JP2013132213A - 食品のカラー印刷方法、および、それによって製造したカラー印刷食品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】対象食品1である林檎果実1の表面の印刷対象箇所2を含み、且つ該印刷対象箇所2を僅かに上回る範囲3に対し、水、イナゲル(登録商標)粉、食品用ニスを所定の割合で攪拌・混合してなるイナゲル・ニス層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成した後、水およびイナゲル粉を主成分とするイナゲル層にて可食下地層域4を形成(C,D)した後、該可食下地層域4上適所の印刷対象箇所2に対し、可食印刷機(図示せず)にて、可食インクからなる可食カラー表示層5を形成(F)・乾燥(G)するようにしてなる食品のカラー印刷方法である。
【選択図】図1
Description
赤色品種の林檎果実は、その成熟期に太陽光、特に紫外線を受けると、果皮中にアントシアニンを生成し、光線の強さに応じた濃さの赤色に着色するという性質があり、この性質を利用し、除袋直後、着色前の林檎果実表面に、遮光用のシートやフィルムなどを貼着し、貼着箇所以外の部分には太陽光を浴びせて充分に着色した後、それらの貼着物を剥離、除去し、日焼けしていない果皮部分が日焼けした周囲から浮かび上がり、文字や絵などを表示するようにして商品価値を高めるという栽培法が盛んに実施され、永年に亘り、贈答品や産直品などとして好評を博してきているが、黄色品種の林檎は、果実の成熟につれて果皮中に含まれるクロロフィルが分解し、果皮の地色は次第に黄化するが、太陽光を浴びてもアントシアニンは生成しないから、日焼けによる着色を利用した文字や絵の表示はできないという事情があった。
こうした状況を反映し、その打開策となり得るような提案もこれまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)ないし(3)に提案されているものに代表されるように、可食インクジェット用インクの製造方法によって製造した可食インクを用いることにより、林檎果実の果皮表面に容易に高画質カラー印刷が可能になるということが想定されるようになり、また、このような可食インクを、同特許文献1(4)ないし(6)に見られるような、可食シールや可食フィルムの技術などに応用することによって林檎等果実の果皮表面に効率的に文字や絵柄などを表示することが可能になるということも考えられる外、同特許文献1(7)のような、溶解除去可能な可食フィルムに、可食インクにて印刷したものを林檎果実の果皮表面に貼着するようにすれば、可食インクによる林檎果実への印刷・表示を実現化できるかもしれないというような期待感を有する幾つかの技術が散見される。
上述したとおり、従前までに提案のある各種可食インク類および可食シール類などでは、何れも林檎果実その他で、乾燥した硬い果皮を有する果実や、それと同様の性状を呈する食品などにそのまま利用することは全く不可能であり、林檎王国に立地して、永年に亘って林檎に係わりの深い顧客や市場ニーズに様々に対応した高品質、高付加価値の商品を提供し続けてきている中、それらから得られた様々な知見、および市場や店舗からの情報などに基づき、林檎の更なる高品位化、高付加価値化のため、果実そのものの有する色艶に加え、斬新でデザイン性に秀れた外観を有する林檎の実現を、従来の手法にはない新規な技術思想を以て実現可能とすることにより、林檎等果実類の一層の拡販を図り、天災に見舞われて落ち込む地元経済の、一刻も早い復興に繋げる必要性を痛感するに至ったものである。
そこで、この発明は、勢い製造コストの嵩むような従前までの可食シールや可食フィルムなどを利用せずとも、食品の表面に一体化して高い品質と装飾性とを達成できるようにした全く新たな食品のカラー印刷技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、県農業試験場の指導を仰ぎつつ、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な食品のカラー印刷方法、および、それによって製造した新規な構造のカラー印刷食品を実現化することに成功し得たものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の食品のカラー印刷方法は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、対象食品表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲に対し、水およびイナゲル粉を主成分とするイナゲル層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成した後、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食印刷機にて、可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥するようにしてなる構成を要旨とする食品のカラー印刷方法である。
上記した果実食品のカラー印刷方法に関連し、この発明には、そのカラー印刷方法によって製造したカラー印刷食品も包含している。
即ち、対象食品表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲に対し、水およびイナゲル粉を主成分とするイナゲル層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成し、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥するようにしてなるものとした、この発明の基本をなす前記食品のカラー印刷方法によって製造したカラー印刷食品である。
食品表面は、固形、半固形などの一定の形状を維持可能な食品であれば、何れの食品でも対象とすることが可能であり、例えば、菓子類、野菜類、穀物類、果物類、惣菜類、薬品類などとすることができ、より具体的には、もち、せんべい、スライス乾燥林檎、まんじゅう、チョコレート、クッキー、スルメ、パン、おにぎり、弁当、キャベツ、白菜、ニンジン、玉ねぎ、レモン、蜜柑、林檎、梨、葡萄、桜桃、桃、その他の食品や、食品以外の口腔内に含む、例えば、爪楊枝、串、マウスピース、笛などのような物品類などとすることができる。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成について詳述することとする。
以下では、この発明の食品のカラー印刷方法の一例に従い順次、カラー印刷食品1の一例である林檎果実1の構造につてを示して行くこととする。
該脱脂処理(B)の対象となる下地処理範囲3は、印刷対象箇所2を含む部分的な範囲とすれば充分と言うことができるものの、作業の効率化や大量生産などを目的とする場合などには、林檎果実1果皮表面全体を丸ごと洗浄するなどして脱脂処理してしまうことも可能である。
当該可食印刷機は、可食インクジェットプリンター(Mastermind社製、型番NMP813BT−F)を使用し、パーソナルコンピューターの色調整ソフトウェアを適宜調整し、鮮明な印刷品質を得るようにする。
以上のとおりの構成からなるこの発明の食品のカラー印刷方法、および、それによって製造したカラー印刷食品1は、それを開発する上で長期に亘り、様々な試行錯誤を繰り返し、理想的な品質を確保できるようにしたものであり、その開発過程に従い、順次達成した作用および効果について示していく。
試作1回目(テスト対象:約30個)対象食品(林檎)1の品種:とき、世界一
可食印刷機(図示せず)にて林檎果実表面1に直接印刷したところ、何れも可食インク(可食カラー表示層5)が載らず、しかも可食カラー表示層5が定着せず垂れてしまうという現象が起き、林檎果実1果皮の表面には可食インクが定着しないという事が判明し、この課題を克服するために、可食インク(可食カラー表示層5)を定着できる液体を林檎1に塗り、乾燥させてから印刷を行うことができれば完成させられると判断し、イナゲル粉を試してみることとした。
試作2回目(テスト対象:約40個)対象食品(林檎)1の品種:とき、シナノゴールド
次に、水とイナゲル粉とを容積比1:2の割合で調合したイナゲル溶液を林檎果実1果皮表面に塗布し、状態を確認しながら果皮表面に定着しないところは、複数回に亘ってスポンジで擦るように付けて乾燥させてから可食印刷機による印刷を試みたが、印刷品質は前回とあまり変わらなかった。
試作3回目(テスト対象:約40個)対象食品(林檎)1の品種:とき、シナノゴールド
スポンジに消毒用エチルアルコールを染み込ませて油(ワックス)層10を拭き取った林檎果実1に可食印刷機による印刷を試みたところ、前回行った試作より、高い印刷品質を得ることができたが、しかし、未だ可食下地層域4にムラが生じ易く、印刷品質が安定しないといいう欠点が残っており、以上の結果を踏まえて、イナゲル溶液による可食下地層域4をムラ無く均質に形成できれば、可食印刷の品質を格段に向上できるという確信を得、粘着力のある液体を介在させてイナゲル溶液を塗布すれば、その粘着力によって可食下地層域4をムラ無く均質に定着させることができるのではないかと思料するに至ったものである。
この製菓用ニス(商品名:ラックベース)は、実験に使用した木工用ニスよりも乾燥が早く、粘着力が強いという利点があった。
試作4回目(テスト対象:約30個)対象食品(林檎)1の品種:金星、とき、シナノゴールド
スポンジに消毒用エチルアルコールを染み込ませて油(ワックス)層10を拭き取った林檎果実1に、製菓用ニス(商品名:ラックベース)を塗布し、乾燥させた下地範囲に対し、イナゲル溶液による可食下地層域4を塗布する実験を試みたが、可食下地層域4の定着率は、約70%に留まり、所々に穴や気泡など生じてしまうという欠点が残るものであり、さらに、こうした実験を繰り返して行く中に、数日前に施した可食印刷による可食カラー表示層5が、その可食下地層域4諸共、乾燥によって亀裂と剥がれとを生じているのを発見した。
試作5回目(テスト対象:約30個)対象食品(林檎)1の品種:金星、シナノゴールド
水とイナゲル粉とを容積比1:2の割合で調合したイナゲル溶液では濃すぎるのではないかと考え、水とイナゲル粉との比率を変えて可食印刷を試みたが、それよりも濃度が薄過ぎると林檎果実1果皮表面に定着せず、また、濃過ぎると可食印刷機にかける前に、可食下地層4が剥がれ、脱落してまうという現象が発生することを確認し、その結果を踏まえ、可食下地層4を形成するイナゲル溶液の水とイナゲル粉との容積比を1:2の割合に戻し、スポンジに消毒用エチルアルコールを染み込ませて油(ワックス)層10を拭き取った林檎果実1に、製菓用ニス(商品名:ラックベース)を塗布し、乾燥させた下地範囲に、イナゲル溶液による可食下地層域4を塗布・乾燥させた後、該可食下地層域4の上から製菓用ニス(ラックベース)を上塗りしてみると、光沢が出て、剥げなくなり、しかも水に浸けてもほぽ落ちない状態に仕上がることが判明した。
試作6回目(テスト対象:約30個)対象食品(林檎)1の品種:金星、シナノゴールド
スポンジに消毒用エチルアルコールを染み込ませて油(ワックス)層10を拭き取った林檎果実1に、イナゲル溶液の水とイナゲル粉との容積比1:2の割合としたイナゲル溶液を塗布して、乾燥させた後に、再度イナゲル溶液を塗布・乾燥させて合計2度、重ね塗りするようにしてみた結果、ムラ無く均質かつ気泡や穴などの無い可食下地層域4を形成することができ、可食印刷機による印刷仕上りも、今までにないほど高品質の印刷が可能となったが、2度塗りした可食下地層域4は、時間の経過とともに次第にひび割れを生じ、可食カラー表示層5の剥がれや脱落を生じてしまう原因となり、これを防止しようとして製菓用ニス(商品名:ラックベース)を上塗りしても、ひび割れや脱落の予防にはならず、品質の劣化が生じ易いという欠点が残り、さらに、2度塗りと夫々の乾燥工程とを合わせると、相当の長時間を要するものとなって生産効率を悪化させてしまうことから、別の方法を検討すべきであるという結論に達した。
試作7回目(テスト対象:約50個)対象食品(林檎)1の品種:金星、シナノゴールド
これまでの経緯に基づき、水、イナゲル粉、製菓用スニ(ラックベース)の全てを混ぜ合わせてから林檎果実1に塗布することを試みることとしたものの、前述したとおり、スニ(ラックベース)は、可食インクを弾くと知っていたのであまり期待せずに試作を行って見た。
水、イナゲル粉、製菓用スニ(ラックベース)を、1:2:1〜2の容積比で調合したイナゲル・ニス溶液を作ると、製菓用スニ(ラックベース)の粘りが加わり、林檎果実1果皮表面に塗ると全体的に弾くことなく塗ることができ、印刷も2回塗りした時と同様、綺麗に仕上げることができ、その後は、乾燥させてから製菓用スニ(ラックベース)を上塗りし数日様子を見てみところ、時間がが経つにつれてやはり製菓用スニ(ラックベース)を塗っていない可食下地層域4の部分から割れ目が生じて来たので、これまでの試作では、印刷対象箇所2よりかなり大きく可食下地層域4を塗布、形成していたが、これを改め、今度は可食下地層域4を印刷対象箇所2より少しだけ大きく塗り、可食印刷を施した後に、可食下地層域4より1cm程度大きく製菓用スニ(ラックベース)を上塗りし、外装被覆層6を形成するようにしたところ、印刷後、長時間を経てもひび割れが生じなくなり、展示・販売に充分に耐える良品を得ることができるようになった。
叙述した如く、この発明の食品のカラー印刷方法、および、それによって製造したカラー印刷食品は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの食品へのカラー印刷技術に比較して果実の果皮表面のように油(ワックス)層を有する食品にも効率的且つ鮮明にカラー印刷することができ、さらに可食カラー印刷の表示品質および耐久性を大幅に高めると共に、低廉化して遥かに経済的なものとすることができるから、従来から広く行われている赤色系林檎の日焼けによる文字や絵などの表示技術に加え、全く新しい可食のカラー印刷を実現化することができるから、これまで不可能とされてきた林檎で、特に日光による模様付けの難しかった黄色系林檎などにも簡便に精緻なカラー印刷による柄模様付けを実現化することができ、林檎にも新たな付加価値を与えて更なる普及、拡大を図りたいと願う林檎農家は勿論のこと、林檎に留まらず、様々な食品を生産、販売する食品業界、および、食品の流通量を増加させたい食品流通業界は固よりのこと、多彩でデザイン性に秀れた食品を希望する各種企業や一般家庭などにおいても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
10 同 食品の油(ワックス)層
2 印刷対象箇所
3 下地処理範囲(可食アルコールによる脱脂処理)
4 可食下地層域(水:イナゲル粉:製菓用ニス)
5 可食カラー表示層
6 外装被覆層(製菓用ニス)
A 印刷対象位置の決定
B 脱脂処理
C イナゲル溶液の塗布
D 可食下地層の定着
E 可食下地層の検査
F 可食カラー表示層の印刷
G 食カラー表示層の定着
H 外装被覆層の被覆
J 最終検品
K 包装
L 出荷
Claims (5)
- 対象食品表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲に対し、水およびイナゲル粉を主成分とするイナゲル層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成した後、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食印刷機にて、可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥するようにしてなることを特徴とする食品のカラー印刷方法。
- 対象食品表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲に対し、水、イナゲル粉、食品用ニスを所定の割合で攪拌・混合してなるイナゲル・ニス層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成した後、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食印刷機にて可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥した上、該可食カラー表示層を含む可食下地層域上に、食品用ニスからなる外装被覆層にて密閉状に被覆するようにしてなることを特徴とする食品のカラー印刷方法。
- 果実果皮表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲を、適宜脱脂処理にて果皮表面に元来生成している油(ワックス)層を除去し、確保した下地処理範囲内に対し、水:イナゲル粉:製菓用ニスを1:2:1〜2の容積比で攪拌・混合してなるイナゲル・ニス層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成し、該可食下地層中に気泡や皮膜ムラが無いか検品した後、該イナゲル下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食印刷機にて可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥した上、該可食カラー表示層を含む可食下地層域上に、その範囲を上回るよう製菓用ニスからなる外装被覆層にて密閉状に被覆するようにしてなることを特徴とする食品のカラー印刷方法。
- 対象食品表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲に対し、水およびイナゲル粉を主成分とするイナゲル層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成し、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥するようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項1ないし4何れか一項記載の食品のカラー印刷方法によって製造したカラー印刷食品。
- 収穫した果実果皮表面の凹凸の少ない箇所に決定した印刷対象箇所を含み、且つ該印刷対象箇所を僅かに上回る範囲を、適宜脱脂処理にて果皮表面に元来生成している油(ワックス)層を除去し、確保した下地処理範囲内に対し、水:イナゲル粉:製菓用ニスを1:2:1〜2の容積比で攪拌・混合してなるイナゲル・ニス層にてムラ無く均質に被覆した可食下地層域を形成し、該可食下地層域上適所の印刷対象箇所に対し、可食インクからなる可食カラー表示層を形成・乾燥した上、該可食カラー表示層を含む可食下地層域上に、その範囲を上回るよう製菓用ニスからなる外装被覆層にて密閉状に被覆するようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項1ないし4何れか一項記載の食品のカラー印刷方法によって製造したカラー印刷食品。
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