JP2013134383A - 光学的空間フィルター - Google Patents

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Abstract

【課題】眼に刺激の強い波長帯域の刺激光を低減する、直視光学機器に搭載する光学的空間フィルターを提供する。すなわち、眼の最大感度の波長である例えば550nmの分解能を確保した上で、眼への刺激が大きい波長でる440nm近傍の網膜上の密度を低減することにより、眼の疲労を軽減する光学的空間フィルターを提案する。
【解決手段】この光学的空間フィルターは、例えばフィルター基板7等の基板上に、同じ大きさの多角形または円形の微小パターン1を規則正しく一定の繰り返しピッチで設置し、微小パターン1とその周囲との間に一定の光路差が発生することを特徴とし、直視光学機器に搭載する。微小パターン1は、フィルター基板7等の基板の外表面に段差を与えるべく、薄膜ドット状に多数形成されている。そして光学的空間フィルターは、例えば、双眼鏡の接眼レンズ内部に配置される。
【選択図】図4

Description

本発明は、例えば、スコープ系直視光学機器や眼鏡レンズなど直接眼により観察を行う光学システムに装着する、空間フィルターに関するものである。
近年顕微鏡や望遠鏡といった光学機器は、CCDカメラの発達により直接眼で観察する必要のない製品が供給されるようになったが、依然として直視により観察する光学機器が多数存在している。特に、眼鏡やコンタクトレンズは、要求される機能からレンズを通過した光が直接眼に入り結像することになる。同様に機動性等の理由から双眼鏡やライフルスコープなども、直視により観察を行う機会が多い。
これらの直視光学機器は、直接光が眼に入射し網膜に結像し、受光体を介して視神経から脳に情報が伝達される特徴を持っている。また、明所視の範囲は数ルクスから10,000ルクス程度とされているが、虹彩の変化は直径で2mmから8mmと16倍の光量調節しかできないので、輝度の大きな物体を長時間観察したり、面積の小さな高輝度物体を見たりすると眼の疲労が激しくなる。
従来こういった眼の疲労対策として有害な紫外線を除去したり、エネルギーの大きな青色光を吸収するフィルターを装着したり、光量を調整するサングラスのような吸収フィルターを装着したり、反射光を低減するために偏光シートを挿入したりする対策がとられてきた。
しかし、偏光シートの挿入以外は視野全体の光量の調整であり、微少面積から発せられる高輝度光に対しては対応が出来ていなかった。また、偏光シートによる反射光低減も、方向性があるため限定的な効果しか望めない状態である。また、眼鏡レンズ等では特定の波長の吸収が大きな染料を用いて刺激光を低減することが試みられているが、吸収効果に優れた染料がなく十分な効果を得られていない。
特許第3005607号公報 特開平8−15646号公報
眼に対して高輝度可視光の影響は一般的によく知られており、眼に入射すると各種グレアの発生による視力の低下やまぶしさを感じる。また、網膜上での刺激光サイズと照射時間から、光による熱作用や光化学反応により視細胞障害を発生することもある。
特に波長440nmの青色光による網膜障害度が最大で、明所視感度が最も高い波長550nmでは、網膜障害度が440nmの1/100といわれており、可視光では短波長の方が網膜へのダメージが大きい。同様に波長600nmより長波長から波長1,400nm赤外光については、網膜障害度が440nmの1/1,000といわれている。
また、照度単位で1,000ルクス以上になると、眩しさや不快を感じるといわれており何らかの対策が必要になる。しかし、眼の調光機構では、太陽光の反射など視野の微小範囲に高輝度光源があっても、平均した光量に対して虹彩を調整するため、網膜上の微小範囲では1,000ルクスを超えることは珍しくない。この現象は網膜の極狭い範囲の刺激であるため無意識のうちに眼の疲労を引き起こすことになるため、網膜上に結像する光の密度を小さくできればこの問題が改善できる。
先行技術として特許第3005607号公報(前記特許文献1)があり、微小パターンを配置することを謳っているが、その目的や効果は赤外線の吸収であり、前述の最も刺激が強い440nm近傍の波長域の光に対して配慮されていないので、眼に有害な光を低減する効果は小さい。又、視野の微少面積から発せられる高輝度光源の刺激光に対処せんとしたものでもない。
類似先行技術として特開平8−15646号公報(前記特許文献2)があり、CCD等の撮像素子面上に結像させる光学系に対してローパスフィルターを形成する技術が提案されている。
同公報では大きさの異なる微小パターンを設けていることが特徴であるが、直視光学系の場合眼球の動きによりフィルターを通過する光束の位置が変化するので、微小パターンは一定の大きさとピッチが好ましい。更に、観察者の眼球像,視線情報の高精度検出を目的や効果としており、視野の微少面積から発せられる高輝度光源の刺激光に対処せんとしたものでもない。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、映像を眼で観察をしたときに刺激光の網膜上の密度を低減し、眼の疲労を改善する光学的空間フィルターを提供するものである。
上記の課題を解決するために、特定の波長の光はほとんど影響を及ぼさず、他の特定の波長の光に関して作用する光学的空間フィルターを考える。これに近い動作をするものとして、透過型正方相回折格子がある。該回折格子は、一方向に均等に位相が矩形状に変化する繰り返しパターンを発生させる回折格子であり、断面が図1に類似しているので図1を用いてその動作を説明する。
入射光2は格子に入射し0次光4として透過するが、段差ΔZにより位相差が発生する。同時に微小パターン1とその周辺を透過した光との間で光路差が発生することから、−1次回折光3と+1次回折光5が発生する。該回折格子では±3次、±5次の回折光も発生するが強度が弱いので、±1次回折光3,5を考える。
これらの光をレンズにより結像させると、0次光4の位相差による相互干渉と回折光3,5により、通称のレンズによるフラウンホーファー回折像のピークより弱い、複数のピークを持つ回折像が得られる。この回折パターンは、格子のピッチP、レンズ開口における繰り返し数、発生する位相差により強度分布が異なってくる。
段差ΔZを持った微小パターン1を一定のピッチPで配した空間フィルターに、光を透過させると、上記のような現象が発生し、レンズにより結像された像は、複数のピークをもつ回折像が一定の範囲に広がる。
以下本発明について、図1を参照して説明する。本発明は、特定波長λに対して光路差Δλが丁度1波長又は2波長になるように段差ΔZを定めたものである。これにより微小パターン1を透過する光と微小パターン1の周辺を透過する光の位相差が、2πまたは4πとなるため、光路差Δλが発生していても特定波長λでは位相が合っていることから、実質的に波面収差がないと同等になることから相互干渉が起こらず回折も発生しない。
一方、透過する光が特定波長λと異なると、位相差が発生し、その大きさに比例し回折像の分布が広がってくる。
このように、特定波長λから離れた任意の波長λaでは、光路差Δλが整数倍波長にならないため位相差が発生し回折が起こる。λ’=λa−λとして、回折角Δθは次式で与えられる。mは1又は2よりなる。
Figure 2013134383
請求項1は、このような原理に基づき構成される光学的空間フィルターを規定するものである。
すなわち、請求項1の光学的空間フィルターは、眼鏡、その他の直視光学機器と共に使用され、刺激光による眼の疲労を軽減する。
そして光透過性を有し、基板の外表面に段差ΔZを与える微小パターン1が、薄膜ドット状に多数形成されている。各該微小パターン1は、同じ大きさの多角形や円形よりなると共に、一定の繰り返しピッチPで形成されている。
もって、該微小パターン1を通過する光束と、該微小パターン1の周囲を通過する光束との間に、一定の光路差Δλが発生すること、を特徴とする。
さて、明所視を司る錐体細胞は眼底の非常に狭い範囲に集中しており、明所視分光視感度は波長約550nmで最大となる。従って、基準波長λを最大感度近傍に設定し光路差Δλを決定すれば、波面収差の発生がなく分解能の低下を最小限に留めることが出来、基準波長λから離れるに従ってボケ量が増加し、点光源の様な極小光源の像の網膜上の密度が低下することになる。
請求項2および請求項3は、微小パターン1とその周囲を通過する光束の光路差Δλを規定するもので、光路差Δλは、良好な解像度を維持するために眼の最大感度の波長である550nm近傍を基準波長λとし、下記数式2の条件式の範囲内にとることが望ましい。
基準波長λ=550nmのときm=1では、刺激度が大きい波長λ=440nmは0.8λとなり、光路差Δλが0.8λに近づくと位相差が小さくなり、空間フィルターとしての機能を失い、刺激の大きな波長λに対して効果がなくなる。また、光路差Δλが1.15λより大きくなると、最大感度の波長550nm近傍がぼけてしまい分解能が低下する。
m=2の場合、基準波長λ=550nmとすると、波長λ=440nmでは光路差Δλはλ/2となるため弱め合う相互干渉の効果が最大となる。基準波長λに近い波長λでもボケ量が大きくなるので、特に眼を保護したいような作業に最適となる。
m=3以上になると、回折量が多くなりすぎてボケ量が多くなり、視認性が極端に悪化するため好ましくない。
よって、光路差Δλは、m=1又はm=2として、基準波長λに対して次の数式2の条件式の範囲にあることが好ましい。なお、微小パターン1材質の屈折率をnとすると、光路差Δλと微小パターン1の段差ΔZについては、次の数式3の関係が成り立つ。なお図1中、n’は空気の屈折率=1.0を表わす。
Figure 2013134383
Figure 2013134383
請求項4は、請求項1の微小パターン1とその周囲の面積比Rを規定するもので、空間フィルターの効果を定める要素となる。前述の透過型正方位相回折格子を基に±1次の回折効率を算出すると、最大で約40%であり、50%以上の光は0次光4としてレンズにより結像される。回折光3,5の強度が最も大きいときが正方位相のときであり、矩形位相となり凹凸の面積比が小さくなると、回折光3,5の強度が小さくなる。
本発明の該空間フィルターは、図2及び図3に示すように円形又は多角形の微小パターン1により構成され、単位面積範囲6に示すような範囲に一定の微小パターン1が配されている。微小パターン1の形状は同じ形状であれば個別の形状はあまり重要ではないが、現象は上記該回折格子と同様の傾向にあり、微小パターン1の面積比Rsが0.5近傍のときが最も回折光3,5が強くなる。
該面積比Rsが0.5より離れるに従って回折光3,5が弱くなり、0次光4の影響が強くなるため空間フィルターとしての効果が小さくなり、刺激光結像の広がりが小さくなり光の密度が高くなり所望の効果が発揮できなくなる。
よって該面積比Rsは、請求項4の条件式である次の数式4の範囲内にあることが好ましい。すなわち請求項4に示したように、微小パターン1の合計面積は、その周囲を含めた所定単位エリアつまり単位面積範囲6について一定面積を占めるが、その面積比Rが、次の数式4を満足すべく設定される。なお単位面積範囲6は、ドッド状に多数形成された各微小パターン1分と、その周囲に形成される間隔分とを、合わせた面積範囲を指し、その外延が図示のように凹凸多角形状をなす。
Figure 2013134383
請求項5は、微小パターン1の繰り返しピッチPについて規定したものである。数式1に示したように、微小パターン1の繰り返しピッチPにより回折角Δθが異なるため、ピッチPの大きさは空間フィルターの効果に影響を及ぼす。一方、直視光学機器は通った光束の太さが虹彩の瞳径より制限されるので、一定の範囲にあることが好ましい。
そして、虹彩の瞳径は2mmから8mmといわれているので、この範囲で空間フィルターとして性能を発揮するためには、3周期程度のパターンの繰り返しが必要なので最大P=2.6mm、また、パターンの繰り返しがあまり多いと回折が大きくなりすぎるので、繰り返し10パターン程度とすれば最小P=0.2mmが目安となる。網膜上に結像された像を出来るだけ均一にするため多めのパターンを確保することを考慮すると、小さめの繰り返しピッチPを採用する方が好ましいと言える。
よって、微小パターン1の繰り返しピッチPは、請求項5の条件式である次の数式5を満足することが好ましい。
Figure 2013134383
請求項6は、本発明の主眼とする所を規定したもので、直視光学機器の分解能を低下させることなく、眼に刺激の強い波長440nm近傍の光の網膜上の光密度を低減することで、眼の疲労を低減させることが狙いである。最適な空間フィルターの特性を得るためには、請求項1から請求項5を満足する構成とし実験的に各要素を決定する必要があるが、眼の最大感度の波長である550nmの分解能と波長440nmの特性を観察することで、最適な空間フィルターを決定することが出来る。
請求項7は、本発明の光学的空間フィルターを実際の直視光学機器に使用するときの条件を規定するものである。直視光学機器に当該光学的空間フィルターを設置する場合、アイポイント位置にて前述の繰り返しピッチPが得られるようなパターンピッチにすることが必要である。
このような要件を配慮すると、スコープ光学系の場合は接眼レンズ内部の光束が出来るだけ平行に近くなりかつ出来るだけアイポイントに近い位置に、眼鏡レンズ(レンズ基板)では特に屈折力の大きなものを除き表裏どちらの面でも、コンタクトレンズでは機能的に外部表面に、設置することが好ましい。
本発明の光学的空間フィルターは、上述した各手段よりなるので、次のように作用する。つまり、次のような光の進行と振舞になる。
接眼レンズまたは眼鏡のような直視光学機器で、眼に接近した位置に空間フィルターを配した光学系において、ほぼ平行な光束が、微小パターン1を配した面を透過することになる。
透過した光は、微小パターン1の段差ΔZにより光路差Δλが発生するが、0次光4としてそのまま進行する。ところが光路差Δλが発生することから波面に進み遅れが発生し、微小パターン1により分割された波面同士が干渉を起こし、透過した光束の一部が、回折を起こし等位相方向に曲げられ、回折光3,5として進行する。
その後、0次光4と回折光3,5は、同時に進行し眼の角膜に入射する。さらに、虹彩により最適な光束径に絞られた後に、水晶体により集光され網膜に結像される。
網膜上には、異なる位相をもった0次光4と角度がついた回折光3,5が同時に集光されるため、光路長に差がある複数の光束が集まることになる。その結果、光路差Δλが波面収差となり相互干渉により特定の強度分布を持った像が結像されることになる。
そこで本発明は、次の効果を発揮する。
本発明によれば、一定の光路差が発生する光学的空間フィルターを構成することで、眼の網膜に結像する像の形態に波長選択性を持たせることが可能になる。直視光学機器による観察時において、眼の最大感度の波長である例えば550nmの分解能を確保した上で、眼の刺激が大きい波長である440nm近傍の極小面積に集光される光の集光面積を広げることで、網膜への過剰刺激を低減することで眼の疲労を軽減することが可能となる。
すなわち、本発明の光学的空間フィルターによると、点光源のような微少面積で高輝度光源の像、つまり視野の微少面積から発せられる高輝度可視光は、その基準波長帯域により、分解能を低下させることなく網膜上の像は確保されると共に、その刺激光帯域については、網膜上の光密度が低下せしめられる。
このような網膜上での刺激光結像の広がり、網膜上での刺激光ボケ量の増大により、眼の疲労が改善されるようになる。
本発明に係る光学的空間フィルターについて、発明を実施するための形態の説明に供し、側断面説明図である。 同発明を実施するための形態の説明に供し、実施例1に係る微小パターン配置例(円形)を示し、正面説明図である。 同発明を実施するための形態の説明に供し、実施例2に係る微小パターン配置例(正六角形)を示し、正面説明図である。 同発明を実施するための形態の説明に供し、実施例1に係る接眼レンズ構造の側面説明図であり、(1)図は、全体を示し、(2)図は、(1)図のA部の拡大図である。 同発明を実施するための形態の説明に供し、実施例2に係る眼鏡レンズ構造の側面説明図であり、(1)図は、全体を示し、(2)図は、(1)図のB部の拡大図である。 明所視標準比視感度のグラフである。
以下、本発明について図や表を用いて、更に詳細に説明する。
本発明の光学的空間フィルターは、基板の外表面に段差ΔZを与える微小パターン1を、薄膜ドット状に規則正しく多数形成することで実現する。実際の直視光学機器への配置は、平面状のフィルター基板7の表面に微小パターン1を形成したものを組み込む形態と(実施例1)、レンズ基板8に微小パターン1を直接形成する形態(実施例2)の両形態が考えられる。
すなわち、図4の実施例1の光学的空間フィルターは、微小パターン1と平面的なフィルター基板7とで構成されており、微小パターン1が、基板の一例であるフィルター基板7の外表面について、段差ΔZを与えている。そして、このような光学的空間フィルターが、直視光学機器であるスコープ光学系の接眼レンズに、組み込まれている。
これに対し、図5の実施例2の光学的空間フィルターは、微小パターン1にて構成されており、この微小パターン1が、直視光学機器である眼鏡レンズ、つまり基板の一例である湾曲したレンズ基板8に対し、直接形成されている。そして、このように組み込まれた微小パターン1が、レンズ基板8の外表面について段差ΔZを与えている。
微小パターン1は、同じ大きさの多角形や円形よりなり、一定の繰り返しピッチPで形成するため、図2及び図3に示されるような略ハニカム状配置にすると設計がしやすい。
該空間フィルターの断面は図1に示されるような構造になっており、微細パターン1とその周囲(基板の外表面)では深さΔZの段差ΔZがあり、光束が透過したときに光路差Δλが発生する。各微小パターン1は、繰り返しピッチPにより全方的に均等に配されている。微小パターン1とその周辺の単位面積との面積比Rが最適になるように、円形微小パターン1の直径Dwまたは多角形微小パターン1の幅Wを決定する。
本発明では、眼の最大感度の波長である例えば基準波長λ=550nmの分解能を確保し、眼の刺激が強い波長λa=440nmが、該空間フィルターの効果により像が広がり網膜上の光密度が小さくなるようにするため、光路差Δλ=550nmを基準にする。
このときの実際の段差ΔZは、数式1により決定される。効果を出来るだけ大きくするため、面積比Rが0.5近傍になるようにする。繰り返しピッチPは、使用状態での虹彩の大きさを配慮して決定することが必要となるが、大凡3mmから5mmの範囲を目安に6回から8回の繰り返しパターンをとれば無理がない。
このような基準波長λ=550nmや刺激光λ=440nmについて、更に詳述する。まず、眼は波長により光を感じる感度が異なり、明所視における分光比視感度は、図6に示す明所視標準比視感度のグラフ(出典:CIE国際照明委員会 1964年)のようになっている。
分解能を表現するMTFは波長依存性があることはよく知られており、眼の場合、波長による分解能寄与度(カラーウェイト)は分光比視感度曲線にほぼ一致する。波長460nmより短い青の光と波長630nmより長い赤の光に対して感度が低く、波長550nm近傍が最も感度が高くなっている。この性質は、波長550nm近傍の緑の光が眼の分解能への寄与が大きく、青及び赤の光は分解能への寄与が小さいことを意味する。すなわち図6において、分解能寄与度V/λは、波長550nmで1.0程度、波長440nmで0.06程度、波長650nmで0.11程度となっている。
一方、網膜に当たる光の密度が高くなると網膜が損傷を起こすが、この影響は波長によって異なることが知られている。表1は、波長別の網膜への損傷度を示したものであり
(出典:三島 齊一 他著 2003年「眼の事典」朝倉書店)、波長440nmが最も影響が大きいことが解る。波長が長くなると影響度が小さくなり、近赤外領域では影響がほとんどないことが解る。網膜損傷度が大きいほど目への刺激が大きくなり、眩しさを感じ結果として眼の疲労が大きくなる。
Figure 2013134383
本発明の光学的空間フィルターは、以上説明したように構成されている。そこで次のように作用し、光の進行と振舞になる。
図1において、入射光2が段差ΔZをもった微小パターン1を配した空間フィルター面に入射すると、段差ΔZにより発生した光路差Δλにより、位相差を持った0次光4として透過進行する。
ところが光路差Δλが発生することから、波面に進み遅れが発生し、微小パターン1により分割された波面同士が干渉を起こし、透過した光束の一部が回折を起こし等位相方向に曲げられ、−1次回折光3と+1次回折光5として、角度Δθの方向に進行する。
その後、0次光4と回折光3,5は、同時に進行し眼の角膜に入射する。さらに、虹彩により最適な光束径に絞られた後に、水晶体により集光され網膜に結像される。
網膜上には、異なる位相をもった0次光4と角度がついた回折光3,5が同時に集光されるため、光路長に差がある複数の光束が集まることになる。その結果、光路差Δλが波面収差となり相互干渉により特定の強度分布を持った像が結像されることになる。
図4は実施例1を示し、平面に形成した光学的空間フィルターを示す。双眼鏡など比較的大きなアイポイント距離を持ったスコープ光学系の接眼レンズに装着して使用することで、効果が期待できる。
図2は実施例1の微小パターン1を示したものであり、口径5cm、10倍、瞳径5mm程度の双眼鏡に適した光学的空間フィルターを実現している。図4は、当該双眼鏡に使用される接眼レンズの構造図を示している。図面左側が対物レンズ、図面右側がアイポイントとなる。接眼レンズは全部で3つのレンズ11群により構成されており、対物レンズ側から、第1群、第2群、第3群とすれば、第2群と第3群の間に、光学的空間フィルターが配置されている。
同フィルターは、平行平面の石英のフィルター基板7に微小パターン1を円形とし、基準波長λ=550nm、光路差Δλ=550nm、Rs=0.55で形成したものであり、いずれも請求項2、請求項4、請求項5の条件式を満足している。また、微小パターン1の繰り返しピッチはP=0.5mmである。この時の波長λ=440nmに於ける回折角は、約0.8分である。
平面基板であるフィルター基板7への微小パターン1は、フォトエッチングや有孔マスキングによる真空蒸着により、容易に製作可能である。また、フィルター基板7を直接フォトエッチングして微小パターン1を形成する場合は問題ないが、真空蒸着により微小パターン1を形成する場合は、以降の反射防止膜10の形成に問題のない屈折率を有した蒸着物質を使用することが重要である。
本実施例では、石英基板よりなるフィルター基板7に有孔マスクを当て、酸化ケイ素をΔZ=1.2μmの厚みで蒸着することで、所望の光路差Δλ=550nmをもった微小パターン1を形成し、表面に反射防止膜10を蒸着によりコーティングすることで、光学的空間フィルターを実現している。
表2に、図2の円形微小パターン1のピッチP、直径DW、面積比Rs、基準波長λ=550nmのときの、波長λ=440nmの回折角Δθのデータを示す。
Figure 2013134383
図5は実施例2を示し、眼鏡レンズ表面に直接、当該光学的空間フィルターを形成した例を示す。眼鏡レンズは常時装着しているのが一般的で、日常生活に於いて本発明の効果を発揮しやすい代表的な例である。
図3は実施例2の微小パターン1を示したものであり、本実施例では図5に示すとおり、眼鏡レンズの眼球側の面に光学的空間フィルターを形成した。
基準波長λ=550nm、光路差Δλ=550nm、Rs=0.45で形成したものであり、いずれも請求項2等の条件式を満足している。また、微小パターン1の繰り返しピッチPは、虹彩の瞳径を3mmとしP=0.4mmである。この時の波長λ=440nmに於ける回折角Δθは、約1分である。
本実施例は、プラスチックレンズ基板8の表面に、表面硬化を目的とした表面硬化膜9としてハードコートを施し、その上に当該光学的空間フィルターの微小パターン1を形成し、更にその表面に反射防止膜10を蒸着することで、眼鏡レンズをなしている。
このように曲率がついたレンズ基板8表面に微小パターン1を形成する方法は、複数通りの方法があり、特開2008−55253号公報に示された方法、レンズ曲率に合わせて加工した有孔マスクを用い前述の方法で形成する方法、事前に一定の膜厚で酸化ケイ素などを蒸着しておいてレジストインクを用いて微小パターン1を印刷した後に、エッチングを用いて薄膜に微小パターン1を形成する方法などが考えられる。
本実施例は前述と同じ有孔マスクを用いて、蒸着により表面に微小パターン1を形成した。
本実施例では、屈折率1.50のプラスチックレンズ基板8に、屈折率1.48、厚み約3μmの表面硬化コーティングにより表面硬化膜9を施し、その表面に前述と同じ有孔マスクを用いて屈折率1.46の酸化ケイ素を、段差ΔZ=1.2μmで蒸着することにより、表面に所望の光路差Δλ=550nmをもった光学的空間フィルターを構成する微小パターン1を形成した。
さらに表面に反射防止コーティングを蒸着により反射防止膜10として施すことで、光学的空間フィルターの機能を持った眼鏡レンズを実現している。
表3に、図3の正六角形微小パターン1のピッチP、幅W、面積比Rs、基準波長λ=550nmのときの、波長λ=440nmの回折角Δθのデータを示す。
Figure 2013134383
1 微小パターン
2 入射光
3 −1次回折光(回折光)
4 0次光
5 +1次回折光(回折光)
6 単位面積範囲(所定単位エリア)
7 フィルター基板
8 レンズ基板
9 表面硬化膜
10 反射防止膜
11 レンズ
ΔZ 段差(微小パターンの深さ)
P 微小パターンのピッチ
n フィルター材質の屈折率
n’空気の屈折率
Δθ 回折角
Dw 円形微小パターンの直径
W 多角形微小パターンの幅

Claims (7)

  1. 眼鏡、その他の直視光学機器と共に使用され、刺激光による眼の疲労を軽減する光学的空間フィルターであって、
    光透過性を有し、基板の外表面に段差を与える微小パターンが、薄膜ドット状に多数形成されており、各該微小パターンは、同じ大きさの多角形や円形よりなると共に、一定の繰り返しピッチで形成されており、
    該微小パターンを通過する光束と、該微小パターンの周囲を通過する光束との間に、一定の光路差Δλが発生すること、を特徴とする光学的空間フィルター。
  2. 請求項1において、該光路差Δλおよび該微小パターンの段差ΔZは、基準波長λに対して次の式(1),(2)を満足すべく設定されること、を特徴とする光学的空間フィルター。
    但し、nは微小パターン材料の屈折率を表し、mは1又は2よりなる。
    Figure 2013134383
  3. 請求項2において、該基準波長λは、明所視分光視感度の最大感度付近を目安として設定されること、を特徴とする光学的空間フィルター。
  4. 請求項3において、該微小パターンの合計面積は、その周囲を含めた所定単位エリアについて一定面積を占めるが、その面積比Rが、次の式を満足すべく設定されること、を特徴とする光学的空間フィルター。
    Figure 2013134383
  5. 請求項4において、該微小パターンの繰り返しピッチPは、次の式を満足すべく設定されること、を特徴とする光学的空間フィルター。
    Figure 2013134383
  6. 請求項5において、該光学的空間フィルターは、例えば440nm近傍の刺激光について、網膜上の光密度を低減させること、を特徴とする光学的空間フィルター。
  7. 請求項5において、該光学的空間フィルターは、該直視光学機器がサングラスを含む眼鏡の場合はそのレンズ表面側又は裏面側に配され、該直視光学機器がコンタクトレンズの場合はその表面側に配され、該直視光学機器がスコープ光学系の場合は接眼レンズ内部の光束が出来るだけ平行に近くなる位置に配されること、を特徴とする光学的空間フィルター。
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