JP2013163199A - 鋳造用塗型剤およびそれを用いた鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋳造用塗型剤を、99.95%以上の純度(望ましくは99.99%以上)を有する高純度アルミナからなる平均粒径1.0μm以下の微粉末を分散媒に分散させたスラリーとした。またその高純度アルミナ微粉末は、アルミニウムアルコキシドの分解粉末であることが望ましい。
【選択図】なし
Description
ここで、従来のアルミナ系塗型剤に用いるアルミナの製法としては、前述のように一般にはバイヤー法が適用されている。バイヤー法は、ボーキサイトを苛性ソーダ(NaOH)溶液で加熱・溶解させて、アルミン酸ナトリウムとし、ろ過後、放置して得られる水酸化アルミニウムの沈殿物を、水洗し、さらに1200℃以上で焼成してアルミナとする方法である。このようなバイヤー法によるアルミナは、その製造プロセス中で使用したNa成分が不可避的に多量に混入(Na2O3として0.05〜0.4%程度、Naとして0.01〜0.1%程度)しており、またNa以外の不純物成分もかなりの量で含まれており、その純度は、高くてもせいぜい99.5〜99.8%程度となっている。
一方、純粋なアルミナの融点は約2020℃であるが、不純物成分、特にNaが含まれれば、その融点は下がってしまう。そのため前述のような99.8%程度以下の純度で、Na成分をかなりの量で含むアルミナを用いた塗型剤では、鉄系材料やNi基合金などの高融点材料を鋳込む際に、塗型剤を構成しているアルミナ粉末粒子の一部が溶融を開始してしまうことがある。そしてその場合には、鋳物の焼き付きを防止できなくなるばかりでなく、むしろ焼き付きを助長してしまうことが判明した。
なお本明細書においてアルミナの純度とは、重量で測定したAl2O3の割合を意味するものとする。
分散剤を添加する場合の添加量は、分散剤と分散媒の種類および高純度アルミナ微粉末の濃度に応じて適切に定めればよいが、通常は、高純度アルミナ微粉末100重量部に対し、分散剤が0.1〜1重量部程度の範囲内となるように定めることが望ましい。
ここでアルミニウムアルコキシドは、アルキル基をRとし、一般式 Al(OR)Xで表される。アルキル基Rは特に限定されないが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ブチル基、イソブチル基、t―ブチル基、s−ブチル基などがあり、これらのうちでも特にアルキル基としてイソプロピル基を用いて、アルミニウムイソプロポキシドとしたものを使用することが好ましい。
ここで、鋳造対象金属は、鋳鉄、鋳鋼などの鉄系材料、その他、Ni基合金、Co基合金などの超合金、さらには銅や銅合金などの非鉄金属材料であっても良く、特に限定されるものではない。
また鋳型の材質も特に限定しないが、本発明の鋳造用塗型剤は、ダイキャスト用金型鋳型やセラミックモールドなどと比較して焼き付きが発生しやすい砂型に適用した場合に、最も効果的である。
そして本発明の塗型剤の場合、スラリーを構成するアルミナ微粉末として高純度のアルミナが用いられているため、既に述べたような不純物成分、特にNaに起因するアルミナの融点の大幅な低下が抑制され、そのため高融点金属を鋳込む場合でも、確実かつ安定して焼き付きの発生を防止することができ、それに加えて、アルミナ微粉末が著しく微細であることによって、塗型剤の塗布、乾燥後のアルミナ微粉末層の粒子間に溶湯が差し込まれて、溶湯が鋳型表面に達してしまうことも有効に防止されて、焼き付き防止効果を確実に発揮することができる。
アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得られた99.99%以上の超高純度のアルミナの微粉末塊(比表面積10m2/g)を、ポリカルボン酸を分散剤として分散処理して、純度が99.99%以上で平均粒径が0.3μmの高純度アルミナ微粉末を得た。その高純度アルミナ微粉末100重量部に対し、分散剤としてのポリカルボン酸を1重量部、分散媒としての水を100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルに入れ、24時間分散処理を行って、高純度アルミナ微粉末が分散した分散液(スラリー)を得た。
このような分散液(スラリー)を塗型剤として、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均50μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものはゼロであった。すなわち焼き付き不良発生率は0%であった。
この実施例2は、塗型剤の塗布手段を変更した本発明例である。
すなわち、実施例1と同様にして得た分散液(スラリー)を塗型剤とし、刷毛を用いて、鋳型表面に、50〜150μm厚で塗布し、乾燥後、実施例1と同様に50個のサンプルについて鋳込み試験を行なった。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均100μmであった。
鋳込み試験の結果、50個のサンプル中、焼き付き不良の発生はゼロであった。
この実施例3は、高純度アルミナ微粉末に対する分散媒および分散剤を、実施例1とは異ならしめた本発明例である。
すなわち、実施例1と同様にして得られた99.99%以上の純度の平均粒径0.3μmの高純度アルミナ微粉末100重量部に対し、分散剤としてのジアミンを1重量部、分散媒としての酢酸エチルを100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルを用いて24時間混練して、超高純度アルミナが分散した分散液(スラリー)を形成した。
このような分散液を塗型剤として、実施例1と同様に、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均50μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものはゼロであった。すなわち焼き付き不良発生率は0%であった。
この実施例4は、高純度アルミナ微粉末に対する分散媒および分散剤を実施例1、実施例3とは異ならしめた本発明例である。
すなわち、実施例1と同様にして得られた99.99%以上の純度の平均粒径0.3μmの高純度アルミナ微粉末100重量部に対し、ポリエチレンイミン系分散剤を1重量部、分散媒としてのエタノールを100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルを用いて24時間分散処理して、超高純度アルミナが分散した分散液(スラリー)を形成した。
このような分散液を塗型剤として、実施例1と同様に、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均75μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものはゼロであった。すなわち焼き付き不良発生率は0%であった。
この実施例5は、高純度アルミナ微粉末に対する分散媒(エタノール)の割合を実施例5の場合の2倍とした本発明例である。
すなわち、実施例1と同様にして得られた99.99%以上の純度の平均粒径0.3μmの高純度アルミナ微粉末に対し、ポリエチレンイミン系分散剤を1重量部、分散媒としてのエタノールを200重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルを用いて24時間分散処理して、超高純度アルミナが分散した分散液(スラリー)を形成した。
このような分散液を塗型剤として、実施例4と同様に、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜150μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均100μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものはゼロであった。すなわち焼き付き不良発生率は0%であり、この結果から、分散液(スラリー)としてアルミナ微粉末の割合がかなりの程度まで少ないもの(薄いもの)を用いても、焼き付き防止効果が発揮されることが確認された。
この実施例6は、高純度アルミナ微粉末として、実施例1で用いたアルミニウムイソプロポキシド分解粉末よりも純度が低いが、本発明で規定する99.95%以上の純度を有する明礬法由来のアルミナ微粉末を用いた本発明例である。このアルミナ微粉末は、純度がほぼ99.99%であり、Na分を約0.0008重量%含有している。またその粒径は、平均で0.8μmである。
このようなアルミナ微粉末を用いて、実施例1と同様に、アルミナ微粉末100重量部に対し、分散剤としてのポリカルボン酸を1重量部、分散媒としての水を100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルに入れ、24時間分散処理を行って、高純度アルミナ微粉末が分散した分散液(スラリー)を得た。
このような分散液を塗型剤として、実施例1と同様に、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均100μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものは2個であった。すなわち焼き付き不良発生率は4%であった。このような結果から、明礬法由来の99.99%程度の純度のアルミナ微粉末を用いた場合でも、かなりの焼き付き防止効果が得られるものの、実施例1に示したような、アルミニウムイソプロポキシドの分解による99.99%以上の超稿純度アルミナ微粉末を使用した場合と比較すれば、焼き付き防止効果が劣ることが確認された。
この比較例1は、塗型剤を用いずに鋳込み試験をおこなった比較例である。
すなわち実施例1で用いたものと同種、同形状の砂型鋳型を用い、砂型表面に特に塗型剤を塗布せずに、実施例1と同様に50個のサンプルについて鋳込み試験を実施した。その結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものは10個であった。すなわち焼き付き不良発生率は20%であった。
この比較例2は、塗型剤として従来から使用されているアルミナ分散液、すなわちバイヤー法によって得られた純度が99.8%程度の平均粒径5μmのアルミナ粉末のスラリーを用いて鋳込み試験を行なった従来例である。なおこのアルミナ粉末は、Na分を、約0.1%含有している。
上記のアルミナ粉末を、分散媒としてのエタノールに分散させて塗型剤とした。なおアルミナとエタノールとの配合比は、重量比でアルミナ100重量部に対しエタノール500重量部とした。
そのアルミナ粉末塗型剤を、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記アルミナ粉末塗型剤をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面のアルミナ粉末層の厚みは、平均100μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものは5個であった。すなわち焼き付き不良発生率は10%であった。
この比較例3は、低純度ではあるが微細なアルミナ粉末を使用した比較例である。
すなわち、比較例2で使用したアルミナ粉末と同様な明礬法由来のアルミナ粉末(純度99.98%、平均粒径5μm)を、さらにビーズミルによって粉砕し、平均粒径0.5μmのアルミナ微粉末とした。
そして実施例1と同様に、アルミナ微粉末100重量部に対し、分散剤としてのポリカルボン酸を1重量部、分散媒としての水を100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルに入れ、24時間分散処理を行って、低純度アルミナ微粉末が分散した分散液(スラリー)を得た。
このような分散液(スラリー)を塗型剤として、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の低純度アルミナ微粉末層の厚みは、平均100μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものは5個であった。すなわち焼き付き不良発生率は10%であった。この結果から、単にアルミナを平均粒径1.0μm以下に微粉末化しただけでは、充分な焼き付き防止効果が得られないことが確認された。
この比較例4は、高純度ではあるが粗大なアルミナ粉末を使用した比較例である。
すなわち、アルミニウムイソプロポキシドを加水分解して得られた99.99%以上の超高純度のアルミナの粉末塊(比表面積10m2/g)を、ポリカルボン酸を分散剤として分散処理して、純度が99.99%以上で平均粒径が2.0μm(???)の高純度アルミナ粉末を得た。その高純度アルミナ粉末100重量部に対し、分散剤としてのポリカルボン酸を1重量部、分散媒としての水を100重量部の割合で混合し、ジルコニアボールを粉砕媒体として、ボールミルに入れ、24時間分散処理を行って、高純度アルミナ粉末が分散した分散液(スラリー)を得た。
このような分散液(スラリー)を塗型剤として、砂型鋳型を用いての自動車用鋳鉄部品の製造に適用した。すなわち、砂型表面に前記分散液をスプレー塗布して、厚み50〜100μmで塗布層を形成し、乾燥後、注湯温度1550℃で鋳鉄溶湯を鋳込んだ。なお乾燥後の鋳型表面の高純度アルミナ粉末層の厚みは、平均100μmであった。
このような鋳込み試験を50個のサンプルについて実施した結果、50サンプル中、焼き付きが発生したものは5個であった。すなわち焼き付き不良発生率は10%であった。この結果から、高純度のアルミナを用いても、粗大なアルミナ粉末では、充分な焼き付き防止効果が得られないことが確認された。
さらに本発明の実施例1〜6のうちでも、アルミナ微粉末としてアルミニウムイソプロポキシドの分解による超高純度微粉末を用いた実施例1〜5では、明礬法によって得られた若干純度が低いアルミナ微粉末を用いた場合(実施例6)よりも、確実に焼き付きを防止できることが確認された。
Claims (8)
- 99.95%以上の純度の高純度アルミナからなる平均粒径1.0μm以下の微粉末を分散媒に分散させたスラリーからなることを特徴とする鋳造用塗型剤。
- 前記高純度アルミナとして、99.99%以上の純度のものが用いられていることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用塗型剤。
- 前記高純度アルミナの微粉末が、アルミニウムアルコキシドの分解微粉末であることを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載の鋳造用塗型剤。
- 前記アルミニウムアルコキシドの分解微粉末が、アルミニウムイソプロポキシドの分解微粉末であることを特徴とする請求項3に記載の鋳造用塗型剤。
- 前記高純度アルミナ微粉末と分散媒との割合が、高純度アルミナ微粉末100重量部に対し、分散媒が50〜300重量部であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの請求項に記載の鋳造用塗型剤。
- 前記分散媒が、水、酢酸エチル、エタノール、アセトン、ヘキサン、キシレン、トルエン、メタノールのうちから選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの請求項に記載の鋳造用塗型剤。
- 請求項1〜請求項6のいずれかの請求項に記載の鋳造用塗型剤を、鋳型における鋳造すべき金属の溶湯に接する面に塗布した後、その塗布層を乾燥させて、高純度アルミナ微粉末層を乾燥後の平均厚みで20〜200μmとなるように形成し、その後に鋳造すべき金属の溶湯を鋳型内に注湯することを特徴とする鋳造方法。
- 前記鋳型が、砂型鋳型であることを特徴とする請求項7に記載の鋳造方法。
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JP2012027194A JP2013163199A (ja) | 2012-02-10 | 2012-02-10 | 鋳造用塗型剤およびそれを用いた鋳造方法 |
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CN108699705A (zh) * | 2015-12-29 | 2018-10-23 | 莫门蒂夫性能材料股份有限公司 | 用于金属加工的氮化硼涂层及其使用方法 |
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JP2001150095A (ja) * | 1999-11-25 | 2001-06-05 | Kobe Steel Ltd | 厚肉大型鋳鋼品及びその鋳型 |
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