本発明において、好適には、燃費とは単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。
また、好適には、回転機器の動作点とは、その回転機器の回転速度及び出力トルクなどで示されるその回転機器の動作状態を示す動作点である。例えば、前記エンジンの動作点とは、そのエンジンの回転速度及び出力トルクなどで示されるそのエンジンの動作状態を示す動作点である。言い換えれば、そのエンジンの回転速度を示す軸とそのエンジンの出力トルクを示す軸との2次元座標内における1点で示されるエンジンの動作状態である。
また、好適には、前記第1電動機のトルクを調節すること、すなわち前記電気経路において伝達される動力(電力)を調節することは、前記電気経路又は前記機械経路の動力伝達比率を調節することである。
また、好適には、前記電気経路は、前記第1電動機が発電した電力の全部又は一部が前記第2電動機に供給されることにより動力伝達が電気的になされる動力伝達経路である。
図1は、本発明の一実施例の車両用駆動装置10の構成を説明する骨子図である。図1において、車両用駆動装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両に好適に採用されるものであり、内燃機関であるエンジン12と、そのエンジン12のクランク軸14に連結されたトルクコンバータ(流体伝動装置)16と、そのトルクコンバータ16の出力側に連結された自動変速機18と、エンジン12とトルクコンバータ16との間に配設されてクランク軸14(換言すればトルクコンバータ16の入力側)に連結された第1電動機MG1と、トルクコンバータ16と自動変速機18との間に配設されて自動変速機18の入力軸20に連結された第2電動機MG2とを備えている。
トルクコンバータ16は、エンジン12からの動力が入力される入力側回転要素であるポンプ翼車16pと、駆動輪26へ動力を出力する出力側回転要素であるタービン翼車16tと、ステータ翼車16sと、一方向クラッチF1とを備えた流体伝動装置である。そのポンプ翼車16pすなわちポンプインペラは、エンジン12のクランク軸14と第1電動機MG1とに連結されており、そのエンジン12により回転駆動されることによってトルクコンバータ16内の作動油の流動による流体流を発生させる。タービン翼車16tすなわちタービンランナは、自動変速機18の入力軸20に連結されており、上記ポンプ翼車16pからの流体流を受けて回転させられる。従って、この入力軸20は、トルクコンバータ16の出力軸すなわちタービン軸としても機能するものである。また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間を選択的に連結するロックアップクラッチLCを備えている。このロックアップクラッチLCが完全係合状態とされた場合には、クランク軸14と入力軸20との間のトルク伝達がトルクコンバータ16内の作動油を介さずに直接的に行われる。図1から判るように本実施例では、エンジン12と第1電動機MG1とポンプ翼車16pとは直列に連結されているので、ポンプ翼車16pの回転速度Np(以下、ポンプ回転速度Npという)は第1電動機MG1の回転速度Nmg1(以下、第1電動機回転速度Nmg1という)及びエンジン12の回転速度Ne(以下、エンジン回転速度Neという)と同じである。また、タービン翼車16tと第2電動機MG2と自動変速機18の入力軸20とは直列に連結されているので、タービン翼車16tの回転速度Nt(以下、タービン回転速度Ntという)は第2電動機MG2の回転速度Nmg2(以下、第2電動機回転速度Nmg2という)及び入力軸20の回転速度Natin(以下、変速機入力回転速度Natinという)と同じである。
第1電動機MG1は、エンジン12のクランク軸14に例えば脈動を吸収するダンパ等を介して直列に連結されており、トルクコンバータ16のポンプ翼車16pに直接連結されている。要するに、第1電動機MG1はエンジン12とトルクコンバータ16との間の動力伝達経路に連結されている。また、第2電動機MG2は、トルクコンバータ16と駆動輪26との間の動力伝達経路に連結されており、詳細には、自動変速機18等を介して間接的に駆動輪26に連結されている。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、駆動トルクを発生させる電動モータとしての機能と回生トルクを発生させる発電機としての機能とが選択的に得られるように構成された回転機であって、例えば交流同期型のモータジェネレータにより構成される。また、バッテリである蓄電装置36と電動機MG1,MG2を制御する為のインバータ38とが車両用駆動装置10に設けられており(図3参照)、その蓄電装置36と第1電動機MG1と第2電動機MG2とは相互に電力授受可能に接続されている。上記第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれ、その駆動によってクランク軸14及び入力軸20に正回転方向の駆動トルクを付与することができる。また、第1電動機MG1及び第2電動機MG2はそれぞれ、その発電(回生)によってクランク軸14及び入力軸20に負回転方向の負荷トルクすなわち制動トルクを付与すると共に、車両に設けられた蓄電装置36をインバータ38を介して充電することができる。尚、上記クランク軸14及び入力軸20の正回転方向とは、エンジン12の駆動時におけるクランク軸14の回転方向であり、上記負回転方向とはその正回転方向とは逆向きの回転方向である。
自動変速機18は、トルクコンバータ16と駆動輪26との間に介装されて、トルクコンバータ16のタービン翼車16tと駆動輪26との間の動力伝達経路の一部を構成する機械式変速機である。具体的に、自動変速機18は、非回転部材であるトランスミッションケース24内に、第1遊星歯車装置30、第2遊星歯車装置32、第3遊星歯車装置34、及び複数の油圧式摩擦係合装置C1,C2,B1,B2,B3を備えた公知の遊星歯車式多段変速機である。自動変速機18は、入力回転部材である入力軸20に入力されたエンジン12の動力を、出力回転部材である出力歯車22から駆動輪26に向けて出力する。そして、自動変速機18は、公知の各油圧式摩擦係合装置(クラッチC1、C2、ブレーキB1、B2、B3)が図2に示す所定の作動表に従って油圧制御回路90(図3参照)からの作動油でそれぞれ係合又は解放されることにより、自動変速機18の変速比γat(=変速機入力回転速度Natin/出力歯車22の回転速度Nout)がそれぞれ異なる複数のギヤ段(変速段)が択一的に成立させられる。図2において、「○」は係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ示している。また、この自動変速機18の自動変速制御は、予め記憶されたアップシフト線及びダウンシフト線を有する公知の関係(変速線図、変速マップ)に従って実行される。
以上のように構成された車両用駆動装置10においては、車両の走行状態に応じて、エンジン12の動力により車両を走行させるエンジン走行と第2電動機MG2の動力により車両を走行させるモータ走行とが切り換えられて作動させられるようになっている。上記エンジン走行とモータ走行との切り換えは、車両の走行状態が前記変速線図と同様の二次元座標内において設定されたエンジン走行領域及びモータ走行領域のどちらに属するかに基づいて行われる。
尚、車両用駆動装置10では、例えば車両の走行状態がモータ走行領域に属していても蓄電装置36の充電状態(充電容量、充電残量)SOC(state of charge)が所定値以下である場合にはエンジン走行が行われる。また、車両の急発進時や急加速時などにはエンジン12及び第2電動機MG2の両方の出力が用いられて車両が走行させられる等の制御が適宜行われる。
図3は、車両用駆動装置10を制御する為の電子制御装置40における入出力信号を説明する為の図であり、その電子制御装置40に備えられた制御機能の要部を説明する為の機能ブロック線図である。図3において、電子制御装置40は、車両用駆動装置10の制御装置として機能を有するものであって、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御、自動変速機18の変速制御、及び電動機MG1、MG2の出力制御などを実行する。また、電子制御装置40には、車両に設けられた図3に示す各センサ(例えば各回転速度センサ42,44,46,48,50、アクセル開度センサ52、油温センサ54、バッテリセンサ56など)による検出値に基づく各種信号(例えばエンジン回転速度Ne,第1電動機回転速度Nmg1,タービン回転速度Nt,第2電動機回転速度Nmg2,車速Vに対応する出力歯車22の回転速度である変速機出力回転速度Nout、アクセル開度Acc、トルクコンバータ16及び自動変速機18などを作動させる為の作動油の温度である作動油温THoil、蓄電装置36のバッテリ温度THbやバッテリ充放電電流Ibやバッテリ電圧Vbなど)が供給される。また、電子制御装置40からは、車両に設けられた各装置(例えばエンジン12、インバータ38、油圧制御回路90など)に各種指令信号(例えばエンジン制御指令信号Se、電動機制御指令信号Sm、油圧制御指令信号Spなど)が供給される。電子制御装置80は、例えば上記バッテリ温度THb、バッテリ充放電電流Ib、及びバッテリ電圧Vbなどに基づいて蓄電装置36の充電状態SOCを逐次算出する。
図4は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2が作動させられていない状態においてエンジン12の動作点(以下、エンジン動作点という)がどのように定まるかを説明する為の図である。図4に示すように、トルクコンバータ16の速度比e(=Nt/Np)に応じてポンプ翼車16pに生じる入力側負荷トルクであるポンプトルクTpは、ある一定のタービン回転速度Ntの下では、例えば破線L01で示すようなエンジン回転速度Neとの関係になる。その破線L01で示すポンプトルクTpとエンジン回転速度Ne(=Np)との関係は、速度比eの関数であるトルクコンバータ16の容量係数τを用いて表せば、「Tp=τ×Ne2」という式が成立する関係である。従って、図4に示すように、エンジン回転速度Neが高いほどトルクコンバータ16の速度比eが小さくなり、ポンプトルクTpはエンジン回転速度Neが高いほど大きくなる。一方で、エンジン12の出力トルクTe(以下、エンジントルクTeという)は、エンジン12の電子スロットル弁のある一定のスロットル弁開度θthの下では、エンジン回転速度Neとの関係が例えば実線L02で示すようになり、その実線L02は破線L01と交差する。そして、破線L01と実線L02との交点P01がエンジントルクTeとポンプトルクTpとが釣り合う点を示しており、その交点P01がエンジン動作点になる。すなわち、エンジン動作点は、タービン回転速度Ntとスロットル弁開度θthとに基づいて成り行きで決まる。これに対し、本実施例では、第1電動機MG1の出力制御を行うことにより、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。このことを図5を用いて説明することができる。
図5は、第1電動機MG1を制御することによりエンジン動作点が任意に変化させられることを説明する為の図である。図5では図4と共通の符号は相互に同じものを示しており、図4と同じタービン回転速度Ntを前提としている。図5の実線L03は、必要エンジンパワーPe*すなわちエンジン出力Pe(単位は例えばkW)の目標値である目標エンジン出力Pe*をある一定値としエンジン出力Peがその目標エンジン出力Pe*に収束するように制御されたときのエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を示す等パワー曲線である。図5にはエンジン動作点がその等パワー曲線(実線L03)上で任意に設定される例が示されている。図5において、ポンプトルクTpとエンジン回転速度Neとの関係が破線L01で示され且つエンジン出力Peが実線L03で示す目標エンジン出力Pe*にされる場合には、第1電動機MG1の出力トルクTmg1(以下、第1電動機トルクTmg1という)が発生させられないとすればエンジン動作点は点P02になり、第1電動機MG1を発電動作させ第1電動機トルクTmg1を負回転方向にTG03だけ発生させればエンジン動作点は点P03になり、更に第1電動機トルクTmg1の絶対値を引き上げて第1電動機トルクTmg1を負回転方向にTG04だけ発生させればエンジン動作点は点P04になる。要するに、本実施例の車両用駆動装置10では、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和がポンプトルクTpと釣り合うように、すなわち「Tp=Te+Tmg1(図5のTmg1は負の値)」という関係が成立するように、第1電動機トルクTmg1が調節されることで、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく任意に変化させることが可能である。このように第1電動機MG1を発電動作させる場合には、その第1電動機MG1によって発電された電力は蓄電装置36に充電されても良いが、基本的には第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動される。すなわち、車両用駆動装置10は、エンジン12と駆動輪26との間において、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間での電力授受により電気的に動力(単位は例えばkW)が伝達される電気経路と、トルクコンバータ16を介して機械的に動力が伝達される機械経路という互いに並列である2つの動力伝達経路を備えている。そして、上述したように第1電動機トルクTmg1の調節によりエンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく連続的に変更できるので、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とは全体として、実質的に変速比(=Ne/Nt)を無段階に変化させる無段変速動作を行うことができ、無段変速機60を構成していると言える。
図6は、ある一定の目標エンジン出力Pe*の下でエンジン動作点が変化させられる場合の、前記電気経路と前記機械経路とのそれぞれにおいて伝達される動力の割合(伝達比率)を説明する為の概念図である。図6において、電気伝達とは、エンジン12からの動力が電気的に伝達されることであるので上記電気経路における動力伝達を意味しており、流体伝達とは、エンジン12からの動力がトルクコンバータ16内の流体(作動油)により伝達されることであるので上記機械経路における動力伝達を意味している。前述の図5において、エンジン回転速度Neが低くなる程すなわちトルクコンバータ16の速度比eが大きくなる程第1電動機トルクTmg1が負回転方向に絶対値として大きくなるように第1電動機MG1の出力制御がなされるので、図6に示すように、速度比eが1に向けて大きくなる程、前記電気伝達による動力の伝達比率RTOPELが大きくなる一方で前記流体伝達による動力の伝達比率RTOPMCが小さくなり、具体的には、速度比eが1に近付く程前記電気伝達による動力の伝達比率RTOPELは100%に近付くことになる。この速度比eに対する上記伝達比率RTOPEL,RTOPMCの変化傾向は目標エンジン出力Pe*又はタービン回転速度Ntに拘らず同じである。
次に、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とから構成された無段変速機60における動力伝達効率(=出力された動力/入力された動力;明細書全体を通して単に伝達効率ともいう)について説明する。先ず、トルクコンバータ16単体の伝達効率ηMCすなわち前記機械経路の伝達効率ηMCについて図7を用いて説明する。図7のように、速度比eが小さい側のトルクコンバータ領域では、トルクコンバータ16の伝達効率ηMCは所定の速度比eにて極大値をとり、速度比eが零では伝達効率ηMCも零となる。そして、速度比eが大きい側のカップリング領域では、上記伝達効率ηMCは速度比eが大きくなる程高くなり、トルクコンバータ領域及びカップリング領域の全体で見れば、伝達効率ηMCは速度比eが1に近いところで最も高くなる。このトルクコンバータ16の伝達効率ηMCに前記電気経路の伝達効率ηELと図6に示した伝達比率RTOPEL,RTOPMCとを加味すれば、前記電気経路と前記機械経路とにおいてエンジン12からの動力が伝達されるときの合成伝達効率ηCVTすなわち無段変速機60全体の伝達効率ηCVTを求めることができる。
図8は、前記電気経路の伝達効率ηELを一定と仮定した場合に、上記合成伝達効率ηCVTとトルクコンバータ16の速度比eとの関係を示した図である。図8において前記機械経路(流体伝達)の伝達効率ηMCを示す一点鎖線は図7のものと同じである。図8に実線で示すように、前記電気経路(電気伝達)の伝達効率ηELは上記機械経路(流体伝達)の伝達効率ηMCと比較して、トルクコンバータ16の速度比eが変化しても殆ど変化しない。そして、エンジン12からの動力が速度比eに応じて図6に示すような伝達比率RTOPEL,RTOPMCで前記機械経路と前記電気経路との各々にて伝達される場合には、合成伝達効率ηCVTは、速度比eに対して破線で示すように変化する。図8における点P02,P03,P04はそれぞれ図5の点P02,P03,P04を図8の座標系に表したものであり、図8によれば、3つの点P02,P03,P04のうち合成伝達効率ηCVTは、点P04が示す速度比eにて最高になる。尚、図8において、点P02が示す速度比eよりも低い速度比eの範囲では、破線で示す合成伝達効率ηCVTは機械経路の伝達効率ηMCを下回って著しく低下するが、それは、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間の電気的な動力伝達状態が、第1電動機MG1が電力を消費すると共に第2電動機MG2が発電する動力循環状態、言い換えれば第2電動機MG2から第1電動機MG1へ動力が電気的に伝達される動力循環状態となるからである。
上述したように、車両用駆動装置10では、第1電動機トルクTmg1の調節によりエンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されることなく連続的に変更できるので、本実施例では、この機能すなわち無段変速機60の無段変速機能を利用して、効率良くエンジン12を作動させ、更には、エンジン12を含む車両用駆動装置10全体で効率の良い運転がなされる制御が実行される。その制御機能の要部について、以下に説明する。
図3に戻り、その図3に示すように電子制御装置40は、動作モード判断手段すなわち動作モード判断部70と、エンジン動作点制御手段すなわちエンジン動作点制御部72とを備えている。
動作モード判断部70は、所定のシステム最適動作モードが選択されているか否かを判断する。例えば、運転者がシステム最適動作モードを選択する際にオンに切り替えられる動作モードスイッチがオンである場合には、動作モード判断部70はシステム最適動作モードが選択されていると判断する。そのシステム最適動作モードとは、エンジン12だけを効率良く作動させるのではなく、エンジン12と無段変速機60との全体で効率向上を図る動作モードであり、例えば燃費向上を極めて優先させたい場合に選択される。そのシステム最適動作モードは、上記動作モードスイッチの切換ではなく、例えばアクセル開度Accが殆ど変動しないような場合に自動的に選択されても差し支えない。
エンジン動作点制御部72は、前記エンジン走行中において、第1電動機トルクTmg1を調節することでエンジン動作点を制御するエンジン動作点制御を実行する。その第1電動機トルクTmg1を調節する際、詳細には前述した図5に示すように、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和が、トルクコンバータ16のポンプトルクTpと釣り合うように、第1電動機トルクTmg1を調節する。エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では基本的に第1電動機MG1を発電作動させるので、前記動力循環状態を除き第1電動機トルクTmg1は負の値である。前記エンジン動作点制御について具体的に説明すれば、エンジン動作点制御部72は、先ず、図9に示すような予め定められたエンジン最少燃料消費率線LFL上で目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点P05を目標エンジン動作点として逐次決定する。ここで、図9は、ある一定のタービン回転速度Ntの下で図5と同じ座標系において、エンジン最少燃料消費率線LFL上の動作点を目標エンジン動作点としたときの第1電動機トルクTmg1及びポンプトルクTpを表した図であり、図9における破線L01及び実線L03は図5のものと同じである。また、前記エンジン最少燃料消費率線LFLは、エンジン12の燃料消費率が最小となるように予め実験的に定められたエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとの関係を表すエンジン12の動作曲線であり、言い換えれば、エンジン12の燃費向上に最適な動作点である燃費最適点の連なりである。また、目標エンジン出力(必要エンジンパワー)Pe*は、運転者が車両に対して要求する出力であり、運転者の出力要求に対応できるように予め実験的に定められた関係からアクセル開度Accと車速Vとに基づいてエンジン動作点制御部72により逐次決定されるものであり、例えばその目標エンジン出力Pe*はアクセル開度Accが大きいほど大きく決定される。更に、蓄電装置36の充電状態SOCが所定の下限値以下に低下した場合には蓄電装置36へ充電すべき充電要求がなされ、目標エンジン出力Pe*は、その充電要求に基づく電力(要求充電電力)が前記アクセル開度Accと車速Vとに基づく算出値に加算されるのが好ましい。
エンジン動作点制御部72は、上述のようにエンジン最少燃料消費率線LFL上に目標エンジン動作点(点P05)を定めると、図9に示すように、その点P05が示すエンジン回転速度Neに基づいてポンプトルクTpを算出し、そのポンプトルクTpと点P05が示すエンジントルクTeとに基づいて第1電動機トルクTmg1を算出する。そして、点P05が示すエンジン回転速度Neとタービン回転速度Ntとからトルクコンバータ16の速度比eを算出する。
エンジン動作点制御部72は、前記エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(点P05)に基づくポンプトルクTpと第1電動機トルクTmg1とを算出すると、前記機械経路に伝達される機械経路出力及び前記電気経路に伝達される電気経路出力から前記機械経路の伝達比率RTOPMC及び前記電気経路の伝達比率RTOPELがそれぞれ求まるので、前述した図8に示すように、予め実験的に求められ設定された速度比eと前記機械経路の伝達効率ηMCとの関係、及び、予め実験的に求められ設定された速度比eと前記電気経路の伝達効率ηELとの関係から、速度比eと上記伝達比率RTOPEL,RTOPMCとに基づいて合成伝達効率ηCVTを算出できる。すなわち、エンジン動作点制御部72は合成伝達効率ηCVTを逐次算出する。
そして、その合成伝達効率ηCVTの算出と共に、エンジン動作点制御部72は、エンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeで示されるエンジン動作点とエンジン効率ηENGとの予め実験的に求められ定められた関係(エンジン効率マップ)から、前記エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(点P05)が示すエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとに基づいてエンジン効率ηENGを逐次算出する。更に、エンジン動作点制御部72は、その算出した合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積として得られる合成効率ηTOTALすなわち総合効率ηTOTALを逐次算出する。エンジン効率ηENGとは、エンジン12への供給燃料が完全に燃焼した場合の低位発熱量のうち仕事に変換される熱量の割合である。
ここで、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では、動作モード判断部70の判断に応じて、その制御内容を切り替える。具体的に、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合には、合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積である総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらす。
例えばエンジン動作点制御部72は、上記のように総合効率ηTOTALが大きくなる側に目標エンジン動作点をずらす場合には、目標エンジン出力Pe*を示す等パワー曲線(例えば図9の実線L03)上で目標エンジン動作点を徐々にずらしつつ、その目標エンジン動作点をずらす毎にその目標エンジン動作点に基づき第1電動機トルクTmg1更には総合効率ηTOTALを逐次算出する。そして、その総合効率ηTOTALが極大(好ましくは、最大)となった目標エンジン動作点を最終的な目標エンジン動作点として決定する。
一方、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合には、上述したように総合効率ηTOTALが大きくなる側に目標エンジン動作点をエンジン最少燃料消費率線LFL上からずらすということはせず、エンジン最少燃料消費率線LFL上の目標エンジン動作点(図9の点P05)を最終的な目標エンジン動作点として決定する。
エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合にもシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合にも、前記最終的な目標エンジン動作点を決定すると、その最終的な目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをそれぞれ、目標値である目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*として逐次設定し、それと共に、その最終的な目標エンジン動作点に対応する第1電動機トルクTmg1と第1電動機回転速度Nmg1(=エンジン回転速度Ne)とをそれぞれ、目標値である目標第1電動機トルクTmg1*と目標第1電動機回転速度Nmg1*として逐次設定する。そして、エンジン動作点制御部72は、実際のエンジントルクTeが目標エンジントルクTe*に一致するように例えば追従するように、スロットル弁開度θthを調節してエンジン12の出力制御を行い、それと共に、実際の第1電動機トルクTmg1が目標第1電動機トルクTmg1*に一致する(追従する)ように且つ実際の第1電動機回転速度Nmg1が目標第1電動機回転速度Nmg1*に一致する(追従する)ように、第1電動機MG1を制御する。以上のようにして、エンジン動作点制御部72は前記エンジン動作点制御を実行する。
尚、実際の第1電動機回転速度Nmg1が目標第1電動機回転速度Nmg1*に一致するようにすることは、実際のエンジン回転速度Neが目標エンジン回転速度Ne*に一致するようにすることである。
また、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン動作点制御では、第2電動機MG2の出力トルクTmg2(以下、第2電動機トルクTmg2という)を駆動輪26に伝達する。その際、エンジン動作点制御部72は、基本的には、第1電動機MG1が発電した電力をそのまま第2電動機MG2に供給して第2電動機MG2を駆動するが、前記充電要求がなされた場合には、その充電要求により蓄電装置36に充電される要求充電電力分だけ目標エンジン出力Pe*を大きく算出し、第1電動機MG1が発電した電力から蓄電装置36に充電される電力を差し引いた残部を第2電動機MG2に供給して第2電動機MG2を駆動する。このように前記エンジン動作点制御では、第1電動機MG1が発電した電力の全部又は一部が第2電動機MG2で消費されるので、第2電動機トルクTmg2は第1電動機トルクTmg1に応じたトルクであり、第2電動機MG2での消費電力が抑えられれば第1電動機トルクTmg1が間接的に抑えられる関係にある。従って、前記エンジン動作点制御では、第1電動機トルクTmg1を調節することとは、前記電気経路において伝達される動力を調節することであり、第2電動機トルクTmg2を調節することであるとも言える。
図10は、電子制御装置40の制御作動の要部、すなわち、無段変速機60の無段変速動作を利用してエンジン動作点を決定する制御作動を説明する為のフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図10に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。図10において、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1〜SA3及びSA5〜SA11はエンジン動作点制御部72に対応しており、SA4は動作モード判断部70に対応する。
先ず、SA1においては、目標エンジン出力(必要エンジンパワー)Pe*が、予め定められた関係からアクセル開度Accと車速Vとに基づいて算出される。この目標エンジン出力Pe*は、蓄電装置36へ充電される場合にはその充電電力分だけ大きく算出されても良いし、また、蓄電装置36から放電される場合にはその放電電力分だけ小さく算出されても良い。更にSA1では、図9に示すような前記エンジン最少燃料消費率線LFL上で上記算出された目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点(例えば図9の点P05)が目標エンジン動作点として決定される。SA1の次はSA2に移る。
SA2においては、図9に例示したようにして、SA1で決定された目標エンジン動作点(例えば点P05)に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され決定される。すなわち、その目標エンジン動作点に対応した前記電気経路に伝達される電気経路出力(単位は例えばkW)が、第1電動機トルクTmg1と第1電動機回転速度Nmg1(=エンジン回転速度Ne)とに基づいて算出される。そして、その目標エンジン動作点に対応した前記機械経路に伝達される機械経路出力(単位は例えばkW)が、ポンプトルクTpとポンプ回転速度Np(=エンジン回転速度Ne)とに基づいて算出される。SA2の次はSA3に移る。
SA3においては、前記SA1で決定された目標エンジン動作点に基づく合成伝達効率ηCVTが、図8に示すような前記機械経路の伝達効率ηMC及び前記電気経路の伝達効率ηELの各々と速度比eとの関係から、タービン回転速度センサ52により検出されるタービン回転速度Ntと上記目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neと前記SA2で算出された前記電気経路出力及び前記機械経路出力とに基づいて算出される。それと共に、前記SA1で決定された目標エンジン動作点に基づくエンジン効率ηENGが算出される。そして、その合成伝達効率ηCVTとそのエンジン効率ηENGとの積が総合効率(合成効率)ηTOTALとして算出される。SA3の次はSA4に移る。
SA4においては、前記システム最適動作モードが選択されているか否かが判断される。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、前記システム最適動作モードが選択されている場合には、SA5に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA11に移る。
SA5においては、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定される。この目標エンジン動作点の段階的な変更は、前記SA1算出された目標エンジン出力Pe*が変化しないように行われる。従って、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neの変更と共に、目標エンジン動作点が示すエンジントルクTeも変更される。尚、SA5における変更前の目標エンジン動作点を前回の目標エンジン動作点と呼び、変更後の目標エンジン動作点を今回の目標エンジン動作点と呼ぶ。SA5の次はSA6に移る。
SA6においては、前記SA2と同様にして、今回の目標エンジン動作点に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され、その今回の目標エンジン動作点に対応する前記電気経路出力及び前記機械経路出力が算出される。SA6の次はSA7に移る。
SA7においては、前記SA3と同様にして、今回の目標エンジン動作点に基づく合成伝達効率ηCVTが算出されると共に、その今回の目標エンジン動作点に基づくエンジン効率ηENGが算出される。そして、その合成伝達効率ηCVTとそのエンジン効率ηENGとの積が総合効率(合成効率)ηTOTAL(今回合成効率という)として算出される。尚、前回の目標エンジン動作点に基づく総合効率(合成効率)ηTOTALである前回合成効率は、SA8での判断の為に予め記憶されている。SA7の次はSA8に移る。
SA8においては、前回合成効率の方が今回合成効率よりも大きいか否かが判断される。このSA8の判断が肯定された場合、すなわち、前回合成効率の方が今回合成効率よりも大きい場合には、SA9に移る。一方、このSA8の判断が否定された場合には、SA5に移る。
SA9においては、目標エンジン動作点が、前回の目標エンジン動作点に戻される。すなわち、前記SA5で決定された今回の目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが前記所定の変化量ΔNeだけ減少されて新たな目標エンジン動作点が決定される。このとき、SA5と同様に、目標エンジン出力Pe*が変化しないように、目標エンジン動作点が示すエンジントルクTeも変更される、すなわち前回のものに戻される。SA9の次はSA10に移る。
SA10においては、前記SA2と同様にして、前記SA9にて新たに決定された目標エンジン動作点に基づいて第1電動機トルクTmg1が算出され、そのSA9にて新たに決定された目標エンジン動作点に対応する前記電気経路出力及び前記機械経路出力が算出される。SA10の次はSA11に移る。
SA11においては、実際のエンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeが示すエンジン12の実際の動作点が、最終的に決定された目標エンジン動作点に一致するように例えば追従するように、エンジン12及び第1電動機MG1の出力制御が行われる。そして、第2電動機トルクTmg2が駆動輪26に伝達される。このとき、第1電動機MG1が発電した電力はそのまま第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動されるが、蓄電装置36に充電される場合には、その第1電動機MG1が発電した電力から蓄電装置36に充電される電力を差し引いた残部が第2電動機MG2に供給されて第2電動機MG2が駆動される。
本実施例では次のような効果(A1)乃至(A4)がある。(A1)本実施例によれば、第1電動機MG1と第2電動機MG2とトルクコンバータ16とが全体として無段変速機60を構成しており、エンジン動作点制御部72は、前記エンジン走行中において、第1電動機トルクTmg1を調節することでエンジン動作点を制御する前記エンジン動作点制御を実行する。そして、そのエンジン動作点制御では、第2電動機トルクTmg2を駆動輪26に伝達する。従って、第1電動機トルクTmg1(基本的に回生トルク)を調節することにより無段変速機60の無段変速動作を行うことができ、その無段変速機60の無段変速動作により、エンジン動作点をタービン回転速度Ntに拘束されずに制御することが可能であるので、例えばエンジン12を燃費向上に最適な動作点(燃費最適点)で駆動することが可能であり、車両の燃費向上を図ることが可能である。
(A2)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、図5に示すように、エンジントルクTeと第1電動機トルクTmg1との和が、トルクコンバータ16の入力側負荷トルクであるポンプトルクTpと釣り合うように、第1電動機トルクTmg1を調節する。従って、トルクコンバータ16の特性に基づいて容易に第1電動機トルクTmg1を調節することができる。
(A3)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合には、合成伝達効率ηCVTとエンジン効率ηENGとの積である総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらす。従って、そのエンジン動作点が上記総合効率ηTOTALに応じて変更されない場合と比較して、車両用駆動装置10全体として効率アップが図られ、車両の燃費を向上させることが可能である。
(A4)また、本実施例によれば、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていないと判断された場合には、エンジン動作点がエンジン最少燃料消費率線LFLに沿うように且つ目標エンジン出力Pe*が達成されるようにエンジン動作点を制御する。従って、前記無段変速機60の無段変速動作により、エンジン12の燃料消費率上昇を抑えることが可能である。
このように、本実施例の車両用駆動装置10では、第1電動機トルクTmg1を調節することにより、エンジン12の動力を伝達する伝達経路として前記電気経路と前記機械経路とを併用し、エンジン動作点制御を実行するので、車両の燃費向上を図ることができる。
ここで、このようなエンジン動作点制御の際、蓄電装置36のパワー収支Pbがパワー制限Wを超えるときについて検討する。蓄電装置36のパワー収支Pbとは、例えば第1電動機MG1のパワー(第1電動機パワーPmg1<0;回生時)と第2電動機MG2のパワー(第2電動機パワーPmg2>0;力行時)と車両補機のパワー(補機パワーPaux>0;力行時)との合計パワーで表されるバッテリ収支Pb(=Pmg1+Pmg2+Paux)であり、蓄電装置36において授受される電力の差分すなわち蓄電装置36における充放電電力(=Vb×Ib)である。従って、パワー収支Pbが負値となっているときは蓄電装置36が充電側となっているとき(すなわち蓄電装置36への充電電力となっているとき)であり、パワー収支Pbが正値となっているときは蓄電装置36が放電側となっているとき(すなわち蓄電装置36からの放電電力となっているとき)である。蓄電装置36のパワー制限Wとは、蓄電装置における充放電電力として許容される予め定められたパワー収支Pbの最大値であり、蓄電装置36への充電電力を規制する入力制限Win及び蓄電装置36からの放電電力を規制する出力制限Woutの少なくとも一方のバッテリ制限Wである。従って、蓄電装置36が充電側となっているときにパワー収支Pb(<0)が入力制限Win(<0)を超過する場合が蓄電装置36の過充電であり、蓄電装置36が放電側となっているときにパワー収支Pb(>0)が出力制限Wout(>0)を超過する場合が蓄電装置36の過放電である。
このような蓄電装置36の過充電や過充電は、できるだけ回避することが望ましい。つまり、蓄電装置36のパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるときには、パワー収支Pbがバッテリ制限W内となるようにパワー収支Pbを保護する制御(パワー収支保護制御)を実行することが望ましい。例えば、蓄電装置36が過充電となるときには、第1電動機MG1の回生トルクを減少させて第1電動機パワーPmg1の絶対値を小さくしたり、第2電動機MG2の力行トルクを増大させて第2電動機パワーPmg2の絶対値を大きくしたりして、結果的に充電電力が減少する側へ制御することが考えられる。しかしながら、車両用駆動装置10の構成上、第1電動機MG1の回生トルクを減少させるとポンプトルクTpが増大し(図5参照)、結果、自動変速機18の入力トルク(変速機入力トルク)Tinが増大して駆動トルクが増大してしまう。また、第2電動機MG2の力行トルクを増大させるとタービントルクTtすなわち変速機入力トルクTinが増大して駆動トルクが増大してしまう。第1電動機MG1の回生トルクを減少させたことに伴う駆動トルクの増大を抑制乃至回避するには、例えば第2電動機MG2の力行トルクを減少させれば良いが、そうすると充電電力が減少しない可能性がある。一方、蓄電装置36が過放電となるときに放電電力が減少する側へ制御すると、反対に駆動トルクが減少してしまうという問題が生じ、そのような駆動トルクの減少を抑制乃至回避しようとすると放電電力が減少しない可能性がある。このように、パワー収支をパワー制限内に入れることとその際に動力性能を適切に維持することとは両立させ難い。
ところで、本実施例の車両用駆動装置10はトルクコンバータ16を備えている為、第1電動機トルクTmg1の変化(MG1トルク変化)に伴ってエンジン回転速度Neが変化してから(すなわちポンプトルクTpが変化してから)、その変化がタービン翼車16tに伝達されるまでには流体によるタイムラグがある。よって、前記電気経路において伝達される動力(例えば第1電動機パワーPmg1)を変化させても前記機械経路における動力の変化には伝達遅れが生じるので、その伝達遅れの間は駆動トルクには変化が現れない。本実施例では、第1電動機パワーPmg1の変化でパワー収支保護制御を実行したときに、機械経路における伝達遅れの間はトルクコンバータ16の下流側の動力(例えば第2電動機パワーPmg2)を変化させなくても、駆動トルクには影響を与えない(駆動トルクが維持される)こと、すなわち機械経路における伝達遅れの間は動力性能を適切に維持しつつ第1電動機パワーPmg1のみの変化でパワー収支保護制御が可能となることを見出した。
そこで、本実施例の電子制御装置40は、蓄電装置36のパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるときには、第2電動機MG2よりも先に第1電動機MG1のパワーをパワー収支Pbの絶対値が低下する方向へ変化させる。
より具体的には、図3に戻り、バッテリ制限設定手段すなわちバッテリ制限設定部74は、例えば蓄電装置36の充電状態SOC及びバッテリ温度THbに基づいてバッテリ制限Wを設定(決定)する。図11は、バッテリ温度THbと蓄電装置36における入出力制限Win/Woutとの予め実験的に求められて定められた関係(入出力制限マップ)である。また、図12は、充電状態SOCと入出力制限Win/Woutの補正係数との予め実験的に求められて定められた関係(入出力制限用補正係数マップ)である。バッテリ制限設定部74は、例えば図11の入出力制限マップからバッテリ温度THbに基づいて入力制限Win及び出力制限Woutの基本値をそれぞれ設定し、図12の入出力制限用補正係数マップから充電状態SOCに基づいて入力制限用補正係数及び出力制限用補正係数をそれぞれ設定し、入力制限Win及び出力制限Woutの基本値に入力制限用補正係数及び出力制限用補正係数をそれぞれ乗算して入力制限Win及び出力制限Woutを設定する。
バッテリ収支制限判定手段すなわちバッテリ収支制限判定部76は、蓄電装置36のパワー収支Pbがバッテリ制限設定部74により設定されたバッテリ制限Wを超えるか否かを判定する。具体的には、バッテリ収支制限判定部76は、バッテリ充放電電流Ib及びバッテリ電圧Vbに基づいて実際のパワー収支Pb(=Vb×Ib)を算出し、そのパワー収支Pbが上記設定されたバッテリ制限Wを超えているか否かに基づいて、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるか否かを判定する。或いは、バッテリ収支制限判定部76は、算出した実際のパワー収支Pbが上記設定されたバッテリ制限Wを超えると予想されるか否かに基づいて、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるか否かを判定しても良い。パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えると予想されるときは、例えば実際のパワー収支Pb及びバッテリ制限Wの少なくとも一方が変化することによりパワー収支Pbとバッテリ制限Wとの差が縮小する方向に継続して変化しており且つその差が所定の予想判定値未満となるようなときである。また、実際のパワー収支Pbは、アクセル開度Acc等の駆動要求量や走行路(例えば平坦路や登降坂路)に応じて変化させられることに加え、例えば走行路面の摩擦係数の変化による駆動輪26の回転速度の急激な変化に伴う第2電動機回転速度Nmg2の急激な変化によって変化させられる場合なども考えられる。
エンジン動作点制御部72は、エンジン動作点制御の際、バッテリ収支制限判定部76により蓄電装置36のパワー収支Pbが充電側にバッテリ制限Wを超える(すなわちパワー収支Pb(<0)が入力制限Win(<0)を超過する)と判定された場合には、第1電動機MG1の回生トルクを減少させて(すなわち第1電動機MG1をトルクアップさせて)充電電力を減少させることで、パワー収支Pbがバッテリ制限W内となるように第1電動機MG1によるパワー収支保護制御(MG1トルク制御)を実行する。一方で、エンジン動作点制御部72は、エンジン動作点制御の際、バッテリ収支制限判定部76により蓄電装置36のパワー収支Pbが放電側にバッテリ制限Wを超える(すなわちパワー収支Pb(>0)が出力制限Wout(>0)を超過する)と判定された場合には、第1電動機MG1の回生トルクを増加させて(すなわち第1電動機MG1をトルクダウンさせて)充電電力を増加させることで、パワー収支Pbがバッテリ制限W内となるようにMG1トルク制御を実行する。
上記MG1トルク制御を実行すると、そのパワー収支保護制御に伴うポンプトルクTpの変化が遅れてタービン翼車16t上に生じる。その為、エンジン動作点制御部72は、MG1トルク制御時には、駆動トルクが略一定に維持されるように、MG1トルク変化がトルクコンバータ16を介して駆動輪26側に遅れて伝達される分に応じて第2電動機トルクTmg2を変化させる駆動力保護制御を実行する。このときの第2電動機トルクTmg2の変化(MG2トルク変化)は、前述したように、バッテリ制限Wを超過する方向にパワー収支Pbを変化させることになるので、MG1トルク制御においては、駆動力保護制御を含む制御全体としてパワー収支Pbがバッテリ制限W内となるようにMG1トルク変化分が予め定められることが望ましい。従って、第2電動機トルクTmg2による駆動力保護制御(MG2トルク制御)では、結果的にパワー収支Pbがバッテリ制限W内に維持されるように制御されるので、パワー収支保護制御も兼ねて実行していることになる。
上記MG1トルク制御におけるMG1トルク変化率(=MG1トルク変化分/MG1トルク制御時間)やMG1トルク制御開始を起点としたMG2トルク制御の開始時期は、予め定められた一律の値を用いても良いが、種々のパラメータに基づいてその都度変化させても良い。具体的には、MG1トルク変化率が大きいと、バッテリ制限Wに対するパワー収支Pbの超過が充電側と放電側とでハンチングする恐れがある。このようなハンチングの発生は、バッテリ制限幅(=出力制限Wout(>0)−入力制限Win(<0))が小さい程、顕著であると考えられる。また、MG1トルク変化率が小さい程(すなわちMG1トルク変化が緩やかな程)タービントルクTtの変化開始が遅いと考えられる。そこで、エンジン動作点制御部72は、バッテリ制限幅が小さい場合は、大きい場合と比較して、MG1トルク制御におけるMG1トルク変化を緩やかにすると共にMG2トルク制御の開始時期を遅くする(すなわちMG1トルク制御開始後からの遅延時間を長くする)。図13の(a)は、バッテリ制限幅とMG1トルク変化との予め実験的に求められて定められた関係(バッテリ制限幅−MG1トルク変化マップ)であり、図13の(b)は、バッテリ制限幅とMG2トルク制御開始時期との予め実験的に求められて定められた関係(バッテリ制限幅−MG2トルク制御開始時期マップ)である。エンジン動作点制御部72は、例えば図13(a)のマップから前記設定されたバッテリ制限Wに基づくバッテリ制限幅に基づいてMG1トルク変化率を設定すると共に、 図13(b)のマップからそのバッテリ制限幅に基づいてMG2トルク制御開始時期を設定する。
作動油温THoilが高い程、MG1トルク変化に対するポンプ回転速度Npの変化が早くなると考えられる。そこで、エンジン動作点制御部72は、作動油温THoilが高い場合は、低い場合と比較して、MG1トルク制御におけるMG1トルク変化を緩やかにすると共にMG2トルク制御の開始時期を遅くする。図14の(a)は、作動油温THoilとMG1トルク変化との予め実験的に求められて定められた関係(作動油温THoil−MG1トルク変化マップ)であり、図14の(b)は、作動油温THoilとMG2トルク制御開始時期との予め実験的に求められて定められた関係(作動油温THoil−MG2トルク制御開始時期マップ)である。エンジン動作点制御部72は、例えば図14(a)のマップから作動油温THoilに基づいてMG1トルク変化率を設定すると共に、 図14(b)のマップから作動油温THoilに基づいてMG2トルク制御開始時期を設定する。
図13及び図14の何れものマップが採用される場合には、MG1トルク変化率やMG2トルク制御開始時期は、例えばそれぞれのマップから求められた値から、MAXセレクト、MINセレクト、平均値算出などの所定の決定方法に基づいて設定される。
図15は、電子制御装置40の制御作動の要部、すなわち、蓄電装置36のバッテリ制限Wの遵守と動力性能の維持とを両立させる制御作動を説明する為のフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図15に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。図15において、ステップ(以下、「ステップ」を省略する)SB1はバッテリ制限設定部74及びバッテリ収支制限判定部76に対応し、SB2及びSB3はエンジン動作点制御部72に対応する。また、図16は、図15のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであり、過充電時に対応した制御の一例である。また、図17は、図15のフローチャートに示す制御作動を実行した場合のタイムチャートであり、過放電時に対応した制御の一例である。
先ず、SB1においては、例えば図11及び図12からバッテリ温度THb及び充電状態SOCに基づいてバッテリ制限Wが設定される。蓄電装置36の実際のパワー収支Pb(=Vb×Ib)がその設定されたバッテリ制限Wを超えるか否かが判定される。このSB1の判断が肯定された場合、すなわちパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えると判断された場合には、SB2に移る。一方で、このSB1の判断が否定された場合には、本ルーチンが終了させられる。図16のt0時点及び図17のt0時点は、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えると判断されたことを示している。
SB2においては、例えばパワー収支Pbがバッテリ制限W内となるように第1電動機MG1によるパワー収支保護制御(MG1トルク制御)が実行される。図16のt0時点乃至t1時点は、パワー収支Pb(<0)が入力制限Win(<0)を超過した為に、第1電動機MG1をトルクアップさせて回生電力Pmg1を減少させるMG1トルク制御が実行されたことを示している。図17のt0時点乃至t1時点は、パワー収支Pb(>0)が出力制限Wout(>0)を超過した為に、第1電動機MG1をトルクダウンさせて回生電力Pmg1を増加させるMG1トルク制御が実行されたことを示している。図16及び図17において、MG1トルク変化からタービントルクTtの変化までにはタイムラグがある為、このt0時点乃至t1時点では、第2電動機トルクTmg2を変化させなくても変速機入力トルクTinは略一定に維持され、駆動トルクもMG1トルク変化の影響を略受けない。
SB3においては、例えばパワー収支Pbがバッテリ制限W内に維持されつつ駆動トルクが略一定に維持されるように、第2電動機トルクTmg2によるパワー収支保護制御及び駆動力保護制御が実行される。図16及び図17のt1時点以降は、MG1トルク変化がトルクコンバータ16を介して駆動輪26側に遅れて伝達される分に応じて第2電動機トルクTmg2が変化させられ、変速機入力トルクTinが略一定に維持される駆動力保護制御が実行されたことを示している。ここでのMG2トルク変化は、バッテリ制限Wを超過させる方向にパワー収支Pbを変化させることになるが、t0時点乃至t1時点でのMG1トルク制御におけるMG1トルク変化分が駆動力保護制御を含む制御全体としてパワー収支Pbをバッテリ制限W内とするように設定されており、このt1時点以降では第2電動機トルクTmg2によるパワー収支保護制御も実行されていることになる。
パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超過したときには、先ず第1電動機MG1によるパワー収支保護制御を実行するという本実施例における特別な技術的特徴は、電気経路において伝達される動力を調節することでエンジン動作点を制御することが可能な車両用駆動装置10における機械経路の動力伝達がトルクコンバータを介して機械的になされるという新しいハードにて初めて成立するものである。また、電動機によるパワー収支保護制御であるので、エンジン12を用いた制御に比べ、応答性の面で有利である。
上述のように、本実施例によれば、第1電動機MG1はトルクコンバータ16よりも上流側にある為、蓄電装置36のパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるときに第1電動機パワーPmg1を変化させても、その変化に起因したトルク変化がタービン翼車16tへ伝達されるまでに流体によるタイムラグが生じる。このトルク伝達遅れの間、第2電動機パワーPmg2を変更しなくても駆動トルク(駆動力も同意)には影響を与えない。つまり、現在の駆動トルクを維持しつつ、第1電動機パワーPmg1の変化だけで高精度にパワー収支Pbのバッテリ制限Wの超過を抑制することができる。よって、蓄電装置36のバッテリ制限Wの遵守と動力性能の維持とを両立させることができる。
また、本実施例によれば、パワー収支Pbが入力制限Winを超過するときには、第1電動機MG1をトルクアップさせる一方で、パワー収支Pbが出力制限Woutを超過するときには、第1電動機MG1をトルクダウンさせるので、第1電動機パワーPmg1の変化だけで高精度にパワー収支Pbの超過を抑制することができる。
また、本実施例によれば、MG1トルク変化がタイムラグを生じて駆動輪26側へ遅れて伝達されることによって駆動トルクが変化し始めることに対して、MG1トルク変化がトルクコンバータ16を介して駆動輪26側に伝達される分に応じて第2電動機トルクTmg2を変化させることで、MG1トルク変化に起因したトルク変化が駆動輪26側へ伝達された以降も現在の駆動トルクを適切に維持することができる。
また、本実施例によれば、バッテリ制限幅が小さい場合は、大きい場合と比較して、MG1トルク制御におけるMG1トルク変化を緩やかにするので、バッテリ制限幅が小さい程、パワー収支Pbの超過がハンチングし易い恐れがあることに対して、そのようなハンチングの発生に適切に対処できる。
また、本実施例によれば、作動油温THoilが高い場合は、低い場合と比較して、MG1トルク制御におけるMG1トルク変化を緩やかにするので、作動油温THoilが高い程、ポンプ翼車16pの回転変化が早くなることに対して、そのようなポンプ翼車16pの回転変化が早くなることに適切に対処できる。
また、本実施例によれば、バッテリ制限幅が小さい場合は、大きい場合と比較して、MG2トルク制御の開始時期を遅くする。また、作動油温THoilが高い場合は、低い場合と比較して、MG2トルク制御の開始時期を遅くする。よって、MG1トルク変化が緩い程、タービン翼車16tへ伝達されるトルク変化の開始が遅くなることに対して、そのようなトルク変化が遅くなることに適切に対処できる。
また、本実施例によれば、蓄電装置36のパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるときとは、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えているとき、或いはパワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えると予想されるときであるので、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超えるときに、第1電動機MG1によりパワー収支Pbの絶対値が低下する方向へ適切に変化させられる。
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
例えば、前述の実施例では、蓄電装置36のパワー収支Pbをバッテリ制限W内とするように第1電動機MG1によるパワー収支保護制御を実行したが、パワー収支Pbのバッテリ制限Wの超過を抑制する制御であっても良い。
また、前述の実施例において、自動変速機18は遊星歯車式多段変速機であるが、これに限らない。例えば、自動変速機18は、公知の同期噛合型平行2軸式自動変速機等の他の有段変速機、公知のベルト式無段変速機等の無段変速機(CVT)であっても良い。また、例えば図18に示す車両用駆動装置110のように自動変速機18が無い構成も考え得る。
また、前述の実施例において、パワー収支Pbがバッテリ制限Wを超過したときに第1電動機MG1によるパワー収支保護制御を実行する際、ロックアップクラッチLCが係合されている場合には、解放してからパワー収支保護制御を実行する。このように、トルクコンバータ16はロックアップクラッチLCを備えているが、無段変速機60の無段変速動作ではそのロックアップクラッチLCは解放されているので、ロックアップクラッチLCは無くても差し支えない。また、流体伝動装置としてトルクコンバータ16が設けられているが、トルク増幅作用を利用する態様でなければ、トルクコンバータ16に替えて、トルク増幅作用のない流体継手(フルードカップリング)などの他の流体伝動装置が設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例では、エンジン最少燃料消費率線LFL上で目標エンジン出力Pe*が達成されるエンジン動作点或いは総合効率ηTOTALが極大となるエンジン動作点を目標エンジン動作点として設定するエンジン動作点制御を基本の制御として、本発明を適用したが、これに限らない。要は、前記電気経路において伝達される動力を調節することで実エンジン動作点を目標エンジン動作点に制御するものに本発明は適用され得る。
また、前述の実施例では、前記電気経路において伝達される動力として第1電動機トルクTmg1を例示したが、第1電動機回転速度Nmg1や第1電動機MG1の出力(電力)を用いても良い。また、電気パスにおいて第1電動機MG1と電力授受を行う第2電動機MG2の出力(電力)や第2電動機トルクTmg2、第2電動機回転速度Nmg2等を用いても良い。
また、前述の実施例では、第2電動機MG2は自動変速機18を介して駆動輪26に間接的に連結されているが、これに限らない。例えば、第2電動機MG2が出力歯車22に連結されることで、第2電動機MG2は動力伝達が遮断されることなく駆動輪26と一対一の関係で回転させられても良い(すなわち第2電動機MG2は駆動輪26に直接的に連結されても良い)。また、第2電動機MG2は駆動輪26に組み込まれるホイールインモータであっても良い。その場合には、左右の駆動輪26を合わせて合計2機の第2電動機MG2が設けられる。
また、前述の実施例では、第2電動機MG2はエンジン12が間接的に連結された駆動輪26に連結されているが、これに限らない。例えば、エンジン12及び第1電動機MG1は図1の通り駆動輪26に連結されている一方で、第2電動機MG2はその駆動輪26とは別の車輪に直接又は間接的に連結されていても良い。そのように第2電動機MG2が駆動輪26とは別の車輪に連結されておればその車輪も駆動輪に含まれる。要するに、エンジン12からの動力で駆動される駆動輪と第2電動機MG2からの動力で駆動される駆動輪とは、別個の車輪であっても差し支えないということである。
また、前述の実施例で説明した前記エンジン動作点制御すなわち無段変速機60の無段変速動作において、第1電動機トルクTmg1が調節されるが、その第1電動機トルクTmg1は、直接調節されても良いし、第2電動機トルクTmg2の調節すなわち第2電動機MG2の出力の調節により、結果的に言い換えれば間接的に調節されても良い。
また、前述の実施例において、前記エンジン動作点制御では、第1電動機MG1は回生作動させられ第1電動機トルクTmg1は負回転方向に発生させられるが、第1電動機MG1が電力を消費すると共に第2電動機MG2が発電する動力循環状態が許容される場合すなわち第1電動機トルクTmg1が正回転方向に発生させられる場合があっても差し支えない。動力循環状態となる場合であっても、制御方向が反対となることはあるが、本発明は適用され得る。
また、前述の実施例において、前記電気経路では、第1電動機MG1と第2電動機MG2との間での電力授受により動力伝達が電気的になされるが、例えば第1電動機MG1が発電した電力が蓄電装置36を経由せずに第2電動機MG2に直接供給されても良いし、第1電動機MG1が発電した電力が蓄電装置36に一旦充電されその蓄電装置36から第2電動機MG2に供給される等して、その第1電動機MG1が発電した電力が第2電動機MG2に間接的に供給されても良い。また、第2電動機MG2は、蓄電装置36からの電力供給と共に第1電動機MG1が発電した電力の供給を受けて、駆動されても良い。尚、前記動力循環時に第1電動機MG1が力行する場合における第1電動機MG1への電力供給に関しても同様である。
また、前述の実施例において、第1電動機MG1はトルクコンバータ16のポンプ翼車16pに直接連結されているが、変速機、クラッチ、又は電動ベルト等を介してポンプ翼車16pに間接的に連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両は前記モータ走行を行うことが可能であるが、車両走行は常に前記エンジン走行でなされても差し支えない。
また、前述の実施例において、図10のフローチャートでは、SA3の次にSA4に移るが、それら両ステップの実行順序は何れが先でもよく、例えばそのフローチャートは、SA2の次にSA4に移り、SA4の判断が肯定された場合にSA3に移り、SA3の次にSA5に移るものであっても差し支えない。
また、前述の実施例において、図10のフローチャートのSA5では、目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定されるが、そのエンジン回転速度Neが所定の変化量ΔNeだけ減少されて新たな目標エンジン動作点が決定されても差し支えない。そのようにした場合には、図10のSA9では、そのSA5で決定された今回の目標エンジン動作点が示すエンジン回転速度Neが前記所定の変化量ΔNeだけ増加されて新たな目標エンジン動作点が決定される。
また、前述の実施例の図10に示すフローチャートにおいて、SA3からSA10までのステップを備えず、SA2の次にSA11が実行されるフローチャートも考え得る。
また、前述の実施例において、エンジン動作点制御部72は、動作モード判断部70によってシステム最適動作モードが選択されていると判断された場合には、総合効率ηTOTALが大きくなる側にエンジン動作点をずらすが、その総合効率ηTOTALに替えて、前記電気経路と前記機械経路とにおいてエンジン12からの動力が伝達されるときの動力伝達損失LSSCVTとエンジン12の損失LSSENG(以下、エンジン損失LSSENGという)とを合計した合計損失LSSTOTALに基づいて、エンジン動作点をずらすものであっても差し支えない。具体的には、その合計損失LSSTOTALが小さくなる側に、エンジン動作点をずらすものであっても差し支えないということである。そのようにしたとすれば、エンジン動作点が上記合計損失LSSTOTALに応じて変更されない場合と比較して、車両用駆動装置10全体として効率アップすなわちその合計損失LSSTOTALの低減が図られ、車両の燃費を向上させることが可能である。上記動力伝達損失LSSCVTは、無段変速機60に入力される動力すなわちエンジン出力Peと前記合成伝達効率ηCVTとに基づいて算出でき、上記エンジン損失LSSENGは、エンジン12への供給燃料が完全に燃焼した場合の単位時間当たりの低位発熱量である完全燃焼時エンジン出力PeCMPと前記エンジン効率ηENGとに基づいて算出できる。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。