JP2013144385A - インクジェット記録方法、記録装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】光沢性及びインクジェットヘッドの目詰まり安定性に優れたインクジェット記録方法を提供する。
【解決手段】色材を含有する第1インク組成物と、樹脂を含有し且つ色材を実質的に含有しない第2インク組成物と、を少なくとも用いるインクジェット記録方法であって、インクジェットヘッド31を用いて、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体Pに対して前記第1インク組成物を記録し、画像を形成する第1記録工程と、インクジェットヘッドを用いて、乾燥率が60%以上の前記画像に対して、前記第2インク組成物を記録する第2記録工程と、を含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、インクジェット記録方法及び記録装置に関する。
従来、被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
近年、画像の品質を高めるため、有色インクの画像を印刷した後に、無色透明のクリアインクを上塗り印刷する手法が注目されている。
例えば、特許文献1は、色インクと樹脂を含有するクリアインクとを備えたインクセットを用意し、普通紙又は上質紙上にインクジェット法で印刷する方法を開示している。また、当該印刷は、まず記録媒体に対して色インクのパッチや画像を印刷し、その後、色インクの印刷領域に対してクリアインクをベタ印刷し、最後にヒーターで加熱乾燥する旨も開示している(文献1の明細書段落0067)。
特開2010−221634号公報
しかしながら、特許文献1が開示する印刷方法のように、クリアインクの上塗りが、色インク(有色インク)の塗布と(ほぼ)同時に行われる場合、光沢性が劣るという問題が生じる。また、特許文献1が開示するインクは、インクジェットヘッド近傍で固着してしまう場合があり、インクジェットヘッドの目詰まり安定性も劣るという問題が生じる。
そこで、本発明は、光沢性及びインクジェットヘッドの目詰まり安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することを目的の一つとする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、色材を含む有色の第1インク組成物と、樹脂を含み、且つ色材を実質的に含まない無色透明の第2インク組成物と、を少なくとも用い、当該第1インク組成物の画像を形成した後に、当該画像の乾燥率を調整した上で当該第2インク組成物を記録するインクジェット記録方法により、上記の問題点を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
色材を含有する第1インク組成物と、樹脂を含有し且つ色材を実質的に含有しない第2インク組成物と、を少なくとも用いるインクジェット記録方法であって、インクジェットヘッドを用いて、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対して前記第1インク組成物を記録し、画像を形成する第1記録工程と、インクジェットヘッドを用いて、乾燥率が60%以上の前記画像に対して前記第2インク組成物を記録する第2記録工程と、を含む、インクジェット記録方法。
[2]
前記第1記録工程と同時に、又は該工程の後であって前記第2記録工程より前に行われ、第1温度で、又は、前記第1温度及び該第1温度以上である第2温度で、前記画像を乾燥して、前記乾燥率を60%以上とする第1乾燥工程と、前記第2記録工程と同時に、又は該工程の後に行われ、前記第1温度以上である第3温度で前記画像を乾燥させる第2乾燥工程と、をさらに含み、前記樹脂の熱変形温度は、前記第1温度以上、前記第3温度以下である、[1]に記載のインクジェット記録方法。
[3]
前記樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びスチレン−アクリル樹脂から選択される一種以上である、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録方法。
[4]
前記第1記録工程は、インクジェットヘッドを用いて行われ、かつ、前記被記録媒体の正方向への搬送動作を行うのと同時に実行され、前記第2記録工程は、前記被記録媒体の逆方向への搬送動作を行うのと同時に、又は該逆方向への搬送動作を終えた後に実行される、[1]〜[3]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[5]
前記第2記録工程は、前記画像に対して前記第2インク組成物を記録し、前記被記録媒体上で前記第2インク組成物が乾燥した後に、前記第2インク組成物を再び記録するものである、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[6]
前記第1記録工程に用いられるインクジェットヘッドは、走査機構によって主走査方向に走査され、かつ、複数のノズル孔からなるノズル列を備え、前記ノズル列は、前記第1インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数並べてなる第1ノズル列と、前記画像の下地層を記録する下地インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記副走査方向に複数並べてなる第2ノズル列と、を含み、前記第1記録工程は、前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を、前記副走査方向に向かって、所定数の前記ノズル孔を含む群毎に分割して用い、前記副走査方向の上流側にある第1群を用いて、前記下地インク組成物を記録し、かつ、前記第1群よりも前記副走査方向の下流側にある第2群を用いて、前記第1インク組成物を記録するものである、[4]又は[5]に記載のインクジェット記録方法。
[7]
前記第2インク組成物は、非プロトン性極性溶媒を実質的に含有しない、[1]〜[6]のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載のインクジェット記録方法を利用する、記録装置。
本実施形態におけるプリンターの構成を示す概略図である。 本実施形態におけるプリンターのヘッド周辺の概略断面図である。 ノズル列の分割による記録手段を表す概略図である。 第1乾燥工程における乾燥率を算出するためのグラフである。 実施例2〜4及び実験例1の光沢度(20度)の結果を表すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
なお、本明細書において、第1インク組成物及び第2インク組成物を、纏めて「インク組成物」と称することもある。
本明細書において、「第1温度」、「第2温度」、及び「第3温度」とは、インク組成物と接触する被記録媒体の表面の温度を意味する。これらの温度は、市販のサーモグラフを用いて測定可能である。当該サーモグラフの具体例として、赤外線サーモグラフィ装置(H2640/H2630〔商品名〕、NEC Avio赤外線テクノロジー社(NEC Avio Infrared Technologies Co., Ltd.)製)が挙げられる。
[インクジェット記録装置]
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置(以下、単に「記録装置」とも言う。)は、第1インク組成物を吐出するためのインクジェットヘッド及び第2インク組成物を吐出するためのインクジェットヘッド(以下、単に「ヘッド」とも言う。)を、被記録媒体に対して相対的に移動させつつ、当該ヘッドからインクを吐出させて記録を行うものであれば、特に制限されない。
なお、第1インク組成物を吐出するためのヘッドと第2インク組成物を吐出するためのヘッドとは、それぞれ別のヘッドであってもよく、互いに同一のヘッドであってもよい。
当該インクジェット記録装置として、オフキャリッジタイプのシリアルプリンター(以下、単に「プリンター」とも言う。)を例示し、図を参照しつつ説明する。ここで、シリアルプリンターは、ヘッドが被記録媒体の搬送方向と交差する方向を往復移動しながら記録が行われるものである。このうち、オフキャリッジタイプのシリアルプリンターは、インクカートリッジとキャリッジ上のヘッドとをチューブで繋いだものである。
なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、プリンター1の構成を示すブロック図である。図2は、プリンター1のヘッド周辺の概略断面図である。ここで、図2中、紙面の左から右への方向(Y)が、被記録媒体が搬送される方向(経路)に対応する。
本実施形態のプリンター1は、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体(以下、単に「被記録媒体」とも言う。)Pに向けて、第1インク組成物及び第2インク組成物をこの順に吐出することで、当該被記録媒体Pに画像を形成する装置である。ここで、本実施形態のプリンター1は、様々な色のインクを用いて画像を形成することができ、第1インク組成物を用いた印刷としては、例えば、CMYKの4色のインクを用いて画像を形成したり、白色のインクを用いて被記録媒体Pに優れた隠蔽性を付与する下地を形成したりすることが挙げられる。また、第2インク組成物を用いた印刷としては、例えば、クリアインクを上記第1インク組成物に上塗りすることが挙げられ、これにより光沢感を増大することができる。
プリンター1は、搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、ヒーターユニット40、検出器群50、及びコントローラー60を有する。外部装置であるコンピューター110から印刷データを受信したプリンター1は、コントローラー60によって各ユニット(搬送ユニット10、キャリッジユニット20、ヘッドユニット30、ヒーターユニット40)を制御する。コントローラー60は、コンピューター110から受信した印刷データに基づいて、各ユニットを制御し、被記録媒体Pに画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50によって監視されており、検出器群50は、検出結果をコントローラー60に出力する。コントローラー60は、検出器群50から出力された検出結果に基づいて、各ユニットを制御する。
搬送ユニット10は、紙などの被記録媒体Pを所定の方向(以下、「搬送方向」又は「副走査方向」と言う。)に搬送させるためのものである。この搬送ユニット10は、給紙ローラー11と、搬送モーター(不図示)と、搬送ローラー13と、プラテン14と、排紙ローラー15と、を有する。給紙ローラー11は、紙挿入口に挿入された被記録媒体Pをプリンター1内に給紙するためのローラーである。搬送ローラー13は、給紙ローラー11によって給紙された被記録媒体Pを印刷可能な領域まで搬送するローラーであり、搬送モーターによって駆動される。プラテン14は、印刷中の被記録媒体Pを支持し、その上に紙送りモーター(不図示)の駆動により被記録媒体Pが給送されるものである。排紙ローラー15は、被記録媒体Pをプリンターの外部に排出するローラーであり、印刷可能な領域に対して搬送方向下流側に設けられている。
キャリッジユニット20は、ヘッド31を、印刷領域に静止させた被記録媒体Pに対して、インクを吐出しながら上記搬送方向(副走査方向)と交差する方向(以下、「移動方向」又は「主走査方向」と言う。)に移動、即ち走査させる移動機構である。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター(不図示)と、を有する。キャリッジ21は、その内部にヘッド31を備え、タイミングベルト(不図示)を介して、キャリッジモーター(不図示)に連結されたものである。インクカートリッジ(不図示)は、キャリッジ21と別の場所に載置されたものであり、プリンター1本体の外側(キャリッジ21の移動範囲の外側)に設けられたカートリッジ収納部(不図示)に収納されている。インクカートリッジとキャリッジ21との間は、インク供給チューブ(不図示)で接続される。この場合、インクカートリッジ及びキャリッジ21は、共に動かない。そして、キャリッジ21は、後述する搬送方向と交差したガイド軸24に支持された状態で、キャリッジモーターによりガイド軸24に沿って往復移動する。ガイド軸24は、キャリッジ21がガイド軸24の軸線方向に往復移動可能に支持されたものである。
ヘッドユニット30は、第1インク組成物及び第2インク組成物を、被記録媒体Pに対して吐出するためのものである。ヘッドユニット30は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。ヘッド31はキャリッジ21に設けられているため、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そして、ヘッド31が移動方向に移動している間、第1インク組成物及び第2インク組成物を被記録媒体Pに対して吐出するものである。これにより、移動方向に沿ったドット列が被記録媒体Pに形成される。このように、ヘッド31が、第1インク組成物及び第2インク組成物を被記録媒体Pに対して吐出するものであることにより、記録装置を簡略化することができる。
なお、ヘッド31の移動において、図2の一端側から他端側に向かって移動する間にインク組成物の吐出が行われる。また、他端側から一端側に移動する間にはインク組成物の吐出は行ってもよいし行わなくてもよい。
ヒーターユニット40は、任意のユニットであり、被記録媒体Pに付着(着弾)したインク組成物に対して加熱することにより、当該インク組成物を乾燥するものである。被記録媒体P上に形成されたドットは、ヒーターユニット40で加熱されて定着(硬化)することにより、画像を完成する。ヒーターユニット40は、ヘッドユニット30に隣接する搬送方向下流側にある乾燥ヒーター42と、当該乾燥ヒーター42の搬送方向下流側にある硬化ヒーター43と、必要に応じてヘッド31近傍に配置される送風機44と、を備えている。乾燥ヒーター42は、第1温度で画像を適度に乾燥するものであって、画像の乾燥率を60%以上とするためのものである。送風機44は、任意の機材であり、乾燥ヒーター42による画像の乾燥を促進するものである。硬化ヒーター43は、上記第1温度以上である第2温度で画像を乾燥して画像の乾燥率を60%以上とするためのものであるか、あるいは、上記画像に対してさらに第2インク組成物が上塗りされた画像(以下、「上塗り画像」とも言う。)を少なくとも上記第1温度以上である第3温度で十分に乾燥して、当該上塗り画像を被記録媒体P上に定着させるためのものである。
検出器群50には、リニア式エンコーダー(不図示)、ロータリー式エンコーダー(不図示)、紙検出センサー53、及び光学センサー54等が含まれる。リニア式エンコーダーは、キャリッジ21の移動方向の位置を検出するものである。ロータリー式エンコーダーは、搬送ローラー13の回転量を検出するものである。紙検出センサー53は、給紙中の紙(被記録媒体P)の先端の位置を検出するものである。光学センサー54は、キャリッジ21に取付けられている発光部と受光部により、被記録媒体Pの有無を検出するものである。そして、光学センサー54は、キャリッジ21によって移動しながら被記録媒体Pの端部の位置を検出し、被記録媒体Pの幅を検出することができる。また、光学センサー54は、状況に応じて、被記録媒体Pの先端(搬送方向下流側の端部であって上端とも言う。)や後端(搬送方向上流側の端部であって下端とも言う。)も検出できる。
コントローラー60は、プリンター1の制御を行うための制御ユニット(制御部)である。コントローラー60は、インターフェイス部61と、CPU62と、メモリー63と、ユニット制御回路64と、を有する。インターフェイス部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子を有する。CPU62は、メモリー63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回路64を介して各ユニットを制御する。
印刷を行うとき、コントローラー60は、後述するように移動方向に移動中のヘッド31からインク組成物を吐出させるドット形成動作と、搬送方向に被記録媒体Pを搬送する搬送動作と、を交互に繰り返し、複数のドットから構成される画像(上塗り画像を含む。)を被記録媒体Pに印刷する。
このように、上記のインク組成物を用いたインクジェット記録装置は、被記録媒体Pのヘッド31と対向する領域に画像(上塗り画像を含む。)を形成するものである。
〔インクジェット記録装置の変形例〕
上述の記録装置は、オフキャリッジタイプのシリアルプリンターである。図示していないが、大容量インクタンクがプリンター1の外側に増設される場合、当該大容量インクタンクとインクカートリッジとの間がインク補給チューブで接続される。これにより、オンキャリッジタイプのプリンターと同様、オフキャリッジタイプのプリンター1においても、インク組成物の貯蔵量を大幅に増大させることができる。
また、本実施形態の記録装置は、インクカートリッジ(インクタンク)をヘッド31と共にキャリッジ21に搭載する、オンキャリッジタイプのシリアルプリンターであってもよい。オンキャリッジタイプの場合、キャリッジ21はインク組成物を収容するインクカートリッジ(不図示)を着脱可能に保持している。
また、本実施形態の記録装置は、ヘッドがほぼ移動せずに記録が行われるラインプリンターであってもよい。
[インクジェット記録方法]
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法(以下、単に「記録方法」とも言う。)は、上記実施形態のインクジェット記録装置を用いて記録を行うことができる。
当該インクジェット記録方法は、下記の第1記録工程及び第2記録工程を少なくとも含む。また、当該インクジェット記録方法は、第1記録工程と同時に、又は当該工程の後であって第2記録工程より前に行われる第1乾燥工程と、第2記録工程と同時に、又は当該工程の後に行われる第2乾燥工程と、をさらに含むことが好ましい。
以下では、被記録媒体Pの搬送経路と逆方向に搬送を行う記録方法、即ちバックフィードを取り入れた記録方法について説明し、かつ、図2を参照しつつ上記の各工程を詳細に説明する。当該図は、バックフィードを取り入れたインクジェット記録方法を示す概略断面図である。
〔第1記録工程〕
第1記録工程においては、ヘッドを用いて、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対して第1インク組成物を記録し、画像を形成する。換言すると、被記録媒体に向けて、ヘッドから第1インク組成物を吐出し付着(着弾)させることにより、第1インク組成物からなる画像が形成される。当該第1記録工程では様々な色のインクを用いて画像を形成することができ、例えば、CMYKの4色インクを用いて画像を形成したり、白色インクを用いて被記録媒体に優れた隠蔽性をもたらす下地を形成したりすることができる。
なお、第1記録工程は、ヘッドから吐出された第1インク組成物が成膜した(膜化した)時点で完了したものとする。
特にバックフィードを取り入れた記録方法の場合、図2に示すように、第1記録工程は、ヘッド31を用いて行われ、かつ、被記録媒体の副走査方向のうち正方向、即ち搬送方向の上流側から下流側の方向(Y1方向)への搬送動作を行うのと同時に実行される。また、第1記録工程では、主走査方向に、ヘッド31内のノズルから第1インク組成物を被記録媒体に向けて吐出し着弾させて画像を形成する。
ここで、シリアルプリンターを用いた記録方法においては、パス数(主走査回数)が2回以上のマルチパス印刷が可能である。このマルチパス印刷により2回以上に分けてインクを塗り重ねて画像を形成することで、画質の一層優れた画像とすることができる。
〔第1乾燥工程〕
本実施形態のインクジェット記録方法は、第1乾燥工程をさらに含むことが好ましい。当該第1乾燥工程においては、第1記録工程と同時に、又は当該工程の後であって第2記録工程より前に行われ、第1温度で、又は当該第1温度及びこの第1温度以上である第2温度で、上記画像を乾燥して、乾燥率を60%以上とする。第2記録工程の前に画像の乾燥率を60%以上とすることにより、第2インク組成物から形成された層が高い光沢度を有する。また、第1インク組成物に由来する画像と第2インク組成物との間で滲みが生じることを防止できる。上記乾燥率は、当該光沢度を高くすることができるとともに滲みの発生を一層効果的に防ぐため、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。
なお、本明細書における「乾燥率」は、乾燥後のインク組成物の質量を吐出時のインク組成物の質量で除することによって算出される。また、上記の第1乾燥工程における乾燥率は、以下のようにして測定、算出される。図4は、第1乾燥工程における乾燥率を算出するために経時的変化を用いたグラフである。
被記録媒体に白色のインクを付与して画像形成したときの被記録媒体の質量が、乾燥率0%に相当する。そして、所定の乾燥条件下で画像を乾燥させ、被記録媒体の質量変化が実質的に止まった時点が、乾燥率100%に相当する。これら2つのデータ及び乾燥時間を変更させて得たデータ(中間乾燥率)から、同一の乾燥条件下において、経時的な被記録媒体の質量変化及び経時的な乾燥率の変化を表すことができる。このようにして得られた結果、白色の画像形成から有色(白色を除く。)の画像形成までの時間や、第2記録工程時の被記録媒体の質量などから、乾燥率を算出することができる。なお、乾燥温度が随時変化する場合には、質量を基準に乾燥率を算出するのが好ましい。
上述の特許文献1が開示する印刷方法は、被記録媒体への有色インクの塗布とクリアインクの上塗りとが、(ほぼ)同時に行われるため、インクの打ち込み量を調整する必要がある。だが、打ち込み量を増やすと滲みが発生するという問題が生じる。これに対し、本実施形態では、第1記録工程により得られた画像の乾燥率が60%以上になった後に第2記録工程が行われるため、第1記録工程及び第2記録工程が(ほぼ)同時に行われることはない。したがって、インクが滲むという問題はなく、インクの打ち込み量は特に制限されない。
画像の乾燥率を60%以上とするための乾燥(以下、「乾燥率60%以上の乾燥」とも言う。)は、少なくとも乾燥ヒーター42を用いて行われる。乾燥ヒーター42は、第1温度で乾燥するものである。図2に示すように、乾燥ヒーター42はヘッドからの第1インク組成物の吐出位置と近接しているため、第1インク組成物の吐出と乾燥率60%以上の乾燥とは、(ほぼ)同時に行われる。換言すれば、第1記録工程及び第1乾燥工程が行われている間は、被記録媒体が副走査方向に(ほぼ)動かない。乾燥ヒーター42としては、画像の乾燥率が60%以上となる限り特に限定されないが、例えば、赤外線ヒーター、温風ヒーター、及び熱風ヒーターが挙げられる。これらの中でも、被記録媒体のみを加熱可能なことから加熱が極めて速い(昇温速度が大きい)ため、赤外線ヒーターが好ましい。
なお、第1乾燥工程は、画像の乾燥率を60%以上とするため、第1温度で乾燥し、続いて第2温度で乾燥を行う場合、それぞれ乾燥ヒーター42及び硬化ヒーター43を用いて行うことができる。このうち硬化ヒーター43は、上記第1温度及び当該温度以上である第2温度で乾燥するものである。
上記乾燥率60%以上の乾燥の際の温度、即ち第1温度及び第2温度は、画像の乾燥率を60%以上とすることができる温度であり、かつ、後述するように、少なくとも第2インク組成物に含まれる樹脂の熱変形温度以下であることが好ましい。少なくとも第1温度が画像の乾燥率を60%以上とすることができる温度であると、滲みを防止することができる。また、第1温度が上記樹脂の熱変形温度以下であると、ヘッドを熱で損傷することを防止できる。第1温度の具体的な温度は、上記の条件を全て満たすため、40〜60℃が好ましい。
一方、第2温度は、後述の第3温度と同様の温度範囲であることが好ましいが、当該第3温度とは互いに独立して温度設定される。したがって、第2温度は、第3温度と同じ温度でも異なる温度でもよい。また、特に第2温度が第3温度と異なる温度である場合、硬化ヒーター43は互いに同じものであっても異なるものであってもよい。
また、第1乾燥工程において少なくとも乾燥ヒーター42を用いて画像の乾燥率が60%以上となるよう乾燥する際、当該乾燥を促進するため、送風機44を使用してもよい。送風機44は、常温の風や冷風のいずれを供給するものであってもよい。また、送風機44はヘッド31の近傍に配置されるとよい。
〔バックフィード工程〕
バックフィード工程においては、被記録媒体の副走査方向のうち逆方向、即ち搬送方向の下流側から上流側の方向(Y2方向)に、被記録媒体の搬送が行われる。より具体的に言えば、上記の第1記録工程及び第1乾燥工程を経て得られた被記録媒体を、Y1方向に搬送、好ましくは硬化ヒーター43の手前までY1方向に搬送し、その後Y2方向に当該被記録媒体を搬送する。
なお、所望の画像を形成するため、バックフィード工程の間にヘッド31から被記録媒体に向けてインクを吐出せず、バックフィード工程の終了後、搬送方向下流側に向けて搬送している際にインクを吐出することが好ましい。
〔第2記録工程〕
第2記録工程においては、インクジェットヘッドを用いて、乾燥率が60%以上の上記画像に対して、第2インク組成物を記録する。換言すると、第1記録工程で形成された有色インクに由来する画像に向けて、ヘッドから第2インク組成物を吐出し付着(着弾)させることにより、第2インク組成物が当該画像に上塗りされた画像が形成される。このように、本実施形態における画像は、段階的に形成されて完成するものである。
なお、第2記録工程は、ヘッドから吐出された第2インク組成物が成膜した(膜化した)時点で完了したものとする。
特にバックフィードを取り入れた記録方法の場合、図2に示すように、当該第2記録工程は、Y2方向への搬送動作を行うのと同時に、又は当該逆方向への搬送動作を終えた後に実行される。また、第2記録工程では、主走査方向に、ヘッド31内のノズルから第2インク組成物を上記第1記録工程で得られた画像に向けて吐出し着弾させて上塗り画像を形成する。さらに、第2記録工程は、逆方向(Y2方向)への搬送動作を終えた後、正方向(Y1方向)に搬送しながら第2インク組成物を用いた記録を行うものであってもよい。
図2に示すように、第2記録工程におけるヘッド31が、第1記録工程におけるヘッド31と同一であることにより、記録装置をより小型化することができる。なお、第1記録工程におけるヘッド31と第2記録工程におけるヘッド31とが、異なるヘッドであってもよい。
第2記録工程における記録操作は1回行うことにより、通常、記録物(画像)の光沢性及び耐擦性が優れたものとなる。その上で、記録物(画像)の光沢性及び耐擦性を一層優れたものとする場合、第2記録工程における記録操作は2回以上行うことが好ましい。換言すると、第2記録工程は、第1記録工程で得られた画像に対して第2インク組成物を記録し(上塗りし)、被記録媒体上で第2インク組成物の層(以下、「クリアインク層」という。)が乾燥した後に、第2インク組成物を再び記録する(上塗りする)ものであることが好ましい。この場合、第2インク組成物の2度塗りと言うことができる。
なお、上記の上塗りが行われる場合、各クリアインク層を構成する第2インク組成物の組成(配合成分の種類及び含有量)は、互いに同一であってもよく異なってもよい。
1回目の第2インク組成物の記録後の乾燥は、70℃以上で行われることが好ましく、装置においては第3温度に設定された硬化ヒーター43で行われるのが好ましい。
また、上記のように第2記録工程における記録操作が2回以上行われる場合、2回目以降の任意の回で形成したクリアインク層が十分乾燥した後に、その次の回を実行してクリアインク層を形成することが好ましい。これにより、記録物(画像)の光沢性及び耐擦性をより一層優れたものとすることができる。
なお、2回目以降の任意の回で形成したクリアインク層を十分乾燥させる方法として、比較的高温下で短時間加熱して乾燥させたり、比較的低温下で長時間加熱して乾燥させたりすることが挙げられる。
〔第2乾燥工程〕
本実施形態のインクジェット記録方法は、第2乾燥工程をさらに含むことが好ましい。当該第2乾燥工程においては、第2記録工程と同時に、又は当該工程の後に行われ、第1温度以上である第3温度で上記の上塗り画像を乾燥させる。第2乾燥工程を行うことにより、第1乾燥工程では行うことが困難な高温加熱を実現することができ、結果として被記録媒体に対する上塗り画像の定着性が一層優れたものとなる。
第3温度で上記の上塗り画像を乾燥する際の乾燥率は、光沢度を一層高めることができるため、70%以上が好ましい。
当該乾燥は、硬化ヒーター43によって行われる。硬化ヒーター43としては、上記乾燥ヒーター42と同様のものが挙げられ、赤外線ヒーターが好ましい。
上記乾燥の際の温度、即ち第3温度は、第1温度以上であり、かつ、後述するように、少なくとも第2インク組成物に含まれる樹脂のMFT以上であることが好ましい。この場合、上記の樹脂が融解して上塗り画像のザラツキ感や凹凸感が(ほぼ)無くなるため、光沢性が一層優れたものとなる。第1温度の具体的な温度は、上記の条件を全て満たすため、70℃以上120℃以下が好ましく、80℃以上110℃以下がより好ましい。
なお、上記のMFTについては後述する。
このように、被記録媒体の搬送経路と逆方向に(周期的に)搬送を行うことにより、ヘッドや乾燥機構の数を最小にすることができるため、記録装置の小型化を実現することができる。
〔インクジェット記録方法の変形例〕
(1.バックフィードを行わない記録)
本実施形態の記録方法の一変形例として、上述のような、被記録媒体の搬送経路と逆方向に搬送を行うバックフィード記録でなく、代わりに被記録媒体を搬送させず停止して放置することによって、乾燥ヒーター42による乾燥又は自然乾燥を行うことが挙げられる。以下では、この記録方法を説明する。
(2.ノズル列の分割による記録)
本実施形態の記録方法の他の変形例として、ノズル列を所定数のノズル孔を含む群毎に分割して記録を行ってもよい。この分割による記録とは、上記第1記録工程に用いられるインクジェットヘッドは、走査機構によって主走査方向に走査され、かつ、複数のノズル孔からなるノズル列を備える。そして、上記ノズル列は、上記第1インク組成物を吐出するための上記ノズル孔を上記主走査方向と交差する副走査方向に複数並べてなる第1ノズル列と、上記画像の下地層を記録する下地インク組成物を吐出するための上記ノズル孔を上記副走査方向に複数並べてなる第2ノズル列と、を含む。このとき、上記第1記録工程は、上記第1ノズル列及び上記第2ノズル列を、上記副走査方向に向かって、所定数の上記ノズル孔を含む群毎に分割して用い、上記副走査方向の上流側にある第1群を用いて、上記下地インク組成物を記録し、かつ、上記第1群よりも上記副走査方向の下流側にある第2群を用いて、上記第1インク組成物を記録するものである。
以下では、図3を参照しつつ、この記録方法を説明する。図3は、ノズル列の分割による記録手段を表す概略図である。
図3に示すように、ノズル列16A及び16Bは、副走査方向の上流側T1にある第1群と、当該第1群よりも副走査方向の下流側T2にある第2群と、に分割して使用する。
まず、キャリッジ4を主走査方向(S1及びS2)に移動させながら、第1ノズル列16Aの第1群から下地インク組成物の液滴を吐出させて、被記録媒体P上に下地インク組成物の液滴を付着させる。次に、副走査方向の下流側T2方向に、副走査方向の第1群の長さ分だけ被記録媒体Pを移動させる。そして、キャリッジ4を主走査方向に移動させながら、第2ノズル列16Bの第2群から上述の第1インク組成物の液滴を吐出させて、被記録媒体Pに形成した下層上に第1インク組成物の液滴を付着させることによって、画像が得られる。また、ノズル列を3分割以上にして用いる場合にも、同様に行うことができる。

なお、下地インク組成物は特に制限されないが、二酸化チタン等を含む白色系インク組成物、銀やアルミニウム等を含む光輝性インク組成物が例として挙げられる。
本実施形態の記録方法は、ノズル列を分割して使用することによって、記録の高速化を図ることができる。また、ノズル列を分割して使用すると、被記録媒体のバックフィードを行わずに済むか、あるいは被記録媒体のバックフィードの回数を減らすことができる。これにより、被記録媒体のバックフィードによって生じ得る印刷位置のずれを低減できる。
下地インク組成物を用いる場合の好ましい実施形態としては、下地インク組成物及び第1インク組成物をノズル列の分割によって付与して画像を形成し、記録媒体を搬送方向下流側に搬送させて下流側にある加熱機構によって画像を乾燥させる。そして、その後にバックフィードを行い、第2インク組成物を付与する態様が好ましい。
(3.ラインプリンターによる記録)
これまで、シリアルプリンターによる記録について、記録方法及び変形例を説明してきた。一方、ラインプリンターによる記録の場合、ラインヘッドはプリンターの構造上、インク組成物の種類数だけ必要となる。
したがって、例えば、上述したように、第1記録工程で得られた画像に対して第2インク組成物を2度記録する(2度塗りする)場合、第2インク組成物の吐出用のラインヘッドは2つ必要となる。
[インク組成物]
上述のインク組成物(第1インク組成物及び第2インク組成物を含む。以下同じ。)は、本実施形態のインクジェット記録方法に用いられるものである。第1インク組成物は、色材を含有する。第2インク組成物は、樹脂を含有し且つ色材を実質的に含有しない。
ここで、本明細書における「実質的に含有しない」とは、添加する意義を十分に発揮する量以上含有させないことを意味する。定量的に言えば、「実質的に含有しない」とは、含有量がインク組成物の総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以下であることを意味し、好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.1質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以下、さらにより好ましくは0.01質量%以下であることを意味する。
以下、当該インク組成物に含まれるか又は含まれ得る添加剤(成分)について、説明する。
〔色材〕
第1インク組成物は色材を含有する。色材は、顔料及び染料のうち少なくとも一方を用いることができる。
(顔料)
色材として顔料を用いることにより、インク組成物の耐光性を向上させることができる。顔料は、無機顔料及び有機顔料のいずれも使用することができる。
無機顔料としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
更に詳しく言えば、ブラックインクに使用されるカーボンブラックとしては、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
ホワイトインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントホワイト 6、18、21が挙げられる。
イエローインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントイエロー 1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、16、17、24、34、35、37、53、55、65、73、74、75、81、83、93、94、95、97、98、99、108、109、110、113、114、117、120、124、128、129、133、138、139、147、151、153、154、167、172、180が挙げられる。
マゼンタインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントレッド 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、40、41、42、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、88、112、114、122、123、144、146、149、150、166、168、170、171、175、176、177、178、179、184、185、187、202、209、219、224、245、又はC.I.ピグメントヴァイオレット 19、23、32、33、36、38、43、50が挙げられる。
シアンインクに使用される顔料としては、C.I.ピグメントブルー 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:34、15:4、16、18、22、25、60、65、66、C.I.バットブルー 4、60が挙げられる。
また、マゼンタ、シアン、及びイエロー以外の顔料としては、例えば、C.I.ピグメント グリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
上記顔料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の顔料を使用する場合、その平均粒子径は300nm以下が好ましく、50〜200nmがより好ましい。平均粒子径が上記の範囲内にあると、インク組成物における吐出安定性や分散安定性などの信頼性に一層優れるとともに、優れた画質の画像を形成することができる。ここで、本明細書における平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
(染料)
色材として染料を用いることができる。染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能である。前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
上記染料は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
色材の含有量は、優れた隠蔽性及び色再現性が得られるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対して、1〜20質量%が好ましい。
〔分散剤〕
インク組成物が顔料を含む場合、顔料分散性をより良好なものとするため、分散剤をさらに含んでもよい。分散剤として、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散液を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。その具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、及びエポキシ樹脂のうち一種以上を主成分とするものが挙げられる。高分子分散剤の市販品として、味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズ、アベシア(Avecia)社やノベオン(Noveon)社から入手可能なソルスパーズシリーズ(Solsperse 36000等)、BYKChemie社製のディスパービックシリーズ、楠本化成社製のディスパロンシリーズが挙げられる。
〔樹脂〕
本実施形態における第2インク組成物は、樹脂(樹脂粒子)を含有する。第2インク組成物が樹脂を含有することにより、主に上塗り画像の耐擦性を優れたものとすることができる。
なお、本実施形態における第1インク組成物は樹脂を含有してもよい。だが、第1インク組成物が樹脂を含有しない場合、第1インク組成物の色材濃度を相対的に高くすることができるため、画像の画質を損ねないようにすることができる。
特に上述の乾燥工程を行う場合、樹脂の熱変形温度は、第1温度以上、第3温度以下であることが好ましい。当該熱変形温度が第1温度以上であると、ヘッドの目詰まり安定性が一層優れたものとなる。一方、当該熱変形温度が第3温度以下であると、樹脂が融解して上塗り画像の表面が平滑に近づくため、画像の光沢性が一層優れたものとなる。
ここで、本明細書における「熱変形温度」は、ガラス転移温度(Tg)又は最低造膜温度(Minimum Film forming Temperature;MFT)で表された温度値とする。このうち、MFTの方がTgよりも樹脂の再分散性の優劣を把握しやすいため、当該熱変形温度はMFTで表された温度値であることが好ましい。樹脂の再分散性に優れたインク組成物であると、インクが固着しないためヘッドの目詰まり安定性が一層優れたものとなる。
なお、本明細書における再分散性の評価方法は、実施例の項で挙げた方法を採用する。また、本明細書におけるTgは示差走査熱量測定法により測定された値で記載している。本明細書におけるMFTは、ISO 2115:1996(標題:プラスチック−ポリマー分散−白色点温度及びフィルム形成最低温度の測定)により測定された値で記載している。
樹脂粒子の体積基準の平均粒子径は、50〜200nmが好ましい。平均粒子径が上記範囲内である場合、光沢性及びヘッドの目詰まり安定性を一層優れたものとすることができ、長期間に亘って所望の画質の上塗り画像を形成することができる。
樹脂としては、以下に限定されないが、例えば、脂肪族ポリエステル樹脂及び芳香族ポリエステル樹脂などのポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、及びポリビニルアルコール樹脂などのビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、並びにエチルセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、及びニトロセルロース樹脂などのセルロース樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル樹脂、及びポリ(メタ)アクリル酸エチル樹脂などの(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル樹脂、スチレン−(メタ)アクリル樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン系樹脂、石油樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、及びNBR・SBR・MBR等の各種合成ゴム、並びにそれらの変性体が挙げられる。樹脂がこれらの成分であると、上塗り画像の光沢性及び耐擦性を優れたものとすることができる。また、ヘッドの目詰まり安定性を優れたものとすることができ、長期間に亘って画質に優れた上塗り画像を形成することができる。
これらの中でも、耐久性に優れるため、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びスチレン−アクリル樹脂から選択される一種以上が好ましい。
また、樹脂の中でも、エマルジョンを形成可能なものが好ましい。樹脂としてエマルジョンを形成することができるものを選択すると、乾燥による皮膜化により、第1インク組成物で形成された画像上に、第2インク組成物が一層効果的に定着することができる。
これらの中でも水系ウレタン樹脂エマルジョンが好ましい。この市販品としては、例えば、モビニール 972(固形分濃度50%)、6530(固形分濃度44%)、742A(固形分濃度46%)(以上、日本合成化学社(Nippon Synthetic Chemical Industry Co., Ltd.)製商品名)、ビニブラン2500E(日信化学社(Nissin Chemical Industry CO.,Ltd.)製商品名、固形分濃度35%)、スーパーフレックス 110、130、170、210、300、420、420NS、460、470、500、610、620、650、700、740、860、870、E−2000、E−2500、E−4000、E−4800、R−5000(以上、第一工業製薬社(Dai-ichi Kogyo Seiyaku Co., Ltd.)製商品名)、NeoRez R−9660、R−972、R−9637、R−967、R−940(以上、楠本化成(KUSUMOTO CHEMICALS)社製商品名)、アデカボンタイターHUX−380、401、290K、394、680(以上、ADEKA社製商品名)等が挙げられる。
樹脂は、アニオン性、ノニオン性、又はカチオン性のいずれであってもよい。これらの中でも、ヘッドに適した材質という観点から、ノニオン性又はアニオン性が好ましい。
樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂の含有量は、第2インク組成物の総質量(100質量%)に対し、1〜30質量%であることが好ましく、5〜10質量%であることがより好ましい。含有量が上記範囲内である場合、形成される上塗り画像の光沢性及び耐擦性を一層優れたものとすることができる。
〔界面活性剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、界面活性剤を含有してもよい。当該界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤を用いることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤又はポリシロキサン系界面活性剤は、被記録媒体における被記録面への親和性(濡れ性)を良好にすることで、インク組成物の浸透性を良好にすることができる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、オルフィン E1010、STG、Y(以上、日信化学社(Nissin Chemical Industry Co.,Ltd.)製商品名)、サーフィノール 104、82、465、485、TG(以上、Air Products and Chemicals Inc.製商品名)が挙げられる。
ポリシロキサン系界面活性剤としては、市販品を利用することができ、例えば、BYK−347、BYK−348(BYK社製商品名)などが挙げられる。
さらに、インク組成物は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤など、その他の界面活性剤を含有することもできる。
界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、0.1〜1.0質量%程度であるとよい。
〔水溶性有機溶剤(湿潤剤)〕
ヘッドのノズル近傍での目詰まりを防止する目的で、インク組成物は湿潤効果を付与する水溶性有機溶剤(湿潤剤)を含有してもよい。この湿潤剤として、以下に限定されないが、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレンフリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等の多価アルコール類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、尿素類などのいわゆる固体湿潤剤、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ピロリドンカルボン酸、アスパラギン酸、グリシン、グリシン、プロリン、及びベタイン等のいわゆるアミノ酸、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、及びスルホランが挙げられる。
水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
インクの適正な物性値(粘度等)、並びに良好な印刷品質及び信頼性を確保するため、水溶性有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、5〜30質量%程度であればよい。
〔非プロトン性極性溶媒〕
上記第2インク組成物は、非プロトン性極性溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。第2インク組成物が非プロトン性極性溶媒を実質的に含有しないことにより、第2インク組成物中に含まれる樹脂の再分散性が向上し、吐出安定性に優れるからである。
一方で、上記第1インク組成物は、被記録媒体の種類によっては非プロトン性極性溶媒を添加することが好ましい。第1インク組成物が非プロトン性極性溶媒を含むことにより、特に塩化ビニル等の被記録媒体へのインクの密着性が一層優れたものとなるからである。
上記の非プロトン性極性溶剤としては、以下に限定されないが、例えば、β−プロピオラクトン(沸点155℃)、γ−ブチロラクトン(沸点203℃、以下「GBL」とも言う。)、γ−バレロラクトン(沸点207℃)、γ−ヘキサラクトン(沸点219℃)、γ−オクタラクトン(沸点234℃)、γ−ノナラクトン(沸点121℃)、δ−バレロラクトン(沸点230℃)、δ−オクタラクトン(沸点238℃)、δ−ノナラクトン(沸点121℃)、δ−デカラクトン(沸点120℃)、及びδ−ウンデカラクトン(沸点152℃)等のラクトン系溶剤、並びに、N−メチル−2−ピロリドン(沸点202℃、以下「NMP」とも言う。)、2−ピロリドン(沸点245℃、以下「2−P」とも言う。)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(沸点230℃、HMPA)、N−シクロヘキシルピロリドン(沸点154℃、NCP)、テトラメチル尿素(沸点177℃、TCU)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(沸点225℃、以下「DMI」とも言う。)、N,N−ジメチルホルムアミド(沸点153℃、DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(沸点166℃、DMA)、テトラメチレンスルホキシド(沸点235℃)、及びジメチルスルホキシド(沸点189℃、以下「DMSO」とも言う。)が挙げられる。
なお、上記の中でもラクトン系溶剤は、エステル結合による環状構造を持つ化合物であり、5員環構造のγ−ラクトン、6員環構造のδ−ラクトン、及び7員環構造のε−ラクトン等がある。これらの中でも、第2インク組成物が含有する非プロトン性極性溶媒として、GBL、NMP、2−P、DMI、及びDMSOが好ましい。
〔水〕
本実施形態におけるインク組成物は、主溶媒として水を含有することが好ましい。この水として、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水が挙げられる。中でも、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存が可能となるため、紫外線照射又は過酸化水素の添加などにより滅菌処理した水が好ましい。
〔その他の添加剤〕
本実施形態におけるインク組成物は、上記以外の添加剤(その他の添加剤)を含有してもよい。このような添加剤としては、例えば、pH調整剤、防腐剤・防黴剤、グリコールエーテル等の浸透促進剤、酸化防止剤などが挙げられる。
〔被記録媒体〕
本実施形態の記録方法に用いられる被記録媒体は、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体である。
上記の「インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体」とは、インクの受容層(受理層)を備えていないか、あるいは、受容層としての機能を十分発揮できない程度の厚みしか有しない受容層を備えた被記録媒体をいう。より定量的にいうと、この「インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体」とは、被記録面が、ブリストー(Bristow)法において接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である被記録媒体のことをいう。
上記のブリストー法は、「JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法2000年版」の規格No.51「紙及び板紙−液体吸収性試験方法−ブリストー法」に記載されている。このブリストー法とは、要するに、ミリ秒単位の短時間における液体の被記録媒体表面への濡れ、及び、これに続く、液体の被記録媒体中への浸透挙動を測定する方法であり、ヘッドボックスから液体を回転ホイール上の試験片に動的に転移させ、吸収時間及び転移量から吸収係数Ka[単位:mL/m・(msec1/2)]が求められる。
インク非吸収性の被記録媒体として、以下に限定されないが、例えば、インクジェット記録用に表面処理されていない、即ちインク受容層を有していないプラスチックフィルムや紙などの基材上に、プラスチックがコーティングされているもの及びプラスチックフィルムが接着されているものが挙げられる。上記のプラスチックとして、以下に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、及びポリプロピレンが挙げられる。
インク低吸収性の被記録媒体として、以下に限定されないが、例えば、塗工紙、並びに微塗工紙、アート紙、コート紙、マット紙、及びキャスト紙などの印刷用紙(記録用紙)が挙げられる。
上記の塗工紙は、表面に塗料を塗布し、美感や平滑さを高めた紙のことをいう。前記塗料は、タルク、パイロフィライト、クレー(カオリン)、酸化チタン、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウム等の顔料と、デンプン及びポリビニルアルコール等の接着剤と、を混合することにより調製することができる。上記塗料は、紙の製造工程中でコーターを用いて塗布する。コーターには、抄紙機と直結することで抄紙及び塗工を一工程とするオンマシン式と、抄紙を別工程とするオフマシン式とがある。
上記の微塗工紙とは、塗料の塗工量が12g/m以下である記録用紙のことをいう。上記のアート紙とは、上質紙(上級記録用紙)に40g/m前後の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。上記のコート紙とは、20g/m〜40g/m程度の塗料を塗工した記録用紙のことをいう。上記のキャスト紙とは、キャストドラムを用いて、アート紙やコート紙の表面に圧力をかけることで、金属光沢性や平滑性がより優れるように仕上げられた記録用紙のことをいう。
このように、本実施形態によれば、光沢性及びヘッドの目詰まり安定性に優れたインクジェット記録方法を提供することができる。より詳しく言えば、クリアインク塗膜の光沢性を優れたものとすることができ、かつ、滲みが発生する虞がないことからインク打ち込み量を多くすることができる。
以下、本発明の実施形態を実施例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[使用材料]
下記の実施例、比較例、参考例、及び実験例において使用した材料は、以下の通りである。
〔樹脂エマルジョン〕
・モビニール972(日本合成化学社製商品名、固形分濃度50%)
・モビニール6530(日本合成化学社製商品名、固形分濃度44%)
・モビニール742A(日本合成化学社製商品名、固形分濃度46%)
・ビニブラン2500E(日信化学社製商品名、固形分濃度35%)
〔顔料〕
・カーボンブラック(以下、「K」とも言う。)
・ピグメントブルー15:3(以下、「C」とも言う。)
・ピグメントレッド122(以下、「M」とも言う。)
・ピグメントイエロー155(以下、「Y」とも言う。)
〔水溶性有機溶剤〕
・2−ピロリドン(以下、「2−P」とも言う。)
・ブチレングリコール(以下、「BG」とも言う。)
〔界面活性剤〕
・BYK−348(BYK社製商品名)
〔水〕
・純水
[顔料分散液の調製]
ここで、顔料は以下の方法によって分散した。
分散樹脂(水溶性樹脂として、メタクリル酸/ブチルアクリレート/スチレン/ヒドロキシエチルアクリレート=25/50/15/10の質量比で共重合したもの。重量平均分子量12,000)40質量部を、水酸化カリウム7部、水23質量部、及びトリエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル30質量部の混合液に投入し、80℃で加熱及び撹拌して溶解し、水溶性樹脂溶液を調製した。この溶液(固形分43%)1.75kgに、上記の各顔料3.0kg、エチレングリコール1.5kg、及び水8.75kgを配合し、混合撹拌機で撹拌してプレミキシングを行った。この顔料混合液を、0.5mmのジルコニアビーズを85%充填した、1.5リットルの有効容積を有する多ディスク型羽根車を備えた横型のビーズミルを用いて、マルチパス方式により分散を行った。具体的には、ビーズ周速を8m/秒、1時間当たり30リットルの吐出量で2パス行い、顔料混合液を得た。
次に、0.05mmのジルコニアビーズを95%充填した、1.5リットルの有効容積を有する横型のアニュラー型のビーズミルを用いて、循環分散を行った。スクリーンは孔径が0.015mmのものを使用し、ビーズ周速を10m/秒として、顔料混合液10kgを循環量300リットル/時で4時間分散処理を行い、顔料固形分20%の顔料分散液を得た。
[インク組成物の作製]
表1に示す含有量で各材料を混合し、室温にて2時間攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過して、第1インク組成物(組成9)及び組成1〜組成8の第2インク組成物(クリアインク組成物)を作製した。第1インク組成物は複数色用意しているが、顔料種が異なる以外は同様の組成である(つまり、組成9のうち顔料の種類のみK、C、M、及びYと異なるため、第1インク組成物は計4種類ある。)。
なお、表1に示す含有量の単位は質量%である。また、クリアインク組成物中の樹脂の固形分濃度は、全て7%とした。さらに、表1中のインク膜化温度とは、クリアインク組成物に含まれる樹脂のMFTに対応するものである。また、後述のインクジェット記録において、各組成のクリアインク組成物はいずれも、表1中の対応するインク膜化温度で成膜した。
ここで、組成1〜組成8で表される各クリアインク組成物における樹脂の再分散性を評価したので、その結果を下記表2にまとめる。再分散性は、表1で挙げた各組成のインク組成物をそれぞれ50℃で1時間乾燥させた後、これに純水を加えて再分散するか否かを、目視で観察することにより評価した。表2中、「○」は再分散したことを表し、「×」は再分散しなかったことを表す。
再分散性に優れたインク組成物であると、インクが固着しないためヘッドの目詰まり安定性が優れたものとなる。表2より、溶剤(水溶性有機溶剤)がブチレングリコール(BG)であり、かつ、樹脂のMFTが60℃以上であるモビニール972又はモビニール6530であるクリアインク組成物において、再分散性に優れることが分かった。
なお、以下では、クリアインク組成物として組成1〜組成4のみ使用した。
[実施例1]
被記録媒体として3M社製のIJ40(ポリ塩化ビニル)を用い、かつ、組成9の有色インク組成物及び組成2のクリアインク組成物、並びに図2に示すインクジェット記録装置を用いて、以下のようにして、記録物を製造した。
〔第1記録工程〕
第1記録工程は、Y1方向への搬送動作を行うのと同時に実行した。主走査方向に、インクジェットヘッド内のノズルから上記有色インク組成物を被記録媒体に向けて吐出し着弾させて画像を形成した。なお、記録解像度は720×1440dpi、走査回数は10回、1滴当たりの吐出重量は18ng、Dutyは100%に、それぞれ条件を設定した。
〔第1乾燥工程〕
第1乾燥工程は、第1記録工程と同時に行った。乾燥ヒーター42(赤外線ヒーター)を用いて、60℃(第1温度)で上記画像を乾燥した。このときの乾燥率は85%であった。なお、乾燥率は第2記録工程時の質量を基に算出した。
なお、乾燥ヒーター42を用いて上記画像を乾燥する際、冷風を供給する送風機44を使用した。
〔バックフィード工程〕
バックフィード工程では、第1乾燥工程を経た被記録媒体を、硬化ヒーター43の手前までY1方向に搬送し、その後Y2方向に搬送した。
〔第2記録工程〕
第2記録工程では、乾燥率が85%の上記画像に向けて、インクジェットヘッド(第1記録工程と同一のもの)内のノズル列から上記クリアインク組成物を吐出し着弾させることにより、クリアインク組成物が当該画像に上塗りされた画像(上塗り画像)を形成した。なお、記録解像度は720×1440dpi、走査回数は4回、1滴当たりの吐出重量は18ng、Dutyは0〜200%に、それぞれ条件を設定した。
〔第2乾燥工程〕
第2乾燥工程は、第2記録工程の後に行った。硬化ヒーター43(赤外線ヒーター)を用いて、100℃(第3温度)で上記の上塗り画像を乾燥させて、被記録媒体上に定着させた。このようにして、記録物を得た。
[比較例1〜2]
有色インク組成物及びクリアインク組成物として、下記の表3に記載された組成を採用し、かつ、乾燥率を表3に記載された値とした点以外は、実施例1と同様にして記録物を得た。
得られた記録物について、光沢度の評価を行った。
記録物の20°鏡面光沢度を、光沢度計(日本電色工業社製、商品名「GlossMeter 型番VGP5000」)を用い、JIS Z8741:1997に従って測定した。また、比較例1の記録方法はノズル列の分割付与を利用し、有色インク組成物、クリアインク組成物の順番に付与し、比較例2の記録方法は同一走査時に同一地点に対して有色インク組成物及びクリアインク組成物を付与した。
[実施例2〜4及び実験例1]
組成2のクリアインク組成物の記録方法を下記表4にまとめる。なお、表4中、Duty200%は、2色分のノズル列を使用することにより実現したものである。
得られた記録物について、光沢度の評価を行った。
また、上記表4及び下記表5に示すように、実施例2は、第2記録工程以降において、方法1によりクリアインク組成物を1回に1層分塗った(2層2度塗り)点以外は、実施例1と同様にして記録物を製造した。また、実施例3は、第2記録工程以降において、方法2によりクリアインク組成物を1回に2層分塗った(2層1度塗り)点以外は、実施例1と同様にして記録物を製造した。また、実施例4は、第2記録工程以降において、方法3により、クリアインク組成物を1回に1層分塗った(1層1度塗り)点以外は、実施例1と同様にして記録物を製造した。
なお、実施例2〜4の比較対照として、クリアインク組成物を上塗りしない系を実験例1とした。これら実施例2〜4及び実験例1の光沢度(20度)の結果を下記表5にまとめる。また、図5は、実施例2〜4及び実験例1の光沢度(20度)の結果を表すグラフである。なお、下記表5中、CMPは、シアンインク(C)、マゼンダインク(M)、イエローインク(Y)を用いて黒色画像を作成したものに相当する。
続いて、目詰まり安定性の評価を行った。この評価は、組成1〜組成4のクリアインク組成物のみを用いて行った(参考例1〜4)。インクをヘッドに充填し40℃で3日間放置した後、吐出試験を行った。
評価基準は以下のとおりである。評価結果を下記表6に示す。
○:耐目詰まり性が良好である。
△:目詰まりが多く見られる。
1…プリンター、4…キャリッジ、10…搬送ユニット、11…給紙ローラー、13…搬送ローラー、14…プラテン、15…排紙ローラー、16A…第1ノズル列、16B…第2ノズル列、20…キャリッジユニット、21…キャリッジ、24…ガイド軸、30…ヘッドユニット、31…ヘッド、40…ヒーターユニット、42…乾燥ヒーター、43…硬化ヒーター、44…送風機、50…検出器群、53…紙検出センサー、54…光学センサー、60…コントローラー、61…インターフェイス部、62…CPU、63…メモリー、64…ユニット制御回路、110…コンピューター、P…被記録媒体、Y1…副走査方向のうち正方向、Y2…副走査方向のうち逆方向、T1…副走査方向の上流側(第1群)、T2…第1群よりも副走査方向の下流側(第2群)。

Claims (8)

  1. 色材を含有する第1インク組成物と、樹脂を含有し且つ色材を実質的に含有しない第2インク組成物と、を少なくとも用いるインクジェット記録方法であって、
    インクジェットヘッドを用いて、インク非吸収性又は低吸収性の被記録媒体に対して前記第1インク組成物を記録し、画像を形成する第1記録工程と、
    インクジェットヘッドを用いて、乾燥率が60%以上の前記画像に対して前記第2インク組成物を記録する第2記録工程と、を含む、インクジェット記録方法。
  2. 前記第1記録工程と同時に、又は該工程の後であって前記第2記録工程より前に行われ、第1温度で、又は、前記第1温度及び該第1温度以上である第2温度で、前記画像を乾燥して、前記乾燥率を60%以上とする第1乾燥工程と、
    前記第2記録工程と同時に、又は該工程の後に行われ、前記第1温度以上である第3温度で前記画像を乾燥させる第2乾燥工程と、をさらに含み、
    前記樹脂の熱変形温度は、前記第1温度以上、前記第3温度以下である、請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、及びスチレン−アクリル樹脂から選択される一種以上である、請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記第1記録工程は、インクジェットヘッドを用いて行われ、かつ、前記被記録媒体の正方向への搬送動作を行うのと同時に実行され、
    前記第2記録工程は、前記被記録媒体の逆方向への搬送動作を行うのと同時に、又は該逆方向への搬送動作を終えた後に実行される、請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記第2記録工程は、前記画像に対して前記第2インク組成物を記録し、前記被記録媒体上で前記第2インク組成物が乾燥した後に、前記第2インク組成物を再び記録するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記第1記録工程に用いられるインクジェットヘッドは、走査機構によって主走査方向に走査され、かつ、複数のノズル孔からなるノズル列を備え、
    前記ノズル列は、前記第1インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記主走査方向と交差する副走査方向に複数並べてなる第1ノズル列と、前記画像の下地層を記録する下地インク組成物を吐出するための前記ノズル孔を前記副走査方向に複数並べてなる第2ノズル列と、を含み、
    前記第1記録工程は、
    前記第1ノズル列及び前記第2ノズル列を、前記副走査方向に向かって、所定数の前記ノズル孔を含む群毎に分割して用い、
    前記副走査方向の上流側にある第1群を用いて、前記下地インク組成物を記録し、かつ、
    前記第1群よりも前記副走査方向の下流側にある第2群を用いて、前記第1インク組成物を記録するものである、請求項4又は5に記載のインクジェット記録方法。
  7. 前記第2インク組成物は、非プロトン性極性溶媒を実質的に含有しない、請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法を利用する、記録装置。
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