JP2013139076A - 高速重切削においてすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高速重切削においてすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

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Hidemitsu Takaoka
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尚樹 脇谷
Hisao Suzuki
久男 鈴木
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Abstract

【課題】鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工において、硬質被覆層が、すぐれた潤滑性、耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】 工具基体の少なくとも最表面に、0.2〜5μmの平均層厚を有し、かつ、平滑性の高い酸化アルミニウム層を備え、該酸化アルミニウム層は、素地及び素地中に分散した球状組織からなり、上記素地は酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相から構成され、また、上記球状組織は、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなり、酸化アルミニウム層の縦断面に含有される球状組織の占める面積の割合は20〜60面積%、また、近似円の半径は、0.02〜0.5μmである表面被覆切削工具。
【選択図】 図1

Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた表面平滑性、潤滑性、切屑排出性、耐溶着性を備えることから、鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工に用いた場合でも、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具に関する。
従来から、工具基体表面に、周期律表の4a、5a、6a族から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物等からなる硬質皮膜を被覆形成することにより、切削工具の耐摩耗性向上を図ることが知られている。
そして、硬質皮膜のうちでも、α型酸化アルミニウム層は、熱安定性に優れ、反応性が低く、かつ、高硬度であるという点から、上記周期律表の4a、5a、6a族から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物、窒化物、炭窒化物等からなる硬質皮膜の最表面層として、α型酸化アルミニウム層が被覆形成されることが多い。
酸化アルミニウム層の被覆形成方法としては、通常は、化学蒸着(CVD)法が採用されているが、その他に、物理蒸着(PVD)法、ゾル−ゲル法によって酸化アルミニウム層を形成することも知られている。
例えば、特許文献1に示すように、工具基体、硬質皮膜の特性の劣化・変形を招かないために、低温条件下(1000℃以下)でのα型アルミナ層の形成方法として、工具基体表面に、Alと、4a族、5a族、6a族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、炭窒酸化物からなる硬質皮膜を物理蒸着(PVD)法で形成した後、該硬質皮膜を酸化することによって酸化物含有層を形成し、該酸化物含有層上に物理蒸着(PVD)することにより、最表面層としての耐摩耗性および耐熱性に優れたα型結晶構造を主体とするアルミナ層を蒸着形成することが提案されている。
また、特許文献2に示されるように、物理蒸着(PVD)法により硬質被覆層を蒸着形成した表面被覆切削工具において、第1の層を(Ti、Al)N層で構成し、また、第2の層を酸化アルミニウム層(好ましくは、γ型アルミナ層)で構成することが提案されている。
さらに、特許文献3に示すように、機械特性、耐久性がある酸化アルミニウム被覆構造体の製造方法として、母材上に、結晶構造がアモルファス構造、又はγ型のアルミナ、又はそれらの混合物からなる第1のアルミナ層をゾル−ゲル法で被覆した後、スパッタリングにより、γ型を主体とする第2のアルミナ層を被覆形成することが提案されている。
特開2004−124246号公報 特開2007−75990号公報 特開2006−205558号公報
硬質被覆層として酸化アルミニウム層をCVD法により被覆形成した表面被覆切削工具においては、鋳鉄、鋼等の切削加工に際し、被覆工具のすくい面での耐摩耗性向上が挙げられるが、これは、特に、形成されるα型アルミナの熱安定性、非反応性が高いことによるものである。
上記特許文献1においては、物理蒸着(PVD)法による低温条件下でのα型アルミナ層の形成が提案されているが、酸化アルミニウム層の蒸着形成にあたっては、まず、硬質皮膜を酸化させてその表面に酸化物含有層を形成する必要があるが、酸化物含有層と酸化アルミニウム層との密着性が十分でないこと、また、酸化アルミニウムとして、α型アルミナばかりでなくγ型アルミナも存在するために十分な耐熱性が得られず、その結果、長期の使用にわたって満足できる切削性能を発揮し得ないという問題があった。
また、上記特許文献2,3においては、形成される酸化アルミニウムはγアルミナであるため、高温での安定性に乏しく、また、高速切削加工においては、満足できる切削性能を発揮し得ないという問題があった。
そこで、本発明者等は、ゾル−ゲル法により、工具基体表面に耐摩耗性に優れた酸化アルミニウム層を形成すべく鋭意検討したところ、ゾル−ゲル法で形成した素地を構成する酸化アルミニウム中に、アモルファス相および、針状結晶相、板状結晶相の集合体からなる耐摩耗性に優れた球状組織を分散分布させることにより、高熱を発生するとともに、切れ刃に高負荷が作用する高速重切削加工に供した場合でも、耐摩耗性にすぐれた表面被覆切削工具を得られることを見出したのである。
即ち、アルミナゾルの調製に際し、低温熟成処理として、通常よりも低温下での攪拌と長時間の保持を行うことで、加水分解及び重縮合の反応速度を抑制し、Al−Oの結合からなる酸化アルミニウム前駆体を密に形成させた場合には、コランダム型構造に近い八面体AlOをより多く形成することができるため、このアルミナゾルを工具基体の表面層として塗布し、乾燥・焼成すると、平滑性が高く、潤滑性、切屑に対する耐溶着性に優れる酸化アルミニウムの素地に、アモルファス相および、針状結晶相、板状結晶相の集合体からなる耐摩耗性に優れた球状組織が分散分布した酸化アルミニウム層からなる硬質皮膜の表面層を形成し得ることを見出したのである。
なお、表面層の酸化アルミニウム層と接する硬質皮膜を、該硬質皮膜中の金属成分に占めるAlの含有割合が40原子%以上である窒化物皮膜として形成した場合には、表面層の酸化アルミニウム層との密着強度が高くなるため、切削加工時の衝撃等による酸化アルミニウム層の剥離、欠損等の発生抑制という観点から好ましい。
つまり、本発明の表面被覆切削工具は、硬質被覆層の表面層が酸化アルミニウム層で構成されるとともに、該酸化アルミニウム層が、平滑性、潤滑性、耐溶着性に優れる酸化アルミニウムの素地と、該素地中に分散分布する耐摩耗性に優れた球状組織で構成されていることから、かかる硬質被覆層を備えた表面被覆切削工具は、鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工に用いた場合でも、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することを見出したのである。
この発明は、上記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
(a)上記硬質被覆層の表面層として、0.2〜5μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を備え、
(b)上記酸化アルミニウム層は、素地及び素地中に分散した球状組織からなり、
(c)上記素地は酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相から構成され、また、上記球状組織は、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 上記酸化アルミニウム層中に占める球状組織の面積割合が20〜60面積%であることを特徴とする前記(1)に記載の表面被覆切削工具。
(3) 上記球状組織の近似円の半径は、0.02〜0.5μmであることを特徴とする前記(2)に記載の表面被覆切削工具。
(4) 炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
上記工具基体の表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの平均層厚を有する基体表面硬化層が形成され、該基体表面硬化層に含まれる結合相金属としてのCoの平均含有量が、2.0質量%未満であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。
(5) 炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
上記工具基体の表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの平均層厚を有する基体表面硬化層が形成され、該基体表面硬化層に含まれる結合相金属としてのCo及びNiの合計平均含有量が、2.0質量%未満であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれかに記載の表面被覆切削工具。」
を特徴とするものである。
以下、本発明について、詳細に説明する。
この発明の表面被覆切削工具は、硬質被覆層の表面層として、0.2〜5.0μmのゾル−ゲル法により成膜した酸化アルミニウム層を備えるが、酸化アルミニウム層の層厚が0.2μm未満であると、後記する球状組織の生成数が少ないため、十分な耐摩耗性を発揮することができず、一方、層厚が5.0μmを超えると、層の剥離が生じやすくなるため、酸化アルミニウム層の層厚は0.2〜5.0μmと定めた。
なお、上記酸化アルミニウム層は、工具基体に直接成膜することで、その性能を発揮することは可能であるが、炭窒化チタンを含む炭化タングステン基超硬合金を基体とする場合は窒素雰囲気中での焼成により、工具基体表面付近に、Ti、Ta、Nb、Zrのうち、少なくとも1種の耐摩耗性の高い炭窒化物を多く含有させ、基体表面硬化層を形成させるとともに、酸化アルミニウム層と工具基体との密着強度を向上させ、工具寿命を延長することが可能となる。なお、該基体表面硬化層形成後の超硬合金基体の硬さはビッカース硬さ(Hv)で2200以上、2800以下であることが好ましい。その際、炭窒化物を多く含有させることで基体表面付近におけるCoは相対的に減ることとなり、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの断面観察を行い、分析視野領域1×1μmの範囲にて波長分散型X線分光法による定量分析により、結合相金属としてのCoの含有量を検出した場合に、Coの含有量を2.0質量%未満にすれば、基体の表面硬化の要因となる炭窒化物が十分に形成され、耐摩耗性がより向上する。
基体表面硬化層の平均層厚は0.5μm以下であると耐摩耗性が十分発揮できないまま比較的すぐに磨滅してしまい、3.0μm以上であるとチッピングしやすくなる。
また、炭窒化チタン基サーメットを基体とする場合には、焼結工程において昇温及び最高温度で保持する際の雰囲気を所定の窒素雰囲気とし、保持の途中もしくは降温する際に減圧することにより、全焼結工程を一定圧力の窒素雰囲気中で実施した場合よりも表面を硬化させることができる。これは、最高温度で保持するまでの工程を一定の窒素圧力下で実施すると、基体内部に均一に硬さの高い炭窒化物が分散形成されるが、これを昇温、または保持の途中までは比較的高い窒素圧力下で処理し、保持の途中もしくは降温時から、より減圧された窒素雰囲気にして処理すると、基体のごく表面のみ脱窒されることにより、NiやCo金属結合相へのTiやNbなどの溶解及び内部から基体表面への拡散が活発となり、TiやNbなどの炭窒化物の形成が表面にて促進され、基体表面硬化層が形成されるためである。なお、該基体表面硬化層形成後のサーメット基体の硬さはビッカース硬さ(Hv)で2000以上、2600以下であることが好ましい。また、その際は上記超硬基体と同様に、基体表面付近におけるNi及びCoは相対的に減ることとなり、結合相金属としてのNi及びCoの含有量を2.0質量%未満にすれば、基体の表面硬化の要因となる炭窒化物が十分に形成され、耐摩耗性がより向上する。
基体表面硬化層の平均層厚は前記超硬合金基体同様0.5μm以下であると耐摩耗性が十分発揮できないまま比較的すぐに磨滅してしまい、3.0μm以上であるとチッピングしやすくなる。
また、この発明の表面被覆切削工具では、工具基体の表面に直接上記酸化アルミニウム層を形成せずに、当業者において既に知られている硬質皮膜、即ち、周期律表の4a、5a、6a族およびSiから選ばれる少なくとも1種以上の元素を含有する窒化物、もしくは酸化物からなる少なくとも1層以上の硬質皮膜を物理蒸着(PVD)法、化学蒸着(CVD)法、またはゾル−ゲル法により形成した後、該硬質皮膜の表面に上記酸化アルミニウム層を被覆形成してもよい。
なお、上記物理蒸着(PVD)法による硬質皮膜の形成に際しては、酸化アルミニウム層と接する硬質皮膜については、密着性を高めるという観点から、該硬質皮膜中にAlを含有しており、該硬質皮膜の金属成分に占めるAlの含有割合は40原子%以上である窒化物皮膜(例えば、TiAlN膜、CrAlN膜等)として形成することが望ましい。
これは、硬質皮膜中の金属成分に占めるAlの含有割合が40原子%以上の窒化物皮膜であると、窒化物皮膜と酸化アルミニウム皮膜との界面にアルミニウム濃度の高い酸化物を形成し、この酸化物が窒化物皮膜と酸化アルミニウム皮膜を強固に接着する作用を有するようになるため、という理由による。
この発明の表面被覆切削工具の表面層を構成する酸化アルミニウム層は、後記するゾル−ゲル法により成膜することにより、その素地は酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相から構成され、また、該素地中には、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなる球状組織が形成される。
上記球状組織は、酸化アルミニウム層を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した場合に、図1、図2に示すように、半径0.02〜0.5μmの球状集合体組織として観察され、また、該球状組織について、透過型電子顕微鏡(TEM)でさらに観察すると、アモルファス相および、針状結晶相、板状結晶相の集合体組織として形成されていることがわかる。
さらに、該球状組織が酸化アルミニウム層中に占める面積割合を、例えば、視野領域5×7μmの範囲で縦断面SEM観察により求めると、20〜60面積%を占めることが分かる。
なお、図2によれば、球状組織と素地の酸化アルミニウムとの界面には、球状組織を取り囲むように凹部(図2中、白色のリング状部分)が形成されていることが観察される。
球状組織はその形状はもとより、各相が様々な方向に並んでいる複合組織であるために等方的に強く、その応力分散効果により、高負荷のかかる重切削においても安定した耐摩耗性に寄与する。酸化アルミニウム層中に占める上記球状組織の面積割合が、60面積%を超えると、球状組織を固定している素地の割合が少なくなるため、酸化アルミニウム層に脆化傾向があらわれるとともに、球状組織を取り囲む凹部(図2参照)の割合が大きくなり、切削加工時に層に不均一な負荷が作用するために破壊を生じる恐れがある。一方、面積割合が20面積%未満である場合には、耐摩耗性向上に寄与する球状組織が少ないため、酸化アルミニウム層の耐摩耗性が低下する。
したがって、本発明では、酸化アルミニウム層中に占める球状組織の面積割合を20〜60面積%と定めた。
上記球状組織の半径を該球状組織の面積と等しい面積を有する円の半径として求めた場合、半径0.02μm未満では、酸化アルミニウム層における耐摩耗性向上効果が少なく、一方、半径が0.5μmを超えると、粗大組織となるため、クラックの起点となり易く耐チッピング性の低下を招くこととなる。
したがって、上記球状組織のサイズは、半径0.02〜0.5μmと定めた。
本発明の表面被覆切削工具の表面層を構成する酸化アルミニウム層は、以下に示すゾル−ゲル法によって形成することができる。
アルミナゾルの調製:
まず、アルミニウムのアルコキシド(例えば、アルミニウムセカンダリブトキシド、アルミニウムプロポキシド)にアルコール(例えば、エタノール、1−ブタノール)を添加し、さらに、酸(例えば、塩酸、硝酸)を添加(同時に、平均粒径10〜300nmのαアルミナ粒子を添加してもよい)した後、15〜30℃以下の温度範囲にて攪拌し、かつ、例えば、12時間以上の熟成処理を行うことによってアルミナゾルを形成する。
なお、アルコール添加に際し、酸化アルミニウム層形成時における結晶核生成促進による低温成膜及び結晶性向上のために、平均粒径10〜300nmのαアルミナ粒子をあらかじめ含有させておいたアルコールを添加することが均一なゾルを作製する点から好ましい。また、それは、コーティングした際にαアルミナ粒子が結晶成長の起点となる核となり、それを中心として均一径の球状集合組織を分散性良く酸化アルミニウム層中に形成させる効果があるためであるが、αアルミナ粒子を含有するアルコールを添加する場合、αアルミナ粒子の平均粒径が10nm未満であると、結晶成長の起点となりうる臨界核サイズに達しないため、αアルミナ粒子周囲のアルミナゾルからの結晶成長が起きず、素地から孤立してしまい、焼成後は周囲の結晶粒との結合力が弱い箇所となりやすい。一方、平均粒径が300nmを超えると、αアルミナ粒子を起点とする結晶核が過度に粗大粒子として成長してしまい、膜硬度の低下、膜中欠陥を誘発するため、添加するαアルミナ粒子の平均粒径は10〜300nmとする。
また、アルコール中のαアルミナ粒子含有量は、アルミニウムのアルコキシドに対して0.5質量%未満であると、結晶核を一定密度以上で膜中に均一分布させるために必要な核生成数を満足できず、膜中の結晶性が場所によって不均一になってしまうため、切削の際に異常摩耗を誘発させやすい。アルミニウムのアルコキシドに対して5質量%を超えるとアルミナゾル中においてαアルミナ粒子の凝集が起きやすく、酸化アルミニウム層形成時に該凝集部が膜中の粗大粒子として形成し、膜中欠陥を誘発するという理由からαアルミナ粒子の添加量はアルミニウムのアルコキシドに対して0.5〜5質量%の範囲とすることが望ましい。
また、添加する酸の濃度は、0.01〜4.0Nが望ましく、アルコールに対する酸の添加量は、0.5〜5倍(容量)が望ましい。
通常行われるアルミナゾルの調製においては、40〜80℃での攪拌と、その攪拌温度で数時間程度の熟成処理が行われるが、この発明においては、15〜30℃の低温度範囲における攪拌を、例えば、12時間以上という長時間をかけた低温熟成処理を行う。
ここで、攪拌及び保持時の温度が30℃を超えると加水分解及び重縮合反応が急速に進んでしまうため、前駆体が密に形成されず、後工程の焼成工程でαアルミナが形成されなくなることから、攪拌及び時の温度の上限を30℃とし、一方、攪拌及び保持時の温度が15℃未満では、密に構築されたAl−O結合部がアルミナゾル中にて多数かつ均質に形成されるものの、本発明の大きさを有する球状組織を形成するためには密なAl−Oの結合部がアルミナゾル中に少数かつ局所的に形成された方が良いために、攪拌及び保持時の温度を加水分解、縮重合反応が局所的に進みやすい、15〜30℃の低温温度範囲とした。
なお、熟成時間を12時間以上という長時間にしたのは、低温で徐々に加水分解を促し、酸化アルミニウム前駆体を密に生成させるという理由による。
乾燥・焼成:
上記で調製したアルミナゾルを、工具基体の表面へ直接、あるいは、工具基体表面に物理蒸着(PVD)法で形成した硬質皮膜の表面へ塗布し、それに続き100〜400℃、より好ましくは250〜350℃での乾燥処理を1回以上繰り返し行い、次いで、750〜1000℃の温度範囲で焼成処理を行って酸化アルミニウム層を被覆形成する。
上記乾燥処理によってアルミナの乾燥ゲルが形成され、次いで行う焼成処理によって、硬質皮膜表面に、酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相を素地とする酸化アルミニウム層が形成され、同時に、素地中には、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなる球状組織が素地中に分散分布して形成される。
上記酸化アルミニウム層の膜厚は、アルミナゾルの塗布厚さおよび塗布回数に依存するが、被覆形成された上記酸化アルミニウム層の膜厚が0.2μm未満では、長期の使用にわたって表面被覆切削工具としてすぐれた耐摩耗性を発揮することができず、一方、膜厚が5.0μmを越えると酸化アルミニウム層が剥離を生じやすくなることから、上記酸化アルミニウム層の膜厚は0.2〜5.0μmとする。
また、乾燥処理の温度範囲を100〜400℃、より好ましくは250〜350℃、焼成処理の温度範囲を750〜1000℃と定めたのは、それぞれ、乾燥温度については、100℃未満では十分な乾燥が行えず、400℃を超えるとゲルの体積収縮が急激に進行してクラック等を発生し、皮膜が剥離等を生じやすくなるためであり、焼成温度については、750℃未満では重切削に十分な結晶性を有する酸化アルミニウム層が形成されないため耐摩耗性が十分でなく、一方、1000℃を越える温度で焼成した場合、酸化アルミニウム層と下地との熱膨張係数差に起因するクラックが形成されるため、また、超硬合金やサーメット基体等の酸化が生じ、低温成膜の有利性が見られなくなるためという理由による。
この発明の表面被覆切削工具によれば、工具基体の表面に、ゾル−ゲル法によって成膜した酸化アルミニウムを被覆形成するものであるが、形成された上記酸化アルミニウム層は、すぐれた表面平滑性、潤滑性、耐摩耗性を備えることから、これを、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に高負荷が作用する鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工に用いた場合でも、チッピング、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
本発明工具2について、その酸化アルミニウム層の縦断面をSEMで観察した組織写真を示す。 本発明工具2について、その酸化アルミニウム層中に分散分布する球状組織の表面SEM写真を示す。
つぎに、この発明を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、平均粒径0.8μmの微粒WC粉末、平均粒径2〜3μmの中粒WC粉末といずれも1〜3μmの平均粒径を有するTiCN粉末、ZrC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示す所定の配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1400℃の温度にて1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.05mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120408に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A,B,a,b,C1,C2,C3,C4,C5(工具基体A,B,a,b,C1,C2,C3,C4,C5という)を製造した。
但し、1400℃にて1時間保持後1320℃までの冷却を、超硬基体C2については、3.3kPaの窒素雰囲気中にて40分間行い、超硬基体C3については、1kPaの窒素雰囲気中にて40分間、超硬基体C4については、2kPaの窒素雰囲気中にて10分間、超硬基体C5については、3.3kPaの窒素雰囲気中にて120分間かけて冷却することで基体表面を硬化処理した。
ついで、上記工具基体A〜C5に対して、下層を形成した。
なお、下層の形成にあたり、上記工具基体a及びbについては、化学蒸着装置に装入し、表2に示す成膜条件を用いて、粒状結晶組織を有するTiN層、TiCN層、TiCO層、TiCNO層、縦長成長結晶組織のTiCN層(以下、l−TiCNで示す)からなるTi化合物層を表4に示す皮膜構成にて下地層を予め形成した。一方、上記工具基体Aについては、物理蒸着装置の一種であるアークイオンプレーティング装置に装入し、表4に示す膜厚のTi0.5Al0.5N層からなる下地層を予め形成した。
また、上記工具基体Bについては、同じくアークイオンプレーティング装置に装入し、表4に示す膜厚のAl0.7Cr0.3N層からなる下地層を予め形成した。
一方、上記工具基体C1,C2,C3,C4,C5については、下地層の形成を特に行わなかった。
一方、硬質被覆層の表面層としての酸化アルミニウム層をゾル−ゲル法で被覆形成するためのアルミナゾルの調製を、次のように行った。
(イ)まず、反応原料における各成分の溶液組成はモル比で、
(アルミニウムセカンダリブトキシド):(水):(エタノール):(塩酸)
=1:(40〜60):20:0.8
になるよう添加した後、表3に示す条件で恒温槽中で攪拌し・保持することで、アルミナゾルを調製した。
(ロ)ついで、上記工具基体A〜Iの下層表面に上記アルミナゾルを塗布した。
(ハ)ついで、上記浸漬塗布したアルミナゾルを、表3に示す条件で大気中で乾燥処理を行い、大気中800℃で1時間の焼成処理を行うことにより、本発明酸化アルミニウム層(即ち、酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相からなる素地中に、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなる球状組織が分散分布した酸化アルミニウム層)を表面に被覆形成し、表4に示す本発明の被覆工具1〜12(本発明工具1〜12という)を製造した。
上記本発明工具1〜12について、酸化アルミニウム層の縦断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、その素地は、酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相からなり、一方、素地中に分散分布する球状組織は、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体から構成されていることが確認された。酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相の確認には透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、制限視野電子回折法によりその素地と球状組織をそれぞれ解析したところ、どちらも明瞭な電子線回折パターンとハローパターンが得られた。
図1に、一例として、本発明工具1の酸化アルミニウム層の縦断面SEM写真を、また、図2に、同じく本発明工具1について、その酸化アルミニウム素地中に分散分布する球状組織の表面SEM写真を示す。図2によれば、球状組織が、アモルファス相および、針状結晶相、板状結晶相の集合体から構成されていることが確認される。
上記本発明工具1〜12について、酸化アルミニウム層の縦断面に占める球状組織の面積割合および球状組織の平均半径を走査型電子顕微鏡により5万倍の視野で観察し、その結果を平面と仮定して球状組織の面積割合を、また、該球状組織の面積を円の面積として算出した場合の近似円の半径を5点測定し、その平均値を平均サイズとして、それぞれ測定した。
また、同時に酸化アルミニウム層の平均層厚を走査型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表4に、測定結果を示す。
さらに、上記本発明工具1〜12のうち、下地層を設けず超硬基板に直接酸化アルミニウム層を成膜した工具については、超硬基体表面のCoの含有量を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた波長分散型X線分光法により超硬基体の縦断面観察視野において基板表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの範囲内における1×1μmの面分析にて5視野を定量分析し、その平均値を採用した。
表4に、表面硬化層層厚、及び表面硬化層中の結合相金属量を示す。
比較例1
比較のため、以下の製造方法で表面被覆切削工具を製造した。
(イ)前記実施例1と同様に反応原料における各成分の溶液組成はモル比で
(アルミニウムセカンダリブトキシド):(水):(エタノール):(塩酸)
=1:(40〜60):20:0.8
になるよう添加した。
(ロ)次いで、実施例1とは異なる、表3に示す恒温槽温度にて保持したまま、12時間攪拌を継続し、さらに、24時間熟成するという処理を行うことによってアルミナゾルを調製した。
(ハ)次いで、前記化学蒸着法によるTi化合物層及び物理蒸着法によるTiAlN層、AlCrN層をそれぞれ形成した上記超硬基体A〜Dおよび特別な表面処理を施していない超硬基体E〜Iの表面に、上記アルミナゾルを塗布した。
(ニ)ついで、上記塗布したアルミナゾルを、表3に示す条件で大気中で乾燥処理を行い、さらに塗布と乾燥を所定層厚になるまで繰り返した後、大気中800℃で1時間の焼成処理を行うことにより、表4に示す比較例の被覆工具1〜9(比較例工具1〜9という)を製造した。
比較例工具1〜9についても、酸化アルミニウム層を走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、球状組織は膜中に分散していないことが確認された。
つぎに、上記本発明工具1〜12および比較例工具1〜9について、次の条件でダクタイル鋳鉄の高速重切削加工試験を行った。
被削材: JIS・FCD600の丸棒、
切削速度: 380/min、
切り込み: 2.0 mm、
送り量: 0.3mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件でのダクタイル鋳鉄の高速高切り込み切削試験(通常の切削速度および切り込み量は、それぞれ、200m/min、1.0mm)後の、それぞれの工具の摩耗状態について観察を行い、逃げ面摩耗量の測定を行った。
これらの結果を表5に示す。
(a) 原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これらを表6に示す所定の配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体D,E,d,e,F1,F2,F3,F4,F5(工具基体D,E,d,e,F1,F2,F3,F4,F5という)を製造した。但し、工具基体F2については1.3kPaの窒素雰囲気中、昇温速度を2℃/minとし、室温より1540℃まで昇温させ30分保持した後、13Paの真空とし、さらに、1540℃にて30分保持後降温させて表面硬化させた。工具基体F3については、常に13Paの真空中にて昇温および1540℃にて60分保持、工具基体F4については1.3kPaの窒素雰囲気中で室温より1540℃まで昇温させ30分保持した後、13Paの真空とし、さらに、1540℃にて5分保持、工具基体F5については1.3kPaの窒素雰囲気中で室温より1540℃まで昇温させ30分保持した後、13Paの真空とし、さらに、1540℃にて90分保持後降温させて表面硬化させた。
(b) ついで、上記工具基体D〜F5に対して、下層を形成した。
なお、下層の形成にあたり、上記工具基体d及びeについては、化学蒸着装置に装入し、表2に示す成膜条件を用いて、表8のTi化合物からなる皮膜構成にて下地層を予め形成した。一方、上記工具基体Dについては、物理蒸着装置の一種であるアークイオンプレーティング装置に装入し、表8に示す膜厚のTi0.5Al0.5N層からなる下地層を予め形成した。
また、上記工具基体Eについては、同じくアークイオンプレーティング装置に装入し、表8に示す膜厚のAl0.7Cr0.3N層からなる下地層を予め形成した。
一方、上記工具基体F1,F2,F3,F4,F5については、下地層の形成を特に行わなかった。
ついで、下地層を形成した上記工具基体D,E,d,eおよび、下地層を形成していない上記工具基体N,O,P,Q,Rのいずれに対しても、実施例1と同様に表7の調製条件及び乾燥条件におけるゾル−ゲル法により、所定目標層厚になるまで酸化アルミニウム層を成膜した。
ついで、大気中800℃で1時間の焼成処理を行うことにより、表8に示す本発明の被覆工具13〜24(本発明工具13〜24という)を製造した。
上記本発明工具13〜24について、酸化アルミニウム層の縦断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、その素地は、酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相からなり、一方、素地中に分散分布する球状組織は、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体から構成されていることが確認された。
上記本発明工具13〜24について、酸化アルミニウム層の縦断面に占める球状組織の面積割合および球状組織の平均半径を走査型電子顕微鏡により5万倍の視野で観察し、その結果を平面と仮定して球状組織の面積割合を、また、該球状組織の面積を円の面積として算出した場合の近似円の半径を5点測定し、その平均値を平均サイズとして、それぞれ測定した。
表8に、測定結果を示す。
比較例2
比較のため、以下の製造方法で被覆工具を製造した。
前記工具基体D,E,d,e,を用いて、実施例2とは異なる、表7に示す恒温槽温度にて保持したまま、12時間攪拌を継続し、さらに、24時間熟成するという処理を行うことによってアルミナゾルを用いて、表8に示す所定目標層厚になるまで酸化アルミニウム層を成膜し、ついで、大気中800℃で1時間の焼成処理を行うことにより、表8に示す比較例の被覆工具10〜18(比較例工具10〜18という)を製造した。
比較例工具10〜18について、酸化アルミニウム層を走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察したところ、球状組織は膜中に分散していないことが確認された。
つぎに、上記本発明工具13〜24および比較例工具10〜18について、次の条件で鋳鉄の高速重切削加工試験を行った。
被削材: JIS・FC350の丸棒、
切削速度: 400/min、
切り込み: 1.5 mm、
送り量: 0.4mm/rev.、
切削時間: 20 分、
の条件での鋳鉄の高速高送り切削試験(通常の切削速度および送り量は、それぞれ、250m/min、0.3mm/rev.)後の、それぞれの工具の摩耗状態について観察を行い、逃げ面摩耗量の測定を行った。
これらの結果を表9に示す。
表5、9に示される結果から、この発明の表面被覆切削工具1〜24においては、工具基体の表面に、ゾル−ゲル法によって酸化アルミニウムが被覆形成され、該酸化アルミニウム層は、すぐれた表面平滑性、潤滑性、切屑排出性、耐溶着性を備えることから、これを、鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工に用いた場合でも、チッピング、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するのである。
これに対して、表面の酸化アルミニウム層に球状組織を含有せず素地組織のみで構成される比較例の表面被覆切削工具1〜18においては、重切削の高い負荷に耐えきれず、特にすくい面での異常損傷により急激なクレータ摩耗の進行が生じたりするため、耐摩耗性に劣り、短時間で使用寿命に至ることは明らかである。
なお、前記実施例では、インサート形状の工具を用いて硬質被覆層の性能を評価したが、ドリルやエンドミルなどでも同様の結果が得られることはいうまでもない。
この発明の表面被覆切削工具によれば、表面に、ゾル−ゲル法によって酸化アルミニウムが被覆形成され、該酸化アルミニウム層は、すぐれた表面平滑性、潤滑性、切屑排出性、耐溶着性を備えることから、これを、鋳鉄、炭素鋼等の高速重切削加工に用いた場合でも、チッピング、剥離等の異常損傷を発生することなく、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮するものであり、工具寿命の長寿命化を図ることができ、実用上の効果が大である。

Claims (5)

  1. 炭化タングステン基超硬合金、炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
    (a)上記硬質被覆層の表面層として、0.2〜5μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層を備え、
    (b)上記酸化アルミニウム層は、素地及び素地中に分散した球状組織からなり、
    (c)上記素地は酸化アルミニウム結晶相及びアモルファス相から構成され、また、上記球状組織は、針状結晶相、板状結晶相のうちの一種または二種とアモルファス相との集合体からなることを特徴とする表面被覆切削工具。
  2. 上記酸化アルミニウム層中に占める球状組織の面積割合が20〜60面積%であることを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
  3. 上記球状組織の近似円の半径は、0.02〜0.5μmであることを特徴とする請求項2に記載の表面被覆切削工具。
  4. 炭化タングステン基超硬合金からなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
    上記工具基体の表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの平均層厚を有する基体表面硬化層が形成され、該基体表面硬化層に含まれる結合相金属としてのCoの平均含有量が、2.0質量%未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。
  5. 炭窒化チタン基サーメットからなる工具基体の表面に、硬質被覆層を被覆形成してなる表面被覆切削工具において、
    上記工具基体の表面から深さ方向に0.5〜3.0μmの平均層厚を有する基体表面硬化層が形成され、該基体表面硬化層に含まれる結合相金属としてのCo及びNiの合計平均含有量が、2.0質量%未満であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表面被覆切削工具。


















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* Cited by examiner, † Cited by third party
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