JP2013137230A - ボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法 - Google Patents

ボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】溶射皮膜を除去することなく、溶射皮膜に存在する周方向亀裂の影響を回避して、母管の軸方向亀裂の位置や形状を予測することができ、かつ母管の損傷レベルを予測することができ、これにより溶射皮膜の除去(剥離作業)と研磨の必要箇所を大幅に縮小することができるボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法を提供する。
【解決手段】溶射皮膜3の表面から磁粉探傷検査(MT)を実施して磁粉の分布を検出し、磁粉の分布から溶射皮膜3に存在する軸方向亀裂4の有無を評価する。軸方向亀裂4がある場合に、その位置における溶射皮膜3のひずみを計測して、それから母管材料のひずみを予測する。予測値が閾値未満の場合に、その箇所を補修なしで再使用する。
【選択図】図5

Description

本発明は、ボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法に関する。
石炭や重油を燃料とする大型の水管ボイラでは、燃焼により発生するNOxやSOxを低減するために燃焼時の酸素比率が低い希薄燃焼(低酸素燃焼)が適用される。この場合、燃料を燃焼させる火炉(燃焼室)では、ラジカルな亜硫酸イオンが発生するため、火炉を構成する水管(火炉壁管)が腐食されやすい。
そこで、水管ボイラでは、火炉壁管の腐食防止を主目的として、火炉壁管の表面に耐腐食材料を溶射することが広く行われている。以下、耐腐食材料を溶射した火炉壁管を「溶射管」と呼ぶ。
溶射管に適用される耐腐食材料は、例えば非特許文献1に開示されており、代表的には50Ni−50Crである。
一方、火炉が溶射管で構成された水管ボイラであっても、燃焼に関与する微粉炭用ミルやバーナの運用状況によって火炉の熱負荷が増大し、溶射管の内面に存在する水管(以下、母管)にクリープ損傷が生ずることがある。
この現象は、貫流ボイラ(特に、超超臨界圧ボイラ)では顕著であり、火炉壁管へ供給する水量が不足すると部分的に溶射管が過熱され、その部分のフープ応力が過大となって、溶射管が部分的に膨出して表面に軸方向亀裂(クリープ損傷)を生じ、さらに軸方向亀裂が進展して貫通し内部から蒸気が漏洩することがある。以下、部分的に膨出した溶射管を「膨出管」、内部から蒸気が漏洩した溶射管を「漏洩管」と呼ぶ。
なお、「軸方向亀裂」とはフープ応力に起因し、軸方向に延びる亀裂を意味する。
上述した溶射皮膜の欠陥を検出する手段は、例えば特許文献1に提案されている。
この方法は、皮膜表面上の2地点に微小電流を流した状態で、2地点の内側に位置した別の2地点間の電気抵抗を測定し、これを予め同条件で測定した正常皮膜の電気抵抗値と比較するものである。
特開2007−155368号公報、「導電性コーティング皮膜の欠陥検出方法及びそれに使用する検査装置」
「ボイラ用耐腐食・耐摩耗溶射材料の開発と実機適用実績」、上道良太、他、火力原子力発電、Jun.2004、P54−60
上述した膨出管や漏洩管が発生すると、ボイラの運転継続が困難又は不可能になる。
そのため、膨出管や漏洩管が発生する前に、溶射管表面の軸方向亀裂(クリープ損傷)を早期に発見し修復することが、従来から望まれていた。
上述した特許文献1の手段では、検出できるのが導電性コーティング皮膜の欠陥に限られるため、母管のクリープ損傷は検出できなかった。
また、溶射管の軸方向の熱膨張により溶射皮膜には周方向亀裂が通常存在する。「周方向亀裂」とは熱膨張に起因し、周方向に延びる亀裂を意味する。
この周方向亀裂は、溶射管のクリープ損傷との相関が低いことが知られている。しかし、特許文献1の手段では、周方向亀裂による電気抵抗の変化も同様に検出するため、欠陥検出の精度が低い問題点があった。
また、検出されるのが電気抵抗値のみであるので、表面亀裂の位置や形状が判断できなかった。
また、皮膜表面の抵抗(汚れに起因する)により、電気抵抗値が大きく変動するため、皮膜表面を正常皮膜と同程度まで洗浄する必要があった。
そのため、従来のクリープ損傷検査では、溶射管の表面から溶射皮膜を除去して母管の表面を露出させ、母管表面を鏡面状態まで研磨し、母管表面の組織をSUMP検査等で検査していた。
なお、SUMP検査とは、母管表面の組織を樹脂フィルムに転写してレプリカを作成し、このレプリカを顕微鏡等で検査して非破壊的に組織を観察する方法である。
しかしかかる従来のクリープ損傷検査は、溶射皮膜の除去(剥離作業)と研磨に多大な労力を必要とする問題点があった。
特に、大型水管ボイラの火炉壁管の面積は非常に大きく、その全面の溶射皮膜を除去するには、長期間、ボイラの稼動を停止する必要が生じ、稼働率が大幅に低下することとなる。
また、火炉壁管の大部分の箇所は損傷がないにも関らず、検査後に再度皮膜を溶射する必要があり、結果的に無駄な労力を要していた。
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、溶射皮膜を除去することなく、溶射皮膜に存在する周方向亀裂の影響を回避して、母管の軸方向亀裂の位置や形状を予測することができ、かつ母管の損傷レベルを予測することができ、これにより溶射皮膜の除去(剥離作業)、研磨、及び再溶射の必要箇所を大幅に縮小することができるボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法を提供することにある。
本発明によれば、水管ボイラの火炉壁管を構成する母管とその表面に溶射された溶射皮膜とからなる溶射管のクリープ損傷評価方法であって、
(A)母管材料の母管限界ひずみと、溶射皮膜の皮膜限界ひずみとをそれぞれ予め計測して、母管限界ひずみが皮膜限界ひずみより大きいことを確認し、
(B)溶射皮膜の表面から磁粉探傷検査を実施して磁粉の分布を検出し、
(C)前記磁粉の分布から溶射皮膜に存在する軸方向亀裂の有無を評価する、ことを特徴とするボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法が提供される。
溶射管の母管表面と溶射による溶射皮膜は、非常に強く結合されており、膨出管や漏洩管においても皮膜が剥離しないことが確認されている。
従って、火炉の熱負荷が増大し、内圧により溶射管に過大なフープ応力(周方向応力)が作用する場合には、母管表面と溶射皮膜にはほぼ同一のひずみが発生する。
一方、溶射管の母管材料は、一般的に耐熱性のある鉄系材料であり、その限界ひずみは溶射皮膜より大きい(例えば3%前後)。
また、溶射管の溶射皮膜は、一般的に耐腐食性、耐摩耗のある非鉄系材料(代表的には50Ni−50Cr)であり、その限界ひずみは母管材料より小さい(例えば0.3%前後)。
従って、ほとんどすべての水管ボイラにおいて、母管の限界ひずみは溶射皮膜の限界ひずみより大きく、フープ応力により母管表面に軸方向亀裂が発生する時には、ほぼ確実に溶射皮膜にも同一箇所に軸方向亀裂が発生する。しかし、逆に母管表面に軸方向亀裂が発生しない時であっても、溶射皮膜に軸方向亀裂が発生する場合がある。
従って、溶射皮膜に軸方向亀裂が無ければ、その箇所の母管は健全であると判断できる。
また、溶射皮膜に軸方向亀裂があっても、そのひずみが小さければ、その箇所の母管は健全であると判断できる。
さらに、溶射皮膜に軸方向亀裂があり、そのひずみが大きい場合には、その箇所の母管は損傷を受けている可能性があると判断できる。
従来、磁粉探傷検査の検査対象となるのは、強磁性体と呼ばれる「磁力に引き寄せられる材料」に限られるとされていた。そのため、非鉄系材料である溶射皮膜は、非磁性体であるため、磁粉探傷検査が適用できないと考えられていた。
しかし、本発明の発明者等は、母管と溶射皮膜の双方の同一箇所に軸方向亀裂が発生している場合には、磁粉探傷検査により軸方向亀裂が発生している同一の箇所を検出できることを新規に発見した。
本発明は、かかる新規の知見に基づくものである。
上記本発明の方法によれば、溶射皮膜の表面から磁粉探傷検査を実施して磁粉の分布を検出するので、溶射皮膜を除去することなく、かつ溶射皮膜に存在する周方向亀裂の影響を回避して、この分布から溶射皮膜に存在する軸方向亀裂の有無を評価することができる。従って、軸方向亀裂が無い箇所の溶射皮膜の除去(剥離作業)、研磨、及び再溶射を不要にできる。
また、軸方向亀裂がある場合に、母管の軸方向亀裂の位置や形状を予測することができ、その位置における溶射皮膜のひずみを計測して、それから母管材料のひずみを予測することで、母管材料の損傷レベルを検出することができる。従って、損傷レベルが低い箇所の溶射皮膜の除去(剥離作業)、研磨、及び再溶射を不要にできる。
本発明を適用する溶射管の模式図と亀裂の説明図である。 母管の損傷比率とクリープひずみとの関係図である。 溶射皮膜の膜厚と割れ発生限界ひずみとの関係図である。 ラーソンミラーパラメータと割れ発生限界ひずみとの関係図である。 本発明の方法の全体フロー図である。 磁粉探傷検査により検出された軸方向亀裂を示す写真とその模式図である。
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照して説明する。なお各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
図1は、本発明を適用する溶射管1の模式図と亀裂の説明図である。この図において(A)は断面図、(B)は斜視図、(C)は亀裂部の断面写真である。
図1(A)に示すように、本発明を適用する溶射管1は、水管ボイラの火炉壁管を構成する母管2と、母管2の火炉側表面に溶射された溶射皮膜3とからなる。
母管2は、この例では外径32mm、厚さ6mmのボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管(STB410)である。なお、母管2は、この例に限定されず、耐熱性のある鉄系材料(強磁性体)であり、その限界ひずみが溶射皮膜3より大きければよい。
なお「限界ひずみ」とは、材料の表面に割れが発生する最小ひずみを意味する。
溶射皮膜3は、この例では50Ni−50Cr系の溶射用材料であり、膜厚は200〜400μmである。なお、溶射皮膜3は、この例に限定されず、耐腐食性、耐摩耗のある非鉄系材料であり、その限界ひずみが母管2より小さければよい。
溶射管1が過熱され、溶射管1が部分的に膨出して表面に軸方向に延びる軸方向亀裂4(クリープ損傷)を生じ、さらに軸方向亀裂4が進展して貫通し内部から蒸気が漏洩する場合に、膨出管及び漏洩管を調査した結果、これらはすべて、メタル温度の上昇による短時間のクリープ損傷と判断できることが明らかとなった。
またこれらのクリープ損傷は、片面からの過熱により発生しており、その損傷に寄与している主な応力は、流体側の内圧Pによるフープ応力σ(管の円周方向応力)と判断される。
フープ応力σは、溶射管1の寸法と流体側の内圧Pから、算出することができる。
また、図1(C)から、母管2の表面と溶射皮膜3に、ほぼ同一の大きさの亀裂が発生していることがわかる。
図2は、母管の損傷比率とクリープひずみとの関係図である。この図において、横軸は母管の損傷比率、縦軸はクリープひずみ(%)である。なおこの図は、ボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管(STBA24)の例である。
また図中の■は、部分的に膨出した「膨出管」の例を示している。
なお、ボイラ・熱交換器用炭素鋼鋼管(STB410)とボイラ・熱交換器用合金鋼鋼管(STBA24)の違いはあるが、母管の損傷比率とクリープひずみとの関係は、材料の相違により大きく変化しないと予想される。
図2から、母管2の損傷比率が0.9の場合、クリープひずみは約3%であり、クリープひずみが約3%に達すると、母管2の90%が損傷すると考えることができる。すなわち、母管2の限界ひずみは約3%であると考えられる。
一方、蒸気漏洩が発生した漏洩管を観察した結果、漏洩管はクリープの進行により膨出し、管の外面に軸方向に延びる微小な軸方向亀裂4が発生していることが確認された。
また、膨出管と漏洩管の管断面のプロファイルを基に、クリープひずみを試算した結果、膨出時、蒸気漏洩時とも、ひずみは約3%程度と試算された。
これらの結果と図2から、母管2は約3%程度のクリープひずみの進行によって損傷(外面の軸方向亀裂4又はその肉厚貫通)に至っていることが検証された。
図3は、溶射皮膜の膜厚と割れ発生限界ひずみとの関係図である。この図において、横軸は溶射皮膜の膜厚(μm)、縦軸は割れ発生限界ひずみ(%)である。なおこの図は、50Ni−50Cr系の溶射用材料の例である。
なお、「割れ発生限界ひずみ」とは、割れが発生する最小ひずみを意味し、上述した限界ひずみと同じである。
図3から、溶射皮膜3の膜厚が200〜400μmの場合、割れ発生限界ひずみは、約0.3%前後(0.25〜0.35%)であることがわかる。
図4は、50Ni−50Cr系の溶射用材料のラーソンミラーパラメータと割れ発生限界ひずみとの関係図である。この図において、横軸はラーソンミラーパラメータP、縦軸は割れ発生限界ひずみ(%)である。
なお、ラーソンミラーパラメータとは、異なる温度におけるクリープ破断データを統一的に整理するためのパラメータである。ラーソンミラーパラメータPは、この例では式(1)で求めている。
P=T×(logt+15)×10−3・・・(1)
ここでTは絶対温度(K)、tは破断時間(h)である。
図4から、50Cr−50Ni系溶射用材料の割れ発生限界ひずみは、600℃、100時間の場合に、約0.3%と予想される。
また、母管2の外表面に軸方向亀裂4が生じた膨出管及び蒸気漏洩管の断面ミクロ写真からも、母管2の微小亀裂発生前に溶射皮膜3が割れているものと推定できる。
以上の検討結果から、高温(例えば600℃)におけるクリープ損傷が発生する場合の母管2の割れ発生限界ひずみは約3%であり、溶射皮膜3の割れ発生限界ひずみは、約0.3%である、と予想される。
言い換えれば、溶射管1の母管2の材料は、一般的に耐熱性のある鉄系材料であり、その限界ひずみは溶射皮膜3より大きい(例えば3%前後)。
また、溶射管1の溶射皮膜3は、一般的に耐腐食性、耐摩耗のある非鉄系材料(代表的には50Ni−50Cr)であり、その限界ひずみは母管2の材料より小さい(例えば0.3%前後)。
以下、母管2の割れ発生限界ひずみを「母管限界ひずみ」、溶射皮膜3の割れ発生限界ひずみを「皮膜限界ひずみ」と呼ぶ。
一方、溶射管1の母管2の表面と溶射による溶射皮膜3は、非常に強く結合されており、膨出管や漏洩管においても皮膜が剥離しないことが確認されている。
従って、火炉の熱負荷が増大し、内圧により溶射管1に過大なフープ応力(周方向応力)が作用する場合には、母管2の表面と溶射皮膜3にはほぼ同一のひずみが発生する。
以上の結果から、フープ応力により母管2の表面に軸方向に延びる軸方向亀裂4が発生する時には、ほぼ確実に溶射皮膜3にも同一箇所に軸方向亀裂4が発生するが、逆に母管2の表面に軸方向亀裂4が発生しない時であっても、溶射皮膜3に軸方向亀裂4が発生する場合があることがわかる。
言い換えれば、溶射管1が過熱され管内面流体の圧力Pによるフープ応力σが作用した場合は、溶射皮膜3の割れが先に生じ、その後に母管2の表面に軸方向亀裂4が発生すると判断される。
なお、溶射管1の軸方向の熱膨張により溶射皮膜3には周方向に延びる周方向亀裂5(図6参照)が通常存在する。この周方向亀裂5は、溶射管1のクリープ損傷との相関は低いことが知られている。
図5は、上述した新規の知見に基づく、本発明の方法の全体フロー図である。この図において、本発明のクリープ損傷評価方法は、水管ボイラの火炉壁管を構成する母管2とその表面に溶射された溶射皮膜3とからなる溶射管1のクリープ損傷評価方法であって、S1〜S11の各ステップ(工程)からなる。
S1では、母管2の材料と皮膜材料3の限界ひずみをそれぞれ予め計測する。
上述の例では、母管2の材料の限界ひずみ(母管限界ひずみ)は3%前後であり、皮膜材料3の限界ひずみ(皮膜限界ひずみ)は0.3%前後である。
S2では、母管限界ひずみと皮膜限界ひずみの大きさを比較する。S2において、皮膜限界ひずみの方が大きい場合には、本発明の適用外である。
なお、ほとんどすべての水管ボイラにおいて、母管限界ひずみは皮膜限界ひずみより大きいといえる。
S3では、溶射皮膜3の表面を清掃する。この清掃は例えばショットブラストにより、表面の異物(付着物)を除去する。なお、本発明では、電気抵抗値を計測する場合のように、表面の酸化物を除去する必要はなく、溶射皮膜3の表面が均等に露出すればよい。
また、この段階では、溶射皮膜3のSUMP検査のための研磨も不要である。
次いで、S4において、溶射皮膜3の表面から磁粉探傷検査を実施し、溶射皮膜3の表面における磁粉の分布を検出する。
磁粉探傷検査(Magnetic particle Testing:MT)とは、検査対象(この例では溶射皮膜3の表面)に細かい強磁性体の粉(磁粉)を振りかけ、傷や小さな凹みのある箇所に磁粉が引き寄せられることにより、視認しにくい大きさの微細な傷や凹みを検出する非破壊検査である。
本発明では、磁粉探傷検査(MT)の一種である極間法を適用した。「極間法」とは、検査される部位を電磁石又は永久磁石の磁極間に位置決めし、磁極間を磁化する方法である。
従来、磁粉探傷検査(MT)の検査対象となるのは、強磁性体と呼ばれる「磁力に引き寄せられる材料」に限られるとされていた。そのため、非鉄系材料である溶射皮膜3は、非磁性体であるため、磁粉探傷検査が適用できないと考えられていた。
しかし、本発明の発明者等は、母管2と溶射皮膜3の双方の同一箇所に軸方向亀裂4が発生している場合には、磁粉探傷検査により軸方向亀裂4が発生している同一の箇所を検出できることを新規に発見した。
S5において、磁粉探傷検査(極間法)による磁粉の分布から溶射皮膜3に存在する軸方向に延びる軸方向亀裂4の有無を判断する。
上述したように、溶射皮膜3は非磁性体であるが、その膜厚は薄く(200〜400μm)、かつ母管2は強磁性体であるため、母管2と溶射皮膜3の双方の同一箇所に軸方向亀裂4が発生している場合には、磁粉探傷検査により軸方向亀裂4が発生している箇所を検出できる。
この場合、溶射皮膜3の表面は鏡面ではなく凹凸があるので、微細な亀裂は目視では判別できない。しかし、磁粉探傷検査(極間法)による磁粉の分布からは、微細な亀裂であっても容易に検出することができる。
なお、磁粉の分布から、周方向に延びる周方向亀裂5も検出されるが、周方向亀裂5は、溶射管1のクリープ損傷との相関が低いことから、本発明では検出から除外する(無視する)。
S5において、軸方向に延びる軸方向亀裂4が無い場合には、母管2の表面にクリープ損傷がないと判断することができ、その箇所は補修することなく再使用することができる(S12)。
S5において、軸方向亀裂4が有る場合には、S6において、その位置における溶射皮膜3のひずみを計測して、それから母管材料のひずみを予測する。
溶射皮膜3のひずみは、溶射皮膜3の表面を鏡面状態に研磨し、その表面の組織をSUMP検査で再検査することで、正確に計測することができる。
母管材料のひずみは、母管表面と溶射皮膜3にほぼ同一のひずみが発生することから、実質的に同一又は半径方向位置により補正することで予測することができる。
S7では、母管材料のひずみの予測値と補修を要する閾値とを比較する。
「補修を要する閾値」は、母管の損傷比率とクリープひずみとの関係図(図2)から、求めることができる。例えば、図2から、溶射皮膜3による割れ検出限界をひずみ約0.3%とすると、母管2のクリープ損傷は小さく、実用上十分な耐力を有していると考えられる。
従ってS7において、母管材料のひずみの予測値が前記閾値未満の場合(NO)には、その箇所を補修なしで再使用することができる(S12)。
なお、図2から、補修を要する閾値を母管の損傷比率0.5に対応する1〜2%と設定することができる。
この場合、溶射皮膜3にも1〜2%のひずみに相当する軸方向亀裂4が存在するため、磁粉探傷検査により容易かつ確実に検出することができる。
S7において、予測値が補修を要する閾値を超える場合(YES)には、その箇所を補修する。
補修は、補修する箇所の溶射管1の表面から溶射皮膜3を除去して母管2の表面を露出させ(S8)、母管表面を鏡面状態に研磨し(S9)、母管表面の組織をSUMP検査で再検査する(S10)。
次いで、再検査結果に基づき、必要な場合にその箇所を交換する。
図6は、磁粉探傷検査(MT)により検出された軸方向亀裂4と周方向亀裂5を示す写真(A)とその模式図(B)である。
上述したように、本発明によれば、磁粉探傷検査(MT)による溶射皮膜3の軸方向亀裂4の発生部を母管2の損傷部位とすることで、母管2のSUMPによる検査を大幅に省略できる。
よって、溶射皮膜3の検査により母管2のSUMP検査を大幅に省略することが可能となる。
なお、磁粉探傷検査で軸方向亀裂4が検出されていない部位では、SUMP検査でも異常が検出されず、良い相関があることが確認された。また、磁粉探傷検査では、肉眼で観察されない溶射皮膜3の微細な割れを検出することができた。
上述した本発明の方法によれば、溶射皮膜3の表面から磁粉探傷検査(MT)を実施して磁粉の分布を検出するので、溶射皮膜3を除去することなく、溶射皮膜3に存在する周方向亀裂5の影響を回避して、この分布から溶射皮膜3に存在する軸方向亀裂4の有無を評価することができる。従って、軸方向亀裂4が無い箇所の溶射皮膜3の除去(剥離作業)、研磨、及び再溶射を不要にできる。
また、軸方向亀裂4がある場合に、母管2の軸方向亀裂4の位置や形状を予測することができ、その位置における溶射皮膜3のひずみを計測して、それから母管材料のひずみを予測することで、母管材料の損傷レベルを検出することができる。従って、損傷レベルが低い箇所の溶射皮膜3の除去(剥離作業)、研磨、及び再溶射を不要にできる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
1 溶射管、2 母管、3 溶射皮膜、
4 軸方向亀裂、5 周方向亀裂

Claims (4)

  1. 水管ボイラの火炉壁管を構成する母管とその表面に溶射された溶射皮膜とからなる溶射管のクリープ損傷評価方法であって、
    (A)母管材料の母管限界ひずみと、溶射皮膜の皮膜限界ひずみとをそれぞれ予め計測して、母管限界ひずみが皮膜限界ひずみより大きいことを確認し、
    (B)溶射皮膜の表面から磁粉探傷検査を実施して磁粉の分布を検出し、
    (C)前記磁粉の分布から溶射皮膜に存在する軸方向亀裂の有無を評価する、ことを特徴とするボイラ火炉溶射管のクリープ損傷評価方法。
  2. 前記磁粉探傷検査を極間法で実施する、ことを特徴とする請求項1に記載のクリープ損傷評価方法。
  3. 前記(C)において、軸方向亀裂がある場合に、その位置における溶射皮膜のひずみを計測して、それから母管材料のひずみを予測し、
    予測値が補修を要する閾値を超える場合に、その箇所を補修し、
    予測値が前記閾値未満の場合に、その箇所を補修なしで再使用する、ことを特徴とする請求項1に記載のクリープ損傷評価方法。
  4. 補修する箇所の溶射管の表面から溶射皮膜を除去して母管の表面を露出させ、母管表面を鏡面状態に研磨し、母管表面の組織をSUMP検査で再検査する、ことを特徴とする請求項3に記載のクリープ損傷評価方法。
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