JP2013136139A - 硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】高速断続切削加工において硬質被覆層がすぐれた耐チッピング、耐欠損性を発揮する表面被覆切削工具を提供する。
【解決手段】硬質被覆層が化学蒸着された下部層と上部層とからなり、(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)前記上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、であり、前記上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上存在する。
【選択図】図2
【解決手段】硬質被覆層が化学蒸着された下部層と上部層とからなり、(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)前記上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、であり、前記上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上存在する。
【選択図】図2
Description
本発明は、高熱発生を伴うとともに、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する各種の鋼や鋳鉄の高速断続切削加工において、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を備えることにより、長期の使用に亘ってすぐれた切削性能を発揮する表面被覆切削工具(以下、被覆工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された工具基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、前記被覆工具は、切れ刃に大きな負荷がかかる切削条件では、チッピング損等を発生しやすく、工具寿命が短命であるという問題があるため、これを解消するために、従来からいくつかの提案がなされている。
(a)下部層が、いずれも化学蒸着形成された、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなるTi化合物層、
(b)上部層が、化学蒸着形成された酸化アルミニウム層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を形成してなる被覆工具が知られており、この被覆工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工に用いられていることが知られている。
ただ、前記被覆工具は、切れ刃に大きな負荷がかかる切削条件では、チッピング損等を発生しやすく、工具寿命が短命であるという問題があるため、これを解消するために、従来からいくつかの提案がなされている。
例えば、特許文献1には、硬質被覆層をTi等の炭化物、窒化物、炭窒化物、硼化物、硼窒化物の1種以上からなる下部層、および0.01〜0.5μmの粒度のアモルファスアルミナと結晶化アルミナで構成されるアルミナからなる上部層からなる被覆層を有することによって、この被覆層は微粒で緻密であり、しかも生産性が大であることが開示されている。
また、特許文献2には、WC基超硬合金基体の表面に、Al2O3層を含む硬質被覆層、例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiO2層、TiCO層、TiNO層およびTiCNO層からなるTi化合物層のうちの1種または2種以上と、Al2O3層で構成した硬質被覆層を2〜20μmの平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる表面被覆超硬合金製切削工具において、硬質被覆層を構成するAl2O3層を、Al2O3の主体がα型結晶構造を有し、かつ柱状結晶粒が縦方向に並列配置した結晶組織を有するAl2O3層で構成することによって、耐チッピング性にすぐれた被覆工具を提供することが開示されている。
さらに、特許文献3には、超硬合金の母材の表面に、上部層がAl2O3層、下部層がTiの炭化物、窒化物、炭窒化物、SiC、Si3N4の1種または2種以上からなり、上部層の下部層に最隣接する2μm以下のAl2O3層は化学蒸着法で生成されてなる結晶化Al2O3であり、上部層の2μm以上の層は化学蒸着法とプラズマ化学蒸着法を繰り返して生成された積層のAl2O3である被覆超硬合金を用いることによって刃先強度を著しく高めたコーティング工具が開示されている。
また、特許文献2には、WC基超硬合金基体の表面に、Al2O3層を含む硬質被覆層、例えば、TiC層、TiN層、TiCN層、TiO2層、TiCO層、TiNO層およびTiCNO層からなるTi化合物層のうちの1種または2種以上と、Al2O3層で構成した硬質被覆層を2〜20μmの平均層厚で化学蒸着および/または物理蒸着してなる表面被覆超硬合金製切削工具において、硬質被覆層を構成するAl2O3層を、Al2O3の主体がα型結晶構造を有し、かつ柱状結晶粒が縦方向に並列配置した結晶組織を有するAl2O3層で構成することによって、耐チッピング性にすぐれた被覆工具を提供することが開示されている。
さらに、特許文献3には、超硬合金の母材の表面に、上部層がAl2O3層、下部層がTiの炭化物、窒化物、炭窒化物、SiC、Si3N4の1種または2種以上からなり、上部層の下部層に最隣接する2μm以下のAl2O3層は化学蒸着法で生成されてなる結晶化Al2O3であり、上部層の2μm以上の層は化学蒸着法とプラズマ化学蒸着法を繰り返して生成された積層のAl2O3である被覆超硬合金を用いることによって刃先強度を著しく高めたコーティング工具が開示されている。
近年の切削加工における省力化および省エネ化の要求は強く、これに伴い、被覆工具は一段と過酷な条件下で使用されるようになってきているが、例えば、前記特許文献1乃至3に示される被覆工具においても、高熱発生を伴うとともに、より一段と切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いられた場合には、上部層の靭性が十分ではないために、切削加工時の高負荷によって切れ刃にチッピング、欠損が発生しやすく、その結果、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者らは、前述のような観点から、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する高速断続切削加工に用いられた場合でも、硬質被覆層がすぐれた衝撃吸収性を備え、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮する被覆工具について鋭意研究を行った結果、以下の知見を得た。
即ち、硬質被覆層として、従来の酸化アルミニウムからなる上部層を形成したものにおいては、酸化アルミニウムが基体に垂直方向に柱状をなして形成されている。そのため、高温硬さと耐摩耗性は向上するが、その反面、酸化アルミニウムの異方性が高くなるほど酸化アルミニウム層の靭性が低下する結果、耐チッピング性、耐欠損性が低下し、長期の使用に亘って十分な耐摩耗性を発揮することができず、また、工具寿命も満足できるものであるとはいえなかった。
そこで、本発明者らは、硬質被覆層の上部層を構成する酸化アルミニウム層について鋭意研究したところ、酸化アルミニウム層の高温硬さと耐摩耗性を何ら損なうことなく、酸化アルミニウム層の異方性を緩和し靭性を高めることによって、硬質被覆層の耐チッピング性、耐欠損性を向上させることができるという新規な知見を見出した。
そこで、本発明者らは、硬質被覆層の上部層を構成する酸化アルミニウム層について鋭意研究したところ、酸化アルミニウム層の高温硬さと耐摩耗性を何ら損なうことなく、酸化アルミニウム層の異方性を緩和し靭性を高めることによって、硬質被覆層の耐チッピング性、耐欠損性を向上させることができるという新規な知見を見出した。
具体的には、上部層を構成する酸化アルミニウム層が、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層を少なくとも2層以上存在させることにより、酸化アルミニウム層の異方性が緩和され、靭性が高められる。
そして、前述のような構成の酸化アルミニウム層は、例えば、以下の化学蒸着法によって成膜することができる。
(a)工具基体表面に、反応ガス組成(容量%)を、AlCl3:2〜3%、CO2:4〜6%、HCl:2〜3%、H2S:0.1〜0.5%、H2:残、として、反応雰囲気圧力を、5〜10kPaとして、反応雰囲気温度を、870〜1040℃として、化学蒸着法を行うことにより柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を成膜し、
(b)次いで、前記(a)の成膜工程を停止し、その後、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下、TMAで示す):0.08〜0.2%、O2:0.8〜1.5%、Ar:残とした副層形成条件で1〜10分間化学蒸着法を行うことにより微粒酸化アルミニウムの副層が形成され、
(c)次いで、前記(b)の工程後、前記(a)と同様の条件で化学蒸着法を行うことにより柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を成膜し、
(d)前記(b)、(c)の工程を繰り返し行なうことによって、微粒酸化アルミニウムの副層が少なくとも2層以上存在する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を得ることができる。
この時、副層により柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が完全に分断されることなく、柱状組織のまま成長することを見出した。その結果、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を低下させることなく、機械的、熱的な耐衝撃性を向上させることができるため、耐チッピング性、耐欠損性を向上させることができる。
(a)工具基体表面に、反応ガス組成(容量%)を、AlCl3:2〜3%、CO2:4〜6%、HCl:2〜3%、H2S:0.1〜0.5%、H2:残、として、反応雰囲気圧力を、5〜10kPaとして、反応雰囲気温度を、870〜1040℃として、化学蒸着法を行うことにより柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を成膜し、
(b)次いで、前記(a)の成膜工程を停止し、その後、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)(以下、TMAで示す):0.08〜0.2%、O2:0.8〜1.5%、Ar:残とした副層形成条件で1〜10分間化学蒸着法を行うことにより微粒酸化アルミニウムの副層が形成され、
(c)次いで、前記(b)の工程後、前記(a)と同様の条件で化学蒸着法を行うことにより柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を成膜し、
(d)前記(b)、(c)の工程を繰り返し行なうことによって、微粒酸化アルミニウムの副層が少なくとも2層以上存在する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を得ることができる。
この時、副層により柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が完全に分断されることなく、柱状組織のまま成長することを見出した。その結果、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を低下させることなく、機械的、熱的な耐衝撃性を向上させることができるため、耐チッピング性、耐欠損性を向上させることができる。
そして、酸化アルミニウム層中の微粒酸化アルミニウムの副層が1μmあたり1〜5層存在する場合には、特に、高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的負荷が作用する鋼や鋳鉄の高速断続切削加工に用いた場合でも、硬質被覆層が耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮し得ることを見出した。
本発明は、前記知見に基づいてなされたものであって、
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が化学蒸着された下部層と上部層とからなるとともに、
(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)前記上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
からなり、
前記(b)の上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在しており、該微粒酸化アルミニウムが粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相であり、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wは50〜2000nm、平均アスペクト比Aが5〜50であり、前記微粒酸化アルミニウムからなる副層の平均層厚が、5nm〜30nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記上部層を構成する酸化アルミニウム層に存在する微粒酸化アルミニウムからなる副層が1μmあたり1〜5層存在することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
「(1) 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が化学蒸着された下部層と上部層とからなるとともに、
(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)前記上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
からなり、
前記(b)の上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在しており、該微粒酸化アルミニウムが粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相であり、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wは50〜2000nm、平均アスペクト比Aが5〜50であり、前記微粒酸化アルミニウムからなる副層の平均層厚が、5nm〜30nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。
(2) 前記上部層を構成する酸化アルミニウム層に存在する微粒酸化アルミニウムからなる副層が1μmあたり1〜5層存在することを特徴とする(1)に記載の表面被覆切削工具。」
に特徴を有するものである。
本発明について、以下に詳細に説明する。
下部層のTi化合物層:
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができ、それ自体が高温強度を有し、この存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と酸化アルミニウムからなる上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、層厚が薄いため前記作用を十分に発揮させることができず、一方、その合計平均層厚が20μmを越えると、結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上のTi化合物層からなる下部層は、通常の化学蒸着条件で形成することができ、それ自体が高温強度を有し、この存在によって硬質被覆層が高温強度を具備するようになるほか、工具基体と酸化アルミニウムからなる上部層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性向上に寄与する作用をもつが、その合計平均層厚が3μm未満では、層厚が薄いため前記作用を十分に発揮させることができず、一方、その合計平均層厚が20μmを越えると、結晶粒が粗大化し易くなり、チッピングを発生しやすくなることから、その合計平均層厚を3〜20μmと定めた。
上部層の酸化アルミニウム層:
上部層を構成する酸化アルミニウム層が、高温硬さと耐熱性を備えることは既に良く知られているが、その平均層厚が2μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が25μmを越えると酸化アルミニウム結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、高速断続切削加工時の耐チッピング性、耐欠損性が低下するようになることから、その平均層厚を2〜25μmと定めた。
上部層を構成する酸化アルミニウム層が、高温硬さと耐熱性を備えることは既に良く知られているが、その平均層厚が2μm未満では、長期の使用に亘っての耐摩耗性を確保することができず、一方、その平均層厚が25μmを越えると酸化アルミニウム結晶粒が粗大化し易くなり、その結果、高温硬さ、高温強度の低下に加え、高速断続切削加工時の耐チッピング性、耐欠損性が低下するようになることから、その平均層厚を2〜25μmと定めた。
更に本発明は、前記の構成に加えて、以下の条件を併せ持つとき、より一層、すぐれた効果を発揮する。
上部層の酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在する構成とする。このような構成にすることによって、靭性が向上し、すぐれた耐チッピング性を示すようになる。ここで、副層の平均層厚が5nm未満であると副層の酸化アルミニウム層の異方性を緩和し、靭性を高めるという副層の持つ作用が十分に発揮されない。一方、副層の平均層厚が30nmを超えると柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を完全に分断させてしまい、その結果、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を維持できなくなる。したがって、副層の平均層厚は、5nm〜30nmと定めた。なお、本発明における微粒酸化アルミニウムとは、粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相を意味しており、これらを総称して微粒酸化アルミニウムと呼ぶ。
さらに、この副層は1μmあたり1層未満であると、前述した酸化アルミニウム層の異方性を緩和し、靭性を高めるという効果が十分に発揮されず、一方、1μmあたり5層を超えると柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を維持できなくなる。したがって、副層は1μmあたり1〜5層存在するように構成することが好ましい。
また、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の各結晶粒について、基体表面に平行な方向の粒子幅をwとし、その平均値を平均粒子幅Wとした場合、平均粒子幅Wが50nmよりも小さいと、長期間使用した際に耐摩耗性が低下する傾向があり、一方、2000nmを超えると、粒子の粗大化により耐チッピング性、耐欠損性が低下する傾向がある。したがって、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wは、50〜2000nmとすることがより好ましい。また、柱状縦長成長酸化アルミニウムの各結晶粒について、基体表面に垂直な方向の粒子長さをlとし、前記粒子幅wとlとの比を各結晶粒のアスペクト比aとし、さらに、個々の結晶粒について求めたアスペクト比aの平均値を平均アスペクト比Aとした場合、平均アスペクト比Aが5より小さいと、柱状縦長成長酸化アルミニウムの特徴である高い耐摩耗性が低下する傾向があり、一方、50を超えると、かえって靭性が低下し、耐チッピング性、耐欠損性が低下する傾向がある。したがって、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均アスペクト比Aは5〜50とすることがより好ましい。ここで本発明では、柱状縦長成長酸化アルミニウムの1つの粒子を計測したとき、基体表面に平行な方向の定方向最大径を粒子幅wと呼び、一方、基体表面に垂直な方向の定方向接線径を粒子長さlと呼ぶ。
上部層の酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在する構成とする。このような構成にすることによって、靭性が向上し、すぐれた耐チッピング性を示すようになる。ここで、副層の平均層厚が5nm未満であると副層の酸化アルミニウム層の異方性を緩和し、靭性を高めるという副層の持つ作用が十分に発揮されない。一方、副層の平均層厚が30nmを超えると柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を完全に分断させてしまい、その結果、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を維持できなくなる。したがって、副層の平均層厚は、5nm〜30nmと定めた。なお、本発明における微粒酸化アルミニウムとは、粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相を意味しており、これらを総称して微粒酸化アルミニウムと呼ぶ。
さらに、この副層は1μmあたり1層未満であると、前述した酸化アルミニウム層の異方性を緩和し、靭性を高めるという効果が十分に発揮されず、一方、1μmあたり5層を超えると柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織が有する高い耐摩耗性を維持できなくなる。したがって、副層は1μmあたり1〜5層存在するように構成することが好ましい。
また、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の各結晶粒について、基体表面に平行な方向の粒子幅をwとし、その平均値を平均粒子幅Wとした場合、平均粒子幅Wが50nmよりも小さいと、長期間使用した際に耐摩耗性が低下する傾向があり、一方、2000nmを超えると、粒子の粗大化により耐チッピング性、耐欠損性が低下する傾向がある。したがって、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wは、50〜2000nmとすることがより好ましい。また、柱状縦長成長酸化アルミニウムの各結晶粒について、基体表面に垂直な方向の粒子長さをlとし、前記粒子幅wとlとの比を各結晶粒のアスペクト比aとし、さらに、個々の結晶粒について求めたアスペクト比aの平均値を平均アスペクト比Aとした場合、平均アスペクト比Aが5より小さいと、柱状縦長成長酸化アルミニウムの特徴である高い耐摩耗性が低下する傾向があり、一方、50を超えると、かえって靭性が低下し、耐チッピング性、耐欠損性が低下する傾向がある。したがって、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均アスペクト比Aは5〜50とすることがより好ましい。ここで本発明では、柱状縦長成長酸化アルミニウムの1つの粒子を計測したとき、基体表面に平行な方向の定方向最大径を粒子幅wと呼び、一方、基体表面に垂直な方向の定方向接線径を粒子長さlと呼ぶ。
副層を構成する微粒酸化アルミニウムの形成:
本発明の微粒酸化アルミニウムは、通常の化学蒸着条件で成膜した上部層の形成過程の間に原料としてTMAを用いた副層形成条件で化学蒸着法を行うことによって形成することができる。
すなわち、下記に示すような、通常の酸化アルミニウムの化学蒸着条件と副層形成条件を交互に行うことにより、微粒酸化アルミニウムからなる少なくとも2層以上の副層が形成される。
化学蒸着条件:
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜3%、
CO2:4〜6%、
HCl:2〜3%、
H2S:0.1〜0.5%、
H2:残、
反応雰囲気温度:870〜1040℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
副層形成条件:
反応ガス組成(容量%):
TMA:0.08〜0.2%、
O2:0.8〜1.5%、
Ar:残、
反応雰囲気温度:870〜1040℃、
反応雰囲気圧力:1〜1.5kPa、
ここで、微粒酸化アルミニウムからなる副層はTMAを用いた副層形成条件により形成されるので、成膜中に副層形成条件による工程を行った回数が副層の層数に対応している。したがって、副層の層数、すなわち副層形成条件による工程を行った回数を上部層全体の平均層厚(μm)で除した値が、1μmあたりに存在する副層となる。
本発明の上部層を構成する酸化アルミニウム層の柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織の成長状態を模式的に表した図を図1に示す。
前記化学蒸着条件で形成された本発明の上部層を構成する酸化アルミニウム層に存在する前記副層形成条件で形成された微粒酸化アルミニウムからなる副層の存在形態の概略模式図を図2に示す。
本発明の微粒酸化アルミニウムは、通常の化学蒸着条件で成膜した上部層の形成過程の間に原料としてTMAを用いた副層形成条件で化学蒸着法を行うことによって形成することができる。
すなわち、下記に示すような、通常の酸化アルミニウムの化学蒸着条件と副層形成条件を交互に行うことにより、微粒酸化アルミニウムからなる少なくとも2層以上の副層が形成される。
化学蒸着条件:
反応ガス組成(容量%):
AlCl3:2〜3%、
CO2:4〜6%、
HCl:2〜3%、
H2S:0.1〜0.5%、
H2:残、
反応雰囲気温度:870〜1040℃、
反応雰囲気圧力:5〜10kPa、
副層形成条件:
反応ガス組成(容量%):
TMA:0.08〜0.2%、
O2:0.8〜1.5%、
Ar:残、
反応雰囲気温度:870〜1040℃、
反応雰囲気圧力:1〜1.5kPa、
ここで、微粒酸化アルミニウムからなる副層はTMAを用いた副層形成条件により形成されるので、成膜中に副層形成条件による工程を行った回数が副層の層数に対応している。したがって、副層の層数、すなわち副層形成条件による工程を行った回数を上部層全体の平均層厚(μm)で除した値が、1μmあたりに存在する副層となる。
本発明の上部層を構成する酸化アルミニウム層の柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織の成長状態を模式的に表した図を図1に示す。
前記化学蒸着条件で形成された本発明の上部層を構成する酸化アルミニウム層に存在する前記副層形成条件で形成された微粒酸化アルミニウムからなる副層の存在形態の概略模式図を図2に示す。
本発明で、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が存在している構造は、微粒酸化アルミニウムの副層の存在によって、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織に力が加わった際に、1つ1つの柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶にずれが生じるため、大きな靭性を生じることになる。その結果、耐チッピング性、耐欠損性向上という効果が発揮される。
本発明の被覆工具は、硬質被覆層として、化学蒸着された下部層と上部層とからなり、(a)下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、からなり、(b)の上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在しており、該微粒酸化アルミニウムが粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相であり、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wが50〜2000nm、平均アスペクト比Aが5〜50であり、微粒酸化アルミニウムからなる副層の平均層厚が、5nm〜30nmであることにより、硬質被覆層の靱性が向上するとともに、熱伝導率が抑制され、熱遮蔽効果が向上するので、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合でも、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮し、被覆工具の長寿命化が達成されるものである。
つぎに、本発明の被覆工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3C2粉末、TiN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG120412に規定するインサート形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Eをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.09mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG120412のインサート形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜eを形成した。
つぎに、これらの工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、通常の化学蒸着装置を用い、
(a)硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成する。
(b)次いで、表6に示される目標層厚の上部層(酸化アルミニウム層)からなる硬質被覆層を蒸着形成する。
(c)この時、表4に示される条件で酸化アルミニウム層を成膜する際に、表4に示される反応ガス種別欄上段側の柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織形成条件と下段側の副層形成条件を交互に行いながら酸化アルミニウム層を蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15を製造した。そして、成膜中にTMAを用いた副層形成条件による工程を行った回数を上部層の平均層厚(μm)で割ることによって、上部層における1μmあたりの副層の層数を求めた。
(a)硬質被覆層の下部層として、表3に示される条件かつ表6に示される目標層厚でTi化合物層を蒸着形成する。
(b)次いで、表6に示される目標層厚の上部層(酸化アルミニウム層)からなる硬質被覆層を蒸着形成する。
(c)この時、表4に示される条件で酸化アルミニウム層を成膜する際に、表4に示される反応ガス種別欄上段側の柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織形成条件と下段側の副層形成条件を交互に行いながら酸化アルミニウム層を蒸着形成することにより本発明被覆工具1〜15を製造した。そして、成膜中にTMAを用いた副層形成条件による工程を行った回数を上部層の平均層厚(μm)で割ることによって、上部層における1μmあたりの副層の層数を求めた。
前記本発明被覆工具1〜15の上部層を構成する酸化アルミニウム層について、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて複数視野に亘って観察したところ、図1に示した膜構成模式図に示される柱状結晶の粒界および粒内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が存在する膜構造が確認された。
また、前記本発明被覆工具1〜15の上部層を構成する酸化アルミニウム層について、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて複数視野に亘って観察したところ、図2に示した膜構成模式図に示される柱状結晶の粒界および粒内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が存在する膜構造が確認された。
さらに、前記本発明被覆工具1〜15の上部層を構成する酸化アルミニウム層について、透過型電子顕微鏡(倍率200000倍)を用いて複数の視野に亘って観察し、微粒酸化アルミニウムについて電子線回折を行った結果、前記微粒酸化アルミニウムは、粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相の混合相であることが確認された。
また、前記本発明被覆工具1〜15の上部層を構成する酸化アルミニウム層について、走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて複数視野に亘って観察したところ、図2に示した膜構成模式図に示される柱状結晶の粒界および粒内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が存在する膜構造が確認された。
さらに、前記本発明被覆工具1〜15の上部層を構成する酸化アルミニウム層について、透過型電子顕微鏡(倍率200000倍)を用いて複数の視野に亘って観察し、微粒酸化アルミニウムについて電子線回折を行った結果、前記微粒酸化アルミニウムは、粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相の混合相であることが確認された。
また、比較の目的で、工具基体A〜Eおよび工具基体a〜eの表面に、表3に示される条件かつ表7に示される目標層厚で本発明被覆工具1〜15と同様に、硬質被覆層の下部層としてのTi化合物層を蒸着形成した。次いで、硬質被覆層の上部層として、表3および表5に示される条件かつ表7に示される目標層厚で酸化アルミニウム層からなる上部層を蒸着形成した。この時には、副層形成条件を行わずに、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を形成することにより、表7の比較被覆工具1〜15を作製した。
また、本発明被覆工具1〜15および比較被覆工具1〜15の各構成層の平均層厚を、走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて測定し、観察視野内の5点の層厚を測って平均して平均層厚を求めたところ、いずれも表6および表7に示される目標層厚と実質的に同じ平均層厚を示した。
また、本発明被覆工具1〜15および比較被覆工具1〜15については、同じく走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて、上部層の酸化アルミニウム層を構成する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の粒子幅w及び粒子長さlを、工具基体と水平方向に長さ合計10μmの範囲に存在する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶について測定し、個々の結晶粒について求めた粒子幅wの平均値である平均粒子幅W及び個々の結晶粒について求めた粒子幅wと粒子長さlの比として定義されるアスペクト比aの平均値である平均アスペクト比Aを求めた。
また、本発明被覆工具1〜15については、同じく走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、上部層の酸化アルミニウム層に存在する微粒酸化アルミニウムからなる副層を工具基体と垂直方向は酸化アルミニウム膜厚分の厚さに亘って、工具基体と水平方向は長さ合計10μmに亘って測定し、上部層中に存在する全ての副層について層厚を求め、その平均値として副層の平均層厚を求めた。
また、本発明被覆工具1〜15および比較被覆工具1〜15については、同じく走査型電子顕微鏡(倍率5000倍)を用いて、上部層の酸化アルミニウム層を構成する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の粒子幅w及び粒子長さlを、工具基体と水平方向に長さ合計10μmの範囲に存在する柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶について測定し、個々の結晶粒について求めた粒子幅wの平均値である平均粒子幅W及び個々の結晶粒について求めた粒子幅wと粒子長さlの比として定義されるアスペクト比aの平均値である平均アスペクト比Aを求めた。
また、本発明被覆工具1〜15については、同じく走査型電子顕微鏡(倍率50000倍)を用いて、上部層の酸化アルミニウム層に存在する微粒酸化アルミニウムからなる副層を工具基体と垂直方向は酸化アルミニウム膜厚分の厚さに亘って、工具基体と水平方向は長さ合計10μmに亘って測定し、上部層中に存在する全ての副層について層厚を求め、その平均値として副層の平均層厚を求めた。
つぎに、前記本発明被覆工具1〜15および比較被覆工具1〜15について、表8に示す条件で切削加工試験を実施し、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
表9に、この測定結果を示した。
表9に、この測定結果を示した。
表6および表9に示される結果から、本発明の被覆工具は、硬質被覆層の上部層を構成する酸化アルミニウム層が、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上存在していることにより、靱性が向上し、熱伝導率が抑制され熱遮蔽効果が向上するため、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合でも、耐チッピング性、耐欠損性にすぐれ、その結果、長期の使用に亘ってすぐれた耐摩耗性を発揮することが明らかである。
これに対して、硬質被覆層の上部層を構成する酸化アルミニウム層に微粒酸化アルミニウムからなる副層が存在していない比較被覆工具1〜15については、高熱発生を伴い、しかも、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工に用いた場合、チッピング、欠損等の発生により短時間で寿命に至ることが明らかである。
前述のように、本発明の被覆工具は、例えば、鋼や鋳鉄等の高熱発生を伴い、かつ、切れ刃に断続的・衝撃的高負荷が作用する高速断続切削加工において、すぐれた耐チッピング性、耐欠損性を発揮し、使用寿命の延命化を可能とするものであるが、高速断続切削加工条件ばかりでなく、高速切削加工条件、高切込み、高送りの高速重切削加工条件等で使用することも勿論可能である。
Claims (2)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に硬質被覆層を設けた表面被覆切削工具において、
前記硬質被覆層が化学蒸着された下部層と上部層とからなるとともに、
(a)前記下部層は、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ、3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、
(b)前記上部層は、2〜25μmの平均層厚を有する酸化アルミニウム層、
からなり、
前記(b)の上部層を構成する酸化アルミニウム層は、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶組織を有しており、その組織内に微粒酸化アルミニウムからなる副層が少なくとも2層以上、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶を完全に分断せずに存在しており、該微粒酸化アルミニウムが粒状酸化アルミニウム結晶相又はアモルファス酸化アルミニウム相若しくは粒状酸化アルミニウム結晶相とアモルファス酸化アルミニウム相との混合相であり、柱状縦長成長酸化アルミニウム結晶の平均粒子幅Wは50〜2000nm、平均アスペクト比Aは5〜50であり、前記微粒酸化アルミニウムからなる副層の平均層厚が、5nm〜30nmであることを特徴とする表面被覆切削工具。 - 前記上部層を構成する酸化アルミニウム層に存在する微粒酸化アルミニウムからなる副層が1μmあたり1〜5層存在することを特徴とする請求項1に記載の表面被覆切削工具。
Priority Applications (2)
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CN2012104804718A CN103128325A (zh) | 2011-11-30 | 2012-11-23 | 硬质包覆层发挥优异的耐崩刀性的表面包覆切削工具 |
Applications Claiming Priority (3)
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