JP2013143918A - 酵素糖化用原料の製造方法、糖の製造方法、並びにエタノールの製造方法 - Google Patents

酵素糖化用原料の製造方法、糖の製造方法、並びにエタノールの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】植物バイオマスに酵素糖化のために十分な反応性を付与することができ、かつ、アンモニアの使用量を十分に低減することが可能な酵素糖化用原料の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の酵素糖化用原料の製造方法は、リグノセルロースを含有する植物バイオマスをアンモニアにより処理して酵素糖化用原料を得る酵素糖化用原料の製造方法であって、リグノセルロースを含有する植物バイオマスを液相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するセルロースの少なくとも一部の結晶型をI型からIII型に転移させる結晶型転移工程と、リグノセルロースを含有する植物バイオマスを0〜190℃の温度下で気相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部を開裂させるエステル結合開裂工程と、を備える。
【選択図】図1

Description

本発明は、リグノセルロースを含有する植物バイオマスから糖を製造する際に用いられる酵素糖化用原料を製造する方法、前記原料から糖を製造する方法、並びに前記糖からエタノールを製造する方法に関する。
近年、地球温暖化対策の一環として、木質バイオマスや草本バイオマス等の、リグノセルロース(セルロース、ヘミセルロース、リグニンからなる複合体)を含む植物バイオマスからエタノールを製造し、各種燃料や化学原料として利用しようとする試みが広く行われている。リグノセルロースを含有する植物バイオマス(以下、単に「植物バイオマス」ということもある。)からのエタノールの製造は、例えば、収集した植物バイオマスを、糖化工程において単糖に分解した後、得られた糖を酵母等の微生物を利用した発酵によりエタノールに変換することにより行うことができる。
また、前記糖を、エタノール発酵だけでなく、各種の微生物を用いる発酵に供することにより、様々な化学原料、例えば有機酸等を製造することもできる。一例として、前記糖を乳酸発酵に供することにより、生分解性高分子の原料等に使用される乳酸を製造することができる。
植物バイオマスの糖化は、従来、濃硫酸を用いて行われることが多かったが、環境負荷低減の観点から、硫酸の使用量を少なくすることが望まれている。そこで、近年は、濃硫酸による糖化に代わる手段として、酵素を用いる糖化が広く研究されている。酵素による糖化は、環境に対する影響の観点から望ましい手段であるが、この酵素糖化のためには、セルロースに対して酵素を作用させやすくするとの目的から、植物バイオマスに前処理を施して、リグノセルロース中のセルロースとリグニンとを分離することが必要となる。
この植物バイオマスの前処理方法としては、従来、希硫酸、加圧熱水等による蒸煮処理などが一般的である(例えば、下記特許文献1〜4参照。)。しかしながら、前述のように、環境負荷低減の観点から硫酸の使用は好ましくない。
一方、植物バイオマスをアンモニアで処理することにより、その化学的反応性又は生物化学的反応性が向上することが知られている(例えば、下記特許文献5、6、非特許文献1、2参照。)。
植物バイオマス中のリグノセルロースにあっては、リグニンとヘミセルロースとが共有結合(エステル結合等)により結合し、ヘミセルロースとセルロースとが水素結合を介して相互作用することにより、セルロースとリグニンとが強固に複合化されており、このリグニンが酵素のセルロースへの作用を阻害するとされる。そして、植物バイオマスをアンモニアにより処理することによって酵素糖化の効率が向上する作用機構のひとつは、前記リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合がアンモニアによりアミド化開裂する等により、リグニンの少なくとも一部がセルロースから分離されることに基づくとされる。以下、前記リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合等の開裂によるリグニンのセルロースからの分離に基づく酵素糖化の効率向上の作用を「化学的作用」という場合もある。なお、前記エステル結合のアミド化開裂反応は、アンモニア処理の処理温度が高いほど進行しやすい。
また、リグノセルロースをアンモニアで処理する際、上記リグニンとセルロースとの分離とは別に、アンモニアによるセルロースの結晶型の転移により酵素糖化の効率が向上することも知られている。すなわち、植物バイオマスを構成するセルロースは、主としてセルロースI型結晶として存在するが、このセルロースI型結晶がアンモニアと接触することにより、セルロースI型結晶よりも低い結晶密度を有し、酵素の作用をより受けやすいセルロースIII型結晶に転移することが知られている(例えば、下記特許文献7参照。)。以下、セルロース結晶型の転移に基づく酵素糖化の効率向上の作用を「物理的作用」という場合もある。
前記物理的作用は、セルロースI型結晶が液相あるいは超臨界状態にあるアンモニアと接触することにより発現することが知られている。一方、気相のアンモニアはセルロースに対して化学的観点及び構造的観点から何ら影響を与えず、酵素糖化の効率の向上に寄与しないとされる(非特許文献1参照。)。これは、気相のアンモニアではセルロースとの間でセルロース−アンモニア中間体を形成することができないため、セルロースI型結晶をセルロースIII型結晶に転移させることができないためと考えられる(非特許文献2参照)。
そのため、従来、前記植物バイオマスのアンモニア処理において、化学的作用と物理的作用の両方を同時に有効に利用しようとすると、高圧容器内に植物バイオマスとアンモニアとを導入し、化学的作用を発現させるためのリグニンとヘミセルロースとの間の結合の開裂反応を促進するために高圧容器内を加熱し、且つ、物理的作用を発現させるためのセルロース結晶の転移を進行させるために、高圧容器内でアンモニアを液相に保って処理を行うか、あるいは更に高温高圧の条件として、アンモニアを超臨界状態として処理を行うことが行われていた。
特開2006−075007号公報 特開2004−121055号公報 特表2002−541355号公報 特開2002−159954号公報 米国特許4,600,590号公報 特開2008−161125号公報
Sendich E., Laser M., Kim S., Alizadeh H., Laureano−Perez L., Dale B. and Lynd L. Recent process improvements for the ammonia fiber expansion (AFEX) process and resulting reduction in minimum ethanol selling price Bioresource Technology 99,8429−8435(2008) A.J.Barry,F.C.Peterson&A.J.King,x−Ray Studies of Reactions of Cellulose in Non−Aqueous Systems I. Interaction of Cellulose and Liquid Ammonia,J.Am.Chem.Soc.,58,333(1936)
ところで、植物バイオマスのアンモニアによる処理においては、通常、処理済みの植物バイオマスからアンモニアを分離・回収して再使用する。このアンモニアの分離・回収、再使用の工程においては、アンモニアの精製処理を含め、液相のアンモニアを気化させる、あるいは気相のアンモニアを液化させるといった操作を要する。ここで、アンモニアは蒸発潜熱が極めて大きい物質であることから(1262kJ/kg(0℃、101.3kPaA))、これらの操作に要するアンモニア単位量当りのエネルギーが大きく、植物バイオマス単位量当りのアンモニア使用量が増加すると、前記アンモニアの分離・回収、再使用に要する消費エネルギーが増大し、プロセスの経済合理性を失わせることとなる。また、再生使用するとはいえ、多量のアンモニアを使用すること自体、コストの上昇を招く。従って、アンモニア処理工程を含む植物バイオマスからの酵素糖化用原料の製造、前記原料を用いる糖の製造、並びに前記糖からのエタノールの製造において、アンモニア処理におけるアンモニア使用量の低減は、プロセスの商業化にとって極めて重要な事項である。
しかしながら、従来の、アンモニア処理工程を含む植物バイオマスからの酵素糖化用原料の製造、前記原料を用いる糖の製造、並びに前記糖からのエタノールの製造においては、アンモニア処理におけるアンモニア使用量の低減については必ずしも十分な検討がなされていない。
さらに、本発明者らの検討によれば、従来法による場合、経済合理性を満たすまでにアンモニア使用量を低減することが非常に困難であることが判明した。
例えば、液相のアンモニアによる植物バイオマスの処理においては、アンモニアは通常、圧力容器内で気液混相となっている。この際に、圧力容器内に液相のアンモニアを所定量存在するようにしようとすると、容器内の温度が高温であるほど、気相部の圧力(当該温度におけるアンモニアの飽和蒸気圧)が上昇して蒸気密度が増加するため、気相のアンモニア量が増加して、容器内の全アンモニア量は増加する。すなわち、処理すべき植物バイオマスの単位量当たり必要となるアンモニアの量が増加してしまう。
一方、圧力容器内の温度を低くすると、容器内に存在する液相アンモニアの量を前記所定量とするために必要な全アンモニアの量は低減されるが、温度の低下に伴い、十分な化学的作用を発現させることが困難となる。仮にこの方法で十分な化学的作用を発現させようとすると、圧力容器内で極めて長時間処理するという、商業的実施に適さない操作が必要となる。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、植物バイオマスに酵素糖化のために十分な反応性を付与することができ、かつ、アンモニアの使用量を十分に低減することが可能な酵素糖化用原料の製造方法、前記原料を用いて効率的に糖を製造する方法、並びに前記糖からエタノールを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討を行なった結果、まず、以下の知見を得た。
すなわち、植物バイオマスのアンモニアによる処理における物理的作用は、植物バイオマスと、植物バイオマスの量に対して特定の割合の量の液相のアンモニアとを接触させることにより効率的に発現させることができることが判明した。また、液相のアンモニアを用いた処理による物理的作用は、処理温度、処理時間の影響を殆ど受けず、低温・短時間でも十分に発現することが判明した。一方、アンモニア処理における化学的作用は、アンモニアが気相であっても発現することが判明した。
そこで、本発明者らは、前記知見に基づいて更に検討を重ねた。そして、アンモニア使用量の低減という課題の解決を目的としつつ、アンモニア処理を複数回行うことを試みた。その結果、驚くべきことに、2種の特定のアンモニア処理を組み合わせることによって、植物バイオマスに酵素糖化のために十分な反応性を付与することができ、かつ、アンモニア使用量を飛躍的に低減させることができることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、リグノセルロースを含有する植物バイオマスをアンモニアにより処理して酵素糖化用原料を得る酵素糖化用原料の製造方法であって、
リグノセルロースを含有する植物バイオマスを液相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するセルロースの少なくとも一部の結晶型をI型からIII型に転移させる結晶型転移工程と、
リグノセルロースを含有する植物バイオマスを0〜190℃の温度下で気相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部を開裂させるエステル結合開裂工程と、
を備える酵素糖化用原料の製造方法を提供する。
本発明においては、前記結晶型転移工程が下記(a)〜(c):
(a)液相のアンモニアの量が下記式(1):
0.1≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (1)
を満たす。
(b)植物バイオマス及びアンモニア中に含まれる水分量が下記式(2):
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (2)
を満たす。
(c)温度が−40〜40℃である。
の条件を満たし、
前記エステル結合開裂工程が下記(d)〜(e):
(d)全アンモニアの植物バイオマスに対する量が前記結晶型転移工程における全アンモニアの植物バイオマスに対する量以下である。
(e)温度が前記結晶型転移工程における温度よりも高い及び/又は圧力が前記結晶型転移工程における圧力よりも低い。
の条件を満たすことが好ましい。
前記条件を満たすことにより、低減されたアンモニアの使用量及び短縮された高圧容器での処理時間において、酵素糖化の効率が向上された酵素糖化用原料を製造することができる。
また、前記結晶型転移工程における液相のアンモニアの量は下記式(3):
0.2≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (3)
を満たすことが好ましい。
結晶型転移工程における液相のアンモニアが前記式(3)を満たすことにより、使用するアンモニア量を低減しつつ、物理的作用が十分に発現され、酵素糖化の効率がより向上された酵素糖化用原料を製造することができる。
また、前記結晶型転移工程における前記水分量は下記式(4):
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (4)
を満たすことが好ましい。
結晶型転移工程における前記水分量が前記式(4)を満たすことにより、物理的作用が十分に発現され、酵素糖化の効率がより向上された酵素糖化用原料を製造することができる。
また、前記エステル結合開裂工程における温度は60〜190℃、アンモニアの分圧は0.5〜4MPaAとすることができる。
エステル結合開裂工程における温度及びアンモニアの分圧をそれぞれ上記の範囲内とすることにより、化学的作用が効率的に発現され、短時間の処理により、酵素糖化の効率が向上された酵素糖化用原料を製造することができる。
また、前記エステル結合開裂工程におけるアンモニアは気相のアンモニアであることが好ましい。
エステル結合開裂工程におけるアンモニアが気相のアンモニアであることにより、存在するアンモニアの量が少なくなり、加熱等に要するエネルギーを低減することができる。
また、前記エステル結合開裂工程における温度は0〜60℃、アンモニアの分圧は0.01〜0.2MPaAとしてもよい。
エステル結合開裂工程における温度及びアンモニアの分圧をそれぞれ上記の範囲内とすることで、特別な圧力容器を用いることなくエステル結合開裂工程を実施することができる。
本発明の酵素糖化用原料の製造方法において、前記エステル結合開裂工程を行い、次に前記結晶型転移工程を行うことが好ましい。
前記エステル結合開裂工程を行い、次に前記結晶型転移工程を行うことにより、結晶転移工程により生成したセルロースIII型結晶が、水分との接触等によって再度セルロースI型結晶に転移することを抑制することができる。
また、本発明は、上記本発明の酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化する工程を備える、糖の製造方法を提供する。
本発明の糖の製造方法においては、前記酵素糖化用原料の製造方法によって得られた糖化効率の向上した酵素糖化用原料を用いることで、酵素糖化により効率的に糖を製造することができる。
また、本発明は、前記糖の製造方法によって得られた糖を発酵させる工程を備える、エタノールの製造方法を提供する。
本発明のエタノールの製造方法においては、前記糖の製造方法によって得られた糖を用いることにより、出発原料の植物バイオマスから効率的にエタノールを製造することができる。
本発明によれば、従来における諸問題を解決することができ、化学的作用と物理的作用の両方を有効に利用して、酵素糖化の効率が十分に高められた酵素糖化用原料を与えることができ、従来よりも使用するアンモニアの量を低減することができ、更に高圧容器での処理時間を短縮することができる、リグノセルロースを含有する植物バイオマスのアンモニア処理による酵素糖化用原料の製造方法、前記原料を用いて効率的に糖を製造する方法、並びに前記糖からエタノールを製造する方法を提供することができる。
エステル結合開裂工程後の植物バイオマスに関する、FT−IR分光分析法によるエステル結合のアミド化開裂の度合いを示す指標と、熱水によるヘミセルロースの抽出によるエステル結合のアミド化開裂の度合いを示す指標との相関の一例を示すグラフである。
<第1実施形態:酵素糖化用原料の製造方法>
本発明の第1実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法は、リグノセルロースを含有する植物バイオマスをアンモニアにより処理して酵素糖化用原料を得る酵素糖化用原料の製造方法であって、
リグノセルロースを含有する植物バイオマスを液相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するセルロースの少なくとも一部の結晶型をI型からIII型に転移させる結晶型転移工程と、
リグノセルロースを含有する植物バイオマスを0〜190℃の温度下で気相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部を開裂させるエステル結合開裂工程と、
を備える。
前記結晶型転移工程及び前記エステル結合開裂工程の順序は特に制限されない。すなわち、本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法には、下記(a)、(b)の態様が包含される。
(a)前記結晶型転移工程を行った後、前記エステル結合開裂工程を行う。
(b)前記エステル結合開裂工程を行った後、前記結晶型転移工程を行う。
さらに、本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法は、後述するように、必要に応じて上記のアンモニア処理工程以外の工程を備えてもよい。
以下、本実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法について詳述する。
(植物バイオマス)
本実施形態の酵素糖化用原料の製造方法において原料として使用する植物バイオマスとしては、リグノセルロースを含有する限りにおいて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、農業や林業等の生産活動に伴う残渣として得られる「廃棄物バイオマス」や、エネルギー等を得る目的で意図的に栽培して得られる「資源作物バイオマス」などを使用することができる。前記「廃棄物バイオマス」としては、例えば、廃建材、間伐材、稲わら、麦わら、もみ殻、バガスなどが挙げられ、また、前記「資源作物バイオマス」としては、例えば、セルロース類の利用を目的として栽培されるシラカバ、ユーカリ、ポプラ、アカシア、ヤナギ、スギ、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、ミスカンサス、ススキ、リードカナリーグラスなどが挙げられる。また、植物バイオマスは、木に由来する「木質バイオマス」、草に由来する「草本バイオマス」などにも分類される。本発明においては、木質バイオマス及び草本バイオマス共に使用することができる。植物バイオマスは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、未処理の植物バイオマスに含まれるリグノセルロースを構成するセルロースは、基本的にセルロースI型結晶の形態をとっている。
(植物バイオマスの粒子化工程)
植物バイオマスとしては、収集されたものをそのまま使用してもよいが、裁断や粉砕等によりある程度以下の大きさに粒子化してから使用することが、取り扱いの容易さ及びアンモニア処理の効率の観点から望ましい。この場合、粒子化後の植物バイオマスの粒子の大きさとしては特に制限はなく、粒子としての取り扱いやすさなどに応じて適宜選択することができるが、例えば、通過するメッシュの目開きとして、5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましい。前記メッシュの目開きの大きさが5mmを超えると、後述するアンモニア処理の効率が低下することがある。一方、単位操作としての粉砕はエネルギー効率が低く、植物バイオマスを微細な粒子にまで粉砕すると、粉砕に要するエネルギーが増大して、プロセスの経済合理性を損なうこととなる。従って、粉砕の消費エネルギー量は、例えば、植物バイオマス乾燥質量1kg当り1MJ以下が好ましく、粉砕に消費するエネルギー見合いで粒子の大きさを選択してもよい。
粒子化に用いる装置としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウィレーミル、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等を用いることができる。
(植物バイオマスの乾燥工程)
収集された植物バイオマスは通常水分を保有している。この水分を保有した植物バイオマスをそのままアンモニア処理に供してもよいが、物理的作用を有効に利用して、得られる酵素糖化用原料の酵素糖化の効率を十分に向上させるためには、植物バイオマスを乾燥して使用することが好ましい。
植物バイオマスのアンモニア処理を行う系内に、植物バイオマスの量に対して一定以上の量の水が存在すると、結晶型転移に必要なセルロース−アンモニア中間体の生成が抑制される傾向にあると推定される。そのため、本実施形態の酵素糖化用原料の製造方法における結晶型転移工程において、系内の水分量が所定の水準を越えると、セルロースI型結晶のセルロースIII型結晶への転移が十分に進行しない。そこで、セルロース結晶の転移を進行させ、物理的作用を十分に発現させるためには、結晶型転移工程における系内の水分量を所定の水準以下とすることが好ましく、そのためには、植物バイオマスを乾燥し、その水分含有量を低減させてアンモニア処理に供することが好ましい。
前記結晶型転移工程において、植物バイオマス及びアンモニア中に含まれる水分量は下記式(2)を満たすことが好ましい。そのためには、乾燥後の植物バイオマスを結晶型転移工程に供するに際して、当該植物バイオマス中の水分含有量が少なくとも下記式(2)を満たすことが好ましい。
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (2)
更に、前記結晶型転移工程においては、植物バイオマス及びアンモニア中に含まれる水分量が下記式(4)を満たすことが好ましい。そのためには、乾燥後の植物バイオマスを結晶型転移工程に供するに際して、当該植物バイオマス中の水分含有量が少なくとも下記式(4)を満たすことが好ましい。
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (4)
植物バイオマスの乾燥方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、大気下に高温で乾燥すると、植物バイオマスの組織が破壊されたり酸化されたりするため、例えば、天日乾燥、自然乾燥、100℃以下での通風による乾燥、減圧乾燥、ジメチルエーテルを用いた乾燥などが好ましい。
植物バイオマスの粒子化を行う場合、乾燥はその前であっても後であってもよいが、取り扱い上、粒子化の後が好ましい。また、乾燥は、結晶型転移工程の前になされればよく、アンモニア処理がエステル結合開裂工程、結晶型転移工程の順に実施される場合には、エステル結合開裂工程と結晶型転移工程との間であってもよいが、その場合であっても、エステル結合開裂工程の前に行うことが好ましい。
(結晶型転移工程)
結晶型転移工程においては、リグノセルロースを含有する植物バイオマスを液相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するセルロースの少なくとも一部の結晶型をI型からIII型に転移させる。なお、本願においては、「リグノセルロース」とは、未処理の植物バイオマスに含まれるリグニンとヘミセルロースとセルロースの複合体だけでなく、エステル結合開裂工程により、リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部が開裂した前記複合体、及び、未処理の植物バイオマスを結晶型転移工程に供し、セルロースI型結晶の少なくとも一部がIII型結晶に転移した前記複合体を含むものとする。
結晶型転移工程においては、アンモニアが液相を含むことが必要である。これは、セルロースI型結晶の少なくとも一部をIII型結晶に転移させるためには、セルロース−アンモニア中間体の生成が必要であり、該中間体の生成にはセルロースが液相のアンモニアと接触することが必要となるためである。従って、液相のアンモニアが存在すれば、セルロースI型結晶の少なくとも一部をIII型結晶に転移させることができる。
なお、結晶型転移工程における液相を含むアンモニアとは、通常は気液混相のアンモニアである。これは、圧力容器内を、気相部をもたず液体アンモニアで充満された状態とすることは困難であり、また、そのようにした場合には、使用するアンモニアの量が、物理的作用を最大限に利用するために必要な最小量よりも増加する傾向にあることから好ましくない。
結晶型転移工程の好ましい態様として、下記の条件(a)〜(c)を満たすものを例示することができる。
(a)液相のアンモニアの量が下記式(1):
0.1≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (1)
を満たす。
(b)植物バイオマス及びアンモニア中に含まれる水分量が下記式(2):
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (2)
を満たす。
(c)温度が−40〜40℃である。
液相のアンモニアの量が上記式(1)を満たすことにより、セルロースI型結晶の少なくとも一部を効率的にIII型結晶に転移させることができ、また、アンモニアの使用量を低減することができる。
更に、液相のアンモニアの量が下記式(3):
0.2≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (3)
を満たすことにより、アンモニアの使用量を低減しつつ、セルロースI型結晶をより効率的にIII型結晶に転移させることができる。
特に、上記式(3)における中辺が0.3〜0.8の範囲である場合には、より少量のアンモニアの使用量において、セルロースI型結晶を一層効率的にIII型結晶に転移させることができる。
更に、原料バイオマスとしてエリアンサスを用いた例においては、植物バイオマスの乾燥質量に対して約40質量%以上の液相のアンモニアを存在せしめることにより、全てのセルロースI型結晶をIII型結晶に転移させることができる。従って、ほぼ全てのI型結晶をIII型結晶に転移せしめて物理的作用を最大限に利用しつつ、使用するアンモニア量を最小量とするためには、結晶型転移工程に存在する液相アンモニアの量を植物バイオマスの乾燥質量に対して約35〜約50質量%とすることが好ましい。なお、前記の好ましい植物バイオマスの量に対する液相アンモニア量の比率は植物バイオマスの種類、セルロースの含有率、アンモニア処理に使用する装置及びその運転条件等により変化するため、実験により最適な液相アンモニア量を決定することが好ましい。
「植物バイオマスの乾燥工程」に関する説明において述べたように、結晶型転移工程において系内に存在する水分量が増加すると、セルロースI型結晶のIII型結晶への転移が抑制される傾向にある。そして、セルロースI型結晶のIII型結晶への転移を促進するためには、植物バイオマス中及びアンモニア中に存在する水分量は前記式(2)を満たすことが好ましい。前記水分量が前記式(2)を満たさない場合は、植物バイオマスを液相を含むアンモニアで処理しても、セルロースI型結晶のIII型結晶への転移が殆ど進行しない傾向にある。
更に、植物バイオマス中及びアンモニア中に存在する水分量は下記式(4):
水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (4)
を満たすことが好ましい。
植物バイオマス中及びアンモニア中に存在する水分量は前記式(4)を満たすことにより、リグノセルロースを構成するセルロースにおいて、セルロースI型結晶の全てがIII型結晶に転移する傾向にあり、物理的作用を十分に発現せしめることができる。
結晶型転移のために必要な液相のアンモニア量は温度の影響を殆ど受けない。一方、アンモニアが気液混相にある場合、気相のアンモニア量は温度によって変化し、低温ほど減少する。更に結晶型転移の進行も温度の影響を殆ど受けず、低温においても速やかに進行する。よって、アンモニア使用量を低減する観点から、結晶型転移工程における温度は低温であることが好ましい。他方、アンモニアをより低温に冷却するほど冷凍機の消費エネルギーが増加する。よって、低温にすることによるアンモニア使用量の低減と、冷凍機の消費エネルギーの増加とのバランスから、前記温度を決定することが好ましい。具体的には、前記温度は−40〜40℃であり、好ましい温度は−10〜20℃である。
結晶型転移工程におけるアンモニア分圧は特に限定されず、処理温度において液相のアンモニアが存在するために必要な分圧であればよい。その分圧は当該温度におけるアンモニアの飽和蒸気圧であり、当然処理温度によって変化するが、例えば処理温度が−40〜40℃である場合には、0.07〜1.6MPaAである。
結晶型転移工程において処理時間は特に限定されない。液相を含むアンモニア処理による結晶型転移は速やかに進行することから、処理時間は例えば0.01〜1時間である。
結晶型転移工程におけるアンモニア処理の方法としては、液相を含むアンモニアの存在下で処理する方法である限りにおいて特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、植物バイオマスを、通常は圧力容器内に導入し、前記圧力容器内に所望のアンモニアを供給し、所望の温度に設定して、処理することにより行うことができる。また、エステル結合開裂工程の後に結晶型転移工程を行う場合であって、エステル結合開裂工程が気相のアンモニアを利用するものである場合には、エステル結合開裂工程後の容器内に所望のアンモニアを供給してアンモニアを液相を含む状態とし、結晶型転移工程を行ってもよい。更に、エステル結合開裂工程を経た植物バイオマスを、同工程を行うものとは異なる容器に移し、当該容器において液相を含むアンモニアにより結晶型転移工程を行ってもよい。
結晶型転移工程におけるセルロースI型結晶からIII型結晶への転移は、処理前後の植物バイオマスについてX線回折(XRD)分析を行うことによって確認することができる。より具体的には、XRDパターンにおいて、2θ=16°付近(101)及び2θ=22°付近(020)に検出されるピークがI型結晶に帰属されるピークであり、2θ=12°付近(101)及び2θ=21°付近(020)に検出されるピークがIII型結晶に帰属されるピークであり、これらのピークの有無により、各結晶型の有無を判定することができる。なお、本発明者らは、リグノセルロースを含有する植物バイオマスに気相のアンモニアによる処理を行った場合、処理後の植物バイオマスについてのXRDパターンにおいて、III型結晶に帰属されるピークが検出されないこと、すなわち気相のアンモニアによる処理では結晶型転移が起こらないことを併せて確認している。
(エステル結合開裂工程)
エステル結合開裂工程においては、リグノセルロースを含有する植物バイオマスを0〜190℃の温度において気相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部を開裂させる。なお、リグニン/ヘミセルロース間の結合としては、エステル結合の他にエーテル結合も存在するが、エステル結合開裂工程は、エーテル結合の開裂を伴うものであってもよい。
エステル結合開裂工程においては、気相を含むアンモニアにより処理を行う。
エステル結合開裂工程においては、気相を含むアンモニアとして気液混相のアンモニアを用いてもよいが、液相を含まない気相のアンモニアを用いることが好ましい。本発明者らは、前記結晶型転移工程においては所定量の液相のアンモニアを必要とするが、エステル結合の開裂は必ずしも液相のアンモニアを必要とせず、気相のアンモニアのみであっても十分に進行することを見出している。気相のアンモニアを使用することにより、気液混相のアンモニアを使用する場合に比較して、更にエステル結合開裂工程で使用するアンモニア量を低減することができる。
エステル結合開裂工程における温度は、0〜190℃であり、好ましくは10℃〜180℃である。温度が0℃よりも低い場合は、化学的作用を十分に発現させるために必要な処理時間が極めて長時間に及ぶため好ましくない。一方、温度が190℃を超える場合には、リグニン分子間の架橋反応が進行し、酵素糖化工程における酵素のセルロースへの作用が阻害されるため好ましくない。
エステル結合開裂工程の好ましい態様として、更に下記の条件(d)〜(e)を満たすものを例示することができる。
(d)全アンモニアの植物バイオマスに対する量が前記結晶型転移工程における全アンモニアの植物バイオマスに対する量以下である。
(e)温度が前記結晶型転移工程における温度よりも高い及び/又は圧力が前記結晶型転移工程における圧力よりも低い。
エステル結合開裂工程において使用する全アンモニアの植物バイオマスに対する量を、前記結晶型転移工程における全アンモニアの植物バイオマスに対する量以下とすることにより、結晶型転移工程及びエステル結合開裂工程で使用するアンモニアの量を低減することができる。また、このような条件を選択しても、エステル結合の開裂を進行させて、化学的作用を十分に発現させることができる。なお、エステル結合開裂工程において気相のアンモニアを用いることにより、容易に、使用する全アンモニアの植物バイオマスに対する量を、結晶型転移工程における全アンモニアの植物バイオマスに対する量以下することができる。
エステル結合開裂工程における温度を、前記結晶型転移工程における温度よりも高くする及び/又は、圧力を前記結晶型転移工程における圧力よりも低くすることにより、アンモニアの使用量を低減し、且つエステル結合の開裂を効率的に進めることができる。前述のように、結晶型転移工程においては、液相を含むアンモニアによる処理により結晶型の転移を十分に進行させ、且つアンモニアの使用量を低減するためには、処理温度は比較的低温であることが好ましい。一方、エステル結合開裂工程にあっては、エステル結合の開裂を速やかに進めるためには、比較的に高い温度での処理が有利である。エステル結合開裂工程の温度を結晶型転移工程の温度よりも高い温度とすることで、アンモニアの使用量を増加させることなく、エステル結合の開裂を効率的に進行させることができる。
エステル結合開裂工程を実施するひとつの好ましい態様は、圧力容器を用いて比較的高いアンモニア分圧及び比較的高い温度、比較的短時間でアンモニア処理を行うものである。この態様により、設備コストが高額となる圧力容器の容量を小さくし、且つ生産性を高めることができる。
前記圧力容器を用いるエステル結合開裂工程の態様において、アンモニア分圧は、好ましくは0.5〜4MPaA、より好ましくは1.0〜2.0MPaAである。アンモニア分圧が0.5MPaA未満である場合には、エステル結合の開裂が十分な速度で進行しない傾向にある。一方、アンモニア分圧が4PaAを超える場合には、エステル結合の開裂及びそれに伴う酵素糖化効率の向上が鈍化するとともに、アンモニア使用量の増大を招く傾向にある。
前記圧力容器を用いるエステル結合開裂工程の態様において、処理温度は好ましくは60〜190℃、より好ましくは80〜150℃、最も好ましくは100〜130℃である。処理温度が60℃を下回る場合には、エステル結合開裂の進行に長時間を要し、容量が低減された圧力容器を用いる装置においては、生産性が低下する傾向にある。一方、処理温度が190℃を超える場合にはリグニン分子間の架橋反応が進行し、酵素糖化工程における酵素のセルロースへの作用が阻害される傾向にある。
一方、圧力容器を用いず、常圧あるいは常圧付近の圧力、常温あるいは常温付近の温度において、長時間をかけてアンモニア処理を行うことでエステル結合開裂工程を実施する態様を選択することもできる。特に、原料植物バイオマスの在庫期間中に、常圧あるいは常圧付近の圧力、常温あるいは常温付近の温度において、在庫のための容器内をアンモニアを含む雰囲気とし、エステル結合の開裂のための処理を行なう態様は、高額な圧力容器を必要とせず、また、化学的作用を発現するために必要な処理時間が長時間に及んでも、非効率とならないという特徴を有する。例えば、原料植物バイオマスを在庫するための容器に0.01〜0.2MPaA程度の分圧のアンモニアを供給し、室温〜60℃程度の温度で例えば1〜10週間程度の期間アンモニア処理してもよい。
エステル結合開裂工程におけるリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合のアミド化開裂は、FT−IR分光分析により確認することができる。より具体的には、FT−IRスペクトルにおける1662cm−1付近の吸収は、エステル結合開裂工程後の植物バイオマス中に生成したアミド基に帰属され、エステル結合のアミド化開裂の指標とすることができる。さらに、リグニンの芳香環に帰属される吸収(1515cm−1付近)の面積に対するアミド基に帰属される吸収の面積の比を算出し、これをエステル結合のアミド化開裂度合いの指標とすることもできる。なお、本実施形態においては、Thermo社製のNICOLET380を用い、波数400〜4000cm−1の範囲について反射法によるFT−IRスペクトルの測定を行った。
また、エステル結合開裂工程におけるリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂は、熱水によるヘミセルロースの抽出によっても確認することができる。アンモニア処理によりリグニンとの間のエステル結合が開裂したヘミセルロースは冷水には溶解しにくいが、熱水には溶解しやすい。一方、エステル結合開裂工程に供していない植物バイオマス中のヘミセルロースは熱水に抽出されない。そこで、エステル結合開裂工程に供した後の植物バイオマスを熱水により抽出し、植物バイオマス中に含まれる全ヘミセルロースの量に対する抽出されたヘミセルロースの量の割合(以下、「抽出率」という。)をリグニン/ヘミセルロース間のエステル結合の開裂の指標とすることを検討した。なお、リグニンとの間のエステル結合が開裂したヘミセルロースが冷水に溶解しないのは、ヘミセルロースとセルロースとの間の水素結合等が原因であると考えられる。
上記熱水によるヘミセルロースの抽出の具体的な手順は以下のとおりである。
すなわち、まず、エステル結合開裂工程に供した後の植物バイオマス試料0.5gを、20mlの50mM−酢酸緩衝液(pH4.5)中に懸濁させ、100℃の熱水浴中で10分間加熱して抽出を行う。これを過し、ろ液10mlにヘミセルラーゼを含む市販酵素剤をタンパク量として約1mg添加し、37℃、200rpmにて24時間振とうし、抽出されたヘミセルロースの酵素分解を行う。得られた酵素分解液中のキシロースの濃度を、Shodex SUGAR SP0810(商品名)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法により定量する。一方、別途に原料植物バイオマスを硫酸糖化法により糖化処理し、生成するキシロースの量を同様に定量する。このキシロースは、実質的に原料植物バイオマス中に含まれる全ヘミセルロースが加水分解して生成したと見なすことができる。前記熱水抽出及び酵素糖化により得られるキシロース量を前記硫酸糖化法により得られる原料植物バイオマス中の全ヘミセルロース由来のキシロースの量で除すことにより、ヘミセルロースの抽出率を算出する。
図1は、前記エステル結合開裂工程後の植物バイオマスに関する、FT−IRスペクトルにおけるアミド基に帰属される吸収の面積とリグニンの芳香環に帰属される吸収の面積との比によるエステル結合のアミド化開裂の指標と、前記熱水抽出により求めたヘミセルロースの抽出率によるエステル結合のアミド化開裂の指標との相関の一例を示すグラフである。図1から、両指標が良好な相関を示すことがわかる。なお、熱水によるヘミセルロース抽出において、リグニンとの間のエステル結合が開裂したヘミセルロースの全てが抽出されているかについては必ずしも明らかではない。しかし、上記2つの方法により得られる指標が良好な相関を示すことから、仮に熱水抽出後に植物バイオマス中にリグニンとの間のエステル結合が開裂したヘミセルロースの一部が残存しているとしても、前記抽出率は、リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いの指標として有効であると考えられる。
本発明の第1実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法において、前記結晶型転移工程及び前記エステル結合開裂工程の順序は特に制限されないが、セルロースIII型結晶の安定性の点から、前記エステル結合開裂工程を行い、次に前記結晶型転移工程を行うことが好ましい。すなわち、エステル結合開裂工程を経ていない植物バイオマスにあっては、結晶型転移工程により一旦生成したセルロースIII型結晶が、水分と接触することにより、セルロースI型結晶へと再度転移しやすい。一方、エステル結合開裂工程を経てリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部が開裂されていると、結晶型転移工程により生成したセルロースIII型結晶は比較的安定となり、水分との接触によりセルロースI型結晶へ再度転移することが抑制される。
以上の、本発明の第1実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法によれば、結晶型転移工程とエステル結合開裂工程のそれぞれ工程の条件を、セルロース結晶型の転移とエステル結合の開裂を単一工程で実施する場合の条件に比べて温和な条件に設定しても、酵素糖化のための十分な反応性の付与の点で、前記単一工程と少なくとも同等の効果を得ることができる。すなわち、本発明の第1実施形態の結晶化型転移工程の条件は、セルロース結晶型の転移とエステル結合の開裂を単一の工程で実施する場合の条件に比較して、低温・低圧とすることができ、また、エステル結合開裂工程は低圧とすることができる。これらの条件を選択することにより、処理後の植物バイオマスの酵素糖化に対する反応性を十分に付与しつつ、アンモニア使用量を飛躍的に低減することができる。
なお、前記エステル結合開裂工程は、ヘミセルロースとリグニンとの間のエステル結合を開裂するアンモニア処理以外の処理、例えば、所謂アルカリ蒸解処理、あるいは加圧熱水による蒸煮処理等に置き換えても、同様に酵素糖化の効率を向上することができる。但し、これらの工程においては多量の水を使用するため、処理後の植物バイオマスが多くの水を包含する。前述のように、本実施形態における結晶型転移工程においては、植物バイオマスが所定の割合を超える水分を含む場合には、セルロースI型結晶のIII型結晶への転移が阻害される傾向にあり、同工程の前に植物バイオマスの乾燥を行う必要がある。多量の水分を含む植物バイオマスの乾燥には多大なエネルギーを要することから、前記アンモニア処理以外の工程によりエステル結合開裂を行う方法は、経済合理性を損なう傾向にある。
<第2実施形態:糖の製造方法>
本発明の第2実施形態に係る糖の製造方法は、前記第1実施形態に係る酵素糖化用原料の製造方法により得られた酵素糖化用原料を酵素糖化する酵素糖化工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
以下、好ましい実施形態に沿って、本発明の糖の製造方法について詳細に説明する。
(酵素糖化工程)
本実施形態の糖の製造方法に係る酵素糖化工程は、前記酵素糖化用原料と酵素とを接触させることにより、バイオマスを構成するセルロース、及びヘミセルロースを加水分解して単糖類を得る工程である。
前記酵素糖化工程に用いられる酵素糖化の方法としては、酵素を用いる限りにおいて特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。硫酸等を用いる化学的な糖化方法を用いた場合には、過分解により単糖の収率が低下する傾向にあること、糖化に続く工程である発酵工程において阻害作用をもつ物質が生成し易い傾向にあること、及び硫酸等の環境負荷物質の排出が生じるなどの問題があるのに対して、酵素を用いる糖化方法においては、温和な条件を選択することが可能であり、前記の問題を生じ難い傾向にある。
前記酵素糖化工程において使用する酵素としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、セルラーゼ、セロビアーゼ(β−グルコシダーゼ)などが挙げられる。また、これら酵素を適当な担体又はマトリックスに固定化した固定化酵素を使用することもできる。
前記酵素糖化工程における酵素の使用量としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記酵素糖化用原料中の固形分乾燥質量1gに対して、0.001mg〜100mgが好ましく、0.01mg〜10mgがより好ましく、0.1mg〜1mgが更に好ましい。前記酵素の使用量が、前記酵素糖化用原料中の固形分乾燥質量1gに対して、0.001mg未満であると、酵素糖化が不十分となることがあり、100mgを超えると、糖化阻害が起こることがある。一方、前記酵素の使用量が前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
前記酵素糖化工程における温度としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10℃〜70℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましく、30℃〜50℃が更に好ましい。前記温度が、10℃より低い温度であると、酵素糖化が十分に進行しないことがあり、70℃を超えると、酵素が失活することがある。一方、前記温度が、前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
前記酵素糖化工程におけるpHとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、3.0〜8.0が好ましく、3.5〜7.0がより好ましく、4.0〜6.0が更に好ましい。前記pHが、3.0未満、又は8.0を超えると、酵素が失活することがある。一方、前記pHが、前記更に好ましい範囲内であると、酵素の使用量に対して得られる糖の量が多い点で有利である。
前記酵素糖化工程により、単糖としては、前記酵素糖化用原料に含まれるセルロースからはグルコースが得られる。また、前記酵素糖化用原料に含まれるヘミセルロースからはグルコース、ガラクトース、マンノースといった六炭糖及びキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成する。
(その他の工程)
上記の酵素糖化工程により得られる単糖を含む糖液は、そのまま後述する発酵工程に供してもよいが、例えば、糖液のpHを調整する工程、糖の濃度を調整する工程などを施すことにより、発酵により適した糖液としてもよい。
本実施形態の糖の製造方法により得られる糖は、後述するエタノールの製造方法に用いるだけでなく、その他の物質、例えば乳酸等の有機酸の製造の原料として用いることもできる。
<第3実施形態:エタノールの製造方法>
本発明の第3の実施形態に係るエタノールの製造方法は、前記第2実施形態に係る糖の製造方法により得られた糖を発酵する発酵工程(エタノール発酵工程)を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
以下、本実施形態に係るエタノールの製造方法について詳述する。
(発酵工程)
本実施形態のエタノールの製造方法に係る発酵工程は、前記本発明の糖の製造方法により得られた糖を含む糖液に、エタノール発酵微生物を添加し、エタノール発酵を行う工程である。
前記エタノール発酵微生物としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、酵母、ザイモモナス・モビリス等のザイモモナス属の細菌等が好ましく、酵母がより好ましい。
前記酵母としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、サッカロマイセス・セルビシエ等のサッカロマイセス属の酵母が好ましい。但し前述のように、前記植物バイオマスを構成するヘミセルロースからは、酵素糖化によりキシロース、アラビノースといった五炭糖が生成するが、サッカロマイセス属の天然酵母は五炭糖を資化してエタノールを産生する能力をもたない。このため、六炭糖だけでなくヘミセルロース由来の五炭糖も有効に利用してエタノールに変換するためには、五炭糖を資化してエタノールを産生する能力を有する酵母(ペントース資化酵母)を使用することも好ましく行われる。前記ペントース資化酵母としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ピキア・スティピティス、カンジダ・シハタエ等が好ましい。六炭糖及び五炭糖を効率的にエタノールに変換するためには、サッカロマイセス属の酵母と、前述のペントース資化酵母とを組み合わせて使用する方法も好ましく採用される。この場合、サッカロマイセス属の酵母と前述のペントース資化酵母を共存させて発酵を行なってもよいし、まずサッカロマイセス属の酵母により糖液中のグルコースを資化させ、その後前述のペントース資化酵母により五炭糖を資化させてもよい。
前記発酵工程に用いる酵母は、天然の酵母であってもよいし、遺伝子組換え酵母であってもよい。特に、六炭糖と五炭糖の両方の資化能を有する遺伝子組換え酵母を用いることにより、効率的にセルロース及びヘミセルロース由来の六炭糖及び五炭糖の両方をエタノールに変換することができる。
前記発酵工程における前記酵母の使用量、糖以外の添加物、発酵温度、pH、発酵時間等の条件としては特に制限はなく、公知の条件を適宜選択して用いることができるが、pHは4〜7、発酵温度は20℃〜37℃程度が好ましい。
また、耐熱性の酵母を用いて、通常よりも高い温度で発酵を行なうことで、冷却のための設備を必要とせず、また雑菌の繁殖を抑制して効率的に発酵を行なうこともできる。前記耐熱性の酵母としては例えば、クロイベロマイセス・マルキシアナス等のクロイベロマイセス属に属する耐熱性酵母が挙げられる。これらの耐熱性酵母を使用する場合は、発酵の温度は37℃以上50℃以下程度とすることができる。
前記発酵工程としては、前述の酵素糖化工程と発酵工程とを同時に行う、所謂並行複発酵法を採用してもよい。この並行複発酵法を採用することにより、前記酵素糖化工程と発酵工程とを単一の工程として実施することができ、簡略化された工程によってエタノールを製造することが可能となる。前記並行複発酵としては、前記本実施形態の酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料に、酵素糖化のための酵素、及び、酵素糖化により生成する糖をそのまま反応系内でエタノール発酵させるための微生物を添加し、酵素糖化及びエタノール発酵を行う。
(その他の工程)
本発明に係るエタノールの製造方法は、前記発酵工程において得られたエタノールを含む培地からエタノールを分離・精製する精製工程を更に備えることが好ましい。前記精製工程により、エタノールは発酵培地中に含まれる種々の物質から分離・精製され、また濃縮される。前記分離・精製の方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、まず発酵培地を、菌体等の固形分を遠心分離及び/又はろ過などにより固液分離し、エタノールを含む水溶液を回収し、その後、該水溶液を蒸留、膜分離などの方法によりエタノールを濃縮、精製する方法が好ましい。
本実施形態のエタノールの製造方法によれば、前記酵素糖化用原料を用いて得られた糖を用いることで、効率的にエタノールを製造することができる。前記エタノールの製造方法により得られたエタノールは、例えば、燃料用エタノール、工業用エタノールなどとして好適に利用可能である。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
[製造例1]
リグノセルロースを含有する植物バイオマスとしてエリアンサスを用いた。
収穫したエリアンサスを目開き3mmのスクリーンで粒度を制御しながらカッターミルを用いて粉砕し、エリアンサス粒子を得た。該粒子の平均粒子径はレーザー回折法(装置:レーザー回折粒子径測定装置LMS−2000e(セイシン企業社製))で測定したメジアン径(d50)として678μmであった。このエリアンサス粒子をバイオマス1とした。バイオマス1の含水率は、バイオマス1の全質量を基準として28質量%であった。
[製造例2]
前記製造例1で得たバイオマス1の一部を減圧乾燥器にて、40℃、5kPaAの減圧下に一昼夜乾燥し、バイオマス2を得た。バイオマス2の含水率は、バイオマス2の全質量を基準として0.5質量%であった。
[製造例3]
前記製造例2で得たバイオマス2の一部をポリプロピレン樹脂製容器に所定量取り、該容器を回転させながら、ここへ、吸水後の粒子の質量を基準として含水率が35質量%となる量の水を滴下し、更に該容器を5時間回転させて、バイオマスの含水率が35質量%であり、均一に水が吸収されたバイオマス3を得た。
[実施例1]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
内容積5.35Lの、撹拌装置を備えたステンレス鋼製オートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として200g充填し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。そして、オートクレーブ内をアンモニア処理温度(120℃)近くまで昇温した。別途、ステンレス鋼製オートクレーブを用いて、乾燥したアンモニアを処理温度(120℃)より高い温度(150℃)まで予め昇温した。前記2つのオートクレーブを導通し、バイオマス2が充填されたオートクレーブに、アンモニアを120℃において処理圧力1.2MPaA(アンモニアの分圧、全圧は大気圧分(0.1MPaA)の窒素ガスを加えて1.3MPaA)となるように導入し、その後前記条件にて撹拌下に2.2時間(処理時間)アンモニア処理を行った。その後、十分に冷却した槽へアンモニアを排出して脱圧した。更にオートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去し、その後オートクレーブを開放してバイオマスAを得た。なお、処理時にオートクレーブ内に充填されたアンモニアの量は、脱圧時に排出されるアンモニアの積算質量流量をコリオリ流量計により計測することにより求めた。また、文献によるアンモニアの相図と、前記処理時の温度・圧力条件及び前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件において、アンモニアは全て気相にあることを確認した。
バイオマスAの一部を採取して熱水によるヘミセルロースの抽出に供し、リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。すなわち、まず、バイオマスAの試料0.5gを、20mlの50mM−酢酸緩衝液(pH4.5)中に懸濁させ、100℃の熱水浴中で10分間加熱して抽出を行った。これを過し、ろ液10mlにヘミセルラーゼを含む市販酵素剤をタンパク量として約1mg添加し、37℃、200rpmにて24時間振とうし、抽出されたヘミセルロースの酵素分解を行った。得られた酵素分解液中のキシロースの濃度を、Shodex SUGAR SP0810(商品名)カラムを用いた高速液体クロマトグラフィー法により定量した。一方、別途所定量の原料エリアンサスを硫酸糖化法により糖化処理し、生成するキシロースの量を同様に定量した。前記抽出及び酵素糖化により得られたキシロース量を、硫酸糖化法により得られた原料エリアンサス中の全ヘミセルロース由来のキシロースの量で除すことにより、ヘミセルロースの抽出率を算出した。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、再びオートクレーブを密閉し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。更に、アンモニアガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。その後、ドライアイス/塩化カルシウム水溶液冷浴にオートクレーブを浸し、オートクレーブの内温を−10℃以下に保ち、アンモニア・ボンベの気相部からコリオリ質量流量計を介して107gのアンモニアをオートクレーブに充填した。オートクレーブ内を撹拌しながら冷浴を外し、外表面を30℃に制御したヒーターでオートクレーブを加温し、加温開始30分(処理時間30分)後に脱圧した。加温開始から脱圧するまでのオートクレーブ内の平均温度は約10℃であった。脱圧後、オートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去した後オートクレーブを開放し、酵素糖化用原料であるバイオマスBを得た。
得られたバイオマスBの100mgを、20MPaGの圧力にて加圧成型してXRD分析に供した。XRD分析は管球型X線発生装置RINT2200(商品名、リガク社製)を用い、ディフラクトメトリー法によって行った。電圧38kV、電流50mA、モノクロメーターで単色化したCuKα線(波長0.15418nm)を用い、操作範囲2θ=5〜30°、ステップ幅0.1°、積算時間20秒の条件にてステップスキャン法で測定した。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されず、バイオマスB中のセルロースの結晶型は全てIII型であることが確認された。
なお、未処理のバイオマス2及びエステル結合開裂工程により得られたバイオマスAについても同様にしてXRD分析を行い、いずれもセルロースI型結晶のみを有することを確認した。
[糖の製造(酵素糖化)]
酵素糖化用原料としてバイオマスBを用い、以下の操作により、酵素糖化反応を行った。
内容積1.5mLのマイクロチューブに、乾燥固形分として10mgとなるように精秤したバイオマスBの試料を取り、試料濃度1%(乾燥質量/体積)、酵素としてCelluclast@1.5L及びNovozyme@188(共に商品名、Novozyme社製)を各酵素濃度0.01%(質量/体積)、計0.02%(質量/体積)の酵素濃度、pH4.5(酢酸緩衝液)となるように酵素糖化反応液を調製した。これを37℃の恒温室にて、回転振とう機(15回転/分)を用いて24時間転倒振とうして酵素糖化反応を行った。反応後、遠心分離によって得られた上澄み液中のグルコース濃度を、グルコースCIIテストワコー(商品名、和光純薬社製)を用いて測定し、酵素糖化率の尺度としてグルコース収率を算出した。
なお、グルコース収率は下記式(5)で定義される。
グルコース収率(%)=[酵素糖化反応液中のグルコース量/(酵素糖化原料の乾燥質量×全グルコース化率/100)]×100 (5)
ここで、全グルコース化率(%)は(バイオマス原料を別途化学的に完全に加水分解したときに得られるグルコースの量/バイオマス原料の乾燥質量)×100によって求められるものであり、バイオマス原料基準のグルコースの理論収率に相当する。
以上得られた結果をまとめて表1に示す。
[エタノールの製造]
酵素糖化原料として[酵素糖化用原料の製造]において得たバイオマスBを用い、[糖の製造(酵素糖化)]におけるマイクロチューブを用いた酵素糖化に相当する条件(但し酵素糖化原料固形分濃度15g/100ml)で酵素糖化を行なって糖液を得た。得られた糖液中のグルコース濃度は4.5g/100ml、キシロース濃度は2.6g/100mlであった。
次に、容量50mlの三角フラスコ中にて、前記糖液15mlに、キシロース資化能を付与したサッカロマイセス酵母を光学密度OD600が20となるよう植菌し、30℃にて、140rpmで振とう培養して発酵を行なった。グルコースは発酵開始後4時間後に全て消費され、キシロースは48時間後に全て消費された。エタノール収率は66%であった。
[実施例2]
[酵素糖化用原料の製造]
バイオマス2に代えてバイオマス1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、エステル結合開裂工程、結晶型転移工程及び酵素糖化工程を実施した。エステル結合開裂工程により得られたバイオマスをバイオマスC、結晶型転移工程により得られたバイオマスをバイオマスDとする。
バイオマスCの一部を用いて、実施例1と同様にしてエステル結合のリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
また、バイオマスDについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピーク及び2θ=12°付近のピークの両方が検出され、処理後のバイオマス中にはセルロースI型結晶及びセルロースIII型結晶が共存していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスDを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。
以上得られた結果をまとめて表1に示す。
[実施例3]
[酵素糖化用原料の製造]
実施例1におけるエステル結合開裂工程と結晶型転移工程とを、逆の順序、すなわち先に結晶型転移工程、その後エステル結合開裂工程となるように行なった。
<結晶型転移工程>
バイオマスAに代えて、乾燥質量として200gのバイオマス2を用いた以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作によりアンモニア処理を行ってバイオマスEを得た。
実施例1におけるバイオマスBと同様に、バイオマスEの試料を採取し、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスE中のセルロースの結晶型は全てIII型に転移していることが確認された。
<エステル結合開裂工程>
バイオマス2に代えて、前記結晶型転移工程によって得られたバイオマスEを用いた以外は実施例1のエステル結合開列工程と同様の操作によりアンモニア処理を行って、酵素糖化原料であるバイオマスFを得た。
実施例1におけるバイオマスAと同様に、バイオマスFの試料を採取し、リグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスFを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。
以上得られた結果をまとめて表1に示す。
[実施例4]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として40g充填し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。その後、オートクレーブを20℃に保ち、アンモニアによる加圧、脱圧を数回繰り返し、大気圧分をアンモニアに置き換えた。その後更に、圧力が0.2MPaAとなるようにアンモニアを供給し、これを20℃に調温された室内で3週間保持した。その後、十分に冷却した槽へアンモニアを排出して脱圧した。
更にオートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去し、オートクレーブを開放し、バイオマスGを得た。なお、実施例1のエステル結合開裂工程における方法と同様の方法により、オートクレーブ内に充填されたアンモニアの量を測定した。また、文献によるアンモニアの相図と、前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件において、アンモニアは全て気相にあることを確認した。得られたバイオマスGの一部を用いて、実施例1と同様にしてエステル結合のリグニンとヘミセルロースとのを間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
<結晶型転移工程>
バイオマスAに代えて40gのバイオマスGを用いたこと、及び充填したアンモニアの量が43gであること以外は実施例1と同様にして結晶型転移工程を行い、酵素糖化用原料であるバイオマスHを得た。
得られたバイオマスHについて、実施例1と同様にしてXRDを行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスH中のセルロースの結晶型は全てIII型に転移していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスHを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表1に示す。
[実施例5]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、再びオートクレーブを密閉し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。更に、アンモニアガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。その後、ドライアイス/塩化カルシウム水溶液冷浴にオートクレーブを浸し、オートクレーブの内温を−30℃以下に保ち、アンモニア・ボンベの気相部からコリオリ質量流量計を介して85gのアンモニアをオートクレーブに充填した。オートクレーブ内を撹拌しながら冷浴による冷却を30分間継続した。この間のオートクレーブの内温は平均約−33℃であった。そして処理時間30分後に脱圧した。その後、オートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去した後オートクレーブを開放し、酵素糖化用原料であるバイオマスIを得た。
得られたバイオマスIについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスI中のセルロースの結晶型は全てIII型に転移していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスIを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表1に示す。
[実施例6]
<エステル結合開裂工程>
[酵素糖化用原料の製造]
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、オートクレーブに充填するアンモニアの量を87gとした以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作にて、結晶型転移工程を実施し、酵素糖化用原料であるバイオマスJを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約10℃であった。
また、得られたバイオマスJについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピーク及び2θ=12°付近のピークの両方が検出され、バイオマスJ中にはセルロースI型結晶及びセルロースIII型結晶が共存していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスJを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表2に示す。
[実施例7]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、オートクレーブに充填するアンモニアの量を67gとした以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作にて、結晶型転移工程を実施した。酵素糖化用原料であるバイオマスKを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約11℃であった。
得られたバイオマスKについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピーク及び2θ=12°付近のピークの両方が検出され、バイオマスK中にはセルロースI型結晶及びセルロースIII型結晶が共存していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスKを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表2に示す。
[実施例8]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、オートクレーブに充填するアンモニアの量を47gとした以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作にて、結晶型転移工程を実施した。酵素糖化用原料であるバイオマスLを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約11℃であった。
得られたバイオマスLについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピーク及び2θ=12°付近のピークの両方が検出され、バイオマスL中にはセルロースI型結晶及びセルロースIII型結晶が共存していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスLを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表2に示す。
[実施例9]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、オートクレーブに充填するアンモニアの量を37gとした以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作にて、結晶型転移工程を実施した。酵素糖化用原料であるバイオマスMを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約12℃であった。
得られたバイオマスMについて、実施例1と同様にしてXRDX線回折分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピーク及び2θ=12°付近のピークの両方が検出され、バイオマスM中にはセルロースI型結晶及びセルロースIII型結晶が共存していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスMを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表2に示す。
[実施例10]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
まず、実施例1と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスAを得た。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスAを前記オートクレーブ内に残し、オートクレーブに充填するアンモニアの量を237gとした以外は実施例1の結晶型転移工程と同様の操作にて、結晶型転移工程を実施した。酵素糖化用原料であるバイオマスNを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約10℃であった。
得られたバイオマスNについて、実施例1と同様にしてXRDX線回折分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスN中のセルロースの結晶型は全てIII型に転移していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスNを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表3に示す。
[実施例11]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
処理温度を180℃、アンモニア分圧を3MPaAとした以外は実施例1のエステル結合開裂工程と同様にしてエステル結合開裂工程を行い、バイオマスOを得た。なお、オートクレーブ内に充填されたアンモニアの量は、実施例1のエステル結合開裂工程と同様の方法により測定した。また、文献によるアンモニアの相図と、前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件において、アンモニアは全て気相にあることを確認した。
<結晶型転移工程>
前記エステル結合開裂工程の後、バイオマスOを前記オートクレーブ内に残し、実施例1の結晶型転移工程と同様にして結晶型転移工程を行ない、酵素糖化用原料であるバイオマスPを得た。なお、処理中のオートクレーブ内の平均温度は約10℃であった。
得られたバイオマスPについて、実施例1と同様にしてXRDX線回折分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスP中のセルロースの結晶型は全てIII型に転移していることが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスPを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表3に示す。
[比較例1]
[酵素糖化用原料の製造]
エステル結合開裂工程と結晶型転移工程とを単一の工程で実施した。
実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として200g充填し、窒素ガスによる加圧・脱圧、アンモニアガスによる加圧・脱圧を数回繰り返した。そして、オートクレーブ内をアンモニア処理温度(80℃)近くまで昇温した。別途、ステンレス鋼製オートクレーブを用いて、乾燥したアンモニアを処理温度(80℃)より高い温度(105℃)まで予め昇温した。前記2つのオートクレーブを導通し、バイオマスが充填されたオートクレーブに、アンモニアを80℃において処理圧力3.8MPaAとなるように導入し、その後前記条件にて撹拌下に2.5時間(処理時間)アンモニア処理を行った。その後、十分に冷却した槽へアンモニアを排出して脱圧した。更にオートクレーブに窒素ガスを流通させてバイオマス内に残留したアンモニアを除去し、その後オートクレーブを開放して酵素糖化用原料であるバイオマスQを得た。なお、実施例1のエステル結合開裂工程における方法と同様の方法により、オートクレーブ内に充填されたアンモニアの量を測定した。また、文献によるアンモニアの相図と、前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件においては、気液平衡関係が相図からずれて、乾燥バイオマス質量の40%に相当する量のアンモニアが液化していることが明らかとなった。
得られたバイオマスQの一部を用いて、実施例1と同様にしてリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
また、得られたバイオマスQの一部を用いて、実施例1と同様にしてX線回折分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスQ中のセルロースの結晶型はI型からIII型に転移したことが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスQを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表4に示す。
[エタノールの製造]
バイオマスBに代えて上記バイオマスQを用いたこと意外は実施例1の[エタノールの製造]と同様にして、酵素糖化及び発酵を行なった。酵素糖化によって得られた糖液中のグルコース濃度は4.5g/100ml、キシロース濃度は2.6g/100mlであった。また、発酵において、グルコースは発酵開始後4時間後に95%消費され、キシロースは150時間後に約70%が消費された。エタノール収率は56%であった。
[比較例2]
[酵素糖化用原料の製造]
実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として200g充填し、オートクレーブを密閉し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。更に、アンモニアガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。その後、ドライアイス/塩化カルシウム水溶液冷浴にオートクレーブを浸し、オートクレーブの内温を−10℃以下に保ち、アンンモニア・ボンベの気相部からコリオリ質量流量計を介して、237gのアンモニアをオートクレーブに充填した。オートクレーブ内を撹拌しながら、冷浴を外し、外表面を30℃に制御したヒーターでオートクレー加温し、加温開始30分(処理時間30分)後に脱圧した。加温開始から脱圧するまでのオートクレーブ内の平均温度は約8℃であった。脱圧後、オートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去した後オートクレーブを開放し、酵素糖化用原料であるバイオマスRを得た。
得られたバイオマスRの一部を用いて、実施例1と同様にしてリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
また、得られたバイオマスRの一部を用いて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近にピークが検出され、一方、2θ=12°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスR中のセルロースの結晶型はI型からIII型に転移したことが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスRを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表3に示す。
[比較例3]
[酵素糖化用原料の製造]
実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として200g充填し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。そして、オートクレーブ内をアンモニア処理温度(150℃)近くまで昇温した。別途、ステンレス鋼製オートクレーブを用いて、乾燥したアンモニアを処理温度(150℃)より高い温度(180℃)まで予め昇温した。前記2つのオートクレーブを導通し、バイオマスが充填されたオートクレーブに、アンモニアを150℃において処理圧力7MPaA(アンモニアの分圧、全圧は大気圧分(0.1MPaA)の窒素ガスを加えて7.1MPaA)となるように導入し、その後前記条件にて撹拌下に2.5時間(処理時間)アンモニア処理を行った。その後、十分に冷却した槽へアンモニアを排出して脱圧した。更にオートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去し、その後オートクレーブを開放して酵素糖化用原料であるバイオマスSを得た。なお、実施例1のエステル結合開裂工程における方法と同様の方法により、オートクレーブ内に充填されたアンモニアの量を測定した。また、文献によるアンモニアの相図と、前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件において、アンモニアは全て気相にあることを確認した。
得られたバイオマスSの一部一部を用いて、実施例1と同様にしてリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
また、得られたバイオマスSの一部について、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近にピークが検出され、一方、2θ=12°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスS中のセルロースの結晶型はI型のままであり、III型への転移は起こらなかったことが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスSを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表4に示す。
[比較例4]
[酵素糖化用原料の製造]
原料のバイオマス2に代えてバイオマス3を用いた以外は実施例1と同様にして、2段階のアンモニア処理(エステル結合開裂工程及び結晶型転移工程に相当)を行った。1段目の処理(エステル結合開裂工程)後のバイオマスをバイオマスT、2段目の処理(結晶型転移工程に相当)後のバイオマスUとする。
バイオマスTの一部を用いて、実施例1と同様にしてエステル結合のリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
また、バイオマスUについて、実施例1と同様にしてXRD分析を行った。得られたXRDパターンにおいては、2θ=16°付近のピークが検出され、2θ=12°付近のピークは検出されなかった。よって、2段目の処理において、セルロースI型結晶のIII型結晶への転移は進行していないことが確認された。
[糖の製造(酵素糖化)]
バイオマスBに代えてバイオマスUを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。
以上得られた結果をまとめて表3に示す。
[比較例5]
[酵素糖化用原料の製造]
<エステル結合開裂工程>
実施例1で用いたものと同様のオートクレーブに前記バイオマス2を乾燥質量として200g充填し、窒素ガスによる加圧、脱圧を数回繰り返した。そして、オートクレーブ内をアンモニア処理温度(200℃)近くまで昇温した。別途、ステンレス鋼製オートクレーブを用いて、乾燥したアンモニアを処理温度(200℃)より高い温度(230℃)まで予め昇温した。前記2つのオートクレーブを導通し、バイオマスが充填されたオートクレーブに、アンモニアを200℃において処理圧力2.5MPaA(アンモニアの分圧、全圧は大気圧分(0.1MPaA)の窒素ガスを加えて2.6MPaA)となるように導入し、その後前記条件にて撹拌下に2.5時間(処理時間)アンモニア処理を行い、その後十分に冷却した槽へアンモニアを排出した。更にオートクレーブに窒素ガスを流通させ、バイオマス内に残留したアンモニアを除去し、その後オートクレーブを開放してバイオマスVを得た。なお、実施例1のエステル結合開裂工程と同様の方法により、オートクレーブ内に充填されたアンモニアの量を測定した。また、文献によるアンモニアの相図と、前記計測されたアンモニアの充填量との対比から、前記条件において、アンモニアは全て気相にあることを確認した。
得られたバイオマスVの一部を用いて、実施例1と同様にしてリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の開裂の度合いを評価した。
<結晶型転移工程>
バイオマスAに代えてバイオマスVを用いたこと以外は実施例1と同様にして、結晶型転移工程を行い、バイオマスWを得た。
得られたバイオマスWの一部について、実施例1と同様にしてX線回折分析を行った。得られたXRDスペクトルにおいては、2θ=12°付近にピークが検出され、一方、2θ=16°付近にはピークが検出されなかった。このことから、バイオマスW中のセルロースはIII型結晶に転移していることが確認された。
<酵素糖化工程>
バイオマスBに代えてバイオマスWを用いたこと以外は実施例1と同様にして、酵素糖化反応を行い、グルコース収率を算出した。得られた結果をまとめて表4に示す。
Figure 2013143918
Figure 2013143918
Figure 2013143918
Figure 2013143918
以上の結果から、本願発明に依れば、アンモニアの使用量を低減しつつ、酵素糖化効率に優れる酵素糖化用原料を製造することが可能であり、また、得られた酵素糖化用原料を用いて酵素糖化を行うことにより、効率的に糖を製造することが可能であり、更に得られた糖を用いて発酵を行うことにより、効率的にエタノールを製造することができることが明らかとなった。

Claims (10)

  1. リグノセルロースを含有する植物バイオマスをアンモニアにより処理して酵素糖化用原料を得る酵素糖化用原料の製造方法であって、
    リグノセルロースを含有する植物バイオマスを液相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するセルロースの少なくとも一部の結晶型をI型からIII型に転移させる結晶型転移工程と、
    リグノセルロースを含有する植物バイオマスを0〜190℃の温度下で気相を含むアンモニアにより処理し、リグノセルロースを構成するリグニンとヘミセルロースとの間のエステル結合の少なくとも一部を開裂させるエステル結合開裂工程と、
    を備える酵素糖化用原料の製造方法。
  2. 前記結晶型転移工程が下記(a)〜(c):
    (a)液相のアンモニアの量が下記式(1):
    0.1≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (1)
    を満たす。
    (b)植物バイオマス及びアンモニア中に含まれる水分量が下記式(2):
    水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.30 (2)
    を満たす。
    (c)温度が−40〜40℃である。
    の条件を満たし、
    前記エステル結合開裂工程が下記(d)〜(e):
    (d)全アンモニアの植物バイオマスに対する量が前記結晶型転移工程における全アンモニアの植物バイオマスに対する量以下である。
    (e)温度が前記結晶型転移工程における温度よりも高い及び/又は圧力が前記結晶型転移工程における圧力よりも低い。
    の条件を満たす、請求項1に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  3. 前記結晶型転移工程における液相のアンモニアの量が下記式(3):
    0.2≦液相のアンモニアの質量/植物バイオマスの乾燥質量≦1.1 (3)
    を満たす、請求項1又は2に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  4. 前記結晶型転移工程における前記水分量が下記式(4):
    水分の質量/(植物バイオマスの乾燥質量+水分の質量)≦0.15 (4)
    を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  5. 前記エステル結合開裂工程における温度が60〜190℃、アンモニアの分圧が0.5〜4MPaAである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  6. 前記エステル結合開裂工程におけるアンモニアが気相のアンモニアである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  7. 前記エステル結合開裂工程における温度が0〜60℃、アンモニアの分圧が0.01〜0.2MPaAである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  8. 前記エステル結合開裂工程を行い、次に前記結晶型転移工程を行う、請求項1〜7のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載の酵素糖化用原料の製造方法によって得られた酵素糖化用原料を酵素により糖化する工程を備える、糖の製造方法。
  10. 請求項9に記載の糖の製造方法によって得られた糖を発酵させる工程を備える、エタノールの製造方法。
JP2012005444A 2012-01-13 2012-01-13 酵素糖化用原料の製造方法、糖の製造方法、並びにエタノールの製造方法 Pending JP2013143918A (ja)

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