JP2013138566A - 車両用二次電池の放電制御方法 - Google Patents

車両用二次電池の放電制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、電池のサイクル特性を維持しつつ、搭乗者が選択した場合に長距離走行を可能とする二次電池の放電制御方法を提供することを目的とする。
【解決手段】車両用電源として用いられる二次電池が異なる二つの放電下限電圧Va、Vbを有し、前記放電下限電圧の電圧Vaから電圧Vbへの変更を搭乗者が選択できるようにすることで、電池のサイクル特性を維持しつつ、搭乗者が選択した場合に長距離走行を可能とする二次電池の放電制御方法を提供することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、二次電池を電源として駆動する車両における二次電池の放電制御方法に関する。
近年、リチウムイオン電池を代表とする非水電解質二次電池の性能向上が著しい。それに伴い、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、自動二輪車などの車両用電源としてのリチウムイオン電池の用途が広がっている。
駆動全エネルギー源を非水電解質二次電池に依存する電気自動車を代表とする車両においては、非水電解質二次電池に要求される電池性能は多岐にわたり、とりわけ走行可能距離に直結する電池容量および長期耐久性が重要となる。
初期の非水電解質二次電池容量は電池の構成要素である正極活物質、負極活物質などに依存し、電池セル製造段階で決定されるものであるが、その後の容量劣化は非水電解質二次電池の充放電制御方法に大きく依存する。
充電電圧が高い、もしくは放電電圧が低いと電解液の分解、負極へのリチウム析出、正極の構造崩壊に伴う不可逆容量の増大といった反応が顕著に起こる。これらの反応は電池の容量劣化に直結し、長期耐久性を損なう要因となる。すなわち、非水電解質二次電池の長期耐久性を実現するためには適切な電圧制御下で充放電を行うことが重要となる。
電池の充放電電圧の上下限を制限すれば電池の長期耐久性、すなわちサイクル特性の向上が期待される一方で、それに伴い各サイクルにおける使用可能容量が減少することとなる。使用可能容量の減少は非水電解質二次電池を電源とする車両において走行可能距離の減少を意味する。ガソリン車の短い給油時間と比較し、電気自動車の給電時間は数十分から数時間かかるため、一度の給電で走行可能な距離が重要となる。そのため、充放電電圧に大幅な制限を加えることはできない。また、搭乗者により走行スタイルは多岐に渡るため、充放電電圧の上下限を常時制限する制御方法では、多少の容量劣化を見込んでも給電せずに長距離を走行したいという要望にこたえることができない。
二次電池の充放電制御方法により電池の長期耐久性、サイクル特性を向上させる方法として、例えば一定サイクルごとに充放電電圧の上下限を変更しSOCの利用領域をサイクルに応じて調整することで、サイクル特性の向上、ならびに長期耐久性の向上を実現する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、二次電池の充放電可能容量に対し、50%以下の容量範囲で充放電を行うことで二次電池の正極の劣化を抑制し、長期耐久性を向上する方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開平9−120843号公報 特開2000−195558号公報
しかしながら、特許文献1に提案される充放電制御方法は、充放電電圧の上下限設定の変更は自動で行われ、この制御方法では車両の搭乗者の選択で上下限の設定変更を行うことはできないという課題を有する。
特許文献2に提案される制御方法はSOCの使用領域を50%以下とし、残りの領域の使用を制限しているため、使用可能な二次電池容量が少ないという課題を有する。
そこで本発明は、電池の耐久性、すなわちサイクル特性を維持しつつ、搭乗者の選択で放電下限電圧を変更し、必要に応じた長距離走行を可能とする放電制御方法を提供することを目的とする。
従来の課題を解決するために、本発明では、二次電池を電源として駆動する車両において、前記二次電池が異なる二つの放電下限電圧Va、Vbを有し、搭乗者の選択で前記放電下限電圧を電圧Vaから電圧Vbへと変更可能な二次電池の放電制御方法を提供する。この放電制御方法により、従来は機器側に制限されていた二次電池の放電制御方法を搭乗者の選択で変更することが可能となる。
また、本発明は放電下限電圧VbがVaよりも低いことを特徴とする。放電下限電圧をVaに設定することで二次電池の長期耐久性を向上させることができ、放電下限電圧をVbに設定することで車両の走行可能距離を延長することができる。
また、本発明は二次電池の放電中に、二次電池の電圧がVaおよびVbよりも高いVcに到達した時点で、放電下限電圧の変更を搭乗者に選択させることを特徴とする。初期放電下限電圧であるVaよりも高い電圧であるVcに到達した時点で搭乗者に選択の判断を仰ぎ、電圧Vaまで放電し車両が走行不能となる前に放電下限電圧をVbへと変更し、スムーズに走行を継続することが可能となる。
また、本発明は二次電池を電圧Vc以下まで放電後、二次電池の電圧がはじめて電圧Vc以上となったときに、放電下限電圧を放電下限電圧Vbから放電下限電圧Vaへ変更することを特徴とする。放電下限電圧がVbへと変更され、その設定が以降も継続されればサイクル特性が低下するため、電圧Vcに到達した時点で放電下限電圧をVaへと変更することで、以降の走行においてサイクル特性を向上することが可能となる。
また、本発明は放電下限電圧Vbまでの放電容量Cvを1とした際に、放電下限電圧Vaまでの放電容量Cvおよび放電容量Cvの差分Cv−Cvが0.1以上0.4以下であることを特徴とする。放電容量CvおよびCvの差分を0.1以上、0.4以下の範囲に設定することでサイクル特性を向上し、また放電下限電圧Vaに到達するまでに走行可能な距離を十分に確保することが可能となる。
また、本発明は放電下限電圧Vbまでの放電容量Cvを1とした際に、放電容量Cvおよび前記放電下限電圧Vcまでの放電容量Cvの差分Cv−Cvが0.05以上0.2以下であることを特徴とする。放電容量CvおよびCvの差分を0.05以上、0.2以下に設定することで、電圧Vcに到達し放電下限電圧の変更を搭乗者に選択させてから放電下限電圧Vaに到達するまでに十分な時間を確保することが可能となる。
また、本発明は二次電池が非水電解質二次電池であることを特徴とする。水溶液よりも安定電圧領域の広い非水電解質を用いる非水電解質二次電池は高エネルギー密度を有するため、非水電解質二次電池を電源に用いることで長距離走行が可能となる。
また、本発明は正極活物質がリチウムニッケル複合酸化物を含むことを特徴とする。リチウムニッケル複合酸化物はLiCoOで使用する電圧範囲で高い容量を有しており、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いることで非水電解質二次電池の更なる高容量化が可能となる。
また、本発明は負極活物質がチタン酸リチウムを含むことを特徴とする。チタン酸リチウムを含む負極活物質を用い、負極規制された二次電池の放電末期での急激な電圧低下、およびその後の電圧平坦部を利用することで、放電下限電圧への到達を容易に検出することが可能となる。
本発明により、二次電池を電源として駆動する車両において、二次電池のサイクル特性が向上し、搭乗者の選択で放電下限電圧を変更し長距離走行が可能となる放電制御方法を提供することができる。
本発明の実施形態にかかる放電制御方法における放電容量とセル電圧の対応関係を示す図 本発明の放電制御方法のフローチャートを示す図 正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用いた非水電解質二次電池の放電曲線を示す図 正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用いた非水電解質二次電池の放電曲線を示す図
本発明は、放電制御方法に特徴を有するため、用いる非水電解質二次電池の正極活物質、負極活物質、セパレータ、非水電解液等の他の構成要素は特に制限されない。
正極は、通常、正極集電体およびそれに担持された正極合剤からなる。正極合剤は、正極活物質の他に、結着剤、導電剤などを含むことができる。正極は、例えば、正極活物質と任意成分からなる正極合剤を液状成分と混合して正極合剤スラリーを調製し、得られたスラリーを正極集電体に塗布し、乾燥させて作製する。負極も、同様に、負極活物質と任意成分からなる負極合剤を液状成分と混合して負極合剤スラリーを調製し、得られたスラリーを負極集電体に塗布し、乾燥させて作製する。
本発明の非水電解質二次電池の正極活物質としては、リチウム複合金属酸化物を用いることができる。例えば、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiCoNi1−y、LiCo1−y、LiNi1−y、LiMn、LiMn2−y4、LiMePO4、LiMePOF(M=Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、Bのうち少なくとも一種)が挙げられる。ここで、x=0〜1.2、y=0〜0.9、z=2.0〜2.3である。なお、リチウムのモル比を示すx値は、活物質作製直後の値であり、充放電により増減する。さらにこれら含リチウム化合物の一部を異種元素で置換してもよい。金属酸化物、リチウム酸化物、導電剤などで表面処理してもよく、表面を疎水化処理してもよい。また、前記リチウム複合金属酸化物の中でとりわけ構成元素としてNiを含むLiNiOをベースとするリチウムニッケル複合酸化物を用いることが望ましい。リチウムニッケル酸化物はLiCoOで使用される電圧範囲で高い容量を有しており、より多くのリチウムイオンを吸蔵・放出できる。このため、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用いることで、非水電解質二次電池の更なる高容量化を実現することができる。
本発明の非水電解質二次電池の負極活物質としては、例えば、金属、金属繊維、炭素材料、酸化物、窒化物、錫化合物、珪素化合物、各種合金材料等を用いることができる。炭素材料としては、例えば各種天然黒鉛、コークス、黒鉛化途上炭素、炭素繊維、球状炭素、各種人造黒鉛、非晶質炭素などの炭素材料が用いられる。また、珪素(Si)や錫(Sn)などの単体、または合金、化合物、固溶体などの珪素化合物や錫化合物が容量密度の大きい点から好ましい。負極活物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、負極活物質として少なくともチタン酸リチウムを含むことが望ましい。チタン酸リチウムを含む負極活物質を用い、負極により容量規制された電池セルでは、放電末期でチタン酸リチウムの放電領域に到達し、急激な電圧低下を伴う。本発明による放電制御方法において、放電下限電圧VaおよびVbをこの急激に低下した電圧よりも低い値に設定することで、放電末期の検出を容易にする効果を得ることができる。
正極または負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロースなどが使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。またこれらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
また電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウムなどの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、フェニレン誘導体などの有機導電性材料などが用いられる。
正極活物質、導電剤および結着剤の配合割合は、それぞれ、正極活物質80〜97重量%、導電剤1〜20重量%、結着剤1〜10重量%の範囲とすることが望ましい。
また負極活物質および結着剤の配合割合は、それぞれ、負極活物質90〜99重量%、結着剤1〜10重量%の範囲とすることが望ましい。
集電体には、長尺の多孔性構造の導電性基板か、あるいは無孔の導電性基板が使用される。導電性基板に用いられる材料としては、正極集電体としては、例えばステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどが用いられる。また、負極集電体としては、例えばステンレス鋼、ニッケル、銅などが用いられる。これら集電体の厚さは、特に限定されないが、1〜500μmが好ましく、5〜20μmがより望ましい。集電体の厚さを上記範囲とすることにより、極板の強度を保持しつつ軽量化することができる。
正極と負極との間に介在するセパレータとしては、大きなイオン透過度を持ち、所定の機械的強度と、絶縁性とを兼ね備えた微多孔薄膜、織布、不織布などが用いられる。セパレータの材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィンが耐久性に優れ、かつシャットダウン機能を有しているため、非水電解質二次電池の安全性
の観点から好ましい。セパレータの厚さは、一般的に10〜300μmであるが、40μm以下とすることが望ましい。また、15〜30μmの範囲とするのがより好ましく、さらに好ましいセパレータ厚さの範囲は10〜25μmである。さらに微多孔フィルムは、1種の材料からなる単層膜であってもよく、1種または2種以上の材料からなる複合膜または多層膜であってもよい。また、セパレータの空孔率は、30〜70%の範囲であることが好ましい。ここで空孔率とは、セパレータ体積に占める孔部の体積比を示す。セパレータの空孔率のより好ましい範囲は、35〜60%である。
非水電解質としては、液状、ゲル状または固体(高分子固体電解質)状の物質を使用することができる。
液状非水電解質(非水電解液)は、非水溶媒に電解質(例えば、リチウム塩)を溶解させることにより得られる。また、ゲル状非水電解質は、非水電解質と、この非水電解質が保持される高分子材料とを含むものである。この高分子材料としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキサイド、ポリ塩化ビニル、ポリアクリレート、ポリビニリデンフルオライドヘキサフルオロプロピレン等が好適に使用される。
電解質を溶解する非水溶媒としては、公知の非水溶媒を使用することが可能である。この非水溶媒の種類は特に限定されないが、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状カルボン酸エステルなどが用いられる。環状炭酸エステルとしては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)などが挙げられる。鎖状炭酸エステルとしては、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)などが挙げられる。環状カルボン酸エステルとしては、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン(GVL)などが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
非水溶媒に溶解させる電解質には、例えばLiClO、LiBF、LiPF、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiB10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、ホウ酸塩類、イミド塩類などを用いることができる。ホウ酸塩類としては、ビス(1,2−ベンゼンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,3−ナフタレンジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(2,2’−ビフェニルジオレート(2−)−O,O’)ホウ酸リチウム、ビス(5−フルオロ−2−オレート−1−ベンゼンスルホン酸−O,O’)ホウ酸リチウム等が挙げられる。イミド塩類としては、ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドリチウム((CFSONLi)、トリフルオロメタンスルホン酸ノナフルオロブタンスルホン酸イミドリチウム(LiN(CFSO)(CSO))、ビスペンタフルオロエタンスルホン酸イミドリチウム((CSONLi)等が挙げられる。電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また非水電解液には、添加剤として負極上で分解してリチウムイオン伝導性の高い被膜を形成し、充放電効率を高くすることができる材料を含んでいてもよい。このような機能を持つ添加剤としては、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、4−メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、4−エチルビニレンカーボネート、4,5−ジエチルビニレンカーボネート、4−プロピルビニレンカーボネート、4,5−ジプロピルビニレンカーボネート、4−フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、ジビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート
およびジビニルエチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。なお、上記化合物は、その水素原子の一部がフッ素原子で置換されていてもよい。電解質の非水溶媒に対する溶解量は、0.5〜2モル/Lの範囲内とすることが望ましい。
さらに、非水電解液には、過充電時に分解して電極上に被膜を形成し、電池を不活性化する公知のベンゼン誘導体を含有させてもよい。前記ベンゼン誘導体としては、フェニル基および前記フェニル基に隣接する環状化合物基を有するものが好ましい。前記環状化合物基としては、フェニル基、環状エーテル基、環状エステル基、シクロアルキル基、フェノキシ基などが好ましい。ベンゼン誘導体の具体例としては、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、ジフェニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、ベンゼン誘導体の含有量は、非水溶媒全体の10体積%以下であることが好ましい。
以下に、本発明による放電制御方法について説明する。
本発明は二つの異なる放電下限電圧Va、Vb、搭乗者の選択を問う基準となる電圧Vcとを有し、搭乗者の選択で二つの異なる放電下限電圧を変更することを特徴とする。
放電下限電圧を高い電圧であるVaに設定すると車両電源である二次電池の長期耐久性、すなわちサイクル特性が向上する。放電末期において放電電位が低くなるまで放電を行うと、正極活物質であるリチウム含有複合酸化物の結晶構造が変化することで正極活物質の劣化が引き起こされ、サイクル特性が低下することが知られている。放電下限電圧を放電末期の領域よりも高い電圧であるVaに設定し、放電末期の領域の使用を避けることでサイクル特性を向上することが可能となる。
また、放電下限電圧を低い電圧であるVbに設定すると、二次電池の放電容量が増加し車両の走行可能距離を延長することが可能となる。
充電電圧Vchg、放電下限電圧Va、Vb、電圧Vcおよび放電容量Cv、Cv、Cvの関係を図1に模式的に示す。放電容量はCvchgを0、Cvを1とする比率で表記するものとする。図2に放電制御方法のフローチャートを示す。
初期の放電下限電圧はVaに設定されており、Va以上、Vchg以下の電圧領域で充放電を行う。
電圧がVcに到達した時点で搭乗者にVb以上、Va以下の電圧領域を使用するか選択させる。搭乗者が使用を選択した場合にのみ放電下限電圧をVaからVbへと変更する。前記二次電池を電圧Vc以下まで放電後、充電に伴いセル電圧がVcよりも高い電圧となったときに放電下限電圧をVbからVaへと変更する。
放電容量Cv、Cv、Cvが満たすべき関係性について説明する。
各電圧Va、Vbまでの放電容量Cv、Cvの差分Cv−Cvは0.1以上、0.4以下の関係を満たすことが望ましい。Cv−Cvが0.1以下だと放電下限電圧をVbへと切り替えてから走行可能な距離が短く、また0.1以下の領域の使用を制限したとしてもサイクル特性の大きな向上が見込めないためである。また、Cv−Cvが0.4以上だとサイクル特性の向上が可能となるものの、放電下限電圧がVaに達するまでに走行可能な距離に大幅な制限を加えることになるため、上限は0.4程度とすることが望ましい。
また各電圧Va、Vcまでの放電容量Cv、Cvの差分Cv−Cvは0.05以上、0.2以下の関係を満たすことが望ましい。Cv−Cvが0.05以下だと電圧Vcに到達し、放電下限電圧の変更を搭乗者が選択するために十分な時間が得られないためである。また、Cv−Cvが0.2以上だと搭乗者に放電下限電圧の変更を選択させてから放電下限電圧Vaに到達するまでに十分長い時間がかかるため、その時点で放電下限電圧Va以下の容量を使用するか搭乗者が予想し、選択することが困難となるためである。
上記放電容量Cv、Cv、Cvに対応する電圧Va、Vb、Vcは二次電池の正極活物質、負極活物質などの各構成要素および放電レート、放電時の温度に依存することを考慮し、放電下限電圧Va、Vb、電圧Vcは、あらかじめ各二次電池について種種の放電レート、温度で測定した放電曲線を元に決定される。放電下限電圧Va、Vb、電圧Vcの決定方法を図3、4を用いて説明する。ここでVchgは4.2V、Vcは2.5Vとし測定した結果を示すが、各電圧はこの値に限定されるものではなく、電池の構成要素および放電条件に応じて任意の値を取りうる。
図3に放電レート0.2C、1.0C、温度25℃、45℃で測定した放電曲線を示す。ここで正極活物質としてリチウムニッケル複合酸化物、負極活物質として炭素、セパレータとしてポリオレフィン系の微多孔薄膜、電解液としてエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートの混合溶媒を用い構成されたリチウムイオン電池を使用している。
図4に放電レート0.2C、2.0C、温度25℃で測定した放電曲線、および各SOCでの内部抵抗を元に概算した放電レート5.0Cでの放電曲線を示す。ここで正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物、負極活物質として炭素、セパレータとしてポリオレフィン系の微多孔薄膜、電解液としてエチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートの混合溶媒を用い構成されたリチウムイオン電池を使用している。
図3、4で得られた放電曲線を元に各条件における放電容量と対応する電圧の関係についてそれぞれ表1に示す。ここでVb=2.5Vまでの容量Cvを1として表記している。正極活物質にリチウムニッケル複合酸化物を用い、温度25℃で0.2C、温度25℃で1.0C、温度45℃で0.2C、温度45℃で1.0Cの条件で放電した曲線をそれぞれNo.1、2、3、4、正極活物質にリチウムコバルト複合酸化物を用い、温度25℃で0.2C、2.0C、5.0Cの条件で放電した曲線をNo.5、6、7とする。
表1に示されるように同じ放電容量であっても、放電レート、温度、正極活物質の種類により対応する電圧は異なる。より関係性を明確にするため、一例としてCv=0.85、Cv=0.75での各条件における電圧を表2に示す。
表2に示されるとおりCv、Cvの値が同じであっても対応する電圧は電池の放電レート、放電時の温度また、電池の正極材料といった構成要素に依存する。
よって、本発明における放電制御方法の実施に際しては、各電圧Va、Vb、Vcを決めるために、あらかじめ各二次電池について各放電レート、温度で測定された放電曲線を元に、使用条件に応じて異なる値を設定する。
本発明の二次電池の放電制御方法は、放電下限電圧を制限することでサイクル特性を向上し、放電下限電圧の変更を搭乗者自身が選択した場合には長距離走行を可能とする点で優れている。したがって、この二次電池の放電制御方法は、二次電池を電源として駆動する電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自転車、電動二輪車といった様々な車両において有用である。

Claims (9)

  1. 正極活物質を有する正極、負極活物質を有する負極、前記正極と前記負極の間に配置されたセパレータ、電池ケースならびに電解質を有する車両用二次電池の放電制御方法であって、前記二次電池が異なる二つの放電下限電圧Va、Vbを有し、搭乗者の選択で前記放電下限電圧を電圧Vaから電圧Vbへと変更可能な車両用二次電池の放電制御方法。
  2. 前記放電下限電圧VbがVaよりも低いことを特徴とする請求項1記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  3. 前記二次電池の放電中に、前記二次電池の電圧が前記放電下限電圧VaおよびVbよりも高いVcに到達した時点で、前記放電下限電圧の変更を前記搭乗者に選択させることを特徴とする請求項2に記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  4. 前記二次電池を電圧Vc以下まで放電後、前記二次電池の電圧がはじめて前記電圧Vc以上となったときに、前記放電下限電圧をVaへと変更することを特徴とする請求項2または3記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  5. 前記放電下限電圧Vbまでの放電容量Cvを1とした際に、前記放電下限電圧Vaまでの放電容量Cvおよび前記放電容量Cvの差分Cv−Cvが0.1以上0.4以下であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  6. 前記放電下限電圧Vbまでの放電容量Cvを1とした際に、前記放電容量Cvおよび前記放電下限電圧Vcまでの放電容量Cvの差分Cv−Cvが0.05以上0.2以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  7. 前記二次電池が非水電解質二次電池であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  8. 前記正極活物質がリチウムニッケル複合酸化物を含むことを特徴とする請求項7に記載の車両用二次電池の放電制御方法。
  9. 前記負極活物質がチタン酸リチウムを含むことを特徴とする請求項7または8に記載の車両用二次電池の放電制御方法。
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