JP2013162166A - 周波数オフセット推定装置、周波数オフセット推定方法およびデジタルコヒーレント受信器 - Google Patents

周波数オフセット推定装置、周波数オフセット推定方法およびデジタルコヒーレント受信器 Download PDF

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Abstract

【課題】乗算および除算を用いることなく周波数オフセットを推定する。
【解決手段】周波数オフセット推定部14は、連続シンボルに対応する信号の偏角θの位相回転量Δφを算出する位相差分算出部23と、周波数オフセット瞬時値ωsを算出する周波数オフセット算出部24と、周波数オフセット瞬時値ωsのノイズを除去して周波数オフセット推定値ωを出力するノイズ除去部25とを備え、周波数オフセット算出部24は、位相回転量Δφから過去の周波数オフセット推定値ωを減算した結果d1を出力する減算器241と、減算結果d1に加算値a2を加算した結果d2を出力する加算器242と、加算結果d2の第1範囲r2の下位ビットをクリアした演算結果d3を出力するビットクリア演算器243と、位相回転量Δφから演算結果d3を減算した結果を周波数オフセット瞬時値ωsとして出力する減算器244とを有する。
【選択図】図3

Description

本発明は、周波数オフセット推定装置、周波数オフセット推定方法およびデジタルコヒーレント受信器に関するものである。
近年、幹線系の長距離大容量通信において、従来からのDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing、高密度波長分割多重方式)に加えてデジタルコヒーレント伝送方式が用いられるようになりつつある。デジタルコヒーレント伝送方式とは、多値位相変調と電気段でのデジタル信号処理とを組み合わせた伝送方式である。また、100Gbps伝送(1chあたり)においては、偏波多重QPSK(Dual Polarization Quadrature Phase Shift Keying:DP-QPSK)方式が有望とされている。
デジタルコヒーレント受信器では、例えばQPSK変調された光信号を受信し、光信号をX偏波およびY偏波に分離する。そして、各偏波成分とローカル光源の同相成分および直交成分とを干渉させることにより、同相干渉成分(I成分)および直交干渉成分(Q成分)を検波する。このとき、送信側の光源周波数(すなわち、信号光の光源周波数)とローカル光源の周波数とが完全に一致している場合、ローカル光の位相を基準として光信号の位相変化がI成分およびQ成分の極座標位置に対応した4値の位相として観測される。一方、送信側の光源周波数とローカル光源の周波数とがずれている場合、この4値の位相は時間とともに変動する。デジタルコヒーレント受信器では、この周波数のずれ(周波数オフセット)による位相変動をデジタル信号処理によって検出し、周波数オフセットを補償する。
下記の特許文献1には、多値位相変調デジタルコヒーレント伝送方式の受信器の周波数オフセット検出装置が開示されている。この周波数オフセット検出装置では、互いに隣接するシンボルの偏角差分を算出し、算出された偏角差分からループフィルタの出力を差し引く。そして、差し引いた結果を量子化器によって所定の角度範囲にまるめ込み、偏角差分からまるめ込まれた結果を差し引き、その結果をループフィルタによって平均化することによって周波数オフセット成分を推定している。
特開2009−253971号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載された周波数オフセット検出装置では、乗算と除算とが行われるので、回路規模が大きくなるとともに、発熱量が大きくなる。
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、乗算および除算を用いることなく周波数オフセットを推定可能な周波数オフセット推定装置、周波数オフセット推定方法およびデジタルコヒーレント受信器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る周波数オフセット推定装置は、多値PSK変調方式における送受信光源間の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定装置であって、連続するシンボルの偏角の位相差分をデジタル列として算出する位相差分算出部と、位相差分算出部によって算出された位相差分に基づいて周波数オフセット瞬時値を算出する周波数オフセット算出部と、周波数オフセット算出部によって算出された周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去して周波数オフセット推定値を出力するノイズ除去部と、を備える。また、周波数オフセット算出部は、位相差分から周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第1減算器と、第1減算器により出力された減算結果に第1加算値を加算し、その加算結果を出力する第1加算器と、第1加算器により出力された加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第1論理演算器と、位相差分から第1論理演算器により出力された演算結果を減算し、その減算結果を周波数オフセット瞬時値として出力する第2減算器と、を有する。ここで、周波数オフセット基準値は、過去に出力された周波数オフセット推定値である。
この周波数オフセット推定装置においては、連続するシンボルの偏角の位相差分から過去に出力された周波数オフセット推定値を減算した減算結果に、第1加算値を加算して、その加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行う。そして、その論理演算結果を位相差分から減算することにより周波数オフセット瞬時値を算出し、その周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去することにより周波数オフセット推定値を算出している。このため、周波数オフセット推定装置では、乗算および除算を行うことなく、論理演算および加減算だけで偏角から周波数オフセット推定値を算出できる。その結果、周波数オフセット推定装置の回路規模を抑えることが可能となるともに、消費電力を抑えることが可能となる。
また、偏角を所定の範囲にラップする偏角ラップ処理部をさらに備えてもよく、位相差分算出部は、偏角ラップ処理部によってラップされた偏角に基づいて、位相差分を算出してもよい。この場合、偏角ラップ処理部を設けることにより、偏角の取り得る角度範囲を狭くすることができる。このため、演算のダイナミックレンジを小さくでき、小数点より上の桁数を少なくできる。その結果、有限語長の多くを小数点以下に割り当てることができ、周波数オフセット推定値の計算精度の向上が可能となる。
偏角ラップ処理部は、偏角に第2加算値を加算し、その加算結果を出力する第2加算器と、第2加算器により出力された加算結果のデジタル列の第2範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第2論理演算器と、偏角から第2論理演算器により出力された演算結果を減算し、その減算結果をラップされた偏角として出力する第3減算器と、を有してもよい。この場合、乗算および除算を行うことなく、論理演算および加減算を行うことにより、偏角のラップ処理を行うことができる。したがって、偏角ラップ処理部の回路規模を抑えることができるとともに、消費電力を抑えることができる。
ノイズ除去部は、周波数オフセット算出部によって算出された周波数オフセット瞬時値をN桁シフト演算する第1シフト演算器と、周波数オフセット基準値をN桁シフト演算する第2シフト演算器と、周波数オフセット基準値から第2シフト演算器によってシフト演算された周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第4減算器と、第1シフト演算器によってシフト演算された周波数オフセット瞬時値と第4減算器によって出力された減算結果とを加算し、その加算結果を周波数オフセット推定値として出力する第3加算器と、を有してもよい。この場合、乗算および除算を行うことなく、シフト演算および加減算のみでローパスフィルタ処理を行うことができる。このため、ノイズ除去部の回路規模を大きくすることなくノイズ抑圧性を向上することが可能となる。
位相差分算出部と、周波数オフセット算出部と、ノイズ除去部とは、パイプライン構成であってもよい。この場合、周波数オフセット推定装置は、位相差分算出部の処理と、周波数オフセット算出部の処理と、ノイズ除去部の処理とを複数のサイクルに分割し、各処理を並列に実行することができる。このため、1サイクル当たりのスループットを向上することが可能となる。
第1加算値および第1範囲を設定するコントローラをさらに備えてもよい。この場合、コントローラを備えることによって、周波数オフセット推定値の角度範囲を適切な範囲に変更することができ、無変調のCW光および任意の変調方式の光信号に対応可能となる。
コントローラは、周波数オフセット推定値に基づいて、周波数オフセット基準値を設定してもよい。この場合、ノイズ除去部が周波数オフセット推定値を適切な値に収斂でき、以降の周波数オフセット推定が可能となる。
多値PSK変調方式は、1シンボルに対して2π/Mの角度範囲を割り当てる変調方式であって、第1加算値はπ/Mに設定され、第1範囲はπ/M以下に設定されてもよい。この場合、周波数オフセット推定値は、過去に出力された周波数オフセット推定値を中心として±π/Mの角度範囲にラップされる。多値PSK変調方式(M−PSK変調方式)では、2π/Mごとにシンボルが割り当てられるので、周波数オフセット推定値を測定可能な角度範囲は2π/Mである。過去に出力された周波数オフセット推定値を中心として、この角度範囲を割り当てることにより、周波数オフセット推定値の時間的な変化が不連続となるのを抑制できる。
本発明に係るデジタルコヒーレント受信器は、上記周波数オフセット推定装置を備えることを特徴とする。本発明のデジタルコヒーレント受信器においては、乗算および除算を用いることなく周波数オフセットの推定が可能となる。
本発明に係る周波数オフセット推定方法は、多値PSK変調方式における送受信光源間の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定方法であって、連続するシンボルの偏角の位相差分をデジタル列として算出する位相差分算出ステップと、位相差分算出ステップにおいて算出された位相差分に基づいて周波数オフセット瞬時値を算出する周波数オフセット算出ステップと、周波数オフセット算出ステップにおいて算出された周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去して周波数オフセット推定値を出力するノイズ除去ステップと、を備える。また、周波数オフセット算出ステップは、位相差分から周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第1減算ステップと、第1減算ステップにおいて出力された減算結果に第1加算値を加算し、その加算結果を出力する第1加算ステップと、第1加算ステップにおいて出力された加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第1論理演算ステップと、第1論理演算ステップにおいて出力された演算結果を位相差分から減算し、その減算結果を周波数オフセット瞬時値として出力する第2減算ステップと、を有する。ここで、周波数オフセット基準値は、過去に出力された周波数オフセット推定値である。
本発明の周波数オフセット推定方法においては、連続するシンボルの偏角の位相差分から過去に出力された周波数オフセット推定値を減算した減算結果に、第1加算値を加算して、その加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行う。そして、その論理演算結果を位相差分から減算することにより周波数オフセット瞬時値を算出し、その周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去することにより周波数オフセット推定値を算出している。このため、この周波数オフセット推定方法では、乗算および除算を行うことなく、論理演算および加減算だけで偏角から周波数オフセット推定値を算出できる。その結果、周波数オフセット推定値をより高速に算出することが可能となる。
本発明によれば、乗算および除算を用いることなく周波数オフセットを推定できる。
デジタルコヒーレント受信器の概略構成図である。 図1のデジタル信号処理部の機能ブロック図である。 第1実施形態に係る周波数オフセット推定装置の概略構成図である。 図3の周波数オフセット推定装置の構成例を示す図である。 図3の周波数オフセット推定装置の周波数オフセット推定処理を示すフローチャートである。 図3の周波数オフセット推定装置の第1変形例を示す図である。 図3の周波数オフセット推定装置の第2変形例を示す図である。
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、本実施形態に係るデジタルコヒーレント受信器の構成概略図である。デジタルコヒーレント受信器1は、例えば偏波多重QPSK変調された光信号(DP−QPSK信号)を受信し、元のシンボルを抽出する装置である。図1に示すように、デジタルコヒーレント受信器1は、ローカル光源2と、コヒーレント受信器3と、AD変換部4と、デジタル信号処理部5と、を備えている。ローカル光源2は、例えばレーザ発振器であって、デジタルコヒーレント受信器1が受信した光信号のキャリア周波数と略同じ周波数のローカル光(以下、「LO光」という。)を生成する。ローカル光源2は、LO光をコヒーレント受信器3に供給する。
コヒーレント受信器3は、受信した光信号を二つの直交偏波成分(X偏波、Y偏波)に分離する。そして、コヒーレント受信器3は、光位相ハイブリッド回路等によって、ローカル光源2から受信したLO光の同相成分および直交成分と、各偏波成分とを干渉させ、同相干渉成分(I成分)および直交干渉成分(Q成分)を検波する。さらに、コヒーレント受信器3は、フォトダイオード等の光電変換回路によって、各偏波のI成分およびQ成分をそれぞれ電気信号に変換し、X−I信号、X−Q信号、Y−I信号およびY−Q信号として出力する。
AD変換部4は、コヒーレント受信器3によって出力されたアナログ信号であるX−I信号、X−Q信号、Y−I信号およびY−Q信号をサンプリングし、各信号をデジタル信号であるXI信号、XQ信号、YI信号およびYQ信号に変換する。AD変換部4は、例えば各信号について1シンボルあたり2サンプル出力する。すなわち、シンボル周期(1シンボル時間)TsymをT(秒)とすると、AD変換部4のサンプリング周期Tsは、T/2(秒)である。このAD変換部4は、複数のAD変換器41で構成されている。デジタル信号処理部5は、例えば信号処理演算を高速に実行する特定用途IC(ASIC)であって、AD変換部4によってサンプリングされたXI信号、XQ信号、YI信号およびYQ信号に対して、後述のデジタル信号処理を行う。
図2は、デジタル信号処理部5の機能ブロックを示す図である。図2に示すように、デジタル信号処理部5は、波長分散補償部11と、クロックリカバリ部12と、偏波分離・PMD補償部13と、周波数オフセット推定部14と、周波数オフセット補償部15と、位相オフセット推定・補償部16と、シンボル判定部17と、を備えている。
波長分散補償部11は、AD変換部4から受信した各デジタル信号に対して波長分散を補償する。この波長分散は、光ファイバ等の光伝送路において光信号の波長成分毎に異なる伝播時間が生じることにより発生し、時間的に変動しない線形の波形歪である。波長分散補償部11は、例えばタップ係数を固定したイコライザであって、波形歪の逆特性を有する。
クロックリカバリ部12は、波長分散補償部11から出力されたデジタル信号に基づいてクロックタイミングを抽出する。クロックリカバリ部12は、例えば、Square法、CDR(Clock Data Recovery)回路等によりクロック信号を再生する。
偏波分離・PMD補償部13は、クロックリカバリ部12から出力されたデジタル信号のX偏波成分XinおよびY偏波成分Yinに対して偏波分離、偏波モード分散(Polarization Mode Dispersion:PMD)の補償等の等化処理を行い、X側出力Xout(=XI+jXQ)およびY側出力Yout(=YI+jYQ)として、周波数オフセット推定部14および周波数オフセット補償部15に出力する。このPMDは、光ファイバ等の光伝送路において偏波成分毎に異なる伝播時間を生じることにより発生する。偏波分離・PMD補償部13は、例えばバタフライ型FIR(Finite Impulse Response)適応フィルタを用い、CMA(constant modulus algorithm)法等により適応フィルタのタップ係数を適応等化することによって、偏波分離、PMD補償等の線形歪補償を行う。
周波数オフセット推定部14は、送信器の光源とデジタルコヒーレント受信器1のローカル光源2との周波数(光の波長に対応)のずれを推定する。すなわち、周波数オフセット推定部14は、送受信光源間の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定装置である。詳細については、後述する。
周波数オフセット補償部15は、周波数オフセット推定部14によって推定された周波数オフセット推定値ωに基づいて、偏波分離・PMD補償部13から出力されたデジタル信号(X側出力XoutおよびY側出力Yout)の偏角θ(X側偏角θxおよびY側偏角θy)に対し、周波数オフセットに起因する位相回転を逆回転補正し、周波数補償出力θf(X側出力θfxおよびY側出力θfy)として位相オフセット推定・補償部16に出力する。周波数オフセット補償部15は、例えば、補償対象のデジタル信号から周波数オフセット推定値ωを減算することによって周波数オフセットの補償を行う。
位相オフセット推定・補償部16は、周波数オフセット補償部15によって周波数オフセット補償された周波数補償出力θfに対して、望ましいシンボル配置からの位相のずれ量(位相オフセット量)を推定する。そして、位相オフセット推定・補償部16は、推定した位相オフセットに基づいて、周波数補償出力θfを補正し、位相補償出力θp(X側出力θpxおよびY側出力θpy)としてシンボル判定部17に出力する。
シンボル判定部17は、位相オフセット推定・補償部16から出力された位相補償出力θpに基づいて、シンボルの値を判定する。
ここで、周波数オフセット推定部14(周波数オフセット推定装置)について、詳細に説明する。図3は、周波数オフセット推定部14の概略構成図である。図3に示すように、周波数オフセット推定部14は、偏角算出部21と、偏角ラップ処理部22と、位相差分算出部23と、周波数オフセット算出部24と、ノイズ除去部25と、を備えている。
偏角算出部21は、偏波分離・PMD補償部13から出力された複素信号Xout(=XI+jXQ)およびYout(=YI+jYQ)のそれぞれについて、偏角θ(=Arg−1(Q/I)、0≦θ<2π)を算出する。以下の処理は、X側偏角θxおよびY側偏角θyのそれぞれについて行われるが、特に区別する必要がない限り偏角θとして説明する。偏角算出部21は、算出した偏角θを、特定のビットが位相πに対応するように規格化(固定小数点演算)されたmビットのビット列として偏角ラップ処理部22および周波数オフセット補償部15に出力する。
以下の説明では、α×π[rad]をmビットのビット列で表記したものを、「(αの2進数表記)(bin)」とし、位相π[rad]に相当するビットの右下に仮想的に小数点を付して説明を行う。また、α×π[rad]を、単に「α(dec)」と表記する場合がある。また、各信号について、n番目のシンボルに対応する信号を表す必要がある場合には、(n)を付す。例えば、n番目のシンボルに対応する信号の偏角θは、偏角θ(n)と表される。また、角度の単位は特に断りがない限りラジアン[rad]とする。
偏角ラップ処理部22は、偏角算出部21から出力された偏角θを所定の角度範囲に置き換える。偏角ラップ処理部22は、偏角θが取り得る角度範囲(0以上2π未満)よりも狭い角度範囲にラップし、ラップした偏角φを位相差分算出部23に出力する。この偏角ラップ処理部22は、加算器221(第2加算器)と、ビットクリア演算器222(第2論理演算器)と、減算器223(第3減算器)とを備えている。加算器221は、偏角θに加算値a1(第2加算値)を加算し、その加算結果c1をビットクリア演算器222に出力する。
ビットクリア演算器222は、加算結果c1のビット範囲r1(第2範囲)の下位ビットをクリアする演算を行う。ビットクリア演算器222は、例えば論理積演算器であって、一方の入力に加算結果c1を入力し、他方の入力にビット列b1を入力する。このビット列b1は、上位(m−s1)ビットは1に設定され、下位s1ビットは0に設定されたmビットのビット列である。ビットクリア演算器222は、加算結果c1とビット列b1とをビット単位で論理積演算を行い、その演算結果c2を減算器223に出力する。演算結果c2は、以下の式(1)によって示される。なお、値β1は、上位(m−s1)ビットの最下位ビットが示す値を意味する。また、INT関数は、指定値の小数値部分を切り捨てて整数にするための関数である。この演算結果c2は、偏角θを加算値a1×πオフセットしてから値β1×πで割り算した商に値β1×πを乗じたものに対応する。
c2=INT{(θ+a1×π)/(β1×π)}×β1×π…(1)
減算器223は、偏角θから演算結果c2を減算し、その減算結果を偏角φとして出力する。この偏角ラップ処理部22によって算出される偏角φは、以下の式(2)によって示される。偏角ラップ処理部22では、加算器221、ビットクリア演算器222および減算器223によって、加算値a1を0から減算した値を下限値とし、上位(m−s1)ビットの最下位ビットが示す値β1の角度範囲に偏角θがラップされる。すなわち、偏角θは、−a1×π以上、(−a1+β1)×π未満の範囲の値を取り得る偏角φに置き換えられる。
φ=θ-c2
=θ-INT{(θ+a1×π)/(β1×π)}×β1×π
=mod(θ+a1×π,β1×π)-a1×π…(2)
例えば、デジタルコヒーレント受信器1がQPSK変調された光信号を受信する場合、加算値a1は000.0100000(bin)に設定され、ビット列b1は111.10000(bin)に設定される。このように設定することにより、偏角θは、−π/4以上π/4未満の範囲を取り得る偏角φにラップされる。デジタルコヒーレント受信器1がBPSK変調された光信号を受信する場合、加算値a1は000.1000000(bin)に設定され、ビット列b1は111.00000(bin)に設定される。このように設定することにより、偏角θは、−π/2以上π/2未満の範囲を取り得る偏角φにラップされる。デジタルコヒーレント受信器1が無変調のCW(Continuous Wave)光を受信する場合、加算値a1は0(bin)に設定され、ビット列b1は0(bin)に設定される。このように設定することにより、偏角θは、−π以上π未満の範囲を取り得る偏角φにラップされる。
位相差分算出部23は、偏角ラップ処理部22から出力された偏角φに基づいて、シンボル周期Tsymあたりの位相回転量Δφ(位相差分)を算出し、位相回転量Δφを周波数オフセット算出部24に出力する。この位相差分算出部23は、遅延回路231と、減算器232と、を備えている。遅延回路231は、偏角φをシンボル周期Tsymだけ遅延する。減算器232は、偏角ラップ処理部22から出力された偏角φから遅延回路231によって遅延された偏角φを減算する。この遅延回路231および減算器232によって、n−1番目のシンボルに対応する偏角φ(n−1)とn番目のシンボルに対応する偏角φ(n)との差分が算出される。すなわち、遅延回路231の遅延時間であるシンボル周期Tsymあたりの位相回転量Δφ(n)が算出される。
周波数オフセット算出部24は、位相差分算出部23から出力された位相回転量Δφに基づいて、周波数オフセット瞬時値ωsを算出し、周波数オフセット瞬時値ωsをノイズ除去部25に出力する。具体的に説明すると、周波数オフセット算出部24は、減算器241(第1減算器)と、加算器242(第1加算器)と、ビットクリア演算器243(第1論理演算器)と、減算器244(第2減算器)と、を備えている。減算器241は、後述するノイズ除去部25から出力された周波数オフセット基準値ωcを位相回転量Δφから減算し、その減算結果d1を加算器242に出力する。この周波数オフセット基準値ωcは、後述するように、例えば過去に周波数オフセット算出部24によって算出された周波数オフセット推定値ωである。加算器242は、減算結果d1に加算値a2(第1加算値)を加算し、その加算結果d2をビットクリア演算器243に出力する。
ビットクリア演算器243は、加算結果d2のビット範囲r2(第1範囲)の下位ビットをクリアする演算を行う。ビットクリア演算器243は、例えば論理積演算器であって、一方の入力に加算結果d2を入力し、他方の入力にビット列b2を入力する。このビット列b2は、上位(m−s2)ビットは1に設定され、下位s2ビットは0に設定されたmビットのビット列である。ビットクリア演算器243は、加算結果d2とビット列b2とをビット単位で論理積演算を行い、その演算結果d3を減算器244に出力する。演算結果d3は、以下の式(3)によって示される。なお、値β2は、上位(m−s2)ビットの最下位ビットが示す値を意味する。この演算結果d3は、減算結果d1を加算値a2×πオフセットしてから値β2×πで割り算した商に値β2×πを乗じたものに対応する。
d3=INT{(Δφ-ωc+a2×π)/(β2×π)}×β2×π…(3)
減算器244は、位相回転量Δφから演算結果d3を減算し、その減算結果を周波数オフセット瞬時値ωsとして出力する。この周波数オフセット算出部24によって算出される周波数オフセット瞬時値ωsは、以下の式(4)によって示される。周波数オフセット算出部24では、減算器241、加算器242、ビットクリア演算器243および減算器244によって、位相回転量Δφから値β2×πの整数倍のオフセットが除去され、周波数オフセット基準値ωcから加算値a2×πを減算した値を下限値とし、値β2の角度範囲に位相回転量Δφがラップされる。すなわち、位相回転量Δφは、周波数オフセット基準値ωc−加算値a2×π以上、周波数オフセット基準値ωc−加算値a2×π+値β2×π未満の範囲の値を取り得る周波数オフセット瞬時値ωsに置き換えられる。
ωs=Δφ-d3
=Δφ-INT{(Δφ-ωc+a2×π)/(β2×π)}×β2×π
=mod(Δφ-ωc+a2×π,β2×π)-a2×π+ωc…(4)
ここで、ビット列b2は、値β2によって示される値が、受信した光信号の変調方式によって1シンボルに割り当てられている角度範囲に対応するように設定されたビット列である。また、加算値a2は、値β2の半分に設定される。例えば、QPSK変調された光信号の1シンボルあたりの角度範囲はπ/2である。このため、デジタルコヒーレント受信器1がQPSK変調された光信号を受信する場合、加算値a2は000.0100000(bin)に設定され、ビット列b2は111.10000(bin)に設定される。このように設定することにより、周波数オフセット瞬時値ωsは、周波数オフセット基準値ωcを中心として−π/4以上π/4未満の範囲にラップされる。
BPSK変調された光信号の1シンボルあたりの角度範囲はπである。このため、デジタルコヒーレント受信器1がBPSK変調された光信号を受信する場合、加算値a2は000.1000000(bin)に設定され、ビット列b2は111.00000(bin)に設定される。このように設定することにより、周波数オフセット瞬時値ωsは、周波数オフセット基準値ωcを中心として−π/2以上π/2未満の範囲にラップされる。無変調の光信号CWの1シンボルあたりの角度範囲は2πである。このため、デジタルコヒーレント受信器1が無変調のCW光を受信する場合、加算値a2は001.0000000(bin)に設定され、ビット列b2は110.00000(bin)に設定される。このように設定することにより、周波数オフセット瞬時値ωsは、周波数オフセット基準値ωcを中心として−π以上π未満の範囲にラップされる。以上のように、多値PSK変調方式(M−PSK変調方式)では、加算値a2は1/M(dec)、ビット列b2は1/M(dec)以下のビットがクリアされたビット列に設定される。なお、Mは、1以上の整数である。
例えば受信した光信号がQPSK変調されている場合、位相回転量Δφのπ/2の整数倍を区別できないので、周波数オフセット瞬時値ωsはπ/2ごとに候補が存在することになる。これに対し、周波数オフセット算出部24では、減算器241において位相回転量Δφから周波数オフセット基準値ωcを減算することによって、周波数オフセット基準値ωcに最も近い候補を選択している。
ノイズ除去部25は、周波数オフセット算出部24から出力された周波数オフセット瞬時値ωsのノイズ成分を除去し、ノイズ成分が除去された周波数オフセット推定値ωを周波数オフセット補償部15に出力する。周波数オフセット瞬時値ωsはノイズ成分を含んでいるので、ノイズ除去部25は、このノイズ成分を抑圧するためにローパスフィルタ処理を行う。具体的に説明すると、ノイズ除去部25は、シフト演算器251(第1シフト演算器)と、遅延回路252と、シフト演算器253(第2シフト演算器)と、減算器254(第4減算器)と、加算器255(第3加算器)と、を備えている。シフト演算器251は、例えばNビット右シフト演算器であって、周波数オフセット瞬時値ωsをNビット右シフトし、その演算結果e1を加算器255に出力する。なお、Nは、1以上の整数である。
遅延回路252は、加算器255の演算結果である周波数オフセット推定値ωをシンボル周期Tsymだけ遅延し、シフト演算器253、減算器254および減算器241に出力する。なお、遅延回路252によって遅延された周波数オフセット推定値ωは、周波数オフセット基準値ωcとして減算器241に出力される。ここで、遅延回路252は、周波数オフセット推定値ωを1シンボル周期Tsym以上遅延してもよく、過去に算出した周波数オフセット推定値ωを周波数オフセット基準値ωcとして減算器241に出力する。以下の説明において、遅延された周波数オフセット推定値ωは、過去に算出された周波数オフセット推定値ωという場合もある。
シフト演算器253は、例えばNビット右シフト演算器であって、遅延回路252によって遅延された周波数オフセット推定値ωをNビット右シフトし、その演算結果e2を減算器254に出力する。減算器254は、遅延回路252によって遅延された周波数オフセット推定値ωから演算結果e2を減算し、その減算結果e3を加算器255に出力する。加算器255は、演算結果e1と演算結果e3とを加算し、その加算結果を周波数オフセット推定値ωとして出力する。このシフト演算器251、遅延回路252、シフト演算器253、減算器254および加算器255によって、以下の式(5)で示されるIIR(Infinite Impulse Response)ローパスフィルタが形成され、周波数オフセット瞬時値ωsのノイズ成分が抑制されて、周波数オフセット推定値ωが出力される。
Vout(n)=2-N×Vin(n)+(1-2-N)×Vout(n-1)…(5)
図4は、周波数オフセット推定部14の具体的な構成例を示す図である。この構成例は、QPSK変調方式に対応するものであって、加算値a1および加算値a2はそれぞれ00.01(bin)に設定され、ビットクリア演算器222およびビットクリア演算器243は、0.01(bin)以下のビットをクリアする8ビットレジスタである。また、偏角算出部21は、8ビットQ6フォーマットのビット列として偏角θを出力する。また、ノイズ除去部25のシフト演算器251およびシフト演算器253は、8ビット右シフト演算器であり、これに伴って、ノイズ除去部25は、ビット幅拡張器256、ラウンド処理部257および遅延回路258をさらに有している。その他の構成要素については、上述したとおりであるので、ここでは、ビットクリア演算器222、ビットクリア演算器243、ビット幅拡張器256、ラウンド処理部257および遅延回路258について説明する。なお、8ビットQ6フォーマットとは、8ビットのビット長で、下位6ビットが小数点以下を示すビット列を意味する。
ビットクリア演算器222は、8ビットのレジスタであって、上位ビットレジスタ222aと下位ビットレジスタ222bとから構成されている。上位ビットレジスタ222aは、3ビットのレジスタであって、加算器221の加算結果c1の上位3ビットを格納する。下位ビットレジスタ222bは、5ビットのレジスタであって、全ビットが0に設定されている。このビットクリア演算器222に格納されたビット列を演算結果c2として減算器223に出力する。
ビットクリア演算器243は、8ビットのレジスタであって、上位ビットレジスタ243aと下位ビットレジスタ243bとから構成されている。上位ビットレジスタ243aは、3ビットのレジスタであって、加算器242の加算結果d2の上位3ビットを格納する。下位ビットレジスタ243bは、5ビットのレジスタであって、全ビットが0に設定されている。このビットクリア演算器243に格納されたビット列を演算結果d3として減算器244に出力する。
ビット幅拡張器256は、周波数オフセット算出部24によって出力された周波数オフセット瞬時値ωsのビット幅を拡張する。この構成例では、ビット幅拡張器256は、周波数オフセット瞬時値ωsのビット幅を8ビットから16ビットに拡張している。具体的には、ビット幅拡張器256は、16ビットのレジスタであって、上位ビットレジスタ256aと下位ビットレジスタ256bとから構成されている。上位ビットレジスタ256aは、8ビットのレジスタであって、周波数オフセット瞬時値ωsを格納する。下位ビットレジスタ256bは、8ビットのレジスタであって、全ビットが0に設定されている。このビット幅拡張器256に格納されたビット列を演算結果e4としてシフト演算器251に出力する。
ラウンド処理部257は、加算器255によって出力された加算結果e5に対しラウンド処理を行う。具体的には、ラウンド処理部257は、16ビットのレジスタであって、上位ビットレジスタ257aと下位ビットレジスタ257bとから構成されている。上位ビットレジスタ257aは、8ビットのレジスタであって、加算結果e5の上位8ビットを格納する。下位ビットレジスタ257bは、8ビットのレジスタであって、加算結果e5の下位8ビットを格納する。そして、ラウンド処理部257は、下位ビットレジスタ257bに格納されている下位8ビットのMSB(最上位ビット)に1を加算し、加算後の上位ビットレジスタ257aに格納されている上位8ビットを周波数オフセット推定値ωとして出力する。遅延回路258は、周波数オフセット推定値ωをシンボル周期Tsymだけ遅延し、遅延した周波数オフセット推定値ωを周波数オフセット基準値ωcとして減算器241に出力する。
この構成例では、偏角ラップ処理部22によって、8ビットのビット長で小数点以下6桁の精度を確保している。また、ビットクリア演算器222およびビットクリア演算器243は、レジスタにより構成されることによって回路が簡略化される。また、シフト演算器251、遅延回路252、シフト演算器253、減算器254および加算器255は、いずれも16ビットのビット列に対して演算を行う。すなわち、フィルタ処理は16ビットのビット列に対して実行され、周波数オフセット推定値ωは、8ビットのビット列で出力される。このローパスフィルタの時定数は、255×シンボル周期Tsymである。
次に、図5を参照して、周波数オフセット推定部14の動作について説明する。図5は、周波数オフセット推定部14により実行される周波数オフセット推定処理を示すフローチャートである。この処理は、各シンボルに対応する光信号に対して行われるので、シンボル周期Tsymごとに開始される。
まず、偏角算出部21は、偏波分離・PMD補償部13から出力された複素信号XoutおよびYoutのそれぞれについて、偏角θ(X側偏角θxおよびY側偏角θy)を算出する(偏角算出ステップS01)。そして、偏角ラップ処理部22は、偏角算出ステップS01において算出された偏角θを所定の角度範囲の偏角φに置き換える(偏角ラップ処理ステップS02)。この偏角ラップ処理ステップS02では、偏角ラップ処理部22は、偏角θに所定の加算値a1を加算する。そして、偏角ラップ処理部22は、その加算結果c1の下位ビットをクリアする演算を行う。さらに、偏角ラップ処理部22は、その演算結果c2を偏角θから減算することによって偏角θを偏角φに置き換える。
次に、位相差分算出部23は、偏角ラップ処理ステップS02においてラップされた偏角φに基づいて、シンボル周期Tsymあたりの位相回転量Δφを算出する(位相差分算出ステップS03)。この位相差分算出ステップS03では、位相差分算出部23は、偏角φから1シンボル周期Tsym前の偏角φを減算することによって、位相回転量Δφを算出する。
続いて、周波数オフセット算出部24は、位相差分算出ステップS03において算出された位相回転量Δφに基づいて、周波数オフセット瞬時値ωsを算出する(周波数オフセット算出ステップS04)。この周波数オフセット算出ステップS04では、周波数オフセット算出部24は、位相回転量Δφから周波数オフセット基準値ωcを減算し(第1減算ステップ)、その減算結果d1に加算値a2を加算する(第1加算ステップ)。そして、周波数オフセット算出部24は、その加算結果d2の下位ビットをクリアする演算を行う(第1論理演算ステップ)。さらに、周波数オフセット算出部24は、下位ビットクリアの演算結果d3を位相回転量Δφから減算することによって周波数オフセット瞬時値ωsを算出する(第2減算ステップ)。
そして、ノイズ除去部25は、周波数オフセット算出ステップS04において算出された周波数オフセット瞬時値ωsのノイズ成分を除去し、周波数オフセット推定値ωを出力する(ノイズ除去ステップS05)。このノイズ除去ステップS05では、ノイズ除去部25は、周波数オフセット瞬時値ωsをNビット右シフト演算する。そして、ノイズ除去部25は、過去の周波数オフセット推定値ωから、この周波数オフセット推定値ωをNビット右シフト演算した演算結果e2を減算する。そして、ノイズ除去部25は、周波数オフセット瞬時値ωsをNビット右シフト演算した演算結果e1にこの減算結果e3を加算することによって、周波数オフセット推定値ωを算出する。
次に、デジタルコヒーレント受信器1および周波数オフセット推定部14の作用効果について説明する。上述のように、周波数オフセット推定部14では、乗算および除算を行うことなく、ビット演算および加減算を行うことにより偏角θから周波数オフセット推定値ωを算出する。このため、周波数オフセット推定部14の回路規模の増大を抑えることができるとともに、消費電力の増加を抑えることができる。また、周波数オフセット算出部24において、過去に算出された周波数オフセット推定値ωを位相回転量Δφから減算することにより、過去に算出された周波数オフセット推定値ωを中心とした角度範囲に位相回転量Δφをラップできる。このため、各シンボル周期Tsymごとに算出される周波数オフセット推定値ωが不連続となるのを抑制できる。すなわち、周波数オフセット推定値ωの時間的な変化が不連続となるのを抑制できる。
また、偏角ラップ処理部22を設けることにより、偏角θの取り得る角度範囲を狭くすることができる。このため、演算のダイナミックレンジを小さくでき、小数点より上の桁数を少なくできる。その結果、有限語長の多くを小数点以下に割り当てることができ、周波数オフセット推定値ωの計算精度の向上が可能となる。また、ノイズ除去部25を上記構成とすることにより、乗算および除算を行うことなく、シフト演算および加減算のみでフィルタ処理を行うことができる。また、ノイズ除去部25によって、ローパスフィルタの時定数を大きく設定できる。このため、ノイズ除去部25の回路規模を大きくすることなくノイズ抑圧性を向上することが可能となる。
[第1変形例]
図6は、周波数オフセット推定部14の第1変形例を示す図である。第1変形例では、位相差分算出部23の出力部と周波数オフセット算出部24の入力部との間に第1レジスタ31が設けられ、周波数オフセット算出部24の出力部とノイズ除去部25の入力部との間に第2レジスタ32が設けられ、ノイズ除去部25の出力部に第3レジスタ33が設けられている。そして、第3レジスタ33は、周波数オフセット推定値ωを、周波数オフセット補償部15、周波数オフセット算出部24およびノイズ除去部25に出力する。また、遅延回路231は、レジスタとして構成されている。
このように各処理部間にレジスタが設けられ、周波数オフセット推定部14がパイプライン構成とされることによって、周波数オフセット推定部14は、位相差分算出部23の処理と、周波数オフセット算出部24の処理と、ノイズ除去部25の処理とを複数のサイクルに分割し、各処理を並列に実行することができる。また、第1変形例の構成では、一連の処理が完了するまでのレイテンシは4サイクルであるが、このレイテンシはノイズ除去部25の時定数に対して十分小さい。このように、第1変形例の構成では、1サイクル当たりのスループットを向上することが可能となる。
[第2変形例]
図7は、周波数オフセット推定部14の第2変形例を示す図である。第2変形例では、周波数オフセット推定部14は、コントローラ29をさらに備え、ノイズ除去部25においてセレクタ259をさらに有している。偏角算出部21、偏角ラップ処理部22および位相差分算出部23については、上記実施形態と同様であるのでその説明を省略する。
コントローラ29は、送信器から送信される光信号の変調方式に応じて加算値a2およびビット範囲r2を設定する。例えば、光信号の変調方式を識別可能な情報がユーザによってコントローラ29に設定されたことに応じて、コントローラ29は設定された情報に基づいて加算値a2およびビット範囲r2の設定を行う。そして、コントローラ29は、加算値a2を加算器242に出力し、ビット範囲r2のビットを0に設定し、それ以外のビットを1に設定したビット列b2をビットクリア演算器243に出力する。この加算値a2およびビット範囲r2は、光信号の変調方式ごとに予め定められており、不揮発性メモリなどの記憶部に光信号の変調方式に対応付けられて予め記憶されている。そして、コントローラ29は、デジタルコヒーレント受信器1の起動時またはデジタルコヒーレント受信器1の電源投入時において、設定された変調方式に対応する加算値a2およびビット範囲r2を記憶部から読み出して設定する。
ここで、加算値a2およびビット範囲r2の具体例を説明すると、送信器から送信される光信号が無変調のCWの場合、加算値a2は1.0(dec)、ビット範囲r2は1.0(dec)以下である。また、送信器から送信される光信号がBPSK変調されている場合、加算値a2は0.5(dec)、ビット範囲r2は0.5(dec)以下である。また、送信器から送信される光信号がQPSK変調されている場合、加算値a2は0.25(dec)、ビット範囲r2は0.25(dec)以下である。このように、M−PSK変調方式では、2π/M[rad]ごとにシンボルが割り当てられるので、周波数オフセット推定値ωを測定可能な角度範囲は2π/M[rad]である。このため、加算値a2は1/M(dec)、ビット範囲r2は1/M(dec)以下に設定される。
また、コントローラ29は、加算器255から出力された周波数オフセット推定値ωに応じて、周波数オフセット基準値ωcを設定する。具体的には、コントローラ29は、周波数オフセット設定値ωsetおよびセレクト信号SELを設定する。コントローラ29は、例えば、周波数オフセット推定値ωを受信し、受信した周波数オフセット推定値ωが収斂しているか否かを判定する。収斂していると判定された場合、コントローラ29は、セレクト信号SELを例えば0に設定する。収斂していないと判定された場合、コントローラ29は、セレクト信号SELを例えば1に設定するとともに、周波数オフセット設定値ωsetを適切な値に設定する。そして、コントローラ29は、周波数オフセット設定値ωsetおよびセレクト信号SELをセレクタ259に出力する。
セレクタ259には、遅延回路252によって遅延された周波数オフセット推定値ωとコントローラ29によって出力された周波数オフセット設定値ωsetとが入力される。そして、セレクタ259は、セレクト信号SELに基づいて、遅延回路252によって遅延された周波数オフセット推定値ωと周波数オフセット設定値ωsetとのいずれかを選択し、選択した値を周波数オフセット基準値ωcとしてシフト演算器253、減算器254および減算器241に出力する。セレクタ259は、例えば、セレクト信号SELが0の場合には遅延された周波数オフセット推定値ωを出力し、セレクト信号SELが0の場合には周波数オフセット設定値ωsetを出力する。
なお、デジタルコヒーレント受信器1の後段に設けられた処理部(フレーマなど)から受信ステータス信号を取得可能な場合、コントローラ29は、受信ステータス信号に基づいて周波数オフセット推定値ωが収斂しているか否かを判定してもよい。例えば、デジタルコヒーレント受信器1の後段に設けられたデータ回復部におけるエラーの出現頻度が異常に上昇したことが検出されると、処理部は、異常を示す受信ステータス信号をコントローラ29に送信するように構成してもよい。この場合、コントローラ29は、受信ステータス信号が正常を示す場合に、周波数オフセット推定値ωが収斂していると判定し、受信ステータス信号が異常を示す場合に、周波数オフセット推定値ωが収斂していないと判定することができる。そして、周波数オフセット推定値ωが収斂していないと判定された場合、コントローラ29は、現在の周波数オフセット推定値ωに2π/Mを加算あるいは減算した値を周波数オフセット設定値ωsetに設定して、セレクト信号SELを1に設定する。そして、コントローラ29は、周波数オフセット推定値ωが収斂しているか否かを判定し、収斂していないと判定した場合には、現在の周波数オフセット設定値ωsetに2π/Mを加算あるいは減算した値を周波数オフセット設定値ωsetに設定して、セレクト信号SELを1に設定する。一方、コントローラ29は、周波数オフセット推定値ωが収斂していると判定した場合は、周波数オフセット設定値ωsetを固定する。このように、コントローラ29は、周波数オフセット設定値ωsetの候補を順番に試して、受信ステータス信号が正常になったことを確認する。
以上の構成により、周波数オフセット算出部24は、位相回転量Δφを、周波数オフセット基準値ωcを中心として、±π/Mの範囲にラップした周波数オフセット瞬時値ωsに変換する。すなわち、周波数オフセット瞬時値ωsは、ωc−π/M以上ωc+π/M未満の値を取り得る。このように、コントローラ29によって加算値a2およびビット範囲r2が設定可能(プログラマブル)な構成とすることにより、周波数オフセット瞬時値ωsの角度範囲±π/Mを適切な範囲に変更することができ、無変調のCW光および任意の変調方式の光信号に対応可能となる。また、周波数オフセット推定値ωに基づいて、コントローラ29により周波数オフセット基準値ωcを設定可能な構成とすることによって、ノイズ除去部25が周波数オフセット推定値ωを適切な値に収斂することができ、以降の周波数オフセット推定が可能となる。
また、無変調のCW光を信号光とした場合、周波数オフセットを測定可能な角度範囲をM−PSK変調方式のM倍に拡大できる。このため、CW光で定期的にキャリブレーションを実施して周波数オフセット推定値ωを不図示の記憶部に記憶しておき、M−PSK変調方式で動作する際に、記憶した周波数オフセット推定値ωに設定してもよい。このように、第2変形例では、CW光によるキャリブレーションと、M−PSK変調方式による通常動作とを同一の構成により行うことができる。このため、ローカル光源2の周波数オフセットに対する要求を緩和でき、周波数オフセット値が大きい場合でも、ローカル光源2の周波数のファインチューニング機能を備えることなく、適切に動作させることが可能となる。例えば、シンボルレートが25GS/s(片偏波あたり50Gb/s)のQPSK変調の場合、許容できる最大の周波数オフセットは測定可能範囲の3.125GHzである。一般的なレーザの規格としては、2.5GHzのずれが許容されている。このため、受信側だけでもキャリブレーションにより周波数オフセット推定値ωを適切な値に設定しておけば、周波数オフセットが2.5GHz以下であることが補償され、デジタルコヒーレント受信器1を正常に動作させることができる。
また、デジタルコヒーレント受信器1が後段の処理部から受信ステータス信号を取得可能な場合、受信ステータス信号に基づいて加算値a2およびビット範囲r2を設定してもよい。例えば、何らかの理由により周波数オフセット推定値ωが不正な値となって、受信ステータス信号が異常を示す場合、コントローラ29は、加算値a2およびビット範囲r2を他の候補値に設定できる。
なお、本発明に係る周波数オフセット推定装置、周波数オフセット推定方法およびデジタルコヒーレント受信器は上記実施形態に記載したものに限定されない。例えば、偏角ラップ処理部22は、必要に応じて省略することができる。また、シフト演算器251およびシフト演算器253は、丸め演算付きのNビット右シフト演算器であってもよい。また、上記実施形態では、偏角算出部21は、偏角θをmビットのビット列として出力しているが、2進数以外のデジタル列として出力してもよい。この場合、上記実施形態における下位ビットクリア演算は、そのデジタル列の下位桁をクリアする演算に置き換えられ、Nビットシフト演算は、そのデジタル列のN桁シフト演算に置き換えられる。
1…デジタルコヒーレント受信器、14…周波数オフセット推定部(周波数オフセット推定装置)、22…偏角ラップ処理部、23…位相差分算出部、24…周波数オフセット算出部、25…ノイズ除去部、29…コントローラ、221…加算器(第2加算器)、222…ビットクリア演算器(第2論理演算器)、223…減算器(第3減算器)、241…減算器(第1減算器)、242…加算器(第1加算器)、243…ビットクリア演算器(第1論理演算器)、244…減算器(第2減算器)、251…シフト演算器(第1シフト演算器)、253…シフト演算器(第2シフト演算器)、254…減算器(第4減算器)、255…加算器(第3加算器)、a1…加算値(第2加算値)、a2…加算値(第1加算値)、c1…加算結果、c2…演算結果、d1…減算結果、d2…加算結果、d3…演算結果、e3…減算結果、r1…ビット範囲(第2範囲)、r2…ビット範囲(第1範囲)、S03…位相差分算出ステップ、S04…周波数オフセット算出ステップ、S05…ノイズ除去ステップ、Δφ…位相回転量(位相差分)、θ…偏角、φ…ラップされた偏角、ω…周波数オフセット推定値、ωc…周波数オフセット基準値、ωs…周波数オフセット瞬時値、ωset…周波数オフセット設定値。

Claims (10)

  1. 多値PSK変調方式における送受信光源間の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定装置であって、
    連続するシンボルに対応する信号の偏角の位相差分をデジタル列として算出する位相差分算出部と、
    前記位相差分算出部によって算出された前記位相差分に基づいて周波数オフセット瞬時値を算出する周波数オフセット算出部と、
    前記周波数オフセット算出部によって算出された前記周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去して周波数オフセット推定値を出力するノイズ除去部と、
    を備え、
    前記周波数オフセット算出部は、
    前記位相差分から周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第1減算器と、
    前記第1減算器により出力された前記減算結果に第1加算値を加算し、その加算結果を出力する第1加算器と、
    前記第1加算器により出力された前記加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第1論理演算器と、
    前記位相差分から前記第1論理演算器により出力された前記演算結果を減算し、その減算結果を前記周波数オフセット瞬時値として出力する第2減算器と、
    を有し、
    前記周波数オフセット基準値は、過去に出力された前記周波数オフセット推定値であることを特徴とする周波数オフセット推定装置。
  2. 前記偏角を所定の範囲にラップする偏角ラップ処理部をさらに備え、
    前記位相差分算出部は、前記偏角ラップ処理部によってラップされた偏角に基づいて、前記位相差分を算出することを特徴とする請求項1に記載の周波数オフセット推定装置。
  3. 前記偏角ラップ処理部は、
    前記偏角に第2加算値を加算し、その加算結果を出力する第2加算器と、
    前記第2加算器により出力された前記加算結果のデジタル列の第2範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第2論理演算器と、
    前記偏角から前記第2論理演算器により出力された前記演算結果を減算し、その減算結果を前記ラップされた偏角として出力する第3減算器と、
    を有することを特徴とする請求項2に記載の周波数オフセット推定装置。
  4. 前記ノイズ除去部は、
    前記周波数オフセット算出部によって算出された前記周波数オフセット瞬時値をN桁シフト演算する第1シフト演算器と、
    前記周波数オフセット基準値をN桁シフト演算する第2シフト演算器と、
    前記周波数オフセット基準値から前記第2シフト演算器によってシフト演算された前記周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第4減算器と、
    前記第1シフト演算器によってシフト演算された前記周波数オフセット瞬時値と前記第4減算器によって出力された前記減算結果とを加算し、その加算結果を前記周波数オフセット推定値として出力する第3加算器と、
    を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の周波数オフセット推定装置。
  5. 前記位相差分算出部と、前記周波数オフセット算出部と、前記ノイズ除去部とは、パイプライン構成であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の周波数オフセット推定装置。
  6. 前記第1加算値および前記第1範囲を設定するコントローラをさらに備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の周波数オフセット推定装置。
  7. 前記コントローラは、前記周波数オフセット推定値に基づいて、前記周波数オフセット基準値を設定することを特徴とする請求項6に記載の周波数オフセット推定装置。
  8. 多値PSK変調方式は、1シンボルに対して2π/Mの角度範囲を割り当てる変調方式であって、
    前記第1加算値はπ/Mに設定され、前記第1範囲はπ/M以下に設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の周波数オフセット推定装置。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の周波数オフセット推定装置を備えるデジタルコヒーレント受信器。
  10. 多値PSK変調方式における送受信光源間の周波数オフセットを推定する周波数オフセット推定方法であって、
    連続するシンボルに対応する信号の偏角の位相差分をデジタル列として算出する位相差分算出ステップと、
    前記位相差分算出ステップにおいて算出された前記位相差分に基づいて周波数オフセット瞬時値を算出する周波数オフセット算出ステップと、
    前記周波数オフセット算出ステップにおいて算出された前記周波数オフセット瞬時値のノイズ成分を除去して周波数オフセット推定値を出力するノイズ除去ステップと、
    を備え、
    前記周波数オフセット算出ステップは、
    前記位相差分から周波数オフセット基準値を減算し、その減算結果を出力する第1減算ステップと、
    前記第1減算ステップにおいて出力された前記減算結果に第1加算値を加算し、その加算結果を出力する第1加算ステップと、
    前記第1加算ステップにおいて出力された前記加算結果のデジタル列の第1範囲の下位桁をクリアする論理演算を行い、その演算結果を出力する第1論理演算ステップと、
    前記第1論理演算ステップにおいて出力された前記演算結果を前記位相差分から減算し、その減算結果を前記周波数オフセット瞬時値として出力する第2減算ステップと、
    を有し、
    前記周波数オフセット基準値は、過去に出力された前記周波数オフセット推定値であることを特徴とする周波数オフセット推定方法。
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