JP2013158371A - 使い捨ておむつ - Google Patents

Abstract

【課題】ファスニングテープの風合いや見た目の違和感を大幅に軽減しつつ、充分な係合力を有する印象を与え得る使い捨ておむつの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る使い捨ておむつ10は、不織布によって形成された基材シート120と、複数の係合フックが設けられたフックシート110とを有する。フックシート存在域S_HSのKES曲げ剛性値は、1.64gf・cm²/cm以下であり、係合フックの高さは、60〜200μmであり、ファスニングテープ100の内面側のフックシート存在域S_HSと、ファスニングテープ100に隣接するサイドフラップ50との色差ΔEは、L*a*b*表色系において、L*の色差をΔL*、a*の色差をΔa*、及びb*の色差をΔb*とした場合、6.5以上である。
【選択図】図２

Description

本発明は、前胴回り部または後胴回り部の一方にファスニングテープを備える使い捨ておむつに関する。

従来、乳幼児などに主に用いられる使い捨ておむつとして、後胴回り部（または前胴回り部）のサイドフラップに止着用のファスニングテープを設けた、いわゆるオープンタイプの使い捨ておむつが広く提供されている。上述したようなファスニングテープを備えたオープンタイプの使い捨ておむつは、着脱の容易性などから、特に、新生児及び乳幼児に広く用いられている。

このようなオープンタイプの使い捨ておむつにおいて、ファスニングテープの肌当接面側の基端部を、ファスニングテープよりも柔軟なサイドフラップ（不織布）で覆った構造が知られている（例えば、特許文献１）。このような使い捨ておむつによれば、ファスニングテープが乳幼児などの肌を刺激することが抑制されるため、乳幼児は不快感や痛みを感じ難くなる。

特開２００３−７０８４０号公報（第１図）

ところで、近年、使い捨ておむつのユーザ（購買者）の要求は高まっており、特に、乳幼児に着用する場合には、乳幼児の肌への負担を皆無にしたい、或いはできるだけ負担を減らしたいとの意識が高まっている。

しかしながら、上述したような従来のファスニングテープを適用しても、ファスニングテープは、不織布などで形成される使い捨ておむつの他の部分と比較して、特に、風合いや見た目において大きな違和感があり、使い捨ておむつに対する要求が高まった近年のユーザの不安感を完全には払拭できないことが懸念されている。

一方で、ファスニングテープは、使い捨ておむつを身体に保持するという機能を有するため、使い捨ておむつを身体に保持する部分、具体的には、後身頃（または前身頃）に取り付けられたファスニングテープを前身頃（後身頃）に係合できる部分（フック部分）が認識できないと、ファスニングテープに違和感がないことの印象と合わせて、ファスニングテープが簡単に外れて使い捨ておむつが身体から脱落してしまうのではないかという不安感を抱かせる問題がある。

そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、ファスニングテープの風合いや見た目の違和感を大幅に軽減しつつ、充分な係合力を有する印象を与え得る使い捨ておむつの提供を目的とする。

本発明の特徴は、前胴回り部（前胴回り部20）、後胴回り部（後胴回り部40）及び股下部（股下部30）とから構成され、液保持性の吸収体（吸収体35）を含む縦長の吸収性本体（吸収性本体15）と、前記吸収性本体の幅方向における側縁部の少なくとも一部に設けられるサイドフラップ（サイドフラップ50）と、前記サイドフラップに取り付けられ、前記前胴回り部または前記後胴回り部の一方から前記吸収性本体の幅方向外側に延出し、前記前胴回り部または前記後胴回り部の他方に止着されるように構成されたファスニングテープ（ファスニングテープ100）とを備える使い捨ておむつであって、前記ファスニングテープは、基材シート（基材シート120）と、複数の係合フックが設けられたフックシート（フックシート110）とを有し、前記ファスニングテープが設けられているファスニングテープ存在域（ファスニングテープ存在域S_ALL）のうち、前記フックシートが設けられているフックシート存在域（フックシート存在域S_HS）の前記吸収性本体の長手方向における単位長さ当たりのKES曲げ剛性値、及び前記吸収性本体の幅方向における単位長さ当たりのKES曲げ剛性値は、1.64gf・cm²/cm以下であり、前記係合フックの高さは、60〜200μmであり、前記ファスニングテープの内面側の前記フックシート存在域と、前記ファスニングテープに隣接する前記サイドフラップとの色差ΔEは、L*a*b*表色系において、L*の色差をΔL*、a*の色差をΔa*、及びb*の色差をΔb*とした場合、6.5以上であることを要旨とする。

本発明の特徴によれば、ファスニングテープの風合いや見た目の違和感を大幅に軽減しつつ、充分な係合力を有する印象を与え得る使い捨ておむつを提供し得る。

本発明の実施形態に係る使い捨ておむつ10の平面図である。 本発明の実施形態に係る使い捨ておむつ10のファスニングテープ100部分（サイドフラップ50側）の拡大図である。 本発明の実施形態に係る使い捨ておむつ10のファスニングテープ100部分（バックシート70側）の拡大図である。 図２に示したF4-F4線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。 本発明の実施形態に係るファスニングテープ100の一部拡大平面図である。

次に、本発明に係る使い捨ておむつの実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。

したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。

（１）使い捨ておむつの概略形状
図１は、本実施形態に係る使い捨ておむつ10の平面図である。図１に示すように、使い捨ておむつ10は、前胴回り部20、股下部30及び後胴回り部40を有するオープンタイプである。使い捨ておむつ10は、特に乳幼児用として好適に用いることができる。

前胴回り部20、股下部30及び後胴回り部40とによって吸収性本体15が構成される。吸収性本体15は、液保持性の吸収体35を含む縦長の形状を有する。本実施形態では、吸収体35は、前胴回り部20、股下部30及び後胴回り部40に渡って設けられる。吸収体35は、吸収性本体15の長手方向D_Lにおける中央部における幅が狭くなるような形状を有する。なお、吸収体35の形状は、図１に示したような形状に限定されず、単純な長方形であってもよい。また、吸収体35は、少なくとも股下部30に設けられていればよい。

吸収性本体15は、従来のオープンタイプの使い捨ておむつと同様であり、公知の部材や材料を用いて適宜構成することができる。また、吸収性本体15は、図示しない液透過性の表面シート、長手方向D_Lに沿って吸収性本体15の側縁部に設けられる立体ギャザー、及び幅方向D_Wに沿って後胴回り部40に設けられるウエストギャザーなどを有していてもよい。

吸収性本体15の幅方向D_Wにおける側縁部には、サイドフラップ50が設けられる。サイドフラップ50は、１枚または２枚以上の複数枚重ねた不織布によって構成されている。

本実施形態では、サイドフラップ50は、吸収性本体15の長手方向D_Lの全域に渡って設けられる。つまり、サイドフラップ50は、前胴回り部20から後胴回り部40まで設けられる。股下部30と対応するサイドフラップ50の幅は、前胴回り部20及び後胴回り部40と対応するサイドフラップ50の幅よりも狭い。なお、サイドフラップ50は、必ずしも吸収性本体15の長手方向D_Lの全域に渡って設けられていなくてもよく、例えば、後胴回り部40と対応する領域のみに設けられていてもよい。

また、吸収性本体15の幅方向D_Wにおける側縁部、具体的にはサイドフラップ50には、吸収性本体15の長手方向D_Lに沿って伸縮可能なレッグ弾性部材55が設けられる。レッグ弾性部材55によって、吸収性本体15が長手方向D_Lにおいて収縮させられている。このように収縮された吸収性本体15は、特に、後胴回り部40側において長手方向D_Lに伸長することができる。

サイドフラップ50には、ファスニングテープ100が取り付けられる。具体的には、ファスニングテープ100は、後胴回り部40から吸収性本体15の幅方向D_W外側に延出する。ファスニングテープ100は、前胴回り部20に止着されるように構成される。ファスニングテープ100のフックシート110（図１において不図示、図２参照）は、前胴回り部20のバックシート70（図１において不図示、図３参照）側に設けられたターゲットテープ60に係合する。

なお、ファスニングテープ100は、後胴回り部40ではなく、前胴回り部20から吸収性本体15の幅方向D_W外側に延出するようにサイドフラップ50に取り付けられてもよいが、仰向けに寝かせた状態で使い捨ておむつを交換する状況が多い乳幼児の場合、ファスニングテープ100は、後胴回り部40に取り付けられていることが好ましい。

（２）ファスニングテープの形状
次に、図２〜図４を参照して、ファスニングテープ100の形状について説明する。図２は、使い捨ておむつ10のファスニングテープ100部分（サイドフラップ50側）の拡大図である。図３は、使い捨ておむつ10のファスニングテープ100部分（バックシート70側）の拡大図である。図４は、図２に示したF4-F4線に沿った使い捨ておむつ10の断面図である。

図２〜図４に示すように、ファスニングテープ100は、後胴回り部40（図１参照）に対応するサイドフラップ50の領域に取り付けられている。ファスニングテープ100は、複数の係合フック111が設けられたフックシート110と、不織布によって形成された基材シート120とを有する。なお、基材シート120は、不織布にフィルムをラミネートしたものを用いてもよい。

フックシート110は、基材シート120に接合されている。フックシート110と基材シート120との接合は、ファスニングテープ100の剛性が必要以上に高くなることがないようされていることが好ましい。具体的には、フックシート110と基材シート120とは、点状、線状或いはスパイラル状のような間欠的に塗布されたホットメルト接着剤によって接合されていることが好ましい。なお、フックシート110と基材シート120とは、熱シールなどで接合されてもよい。

また、フックシート110の剛性を低下させるためには、フックシート110の基材部分の厚みを薄くしたり、当該基材部分の空隙を増やしたりするなど、公知の各種方法を用いることができる。

本実施形態では、フックシート110のサイズは、従来の標準的なフックシートのサイズよりも大きい。具体的には、幅方向D_W及び長手方向D_Lにおける幅は、それぞれ20〜40mm、30〜50mmに設定される。なお、従来の標準的なフックシートの幅方向D_W及び長手方向D_Lにおける幅は、それぞれ10〜30mm、15〜30mmである。このようにフックシート110のサイズが大きいため、後述するファスニングテープ100のKES曲げ剛性値を低くしてファスニングテープ100を柔軟にし、係合フック111の高さを低くしてもフックシート110が認知され易い。

また、係合フック111の高さは、60〜200μmに設定される。このような係合フック111の高さを有するフックシート110は公知であり、一般的に市販されているものを使用可能である。なお、本実施形態では、市販のフックシートを平滑な表面を有する熱ロール間に両ロール間のクリアランスを調整することで、熱と圧をかけ、狙いの高さの係合フックを有するフックシートとした。

基材シート120は、１枚または２枚以上の複数枚重ねたシート、具体的には不織布または不織布にフィルムをラミネートしたシートなどによって構成されている。基材シート120としては、スパンボンド（SB）またはスパンボンド−メルトブローン−スパンボンド（SMS）、スルーエアーなどの製法によって製造された不織布、スパンボンドなど各種不織布に熱可塑性フィルムをラミネートしたシートなどを用いることができる。

基材シート120は、特に2枚以上の複数枚のシートを重ねた構成とする事もできる。その場合、不織布シート１枚当たりの目付けは、10〜80g/m²、好ましくは20〜55g/m²である。基材シート120全体としての厚みは、上述したように150μm〜550μm、好ましくは厚み250μm〜500μmである。

上述したように、基材シート120に複数枚のシートを用い、上述した範囲とすることでフックシート110と比べて適度な柔軟性を確保しつつ、フックシート110を使い捨ておむつ10に止める要素として必要な強度や取り扱いし易さを確保でき、厚みの印象としてフックシート110と比べた場合での異物感を感じさせ難くすることができる。

60g/m²より目付けを大きくすると、不織布の繊維の嵩が大きくなることから構成する繊維同士を交絡・固定させるために熱融着点をより増やす必要があり、フックシート110の曲げ剛性に比べて基材シート120の曲げ剛性が目立ってくる。またその厚みが550μmを超えると、基材シート120そのものの厚み感から異物感を使用者に与えてしまう（生地感の印象からプラスチック感の印象へ変化してしまう）ため、フックシート110と基材シート120との一体感に影響を与えてしまう。

また、10g/m²より目付けを小さくすると、フックシート110を取り付けしている基材シート120としては十分な強度を確保することが困難であり、厚みが150μmより小さいと、フックシート110を使い捨ておむつ10に止める際もしくは使い捨ておむつ10から取り外す際にその取り付け/取り外しの操作が困難となってしまう。

これらのように基材シート120は、複数枚のシートを重ねることで、１枚の高めの目付けの不織布を用いるよりも１枚当たりの目付けを低く抑え（複数枚重ねる場合には、より好ましくは上述の範囲の目付けの不織布を用いることがよい）、２枚もしくは３枚と複数枚に分けて重ね、全体としての厚みを550μm以下とすることで、上述の狙いをよりバランスよく実現できる。なお、不織布の厚みは、測定端子形状が円形状（φ5mm）、荷重1.23Nの厚み計（テスター産業株式会社製の厚み計）を用いて測定した。

また、複数枚から基材シート120を構成する場合には、互いのシート間は各種手段により接合できるが好ましくは、ホットメルト接着剤を線（スパイラル状を含む）または点で塗布することにより互いのシート間を固定することが柔軟性と生産性の観点から好ましい。

特に、基材シート120が、２層以上の不織布によって構成される場合、不織布は、2g/m²〜8g/m²の接着剤を用いて網目状のパターンにて接合されることが好ましい。

また、本実施形態では、ファスニングテープ100は、サイドフラップ50に取り付けられる基端部100bから基端部100bと反対側に位置する自由端部100fに向かうに連れて、吸収性本体15の長手方向D_Lにおける幅が狭くなる形状を有する。

基端部100bにおける長手方向D_Lに沿った幅と、基端部100b寄りのフックシート存在域S_HSの端部における吸収性本体15の長手方向D_Lに沿った幅との差dは、長手方向D_Lにおける一端側において7.5mm以下であり、好ましくは5.0mm以下である。このため、基端部100b（使い捨ておむつ10との接合部）の存在感が相対的に小さい印象を与えることができ、ファスニングテープ100と使い捨ておむつ10との一体感とを高め得る。

さらに、自由端部100fの角の部分は、丸い形状を有している。つまり、自由端部100fの角の部分は、丸くカットされており、角張らない形状とされている。また、基端部100b側のサイドフラップ50端部近傍も同様に丸くカットされている。

図３に示すように、使い捨ておむつ10のバックシート70には、エンボス部80が形成される。また、ファスニングテープ100、具体的には、基材シート120にも、同一模様のエンボス部80が形成される。つまり、フックシート110が設けられている面と反対側の面である基材シート120の外側面と、吸収性本体15の外側面とは、実質的に同一の模様または色彩を有することが好ましい。

さらに、バックシート70側の不織布と、吸収性本体15の非肌当接面側（着衣側）の不織布、つまりバックシート70面とを、同一の不織布エンボスパターンとしたり、同一素材（構成する繊維の種類、不織布種類が等しくされ、より好ましくは、その目付がほぼ等しくされる）の不織布を使用したりしてもよい。

また、本実施形態では、図５に示すように、基材シート120は、熱エンボスが施された熱エンボス領域90を有している。熱エンボス領域90の光線透過率は、熱エンボスが施されていない非エンボス領域の光線透過率と異なっている。

本実施形態では、熱エンボス領域90は菱形（0.5mm×1.0mm）であるが、熱エンボス領域90の形状は必ずしも菱形でなくてもよく、四角形や円形でも構わない。熱エンボス領域90は、ファスニングテープ100のフックシート存在域S_HS側から視認可能である。また、係合フック111の上端部の大きさ（直径）は、熱エンボス領域90のサイズよりも小さい。

また、ファスニングテープ100の内面側におけるフックシート存在域S_HSと、ファスニングテープ100に隣接するサイドフラップ50、具体的には、サイドフラップ50とファスニングテープ100とが重複するサイドフラップ領域S_SFとの色差ΔEは、L*a*b*表色系において、L*の色差をΔL*、a*の色差をΔa*、及びb*の色差をΔb*とした場合、6.5以上である。

なお、ΔEは、（式１）によって計算することができる。

また、より好ましくは、係合フック111先端側から基材シート120側へのフックシート110の光線透過率は、60％〜85％であることが好ましい。なお、光線透過率の測定は、JIS-K7105の規格に準拠したものであって、色差計（日本電色工業（株） 交照測光式色差計Z-300A）を用いた。具体的には、幅5mm，長さ5mmのサンプルを濁度計に挟んでTT値を求め、求めたTT値を全光線透過率（％）とすることで求めることができる。

図４に示すように、ファスニングテープ100の基端部100bは、サイドフラップ50とバックシート70とに取り付けられている。ファスニングテープ100と、サイドフラップ50及びバックシート70との接合も、上述したように、点状、線状或いはスパイラル状のような間欠的に塗布されたホットメルト接着剤によって接合されていることが好ましい。

（３）ファスニングテープの曲げ剛性値
次に、ファスニングテープ100のKES曲げ剛性値について説明する。なお、KES曲げ剛性値の具体的な測定方法については、後述する。

本実施形態では、ファスニングテープ100が設けられているファスニングテープ存在域S_ALL（図２参照）のうち、フックシート110が設けられているフックシート存在域S_HSの長手方向D_Lにおける単位長さ当たりのKES曲げ剛性値、及び幅方向D_Wにおける単位長さ当たりのKES曲げ剛性値は、1.64gf・cm²/cm以下である。

（４）実施例
次に、本発明の実施例について説明する。表１は、実施例１〜実施例６に係るファスニングテープと、比較例１〜比較例３に係るファスニングテープ（以下、単に実施例及び比較例と適宜省略する）の構成及び試験結果の概略を示す。

また、実施例及び比較例に係るファスニングテープの幅方向D_Wにおける全体寸法（ファスニングテープ存在域S_ALL）は60mm、フックシート存在域S_HS（自由端部100fを含む）の寸法は25mm、隣接領域S_B（フックシート110が存在しない領域）の寸法は5mmであった。また、幅方向D_Wにおけるサイドフラップ領域S_SFの寸法は、20mmであった。

表１に示すように、ファスニングテープに用いられる不織布の種類、基材シート120の目付けやフックシート110と基材シート120との合計厚みが異なる複数のサンプルを用いて、ファスニングテープの生地感及び曲げ特性（曲げ剛性）について試験を行った。

以下、各試験における測定方法及び試験結果の詳細について説明する。

（４．１）生地感
市販のユニ・チャーム株式会社製の「ムーニー ねんね仕立て Ｓサイズ」を用い、ファスニングテープ、ファスニングテープが固定されているサイドフラップ部分及びバックシート部分含む領域を、ファスニングテープとサイドフラップとが固定されている部位の幅方向D_W内側２０ｍｍ位置から差し替えることによって、試験サンプルを準備した。

また、当該試験では、ファスニングテープを「おむつ本体と異なり、硬さの異なる物（異物）と感じている」人を対象とするため、ヒアリング対象者のスクリーニングを実施し、普段使用している使い捨ておむつのファスニングテープに上述のような印象を抱いている者を対象とした。具体的には、母性の高まりから硬い物や尖った物に対する嫌悪感が高くなっている２ヶ月〜６ヶ月の乳幼児を育てている母親を対象として、上記スクリーニングを実施の上、３０名の母親を対象として以下の感応評価のヒアリングを実施した。

試験では、サンプルのファスニングテープを自由に触ってもらった後、ファスニングテープの触感について、生地のような印象を抱くかについて、以下に示す５段階による評価を実施した。（１）または（２）と評価した人数の比率にて６０％を超えるサンプルを○とした。

（１）オムツ本体のシートと同じような触感
（２）オムツ本体のシートとほぼ同じような触感
（３）どちらとも言えない
（４）オムツ本体のシートとやや異なる触感
（５）オムツ本体のシートと異なる触感
なお、フックシート110及び基材シート120の合計厚みは、上述した厚み計（テスター産業株式会社製の厚み計）を用いて測定した。

（４．２）曲げ特性
ファスニングテープの曲げ特性については、カトーテック株式会社製のKES曲げ測定機を用いて測定した。具体的には、B値（曲げ剛性）値を測定した。

具体的には、KES法に関しては、「風合い評価の標準化と解析」第２版（社団法人日本繊維機械学会 風合い計量と規格化研究委員会 昭和５５年７月１０日発行）に詳細が説明されている。よって、力学的性質毎の測定方法に関し、本測定に関連した測定条件についてのみ説明する。

曲げ特性は、カトーテック株式会社製KES-FB2を用いて、各サンプル（フックシート存在域S_HSを基材シート120とともに切り出したサンプル）をチャック間に固定し（おむつにおけるファスニングテープの肌面側（内側）を下向きとする）、最大曲率+2.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻すことによって測定した。

なお、表１に示す「MD曲げ」は、長手方向D_Lにおける曲げを意味し、「CD曲げ」は、幅方向D_Wにおける曲げを意味する。

（４．３）フック高さ
使い捨ておむつの交換時にファスニングテープの係合フックを視認したことを想定し、30〜50cm範囲の離れた位置からサンプルを視認してもらい、係合フックに「鋭利な印象、固そうな印象を感じるか」を確認した。ヒアリングは感じる・感じないのどちらの印象にあるかを確認した。感じないとした人数が７０％を超えたサンプルを○とした。表２は、当該試験結果を示す。

なお、各サンプルのフック高さは、サンプルを無加圧の状態において測定した。測定環境は、温度２０±２℃、相対湿度６５±５％、測定機器にはマイクロスコープ（株式会社キーエンス製ＶＨＸ−９００）を用いた。まず、サンプルの断面の拡大画像を取得し、当該画像に寸法が既知であるサンプルを重ねて表示させる。当該拡大画像にマイクロスコープのスケールを合わせ、サンプルの高さ及び厚みを測定した。この作業を１０回行い、１０回の平均値を取得値とした。

（４．４）色差（L*a*b*表色系）
フックシート110（フックシート存在域S_HS）のL*、a*及びb*の値、フックシート110に隣接する基材シート120（隣接領域S_B）、及びサイドフラップ50のL*、a*及びb*の値を測定した。

座標L, a, bは、比色計（ミノルタ モードCR-300）を用いて測定した。具体的には、
白色標準プレート上に、基材シート120（フックシート110取付面を上にする）、フックシート110（係合フック111側を上にする）の順に配置した。フックシート110のサイズは、基材シート120のサイズよりも小さく、基材シート120のみが存在する位置（隣接領域S_B）におけるL*, a*, b*の値を測定した。さらに、フックシート110及び基材シート120が重なって存在する位置（フックシート存在域S_HS）におけるL*, a*, b*の値を測定した。同様に、白色標準プレート上に、サイドフラップ50のバックシート70側を下にして配置し、サイドフラップ50におけるL*, a*, b*の値を測定した。

次いで、各領域、具体的には、フックシート存在域S_HSと隣接領域S_B、及びフックシート存在域S_HSとサイドフラップ50の領域におけるΔE（式１参照）を計算した。

表３は、実施例１の測定結果を示す。また、表４は、実施例２の測定結果を示す。表３及び表４に示すように、同一実施例の中でも、基材シート120の色を変えた複数のサンプルについて試験を実施した。実施例１および実施例２で用いたフック高さは100μmであった。

表３に示した実施例では、表３に示す不織布を使用し、その不織布を着色したものにて確認した。フックシートは白色をベースとし、フック高さは100μmとした。表４に示す実施例では、基材シートを表４に示す不織布と同一とし、その不織布を着色したものにて確認した。フックシートは白色をベースとし、フック高さは100μmとした。なお、フックシートに着色するようにしてもよい。

また、表3及び表４において、領域Aはフックシート存在域S_HSと対応し、領域Bはサイドフラップ領域S_SFと対応する。

表３及び表４に示す「フック認識し易さ」の試験では、「フックが目立つこと」について質問をし、以下に示す５つの回答の中から最も近い回答を選択させた。（１）または（２）と評価した人数の比率にて60％以上のサンプルを可（OK）とした。

（１） 非常に目立つ
（２） やや目立つ
（３） どちらとも言えない
（４） あまり目立たない
（５） まったく目立たない
（５）作用・効果
使い捨ておむつ10によれば、フックシート存在域S_HSの長手方向D_LにおけるKES曲げ剛性値、及び幅方向D_WにおけるKES曲げ剛性値は、1.64gf・cm²/cm以下である。また、係合フック111の高さは、60〜200μmである。さらに、フックシート存在域S_HSとサイドフラップ50のサイドフラップ領域S_SFとの色差ΔEは、6.5以上である。

このため、使い捨ておむつ10中のファスニングテープ100は、従来のフックファスナーのようにプラスチックの風合いや見た目ではなく、不織布などと同様の風合いや見た目とすることが可能となる。つまり、ファスニングテープ100の風合いや見た目の違和感を大幅に軽減し、使い捨ておむつ本体、つまり、人などに着用される着用物品との一体感を醸成し得る。

また、使い捨ておむつ10本体との違いが少なくなったファスニングテープ100において、視覚的にはファスニングテープ100が備えられていることを容易に認識できるため、ファスニングテープ100の本来の機能である使い捨ておむつ10を身体に保持する機能について、ユーザに不安感を与えることがない。すなわち、ファスニングテープ100によれば、より高品質な使い捨ておむつ10であるとの印象を与えることができる。

より具体的には、係合する部位であるファスニングテープ100を隣接する部位に対して上述のような色差とすることによって、ファスニングテープ100が視覚的に認識され易くなる。特に、着用者の身体におむつを敷き、ファスニングテープ100を幅方向D_W外向きに展開し、ファスニングテープ100内面側をユーザが視認した際に、ファスニングテープ100が備えられているとの印象を与えることが必要である。このような印象をユーザに与えることによって、ユーザは、ファスニングテープ100の良好な風合いを感じつつ、使い捨ておむつ10を不安感なく使用することができる。

また、本実施形態では、基材シート120が２層以上のシート（不織布）によって形成され、シートの１枚当りの目付けが10〜60g/m²とされている。さらに、不織布全体としての厚みは150〜550μmである。複数枚のシートで形成され、基材シート120の目付け及び厚みを上述した範囲とすることによって、ファスニングテープ100としての強度を確保しつつ曲げ剛性値を低くすることが可能となり、使い捨ておむつ10本体の不織布などと同様の風合いや見た目とすることが可能となる。

本実施形態では、熱エンボス領域90の光線透過率は、熱エンボスが施されていない非エンボス領域の光線透過率と異なっている。また、熱エンボス領域90は、フックシート存在域S_HS側から視認可能である。このため、基材シート120の不織布としての印象を与える熱エンボスパターンが透過して視認でき、さらに熱エンボス領域90よりも小さく係合フック111が形成されることによって、熱エンボス領域90の様態に係合フック111が紛れ込むような視覚的印象となる。つまり、鋭利な印象にある係合フック111が存在することを使用者は感じ難くなり、フックシート110の異物感をさらに低減できる。また、フックシート110の係合フック111の先端側から基材シート120側への光線透過率を60％〜85％とすることでフックシート110の異物感をさらに低減できる。

本実施形態では、ファスニングテープ100は、基端部100bから自由端部100fに向かうに連れて、長手方向D_Lにおける幅が狭くなる形状を有し、自由端部100fの角の部分は、丸い形状を有する。また、ファスニングテープ100の幅も従来よりも狭い。このため、着用者の足回りそけい部の形状と、腹部部分が飛び出している状態になり易い乳幼児の体型に沿い易くなり、ファスニングテープ100の自由端部100f（掴み部）が肌に当たり不快感を与えることも防止でき、かつ見た目の安心感を醸成できる。

本実施形態では、フックシート110が設けられている面と反対側の面である基材シート120の外側面と、吸収性本体15の外側面とは、実質的に同一の模様（エンボス部80）を有する。また、基材シート120の外側面と、バックシート70面とは、同一のエンボスパターンと繊維種からなる不織布によって構成されてもよい。

このため、ファスニングテープ100が使い捨ておむつ10と一体の構成であり、異なる部位でないことを使い捨ておむつ10の使用者に認識させることができる。なお、使い捨ておむつの最外層のシート（バックシート70）は、使用者（例えば、乳幼児の母親）が使い捨ておむつを乳幼児に装着する際に触れる頻度が高い部分であるため、柔らかい感触を与えるようなシートを用いている。

本実施形態では、基材シート120は、２層以上の不織布によって形成され、当該不織布は、2g/m²〜8g/m²の接着剤を用いて網目状のパターンにて接合されている。このため、線状や面状に塗布するよりも、少ない目付けでより広範囲に接着剤を塗布でき、部分的には強固に接合できるため、接合強度と柔軟性の両立が可能となる。なお、2g/m²以下では、ファスニングテープ100の装着時に不織布間にて接合が不十分のため剥離してしまうことがあり、8g/m²以上では網目状に塗布された接着剤（ホットメルト）の線径が太くなってきてしまい、接合による固さが発生してしまうため好ましくない。

（６）その他の実施形態
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。

例えば、上述した実施形態では、フックシート110が設けられている面と反対側の面である基材シート120の外側面と、吸収性本体15の外側面とは、エンボス部80が形成され、これにより、基材シート120の外側面と、吸収性本体15の外側面とが、実質的に同一の模様を有していたが、このような処理は、必ずしも施されていなくても構わない。

上述した実施形態では、使い捨ておむつ10が乳幼児用として好適に用いることができる旨説明したが、本発明の適用範囲は、乳幼児用の使い捨ておむつに限定されるものではなく、例えば小児用や大人用の使い捨ておむつにも勿論適用し得る。

上述した実施形態では、オープンタイプの使い捨ておむつを例として説明したが、本発明は、前胴回り部と後胴回り部とが係脱可能に接合されたパンツタイプ（リクローザブルタイプ）にも適用し得る。具体的には、前胴回り部と後胴回り部との一方の接合部（側部）に使い捨ておむつのファスニングテープに相当するファスニング要素が備えられ、当該側部を着脱可能とした使い捨ておむつに適用してもよい。

このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。

10…使い捨ておむつ
15…吸収性本体
20…前胴回り部
30…股下部
35…吸収体
40…後胴回り部
50…サイドフラップ
55…レッグ弾性部材
60…ターゲットテープ
70…バックシート
80…エンボス部
90…熱エンボス領域
100…ファスニングテープ
100b…基端部
100f…自由端部
110…フックシート
111…係合フック
120…基材シート
S_ALL…ファスニングテープ存在域
S_B…隣接領域
S_SF…サイドフラップ領域
S_HS…フックシート存在域

Claims (8)

1. 前胴回り部、後胴回り部及び股下部とから構成され、液保持性の吸収体を含む縦長の吸収性本体と、
   前記吸収性本体の幅方向における側縁部の少なくとも一部に設けられるサイドフラップと、
   前記サイドフラップに取り付けられ、前記前胴回り部または前記後胴回り部の一方から前記吸収性本体の幅方向外側に延出し、前記前胴回り部または前記後胴回り部の他方に止着されるように構成されたファスニングテープと
   を備える使い捨ておむつであって、
   前記ファスニングテープは、基材シートと、複数の係合フックが設けられたフックシートとを有し、
   前記ファスニングテープが設けられているファスニングテープ存在域のうち、前記フックシートが設けられているフックシート存在域の前記吸収性本体の長手方向における単位長さ当たりのKES曲げ剛性値、及び前記吸収性本体の幅方向における単位長さ当たりのKES曲げ剛性値は、1.64gf・cm²/cm以下であり、
   前記係合フックの高さは、60〜200μmであり、
   前記ファスニングテープの内面側の前記フックシート存在域と、前記ファスニングテープに隣接する前記サイドフラップとの色差ΔEは、L*a*b*表色系において、L*の色差をΔL*、a*の色差をΔa*、及びb*の色差をΔb*とした場合、6.5以上である使い捨ておむつ。
2. 前記基材シートは、２枚以上のシートによって形成され、
   前記基材シートそれぞれの目付けは、10〜60g/m²である請求項１に記載の使い捨ておむつ。
3. 前記基材シートは、熱エンボスが施された熱エンボス領域を有し、
   前記熱エンボス領域の光線透過率は、前記熱エンボスが施されていない非エンボス領域の光線透過率と異なっており、
   前記熱エンボス領域は、前記ファスニングテープのフックシート存在域側から視認可能であり、
   前記係合フックの上端部の大きさは、前記熱エンボス領域のサイズよりも小さい請求項１または２に記載の使い捨ておむつ。
4. 前記フックシートにおける前記係合フックの先端側から前記基材シート側への光線透過率は、60％〜85％である請求項１乃至３の何れか一項に記載の使い捨ておむつ。
5. 前記ファスニングテープは、前記サイドフラップに取り付けられる基端部から前記基端部と反対側に位置する自由端部に向かうに連れて、前記吸収性本体の長手方向における幅が狭くなる形状を有し、
   前記自由端部の角の部分は、丸い形状を有し、
   前記フックシート存在域の前記吸収性本体の長手方向における幅は、30〜50mmであり、
   前記フックシート存在域の前記吸収性本体の幅方向における幅は、20〜40mmである請求項１乃至４の何れか一項に記載の使い捨ておむつ。
6. 前記フックシートが設けられている面と反対側の面である前記基材シートの外側面と、前記吸収性本体の外側面とは、実質的に同一の模様または色彩を有する請求項１乃至５の何れか一項に記載の使い捨ておむつ。
7. 前記フックシートが設けられている面と反対側の面である前記基材シートの外側面と、前記吸収性本体の外側面とは、同一のエンボスパターンと繊維種からなる不織布によって構成される請求項１乃至６の何れか一項に記載の使い捨ておむつ。
8. 前記基材シートは、２層以上の不織布によって形成され、
   前記不織布は、2g/m²〜8g/m²の接着剤を用いて網目状のパターンにて接合されている請求項１乃至７の何れか一項に記載の使い捨ておむつ。

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