JP2013138970A - クリーニング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】異物を静電気力により吸着するためにローラ表面に発生する帯電圧が必要以上に高くなるのを抑制し、前記帯電圧を安定させる。
【解決手段】クリーニングローラ1は二層構造で、導電性軸部材である芯金2の外周部に導電性の内層部3と絶縁性の外層部4とが順に積層されてなる。クリーニングローラ1は、被クリーニング材Sの表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷をローラ表面に保持する。クリーニングローラ1の芯金2は、導電性軸受け5を介して保持枠6に回転可能に支持され、この保持枠のハンドル部6dに設けられる導通部7と、導電性軸受け5とが、被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する帯電圧を設定電圧以下に保持する帯電圧制御回路8を途中に有する配線9を介して電気的に接続されている。導通部7を通じて、余分な電荷はアース側に流れる。
【選択図】 図1
【解決手段】クリーニングローラ1は二層構造で、導電性軸部材である芯金2の外周部に導電性の内層部3と絶縁性の外層部4とが順に積層されてなる。クリーニングローラ1は、被クリーニング材Sの表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷をローラ表面に保持する。クリーニングローラ1の芯金2は、導電性軸受け5を介して保持枠6に回転可能に支持され、この保持枠のハンドル部6dに設けられる導通部7と、導電性軸受け5とが、被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する帯電圧を設定電圧以下に保持する帯電圧制御回路8を途中に有する配線9を介して電気的に接続されている。導通部7を通じて、余分な電荷はアース側に流れる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、被クリーニング材の表面に静電気力により付着する異物(塵挨など)を取り除くクリーニング装置に関するものである。特に、被クリーニング材が、例えばガラス基板、プリント基板(PCB,PCBAなど)、フィルム、シート、プラスチック板などの比較的表面平滑性の高いものである場合に適する。
従来より、被クリーニング材の表面に付着している塵埃などの異物を取り除くゴミ除去ローラとして、そのような異物を粘着除去することにより、前記被クリーニング材の表面をクリーニングする粘着ロールを用いるものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
特許文献1,2記載の粘着ロールを用いるものでは、粘着力で塵埃などの異物を除去するので、粘着による糊残りが発生して、相手材である被クリーニング材を汚染するおそれがある。また、塵埃などの異物が付着した状態のまま使用すると、被クリーニング材を傷つけるおそれがある上に、微小な塵埃などの微小異物を除去することができない。
つまり、粘着ロールを用いるものでは、微小異物(例えば、平均径1μm以下の異物)を除去することができず、また表面の粘着層に一且付着した塵挨などの異物を完全に除去するのが困難であり、メンテナンス性に劣る。また、被クリーニング材に粘着層をある程度圧力を加えて押し付け、異物を除去するようにしているので、被クリーニング材が、例えばフィルムなどの薄物であると、前記異物を除去するだけでなく、フィルムなどの薄物が表面の粘着層に張り付くおそれがある。
そこで、出願人は、被クリーニング材の表面に接触させつつ回転させながら相対移動させれば、前記被クリーニング材の表面との間で電位差を生じるという接触帯電を利用して、前記被クリーニング材の表面上に付着する前記異物を、粘着力ではなく、静電気力により取り除く二層構造のクリーニングローラを用いるクリーニングシステムを開発し,出願している(特願2008−271797号など)
そのような二層構造のクリーニングローラでは、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷をローラ表面に保持するようになっているが、被クリーニング材の材質が、例えば、一般的な材質の中で、帯電序列で正極端に近い「ガラス」や負極端に近い「テフロン(登録商標)」である場合には過剰な電荷を蓄え、ローラ表面が過剰な帯電圧になる可能性が高くなる。静電気力(クーロン力)で異物を吸着する場合、ローラ表面に保持される電荷は多い方が吸着力は強くなるが、ローラ表面が過剰な帯電圧になると、クリーニングローラと相手材である被クリーニング材との間に火花放電が起こり、ローラ表面や被クリーニング材の帯電状態にムラが生じ、そのムラに異物が引き寄せられ、安定したクリーニング性能を発揮することができなくなるおそれがある。それに加えて、火花放電によって相手材を傷つけるおそれもある。さらに被クリーニング材が、静電気に弱い半導体などの電子部品の場合には、火花放電に至らない電荷の蓄積でも発生する静電気破壊が問題となる。
よって、ローラ表面に保持される電荷量は、安定した吸着力を保持するために、過剰にならず、安定していることが望まれる。つまり、ローラ表面の帯電圧が、設定電圧以下に安定していることが望まれる。
前記特許文献2記載の粘着ロールはロールを覆う導電性繊維が設けられ、この導電性繊維がアース電極に連結しており、塵埃などの異物を除去する際に発生する静電気は人体側に流れるようになっているが、一定の除電効果を保つことができるにすぎず、帯電圧を制御することはできない。
本発明は、異物を静電気力により吸着するためにローラ表面に発生する帯電圧が必要以上に高くなるのを抑制し、前記帯電圧を安定させることができるクリーニング装置を提供することを目的とする。
請求項1の発明は、軸部材の外周部に導電性の内層部と絶縁性の外層部とが順に積層されてなる二層構造で、被クリーニング材の表面に接触しつつ回転しながら相対移動することで、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷を表面に保持する構成とされるクリーニングローラを有し、前記被クリーニング材の表面上に付着する前記異物を、静電気力を利用して取り除くクリーニング装置であって、前記被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する帯電圧を、設定電圧以下に保持する帯電圧制御回路を備えることを特徴とする。
このようにすれば、ローラ表面に発生する帯電圧が、設定電圧以下に保持されるので、必要な帯電が確保され,過剰に帯電することが抑制される。その結果、ローラ表面が必要な帯電圧となってローラ表面の帯電圧が安定することになり、異物を吸着するための静電気力が安定する。つまり、ローラ表面に静電気力(クーロン力)で異物を吸着できる必要な量の電荷が蓄積され、必要な帯電圧(設定電圧以下)が保持され、被クリーニング材との間で火花放電が起こったり被クリーニング材(例えば、半導体の電子部品等)の許容電圧を超え前記被クリーニング材にダメージを与えたりする帯電圧となる過剰な帯電が回避される。
特に、被クリーニング材の表面に付着している異物に応じて帯電圧制御回路の種類(構成素子)を変更することにより、ローラ表面に保持する電荷量は任意の値に変更し、帯電圧を調整できるので、様々な帯電異物の吸着に対応することができる。
請求項2に記載のように、前記軸部材は、導電性を有するもので、前記帯電圧制御回路は、定電圧ダイオード若しくはバリスタと抵抗器との一方又は両方を含む回路を有し、前記軸部材をアースあるいはアース可能とするものであることが望ましい。ここで、「定電圧ダイオード若しくはバリスタ(非直線性抵抗素子)及び抵抗器の一方又は両方を含む」とは、(i)定電圧ダイオードのみの場合、(ii)バリスタのみの場合、(iii)抵抗器のみの場合、(iv)定電圧ダイオードと抵抗器との組み合わせの場合、(v)バリスタと抵抗器との組み合わせの場合を含むことを意味する。「アースあるいはアース可能」とは、アース線を通じて直接アース(接地)する場合のほか、作業者の人体を通じて間接的にアースする場合を含むことを意味する。
このようにすれば、軸部材が帯電圧制御回路を通じてアースされるので、余分な電荷をアースに戻して、過剰な帯電が抑制される。よってローラ表面に余分な電荷が保持されることがなくなり、ローラ表面の帯電圧が必要値に保たれ、ローラ表面の帯電圧が安定する。特に、定電圧ダイオードを向かい合わせ若しくは背中合わせに直列接続したものを含むようにすれば、無極性となり、発生する静電気が正であっても、負であっても、余分な電荷がアースに戻され、ローラ表面を過剰な帯電圧にしない。また、抵抗器を含む場合には、急激な状態変動による静電気の放電(アースヘの戻り)の電流が大きくなることを緩和することができる。
請求項3に記載のように、前記軸部材は、支持枠部に導電性軸受けを介して回転可能に支持され、前記軸受けに対し、前記帯電圧制御回路が設けられていることが望ましい。
このようにすれば、導電性軸受けを利用して、軸部材との電気的接続を簡単に行うことができる。
請求項4に記載のように、前記支持枠部には、把持部が設けられ、前記把持部に、前記軸受けに前記帯電圧制御回路に介して電気的に接続される導通部が設けられている構造とすることができる。
このようにすれば、導通部を作業者が把持することで、作業者の人体を通じてアースすることができる。このアース(接地)により余分な電荷を開放することで、 ローラ表面は余分な電荷を保持することがなくなり、必要な電荷が保持され、必要な帯電圧が保持される。
請求項5に記載のように、前記帯電圧制御回路は、前記被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する余分な電荷を、放電部を用いて放電する構成としてもよい。
このようにすれば、放電部を利用することで、前述したアースする場合と同様に、ローラ表面の余分な電荷が放電により開放され、ローラ表面に保持される電荷量によって設定電圧以下の帯電圧となるように制御される。よって、過剰に電荷が蓄積して、ローラ表面が過剰な帯電圧になるのが回避される。
請求項6に記載のように、前記軸部材は、導電性を有するもので、前記放電部は、前記軸部材との間に、定電圧ダイオード若しくはバリスタと抵抗器との一方又は両方を含む回路を有することが望ましい。
このようにすれば、余分な電荷が放電部を通じて放電されるので、ローラ表面に余分な電荷が保持されることがなくなり、ローラ表面の帯電圧が安定する。
この場合、請求項7に記載のように、前記放電部は、被クリーニング材の表面に向けて放電することが望ましい。
このようにすれば、放電部から放電される電荷と極性が逆になる被クリーニング材の表面に向けて放電させることで、放電が促進される。
本発明は、上記のように構成したから、ローラ表面に発生する帯電圧を、設定電圧以下に保持するので、ローラ表面の帯電圧が安定し、異物を吸着するために静電気力が安定する。
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係るクリーニング装置の第1の実施の形態の概略構成を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は一部を断面で示す斜視図である。
(第1の実施の形態)
図1は本発明に係るクリーニング装置の第1の実施の形態の概略構成を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は一部を断面で示す斜視図である。
クリーニング装置Aは、クリーニングローラ1と、保持枠6と、帯電圧制御回路8とを有する。クリーニングローラ1は、導電性軸部材である芯金2の外周部に導電性を有する円筒状の内層部3が積層され、その外側に内層部3よりも高抵抗の材料からなる薄い円筒状の外層部4が積層されてなる二層構造で、被クリーニング材S(図4(a)〜(e)参照)との接触帯電によって、被クリーニング材Sの表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷を表面に保持する構成とされている。ここで、二層構造のローラを用いているのは次の理由による。導電性のローラは相手材である被クリーニング材との接触により発生した電荷が、被クリーニング材側に流れやすく蓄積されないために、必要な電荷を与えるために高電圧を印加する手段が必要であるが、そのようにすると、被クリーニング材や異物の抵抗値に影響を受けやすい。一方、絶縁性のローラを用いると、接触により発生した電荷が流れずに蓄積され、ローラ表面の帯電圧を、静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに必要とする電圧に保持することができない。そこで、導電性の内層部3とこの内層部3より高抵抗の薄膜状の外層部4とを有する、二層構造のクリーニングローラ1としているのである。
外層部4の厚さとしては、2〜500μm(より好ましくは、5〜50μm)が好ましい。これは、外層部4の厚さが2μm未満ではローラ表面(外層部表面)に電荷が帯電しにくく、500μmを超える厚さにするのは工業的に効率的でないからである。なお、芯金2に代えて、導電性を有するカーボン材や合成樹脂複合材等からなる軸部材を用いることもできる。芯金(軸部材)2は、芯金中腹部と芯金端部間の抵抗値としては105Ω以下が望ましい。
内層部3に用いる材料は、外層部4よりも低硬度あるいは略同一の硬度とされ、外層部4よりも体積抵抗率が低く、導電性を有するものであればよいが、体積抵抗率は104〜1012Ωcmの範囲であることが好ましい。具体的には、導電性を有する弾性材料である、例えばカーボン(導電材)を含むポリエステル系ウレタン等を内部層3に用いることができる。
外層部4に用いる材料は、50°以上(望ましくは50°以上100°未満、より望ましくは55°以上100°未満、さらに望ましくは65°以上100°未満)の硬度(JIS−A)を有する。また、外層部4は、内層部3よりも体積抵抗率が高く、108Ωcm以上(好ましくは1010Ωcm以上)の体積抵抗率を有する。
このようなクリーニングローラ1の外層部4を形成する材料は、被クリーニング材Sの表面S1上に付着する塵埃などの異物Tを静電気により吸着する電荷を帯電し得るものが選択される。つまり、異物Tに帯電される電荷に対し電位差が生じるようなものであればよく、異物Tに対して、帯電序列がプラス側あるいはマイナス側になるものが選択される。
なお、被クリーニング材S上に付着している異物に、どのような電荷が帯電するかは、通常、被クリーニング材の種類によっても変わるので、被クリーニング材の種類に応じて、外層部4に用いる材料を選択することが望ましい。
外層部4を形成する材料の好ましい例としては、ウレタン樹脂が挙げられ、さらにはアクリル混合ウレタンあるいはフッ素混合ウレタンが挙げられる。ここで、「アクリル混合ウレタン」とは、アクリル樹脂(例えば、メタクリル酸ーメタクリル酸メチル共重合体からなる主鎖にアミノエチル基がグラフトされてなるグラフト化合物)とウレタン樹脂(例えば、ポリエステルポリウレタンまたはポリエーテルポリウレタン)との混合物からなるものであり、「フッ素混合ウレタン」とは、ポリウレタンを主成分とし、フッ素基(例えば、炭素を主体とする重合体に担持され、ポリウレタンと共重合体を構成するもの、炭素を主体とする重合体に担持され、かつイソシアネート基(例えば、多官能のブロックイソシアネート)を含有する共重合体)を有する合成樹脂である。
このようなクリーニングローラ1は、クリーニングの対象とする被クリーニング材Sに付着する異物に接触することで、異物にクリーニングローラ1の外周面とは異なる電荷が帯電され、塵埃などの異物との間に静電気力が発生し、前記異物が外層部4の表面に静電気力により吸着され、被クリーニング材Sの表面から異物が除去される。つまり、被クリーニング材Sの表面に接触しつつ回転しながらクリーニングローラ1を相対移動させることで、被クリーニング材の表面との間で電位差を生じ、被クリーニング材の表面上に付着する前記異物を静電気力を利用して取り除くことができる。
芯金2は、導電性軸受け5を介して、絶縁性を有する保持枠6に回転可能に支持されている。保持枠6は、断面コ字形状で、左右の側板部6a,6bとそれらを連結する基部6cとを有し、この基部6cの左右方向中央部に側板部6a,6bとは反対側に突出するハンドル部6dが連結されている。ハンドル部6dの外周部には筒状の導通部7が設けられ、この導通部7と、導電性軸受け5とが、帯電圧制御回路8を途中に有する配線9を介して電気的に接続されている。
この帯電圧制御回路8は、クリーニングローラ1が被クリーニング材Sの表面に接触しながら回転することによって発生した電荷について、ローラ表面において、必要量を超えて余分な電荷を保持しないようにするために、導通部7を通じて、静電気力(クーロン力)で異物を吸着できる必要な電荷を保ち、余分な電荷をアースに戻す機能を有するものである。
よって、図2に示すように、作業者Hによるクリーニング作業に伴い発生した余分な電荷が、導通部7に接続されているアース線11を通じて、流れることになり、クリーニングローラ1の外層部4の表面に静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに必要な電荷を保持するように帯電する。なお、図3に示すように、作業者Hにリストバンド12を介してアース線11を接続し、導通部7から作業者Hの体及びリストバンド12を経て、アース線11を通じて、余分な電荷が流れることにより、クリーニングローラ1の外層部4の表面に、余分な電荷が保持されることがなくなる。よって、ローラ表面に発生する帯電圧が、設定電圧以下に保持され、安定する。
帯電圧制御回路8は、具体的には、例えば図4(a)に示す回路8Aのように、向かい合わせの定電圧ダイオード(ツェナダイオード)8a,8aを有する構造とすることができる。このように定電圧ダイオード8a,8aを向かい合わせに直列接続することで無極性の回路を構成し、発生する静電気が正であっても、負であっても、余分な電荷がアースに戻り、静電気力(クーロン力)で異物を吸着することができる電荷がローラ表面に蓄積される。よって、ローラ表面は、異物を静電気力により吸着するために必要な帯電状態が維持される。なお、定電圧ダイオード8aは向かい合わせではなく、背中合わせに設けることも可能である。また、被クリーニング材Sの背面に帯電に弱い実装基板(LSIなどの実装物を持つPCBA)を用いた場合、定電圧ダイオード8aのツェナー電圧を500V以下(好ましくは300V以下、更に好ましくは100V以下)とすることが望ましい。
これにより、クリーニングローラ1と被クリーニング材Sとの接触によってクリーニングローラ1の表面に発生する電荷は、定電圧ダイオード8a,8aのツェナー効果によって、余分な電荷が、ハンドル部6dに設けられた導通部7から作業者を通じアースに戻される。これにより、クリーニングローラ1のローラ表面は、静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに必要な電荷が蓄積された状態となり、設定電圧以下の帯電圧を保持することになる。
このように、回路8Aによって、クリーニングローラ1のローラ表面の電位を設定電圧以下に保持することができるので、クリーニングローラ1は、被クリーニング材(相手材)Sとの間の電位差によって、被クリーニング材Sの表面に付着した異物(例えば塵埃、微小なゴミ)を静電気力により安定して吸着することができる。
また、図4(b)に示す回路8Bのように、定電圧ダイオード8a,8aに代えて、抵抗器8bだけを有する構造とすることもできる。このようにすれば、クリーニングローラ1と被クリーニング材Sとの接触によってクリーニングローラ1の表面に発生する電荷量が、前記設定電圧値において、抵抗器8bが消費する電荷量と同等となる抵抗値に抵抗器8bの抵抗値を設定することで、前記設定電圧値に満たないと、前記発生する電荷量が前記消費する電荷量より多くなる一方、前記設定電圧値を越えた時には、前記発生する電荷量より前記消費する電荷量が多くなる。これにより、クリーニングローラ1のローラ表面の電位は前記設定電圧値において釣り合うことができる。なお、抵抗器8bは無極性であるため、生じる静電気が正であっても、負であっても、電荷をアースに徐々に戻すことができる。
また、図4(b)に示す回路8Bのように、定電圧ダイオード8a,8aに代えて、抵抗器8bだけを有する構造とすることもできる。このようにすれば、クリーニングローラ1と被クリーニング材Sとの接触によってクリーニングローラ1の表面に発生する電荷量が、前記設定電圧値において、抵抗器8bが消費する電荷量と同等となる抵抗値に抵抗器8bの抵抗値を設定することで、前記設定電圧値に満たないと、前記発生する電荷量が前記消費する電荷量より多くなる一方、前記設定電圧値を越えた時には、前記発生する電荷量より前記消費する電荷量が多くなる。これにより、クリーニングローラ1のローラ表面の電位は前記設定電圧値において釣り合うことができる。なお、抵抗器8bは無極性であるため、生じる静電気が正であっても、負であっても、電荷をアースに徐々に戻すことができる。
さらに、図4(c)に示す回路8Cのように、定電圧ダイオード8a,8aに抵抗器8bを直列に設ける構造とすることもできる。このように定電圧ダイオード8a,8aに加えて、抵抗器8bを設けることで、余分な電荷が、ハンドル部6dに設けられた導通部7から作業者を通じアースに徐々に戻され、クリーニングローラ1は静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに必要な帯電圧を保つ機能に加えて、急激な状態変動による静電気の放電電流(アースヘの戻り電流)が大きくなることを緩和することができる。つまり、定電圧ダイオード8a,8aによる電圧の一定化と、抵抗器8bによる、急激な状態変動による静電気の放電電流の緩和とによって、作業者の人体を通したアースが可能となる。
さらに、また、図4(d)に示す回路8Dのように、複数の抵抗器8bと、それらのうち使用する抵抗器8bの数を切り替える切替スイッチ8cとを有する構造としたり、図4(e)に示す回路8Eのように、複数組の、向かい合わせの定電圧ダイオード(ツェナダイオード)8a,8aと、それらのうち使用する定電圧ダイオード8a,8aの組の数を切り替える切り替えスイッチ8cとを有する構造とすることも可能である。なお、複数の抵抗器8bと切替スイッチ8cとに代えて、無段階に抵抗値を変更できる可変抵抗器とすることもできる。
これにより帯電圧制御回路8の構成素子である定電圧ダイオード8aや抵抗器8bの数を変更することにより、ローラ表面に保持される電荷量を変量できるため、様々な帯電性を持つ異物の除去に対応することができる。なお、定電圧ダイオード8a,8aや抵抗器8bを全く設けない場合には、アースとクリーニングローラ1との間で電流が流れるため、クリーニングローラ1は電荷を保持することができない。また、ハンドル部6dに、アースに接続する導通部7がない場合、余分な電荷が流れる場所がないため、クリーニングローラ1から放電が発生し、静電気力(クーロン力)で異物を吸着することができる電荷を保持することができない。
上記クリーニング装置Aによれば、クリーニングローラ1を、被クリーニング材Sの表面に接触しつつ回転しながら相対移動させることで、被クリーニング材Sとの接触帯電によって、静電気力により異物を吸着するための電荷がローラ表面に発生する。これにより、被クリーニング材Sの表面上に付着している異物が静電気力によりクリーニングローラ1のローラ表面に吸着される。このように静電気力を利用して、異物を取り除くようにすることで、粘着力で異物を除去する粘着ロールのように、被クリーニング材を汚染したり傷つけたりすることもなく、クリーンな状態を保ったまま、被クリーニング材Sの表面から異物を除去することができる。
特に、クリーニングローラ1の外層部4の表面において余分な電荷はアースされ得る構造としたことにより、ローラ表面に電荷が過剰に蓄積しないように余分な電荷をアースに逃すので、過剰に帯電することが回避される。よって必要な帯電を保持することができ、異物を吸着するためのローラ表面の帯電圧を安定させることができる。
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、帯電圧制御回路として放電部を設け、静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに余分な電荷を放電するようにしたものである。
図5(a)(b)に示すように、クリーニング装置Bは、前述したように、被クリーニング材Sとの接触帯電によって、クリーニングローラ1のローラ表面に発生し余分な電荷を放電させる放電部21を持つ。この放電部21は、ローラ表面に蓄積される電荷が必要量を超えて放電開始電位に達すると、必要量を超える余分な電荷を、コロナ放電により被クリーニング材Sに向けて放電するものである。この放電部21は配線9を通じて芯金(軸部材)2に電気的に接続されているが、第1の実施の形態と同様に、芯金2を回転可能に支持する導電性軸受けに電気的に接続するようにしてもよい。
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、帯電圧制御回路として放電部を設け、静電気力(クーロン力)で異物を吸着するのに余分な電荷を放電するようにしたものである。
図5(a)(b)に示すように、クリーニング装置Bは、前述したように、被クリーニング材Sとの接触帯電によって、クリーニングローラ1のローラ表面に発生し余分な電荷を放電させる放電部21を持つ。この放電部21は、ローラ表面に蓄積される電荷が必要量を超えて放電開始電位に達すると、必要量を超える余分な電荷を、コロナ放電により被クリーニング材Sに向けて放電するものである。この放電部21は配線9を通じて芯金(軸部材)2に電気的に接続されているが、第1の実施の形態と同様に、芯金2を回転可能に支持する導電性軸受けに電気的に接続するようにしてもよい。
上記構成によれば、クリーニングローラ1と被クリーニング材Sとの接触によってローラ表面に電荷が発生するが、その電荷のうち余分な電荷が放電部21より大気放電されるので、必要量を超えて余分に電荷が蓄積されることがなくなり、ローラ表面の帯電圧が必要値に保たれる。そして、放電部21から放電される電荷と極性が逆になる電荷が帯電している被クリーニング材Sの表面に向けて放電させることで、火花放電やアーク放電を防止して、コロナ放電による電荷の放出が促進される。なお、放電部21を設けないと、余分に発生した電荷を放出することができず、過剰に電荷が蓄積されるため、クリーニングローラ1と被クリーニング材Sの表面の間で必要な帯電性を保つことができない。
この放電部21から余分な電荷が放電されることにより、ローラ表面の帯電圧を制御することができ、被クリーニング材Sとの間の電位差によって、被クリーニング材Sの表面に付着した異物を、クリーニングローラ1が静電気力により吸着することができる。
放電部21は、保持枠6に設けられているが、図7に示すように、被クリーニング材Sの表面に向けてではなく、大気中に直接放電するように保持枠6に設けることも可能である。また、放電部21は、保持枠6に設ける必要は必ずしもなく、保持枠6とは関係のない別の場所に設置し、配線によってクリーニングローラ1の芯金2に電気的に接続するようにすることも可能である。
クリーニングローラ1と放電部21の間には、第1の実施の形態と同様に、図8(a)〜(e)に示すように、定電圧ダイオード8aや抵抗器8bを有する回路8A〜8Eを設け、放電部21と回路8A〜8E(定電圧ダイオード8a、抵抗器8b)とによって帯電圧制御回路を構成することも可能である。例えば、被クリーニング材Sがフィルムなどのように接触帯電により3000Vを超えるような帯電性が強い材質である場合、定電圧ダイオード8aのツェナー電圧を3000V以下(好ましくは2000V以下、更に好ましくは1000V以下)が望ましい。
すなわち、クリーニングローラ1と放電部21の間の電気的接続が、図8(a)に示すように、ツェナー機能を有する定電圧ダイオード8a,8aを経由することで、ローラ表面に電荷が必要量を超えて余分に蓄積されローラ表面の帯電圧が過剰にならないと、前記電荷を放電しないようにして、ローラ表面が保持する電荷を安定させることもできる。定電圧ダイオード8a,8bを向かい合わせ(若しくは背中合わせ)に直列接続することで、ローラ表面に発生する静電気が正であっても負であっても、必要量を超える余分な電荷を放電することができる。つまり、ローラ表面に帯電する電荷がどちらの極性であっても機能することになる。
図8(b)に示すように、クリーニングローラ1と放電部21の間の電気的接続が、抵抗器8bを経由することで、静電気の放電電流が急激に大きくなることが緩和される。これにより、放電部21に作業者が接触しても、作業者が接触することで感じる電気的刺激が軽減される。
また、クリーニングローラ1と放電部21の間の電気的接続が、図8(c)に示すように、ツェナー機能を有する定電圧ダイオード8a,8aと抵抗器8bとが直列に接続された回路を経由することで、発生する静電気が正であっても、負であっても、余分な電荷を放電し、かつ、放電部21へ人体の接触で感じる電気的刺激を軽減することもできる。
さらに、図8(d)に示すように、複数の抵抗器8bと、それらのうち使用する抵抗器8bの数を切り替える切替スイッチ8cとを有する構造としたり、図8(e)に示すように、複数組の、向かい合わせの定電圧ダイオード(ツェナダイオード)8a,8aと、それらのうち使用する定電圧ダイオード8a,8aの組の数を切り替える切替スイッチ8cとを有する構造とすることも可能である。
前記実施の形態では、定電圧を制御する素子として、定電圧ダイオード(ツェナダイオード)を使用しているが,本発明はそれに限定されるものではなく、背中合わせ又は向かい合わせに接続した定電圧ダイオードと非常によく似た特性を有するバリスタ(非直線性抵抗素子)を、2つの定電圧ダイオードに代えて用いて定電圧制御回路を構成することも可能である。ここで、「バリスタ」としては、例えば「セラミックバリスタTNR(日本ケミコン株式会社製)」を用いることができる。
また、前記実施の形態においては、クリーニング装置A,Bは、保持枠6にクリーニングローラ1を回転可能に支持し、把持部6dを把持して使用するハンド式ローラとしているが、本発明は、それに限定されるものではなく、前述したような、静電気力を利用するクリーニングローラを用いるクリーニング装置であれば、同様に適用することができる。例えば、産業用ロボットのメカニカルハンド(エンドエフェクタ)として、前記クリーニング装置を用いることも可能である。この場合には、産業用ロボットの一部として、クリーニング装置が使用されることになる。
A,B クリーニング装置
1 クリーニングローラ
2 芯金
3 内層部
4 外層部
5 導電性軸受け
6 保持枠
6a,6b 側板部
6c 基部
6d ハンドル部
7 導通部
8 帯電圧制御回路
8A〜8E 回路
8a 定電圧ダイオード
8b 抵抗器
9 配線
21 放電部
1 クリーニングローラ
2 芯金
3 内層部
4 外層部
5 導電性軸受け
6 保持枠
6a,6b 側板部
6c 基部
6d ハンドル部
7 導通部
8 帯電圧制御回路
8A〜8E 回路
8a 定電圧ダイオード
8b 抵抗器
9 配線
21 放電部
Claims (7)
- 軸部材の外周部に導電性の内層部と絶縁性の外層部とが順に積層されてなる二層構造で、被クリーニング材の表面に接触しつつ回転しながら相対移動することで、前記被クリーニング材の表面上に付着する異物を静電気力により吸着するための電荷を表面に保持する構成とされるクリーニングローラを有し、前記被クリーニング材の表面上に付着する前記異物を、静電気力を利用して取り除くクリーニング装置であって、
前記被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する帯電圧を、設定電圧以下に保持する帯電圧制御回路を備えることを特徴とするクリーニング装置。
- 前記軸部材は、導電性を有するもので、
前記帯電圧制御回路は、定電圧ダイオード若しくはバリスタと抵抗器との一方又は両方を含む回路を有し、前記軸部材をアースあるいはアース可能とするものであることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
- 前記軸部材は、支持枠部に導電性軸受けを介して回転可能に支持され、
前記軸受けに対し、前記帯電圧制御回路が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のクリーニング装置。
- 前記支持枠部には、把持部が設けられ、
前記把持部に、前記軸受けに前記主回路に介して電気的に接続される導通部が設けられていることを特徴とする請求項3記載のクリーニング装置。
- 前記帯電圧制御回路は、前記被クリーニング材との間での接触によって前記ローラ表面に発生する余分な電荷を、放電部を用いて放電するものであることを特徴とする請求項1記載のクリーニング装置。
- 前記軸部材は、導電性を有するもので、
前記放電部は、前記軸部材との間に、定電圧ダイオード若しくはバリスタと抵抗器との一方又は両方を含む回路を有することを特徴とする請求項5記載のクリーニング装置。
- 前記放電部は、被クリーニング材の表面に向けて放電するものであることを特徴とする請求項5または6記載のクリーニング装置。
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