JP2013150598A - 連続発酵法 - Google Patents

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  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

【課題】雑菌汚染の心配がなく、微生物の流出が起きない長期間実施可能な連続発酵法の提供。
【解決手段】pH5以下の条件下でラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いることにより、長期間実施しても、雑菌汚染や微生物流出の心配がない連続発酵法を得た。
【選択図】なし

Description

本発明は、pH5以下の条件下で、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)に属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いることによる連続発酵法に関する。
微生物による発酵により、エタノール、乳酸などの有機酸類、フェネチルアルコール等の香料成分等を生産する方法として、一回ずつ原料と微生物を準備して行うバッチ法や、微生物菌体の回収系を組込んだ反復回分培養法(半連続発酵法)が行われてきた。
これらの方法は、短時間で培養が終了するため、雑菌汚染による被害が少ないという利点がある。また、微生物菌体を加えるため、微生物による発酵が順調に進むという利点もある。
しかし、これらの方法では、生産されたエタノール等の濃度が高くなると、生産性や収率が低下し、効率的に目的とする物質の生産ができないという問題があった。また、反復回分培養法においては、酵母菌体の回収系として、遠心分離機等が必要となるため、系が複雑で設備のコストが高いという問題もあった。
そこで、これらの問題を解決するために、酵母等の微生物菌体を担体に固定化したり、自ら凝集して粒子を形成する、凝集性を有する酵母を用い、凝集体として蓄積させたりすることで、菌体の回収系を必要としない、または遠心分離操作等を必要とせず容易に行える技術の開発が進められた。
しかし、微生物菌体の担体への固定化には、アルギン酸などの固定化剤が必要であり、固定化のための工程が複雑であった。酵母等の微生物の群集が自立的(自働的)に固体に付着することで形成されるバイオフィルムを用いることも検討されたが、十分な菌量が固定化されたバイオフィルムを得ることができず、目的とする物質の生産を十分に行うことはできなかった。また、凝集体においては、微生物を発酵槽内に安定に保持するために、凝集性を有する酵母の使用が必須であるという問題があった。
そこで、本発明者らは、微生物として酵母と乳酸菌とを用い、これらの共培養を試みたところ、十分な菌量が固定化されたバイオフィルムが得られることを見出した(特許文献1、参照)。本発明者らは、このバイオフィルムがエタノールの生産を目的とする反復回分培養法に利用できることを確認している(非特許文献1、参照)。しかし、このバイオフィルムを用いた連続発酵法は確立できていなかった。
連続発酵法では、最初に準備した微生物に、原料を順次加えることにより、持続的に微生物による発酵を続けることが可能となる。このような連続発酵法では、微生物の回収系を必要としておらず、数日から数週間、数ヶ月間と長期にわたり、持続的かつ大量に目的とする物質の生産を行うことも可能となるという利点がある。
しかし連続発酵法は雑菌汚染されやすく、また、目的とする物質を回収する際に、微生物も一緒に流出(Wash out)してしまい、安定して発酵が続けられない等の問題があった。そして、連続発酵法において、雑菌汚染等が起きた場合には、大量の廃棄物が生じるため廃棄のためのコスト等が非常に高くなるというリスクもあった。そのため、雑菌汚染の心配がなく、微生物の流出が起きない長期間実施可能な連続発酵法の提供が望まれていた。
このような連続発酵法の一つとして、凝集性を有する酵母の凝集体により、連続エタノール発酵を行う技術が開発されている(非特許文献2、参照)。
しかし、この技術は、凝集性を有する酵母の使用が必須であるため、発酵能力は高いが単独では凝集性を有さない酵母等には活用できないという問題がある。また、丸底フラスコ等であらかじめ凝集体を作成した後、それを発酵槽に移してから連続発酵を行うという非常に煩雑な工程を必要とする技術であるため、より簡便な連続発酵法の提供も望まれていた。
本発明者らが作成したバイオフィルムと同様に、乳酸菌と酵母を共培養する系としては、脱脂乳に乳酸菌スターターと醸造用酵母スターターとを同時に無菌的に添加して発酵させることにより、乳酒を製造する技術が開示されている。しかし、これはバッチ法によるものであり、連続発酵法により乳酒を製造することは示唆すらされていない(特許文献2、参照)。
また、乳酸菌と酵母と担体としてセラミックビーズを充填したバイオリアクター中に糖液を送液することでエタノールと乳酸を含む発酵液を得て、これをウスターソースの製造に利用する技術も開示されている(特許文献3、4、参照)。
しかし、この技術においては、乳酸菌と酵母がバイオフィルムを形成しておらず、長期の連続発酵法を行った場合、乳酸菌や酵母が流出する可能性が高い。また、発酵中の雑菌汚染を防止するために、加熱殺菌をした原料溶液の利用や(特許文献3、参照)、食塩濃度が2〜16重量%となるような条件で発酵を実施すること(特許文献4、参照)を必要とするものであり、厳密な管理を行わない限り、必ずしも雑菌汚染が起こらないとはいえない。
特許第4686791号 特開2008−228648号公報 特開平8−9936号公報 特開平6−189722号公報
平成22年度 日本生物工学会大会講演要旨集 82頁、3P−1098 田中 浩、成相 健太郎、中村 至高、佐藤 健治、松澤 克明、 IHI技報 2010 Vol.50 No.1 p.11−17
本発明は、雑菌汚染の心配がなく、微生物の流出が起きない長期間実施可能な連続発酵法の提供を課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、pH5以下の条件下で、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いることにより、連続発酵法を実施できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者による連続発酵法は、乳酸菌と酵母の凝集物が安定な菌叢を形成しているため、これらの微生物が流出するおそれがない。また、乳酸菌との共培養により、凝集物を形成する酵母であれば、凝集性を有する酵母に限らず、単独では凝集性を有さない酵母も利用できるという利点がある。さらに、酵母と乳酸菌を共培養すれば、凝集体やバイオフィルムといった凝集物を容易に作成することができ、そのまま連続発酵法を行えるという簡便さもある。
そして、本発明の連続発酵法では、酵母と乳酸菌が共存し、pH5以下の酸性状態を維持するのが容易であるため雑菌汚染が起こる心配がなく、長期間の連続発酵を安定して行うことが可能である。仮に雑菌汚染が起こったとしても、pH5以下の酸性状態で生育できない雑菌は発酵工程において死滅するため、殺菌処理されていない原料も、そのまま本発明の連続発酵法に利用することができる。
すなわち、本発明は次の(1)〜(9)の連続発酵法、エタノールを生産する方法等に関する。
(1)pH5以下の条件下で、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いる連続発酵法。
(2)凝集物がバイオフィルムまたは凝集体である上記(1)に記載の発酵法。
(3)ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌が、酵母との共凝集性を示し、酵母と共培養した場合に乳酸菌と酵母からなるバイオフィルムを形成する乳酸菌である上記(1)または(2)に記載の連続発酵法。
(4)ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌が、受託番号 NITE P−376(ML11−11)または受託番号 NITE P−1112(HP9)として寄託された乳酸菌である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の連続発酵法。
(5)酵母が、サッカロマイセス・セレビシエに属する酵母である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の連続発酵法。
(6)ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなるバイオフィルムの形成にあたり、担体を用いる上記(2)〜(5)のいずれかに記載の連続発酵法。
(7)担体がガラス、セルロースまたはイナワラから選ばれる少なくとも一種以上を含む担体である上記(6)に記載の連続発酵法。
(8)上記(1)〜(7)のいずれかに記載の連続発酵法によってエタノールを生産する方法。
(9)受託番号 NITE P−1112(HP9)として寄託された乳酸菌。
本発明の連続発酵法は、未殺菌の原料をそのままエタノール、乳酸などの有機酸類、フェネチルアルコール等の香料成分等の有用な物質の生産に利用できる。
従って、大量に存在し、かつ、殺菌処理が困難であるイナワラ、バガスの酸や酵素による糖化物や、野菜くず等の廃棄物を有効に処理することが可能である。また、本発明の連続発酵法により、エタノール等を得た場合には、バイオ燃料等として活用することができる。
反復回分発酵法におけるエタノール生産量を示した図である(試験例2)。 反復回分発酵法におけるエタノール生産量を示した図である(試験例2)。 バイフィルムリアクターを用いた連続エタノール発酵用装置の概要を示した図である(実施例2)。 ラクトバチルス・プランタラムML11−11株(受託番号 NITE P−376)(以下、ML11−11と示す場合がある)、ラクトバチルス・プランタラムHP9株(受託番号 NITE P−1112)(以下、HP9と示す場合がある)またはラクトバチルス・プランタラムHM23株(受領番号 NITE AP−1168)(以下、HM23と示す場合がある)のバイオフィルム形成能を示した図である(試験例4)。
本発明の「連続発酵法」は、1)pH5以下の条件下であること、および、2)ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いること、を必須条件として行うものであればよい。
本発明の「連続発酵法」は、これら1)および2)を必須の条件とした上で、発酵の原料が持続して、凝集物に維持されているラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌および酵母に供給され、これらが原料を発酵することによって得られる発酵液が持続して回収できる方法であればよい。
本発明の「凝集物」とは、乳酸菌と酵母によって形成される「凝集体」や「バイオフィルム」等のことをいう。
「凝集体」とは固体同士が何らかの相互作用により接着(付着)し合って形成する集合体のことで、ここでは酵母と乳酸菌という異種の細胞同士の接着によって形成されるものをいう。また、「バイオフィルム」とは固液界面、気液界面などの界面に形成される細胞集合体であって、酵母と乳酸菌の細胞同士の接着により形成される「凝集体」が固体等の担体の表面や内部に形成され、付着した形態のものをいう。
このような本発明の「連続発酵法」の概略を、一例として、図3に(1)〜(7)の矢印として示した。この概略図では凝集物として「バイオフィルム」を用いており、(1)で原料が原料貯槽に貯められ、(2)〜(4)で原料が原料貯槽からチューブポンプを経て、本発明で使用するバイオフィルムリアクターに流入し、(5)〜(6)で本発明で使用するバイオフィルムリアクターによって発酵された原料の発酵液が、該バイオフィルムリアクターから流出し、発酵液貯液に貯められる。そして、(7)で、発酵液貯液に貯められた発酵液を回収する、という、原料の流入経路および発酵液の流出経路からなるものである。
図3に示したような形態で、本発明の「連続発酵法」を行い、発酵液に含まれる目的物を回収する場合には、バイオフィルムリアクターから回収する酵素液に含まれる目的物の濃度が低下しないように原料の注入を行うことが好ましい。原料の注入速度が速ければ速い程、得られる目的物の量が多くなるため、目的物の濃度の最大値を維持できる範囲で原料の注入速度を調整することが特に好ましい。凝集物として「凝集体」を用いる場合も同様である。
図3では、原料および発酵液を管のようなもので流すような形で示しているが、本発明の「連続発行法」は必ずしもこのような必要はなく、例えば、原料を加えた状態の原料貯槽や回収のための発酵液貯液を必要に応じて付け替えたりする等、バイオフィルムへの原料の供給、および得られた発酵液の回収が継続して行える形態であればどのようなものであってもよい。
このような、本発明の「連続発酵法」を行うための機器としては、従来知られているいずれの機器も用いることができる。また、独自に作成した機器等を用いても良く、バイオフィルムも必ずしもリアクターを用いて作成したものでなくても良い。
凝集物として「凝集体」を用いた場合も同様に従来知られているいずれの機器も用いることができるが、「連続発酵法」を行うにあたり凝集体を破壊しない機器を用いることが好ましく、攪拌等の機能を有さない機器や、攪拌等の機能を有する機器でも、撹拌による「凝集体」の機械的な力に起因する崩壊を最小限にとどめるように調整した機器等を使用することが好ましい。
本発明の「エタノールを生産する方法」において、「pH5以下の条件下」とは、連続発酵法において、乳酸菌および酵母が発酵を行う環境が、pH5以下に保たれている状態のことをいう。pH5以下であればよく、より好ましくはpH4.5以下の条件下に保たれていることが好ましい。発酵を開始したばかりで、非定常状態を示している際には、pH5以上となる場合もあるが、乳酸菌および酵母が発酵を開始して以降、その発酵を行う環境がpH5以下に保たれていれば、本発明において「pH5以下の条件下」にあるといえる。
本発明の「凝集物」のうち、「バイオフィルム」とは、固液界面、気液界面などの界面に形成される細胞集合体であって、乳酸菌と酵母の細胞同士の接着により形成される「凝集体」が固体等の担体の表面や内部等に形成され、付着した形態のものをいう。
この「バイオフィルム」は、担体を含む状況で、乳酸菌と酵母がいずれも安定して生育できる条件で共培養することで形成することができる。
ここで用いる「担体」としては、本発明の「バイオフィルム」が形成され得る「担体」であれば、いずれの物を用いることもできる。微生物が付着可能な表面積ができるだけ広く、かつ目詰まりを起こさない、多孔質の物質を含む「担体」であることが好ましい。このような物質として、例えば、ガラス、セルロース、ラテックス、ゼオライト、セラミック、焼結ガラス等を挙げることができ、これらを含む「担体」として、ガラスビーズ、セルロースビーズ、ラテックスビーズ、ゼオライト、セラミックビーズ、焼結ガラス、イナワラ、バガス、木材チップ等を本発明の「担体」とすることもできる。また、軽石、活性炭、ウレタンフォームまたはウレタンスポンジのような水処理用微生物固定化担体等も本発明の「担体」として用いることができる。これらの「担体」は、例えば、ガラスビーズとセルロースビーズのように、複数組み合わせてバイオフィルムの形成に用いてもよい。
また、「担体」の形状はどのような形状であってもよく、ビーズ状、繊維状、薄い板状やフィルム状等が挙げられる。「担体」の大きさは、本発明の「連続発酵法」を実施する規模に合わせて調整することができ、例えばガラスビーズ等であれば直径1mm〜100mmのもの等が挙げられる。また、イナワラ等を「担体」とする場合には、そのまま用いてよいが、適当な長さ、例えば5mm程度の長さに切断したものを用いてもよく、殺菌してもよいが、未殺菌のものを使用してもよい。
「バイオフィルム」の形成は、従来知られているいずれの方法によって行っても良いが、たとえば、プラスチック製やガラス製の容器等に担体となるものを加え、これに凝集物を形成し得る「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」を含む培養液および「酵母」を含む培養液を加え、一定時間共培養することで、担体上にバイオフィルムを形成させることができる。
ここで行う一定時間の共培養は、凝集物を形成し得る「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」および「酵母」が生育可能な温度範囲でバイオフィルムが形成され得る時間行えばよく、例えば、25〜35度で、16〜48時間、共培養を行う等が挙げられる。
また、プラスチック製やガラス製の容器等に加える担体は、使用する担体の種類に応じて適宜加えておけばよく、例えば担体としてガラスビーズ、セルロースビーズ等を使用する場合には、容器の容量を最大限利用するために概ね目いっぱい充填することが好ましい。
本発明の「凝集物」のうち、「凝集体」とは、固体同士が何らかの相互作用により接着(付着)し合って形成する集合体のことで、ここでは酵母と乳酸菌という異種の細胞同士の接着によって形成されるものをいう。
「凝集体」は、乳酸菌と酵母がいずれも安定して生育できる条件で、凝集物を形成し得る乳酸菌と酵母を共培養することで形成することができる。
この共培養は、「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」と「酵母」のいずれもが生育可能な温度範囲で凝集体が形成され得る時間行えばよく、例えば、25〜35度で、16〜48時間共培養を行う等が挙げられる。
共培養には乳酸菌の菌液と酵母の菌液を混合したり、酵母と乳酸菌を含む菌液をそのまま培養したりすればよく、必要に応じてこれらの菌液を緩やかに撹拌しながら共培養すると、細胞同士の接触の機会を高めることができる。この撹拌は、使用する装置に応じて、「凝集体」形成に適する撹拌条件を設定すればよい。
本発明の「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を形成し得る「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」であれば、いずれの乳酸菌を用いることもできる。
さらに、本発明の「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、酵母との共凝集性を示す「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」であることが好ましい。ここで、「酵母との共凝集性」とは、酵母と共存した場合に「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」の細胞と酵母の細胞が細胞間で接着して凝集塊を形成する性質のことをいう。具体的には、一晩(12〜16時間)培養した「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」と酵母とを含む細胞懸濁液を培地中で混合し、静置した後30分以内に目視にて凝集塊の形成が認められるような場合、このような「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、酵母との共凝集性を示す「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」であるといえる。
このような本発明の「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」として、例えば、本発明者によって分離された菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受託番号 NITE P−376として寄託されている(受託日:2007年7月10日)ラクトバチルス・プランタラムML11−11株が挙げられる。
さらに、このような本発明の「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」として、本発明者らが鯖寿司より分離した菌株であり、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に、受託番号 NITE P−1112として寄託されている(受託日:2011年6月30日)ラクトバチルス・プランタラムHP9株、またはNITE AP−1168として受領番号を受けている(受領日:2011年11月29日)ラクトバチルス・プランタラムHM23株等も、本発明の乳酸菌として挙げることができる。
本発明の連続発酵法に利用できる、これらの「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、配列表配列番号1〜3に示される16SrDNAの366個の部分塩基配列(配列番号1:ML11−11株由来、配列番号2:HP9株由来、配列番号3:HM23株由来)および配列表配列番号4〜6に示される16SrDNAの150個の部分塩基配列(配列番号4:ML11−11株由来、配列番号5:HP9株由来、配列番号6:HM23株由来)を有するものである。
また、本発明の「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を形成し得る「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」であれば、その16SrDNAの塩基配列において、配列表配列番号1〜3に示される部分塩基配列、および配列表配列番号4〜6に示される部分塩基配列と高い相同性(同一性)を有する部分塩基配列を含むものであってもよい。
ここで、「高い相同性(同一性)」とは、通常、97%以上の相同性をいい、好適には、99%以上の相同性をいい、最も好適には、100%の相同性をいう。
このような16SrDNAの塩基配列を示す「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」は、ラクトバチルス・プランタラムML11−11株、ラクトバチルス・プランタラムHP9株またはラクトバチルス・プランタラムHM23株と近縁の菌株であっても良く、また、近縁株以外の菌株であっても良い。
本発明の「酵母」も乳酸菌との共培養により、凝集物を形成し得る「酵母」であれば、凝集性を有する酵母に限らず、単独では凝集性を有さない酵母等、いずれの酵母を用いることもできる。このような酵母として、例えば、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株またはサッカロマイセス・セレビシエNBRC0282株等を挙げることができる。
凝集物を形成し得る「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」と「酵母」であれば、どのような菌株を組み合わせても良い。また、例えば、本発明の「連続発酵法」により、発酵液から回収する目的物をエタノールとする場合は、エタノール生成能力にすぐれ、高濃度のエタノールに耐性をもつ「酵母」と高濃度のエタノールに耐性をもつ「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」を組み合わせて用いることが好ましい。
本発明の「連続発酵法」においては、「連続発酵法」によって得たい目的物が発酵液から回収できる原料であればいずれのものも用いることができる。
発酵液から回収したい目的物が、例えば、エタノールである場合には、糖分を含む原料が挙げられ、デンプンやセルロースの糖化液等、バイオマス由来の糖分を含んだ溶液を主体とする培地や果汁、野菜くずなどの廃棄物、海藻等を酸や酵素を利用して糖化したもの等を原料として挙げることもできる。
ただ、「ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌」および「酵母」が好んで生育し得る、食塩濃度が2重量%以下の原料であることが好ましい。これらの原料は殺菌されたものでも、未殺菌のものであっても良い。
本発明の「連続発酵法」において使用する原料は、水性溶液の状態で凝集物に接することが好ましい。このような水性溶液状の原料は、殺菌、未殺菌のいずれであってもよいが、調製後の保存性を高めるために、pH5以下に調整して使用するのが好ましい。
また、原料は、例えば、1日〜2日に1回の間隔で調製する等、適宜な間隔で調製して用いることが好ましく、大量に作りだめするのは好ましくない。
凝集物として「凝集体」により「連続発酵法」を行う場合には、「凝集体」の沈降による発酵効率の低下を避けるために、「凝集体」が沈降しない程度の撹拌をすることが好ましい。撹拌の方式としては、撹拌羽を用いる撹拌、発生する二酸化炭素によるガスリフト効果を利用する撹拌等、いかなる方式でも良いが、「連続発酵法」において使用する装置において、「凝集体」を沈降させることなく、また、破壊することのない条件の範囲で撹拌を行うことが好ましい。
以下に実施例および試験例を示し、さらに本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限られるものではない。
[試験例1]
乳酸菌の酵母との共凝集性の評価
1.試料
1)培地
(1)MRS液体培地(DIFCO製)
プロテオース ペプトン No.3,10.0g:牛エキス,10.0g:酵母エキス,5.0g:デキストロース,20.0g:ポリソルベート 80,1.0g:クエン酸アンモニウム,2.0g:酢酸ナトリウム,5.0g:硫酸マグネシウム,0.1g:硫酸マンガン,0.05g:リン酸2カリウム,2.0g:(1L中)
(2)YPD培地
酵母エキス1.0%、ポリペプトン2.0%、グルコース2.0%(pH5.8)となるように調製し、必要に応じてオートクレーブにて120℃、20分間で殺菌した。
2)微生物
(1)乳酸菌
ラクトバチルス・プランタラムML11−11株(寄託番号 NITE P−376)、ラクトバチルス・プランタラムHP9株(受託番号 NITE P−1112)またはラクトバチルス・プランタラムHM23株(受領番号 NITE AP−1168)を用いた。
また、比較として、ラクトバチルス・プランタラムNCIMB8826株(NCIMB:アバジーン AB21 9YA,スコットランドより入手)、ラクトバチルス・カゼイ・サブシーシス・ラムノーサスNBRC3831株(独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンターNBRCより入手)を用いた。
これらの菌をそれぞれ一晩10mlのMRS液体培地にて静置培養し、細胞を遠心分離して回収した。その後、YPD培地で2回洗浄した後、10mlのYPD培地にそれぞれ懸濁し、乳酸菌懸濁液を調製した。
(2)酵母
サッカロマイセス・セレビシエBY4741株(ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)より入手)を用いた。これを一晩10mlのYPD培地にて静置培養し、細胞を遠心分離して回収した。その後、YPD培地で2回洗浄した後、10mlのYPD培地に懸濁し、酵母懸濁液を調製した。
3)共凝集性の評価
上記2)にて調製した乳酸菌懸濁液1.0mlと酵母懸濁液1.0mlをミニシャーレ(40mmφ)中で混合した後、混合液を室温にて静置し、30分後に凝集塊の形成の有無を目視にて観察し、凝集塊の形成の程度を評価した。
乳酸菌懸濁液の代わりにYPD培地1.0mlと酵母懸濁液と混合したもの、および、酵母懸濁液の代わりにYPD培地1.0mlと各乳酸菌懸濁液と混合したものを対照として測定した。
その結果、表1に示したように、ML11−11株、HP9株およびHM23株の3菌株は酵母(BY4741株)との強い凝集性を示し、懸濁液混合後30分以内に目視で観察可能な凝集塊を形成した。これに対して、NCIMB8826株やNBRC3831株では凝集塊が観察されなかった。
Figure 2013150598
<バイオフィルムリアクターの作成>
1.試料
1)培地
(1)YPD培地
酵母エキス1.0%、ポリペプトン2.0%、グルコース2.0%(pH5.8)となるように調製し、必要に応じてオートクレーブにて120℃、20分間で殺菌した。
(2)YPD培地(グルコース10.0%)
酵母エキス1.0%、ポリペプトン2.0%、グルコース10.0%(pH5.8)となるように調製し、必要に応じてオートクレーブにて120℃、20分間で殺菌した。
2)微生物
(1)酵母
サッカロマイセス・セレビシエBY4741株(ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)より入手)またはサッカロマイセス・セレビシエNBRC0282株(独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター生物資源課(NBRC)より入手)を用いた。
(2)乳酸菌
ラクトバチルス・プランタラムML11−11株(寄託番号 NITE P−376)、ラクトバチルス・プランタラムHP9株(受託番号 NITE P−1112)またはラクトバチルス・プランタラムHM23株(受領番号 NITE AP−1168)を用いた。
3)担体
(1)ガラスビーズ(4mmφ):市販品(東急ハンズ社にて入手)
(2)セルロースビーズ(4mmφ):ビスコパールA(AH4050L)(レンゴー株式会社製)
2.バイオフィルムリアクター(A)の作成
上記1.の試料と、乳酸菌としてラクトバチルス・プランタラムML11−11株(寄託番号NITE P−376)、酵母としてサッカロマイセス・セレビシエBY4741株を用い、次の1)〜3)の手順により、バイオフィルムリアクター(A)を作成した。
1)プラスチック製の注射筒を利用して作成した50mL容のカラムリアクターにガラスビーズまたはセルロースビーズを充填し、未殺菌のYPD培地を20mL加え、オートクレーブにて120℃、20分間殺菌した。
2)上記1)で殺菌したカラムリアクター内に、殺菌したYPD培地にて、24時間静置培養したラクトバチルス・プランタラムML11−11株の培養液と、酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株の培養液を0.2mLずつ接種した。
3)上記2)を30℃にて24時間培養することで、各担体上にバイオフィルムを形成させ、バイオフィルムリアクター(A)を得た。
[試験例2]
反復回分発酵法によるエタノール生産
上記実施例1で作成したバイオフィルムリアクター(A)において、次の1)〜3)の手順により、反復回分発酵法により、エタノールの生産を行った。
1)実施例1で作成したバイオフィルムリアクター(A)から培養後の培養液を取り出し、新鮮なYPD培地(グルコース10.0%)に置換して、30℃にて24時間培養した。
2)上記1)の培養後の培養液を回収し、新たに新鮮なYPD培地(グルコース10.0%)に置換して、30℃にて24時間培養した。
3)合計の培養回数が10回となるように、上記2)を繰り返し、反復回分発酵法を行った。
なお、10回の反復の間、3回目から4回目の間に72時間にわたり、また8回目から9回目の間に96時間にわたり培地交換を停止して、発酵成績の不安定化が起こるかどうかを解析した。
また、比較として、上記実施例1と同様の手順により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株の培養液のみを接種することで作成した酵母単独バイオフィルムリアクターを用い、反復回分発酵法によるエタノールの生産も試みた。
エタノール生産量の測定
上記において、全ての培養が終了した時点で、24時間毎に各バイオフィルムリアクターから引抜いた培養液中のエタノール濃度をアルコール濃度計「アルコメイトAL−3」(株式会社ウッドソン 理研計器(株)製)にて分析した。
図1に本発明のバイオフィルムリアクターを用いた場合のエタノール生産量(v/v%)を示し、図2に比較として作成した酵母単独バイオフィルムリアクターを用いた場合のエタノール生産量(v/v%)を示した。
その結果、本発明のバイオフィルムリアクターを用いた場合、ガラスビーズを担体とした場合でも、セルロースビーズを単体とした場合でも、10回という複数回の反復回分発酵法を行ってもエタノールの生産が確認できた。特に、セルロースビーズを担体とした本発明のバイオフィルムリアクターを用いた場合に最も発酵成績が安定しており、3回目と4回目の間および8回目と9回目の間の2回、途中に培地交換を停止しても殆ど影響せず、発酵を続けられることが確認できた。
従って、この結果より、3〜4日間にわたって培地交換が停止されるという過酷な条件においても、その後培地交換をすれば直ちに発酵が正常化することから、装置の不具合や停電などのさまざまなトラブルの影響によって、発酵を中断しなければならない非定常状態が生じた場合でも、セルロースビーズを担体としたバイオフィルムリアクターにおいて順調に発酵を再開できることが確認できた。
一方、酵母単独バイオフィルムリアクターを用いた場合、ガラスビーズを担体とした場合でも、セルロースビーズを単体とした場合でもエタノールの生産は確認できるものの、より良好なセルロースビーズを担体とした場合でも、8回目以降の96時間の培地交換停止に伴い、エタノール生産量(v/v%)が著しく悪化し、10回目にはエタノールが全く生産されず、本発明のバイオフィルムリアクターと比べて、エタノールの生産量が格段に下がることが示された。
10回目の培養終了後のセルロースビーズを取り出して乳酸菌と酵母の生菌数を測定したところ、本発明で使用したバイオフィルムにおいては両菌ともビーズ1個当たり107個以上検出されたのに対し、比較として使用した酵母単独バイオフィルムでは5×103個程度しか検出されず、酵母が死滅していることが明らかとなった。
従って、本発明で利用するバイオフィルムは酵母単独バイオフィルムに比べて菌体の安定性に優れており、連続発酵に適した特性を有していることが確認された。またバイオフィルムを形成させる担体としては、ガラスビーズよりもセルロースビーズが優れていることが示された。
連続発酵法によるエタノール生産
1.バイオフィルムリアクター(B)の作成
全容670mLのガラス容器をカラムリアクター容器とし、実施例1、1.と同様の試料と、乳酸菌としてラクトバチルス・プランタラムML11−11株(寄託番号NITE P−376)、酵母としてサッカロマイセス・セレビシエBY4741株を用いて、次の1)〜3)の手順により、バイオフィルムリアクター(B)を作成した。
1)全容670mLのガラス容器にセルロースビーズ(4mmφ)を充填し、オートクレーブにて120℃、20分間殺菌した。
2)殺菌したYPD培地500mLに、酵母サッカロマイセス・セレビシエBY4741株または乳酸菌ラクトバチルス・プランタラムML11−11株を接種し、それぞれ24時間静置培養した。
3)上記2)で得られた培養後の培養液を5mLずつ接種して混合した後、上記1)で調整したカラムリアクターに注入した。
4)上記3)のカラムリアクターを殺菌したYPD培地350mLで満たした後、30℃で24時間培養することで、セルロースビーズ上にバイオフィルムを形成させ、バイオフィルムリアクター(B)を得た。
2.連続発酵法によるエタノール生産
上記1.で作成したバイオフィルムリアクター(B)により、次の手順により、エタノールの生産を行った。
即ち、バイオフィルムリアクター(B)に、殺菌したYPD培地(グルコース10.0%)を、チューブポンプを用いて18mL/hの速度で連続的に注入し、同様の速度でバイオフィルムリアクター(B)から培養液を引き抜いた。
なお、比較例1として、実施例1.と同様の手順により、サッカロマイセス・セレビシエBY4741株の培養液のみを接種することで作成した酵母単独バイオフィルムリアクターを用い、上記と同様の方法で、連続発酵法によるエタノールの生産も試みた。
3.エタノール生産量の測定
上記2.において、24時間毎に各バイオフィルムリアクターから引抜いた培養液中のエタノール濃度をアルコール濃度計「アルコメイトAL−3」(株式会社ウッドソン 理研計器(株)製)にて分析した。
その結果、表2に示したように、バイオフィルムリアクター(B)を用いた場合、培養5日目にはエタノール濃度が約4.9%(w/v)に到達し、5日目から10日目に至るまで約5.0%(v/v)のエタノールが連続的かつ安定的に生産されたことが確認できた。また、引抜いた培養後の培養液のpHを測定したところ、人為的にpH調整をしなくても、連続発酵の1日目から10日目に至る間のすべてにおいて、pH3.4からpH4.2の範囲に維持されていることが分かった。
一方、酵母単独バイオフィルムリアクターを用いた場合では、連続発酵開始5日目にエタノール濃度4.2%(v/v)に到達したが、バイオフィルムリアクター(B)を用いた場合に比べてエタノール濃度が低く、更に6日目以降雑菌の汚染が発生し、連続発酵を中止せざるを得なくなった。培養液のpHも、1日目:pH5.1、2日目:pH4.4とバイオフィルムリアクター(B)を用いた場合と比べて高めであった。
従って、この結果より、酵母単独バイオフィルムリアクターよりも、酵母と乳酸菌からなるバイオフィルムリアクターを用いた方が、安定にエタノールを生産できることが示された。
本発明のバイフィルムリアクターを用いた連続エタノール発酵用装置の概要を図3に示した。
図3において、a.は原料貯槽、b.はチューブポンプ、c.は本発明で使用するバイオフィルムリアクター、およびd.は発酵液貯液を示す。また、(1)〜(7)の矢印は以下のような原料の流入経路および発酵液の流出経路を示したものである。
(1)原料がa.原料貯槽に貯められる。
(2)〜(4)a.原料貯槽からb.チューブポンプを経てc.本発明で使用するバイオフィルムリアクターに流入する。
(5)〜(6)c.本発明で使用するバイオフィルムリアクターによって発酵された原料の発酵液が、該バイオフィルムリアクターから流出し、d.発酵液貯液に貯められる。
(7)d.発酵液貯液から発酵液が回収される。
Figure 2013150598
[試験例3]
バイオフィルムリアクター(B)中の菌数の測定
実施例2において、連続発酵法開始10日目のバイオフィルムリアクター(B)内のセルロースビーズに固定化されている酵母および乳酸菌の菌数を、次の1)、2)の手順により測定した。
1)バイオフィルムリアクター(B)の上部、中部、下部からセルロースビーズを一個ずつ取り出し、それぞれ1mLの生理食塩水に入れ、ガラス棒ですり潰したのちに超音波処理にて細胞を分散させ、細胞懸濁液を得た。
2)上記1)の細胞懸濁液を希釈後、酵母および乳酸菌の選択培地に塗抹し30℃ないし37℃で24時間培養した後出現したコロニーを計数することで生菌数を測定した。
この菌数の測定にあたり、酵母用選択培地として、YPD培地(DIFCO社製)にプロピオン酸ナトリウム2g/lとクロラムフェニコール100mg/lを添加した平板培地を使用した。また、乳酸菌用選択培地としてはMRS培地(DIFCO製)にアジ化ナトリウム10mg/lおよびシクロヘキシミド10mg/lを添加した平板培地を用いた。
生菌数測定の結果、表3に示したように、酵母と乳酸菌はセルロースビーズ1個当たり3.6〜10.4×106個存在していることが明らかとなり、バイオフィルムリアクター(B)内において、これらの微生物が生物学的に安定して維持されていることが確認できた。
Figure 2013150598
連続発酵法(長期)によるエタノール生産
実施例2と同様に作成したバイオフィルムリアクター(B)を用いて、実施例2と同様の方法により、約一ヶ月間に及ぶ長期のエタノール生産を行った。
長期のエタノール生産では、バイオフィルムリアクター(B)を運転している期間中、連続発酵系が非定常状態に対してどの程度の安定性を有しているかを確認するために、6日目以降15日目までの10日間はグルコース濃度を2%としたYPD培地を一日一回入れ替える反復回分方式で培養し、16日目から29日目までは1〜5日目と同様にYPD培地(グルコース10.0%)による連続発酵を行った。この長期のエタノール生産の期間中、酵母、乳酸菌ともに追加接種は行わず、運転を続けた。
その結果、表4に示したように、培養5日目にエタノール濃度は4.4%(v/v)に到達した。その後YPD培地による反復回分法による培養に移行した10日間は、エタノール濃度は低レベルで推移したが、15日目以降にYPD培地(グルコース10.0%)に供給培地を切り替え、グルコース濃度を高めて連続培養に移行した結果、翌々日(17日目)にはエタノール濃度が4.6%(v/v)に復帰した。その後も5%(v/v)程度のエタノール濃度で連続発酵が可能であった。この間、培養液のpHはpH3から5の間に維持された。
この結果より、本発明のバイオフィルムリアクターを用いた場合には、10日間違う原料や発酵法によって発酵を行い、菌の数や一個の菌当たりのエタノール生成活性に変動が生じた場合でも、その後、連続発酵法を再開すれば直ちに発酵が正常化することが確認できた。
通常の連続培養系ではこのような外乱を与えると系の安定性を保つことができなくなり、連続発酵法自体が実施できなくなるが、本発明で使用するバイオフィルムではこのような問題は起こらず、安定して利用できることが確認できた。
Figure 2013150598
連続発酵法によるエタノール生産
1.バイオフィルムリアクター(C)、(D)の作成
上記実施例1、1.の試料と、乳酸菌としてラクトバチルス・プランタラムHP9株または、ラクトバチルス・プランタラムHM23株、酵母としてサッカロマイセス・セレビシエNBRC0282株を用い、実施例2と同様の方法によりバイオフィルムリアクター(C)またはバイオフィルムリアクター(D)を作成した。
2.連続発酵法によるエタノール生産
上記1.で作成したバイオフィルムリアクター(C)またはバイオフィルムリアクター(D)により、実施例2と同様の方法で、10日間の連続発酵法により、エタノールの生産を行い、エタノール生産量を測定した。
その結果を表5に示したように、ラクトバチルス・プランタラムHP9株を利用したバイオフィルムリアクター(C)を用いた場合でも、10日間にわたり安定してエタノールが生産できることが確認できた。また表6に示したように、ラクトバチルス・プランタラムHM23株を利用したバイオフィルムリアクター(D)を用いた場合でも、8日間にわたり安定してエタノールが生産できることが確認できた。
従って、実施例2およびこれらの結果より、バイオフィルムを形成する能力を有する乳酸菌と酵母とを組み合わせることによって得られるバイオフィルムは、使用する酵母や乳酸菌がバイオフィルムを形成可能なものでありさえすれば菌株の種類によらず、連続発酵法によって、長期間安定にエタノールの生産が可能であることが示された。
Figure 2013150598
Figure 2013150598
[試験例4]
ラクトバチルス・プランタラムHP9株またはラクトバチルス・プランタラムHM23株のバイオフィルム形成能の確認
ラクトバチルス・プランタラムHP9株またはラクトバチルス・プランタラムHM23株が酵母との共培養により、バイオフィルムを形成するか否かを以下の試験により調べた。
即ち、上記実施例1、1.の試料と、乳酸菌としてラクトバチルス・プランタラムHP9株またはラクトバチルス・プランタラムHM23株、酵母としてサッカロマイセス・セレビシエBY4741株を用い、次の1)〜4)の手順により、バイオフィルムの形成能を試験した。
また、比較としてラクトバチルス・プランタラムML11−11株を用いたもの、酵母のみのものにおいてもバイオフィルム形成能を試験した。
1)酵母はYPD培地を用いて27℃で24時間前培養した。また、ラクトバチルス・プランタラムML11−11株、ラクトバチルス・プランタラムHP9株およびラクトバチルス・プランタラムHM23株はそれぞれMRS培地(DIFCO製)を用いて27℃で24時間前培養した。
2)上記1)で得られた前培養菌液を、それぞれYPD培地に接種し、これを96穴タイタープレートに1ウェル当たり100μL分注した。前培養菌液は1菌株のみを接種する場合はYPD培地の100分の1量接種し、2菌株接種する場合は1菌株当たりYPD培地の200分の1量接種した。
3)前培養菌液接種後、30℃で24時間静置培養を行った。
4)上記3)の後、クリスタルバイオレット(0.1%)染色法によりバイオフィルムを染色した。染色したバイオフィルムから色素を200μlの70%(v/v)エタノール溶液で溶出し、溶出した色素の590nmにおける吸光度を測定し、バイオフィルム形成量として評価した。
その結果、図4に示すように、ラクトバチルス・プランタラムML11−11株(図4、ML11−11複合)、ラクトバチルス・プランタラムHP9株(図4、HP9複合)およびラクトバチルス・プランタラムHM23株(図4、HM23複合)はいずれも酵母との共培養により、バイオフィルム形成能を有することが確認された。また、ラクトバチルス・プランタラムHP9株(図4、HP9複合)およびラクトバチルス・プランタラムHM23株を用いたものは、ラクトバチルス・プランタラムML11−11株を用いたものよりバイオフィルム形成能が高かいことが確認された。なお、酵母のみのものは、図4において酵母単独として示した。
雑菌排除作用の確認
連続発酵法によるエタノールの生産において、酵母と乳酸菌のバイオフィルムが優れた安定性を示す理由の一つとして乳酸菌による汚染菌の排除作用が考えられた。そこで、大腸菌または枯草菌をモデル汚染菌として、乳酸菌の雑菌排除作用を調べた。
1.試料
1)微生物
(1)酵母
サッカロマイセス・セレビシエBY4741株をYPD培地(DIFCO製)にて、30℃、24時間で前培養した。
(2)乳酸菌
ラクトバチルス・プランタラムML11−11株をMRS培地(DIFCO製)にて、30℃、24時間で前培養した。
(3)大腸菌
大腸菌MG1655(E.coli Genetic Resources at Yale CGSC,The Coli Genetic Stock Center(エール大学、E.coli遺伝資源保存センター)より入手)をLB培地(DIFCO製)にて、37℃、24時間で前培養した。
(4)枯草菌
バチルス・ズブチリス NBRC14133(NBRCより入手)をYPD培地にて37℃、24時間振盪培養にて前培養した。
2)選択培地
各菌の菌数計測に用いた選択培地は、酵母用としてプロピオン酸ナトリウム2g/l、クロラムフェニコール100mg/lとなるようにYPD培地に添加したもの、乳酸菌用としてアジ化ナトリウム10mg/lおよびシクロヘキシミド10mg/lとなるようにMRS培地に添加したもの、大腸菌用としてXM−G培地(ニッスイ製)を使用した。
2.大腸菌をモデル汚染菌とする雑菌汚染試験
次の1)〜4)の手順により、大腸菌をモデル汚染菌とする雑菌汚染試験を行った。
1)前培養した酵母、乳酸菌または大腸菌の培養液をそれぞれ一代菌液とした。その後、一代菌液を新たなMRS培地、YPD培地またはLB培地にそれぞれ1/100量ずつ接種し、O.D.1.0まで培養した。
2)上記1)において調製した各菌の二代菌液333μlをYPD培地100mLに接種した。複合培養では用いる菌株の二代菌液を同時に同量YPD培地に接種した。接種後の各菌量は酵母105/mL、乳酸菌106/mL、大腸菌104/mLであった。
3)上記2)をそれぞれ30℃,24時間静置培養した後、超音波破砕機にてmiddle,5minの処理を行い、形成させたバイオフィルムをはがし取り、滅菌済生理食塩水に適宜希釈後、それぞれ上記1.2)の選択培地に塗抹した。
4)酵母30℃、乳酸菌30℃、大腸菌37℃でそれぞれ24時間培養を行った後に、生菌数を測定し、培養開始時と24時間目の生菌数の値をもとに、生育速度を算出した。
生育速度は以下の式1に基づき培養0時間から24時間の間の比増殖速度として算出した。
[式1]
ln(C/C0)=μt
(C:24時間目の菌数;C00:時間目の菌数;μ:比増殖速度;t:24時間)
培養開始時と24時間培養後の菌数をもとに各実験区における各菌株の生育速度を算出した結果を表7に示した。その結果、表7に示されるように、酵母単独培養系に大腸菌が汚染すると酵母の生育速度が約1/2に低下し、酵母が大腸菌により生育阻害を受けていることが示された(実験区5)。
一方、乳酸菌単独培養系に大腸菌が汚染した場合、乳酸菌の生育速度は単独培養時の約70%に低下したが、大腸菌の生育の低下は著しく大腸菌単独培養系の約1/10に低下し、大腸菌が乳酸菌により顕著な生育阻害を受けていることが明らかとなった(実験区6)。
酵母と乳酸菌の複合培養系に大腸菌を汚染させた場合には大腸菌の生育は完全に阻害され、両菌の単独培養系に大腸菌が汚染した場合に比べて酵母や乳酸菌の生育速度がそれぞれ0.18h-1、0.22h-1と大幅に改善されることが分かった(実験区7)。なお、実験区1〜3に示されるように、乳酸菌と酵母は互いに共存していても生育速度に影響を及ぼすことはなかった。
Figure 2013150598
2.枯草菌をモデル汚染菌とする雑菌汚染試験
次に、酵母と乳酸菌のバイオフィルムを用いてアルコール連続発酵における枯草菌の汚染の影響を検討した。
即ち、実施例2と同様に作成したバイオフィルムリアクター(B)において、実施例2と同様の方法により、連続発酵法を10日間行ったバイオフィルムリアクター(B)内にモデル汚染菌としてYPD培地にて37℃,24時間振盪培養にて前培養した枯草菌を104 CFU/mLの濃度になる様に接種し、24時間連続発酵の後にバイオフィルムリアクター(B)内の枯草菌の菌数を測定した。
菌数の測定は次の1)、2)の手順により行った。
1)バイオフィルムリアクター(B)内の培養液を1mL採取し、1.5mL容エッペンドルフチューブへ1mL分注し、超音波破砕機でmiddle,5minの処理を行い、細胞を分散化した。
2)上記1)にて分散化した後、滅菌済生理食塩水に適宜希釈し、NA培地(関東化学製)に塗抹後、45℃で12時間培養を行った。培養後、生菌数を測定した。
また、枯草菌の芽胞細胞に関しては、同じくバイオフィルムリアクター(B)内の培養液1mLを1.5mL容エッペンドルフチューブへ1mL分注し、恒温槽にて70℃,20minの加熱処理を行った後に、超音波破砕機でmiddle,5minの処理を行い、細胞を分散した物を用い、上記2)塗装用に生菌数を測定した。
その結果、リアクターに接種直後は104/mLであった枯草菌が24時間後には全く検出できないレベルにまで減少していた。
3.雑菌排除作用の寄与因子の検討
次に連続発酵法によるエタノールの生産において、主要な因子である培地pH、エタノール、乳酸の中のいずれの因子が雑菌排除に寄与しているかを解析した。
YPD培地に表8に示したエタノール、乳酸またはこれらの両方を添加物として添加し、pHを調整した培地で枯草菌を24時間培養した後、枯草菌の菌数を測定した。その結果、表8に示したように、pH6.5に調整した培地では、エタノールを5%添加しても枯草菌の生育は全く阻害されず、乳酸を1%添加しても阻害の程度はわずかであった。
一方、pH3.5に調整した培地では、著しく枯草菌の生育が阻害された。しかし、この場合でも、エタノールや乳酸の添加による相乗的な阻害作用は認められなかった。また酵母と乳酸菌の共培養液(pH3.7)の上清中(YPD培地(10.0%グルコース)で連続発酵中(定常状態)のリアクター(B)より採取した培養液を遠心分離後、ろ過除菌して上清として得たもの。この上清は、アルコール4.2%(v/v)および乳酸0.6%(w/v)を含み、pH3.7であった)も枯草菌の生育は顕著に阻害された。
従って、これらの結果より、連続発酵法による酵母と乳酸菌のバイオフィルムを用いたエタノールの生産において、雑菌排除能が示すのは、この培養系のpHが4以下に制御されているためであることが明らかとなった。
Figure 2013150598
無殺菌果汁を原料とする連続発酵法によるエタノール生産
原料として無菌的な操作を行わずに果実から直接調製した無殺菌のオレンジ果汁(糖分10.4%(w/v)、pH3.9)、またはブドウ果汁(糖分12.4%(w/v)、pH3.7)を供給培地として使用して、連続発酵法により、安定的なエタノールの生産が可能かどうかを検討した。原料となる果汁はまとめて調製後に冷蔵保存し、1日に一回、無菌操作を行うことなく培地貯槽に移し替えて連続発酵に用いた。なお培地貯槽は室温で保持した。
実施例2と同様に作成したラクトバチルス・プランタラムML11−11株を利用したバイオフィルムリアクター(B)に無殺菌のオレンジ果汁またはブドウ果汁を18mL/hの速度で連続的に注入し、同様の速度でバイオフィルムリアクター(B)から培養液を引き抜いた。供給側の培地貯槽は室温で保持した。10日間、連続発酵法を行い、実施例2と同様の方法で引抜き液中のエタノール濃度を測定した。
その結果、表9に示したように、いずれの無殺菌の果汁を用いても、雑菌汚染されることなく、エタノールを連続的に生産できることが確認された。また、連続発酵法によって得られる培養後の培養液のpHは全ての運転期間を通じてpH3〜5の間に維持されていた。
Figure 2013150598
麦汁を原料とする連続発酵法によるエタノール(ビール)の生産
原料として麦汁(糖濃度11.5%(w/v))を供給培地として使用して、連続発酵法により、安定的なエタノール(ビール)の生産が可能かどうかを検討した。原料の麦汁は市販のモルトエキス(Advanced Brewing社より購入した手作りビールキットのモルトエキス)を溶解することで調製した。麦汁は調製後、100℃、3分間加熱、室温で冷却後、無菌操作を行うことなく培地貯槽に移し替えて連続発酵に用いた。なお供給培地は1日1回調製した。
実施例4と同様に作成したラクトバチルス・プランタラムHM23株を利用したバイオフィルムリアクター(C)に麦汁を10mL/hの速度で連続的に注入し、同様の速度でバイオフィルムリアクター(C)から培養液を引き抜いた。供給側の培地貯槽は室温で保持した。7日間、連続発酵法を行い、実施例2と同様の方法で引抜き液中のエタノール濃度を測定した。
その結果を表10に示した。麦汁を原料とした場合にも、エタノールを連続的に安定生産できることが確認された。また、連続発酵法によって得られる培養後の培養液のpHは全ての運転期間を通じてpH3〜5の間に維持されていた。
Figure 2013150598
[比較例2]
特許文献3の実施例18および比較例18を参考とし、ラクトバチルス・プランタラムおよびチゴサッカロマイセス・ルーキシを担体としてセラミックスビーズを充填した殺菌済みの管型バイオリアクター中で共培養し、連続発酵法を行った場合のエタノール生産能や、バイオフィルムの形成の有無を調べた。
特許文献3では、ラクトバチルス・プランタラムおよびチゴサッカロマイセス・ルーキシの菌株が特定されていないことから、ラクトバチルス・プランタラムの標準株として知られるラクトバチルス・プランタラムWCFS1株と、チゴサッカロマイセス・ルーキシの分譲株であるチゴサッカロマイセス・ルーキシNBRC0523株を用いて試験を行った。
即ち、120℃、5分間で殺菌した全可溶性固形分濃度40重量%の糖液(グルコース31.3%、アミノ酸類0.2%を含む糖液(上新粉40gを950mLの水に懸濁したものを80℃で5分間加熱し糊化させた後に、60℃まで冷却し、50mLの水に溶解したグルクザイムAF6およびクライスターゼPL45(いずれも天野エンザイム製)を加え混合後、55℃で20時間糖化処理を行うことで調製した)中でチゴサッカロマイセス・ルーキシNBRC0523株(独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター生物資源課(NBRC)より入手)とラクトバチルス・プランタラムWCFS1株(独立行政法人 製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター生物資源課(NBRC)より入手)を馴養(27℃、72時間培養を2回繰り返した)後、実施例2と同様に、実施例1、1.に記載のセラミックスビーズまたはセルロースビーズを担体として充填したカラムリアクター容器に接種し、30℃で24時間静置培養することで、担体上へのバイオフィルムの形成を試みた。これを比較リアクターとした。
その後、この比較リアクターに120℃、5分間で殺菌した全可溶性固形分濃度40重量%の糖液(グルコース31.3%,アミノ酸類0.2%を含む糖液)を、チューブポンプを用いて18mL/hの速度で連続的に注入し、同様の速度でリアクターから培養液を引き抜き、実施例2と同様の方法でエタノール生産量を測定した。
その結果、表11に示したように、比較リアクターを用いた場合のエタノールの生産量は少なく、セラミックスビーズを担体とした場合には培養開始から6日目に、またセルロースビーズを担体とした場合にも培養開始から8日目にほぼエタノール生産能が完全に失われたことが確認された。
そこで、試験例3と同様の方法により、この比較リアクターにおけるバイオフィルムの形成量を調べたところ、チゴサッカロマイセス・ルーキシNBRC0523とラクトバチルス・プランタラムWCFS1株の組み合わせではほとんどバイオフィルムが形成されていないことが確認された。
従って、この結果より、連続発酵法におけるバイオフィルムを用いたエタノールの生産においては、凝集物を形成し得る乳酸菌と酵母を用いて行うことが必須であることが示された。
Figure 2013150598
<凝集体の作成>
1.試料
1)微生物
(1)酵母
サッカロマイセス・セレビシエBY4741株をYPD培地(DIFCO製)にて、30℃、24時間の静置培養を2回繰り返し、前培養することで種培養液を得た。
(2)乳酸菌
ラクトバチルス・プランタラムML11−11株をMRS培地(DIFCO製)にて、30℃、24時間の静置培養を2回繰り返し、前培養することで種培養液を得た。
2.凝集体の作成
全容1Lのジャーファーメンター(BMJ−01、エイブル株式会社製)の撹拌羽を全て取り除き、底部の撹拌子のみとし、撹拌を最小限にとどめることにより、撹拌に伴う凝集体の破壊を防止したものをリアクターとした。
これに、500mlのYPD培地を入れて殺菌した後、酵母および乳酸菌の種培養液を1/200量ずつ接種し、30℃、150rpmでこれらの菌が沈降しない程度に緩やかに撹拌しながら24時間共培養した。共培養後に顕微鏡観察したところ酵母と乳酸菌の共凝集体の形成が認められた。
3.連続発酵によるエタノール生産
上記2.で作成した凝集体のリアクターにより、次の手順により、エタノールの生産を行った。
即ち、リアクターにチューブポンプを用いてグルコース濃度10%のYPD培地を20ml/hの速度で連続的に供給するとともに、培養液面に設置したチューブを経由してチューブポンプにより最上部の培養液を引き抜いた。
これにより、凝集体の大部分をリアクター内部に残しつつ、培養液容量を一定に保ちながら30℃にて連続培養を行った。
4.エタノール生産量の測定
生成されたエタノールの濃度はアルコール濃度計「アルコメイトAL−3」(株式会社ウッドソン 理研計器(株)製)にて分析した。
連続培養を開始後3日目に4.1%(w/v)のエタノール濃度に達し、その後10日目まで安定した発酵成績が得られた。この間8日間のエタノールの平均濃度は4.3%(w/v)であった。また、連続培養を開始した2日目以降、培養液のpHは3.5から4.0の範囲に保たれていた。そして、顕微鏡観察の結果、リアクター内には連続培養開始2日目以降10日目の培養終了まで顕著な共凝集体が保持されていることも確認できた。
従って、これらの結果より、酵母と乳酸菌の凝集体により、連続発酵によるエタノール生産が可能なことが確認できた。
本発明のエタノールを生産する方法は、未殺菌の原料をそのままエタノールの生産に利用できる。従って、大量に存在し、かつ、殺菌処理が困難であるイナワラ、バガスの酸や酵素による糖化物や、野菜くず等の廃棄物を有効に処理することが可能である。また、得られたエタノールは、バイオ燃料等として活用することができる。
(1)NITE P−376
(2)NITE P−1112
(3)NITE AP−1168
[寄託生物材料への言及]
(1)Lactobacillus plantarum ML11−11株
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2007年7月10日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P−376
(2)Lactobacillus plantarum HP9株
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2011年6月30日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P−1112
(3)Lactobacillus plantarum HM23株
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8(郵便番号292−0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付(受領日)
2011年11月29日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号(受領番号)
NITE AP−1168

Claims (9)

  1. pH5以下の条件下で、ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなる凝集物を用いる連続発酵法。
  2. 凝集物がバイオフィルムまたは凝集体である請求項1に記載の発酵法。
  3. ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌が、酵母との共凝集性を示し、酵母と共培養した場合に乳酸菌と酵母からなる凝集物を形成する乳酸菌である請求項1または2に記載の連続発酵法。
  4. ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌が、受託番号 NITE P−376(ML11−11)または受託番号 NITE P−1112(HP9)として寄託された乳酸菌である請求項1〜3のいずれかに記載の連続発酵法。
  5. 酵母が、サッカロマイセス・セレビシエに属する酵母である請求項1〜4のいずれかに記載の連続発酵法。
  6. ラクトバチルス・プランタラムに属する乳酸菌と酵母からなるバイオフィルムの形成にあたり、担体を用いる請求項2〜5のいずれかに記載の連続発酵法。
  7. 担体がガラス、セルロースまたはイナワラから選ばれる少なくとも一種以上を含む担体である請求項6に記載の連続発酵法。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の連続発酵法によってエタノールを生産する方法。
  9. 受託番号 NITE P−1112(HP9)として寄託された乳酸菌。
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