JP2013164106A - コントロールケーブル用アウターケーシング及びコントロールケーブル - Google Patents
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Abstract
【解決手段】熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維14と、を含んで成形された管状体12を有し、前記補強用短繊維が前記管状体の長手方向L側に配向して前記熱可塑性エラストマー中に分散されているコントロールケーブル用アウターケーシング10。管状体の内周面に樹脂製の内管16を設けたアウターケーシングを構成してもよい。
【選択図】図1
Description
請求項1の発明は、熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維と、を含んで成形された管状体を有し、前記補強用短繊維が前記管状体の長手方向側に配向して前記熱可塑性エラストマー中に分散されているコントロールケーブル用アウターケーシングである。
本発明に係るコントロールケーブル用アウターケーシングは、熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維と、を含んで成形された管状体を有し、前記補強用短繊維が前記管状体の長手方向側に配向して前記熱可塑性エラストマー中に分散されている構成を有する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るコントロールケーブル用アウターケーシングの長手方向の一部断面を概略的に示している。本実施形態に係るアウターケーシング10は、熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維14と、を含んで成形された管状体12により構成されている。
本実施形態のアウターケーシング10(管状体12)を構成する熱可塑性エラストマーは、ガラス転移点が室温以下に存在し、室温でゴム弾性を示す、可とう性の材料である。熱可塑性エラストマーの定義と組成については、例えば、ポリマー選書6 「熱可塑性エラストマー」 秋葉光雄著(ラバーダイジェスト社)に詳しく記載されており、本発明では当該文献に記載されている熱可塑性エラストマーを広く用いることができる。
当該文献によれば、熱可塑性エラストマーは硬質相と軟質相を持ち、熱可塑性エラストマーの名称は硬質相に使われている樹脂の名称が使われるのが一般的である。例えば、ポリエステル系であれば、硬質相がポリエステルであり、軟質相はポリエーテル、ポリウレタン系では硬質相はウレタンで、軟質相はポリエーテルであり、ポリオレフィン系では硬質相はポリプロピレンであり、軟質相はゴム類やエチレン−αオレフィン(プロピレンなどの)共重合体の非晶相である。
本実施形態のアウターケーシング10は、管状体12全体に対して10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維14が、管状体12の長手方向(軸方向)側に配向した状態で熱可塑性エラストマー中に分散されている。
本実施形態における補強用短繊維14を、管状体12全体に対して10質量%以上40質量%含むことでエラストマーによる屈曲性を維持するとともに強度を向上させる繊維状物であれば特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、全芳香族ポリアミド繊維、ウイスカーなどが挙げられる。
一方、熱可塑性エラストマーに補強用短繊維14を10〜40質量%の範囲内で配合した材料を用いて成形したアウターケーシング10は、長手方向で線膨張係数が小さくなるが、屈曲性も維持できるため、コントロールケーブルとしての配索性は確保でき、しかも繰り返し折り曲げても白化やひび割れが起こることが抑制される。
図2は、本実施形態に係るアウターケーシングを構成する管状体12の長手方向における補強用短繊維14の配向状態を概略的に示している。図2に示すように補強用短繊維14はアウターケーシング10を構成する管状体12の長手方向(軸方向)L側に配向した状態で熱可塑性エラストマー中に分散されている。
なお、本発明において、「補強用短繊維が管状体の長手方向側に配向している」とは、補強用短繊維14の長手方向が管状体12の径方向側よりも長手方向側に傾いていることを意味し、より具体的には、アウターケーシング10(管状体12)の長手方向Lと補強用短繊維14の長手方向とが成す角度、すなわち、上記補強用短繊維14の配向角が0度以上45度未満であることを意味する。
かかる補強用短繊維14の配向角は30度以下であることが好ましい。配向角は0度に近いほど線膨張係数が低くなり、ストロークロスが低くなる。配向角は0〜15度がより好ましく、特に好ましくは0〜10度である。
本実施形態に係るアウターケーシングのD硬度は、屈曲性の観点から、30〜75が好ましい。D硬度がこの範囲であれば、配索しやすいため好ましい。D硬度が75を超えると屈曲性が悪くなるため配索がしにくくなる可能性がある。なお、本実施形態において、D硬度はJIS K7215に基づいて測定された値である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係るコントロールケーブル用アウターケーシングの長手方向における一部の断面を概略的に示している。本実施形態に係るアウターケーシング20は、第1の実施形態と同様の管状体12、すなわち、熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維14と、を含んで成形された管状体12、及び、該管状体12の内周面に設けられた樹脂製の内管16(樹脂製ライナー)により構成されている。かかる樹脂製ライナー16が設けられていることでインナーケーブルとの摩擦係数を低下させることができる。
本発明に係るアウターケーシングを製造する方法は特に限定されないが、原料となる熱可塑性エラストマーに、10〜40質量%の割合で補強用短繊維14を配合して十分混練し、これを管状に押出成形することによって好適に製造することができる。
補強用短繊維14を熱可塑性エラストマーに配合する方法は、例えばガラス繊維であればガラスチョップドストランド、カットファイバー、ミルドファイバーを2軸押出機に投入しながら熱可塑性エラストマーを混練押出し、形成したストランドをペレタイズする方法、混練を加圧ニーダーにて行いペレタイズする方法などがある。あるいは、熱可塑性エラストマーに補強用短繊維14を更に大量に含有せしめた、いわゆるマスターバッチを作り、押出成形のときに補強用短繊維14を含まない熱可塑性エラストマーをドライブレンドにて混ぜて押出成形する方法も取れる。
上記熱可塑性エラストマーと補強用短繊維14との混練物を用い、押出成形によりアウターケーシング10を成形する時に、押出機の混練スクリューを出た後の押出ダイスまでの距離をとること、押出スピードを速めること、あるいは、押出ダイスから吐出した後延伸操作をすることで、補強用短繊維14を長手方向側に揃えること、すなわち短繊維を配向させることでアウターケーシング10の線膨張係数を低下し、圧縮特性を高め、結果的にストロークロスを低下できるので成形時にはこの方法をとることが好ましい。配向の程度は押出機の特性により変化するので、管理としては補強用短繊維14の配向角を測定することが好ましい。
本発明のコントロールケーブルは、前述した本発明に係るアウターケーシングと、アウターケーシング内に挿入されているインナーケーブルと、によって構成される。
図4は、前述した第1の実施形態に係るアウターケーシング10内にインナーケーブル30を配置したコントロールケーブル40を概略的に示している。アウターケーシング10の端部には金属製または樹脂製の補強部材24が固定(締結)されている。
金属製のワイヤーは防錆のためナイロンなどの樹脂でコーティングされることもある。
また、アウターケーシング中に摺動性を向上するためグリースを注入することもある。
組成物A:ポリウレタン系熱可塑性エラストマーにガラス繊維を配合したもの
加圧ニーダー(モリヤマ社製 DS3−10MWB)にポリウレタン系エラストマー エラストラン1190ATR(組成物A’と呼ぶ)(BASFジャパン社製、A硬度:91、ガラス転移点:−40度)2000gと、ガラス繊維のカットファイバー(日東紡社製、SS10−420、繊維径10μm、繊維長350μm、シランカップリング剤処理品)2000gを投入し、260℃にて混練を20分行った。
ポリオレフィン系エラストマーとしてサントプレン121−73W175(組成物B’と呼ぶ)(AESジャパン社製、A硬度78、ガラス転移点−50℃)2000gを用い、加圧ニーダーの温度を200℃にしたこと以外、組成物Aの製造と同様にして熱可塑性エラストマーを得た。この組成物BのD硬度は40であった。
炭素繊維としてミルドファイバー(東レ社製、MJD1000、繊維径7μm、繊維長150μm)をポリウレタン系エラストマー2000gに対して860gを用いた以外、組成物Aの製造と同様にして熱可塑性エラストマーを得た。この組成物CのD硬度は60であった。
ガラス短繊維が30%配合されたポリエステル系エラストマー(東レデュポン社製、ハイトレル7247G30、D硬度75、ガラス転移点12℃)
ガラス短繊維が30%配合されたポリプロピレン樹脂(プライムポリマー社製、R300G、メルトフローレート2g/10分)
(アウターケーシングの作製及び評価)
押出機としてスクリュー径D=30mm、長/径比(L/D)=22の単軸押出機(創研社製)に、表1に示すように補強用短繊維を配合した各種の熱可塑性エラストマーのペレットを供給し、外径φ5mm、内径φ2mmの管状(チューブ状)に押出し、管状のアウターケーシングを得た。なお、各実施例における補強用短繊維の配向角は、押出成形時における押出しスピードによって調整した。
得られたアウターケーシングの物性を測定し、結果を表1に示す。なお、アウターケーシングの物理性能の測定方法は以下の通りである。
JIS K7215(硬さ試験方法)に準じ、デュロメータを用いてD硬度硬さを求めた。
熱機械分析装置(TMA)にて60℃から100℃までの線膨張係数を測定した。単位はPPMである。
成形されたアウターケーシングをφ200mmに10回曲げて、曲げ部の外観を観察する。曲げ外観評価は、全く変化ない場合は合格(○)、10回曲げて白化ないし折れる、又は裂ける場合は不合格(×)とした。
得られたアウターケーシング内に、インナーケーブル(ユニフレックス社製、SWRH62A、径:φ1.5mm)を挿入してコントロールケーブルを製造した。得られたコントロールケーブについて下記の評価を行った。
コントロールケーブルの最低曲げ直径を測定する。200mm以下を合格(○)とする。
図5はストロークロスの測定方法を概略的に示す図であり、図6は図5のAの部分を拡大して示している。図5に示すように長さ1.5mのコントロールケーブル40を直径200mmの逆S字状に配索し、アウターケーシングの両端部24A,24Bを固定し、インナーケーブル30の一方の端部を固定部材50に固定した。この状態で図6に示すように、他方の端部を引張り試験機60で保持し、矢印Bの方向に80℃にて98Nの力で引張りインナーケーブルの「引張長さ」を測定し、これをストロークロス値とした。
なお、従来品である平鋼線巻きタイプのストロークロス値は3.1mmである。
高密度ポリエチレン製ライナーを実施例3のアウターケーシングに挿入したコントロールケーブルを作製した。このものはインナーケーブルとライナーが接触して摩擦しにくいため、効率の良い操作ができ、更に5000回の作動試験でも全く問題が生じなかった。
補強用短繊維を含まない組成物A’、B’、又はガラス繊維の配合量の少ない組成、及び配合量が非常に高い組成物を用いてアウターケーシングを製造した(比較例1〜5)。
ポリプロピレンのガラス繊維配合品である組成物Eを用い、実施例1と同様に押出成形してアウターケーシングを製造した(比較例6)。
得られたアウターケーシングを用いてそれぞれ実施例1と同様にコントロールケーブルを製造した。
アウターケーシング及びコントロールケーブルについて実施例1と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
12 管状体
14 補強用短繊維
20 アウターケーシング
24,24A,24B 補強部材
30 インナーケーブル
40 コントロールケーブル
32 固定部材
Claims (6)
- 熱可塑性エラストマーと、10質量%以上40質量%以下の補強用短繊維と、を含んで成形された管状体を有し、前記補強用短繊維が前記管状体の長手方向側に配向して前記熱可塑性エラストマー中に分散されているコントロールケーブル用アウターケーシング。
- D硬度が30以上75以下である請求項1に記載のコントロールケーブル用アウターケーシング。
- 前記管状体の長手方向に対する前記補強用短繊維の配向角が30度以下である請求項1又は請求項2に記載のコントロールケーブル用アウターケーシング。
- 前記補強用短繊維が、ガラス繊維又はカーボン繊維である請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のコントロールケーブル用アウターケーシング。
- 前記管状体の内周面に樹脂製の内管をさらに有する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のコントロールケーブル用アウターケーシング。
- 請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載のコントロールケーブル用アウターケーシングと、
前記コントロールケーブル用アウターケーシング内に挿入されているインナーケーブルと、
を有するコントロールケーブル。
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