JP2013132520A - 消火カーテン - Google Patents

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Abstract

【課題】炎に対して優れ消火性を発揮するとともに、初期消火時における消火用具として使用でき、さらに、火炎における身体保護の防火具としても利用できる消火カーテンを提供する。
【解決手段】本発明の消火カーテンは、モダクリル繊維を耐熱性繊維若しくは不燃性繊維と混紡、交撚、交織及び/又は交編した布帛で構成されていることを特徴とする。また本発明の消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜を形成させたモダクリル繊維からなる布帛で構成されている。また本発明の消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜を介して、吸熱を伴う熱分解で水を放出する金属化合物微粒子を固着させたモダクリル繊維、耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維からなる布帛で構成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、火災に対して優れた消火性を発揮する消火カーテンに関する。
一般的なカーテンは、窓の室内側のカーテンレールに、フックを介してある程度の強度を有する状態で吊り下げられている。また汎用のカーテンは、室内に直接太陽光が差し込まないように、また屋外から容易に室内を覗くことができないように遮光性を有する素材で形成されている。
しかしながら、通常のカーテンは、ポリエステル、綿、アクリル、レーヨン等の素材からなるため、ストーブや天ぷら油等から発火した炎が引火した際、短時間に燃え広がり火災が発生するという危険があった。
上述の火災発生の問題を解決するため、特許文献1では、難燃性を十分に有し、かつ、遮光性にも優れたカーテン用布帛が開示されている。上記のカーテン用布帛は、耐炎化繊維を含んでなる層の少なくとも片面に、合成繊維かつ/または天然繊維を含んでなる層を積層してなることを特徴とするものである。
また特許文献2では、火炎に接しても燃えず、煙や有毒ガスの発生がなく、高温に接しても溶けず、変形しない不燃カーテンが開示されている。上記の不燃カーテンは、ガラス繊維で織った布に常温で硬化し疎水性の塗膜を形成する光触媒塗料を塗布して担持させたことを特徴としている。
さらに特許文献3では、優れた不燃性を有し、初期火災の拡大を未然に防止するとともに、安価で、適度の伸縮性を有し、しかもほつれや目ずれのないレースカーテンが開示されている。上記の不燃性レースカーテンは、単繊維直径が7μm以下のガラス長繊維糸を用いて径編組織で編成され、径糸間には径糸挿入糸が挿入されていることを特徴とする。
特開2005−334425号公報(特許請求の範囲等) 特開2002−112883号公報(特許請求の範囲等) 特開平9−28556号公報(特許請求の範囲等)
しかしながら、上掲特許文献1に記載されたカーテン用布帛は、耐炎化繊維層に難燃性の合成繊維や天然繊維を積層しているため、それ自体が燃えにくい性質を有するが、熱分解あるいは溶融するため、火炎の熱に耐えて消火するまで布帛としての形状を保持することはできなかった。また、特許文献2記載の不燃カーテン及び特許文献3記載のレースカーテンは、夫々カーテンを構成する繊維がガラス繊維等にて形成されているため、火炎の熱に耐えてある程度の時間形状を保つことは可能であるが、吸熱や不燃性ガスの放出といった積極的な消火作用は有していなかった。
さらに、上掲特許文献1、2、および3のカーテンは、ある程度強度を有する状態でレールに吊り下げられているため、火災が発生した際、カーテン自体を取り外して消火用具として使用することができなかった。
そこで本発明の目的は、上記課題を解消するために、火炎に覆い被せた際に、熱分解によって消火に寄与する化学作用を発現できる性質を有し、しかも消火が完了するまでの一定時間布帛の形状を維持することで、炎に対して優れ消火性を発揮するとともに、初期消火時における消火用具として使用でき、さらに避難用具としても用いることができる消火カーテンを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の消火カーテンは、モダクリル繊維を耐熱性繊維若しくは不燃性繊維と混紡、交撚、交織及び/又は交編した布帛で構成されていることを特徴とする。
また、本発明の他の消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜が形成されたモダクリル繊維からなる布帛で構成されていることを特徴とする。
さらに、本発明の他の消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜を介して、吸熱を伴う熱分解で水を放出する金属化合物微粒子を固着させたモダクリル繊維、耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維からなる布帛で構成されていることを特徴とする。
本発明の消火カーテンにおいて、前記シリコーン化合物が、置換基として水素基を有するポリシロキサンであることが好ましい。
また、本発明の消火カーテンにおいては、連結具がレールに対する掛止部を有するか、またはそれ自体で掛止部を形成し、カーテンに必要以上の荷重が生じた際、該掛止部が変形してカーテンがレールから落下する吊下具を装着することが好ましい。
本発明の消火カーテンによれば、火炎に覆い被せた際に、熱分解によって消火に寄与する化学作用を発揮できるとともに、消火が完了するまでの一定時間、カーテン生地の形状を維持することができる。
また、本発明に係る吊下具を装着することで、火災発生時にカーテンをレールから容易に取り外すことができ、初期消火時における消火用具とし、さらに火災時においては炎から身を護る防火用具としても利用できる。
本発明の一実施形態における消火カーテンの全体図である。 (a)および(b)は吊下具の一例を示す説明図である。 前記吊下具を装着した消火カーテンの取り外し状態を示す説明図である。
以下、本発明の消火カーテンにおける実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す消火カーテン1は、窓の室内側に設置されたカーテンレール30に、ランナーやリングを介して吊下具2により開閉自在に吊り下げられているが、本発明においては寸法、形状、色彩等は用途に応じ適宜選定することができる。一般的には、カーテン1は、室内に直接太陽光が差し込まないように、また屋外から容易に室内を覗くことができないように、遮光性を有する素材で形成する。
本発明の第一実施形態における消火カーテンは、熱分解によって消火に寄与する化学作用を発現できる性質を有するもので、モダクリル繊維を、消火が完了するまでの一定時間布帛の形状を維持できる性質を有する耐熱性繊維若しくは不燃性繊維と混紡、交撚、交織及び/又は交編した布帛で構成されている。
具体的なモダクリル繊維の例としては、(株)カネカ製の「カネカロン」や「プロテックス」が好ましく用いられる。これらのモダクリル繊維は、熱分解時に不燃性物質を放出する作用により、燃焼反応を停止させて消火することができる。
耐熱性繊維としては、融点又は分解点が約350℃以上の繊維を意味し、好ましくは400℃以上であれば如何なるものであってもよい。好適例としては、パラ系アラミド繊維(熱分解温度:480〜570℃)、メタ系アラミド繊維(熱分解温度:400〜430℃)、ポリベンズイミダゾール繊維(ガラス転移温度:400℃以上)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキザール)(PBO)等のポリベンズオキサゾール繊維(熱分解温度:650℃)、ポリ(p−フェニレンベンゾビスチアゾール)(PBZT)等のポリベンズチアゾール繊維(熱分解温度:650℃)、ポリアミドイミド繊維(熱分解温度:350℃以上)、メラミン繊維(熱分解温度:400℃以上)、ポリイミド繊維(熱分解温度:350℃以上)、ポリエーテルエーテルケトン繊維(融点:345℃)及びポリアリレート繊維(熱分解温度:400℃以上)が挙げられる。また、不燃性繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、セラミック繊維、及び炭素繊維が挙げられる。
モダクリル繊維と耐熱性繊維や不燃性繊維の組み合わせ方法としては、一般的な繊維製造技術として知られる混紡、交撚、交織あるいは交編といった方法を用いることができる。混用するモダクリル繊維重量と耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維との重量の混用比は、好ましくは20:80〜80:20の範囲で実施可能であるが、特に好ましくは40:60〜60:40の範囲内である。モダクリル繊維の混用比率が20重量%未満では十分な消火性能が得られず、逆に耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維の混用比率が20重量%未満では耐炎性能が不十分となる。また、モダクリル繊維と耐熱性繊維若しくは不燃性繊維の混用は、布帛全体で平均的に行う必要がある。布帛中に一方の素材の比率が極端に高い部分があると、その部分の消火性能が低下するため、好ましくない。特に、織物で布帛を構成する場合は、経糸と緯糸の両方に耐熱性繊維若しくは不燃性繊維が適当な比率で用いられる必要がある。また、経糸又は緯糸がモダクリル繊維100重量%で交織された織物では、布帛としては平均的に混用されていても、経糸又は緯糸のいずれかが炭化・破断するため形状の維持が困難である。よって、径糸又は緯糸を、好ましくは上記混用比の範囲内で混用する。
本発明の消火カーテン1は、炎に対して優れ消火性を発揮するとともに、初期消火時における消火用具として使用でき、さらに避難用具としても用いることができる。
本発明の第二実施形態における消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜が形成されたモダクリル繊維からなる布帛で構成されている。皮膜形成によりモダクリル繊維の耐熱性を高めるのに用いるシリコーン化合物としては、シロキサン結合のケイ素に種々の置換基を有するものを用いることができる。かかる置換基の種類としては、水素基、メチル基、フェニル基、アミノ基、ポリエーテル基、エポキシ基、カルボキシル基などを挙げることができ、耐熱性向上に寄与するものであれば特に制限されるものではない。
熱分解によって消火に寄与する化学作用を発現できる性質を有するモダクリル繊維にシリコーン化合物の皮膜を形成することで、消火が完了するまでの一定時間、布帛の形状を維持できる耐熱性を付与することができる。
本発明の第三実施形態における消火カーテンは、シリコーン化合物の皮膜を介して、吸熱を伴う熱分解で水を放出する金属化合物微粒子を固着させたモダクリル繊維、耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維からなる布帛で構成されている。
この実施形態においては、熱分解によって消火に寄与する化学作用を発現する物質として、吸熱を伴う熱分解で水を放出する金属化合物微粒子を用いるものである。吸熱的熱分解により熱容量の大きい水を放出することで、周辺温度を低下させることができる。かかる金属化合物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ドーソナイト、アルミン酸カルシウム等が挙げられる。
シリコーン化合物としては、第二実施形態における場合と同様に、シロキサン結合のケイ素に種々の置換基を有するものを用いることができる。かかる置換基の種類としては、水素基、メチル基、フェニル基、アミノ基、ポリエーテル基、エポキシ基、カルボキシル基などであり、耐熱性向上に寄与するものであれば特に制限されるものではない。
本発明の第二実施形態および第三実施形態においてシリコーン化合物を使用する場合、置換基として水素基を有するポリシロキサンを用いることが好ましい。水素基を有するポリシロキサンは、分解時に水と二酸化ケイ素のみを発生して可燃性ガスを発生しないためである。
また本発明の他の好適例として、前記第一実施形態乃至第三実施形態の消火カーテンに、連結具がレールに対する掛止部を有するか、またはそれ自体で掛止部を形成し、カーテンに必要以上の荷重が生じた際、該掛止部が変形してカーテンがレールから落下する吊下具を装着することが好ましい。かかる吊下具の好適例を図2および図3に示す。
図2および図3に示す吊下具2は、消火カーテン1の吊り下げる高さを調整するアジャスター20に装着されるフック体10である。かかるフック体10は、カーテンレール30のリング32に吊り下げられる、ヘアピン状に湾曲した掛止部としてのフック部11と、アジャスター20のラチェット21に装着されるラチェット部12とで構成されている。また特に、フック体10は、消火カーテン1に必要以上の荷重が生じた際に破損することなく弾性変形する素材にて形成されている。具体的には、スチール等の金属材料またはポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネ―ト樹脂、ポリアミド樹脂等の樹脂材料やエストラマー材料が挙げられる。
また、図示例のフック体10は、図2の(b)に示すように、フック体10とアジャスター20とが装着、または取り外して分離させることができる。そのため、洗濯する際、また消火カーテン1を再度装着する際の利便性に優れている。なお、吊下具2は、ラチェット部12を有しないフック体10のみでも同様の効果を発揮することができる。
図3の(a),(b),(c)は、アジャスター20にフック体10を装着した吊下具2により、消火カーテン1をレール30から落下させる使用状態を示すものである。
(a)は、カーテンレール30のランナー31のリング32にフック体10を挿入し、消火カーテン1をカーテンレール30に吊り下げた状態を示す。
(b)は、消火カーテン1に必要以上の荷重を与えた状態を示すものである。消火カーテン1に、例えば、10kg程度の荷重を与えると、弾性変形する素材で形成されたフック体10はその荷重に応じて変形する。
消火カーテン1にさらに荷重を与えると、フック体10はさらに変形し、(c)に示すように、フック体10はリング32から分離されて消火カーテン1は落下する。したがって、例えば、調理中に調理器具や天ぷら油等より出火した際、カーテンレール30から消火カーテン1を取り外し、調理器具の上部へ覆い被せることにより、消火カーテン自体が初期消火の消火用具として活用できる。
また、火炎が広まった際でも、カーテンレール30から消火カーテン1を取り外し、身体に消火カーテン1を覆うことにより、火災発生時の避難具としての役割を果たすこともできる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
<酸素指数法による難燃性評価>
カーテン用布帛の難燃性評価は、JIS L 1091の「繊維製品の燃焼性試験方法」に準拠し、E法(酸素指数法試験)によりE−2号試験片で評価した。
<布帛試料の消火性能評価>
内径60mm、高さ30mmの円形ステンレスカップに市販の天ぷら油10mlを入れ、自然発火するまでガスコンロで直火加熱した。自然発火した後、速やかにガスの供給を停止してガスコンロの火を消し、内部で天ぷら油が燃焼している円形ステンレスカップに20cm角の布帛試料を覆い被せた。そして、消火に要する時間を測定し、熱による布帛試料の形状変化の観察を行った。
(実施例1)
(株)カネカ製の「プロテックス」40番単糸と、帝人(株)製のアラミド繊維「コーネックス」40番単糸を撚り合わせた双糸を、経糸および緯糸に用いてカーテン用織物を製作しカーテンに縫製した。このカーテンの難燃性評価を行った結果、酸素指数は38.2であった。また、このカーテンの消火性能について評価した結果、布帛試料を覆い被せた直後に消火し、布帛試料は熱により黒変したが破損はしなかった。
(実施例2)
(株)カネカ製の「カネカロン」で製作した織物に、水素基含有ポリシロキサンを含む信越化学工業(株)製の「Polon MWS」10%水溶液をピックアップ率100%でパッド処理し、120℃で5分間の熱キュアにより水素基含有シリコーン被膜を繊維表面に形成させた。このシリコーン皮膜を形成させた織物をカーテンに縫製し、難燃性評価を行った結果、酸素指数は30.3であった。また、このカーテンの消火性能について評価した結果、布帛試料を覆い被せた2秒後に消火し、布帛試料は熱により黒変し、ステンレスカップに接した箇所が熱により収縮して一部破損したが、大きく破れることはなかった。
(比較例1)
(株)カネカ製の「カネカロン」で製作した織物をカーテンに縫製し、難燃性評価を行った結果、酸素指数は29.4であった。また、このカーテンの消火性能について評価した結果、布帛試料を覆い被せた3秒後に一旦消火できたが織物は熱で大きく破れ、直ぐに天ぷら油が再発火したため完全消火には至らなかった。
(実施例3)
日本軽金属(株)製の水酸化アルミニウム「BF103」、水素基含有ポリシロキサンを含む信越化学工業(株)製の「Polon MWS」、及び水を、それぞれ1:3:6の重量比で配合した処理液を調製し、ガラス繊維織物にピックアップ率100%でパッド処理した後、120℃で5分間の熱キュアにより水素基含有シリコーン被膜を介して水酸化アルミニウムを繊維表面に固着させた。この織物をカーテンに縫製して難燃性評価を行った結果、不燃であった。また、このカーテンの消火性能について評価した結果、布帛試料を覆い被せた2秒後に消火し、温度が下がったことにより再発火しなかった。また、熱による布帛試料の変化はなかった。
(比較例2)
不燃性のガラス繊維織物をカーテンに縫製し、消火性能について評価した結果、布帛試料を覆い被せた2秒後に一旦消火したが、布帛試料を外すと温度が低下していないため直ぐに再発火し、完全消火には至らなかった。
1 消火カーテン
2 吊下具
10 フック体
11 フック部
12 ラチェット部
20 アジャスター
21 ラチェット
30 カーテンレール
31 ランナー
32 リング

Claims (5)

  1. モダクリル繊維を耐熱性繊維若しくは不燃性繊維と混紡、交撚、交織及び/又は交編した布帛で構成されていることを特徴とする消火カーテン。
  2. シリコーン化合物の皮膜が形成されたモダクリル繊維からなる布帛で構成されていることを特徴とする消火カーテン。
  3. シリコーン化合物の皮膜を介して、吸熱を伴う熱分解で水を放出する金属化合物微粒子を固着させたモダクリル繊維、耐熱性繊維及び/又は不燃性繊維からなる布帛で構成されていることを特徴とする消火カーテン。
  4. 前記シリコーン化合物が、置換基として水素基を有するポリシロキサンであることを特徴とする請求項2又は3記載の消火カーテン。
  5. 連結具がレールに対する掛止部を有するか、またはそれ自体で掛止部を形成し、カーテンに必要以上の荷重が生じた際、該掛止部が変形してカーテンがレールから落下する吊下具を装着した請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の消火カーテン。
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