JP2013153804A - 酸素濃縮器 - Google Patents

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俊介 綱嶋
Tadao Shimoji
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Abstract

【課題】大型化することなく、院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果と同様の効果を患者に与えること。
【解決手段】コンプレッサ20は、原料空気から圧縮空気を生成し、PSA部30は、生成した圧縮空気を用いて患者に供給する高濃度酸素を生成する。このPSA部30により生成された高濃度酸素の酸素濃度は、酸素センサ43が検出する。操作部81は、処方酸素流量を設定する。流量調整部46は、実際に患者に供給される酸素濃度と、処方酸素流量と、基準酸素濃度とに基づいて、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、空気を導入して高濃度の酸素を放出する酸素濃縮器に関する。
酸素濃縮器として、呼吸器疾患の患者が在宅で酸素を吸入する在宅酸素療法(HOT:home oxygen therapy)において使用される酸素濃縮器がある。この種の酸素濃縮器は、例えば特許文献1に記載されている。
酸素濃縮器は、フィルタおよび吸気タンクを通して取り込んだ室内の空気をコンプレッサにより圧縮する。酸素濃縮器は、この圧縮空気を、シーブベッド(吸着塔)を通過させることにより、圧縮空気から高濃度の酸素を分離し、さらに、高濃度酸素を加湿する。シーブベッドは、加圧空気に対して窒素を吸着し減圧空気に対して窒素を脱着する性質を持つ吸着材(例えば、ゼオライト)が充填されている。加湿後の高濃度酸素は、使用時に患者が装着する鼻腔カニューラを介して患者体内に供給される。
患者は、自宅に酸素濃縮器を設置して、在宅時には、医師の処方に従って酸素濃縮器から高濃度酸素を吸入する。外出時には、患者は必要に応じて携帯型の酸素ボンベを使用し、酸素ボンベから高濃度酸素を吸入する。
特開2006−263441号公報
ところで、患者に対して出される上記酸素濃縮器の使用に関する処方では、単位時間当たりの酸素流量及び処方時間等は、例えば、院内配管や酸素ボンベを用いて酸素を患者に供給する等のように、純酸素を患者に供給することを想定して決定されている。
周知のように、在宅用の酸素濃縮器により生成される高濃度酸素の酸素濃度は、院内配管や酸素ボンベなどにより患者に供給される酸素の酸素濃度とは異なる。院内配管や酸素ボンベなどにより患者に供給される酸素は、濃度100%の純酸素である。これに対して、在宅用の酸素濃縮器によって生成される酸素の酸素濃度は、87%から95%程度であり、一般的には、90%前後となっている。これは、酸素濃縮手段としてゼオライトを吸着材として使用しても、窒素を100%分離することが困難であることと、アルゴンや二酸化炭素等の窒素以外の微量気体は吸着せず、分離できないためである。
このため、在宅用に出された医師の処方に従って、在宅で酸素濃縮器の流量を調節して高濃度酸素を吸入する場合の治療の効果、つまり、患者に供給される酸素の量は、医師が想定する治療の効果とは、若干異なる。
これに対して、酸素濃縮器において、酸素濃縮器が内蔵するゼオライトを更に増加、つまり、シーブベッドを増加して窒素を全て分離し、アルゴンや二酸化炭素等の酸素以外の気体を分離する新たな機構や装置を複数組み合わせることで、100%の酸素濃度を実現することが考えられるが、装置が大型化になるという問題が発生する。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、装置自体が大型化になることなく、院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果と同様の効果を患者に与えることができる酸素濃縮器を提供することを目的とする。
本発明の酸素濃縮器の一つの態様は、原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、前記圧縮空気を用いて患者に供給する高濃度酸素を生成する酸素生成部と、前記酸素生成部により生成された高濃度酸素の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、前記高濃度酸素の酸素流量または、前記高濃度酸素の酸素濃度を設定する設定部と、検出された酸素濃度と、設定された設定酸素流量または設定された設定酸素濃度と、基準酸素濃度とに基づいて、前記患者に供給する前記高濃度酸素の酸素流量を調整する流量調整部とを備える構成を採る。
本発明によれば、装置自体が大型化になることなく、院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果と同様の効果を患者に与えることができる酸素濃縮器を実現できる。
本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図 実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図 酸素流量調整処理の一例について示すフローチャート 流量調整で使用できるテーブルの一例を示す図
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る酸素濃縮器の配管系統の概略構成を示す図である。図1に示す酸素濃縮器1は、空気取入部10、空気圧縮部20、PSA(Pressure Swing Adsorption)部30、酸素貯留部40、酸素供給部50を備えたPSA式の酸素濃縮器である。なお、本実施の形態では、酸素濃縮器を据置型の酸素濃縮器として説明するが、これに限らず、携帯型の酸素濃縮器としてもよい。
空気取入部10は、原料空気となる外気を筐体内に取り入れる部分で、吸気フィルタ11、ヘパフィルタ12等を備えている。吸気フィルタ11は、筐体に設けられた空気取入口13を介して導入された原料空気からゴミや埃等の空中浮遊粒子を除去する。ヘパフィルタ12は、吸気フィルタ11により除去されなかった微細粒子を除去する。
空気圧縮部20は、所謂、コンプレッサであり、空気取入部10を介して導入された原料空気を圧縮して圧縮空気を生成する。なお、空気圧縮部20の上流(ヘパフィルタ12の下流)には、空気圧縮部20の動作音に対して消音効果を発揮する膨張型消音器(サイレンサ)を配設するのが望ましい。
PSA部30は、高濃度酸素を生成する高濃度酸素生成部として機能する。PSA部30は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気から窒素を分離して高濃度酸素(例えば、高濃度酸素ガス)を生成し、これを酸素貯留部40に送出する。PSA部30は、流路切替部31、排気サイレンサ32、シーブベッド(吸着塔)33A、33B、パージオリフィス34、均圧弁35、逆止弁36A、36B等を備えている。
流路切替部31は、4つの切替弁SV1〜SV4を備えたマニホールド(多岐管)で構成され、空気圧縮部20で生成された圧縮空気をシーブベッド33A、33Bに交互に送出するとともに、シーブベッド33A、33Bを交互に大気圧に開放して窒素富化空気を排出する。
具体的には、流路切替部31では、切替弁SV1が“開”、切替弁SV2が“閉”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Aに向かう流路が開通される一方で、シーブベッド33Aから排気サイレンサ32に向かう流路が閉鎖される。同時に、流路切替部31では、切替弁SV3が“閉”、切替弁SV4が“開”とされることにより、空気圧縮部20からシーブベッド33Bに向かう流路が閉鎖される一方で、シーブベッド33Bから排気サイレンサ32に向かう流路が開通される。この場合、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Aに送出され、シーブベッド33Bからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。
また、切替弁SV1〜SV4が上記と逆の状態となっている場合は、空気圧縮部20で生成された圧縮空気がシーブベッド33Bに送出され、シーブベッド33Aからは窒素富化空気が放出されて排気サイレンサ32を介して排気されることとなる。切替弁SV1〜SV4の開閉状態は、例えば10秒間隔で切り替えられる。
排気サイレンサ32は、酸素濃縮器1の筐体に設けられた排気口(図示略)に接続され、シーブベッド33A、33Bから放出された窒素富化空気を筐体の外部に排出する際の排気音を消音する。
シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31を介して送られてきた圧縮空気から窒素を分離し、高濃度酸素を生成する。シーブベッド33A、33Bには、酸素より窒素を早く吸着する性質を有するゼオライト等の吸着材が充填されている。
シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31によって空気圧縮部20からの流路が開通されているとき、圧縮空気が送り込まれて加圧状態となる。このとき、シーブベッド33A、33Bでは、窒素および水分が吸着され、酸素だけが通過するため、高濃度酸素が生成される(吸着工程)。
シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素の濃度は、例えば90%程度に調整される。また、ゼオライトは窒素のみならず水分をも吸着するので、シーブベッド33A、33Bで生成される高濃度酸素は極めて乾燥した状態となる(例えば湿度0.1〜0.2%)。
一方、シーブベッド33A、33Bは、流路切替部31によって排気サイレンサ32への流路が開通されているとき、大気圧に開放されて減圧状態となる。このとき、ゼオライトに吸着していた窒素および水分が脱離され、シーブベッド33A、33Bから窒素富化空気が放出され、排気サイレンサ32を介して排気される。これにより、シーブベッド33A、33Bの吸着能力が再生される(再生工程)。
シーブベッド33A、33Bは、逆止弁36A、36Bを介して酸素貯留部40の製品タンク41に接続されている。逆止弁36A、36Bは、製品タンク41に貯留された高濃度酸素がシーブベッド33A、33Bに逆流するのを防止する。
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、パージオリフィス34を有する配管で接続されている。一方のシーブベッド33A(又は33B)で生成された高濃度酸素は、逆止弁36A(又は36B)を介して酸素貯留部40に送出されるとともに、パージオリフィス34を介して他方のシーブベッド33B(又は33A)に送出される。生成された高濃度酸素の一部が他方のシーブベッド33B(又は33A)に送り込まれることにより、当該シーブベッド33B(又は33A)の再生工程が効率よく行われる。パージオリフィス34のオリフィス径によって、それぞれの流路における高濃度酸素の流量が制御される。
また、シーブベッド33A、33Bの下流側は、均圧弁35を有する配管で接続されている。再生工程にあるシーブベッド33A、33Bを吸着工程に切り替える際、減圧(大気圧)下にそのまま圧縮空気を流入させると窒素の吸着効率が悪い。そのため、切替時に均圧弁35が“開”とされ、シーブベッド33A、33Bの圧力が平均化される。
酸素貯留部40は、PSA部30で生成された高濃度酸素を一時的に貯留しておく部分である。酸素貯留部40は、製品タンク41、圧力調整部(圧力レギュレータ)42、酸素センサ43、圧力センサ44及び流量調整部46等を備えている。
製品タンク41は、シーブベッド33A、33Bで生成された高濃度酸素を貯留するための容器である。シーブベッド33A、33Bから送出された高濃度酸素を一旦製品タンク41に貯留しておくことにより、高濃度酸素の濃度変動および圧力変動が抑制されるので、使用者に安定した濃度および流量で高濃度酸素を供給できる。
圧力調整部42は、供給する高濃度酸素の流量を制御するために、高濃度酸素の圧力を使用に適した一定圧に調整する。製品タンク41に貯留されている高濃度酸素の圧力は、製品タンク41への流入又は製品タンク41からの流出がある限り少なからず変動する。この場合、正確な流量制御が困難となる上、酸素センサ43による正確な濃度測定が困難となる。これを考慮して、圧力調整部42により高濃度酸素が一定圧に調整されるようになっている。
酸素センサ43は、圧力調整部42から送出された高濃度酸素の濃度(酸素濃度)を、所定の間隔(例えば20分)又は連続して検出する。酸素センサ43には、例えばジルコニア式や超音波式のセンサが好適である。ここでは、酸素センサ43は、酸化物イオン導電体である安定化ジルコニアを用いた酸素センサであり、酸素富化機構によって生成された気体の酸素濃度(%)を周期的に測定している。なお、測定対象となる高濃度酸素の圧力が変動していると正確な測定が困難となるため、一般には、酸素センサ43は圧力調整部42の下流に流量制限オリフィス45を介して接続される。
圧力センサ44は、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力を検出する。圧力センサ44による検出結果に基づいて、製品タンク41に貯留された高濃度酸素の圧力が正常な範囲に保持されているかを確認できる。
流量調整部46は、圧力調整部42から送出された高濃度酸素の流量を調整する。調整後の酸素流量を示す信号は、制御部60に出力される。この流量調整部46としては、例えば、複数のオリフィスを備えて所望の流量に合ったオリフィスを選択して用いられるようにしたオリフィス式の流量設定器、ニードルバルブを用いたニードルバルブ式の流量設定器、或いは、電気的に流量を設定するマスフローコントローラ等が挙げられる。特に、マスフローコントローラを用いる構成が望ましい。
酸素供給部50は、酸素貯留部40から送出された高濃度酸素を、使用者の呼吸に同調して酸素出口55から放出する部分である。酸素供給部50は、バクテリアフィルタ51および圧力センサ53等を備えている。
バクテリアフィルタ51は、使用者に清浄な高濃度酸素を供給するために、高濃度酸素に含まれる細菌類を捕集して除菌する。
圧力センサ53は、使用者の呼吸を検出するためのセンサであり、バクテリアフィルタ51の下流側(バクテリアフィルタ51と酸素出口55を結ぶ流路)に流量制限オリフィス54を介して接続されている。
酸素供給部50から放出された高濃度酸素は、酸素出口55に接続された鼻カニューラや酸素マスクを介して使用者に供給される。
なお、高濃度酸素は極めて乾燥した状態となっているので、酸素出口55の直前に、高濃度酸素を加湿するための加湿部56が配設されている。
図2は、本実施の形態に係る酸素濃縮器の制御系統の概略構成を示す図である。
図2に示すように、制御部60は、CPU(Central Processing Unit)61、RAM(Random Access Memory)62、ROM(Read Only Memory)63等を備えている。CPU61は、処理内容に応じたプログラムをROM63から読み出してRAM62に展開し、展開したプログラムと協働して酸素濃縮器1の各ブロックの動作を制御する。
具体的に説明すると、制御部60には、酸素貯留部40の酸素センサ43、酸素供給部50の圧力センサ53、筐体内部に設置される温度センサ71、その他の各種センサからの検出信号が入力される。また、制御部60には、操作ボタン等を有する操作部81において、例えば使用者による供給流量の設定が行われた場合に、設定流量を指示する操作信号が入力される。
これらの入力信号に基づいて、制御部60は、空気圧縮部20の駆動モータの回転数を制御したり、流路切替部31の切替弁SV1〜SV4を制御したりする。このような制御により、酸素濃縮器1から設定流量で高濃度酸素が供給される。
また、制御部60は、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)や発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などからなる表示部82における表示に係る制御や、スピーカ83からの音声出力に係る制御を行う。表示部82およびスピーカ83は、使用者に各種の情報を報知する際に用いられる。
図示を省略するが、酸素濃縮器1に無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)等の通信ネットワークに接続可能なインターフェースを設け、外部機器との間で各種データを送受信できるようにしてもよい。
特に、制御部60には、操作ボタン等を有する操作部(流量設定部)81で、高濃度酸素の酸素流量の設定が行われた場合に、設定された設定酸素流量を示す操作信号が入力される。ここでは操作部81を介して制御部60に入力される操作信号は、医師により処方された酸素流量(「処方流量」という)である。
医師により処方される処方流量は、基準となる基準酸素濃度に対応して設定される。ここでは、処方流量は、院内配管や酸素ボンベなどにより純酸素が供給される場合を想定して設定された酸素治療対応の処方流量である。院内配管や酸素ボンベなどにより純酸素が供給される場合の酸素濃度は100%である。言い換えれば、院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方とは、酸素濃度100%の純酸素を供給する処方である。ここで、酸素濃度100%の純酸素とは、その気体が全て酸素分子のみで構成されていることを指す。
この酸素濃度100%を基準酸素濃度とした処方流量で患者に酸素を供給することによって、医師は、患者に供給される酸素の量を設定している。
制御部60は、上記処方流量を示す操作信号と、酸素センサ43からの検出信号とに基づいて、患者に供給する高濃度酸素の酸素濃度に対応する酸素流量を算出する。この算出した酸素流量で高濃度酸素が患者に供給されるように、制御部60は、流量調整部46を制御する。すなわち、流量調整部46は、制御部60を介して、実際に患者に供給される高濃度酸素の酸素濃度(検出された酸素濃度)と、処方される酸素流量(設定酸素流量)と、基準となる院内配管や酸素ボンベなどにより供給される純酸素の酸素濃度100%とに基づいて、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整する。
具体的には、院内配管や酸素ボンベなどで供給する酸素の酸素濃度100%に対して、在宅で用いられる酸素濃縮器が生成する高濃度酸素の酸素濃度は、濃度87%から95%程度であり、一般的には、90%前後の酸素濃度となっている。本実施の形態の酸素濃縮器1により生成される高濃度酸素の酸素濃度は、90%前後としている。すなわち、院内配管や酸素ボンベなどを用いた治療環境と在宅において酸素濃縮器を用いた治療環境とでは、酸素を供給する機器の違いから患者に供給される酸素濃度が異なる。例えば、患者に供給される高濃度酸素の濃度が、院内配管や酸素ボンベなどを用いた環境での酸素濃度が100%で、在宅での酸素濃度が90%前後であれば、全く同じ処方流量であっても両者には約10%の差が生じる。
この点を鑑みて、制御部60は、酸素濃縮器1で生成する高濃度酸素の酸素濃度を変更することなく、院内配管や酸素ボンベなどによる対応の処方で得られる効果(患者に供給される酸素の量)を得るために、流量調整部46を介して、患者に供給する高濃度酸素の酸素濃度の酸素流量を調整する。すなわち、流量調整部46は、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を、患者が純酸素(酸素濃度100%)を吸入したときと同じ効果が期待できる流量となるように、調整する。
ここで、「酸素の量」とは、酸素センサで測定された酸素濃度(%)から算出された、患者に供給する気体全体の体積における「酸素分子が占める体積」のことを示す。酸素センサ43で測定される酸素濃度(%)は、酸素分子が含まれている割合を示している。例えば、酸素濃縮器内部の酸素センサで酸素濃度90%と測定された場合、同じ割合で酸素分子が含まれているとみなすことができる。これにより、制御部60は、下記式(1)を用いて、患者に供給する気体全体の体積に含まれる酸素分子の体積(酸素分子が占める体積量)を、「酸素の量」として、算出する。
気体の体積量(cc)×酸素センサで測定される酸素濃度(%)=酸素分子が占める体積量(cc) −(1)
また、制御部60は、上記式を用いて算出した酸素分子が占める体積量、つまり、処方により患者に供給される酸素の量と等しい量が供給されるように、例えば、下記式(2)を用いて、酸素濃縮器1が実際に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整する。
単位時間当たりの院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方酸素流量(例えば(L/min))/生成する酸素濃度=調整後の流量 −(2)
(例えば、処方酸素流量が1.0(L/min)、生成する酸素濃度90(%)である場合、調整後の流量は、1.0/0.9(L/min)となる。)
また、制御部60は、生成する高濃度酸素の酸素濃度(実際に供給する高濃度酸素の濃度)が、調整後の流量(院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果に対応して補正した流量)に対応する濃度とは異なる濃度である場合、生成する濃度に対応した流量となるように流量を調整して供給する。
すなわち、生成する高濃度酸素の酸素濃度(例えば90%)が、基準となる酸素濃度(例えば、100%)よりも低い場合、院内配管や酸素ボンベなどを用いて純酸素を供給する処方で得られるトータルの酸素の量に等しくなるように、制御部60を介して、流量調整部46が、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整する。この酸素流量調整処理は、具体的には図3に示すフローチャートに従って周期的に行われる。
図3は、酸素流量調整処理の一例について示すフローチャートである。この酸素流量調整処理は、CPU61がROM63に格納された所定のプログラムを実行することによって、実現される。
医師により処方される酸素流量(処方流量)及び吸入時間は、院内配管や酸素ボンベなどにより供給される酸素濃度100%として設定される。また、酸素濃縮器1が生成して患者に供給する高濃度酸素は、酸素濃度90%とする。これは在宅用として使用される酸素濃縮器1としては一般的な濃度であり、院内配管による酸素濃度と等しいものと見なしており、院内配管や酸素ボンベなどによる酸素濃度と略等値として設定される濃度である。
図3のステップS10において、制御部60は、操作部81を介して処方(処方流量、吸入時間)を取得する。すなわち、ステップS10では、操作部81を介して、医師の処方である処方流量、吸入時間を示す入力信号が制御部60に入力され、ステップS11に移行する。
ステップS11において、制御部60は、酸素センサ43からの検出信号に基づいて、供給される高濃度酸素の酸素濃度(実際に供給される高濃度酸素の濃度)を取得して、ステップS12に移行する。
ステップS12では、制御部60は、酸素センサ43からの検出信号と、操作部81からの信号(処方流量設定信号)と、基準となる酸素濃度(基準濃度)とに基づいて、医師の処方による効果と同様の効果になる酸素流量を算出して、ステップS13に移行する。
具体的には、ステップS12では、制御部60は、上記式(2)によって、医師の処方により患者に供給される酸素の量と等しい量を供給するように、酸素濃縮器1の酸素流量を算出する。この算出される酸素流量は、流量調整部46により調整した後の酸素流量である。
なお、処方流量は、基準酸素濃度である酸素濃度、つまり、院内配管や酸素ボンベなどにより供給される酸素の酸素濃度であって、この酸素濃度100%を想定している。一方、酸素濃縮器1により供給される高濃度酸素の酸素濃度は100%以下であり、ここでは、90%である。このことから、上記式(2)を用いることで、酸素濃縮器1の機能(酸素濃縮器が生成する高濃度酸素の酸素濃度)に応じて、医師の処方による効果(患者に供給する気体全体の体積に含まれる酸素分子の体積)に対応した流量を、容易に算出できる。
例えば、酸素濃縮器1により生成される高濃度酸素の酸素濃度が90%であり、処方流量が1(L/min)である場合、酸素濃縮器1で調整される調整後の高濃度酸素の酸素流量は、上記式(2)により1.111(L/min)となる。これにより、酸素濃縮器1において、調整後の流量で患者に高濃度酸素を供給した場合の患者に供給される酸素のトータルの量は、処方される酸素流量(処方流量)によって患者に供給される酸素のトータルの量と同じになる。すなわち、制御部60による高濃度酸素の酸素流量の調整によって、医師の処方によって患者に供給される酸素の量と等しい量が供給されることとなる。
このようにステップS12では、制御部60は、生成する高濃度酸素の酸素濃度と、処方流量とを用いて、院内配管や酸素ボンベなどを用いて患者に供給される酸素の量(ここでは単位時間当たりで患者に供給する気体全体の体積に含まれる酸素分子の体積(酸素分子が占める体積量))に応じた酸素流量を算出する。よって、制御部60は、生成する高濃度酸素の酸素濃度が低下していれば、低下した分を、酸素流量を上げることで補う。これにより、制御部60は、患者に供給する酸素の量を、医師の処方に従って院内配管や酸素ボンベなどを用いて患者に供給される酸素の量と同じにする。
なお、このステップS12での処理は、図4に示すように、流量設定部81を介して入力される処方流量と、酸素濃縮器で生成する酸素濃度毎に、処方流量に対応して調整された酸素流量とを関連付けたテーブルを用いて算出するようにしてもよい。ここでは、酸素濃縮器において実際に生成する高濃度酸素の酸素濃度を想定し、その想定する高濃度酸素の酸素濃度毎に、処方流量(濃度100%を想定して設定された高濃度酸素の酸素流量)対応の高濃度酸素の酸素流量が対応付けられるものである。図4では、生成する高濃度酸素の酸素濃度90%、95%、85%、87%の場合において、各酸素濃度に酸素流量が対応づけている。このテーブルを用いる場合、制御部60は、テーブルから、酸素センサ43からの検出信号に対応する酸素濃度に応じた酸素流量(院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果に対応した流量)を算出できる。
ステップS13において、制御部60は、流量調整部46を介して、算出した酸素流量に調整し、この調整後の酸素流量で患者に高濃度酸素を供給する。
ステップS14において、制御部60は、酸素センサ43からの検出信号に基づいて、供給される高濃度酸素の酸素濃度(実際に供給される高濃度酸素の濃度)を取得して、ステップS15に移行する。
ステップS15において、制御部60は、生成する高濃度酸素の酸素濃度が調整後の酸素流量に対応する酸素濃度であるか否かを判定する。具体的にステップS15では、制御部60は、酸素センサ43からの検出信号と、調整後の酸素流量を算出する際に用いた酸素センサ43からの検出信号とを比較する。言い換えれば、制御部60は、酸素濃縮器1で生成する高濃度酸素の酸素濃度が低下しているか否かを判定する。
このステップS15において、生成する高濃度酸素の酸素濃度が、調整後の酸素流量に対応する酸素濃度であれば、制御部60では、生成される高濃度酸素の酸素濃度は低下していないと判定し、ステップS10に移行して、以下の処理を繰り返す。一方、生成する高濃度酸素の酸素濃度が、調整後の酸素流量に対応する酸素濃度でなければ、制御部60は、生成される高濃度酸素の酸素濃度は低下していると判定し、ステップS12に戻る。
このように、本実施の形態の酸素濃縮器1は、原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部20と、この圧縮空気を用いて患者に供給する高濃度酸素を生成するPSA部(酸素生成部)30と、PSA部(酸素生成部)30により生成された高濃度酸素の酸素濃度を検出する酸素センサ(酸素濃度検出部)43と、処方流量(酸素流量)を設定する操作部(設定部)81と、実際に患者に供給される酸素濃度(検出された酸素濃度)と、処方される酸素流量(設定酸素流量)と、基準酸素濃度とに基づいて、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整する流量調整部46と、を備える。
酸素濃縮器1では、基準酸素濃度は、医師に指示された処方流量に対応した酸素濃度であって、院内配管や酸素ボンベなどを用いて患者に供給される酸素の酸素濃度100%である。
制御部60を介して流量調整部46で調整される酸素流量は、患者に供給する高濃度酸素の酸素濃度とで計算される酸素の量を、処方流量(設定酸素流量)と基準酸素濃度(院内配管や酸素ボンベなどで供給される酸素濃度100%)とで計算される酸素の量に等しくさせる酸素流量である。
これにより、酸素濃縮器1で生成する酸素濃度(例えば90%)が、院内配管や酸素ボンベなどで供給される酸素濃度100%(基準酸素濃度)と異なる濃度であっても、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整して、好適な酸素の量を患者に供給できる。このように、酸素濃縮器1では、医師の処方による効果と同様の効果を患者に施すことができる。つまり、在宅で、院内配管や酸素ボンベなどを用いた場合と同様の治療を患者に施すことができる。
また、例えば、酸素濃縮器1において、生成する酸素濃度が低下する場合でも、流量調整部46は、制御部60を介して、処方される酸素流量(設定酸素流量)と、基準酸素濃度とに基づいて、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整できる。すなわち、酸素濃縮器1は、生成する酸素濃度が低下しても、患者に供給する酸素流量を、基準酸素濃度(純酸素の濃度である酸素濃度100%)に対応して処方される酸素の量が患者に供給されるように、調整して供給できる。
ここで、制御部60は、所定濃度(アラーム濃度)以下の場合に表示部82、スピーカ83等の報知部を介して警告を報知させるように制御してもよい。所定濃度(以下、「アラーム濃度」という)は、制御部60において、患者に供給する高濃度酸素の酸素濃度の下限値として予め設定される。このアラーム濃度は、RAM62或いはROM63に格納される。
このようにアラーム濃度が設定されている場合、制御部60(CPU61)は、酸素センサ43により検出される酸素濃度(検出信号)と、RAM62或いはROM63に格納されるアラーム濃度とを比較する。そして、制御部60は、酸素センサ43により検出される酸素濃度が、アラーム濃度以下になった場合に、表示部82、スピーカ83等の報知部を制御して警告を報知させる。なお、報知部としては、LED等の発光体を用いても良く、アラーム濃度時では、通常使用時とは異なる色で点灯、点滅するように構成してもよい。
すなわち、報知部(表示部82、スピーカ83)は、酸素センサ(酸素濃度検出部)43により検出される酸素濃度が、予め設定された設定濃度(ここでは下限濃度)以下になった場合に、その旨を画面表示及び警報音の少なくとも一方で周囲の医療従事者等に報知する。
また、酸素濃縮器1では、アラーム濃度になるまでは、実際に生成する酸素濃度が低下しても、制御部60の制御によって、流量調整部46が、患者に供給する酸素流量を調整する。これにより、医師の処方によって得られる効果、つまり、患者に供給する酸素の量と等しい酸素の量を供給できる。
なお、このアラーム濃度は、基準酸素濃度、ここでは、院内配管や酸素ボンベなどにより供給される酸素の酸素濃度と、酸素濃縮器1により供給される酸素濃度とが等しいものとし、院内配管により供給される酸素濃度の下限値として設定される。本実施の形態では、制御部60によって、流量調整部46は、実際に生成する高濃度酸素の酸素濃度の変化に応じて、そのときに供給される高濃度酸素の酸素流量を変更できる。よって、制御部60により流量調整部46が、供給する高濃度酸素の酸素流量を調整することによって、アラーム濃度時において患者に与える単位時間当たりの酸素の量を、アラーム濃度よりも高い状態で患者に供給する酸素の量となるように補正できる。例えば、酸素濃縮器1において、ゼオライトの劣化或いはシーブベッド33A、33B自体の故障等によって、生成される酸素濃度がアラーム濃度である場合でも、これを流量調整部46で調整(補正)してアラーム濃度以上の酸素濃度で患者に供給できる。
このように、本実施の形態の酸素濃縮器1では、制御部60によって、流量調整部46は、実際に生成する高濃度酸素の酸素濃度に応じて、実際に供給される高濃度酸素の酸素流量を調整できる。このため、生成される酸素濃度に応じて、患者に供給する酸素濃度(酸素の量)を好適な酸素濃度(酸素の量)に調整して、処方流量に対応する酸素の量を患者に供給できる。
また、本実施の形態では、酸素生成部をPSA部30として説明したが、これに限らず、高濃度酸素を生成するものであれば、どのように構成されてもよい。例えば、富化膜式の酸素生成部としてもよい。また、本実施の形態では、操作部81を介して設定される酸素流量を、処方される酸素流量としたが、これに限らない。酸素濃縮器1は、設定される酸素流量を任意の酸素流量とし、実際に患者に供給される酸素濃度と、所定の基準酸素濃度とともに、患者に供給する高濃度酸素の酸素流量を調整してもよい。
また、本実施の形態では、操作部81を介して設定される処方される酸素流量を用いて、患者へ実際に供給する酸素流量を、基準酸素濃度に対応した酸素流量になるように調整するものとしたが、これに限らない。例えば、操作部81で患者に供給する酸素の量を設定できるようにし、操作部81で設定された酸素の量に基づいて、流量調整部46が、患者に実際に供給する酸素流量を調整しても良い。すなわち、酸素濃縮器1(詳細には、制御部61)は、演算式(上記式(2))を用いて、設定された酸素の量に応じた調整後の酸素流量を算出してよい。この算出した酸素流量となるように、流量調整部46は、酸素流量を調整して患者に供給する。これにより、医師は、患者に実際に供給する酸素の量を処方し、この酸素の量を、設定するだけで、酸素濃縮器1は、設定された酸素の量に対応する流量を算出して、この流量で患者に高濃度酸素を自動的に供給するものとなる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本発明に係る酸素濃縮器は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。
本発明に係る酸素濃縮器は、大型化することなく、院内配管や酸素ボンベなどを用いた処方による効果と同様の効果を患者に与えることができ、在宅酸素療法(HOT)において使用される酸素濃縮器として有用である。
1 酸素濃縮器
20 空気圧縮部
30 PSA部(酸素生成部)
43 酸素センサ
46 流量調整部
81 操作部

Claims (6)

  1. 原料空気から圧縮空気を生成する空気圧縮部と、
    前記圧縮空気を用いて患者に供給する高濃度酸素を生成する酸素生成部と、
    前記酸素生成部により生成された高濃度酸素の酸素濃度を検出する酸素濃度検出部と、
    前記高濃度酸素の酸素流量または、前記高濃度酸素の酸素濃度を設定する設定部と、
    検出された酸素濃度と、設定された設定酸素流量または設定された設定酸素濃度と、基準酸素濃度とに基づいて、前記患者に供給する前記高濃度酸素の酸素流量を調整する流量調整部と、
    を備える、
    酸素濃縮器。
  2. 前記流量調整部で調整される前記酸素流量は、前記患者に供給する高濃度酸素の酸素濃度とで計算される酸素の量を、前記設定酸素流量と前記基準酸素濃度とで計算される酸素の量に等しくする流量である、
    請求項1記載の酸素濃縮器。
  3. 前記基準酸素濃度は、100%である、
    請求項1又は2記載の酸素濃縮器。
  4. 前記酸素生成部は、前記圧縮空気中から吸着塔により窒素を吸収して高濃度酸素を生成するPSA式の酸素生成部である、
    請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸素濃縮器。
  5. 前記患者に供給する前記酸素濃度の下限値が、前記基準酸素濃度に対応して予め設定され、
    前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度が、前記下限値以下である場合、
    前記流量調整部は、前記患者に供給する前記高濃度酸素の酸素流量を、前記下限値以上に調整する、
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素濃縮器。
  6. 前記酸素濃度検出部により検出される酸素濃度が、予め設定された下限値以下である場合、その旨を報知する報知部を更に備える、
    請求項5に記載の酸素濃縮器。
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