JP2013155413A - 非接触めっき方法及びその装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】被めっき対象物の表面に析出されためっき層表面に電極等との摩擦によって傷がつくことで、平滑状態が維持できなくなる不都合を解消することを目的とする。
【解決手段】この目的を達成するため、被めっき対象物のめっき対象面に対して、陽極面を離間配置し、この陽極面に通電してアノード分極し、被めっき対象物に直接通電することなく、被めっき対象物に負の誘起起電力を起こさせカソード分極領域を形成し、そのカソード分極領域に相当する被めっき対象物の表面に、めっき液中の金属成分を析出させてめっき層を形成する非接触めっき方法を採用する。
【選択図】図1

Description

本件出願に係る発明は、被めっき対象物に直接通電することなく、誘起起電力を用いて被めっき対象物の表面にめっき層を形成する非接触めっき方法及びその装置に関する。
従来より、ワイヤー等の被めっき対象物の表面にめっき層を形成したものとして、電着ワイヤー工具がある。例えば、特許文献1に示す如き電着ワイヤー工具は、長手方向に延在する芯線と、この芯線の外周面に設けられためっき層と、めっき層によって保持される超砥粒と、超砥粒の外周面を被覆する被覆層とを有するものとして知られている。
このような電着ワイヤー工具は、例えば、特許文献2に示す如きダイヤモンドワイヤーソーと同様に、めっき法を用いて、金属製芯線の外表面全体に、ダイヤモンド砥粒を分散保持させためっき層を形成して、被覆している。この特許文献2の場合、金属製芯線を、ニッケルとタングステンとを溶解した溶液にダイヤモンド砥粒を分散させたニッケル−タングステン浴を用いて電解めっきを行うことで、ダイヤモンド砥粒電着を行うものである。
また、特許文献3には、特許文献2に開示のダイヤモンドワイヤーソー表面にダイヤモンド砥粒を電着させた後に、更にダイヤモンドワイヤーの外表面全体を、金属薄膜で被覆して、ダイアモンド砥粒の脱落防止を図ろうとしている。
特許第4724779号公報 特開2010−201541号公報 特開2010−201542号公報
しかしながら、上述した如き特許文献に開示のめっき方法を採用する限り、ダイヤモンドワイヤーソーの芯線(ワイヤー)に電解めっきを行う場合には、金属製芯線をめっき溶液に浸漬し、金属製芯線をカソード分極することにより、金属製芯線の表面に電解めっきを行うことになる。このとき、金属製芯線は、金属製芯線と負極とが接触するものであるため、芯線に析出しためっき層と電極との間で摩擦が生じ、めっき層表面に傷が付き、めっき層表面の平滑状態が維持できず、外観品質も維持できなくなるという問題がある。
特に、上述の特許文献2のように、めっき層にダイヤモンド砥粒を分散保持させるめっき操作を行う場合には、金属製芯線の表面に保持されていたダイヤモンド砥粒が、負極と接触することによって、金属製芯線の表面から脱落する現象が起こり、ねらい通りのダイヤモンド砥粒量を金属製芯線の表面に残すことができない。この場合、ダイヤモンドワイヤーソーの表面に、いったん定着させた砥粒が減少してしまい、ダイヤモンドワイヤーソーとしての規格品質を満足せず、製品歩留まりが低下し、製品品質の安定したダイヤモンドワイヤーソーの提供が困難となる。
以上、ダイヤモンドワイヤーを例示的に挙げた問題点を指摘してきたが、通常のワイヤーであっても、上述と同様の方法で、ワイヤーの表面に連続的にめっき層を形成しようとする場合には、めっき層を設けたワイヤー表面と負極とが接触することによって、当該めっき表面に、擦り傷、スクラッチ等の外観異常が発生し、要求品質を満足できない場合が生じ、規格品質を満足せず、製品歩留まりが低下することが指摘されてきた。
以上のことから、線形材料としてのワイヤー材、パイプ材、ロッド材等の表面にめっき層を形成する際に、そのめっき層に対して、極力損傷を与えず、高品質な製品を提供することを目的とする。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、本件発明にかかる非接触めっき方法を採用することで、めっき層表面の平滑状態を好適に維持することができることに想到したのである。以下、「非接触めっき方法」と「非接触めっき装置」に分けて述べることにする。
<本件発明にかかる非接触めっき方法>
本件発明にかかる非接触めっき方法の基本的技術思想は、めっき液中で、被めっき対象物に直接通電することなく、誘起起電力を用いて被めっき対象物の表面にめっき層を形成する方法であって、被めっき対象物のめっき対象面に対して、陽極面を離間配置し、この陽極面に通電してアノード分極し、被めっき対象物に負の誘起起電力を起こさせカソード分極領域を形成し、そのカソード分極領域に相当する被めっき対象物の表面に、めっき液中の金属成分を析出させてめっき層を形成することを特徴とする。
そして、この被めっき対象物のめっき対象面の一部に対して、陰極面を離間配置し、この陰極面に通電して、被めっき対象物の一部領域に正の誘起起電力を起こさせアノード分極領域を形成することが好ましい。
また、本件発明の非接触めっき方法を用いた線形材料の非接触めっき方法にあっては、被めっき対象物が当該線形材料であり、この線形材料を、一方向から他方向に向けて直線的に走行させる際に、線形材料が、所定間隔をもって対向配置した一対の陽極電極の間を、陽極電極と接触することなく走行し、線形材料をカソード分極するようにしためっき工程と、線形材料が、所定間隔をもって対向配置した一対の陰極電極の間を、陰極電極と接触することなく走行し、線形材料をアノード分極するようにしたエッチングバック工程とを備えることが、線形材料をめっきする方法として好ましい。
この際、めっき工程、エッチングバック工程の順に行うことが、めっき工程において形成された異常形成箇所を溶融処理することができる観点において、好ましい。
また、エッチングバック工程、めっき工程の順に行うことが、めっき工程を行う以前に、線形材料表面に付着した汚れ等を溶解処理することができる観点において、好ましい。
更に、めっき工程とエッチングバック工程とを交互に複数回行うことが、線形材料表面に複数めっき層を形成することができる点において、好ましい。
また、被めっき対象物のめっき対象面と、陽極面又は陰極面とが、10mm〜100mm離間して配置するものであることが、めっき又はエッチングバックする際においてより好ましい。
<本件発明にかかる非接触めっき装置>
本件発明にかかる非接触めっき方法を採用して被めっき対象物の表面にめっき層を形成する非接触めっき装置を採用することが好ましい。
線形材料の非接触めっき方法を用いて線形材料の表面にめっき層を形成する線形材料の非接触めっき装置において、線形材料を一方向から他方向に向けて直線的に走行させる走行手段と、所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、陽極電極と接触することなく走行する線形材料を、線形材料をカソード分極するめっき手段と、所定間隔をもって対向配置される一対の陰極電極の間に、陰極電極と接触することなく走行する線形材料を、線形材料をアノード分極するエッチングバック手段とを備えることが好ましい。
また、線形材料を、所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、陽極電極と接触することなく走行させ、線形材料をカソード分極する第1のめっき手段と、第1のめっき手段の後段において、所定間隔をもって対向配置される一対の陰極電極の間に、陰極電極と接触することなく走行させ、線形材料をアノード分極するエッチングバック手段と、エッチングバック手段の後段において、所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、陽極電極と接触することなく走行させ該線形材料をカソード分極する第2のめっき手段とを備えることがより好ましい。
更に、線形材料の走行方向の陽極電極長を、線形材料の走行方向の陰極電極長よりも長くすることで、めっき層の厚さを確保する観点でより好ましい。
一対の陽極電極及び/又は一対の陰極電極を単一の電極板を折曲形成することにより構成することが好ましい。
線形材料の走行方向を軸方向として、線形材料を回転させる回転手段を備えることが、線形材料の表面全体にめっき層を均一に析出させる観点でより好ましい。
一対の陽極電極及び/又は一対の陰極電極を円筒状に構成された電極板により構成することが、線形材料の表面全体にめっき層を均一に析出させる観点でより好ましい。
本発明の非接触めっき方法及びその装置によれば、被めっき対象物に直接通電することなく、当該被めっき対象物に負の誘起起電力を起こさせカソード分極領域を形成し、そのカソード分極領域に相当する被めっき対象物の表面に、めっき液中の金属成分が析出してめっき層を形成することができるため、被めっき対象物と電極とを非接触とすることができ、これらが接触することによって生じるめっき表面の擦れを解消することができる。そのため、めっき層表面に擦り傷やスクラッチ等の外観異常が生じてしまう不都合を回避することができる。従って、表面が平滑なめっき層を形成することができ、要求品質を満足した商品を提供することが可能となる。
特に、めっき層に砥粒を保持させる場合には、めっき操作において、電極とめっき層表面とが非接触であるため、摩擦により砥粒がめっき層から脱落してしまう不都合を効果的に回避できる。従って、被めっき対象物表面に狙い通りの砥粒量を残すことができ、製品品質の安定を図ることができる。
本発明の非接触めっき方法の概略説明図である。(第1の配置態様) 本発明の非接触めっき方法の概略説明図である。(第2の配置態様) 本発明の非接触めっき方法の概略説明図である。(第3の配置態様) 本発明の非接触めっき装置の概略説明図である。(第4の配置態様) 他の実施例としての電極と線形材料の概略構成図である。 もう一つの他の実施例としての電極と線形材料の概略構成図である。 本発明の実施例としての非接触めっき装置の概略構成図である。
以下、図面を参照して、本件発明の「非接触めっき方法」と「非接触めっき装置」について各実施形態を例に挙げて説明する。
<本件発明にかかる非接触めっき方法の形態>
本件発明にかかる非接触めっき方法は、めっき液中で、被めっき対象物に直接通電することなく、誘起起電力を用いて被めっき対象物の表面にめっき層を形成するめっき方法である。
本発明のめっき方法では、被めっき対象物のめっき対象面に対して、陽極面を離間配置し、この陽極面に通電する。これによって、陽極面がアノード分極する。通電によって陽極面周囲には、磁界が発生するため、この陽極面と対向して離間配置される被めっき対象物には、陽極面に印加された電位と反対の電位である負の誘起起電力が生じる。その結果、当該陽極面に対峙した被めっき対象物の部位は、カソード分極領域となり、陰極となる。そして、被めっき対象物のカソード分極領域に、めっき液中の電着対象となる金属成分が析出し、被めっき対象物の表面にめっき層を形成することができる。
本発明におけるめっき方法では、めっき液は、電解めっきに用いることの可能なめっき液である限り、いかなる電解めっき液の使用も可能であり、何ら限定を要さない。例えば、銅系電解液であれば、硫酸酸性銅電解液、ピロリン酸銅電解液、真鍮組成のめっき液、その他の銅合金めっき液等の使用が可能であり、ニッケル系電解液であれば、ワット浴組成の電解液に限らず、全てのニッケル又はニッケル合金電解液の組成を採用することが可能である。
また、本発明におけるめっき方法において、被めっき対象物は、線状、又は、管状を呈する線形材料が好ましい。線形材料により構成される被めっき対象物のめっき対象面は、当該線形材料の外周面である。線形材料は、少なくとも表面が導電性材料にて構成されるものであればいかなるものであってもよい。例えば、ピアノ線等の鋼線、タングステン線、モリブデン線、鋼管、タングステン管、モリブデン管等を採用することができる。
また、めっき液の温度条件、陽極面に印加する電流密度、電解時間等の電解条件は、特に限定を要さず、電解めっきにおいて従来より実施可能とされる条件である限り、いかなる電解条件を採用することができる。
そして、好ましくは、上記陽極面と対極となる陰極面を、この被めっき対象物のめっき対象面の一部に対して、離間配置し、この陰極面に通電する。これにより、当該陰極面がカソード分極する。通電によってこの陰極面周囲には、磁界が発生するため、この陰極面と対向して離間配置される被めっき対象物の一部領域には、陰極面に印加された電位と反対の電位である正の誘起起電力が生じる。その結果、当該陰極面に対峙した被めっき対象物の部位がアノード分極領域となり、陽極となる。
この陽極面を構成する陽極と陰極面を構成する陰極との配置の具体的態様については、後述の非接触めっき装置において詳述する。
<本件発明にかかる非接触めっき装置の形態>
以下、図1の非接触めっき装置1の概略説明図を参照して、本件発明にかかる非接触めっき方法を採用した非接触めっき装置の具体的形態を説明する。本件発明を採用した非接触めっき装置1は、めっき液を貯留するめっき槽10と、当該めっき液内に浸漬され、陽極面を構成する少なくとも一対の陽極電極11、11とを有する。この一対の陽極電極11、11は、線形材料2の表面にめっき層を形成するめっき手段を構成するものであり、所定間隔をもって対向配置される。また、めっき槽10のめっき液には、陰極面を構成する少なくとも一対の陰極電極12、12が所定間隔をもって対向配置される。この一対の陰極電極12、12は、線形材料2の表面の清浄化処理、若しくは、表面に形成されためっき層のエッチングバック処理を行うエッチングバック手段を構成するものである。
ここで、めっき槽10内は、陽極電極11、11が配置される領域と、陰極電極12、12が配置される領域とが、仕切部材(仕切手段)14により、めっき液が相互に流通しないように区画される。
これら陽極電極11、11、陰極電極12、12は、給電手段としての整流器13によって、給電が行われる。そして、被めっき対象物として採用する線形材料2を、めっき液に浸漬された状態で、走行手段によって、それぞれ対向配置される陽極電極11、11間及び、陰極電極12、12間を、一方向から他方向に向けて直線的に走行させる。以下、各構成要素毎に説明する。
<陽極電極>
陽極電極11は、例えば、板状を成したステンレス、白金、カーボン等の不溶性材料にて構成されている。不溶性電極として通常用いられているものであれば、これに限定されない。この不溶性電極以外にも、陽極電極11は、めっき液に含まれ、線形材料2の表面に析出する金属を補う材料により構成してもよい。
対を成す一方の陽極電極11と、他方の陽極電極11とは、所定の間隔をおいて略平行に配置された状態で、めっき槽10内のめっき液に浸漬される。線形材料2は、この対向配置される陽極電極11、11間を、走行手段によって、当該陽極電極11、11と平行する方向に走行する。すなわち、線形材料2は、当該陽極電極11、11の間であって、これら各電極と略等間隔で離間する位置に、これら陽極電極11、11と接触することなく走行する。
より好ましくは、陽極電極11の線形材料2側の面(陽極面)と、線形材料2の陽極電極11側の面(めっき対象面)とは、10mm〜100mm離間して配置する。
これにより、陽極電極11の線形材料2側の面と線形材料2の陽極電極11側の面とが近接しすぎることによって線形材料2の表面に焼けめっきが形成されてしまう不都合を回避することができる。また、陽極電極11の線形材料2側の面と線形材料2の陽極電極11側の面とが離間しすぎることによって、線形材料2に及ぼす誘起起電力が弱まってしまい、めっき層の形成不良となる不都合を回避することができる。
<陰極電極>
陰極電極12は、例えば、板状を成したステンレス、白金、カーボン等の不溶性材料にて構成されている。不溶性電極として通常用いられているものであれば、これに限定されない。対を成す一方の陽極電極12と、他方の陰極電極12とは、上記陽極電極11の場合と同様に、所定の間隔をおいて略平行に配置された状態で、めっき槽10内のめっき液に浸漬される。線形材料2は、この対向配置される陰極電極12、12間を、走行手段によって当該陰極電極12、12と平行する方向に走行する。すなわち、線形材料2は、当該陰極電極12、12の間であって、これら各電極と略等間隔で離間する位置に、これら陰極電極12、12と接触することなく走行する。
より好ましくは、陰極電極12の線形材料2側の面(陰極面)と、線形材料2の陰極電極12側の面とは、10mm〜100mm離間して配置する。
これにより、陰極電極12の線形材料2側の面と、線形材料2の陰極電極12側の面とが近接しすぎることによって、線形材料2の表面に形成されためっき層が必要以上に溶解されてしまう不都合を回避することができる。また、陰極電極12の線形材料2側の面と、線形材料2の陰極電極12側の面とが必要以上に離間することで、線形材料2に及ぼす誘起起電力が弱まってしまい、異常析出箇所の溶解不良となる不都合を回避することができる。
<走行手段>
線形材料2を走行させる走行手段は、めっき槽10の一端側に配置される繰出部と、他端側に配置される巻取部とから構成されている。走行手段は、めっき槽10内において、線形材料2を繰出部がある操出側16(一方向)から、巻取部がある巻取側17(他方向)に向けて直線的に走行させる。なお、本実施の形態では、被めっき対象物が線形材料2であるため、操出部と巻取部とから構成される走行手段を採用しているが、被めっき対象物が線形材料以外の場合には、この構成に限定されない。
<整流器>
これら陽極電極11、11と陰極電極12、12には、整流器13により通電される。
以上の各構成により、次に、本件発明のめっき方法におけるめっき工程、エッチングバック工程について各工程に分けて説明する。
<めっき工程>
このめっき工程は、線形材料2が、走行手段によって陽極電極11、11との間を走行することで、当該線形材料2の陽極電極11、11と対峙する箇所に負の誘起起電力が生じて、カソード分極領域となった箇所に、めっき液中の電着対象となる金属成分が析出し、線形材料2の表面にめっき層を形成する。
すなわち、めっき工程では、陽極電極11、11に正の電位が印加されることで、対向する陽極電極11、11のそれぞれがアノード分極し、各電極11、11の周囲には、磁界が発生する。これによって、対向して離間配置される陽極電極11、11との間に進入する線形材料2は、これら陽極電極11、11と対向する箇所に、陽極電極11に印加された電位と反対の電位である負の誘起起電力が生じる。
そのため、走行手段によりこれら陽極電極11、11間を一方向(操出側16)から他方向(巻取側17)に向けて、線形材料2が走行することで、陽極電極11、11と対峙する領域に進入した箇所から順に、当該陽極電極11、11への正の電位の印加によって及ぼされる負の誘起起電力が生じ、カソード分極領域となっていく。線形材料2のカソード分極領域となった箇所は、陰極として作用して、当該箇所にめっき液中の電着対象となる金属成分が析出し、線形材料2の表面にめっき層が形成される。
このように、本件発明におけるめっき工程では、線形材料2が電極と接触して直接通電せずに、非接触の状態で、線形材料2に負の誘起起電力を生じさせてカソード分極領域を形成し、このカソード分極領域に相当する線形材料2の表面に、めっき液中の金属成分が析出してめっき層を形成することができるため、線形材料2と陽極電極11とが接触することによって、めっき表面に擦り傷や、スクラッチ等の外観異常が発生する不都合を未然に回避することができる。従って、めっき層表面に、極力損傷を与えられないため、平滑なめっき状態を維持することができる。
<エッチングバック工程>
このエッチングバック工程は、線形材料2が、走行手段によって陰極電極12、12との間を走行することで、当該線形材料2の陰極電極12、12と対峙する箇所(部位)に正の誘起起電力が生じて、アノード分極領域となる。
すなわち、エッチングバック工程では、陰極電極12、12に負の電位が印加されることで、対向する陰極電極12、12のそれぞれがカソード分極し、各電極12、12の周囲には、磁界が発生する。これによって、対向して離間配置される陰極電極12、12との間に進入する線形材料2は、これら陰極電極12、12と対向する箇所に、陰極電極12に印加された電位と反対の電位である正の誘起起電力が生じる。
そのため、走行手段によりこれら陰極電極12、12間を一方向(操出側16)から他方向(巻取側17)に向けて、線形材料2が走行することで、陰極電極12、12と対峙する領域に進入した箇所から順に、当該陰極電極12、12への負の電位の印加によって及ぼされる正の誘起起電力が生じ、アノード分極領域となっていく。線形材料2のアノード分極領域となった箇所は、陽極として作用する。
具体的には、アノード分極領域となった箇所に、めっき層の異常析出箇所がある場合には、当該異常析出箇所の金属成分がめっき液中に溶解して、めっき層の表面全体を平滑化するエッチングが行われる。アノード分極領域となった箇所に、まだめっき層が形成されていない場合には、かかる線形材料2の表面に付着した油脂等の汚れがめっき液中に溶解して、線形材料2の表面が清浄化される。
次に、各電極の配置の具体的態様について場合に分けて説明する。
<第1の配置態様>
図1は、第1の配置態様を示す。第1の配置態様では、めっき工程を行う一対の陽極電極11、11を走行手段の操出側16に対応する位置に設け、エッチングバック工程を行う一対の陰極電極12、12を、走行手段の巻取側17に対応する位置に設ける。
そして、線形材料2を走行手段によって各電極間を操出側16(一方向)から巻取側17(他方向)に走行させる。図1において線形材料2の走行方向を白抜き矢印にて示す。これにより、線形材料2は、まず、陽極電極11、11間を走行して、めっき工程が行われた後、陰極電極12、12間を走行してエッチングバック工程が行われる。
このように、めっき工程、エッチングバック工程の順に行うので、めっき工程では、線形材料2が、走行手段によって陽極電極11、11と対峙する領域に進入することで、負の誘起起電力によって、表面にめっき層が形成される。
そして、線形材料2のめっき工程を経た箇所は、走行手段によって、順次陰極電極12、12と対峙する領域に進入する。陰極電極12、12と対峙する領域に進入することで、線形材料2の当該箇所には、正の誘起起電力が生じ、陽極として作用する。この場合、めっき工程において、線形材料2の表面には、めっき層が形成されているため、当該アノード分極領域におけるめっき層の異常析出箇所が集中的に溶解されて、線形材料2のめっき層表面全体が平滑化される。
以上述べたように、第1の配置形態では、めっき工程において電極と非接触で線形材料2にめっき層を形成した後、エッチングバック工程において電極と非接触で線形材料2のめっき層における異常析出箇所を溶解処理することができるため、線形材料2の表面に平滑なめっき層を形成した製品を製造することができる。従って、線形材料2の表面に電極等との接触によって生じる擦り傷やスクラッチ等が形成されていない高い平滑状態を維持しためっき層を形成することができ、製品の品質向上を実現することができる。
<第2の配置態様>
図2は、第2の配置態様を示す。第2の配置態様では、エッチングバック工程を行う一対の陰極電極12、12を、走行手段の操出側16に対応する位置に設け、めっき工程を行う一対の陽極電極11、11を走行手段の巻取側17に対応する位置に設ける。
そして、線形材料2を走行手段によって各電極間を操出側16(一方向)から巻取側17(他方向)に走行させる。図2において線形材料2の走行方向を白抜き矢印にて示す。これにより、線形材料2は、まず、陰極電極12、12間を走行して、エッチングバック工程が行われた後、陽極電極11、11間を走行してめっき工程が行われる。
このように、エッチングバック工程、めっき工程の順に行うことで、エッチングバック工程では、表面にめっき層が形成される前の線形材料2が、走行手段によって陰極電極12、12と対峙する領域に進入することで、線形材料2の当該箇所には、正の誘起起電力が生じ、陽極として作用する。この場合、陽極となった線形材料2のアノード分極領域では、線形材料2の表面に付着した油分やそれ以外の汚れ等が溶解除去される。
そして、線形材料2のエッチングバック工程を経た箇所は、走行手段によって、順次陽極電極11、11と対峙する領域に進入する。陽極電極11、11と対峙する領域に進入することで、線形材料2の当該箇所には、負の誘起起電力によって、表面にめっき層が形成される。
以上述べたように、第2の配置形態では、エッチング工程において電極と非接触で線形材料2の表面を清浄化処理した後、めっき工程において電極と非接触で線形材料2の表面に、めっき層を形成することができる。従って、線形材料2の表面の汚染物質を溶解除去した後、当該清浄な線形材料2の表面に電着対象となる金属成分を析出させて、めっき層を形成することができるため、線形材料2の表面に、汚染物質の存在によって凹凸が形成されることなく、平滑な状態で一様に金属成分を析出させることができ、表面が平滑なめっき層の形成を実現することができる。
<第3の配置態様>
図3は、第3の配置態様を示す。第3の配置態様では、めっき工程を行う陽極電極11、11と、エッチングバック工程を行う陰極電極12、12とを交互に複数、配置する。そして、めっき工程と、エッチングバック工程とを交互に複数回行う。図3では、走行手段の操出側16(一方向)から巻取側17(他方向)に向けて陽極電極11−陰極電極12−陽極電極11−陰極電極12−陽極電極11と交互に配置する。図3において線形材料2の走行方向を白抜き矢印にて示す。
これにより、線形材料2を走行手段により操出側16(一方向)から巻取側17(他方向)に向けて走行させることで、線形材料2の表面にめっき工程によるめっき層の形成と、エッチングバック工程による表面層の平滑化処理とを交互に複数回、行うことができる。なお、各工程の回数は、これに限定されるものではなく、製品の使用目的や、めっき層の形成状況に応じて適宜、適切な回数に設定する。
これにより、めっき工程において、線形材料2の表面にめっき層を形成しつつ、当該めっき層に形成された異常析出箇所をエッチングバック工程において溶解処理することができ、線形材料2の表面に平滑な状態を維持しつつめっき層を複数積層することが可能となる。
なお、図3では、交互に行われるめっき工程をエッチングバック工程の前段に行っているが、これに限定されるものではなく、図2に示すような配置態様と同様に、エッチングバック工程をめっき工程の前段に行ってもよい。また、最終工程として図3では、めっき工程を行っているが、これに限定されず、エッチングバック工程を行ってもよい。
<第4の配置態様>
図4は、第4の配置態様を示す。第4の配置態様では、線形材料2をカソード分極する第1のめっき手段としての第1の陽極電極11A、11Aと、当該第1の陽極電極11A、11Aの後段(走行手段の巻取側17)において、線形材料2をアノード分極するエッチングバック手段としての陰極電極12、12と、当該陰極電極12、12の後段(走行手段の巻取側17)において線形材料2をカソード分極する第2のめっき手段としての第2の陽極電極11B、11Bとを有する。
第1のめっき手段としての第1の陽極電極11A、11Aは線形材料2の走行方向である操出側16(一方向)から巻取側17(他方向)に渡って延在した状態で、所定間隔をもって対向配置される。図4において線形材料2の走行方向を白抜き矢印にて示す。当該第1の陽極電極11A、11Aの間に、走行手段にて走行制御される線形材料2がこれら陽極電極11Aと接触しないように配置される。
エッチングバック手段としての陰極電極12、12は、第1の陽極電極11A、11A側(一方向)から巻取側17(他方向)に渡って延在した状態で、所定間隔をもって対向配置される。陰極電極12、12の間に、線形材料2が陰極電極12と接触しないように配置される。
第2のめっき手段としての第2の陽極電極11B、11Bは、陰極電極12、12側(一方向)から巻取側17(他方向)に渡って延在した状態で、所定間隔をもって対向配置される。第2の陽極電極11B、11Bの間に、線形材料2が陽極電極11Bと接触しないように配置される。
かかる構成で、整流器13によってこれら第1の陽極電極11A、11A、陰極電極12、12、第2の陽極電極11B、11Bに通電する。線形材料2が走行手段によって操出部からめっき槽10内のめっき液内に繰り出され、第1の陽極電極11A、11Aとの間をこれらと接触することなく走行する。これにより、第1の陽極電極11Aと対峙する部位の線形材料2は、カソード分極領域となり、陰極として作用し、線形材料2のカソード領域には、めっき液中の電着対象となる金属成分が析出し、線形材料2の表面にめっき層が形成される。
次いで、かかる第1の陽極電極11A、11Aの線形材料2の巻取部側に並設される陰極電極12、12との間を、めっき層が形成された線形材料2が、当該陰極電極12と接触することなく走行する。これにより、陰極電極12と対峙する部位の線形材料2は、アノード分極領域となり、陽極として作用し、線形材料2のアノード領域では、異常析出箇所の溶解が行われる。
ここで、線形材料2は、走行手段によって、第1の陽極電極11A、11A間から陰極電極12、12間に渡って直線的に走行する。この際、第1の陽極電極11Aと対峙する部位では、カソード分極が生じ、陰極電極12と対峙する部位では、アノード分極が生じる。そのため、直線的に走行する線形材料2は、陽極電極11Aと対峙する部位と、陰極電極12に対峙する部位とで、分極が生じやすくなり、それぞれの誘起起電力の発生効率を向上させることができる。
次いで、かかる陰極電極12の線形材料2の巻取部側に並設される第2の陽極電極11B、11Bとの間を、めっき層のエッチング処理された線形材料2が、当該第2の陽極電極11Bと接触することなく走行することで、第2の陽極電極11Bと対峙する部位の線形材料2は、カソード分極領域となり、陰極となる。これによって、陰極となった線形材料2のカソード領域では、エッチング処理されためっき層の表面に、更にめっき層を形成することができる。
なお、この場合においても、直線的に走行する線形材料2の一側が陰極電極12に対峙し、他側が第2の陽極電極11Bに対峙する構成とされているため、分極が生じやすくなり、それぞれの誘起起電力の発生効率を向上させることができる。
これにより、線形材料2の表面に形成されるめっき層を異常析出箇所を溶解しつつ、積層することが可能となるため、平滑状態を維持して、適正厚みのめっき層を構築していくことが可能となる。これにより、製品の品質向上を実現することができる。
上記各配置態様において、線形材料2の走行方向の陽極電極11の長さは、線形材料2の走行速度10m/min〜20m/minに対して、0.5m〜2.0mであることが好ましい。めっき工程を行う陽極電極11が線形材料2の走行方向に対して短すぎると、十分なめっき膜厚を確保することができないという問題があり、長すぎる場合には、必要以上にめっき層が形成されてしまい、異常析出が顕著となり、外観の悪化を招来する。
また、線形材料2の走行方向の陰極電極12の長さは、線形材料2の走行速度10m/min〜20m/minに対して50mm〜200mmであることが好ましい。エッチングバック工程を行う陰極電極12が線形材料2の走行方向に対して短すぎると、異常析出箇所の溶解を十分に行うことができない問題がある。
更に、めっき工程を行う陽極電極11の長さは、エッチング工程を行う陰極電極12の長さよりも長く構成することが好ましい。陽極電極11の長さを陰極電極12より長くすることで、対向配置される電極間を走行する線形材料2の表面に及ぼす誘起起電力を、陽極電極11(第1の陽極電極11A)に対峙する部位と、陰極電極12に対峙する部位とで、陽極電極11に対峙する部位の方をより大きくすることができる。従って、エッチングバック工程において、異常析出箇所のみならず、めっき工程において形成されためっき層の全体が溶解されてしまい、必要厚さを確保することができなくなる不都合を未然に回避することができる。
なお、上記各態様では、所定の間隔をもって対向配置される陽極電極11、11、又は、陰極電極12、12は、少なくとも2枚の電極板をそれぞれ対向させて配置させることにより構成している。複数の電極を対向配置する構成に限定されるものではなく、図5に示すように、単一の電極板を両端部が所定の間隔をもって離間するように例えば、線形材料2の走行方向と直交する方向における断面が略U字状に折曲形成することによって構成してもよい。これにより、予め陽極電極11、11、若しくは、陰極電極12、12が所定の間隔をもって構成されているため、電極配置作業性を著しく簡素化することができ、一定の間隔を容易に維持することが可能となる。
2枚の電極板をそれぞれ対向させて配置した場合、及び、略U字状に折曲形成された電極板によって対向配置される陽極電極11、11及び陰極電極12、12を構成した場合にはこれらの陽極電極11、11の間において生じるアノード分極によって生じる線形材料のカソード分極領域の形成、又は、陰極電極12、12の間において生じるカソード分極によって生じる線形材料2のアノード分極領域の形成は、各電極と対峙する面がもっとも大きく、当該面に偏ってめっき層の形成やエッチング処理が行われる。これは、被めっき対象物である線形材料2の直径が大きいほど、影響が大きくなる。
そこで、回転手段を用いて、線形材料2の走行方向を軸方向として、線形材料2を回転させることが望ましい。これにより、線形材料2の表面全体にめっき層を均一に析出させることが可能となり、線形材料2のめっきムラを解消でき、製品の品質向上を図ることができる。
なお、線形材料2のように、被めっき対象物が走行方向と直交する断面がほぼ円形である場合、図6に示すように、一対の陽極電極及び/又は一対の陰極電極を円筒状に構成された単一の電極板により構成してもよい。これにより、格別に、線形材料2を回転させることなく、外表面全体にめっき層を均一に析出させることが可能となる。
上述した実施の形態では、被めっき対象物を線形材料として説明しているが、当該被めっき対象物は、これに限定されるものではなく、矩形体、棒状体、板状体、その他、表面の凹凸が複雑なものであってもよい。この場合、被めっき対象物の形状に応じて、被めっき対象物のめっき対象面に対して、陽極面を離間配置する。
具体的には、被めっき対象物が矩形体であり、四面がめっき対象面である場合には、それぞれのめっき対象面と対向する位置に陽極面を離間配置する。そして、それぞれの陽極面と対向する陽極面との間でアノード分極を生じさせて、これら各陽極面と対峙しためっき対象面に負の誘起起電力を起こさせてカソード分極し、めっき液中の金属成分を析出させる。
同様に、それぞれのめっき対象面と対向する位置に陰極面を離間配置し、当該陰極面と対向する陰極面との間でカソード分極を生じさせて、これら各陰極面と対峙しためっき対象面に正の誘起起電力を起こさせてアノード分極し、めっき対象面のめっき層の異常析出箇所の溶解させる。
また、上述した各実施の形態において、めっき槽10は、陽極電極11、11が配置される領域と、陰極電極12、12が配置される領域とが、仕切部材(仕切手段)14により、めっき液が相互に流通しないように区画されるがこれに限定されるものではなく、別槽によって構成してもよい。更に、陽極電極11、11が配置される領域と、陰極電極12、12が配置される領域とでは、共通の電解めっき液を採用しているが、これに限定されるものではない。例えば、表面に形成されためっき層のエッチングバック処理を行う陰極電極12、12が配置される領域の電解めっき液は、金属を含まない導電性塩を含む溶液であって、より導電性を有する水溶液を採用してもよい。この場合、カソード面への金属の析出を防止することが可能となる。
本実施の形態では、線形材料2の表面にめっき層を形成する場合について詳述しているが、当該めっき方法をめっき層にダイヤモンドやCBNなどの砥粒が保持させたダイヤモンドワイヤーソーの製造に採用することができる。すなわち、ダイヤモンドやCBNなどの砥粒をめっき層に保持させてダイヤモンドワイヤーソーを製造する場合に、本件発明を採用することで、製造過程にて、めっき表面と電極との接触を回避できるため、砥粒がめっき層から摩擦により脱落してしまう不都合を効果的に回避できる。これにより、いったん定着させた砥粒が、電極との接触によって減少してしまう不都合を解消でき、製品の砥粒固着量を確保することが可能となる。従って、製品品質の安定したダイヤモンドワイヤーソーの提供が可能となる。
以下、本実施の形態にかかる非接触めっき装置3について図7を参照して説明する。図7は本実施例の非接触めっき装置3の概略平面図を示している。本実施例における非接触めっき装置3は、線形材料の一例としてのワイヤー30の外表面全体をニッケル(Ni)めっき層にて被覆する装置である。ここで、ワイヤー30は、径0.12mmの鋼線を採用する。
非接触めっき装置3は、めっき液を貯留しためっき槽21、22を有するめっき装置本体20と、当該めっき装置本体20の一側に配設される走行手段としての巻出部26及び巻取部27とから構成される。
めっき装置本体20は、被めっき対象物となる線形材料としてのワイヤー30の表面を前処理する前処理部23と、一連のめっき処理が行われたワイヤー30の表面を後処理する後処理部24と、めっき槽21、22とを有する。ここでは、一例として、前処理部23と、めっき槽21、22と、後処理部24が長手方向に延在して並置される。
巻出部26は、ワイヤー30をめっき装置本体20側に向けて繰り出す手段であり、巻取部27は、めっき装置本体20にて処理された後のワイヤー30を巻き取る手段である。
めっき装置本体20の各めっき槽21、22は、前処理部23側(即ち、巻出部26側。一方向)から後処理部24側(即ち、巻取部27側。他方向)に向けて直線的に延在して構成されている。めっき槽21、22内には、めっき液としてニッケル(Ni)を含んだ硫酸電解液(ニッケル系電解液)が貯留されている。
巻出部26側に配設されるめっき槽21内には、めっき工程を行う陽極電極31、31が長手方向に延在して、めっき液に浸漬された状態で所定寸法離間して対向配置される。各陽極電極31、31は、板状を成したカーボンの不溶性材料にて構成されており、図示しない整流器によって正の電荷が印加されている。なお、陽極電極を構成する不溶性材料は、カーボンに限定されるものではなく、これ以外にも、酸化イリジウムや白金など不溶性電極として用いられるものであれば、採用することができる。
そして、ワイヤー30は、対向する陽極電極31、31間を走行する。このとき、巻出部26及び巻取部27によって走行するワイヤー30のめっき対象面と、各陽極電極31、31のワイヤー30側の面とは、それぞれ10mm離間して配置され、これらが接触しない構成とされる。また、この第1の陽極電極31は、ワイヤー30の走行方向と平行して10cm延在して構成される。
また、巻取部27側に配設されるめっき槽22内には、エッチングバック工程を行う陰極電極34、34が長手方向に延在して、めっき液に浸漬された状態で所定寸法離間して対向配置される。各陰極電極34、34は、陽極電極31と同様に板状を成したカーボンの不溶性材料にて構成されており、図示しない整流器によって負の電荷が印加されている。なお、陰極電極を構成する不溶性材料は、カーボンに限定されるものではなく、これ以外にも、酸化イリジウムや白金など不溶性電極として用いられるものであれば、採用することができる。
そして、これら電極34、34間にワイヤー30が走行する。ワイヤー30のめっき対象面と、各陰極電極34、34のワイヤー30側の面とは、それぞれ10mm離間して配置され、これらが接触しない構成とされる。また、この陰極電極34は、ワイヤー30の走行方向と平行して10cm延在して構成される。
以上の構成により、巻出部26及び巻取部27を作動させ、ワイヤー30を20m/minの速度で巻出部26から前処理部23側に向けて繰り出す。繰り出されたワイヤー30は、前処理部23を通過し、外表面の前処理が行われる。前処理には脱脂処理や酸による粗化処理などの前処理が含まれる。その後、ワイヤー30は、めっき槽21及び22の各めっき液内に順次引き込まれる。
これにより、巻出部26から繰り出されたワイヤー30は、陽極電極31、31との間(めっき工程)、陰極電極34、34との間(エッチングバック工程)を、各電極と接触しないように走行する。
また、各陽極電極31、31と各陰極電極34、34との間には、0.3Aの電流を通電させる。各電極の電流密度は25A/cmとする。
そのため、めっき工程では、陽極電極31、31に対峙したワイヤー30の部位は、陽極電極31、31がアノード分極することで、負の誘起起電力が生じてカソード分極領域になり、陰極となる。これにより、ワイヤー30の陰極となった箇所にめっき液中の電着対象となるニッケル成分が析出し、ワイヤー30の表面にニッケルめっき層が形成される。
次いで、エッチングバック工程では、陰極電極34、34に対峙したワイヤー30の部位は、陰極電極34、34がカソード分極することで、正の誘起起電力が生じてアノード分極領域になり、陽極となる。これにより、ワイヤー30の陽極となった箇所の異常析出箇所を溶解し、表面全体を平滑にすることができる。
そして、めっき工程及びエッチングバック工程からなる一連のめっき層形成工程が終了したワイヤー30は、巻取部27によってめっき槽22から後処理部24に送り出される。送り出されたワイヤー30は、後処理部24を通過し、外表面の後処理が行われる。その後、ワイヤー30は、巻取部27により巻き取られる。
その結果、本実施例によって得られるサンプルの場合には、めっき層の厚さは全面に渡って、ほぼ均一のものとなっていることが確認できた。また、このめっき層の表面は、電極との接触による擦れ傷が形成されていない平滑な状態であることが確認できた。
なお、上述した実施例では、めっき工程の後、エッチングバック工程を行うことで、平滑なめっき層を形成しているが、これに限定されるものではなく、上述した各実施形態のように、めっき工程とエッチングバック工程の工程順序を逆としたり、各工程を交互に繰り返して行うことで、平滑なめっき層を何層にも構成してもよい。
本件発明にかかる非接触めっき方法及び非接触めっき装置は、電解めっきにより被めっき対象物の表面にめっき層を形成する際に、電極と被めっき対象物とを接触させることなく、誘起起電力によって被めっき対象物の表面にめっき層を形成することができるため、電極との摩擦によって傷が生じる不都合を回避することができる。このため、品質の安定しためっき製品の提供を可能とすることができる。
1、3 非接触めっき装置
2 線形材料(被めっき対象物)
10、21、22 めっき槽
11 陽極面
12 カソード
13 整流器
14 仕切部材(仕切手段)
16 操出側
17 巻取側
20 めっき装置本体
23 前処理部
24 後処理部
26 巻出部
27 巻取部
30 ワイヤー
31 陽極電極
34 陰極電極

Claims (14)

  1. めっき液中で、被めっき対象物に直接通電することなく、誘起起電力を用いて被めっき対象物の表面にめっき層を形成する方法であって、
    被めっき対象物のめっき対象面に対して、陽極面を離間配置し、この陽極面に通電してアノード分極し、被めっき対象物に負の誘起起電力を起こさせカソード分極領域を形成し、そのカソード分極領域に相当する被めっき対象物の表面に、めっき液中の金属成分を析出させてめっき層を形成することを特徴とする非接触めっき方法。
  2. 前記被めっき対象物のめっき対象面の一部に対して、陰極面を離間配置し、この陰極面に通電して、被めっき対象物の一部領域に正の誘起起電力を起こさせアノード分極領域を形成した請求項1に記載の非接触めっき方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の非接触めっき方法を用いた線形材料の非接触めっき方法であって、
    前記被めっき対象物が当該線形材料であり、この線形材料を、一方向から他方向に向けて直線的に走行させる際に、
    当該線形材料が、所定間隔をもって対向配置した一対の陽極電極の間を、陽極電極と接触することなく走行し、当該線形材料をカソード分極するようにしためっき工程と、
    当該線形材料が、所定間隔をもって対向配置した一対の陰極電極の間を、陰極電極と接触することなく走行し、当該線形材料をアノード分極するようにしたエッチングバック工程とを備えることを特徴とする線形材料の非接触めっき方法。
  4. 前記めっき工程、前記エッチングバック工程の順に行う請求項3に記載の線形材料の非接触めっき方法。
  5. 前記エッチングバック工程、前記めっき工程の順に行う請求項3に記載の線形材料の非接触めっき方法。
  6. 前記めっき工程と前記エッチングバック工程とを交互に複数回行う請求項3〜請求項5のいずれかに記載の線形材料の非接触めっき方法。
  7. 被めっき対象物のめっき対象面と、陽極面又は陰極面とが、10mm〜100mm離間して配置するものである請求項1〜請求項6のいずれかに記載の非接触めっき方法。
  8. 請求項1又は請求項2に記載の非接触めっき方法を用いて被めっき対象物の表面にめっき層を形成することを特徴とする非接触めっき装置。
  9. 請求項3〜請求項7のいずれかに記載の線形材料の非接触めっき方法を用いて線形材料の表面にめっき層を形成する線形材料の非接触めっき装置において、
    線形材料を一方向から他方向に向けて直線的に走行させる走行手段と、
    所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、当該陽極電極と接触することなく走行する線形材料を、当該線形材料をカソード分極するめっき手段と、
    所定間隔をもって対向配置される一対の陰極電極の間に、当該陰極電極と接触することなく走行する線形材料を、当該線形材料をアノード分極するエッチングバック手段とを備えることを特徴とする線形材料の非接触めっき装置。
  10. 前記線形材料を、所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、当該陽極電極と接触することなく走行させ、当該線形材料をカソード分極する第1のめっき手段と、
    第1のめっき手段の後段において、所定間隔をもって対向配置される一対の陰極電極の間に、当該陰極電極と接触することなく走行させ、当該線形材料をアノード分極するエッチングバック手段と、
    エッチングバック手段の後段において、所定間隔をもって対向配置される一対の陽極電極の間に、当該陽極電極と接触することなく走行させ、当該線形材料をカソード分極する第2のめっき手段とを備える請求項9に記載の線形材料の非接触めっき装置。
  11. 前記線形材料の走行方向の陽極電極長を、線形材料の走行方向の陰極電極長よりも長くした請求項9又は請求項10に記載の線形材料の非接触めっき装置。
  12. 前記一対の陽極電極及び/又は前記一対の陰極電極を単一の電極板を折曲形成することにより構成した請求項9〜請求項11のいずれかに記載の線形材料の非接触めっき装置。
  13. 前記線形材料の走行方向を軸方向として、線形材料を回転させる回転手段を備えた請求項9〜請求項12のいずれかに記載の線形材料の非接触めっき装置。
  14. 前記一対の陽極電極及び/又は前記一対の陰極電極を円筒状に構成された電極板により構成した請求項9〜請求項11の何れかに記載の非接触電解めっき装置。
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