14 JP JP2012029608A patent/JP2013167478A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104390939A (zh) * | 2014-12-16 | 2015-03-04 | 湖南师范大学 | 一种用于检测微流体系统中液体折射率的传感器及方法 |
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