JP2013153082A - 発光ダイオードモジュール、および発光ダイオードモジュールの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】蛍光体が電荷を有しているか否かに拘らず、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮し、かつ低コスト化を可能とする。
【解決手段】発光ダイオードモジュール10は、LED素子1の周囲の電界を用いた誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、蛍光体Rおよび蛍光体GをLED素子1に堆積させたものである。
【選択図】図1
【解決手段】発光ダイオードモジュール10は、LED素子1の周囲の電界を用いた誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、蛍光体Rおよび蛍光体GをLED素子1に堆積させたものである。
【選択図】図1
Description
本発明は、発光ダイオードモジュール、および発光ダイオードモジュールの製造方法に関する。
近年、照明および液晶ディスプレイ装置用のバックライト光源として、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子が用いられている。
LED素子は、導電基板に実装されており、該導電基板と電気的に接続されており、さらに樹脂により封止された、発光ダイオードモジュール(LEDパッケージ)の形態で用いられるのが一般的である。
具体例を挙げると、白色の発光を行う発光ダイオードモジュールは、460nm近傍の発光波長を有するLED素子(青色LED)と、520nm近傍の発光波長を有する蛍光体および600nm近傍の発光波長を有する蛍光体とを備えている。これらの蛍光体は、該LED素子を封止する樹脂に混ぜられている。
ところで、発光ダイオードモジュールでは、蛍光体をLED素子上に堆積させるのが好ましい。これにより、LED素子の周囲に蛍光体を高密度に配置することが可能となり、結果、LED素子が発光した光を高い効率で波長変換することが可能となる。また、これにより、所望の色の発光を得るために必要な蛍光体の量を、従来に比べて少なくすることが可能となるため、蛍光体の存在に起因する光散乱を低減することが可能となり、結果、LED素子が発光した光の利用効率を向上させることも可能となる。
蛍光体をLED素子上に堆積させる際の、蛍光体の沈降に関する技術が、例えば特許文献1〜5に開示されている。
特許文献1には、樹脂を未硬化状態のまま放置し蛍光体が自然に(すなわち、装置等により力を加えることなく)沈降するのを待つ技術、樹脂の粘度が下がる温度にまで樹脂を加熱し蛍光体が自然に沈降することを促進させる技術、および樹脂が未硬化状態であるときに遠心分離を行い蛍光体を沈降させる技術が開示されている。
特許文献2には、樹脂を未硬化状態のまま放置し蛍光体が自然に沈降するのを待つ技術が開示されている。
特許文献3には、樹脂が未硬化状態であるときに遠心分離を行い蛍光体を沈降させる技術が開示されている。
特許文献4および5には、電気泳動堆積法(EPD)により蛍光体を沈降させる技術が開示されている。
特許文献1および2に開示されている、樹脂を未硬化状態のまま放置し蛍光体が自然に沈降するのを待つ技術では、蛍光体の沈降に長い時間(例えば、10時間程度)を要するという問題が発生する。特許文献1に開示されている、樹脂の粘度が下がる温度にまで樹脂を加熱し蛍光体が自然に沈降することを促進させる技術においても、蛍光体は自然に沈降しているため、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮することは困難である。
特許文献1および3に開示されている、樹脂が未硬化状態であるときに遠心分離を行い蛍光体を沈降させる技術では、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮することが可能である。しかしながら、該技術では、蛍光体を沈降させるための装置の規模が大きいため、該装置のランニングコストが高くなり、発光ダイオードモジュールの製造コストが高くなる虞があるという問題が発生する。
特許文献4および5に開示されている、電気泳動堆積法により蛍光体を沈降させる技術では、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮することが可能である。さらに、該技術では、蛍光体を沈降させるための装置の規模を縮小することによる低コスト化の見込みがあると考えられる。しかしながら、該技術では、電荷を有していない蛍光体を沈降させることができないので、電荷を有していない蛍光体の沈降に長い時間を要するという問題が発生する。
すなわち、電気泳動では、電荷を有していない粒子に推進力を与えることができない。これは、均一電界中にある電荷を有していない粒子は、分極により生じた正の電荷量と負の電荷量とが等しくなり、これにより、該粒子に電気泳動力が生じないことによる。従って、電気泳動堆積法により蛍光体を沈降させる技術において、電荷を有していない蛍光体は、自然に沈降することになるため、沈降に長い時間を要する。
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、蛍光体が電荷を有しているか否かに拘らず、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮し、かつ低コスト化を可能とする発光ダイオードモジュール、および発光ダイオードモジュールの製造方法を提供することにある。
本発明の発光ダイオードモジュールは、上記の問題を解決するために、LED素子と、蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールであって、上記LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させたことを特徴としている。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの製造方法は、上記の問題を解決するために、LED素子と、蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールの製造方法であって、上記LED素子の周囲に電界を発生させ、該電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させることを特徴としている。
粒子を電界中におくと分極する。均一電界の場合、電荷を有している粒子は、粒子の電荷と逆の電極に引きつけられる(電気泳動)が、電荷を有していない粒子は、分極で生じた正および負の電荷量が等しいため、力は生じず泳動しない。一方、不均一電界中において、粒子は、粒子と周囲媒質の分極と電場の勾配とによりクーロン力が生じて泳動する。これが誘電泳動である。
上記の構成によれば、上記の粒子に相当する蛍光体は、電荷を有していなくても、自然に沈降するのではなく、クーロン力が生じて泳動することにより、沈降させることができる。このため、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮することが可能となる。
また、上記の構成によれば、電圧源と、LED素子の周囲またはその近傍にある導体と、針電極(必要に応じて)とにより、LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動を実現することが可能である。このため、蛍光体を沈降させるための装置の規模を縮小することによる低コスト化が可能となる。なおここで、電圧源は、導体に高周波の交流電圧を印加するものである。導体は、該電圧源からの高周波の交流電圧に応じた電界を、LED素子の周囲において発生するものである。針電極は、樹脂を中心としてLED素子の反対側において、LED素子の周囲の電界よりさらに強度の大きな電界を発生するものである。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの、上記蛍光体は、発光波長が互いに異なる第1蛍光体および第2蛍光体を備えており、上記第1蛍光体の発光波長は、上記第2蛍光体の発光波長より大きく、上記誘電泳動により上記第1蛍光体および上記第2蛍光体を沈降させ、上記第1蛍光体を上記LED素子に堆積させ、上記第2蛍光体を上記第1蛍光体に堆積させた構成であるのが好ましい。
換言すれば、本発明の発光ダイオードモジュールは、LED素子に、第1蛍光体から成る層(下層)および第2蛍光体から成る層(上層)の2層を堆積した構造であるのが好ましい。
上記の構成によれば、第1蛍光体と第2蛍光体とが分離されている。そして、発光波長が大きいほうの蛍光体である第1蛍光体が、発光波長が小さいほうの蛍光体である第2蛍光体よりLED素子側に配置されている。
蛍光体は、自身の発光波長より大きな波長の光では励起されないことが知られている。このことから、上記の構成によれば、第1蛍光体による蛍光(光)によって、第2蛍光体が励起されることを抑制することが可能となる。
すなわち、第1蛍光体によって波長変換された光が、第2蛍光体によってさらに波長変換されることを抑制することが可能となる。この結果、蛍光体の存在に起因する光散乱を低減することが可能となり、結果、LED素子が発光した光の利用効率を向上させることが可能となる。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの、上記誘電泳動は、正の誘電泳動であり、上記蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より大きくてもよい。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの、上記誘電泳動は、負の誘電泳動であり、上記蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より小さくてもよい。
上記の各構成によればいずれも、LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動により、蛍光体をLED素子に堆積させることができる。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの、上記誘電泳動は、正の誘電泳動であり、上記第2蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より大きく、上記第1蛍光体の誘電率は、上記第2蛍光体の誘電率より大きくてもよい。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの、上記誘電泳動は、負の誘電泳動であり、上記第2蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より小さく、上記第1蛍光体の誘電率は、上記第2蛍光体の誘電率より小さくてもよい。
上記の各構成によればいずれも、LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動により、第1蛍光体をLED素子に堆積させ、第2蛍光体を第1蛍光体に堆積させることができる。
つまり、本発明に係る誘電泳動は、正の誘電泳動であってもよいし、負の誘電泳動であってもよい。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの製造方法は、上記LED素子の上面の中心を通り、該上面に垂直な直線上でない位置に電圧を印加することによって、上記電界を発生させるのが好ましい。
上記の構成によれば、電圧を印加する位置に応じて、電界を発生させる位置を制御することが可能となり、これにより、LED素子における蛍光体が堆積される位置の基準を、LED素子の上面の中心からずらすことが可能となる。該基準をずらすと、該基準をずらさない場合に対して、蛍光体の分布が変わるため、発光ダイオードモジュールによる発光の色も同様に変わることになる。
これにより、LED素子を封止する前の工程において発生する、および/または、LED素子の固体毎における発光波長のばらつきに起因して発生する、色誤差の調整を図ることが可能となる。色誤差とは、発光ダイオードモジュールが発光した光の色の、所望の色に対する誤差のことである。
一方、樹脂を未硬化状態のまま放置し蛍光体が自然に沈降するのを待つ技術、および樹脂の粘度が下がる温度にまで樹脂を加熱し蛍光体が自然に沈降することを促進させる技術では、蛍光体に力を与えないため、上記基準を意図的にずらすのは困難であった。
また、樹脂が未硬化状態であるときに遠心分離を行い蛍光体を沈降させる技術では、全ての蛍光体に対して略均一に、遠心力が与えられるに過ぎないため、上記基準を意図的にずらすのは困難であった。
また、電気泳動堆積法により蛍光体を沈降させる技術では、LED素子の周囲と、樹脂を中心としてLED素子の反対側との間で、電界が均一となる。このため、電界を発生させる位置に応じて、上記基準を意図的にずらすのは困難であった。
この結果、特許文献1〜5に開示されている各技術では、上記基準をずらさない場合に対して、蛍光体の分布を変え、発光ダイオードモジュールによる発光の色を変えることが困難であった。
以上のとおり、本発明の発光ダイオードモジュールは、LED素子と、蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールであって、上記LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させた構成である。
また、本発明の発光ダイオードモジュールの製造方法は、LED素子と、蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールの製造方法であって、上記LED素子の周囲に電界を発生させ、該電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させる方法である。
従って、蛍光体が電荷を有しているか否かに拘らず、蛍光体の沈降に要する時間を十分に短縮し、かつ低コスト化が可能であるという効果を奏する。
〔発明の背景〕
図6は、本発明の背景となる、一般的な発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図6は、本発明の背景となる、一般的な発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図6に示す発光ダイオードモジュール60は、LED素子1、導電基板2、樹脂3、蛍光体R、蛍光体G、およびボンディングワイヤ4を備えている。
LED素子1は、460nm近傍の発光波長を有するものであり、単体では青色の発光を行うもの(青色LED)である。
導電基板2は、エポキシ樹脂またはガラスエポキシ樹脂に、銅等の導体から成る電極または配線パターン(図示しない)が形成されて構成されたものであり、LED素子1が搭載されている。なお、発光ダイオードモジュール60において、LED素子1に設けられた電極(図示しない)と、導電基板2に設けられた電極または配線パターンとは、ボンディングワイヤ4により電気的に接続されている。
樹脂3は、LED素子1を封止する透明の樹脂であり、例えば、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が用いられる。樹脂3の具体例としては、シリコーン樹脂、およびエポキシ樹脂が挙げられる。
蛍光体Rおよび蛍光体Gはいずれも、樹脂3に混ぜられた蛍光体である。
蛍光体(第1蛍光体)Rは、600nm近傍の発光波長を有する蛍光体である。蛍光体Rは、LED素子1が発光した光により励起されると、この光を波長変換することにより、赤色の蛍光を行う。
蛍光体(第2蛍光体)Gは、520nm近傍の発光波長を有する蛍光体である。蛍光体Gは、LED素子1が発光した光により励起されると、この光を波長変換することにより、緑色の蛍光を行う。
青色の発光を行うLED素子1、赤色の蛍光を行う蛍光体R、および緑色の蛍光を行う蛍光体Gがそれぞれに光を発することにより、発光ダイオードモジュール60全体としては、白色の発光を得ることができる。
本発明は、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、LED素子1に堆積させるのに好適なものである。
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1に係る発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図1は、実施の形態1に係る発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図1に示す発光ダイオードモジュール10は、図6に示す発光ダイオードモジュール60と同じ部材を備えており、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、LED素子1に堆積させた構成である。
なお、蛍光体Rおよび蛍光体Gはいずれも、電荷を有しているものであってもよいし、電荷を有していないものであってもよい。
また、蛍光体Rの誘電率は、樹脂3の誘電率より大きく、蛍光体Gの誘電率も、樹脂3の誘電率より大きい。一方、本実施の形態において、蛍光体Rの誘電率と蛍光体Gの誘電率との大小関係については、特に考慮する必要ない。なお、ここで言う「誘電率」とは、複素誘電率と呼ばれるものである。
発光ダイオードモジュール10において、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、LED素子1に堆積させるにあたって、図1に示すとおり、導電基板2(LED素子1の周囲またはその近傍にある導体)に高周波交流電源5(電圧源)が接続される。
高周波交流電源5は、導電基板2を用いて電界を発生させるべく、導電基板2に高周波の交流電圧を印加するものである。
具体的に、図1において、高周波交流電源5は、導電基板2における、LED素子1の上面1sの中心1cを通り、上面1sに垂直な直線上、ならびに、LED素子1に対してボンディングワイヤ4より外側に接続されており、これらの位置に電圧を印加している。しかしながら、高周波交流電源5が電圧を印加する位置は、これらの位置に限定されず、導電基板2により、LED素子1の周囲に電界を発生させることができるような位置でさえあればよい。
高周波交流電源5からの高周波の交流電圧が印加されると、導電基板2は、該交流電圧に応じた電界を、LED素子1の周囲において発生する。
一方、図1において、樹脂3を中心としてLED素子1の反対側においては、高周波交流電源による高周波の交流電圧を印加する必要はなく、該交流電圧に応じた電界も発生させない。
以上のような電界の分布を構成することで、LED素子1の周囲と、樹脂3を中心としてLED素子1の反対側との間では、不均一な電界が構成される。具体的に、LED素子1の周囲における電界強度は、該LED素子1の反対側における電界強度より大きくなっている。
この結果、蛍光体Rおよび蛍光体Gには、上記電界およびそれによって誘起された電気双極子モーメントによって力が加えられ、この力が蛍光体Rおよび蛍光体Gを移動させる。すなわち、誘電泳動が生じ、この誘電泳動により、蛍光体Rおよび蛍光体Gが移動させられる。
蛍光体Rおよび蛍光体Gを電界中におくと分極する。上記のように不均一な電界中において、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、蛍光体Rおよび蛍光体Gと周囲媒質の分極と電場の勾配とによりクーロン力が生じて泳動する。これが誘電泳動である。
さらに、上述したとおり、蛍光体Rおよび蛍光体Gの誘電率はいずれも、樹脂3の誘電率より大きい。このとき、上記誘電泳動として、正の誘電泳動が生じ、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、電界強度が大きいLED素子1の周囲に移動する。これにより、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、沈降させられ、最終的にLED素子1に堆積されることになる。
なお、以上の説明では、蛍光体Rおよび蛍光体Gの誘電率がいずれも、樹脂3の誘電率より大きい場合に、正の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させる例について説明を行った。
それに対して、蛍光体Rおよび蛍光体Gの誘電率がいずれも、樹脂3の誘電率より小さい場合は、以下の説明のとおり、負の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させることが可能である。
すなわち、図1に示す構成に加え、樹脂3を中心としてLED素子1の反対側に配置した針電極(図示しない)を用いて、該針電極により、該LED素子1の反対側において、LED素子1の周囲の電界よりさらに強度の大きな電界を発生させる。
これにより、LED素子1の周囲と、樹脂3を中心としてLED素子1の反対側との間では、不均一な電界が構成される。具体的に、LED素子1の周囲における電界強度は、該LED素子1の反対側における電界強度より小さくなっている。この結果、誘電泳動が生じ、この誘電泳動により、蛍光体Rおよび蛍光体Gが移動させられる。
さらに、上述したとおり、蛍光体Rおよび蛍光体Gの誘電率はいずれも、樹脂3の誘電率より小さい。このとき、上記誘電泳動として、負の誘電泳動が生じ、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、電界強度が小さいLED素子1の周囲に移動する。これにより、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、沈降させられ、最終的にLED素子1に堆積されることになる。
つまり、本実施の形態に係る誘電泳動は、正の誘電泳動であってもよいし、負の誘電泳動であってもよい。
上記の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、蛍光体Rおよび蛍光体GをLED素子1に堆積させたものが、発光ダイオードモジュール10である。
発光ダイオードモジュール10において、蛍光体Rおよび蛍光体Gは、電荷を有していなくても、自然に沈降するのではなく、クーロン力が生じて泳動することにより、沈降させることができる。このため、蛍光体Rおよび蛍光体Gの沈降に要する時間を十分に短縮することが可能となる。
一方、電気泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させる場合、蛍光体Rおよび蛍光体Gが電荷を有していなければ、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させることはできない。これは、均一電界中にある電荷を有していない粒子は、分極により生じた正の電荷量と負の電荷量とが等しくなり、これにより、該粒子に電気泳動力が生じないことによる。
また、上記の構成によれば、高周波交流電源5と、導電基板2と、針電極(必要に応じて)とにより、LED素子1の周囲の電界を用いた誘電泳動を実現することが可能である。このため、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させるための装置の規模を縮小することによる低コスト化が可能となる。
蛍光体Rおよび蛍光体GをLED素子1に堆積させた発光ダイオードモジュール10では、蛍光体Rおよび蛍光体Gの存在に起因する光散乱が、LED素子1の周囲のみで発生する。これにより、LED素子1の周辺にある部材により光が反射される回数が低減され、該部材による光吸収に起因する光損失が低減されるため、LED素子1が発光した光の利用効率を向上させることが可能となる。
なお、樹脂3は、蛍光体Rおよび蛍光体Gを混ぜた後、LED素子1の封止前に、蛍光体Rおよび蛍光体Gが樹脂3から分離することを防止する程度に高い粘度を有しているのが好ましい。これにより、発光ダイオードモジュール10の製造プロセスにおける安定性を高くすることができる。
なお、不均一な電界を発生させる技術としては、高周波交流電源5により高周波の交流電圧を印加する他に、光ピンセットの原理が考えられる。光ピンセットの原理とは、強く集光されたレーザー光により、ナノメートルからマイクロメートルオーダーの誘電体微粒子を移動する技術である。集光された光の焦点付近では、強大な電場勾配が生じ、誘電体微粒子は、電場の一番強い部分へ引き寄せられることになる。
〔実施の形態2〕
図2は、実施の形態2に係る発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図2は、実施の形態2に係る発光ダイオードモジュールの構成を示す断面図である。
図2に示す発光ダイオードモジュール20は、図6に示す発光ダイオードモジュール60と同じ部材を備えており、蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、LED素子1に堆積させた構成である。
ここで、図1に示す発光ダイオードモジュール10は、蛍光体Rおよび蛍光体Gにおける相互の位置関係を特定することなく、蛍光体Rおよび蛍光体GをLED素子1に堆積させた構成であった。
一方、発光ダイオードモジュール20は、蛍光体Rおよび蛍光体Gを、蛍光体R、蛍光体Gの順で、LED素子1に堆積させた構成である。
つまり、発光ダイオードモジュール20は、蛍光体RをLED素子1に堆積させ、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積させた構成である。換言すれば、発光ダイオードモジュール20は、LED素子1に、蛍光体Rから成る層(下層)および蛍光体Gから成る層(上層)の2層を堆積した構造である。
以下、発光ダイオードモジュール20のように、蛍光体RをLED素子1に堆積させ、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積させた構成とすることによる利点について、図3(a)および図3(b)を参照して説明する。
図3(a)は、蛍光体GをLED素子1に堆積し、蛍光体Rを蛍光体Gに堆積した場合の、蛍光体Rおよび蛍光体Gの励起の様子を示す図である。
図3(b)は、蛍光体RをLED素子1に堆積し、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積した場合の、蛍光体Rおよび蛍光体Gの励起の様子を示す図である。
なお、図3(a)および図3(b)において、LED素子1の発光波長は、波長Lb(460nm近傍)としている。また、図3(a)および図3(b)において、蛍光体Rの発光波長は、波長Lr(600nm近傍)としている。また、図3(a)および図3(b)において、蛍光体Gの発光波長は、波長Lg(520nm近傍)としている。
波長Lb、波長Lr、および波長Lgは、「波長Lb<波長Lg<波長Lr」なる関係を有している。つまり、蛍光体Rの発光波長は、蛍光体Gの発光波長より大きい。ここで、蛍光体は一般的に、自身の発光波長より大きな波長の光では励起されないことが知られている。
また、図3(a)および図3(b)中、LED素子の発光層31とは、LED素子1から光が発せられる面を含む層である。
まずは、図3(a)に示すとおり、蛍光体GをLED素子1に堆積し、蛍光体Rを蛍光体Gに堆積した場合について説明する。
LED素子の発光層31から発光された波長Lbの光により、LED素子1に堆積された蛍光体Gが励起される。蛍光体Gは、この波長Lbの光を波長変換することにより、波長Lbより大きな波長である波長Lgの蛍光を行う。
さらに、蛍光体Gの蛍光により得られた波長Lgの光により、蛍光体Gに堆積された蛍光体Rが励起される。蛍光体Rは、この波長Lgの光を波長変換することにより、波長Lgより大きな波長である波長Lrの蛍光を行う。
続いて、図3(b)に示すとおり、蛍光体RをLED素子1に堆積し、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積した場合について説明する。
LED素子の発光層31から発光された波長Lbの光により、LED素子1に堆積された蛍光体Rが励起される。蛍光体Rは、この波長Lbの光を波長変換することにより、波長Lbより大きな波長である波長Lrの蛍光を行う。
一方、波長Lrは、蛍光体Gの発光波長である波長Lgより大きい。このため、蛍光体Rの蛍光により得られた波長Lrの光により、蛍光体Rに堆積された蛍光体Gは励起されない。なお、蛍光体Gは、LED素子の発光層31から発光された波長Lbの光により励起される。蛍光体Gは、この波長Lbの光を波長変換することにより、波長Lbより大きな波長である波長Lgの蛍光を行う。
すなわち、蛍光体Rによって波長変換された光は、蛍光体Gによってさらに波長変換されない。この結果、蛍光体Rおよび蛍光体Gの存在に起因する光散乱を低減することが可能となり、結果、LED素子1が発光した光の利用効率を向上させることが可能となる。
図4は、蛍光体RをLED素子1に堆積し、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積するイメージを示す断面図である。
ここで、蛍光体Gの誘電率は、樹脂3の誘電率より大きく、蛍光体Rの誘電率は、蛍光体Gの誘電率より大きい。
図1に示す発光ダイオードモジュール10について説明したのと同様の要領で、正の誘電泳動が生じた場合、まず、蛍光体Rが沈降させられる。これは、正の誘電泳動では、誘電泳動力は誘電率に比例するので、蛍光体Rの誘電率が蛍光体Gの誘電率より大きければ蛍光体Rは蛍光体Gより先に沈降することによる。これにより、蛍光体RがLED素子1に堆積される。その後、蛍光体RがLED素子1に堆積された構造が定常状態になると、蛍光体Gが沈降させられる。これにより、蛍光体Gが蛍光体Rに堆積される(図4に示す発光ダイオードモジュール40を参照)。
なお、以上の説明では、蛍光体Gの誘電率が樹脂3の誘電率より大きく、蛍光体Rの誘電率が蛍光体Gの誘電率より大きい場合に、正の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させる例について説明を行った。
それに対して、蛍光体Gの誘電率が樹脂3の誘電率より小さく、蛍光体Rの誘電率が蛍光体Gの誘電率より小さい場合、やはり図1に示す発光ダイオードモジュール10について説明したのと同様の要領で、負の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させることが可能である。
すなわち、図1に示す発光ダイオードモジュール10について説明したのと同様の要領で、負の誘電泳動が生じた場合、まず、蛍光体Rが沈降させられる。これにより、蛍光体RがLED素子1に堆積される。その後、蛍光体RがLED素子1に堆積された構造が定常状態になると、蛍光体Gが沈降させられる。これにより、蛍光体Gが蛍光体Rに堆積される(図4に示す発光ダイオードモジュール40を参照)。
つまり、本実施の形態に係る誘電泳動も、正の誘電泳動であってもよいし、負の誘電泳動であってもよい。
上記の誘電泳動により蛍光体Rおよび蛍光体Gを沈降させ、蛍光体RをLED素子1に堆積させ、蛍光体Gを蛍光体Rに堆積させたものが、発光ダイオードモジュール20(および発光ダイオードモジュール40)である。
発光ダイオードモジュール20(および発光ダイオードモジュール40)において、蛍光体Rと蛍光体Gとが分離されている。そして、発光波長が大きいほうの蛍光体である蛍光体Rが、発光波長が小さいほうの蛍光体である蛍光体GよりLED素子1側に配置されている。
これにより、上述したとおり、LED素子1が発光した光の利用効率を向上させることが可能となる。
〔実施の形態3〕
図5は、実施の形態3に係る発光ダイオードモジュールの製造方法を示す断面図である。
図5は、実施の形態3に係る発光ダイオードモジュールの製造方法を示す断面図である。
発光ダイオードモジュール10(図1参照)を製造する際には、高周波交流電源5により、導電基板2における、LED素子1の上面1sの中心1cを通り、上面1sに垂直な直線上である位置に電圧を印加して、LED素子1の周囲の電界を発生させた。この結果、発光ダイオードモジュール10における蛍光体Rおよび蛍光体Gの分布は、中心1cを中心としたものとなっていた。つまり、LED素子1における蛍光体Rおよび蛍光体Gが堆積される位置の基準は、中心1cであった。
一方、図5に示す発光ダイオードモジュール50を製造する際には、高周波交流電源5により、導電基板2における、LED素子1の上面1sの中心1cを通り、上面1sに垂直な直線上でない位置に電圧を印加することによって、電界を発生させる。
具体的に図5に示す例では、導電基板2における、上記直線から左側にずれた位置に電圧を印加している。これにより、LED素子1における蛍光体Rおよび蛍光体Gが堆積される位置の基準が、中心1cに対して左側にずれ、発光ダイオードモジュール10における蛍光体Rおよび蛍光体Gの分布は、中心1cに対して左側にずれた位置を中心としたものとなっている。
上記の構成によれば、電圧を印加する位置に応じて、電界を発生させる位置を制御することが可能となり、これにより、LED素子1における蛍光体Rおよび蛍光体Gが堆積される位置の基準を、中心1cからずらすことが可能となる。該基準をずらすと、該基準をずらさない場合に対して、蛍光体Rおよび蛍光体Gの分布が変わるため、発光ダイオードモジュール50は、発光ダイオードモジュール10に対して、発光の色が変わることになる。
これにより、LED素子1を封止する前の工程において発生する、および/または、LED素子1の固体毎における発光波長のばらつきに起因して発生する、色誤差の調整を図ることが可能となる。色誤差とは、発光ダイオードモジュールが発光した光の色の、所望の色に対する誤差のことである。
なお、上記直線上でない位置に電圧を印加することによって、電界を発生させることは、蛍光体Rおよび蛍光体GがLED素子1に堆積された構造が定常状態となるまで行ってもよいし、該構造が定常状態となる前に止めてもよい。
また、本実施の形態では、発光ダイオードモジュール50を参照して、発光ダイオードモジュール10において、上記直線上でない位置に電圧を印加することによって、電界を発生させる例について説明した。但し、発光ダイオードモジュール20(図2参照)において、上記直線上でない位置に電圧を印加することによって、電界を発生させてもよい。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
本発明は、発光ダイオードモジュールに利用することができる。
1 LED素子
3 樹脂
10、20、40、50 発光ダイオードモジュール
G 蛍光体(第2蛍光体)
R 蛍光体(第1蛍光体)
3 樹脂
10、20、40、50 発光ダイオードモジュール
G 蛍光体(第2蛍光体)
R 蛍光体(第1蛍光体)
Claims (8)
- LED素子と、
蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールであって、
上記LED素子の周囲の電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させたことを特徴とする発光ダイオードモジュール。 - 上記蛍光体は、発光波長が互いに異なる第1蛍光体および第2蛍光体を備えており、
上記第1蛍光体の発光波長は、上記第2蛍光体の発光波長より大きく、
上記誘電泳動により上記第1蛍光体および上記第2蛍光体を沈降させ、上記第1蛍光体を上記LED素子に堆積させ、上記第2蛍光体を上記第1蛍光体に堆積させたことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードモジュール。 - 上記誘電泳動は、正の誘電泳動であり、
上記蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より大きいことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードモジュール。 - 上記誘電泳動は、負の誘電泳動であり、
上記蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より小さいことを特徴とする請求項1に記載の発光ダイオードモジュール。 - 上記誘電泳動は、正の誘電泳動であり、
上記第2蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より大きく、
上記第1蛍光体の誘電率は、上記第2蛍光体の誘電率より大きいことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオードモジュール。 - 上記誘電泳動は、負の誘電泳動であり、
上記第2蛍光体の誘電率は、上記樹脂の誘電率より小さく、
上記第1蛍光体の誘電率は、上記第2蛍光体の誘電率より小さいことを特徴とする請求項2に記載の発光ダイオードモジュール。 - LED素子と、
蛍光体を含み、上記LED素子を封止する樹脂とを備えた発光ダイオードモジュールの製造方法であって、
上記LED素子の周囲に電界を発生させ、該電界を用いた誘電泳動により上記蛍光体を沈降させ、上記蛍光体を上記LED素子に堆積させることを特徴とする発光ダイオードモジュールの製造方法。 - 上記LED素子の上面の中心を通り、該上面に垂直な直線上でない位置に電圧を印加することによって、上記電界を発生させることを特徴とする請求項7に記載の発光ダイオードモジュールの製造方法。
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