本発明の垂直配向型液晶表示装置は、表示面側より、少なくとも第1の偏光板A、液晶セル、第2の偏光板B及びバックライトを、この順序で配置している誘電率異方性が正の垂直配向型液晶表示装置であり、表示面側より、該第1の偏光板Aは保護フィルムT1、偏光子及び位相差フィルムT2から構成され、該第2の偏光板Bは位相差フィルムT3、偏光子及び保護フィルムT4から構成され、該位相差フィルムT2及び位相差フィルムT3が、いずれもアセチル基置換度が1.70〜2.55の範囲にあるセルロースエステル樹脂を含有し、かつ該液晶セルのカールと該第2の偏光板Bとのカールの方向が、相反する方向であることを特徴とし、様々な環境条件下で長期間にわたり保存された際のパネルの反りが抑制され、平面性及び表示ムラ耐性に優れた誘電率方位性が正の垂直配向型液晶表示装置を実現することができる。この特徴は、請求項1から請求項5に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、前記位相差フィルムT2と位相差フィルムT3との弾性率比の値、前記位相差フィルムT2と位相差フィルムT3との膜厚比の値、及び前記保護フィルムT1と保護フィルムT4との膜厚比の値が、それぞれ前記式(1)〜(3)で規定する全ての条件を満たすことが好ましい態様であり、様々な温湿度における使用環境、あるいは保管環境において、パネルの反りがより抑制され、より平面性に優れ、表示ムラ耐性が向上した垂直配向型液晶表示装置を提供することができる。
また、表示面側を上にして測定したときの前記液晶セル単体のカールが正カール(凹型)であり、前記第2の偏光板B単体のカールが負カール(凸型)とする構成を採ることにより、更に優れた平面性、表示ムラ耐性を備えた垂直配向型液晶表示装置を得ることができる。
また、偏光板A及び偏光板Bで使用する位相差フィルムが、23℃、55%RHで測定した時の589nmにおける面内位相差値Roが30〜130nmの範囲であり、かつ厚さ方向の位相差Rtが100〜300nmの範囲であることが、より好ましい態様である。
また、位相差フィルムT2及び位相差フィルムT3の膜厚が、いずれも30〜80μmの範囲であることが好ましい。
本発明の構成により問題を解決することができたのは、以下の理由によるものと推測している。
液晶表示装置、特に、高開口率化した垂直配向型液晶表示装置においては、構成する部材の多くが、バックライト側に集中して配列されるため、パネルの反りを起こしやすくなっている。液晶表示素子の平面性は、液晶セルの平面性が最も重要であり、様々な環境条件下、例えば、常温常湿の一般的な環境のほか、高温低湿あるいは高温高湿といった過酷な環境下でも、液晶セルの平面性を維持することが、表示ムラを防止する観点からは重要になってくる。
垂直配向型液晶表示装置では、長期間にわたり使用した際、バックライトから放出された熱エネルギーが、それに近接する第2の偏光板Bや液晶セルに影響を及ぼすことになる。このような熱エネルギーの影響や使用環境の温湿度変化の影響により、第2の偏光板Bや液晶セル等の構成部材において不正な伸縮が生じ、その結果、カールが生じることになる。この際、第2の偏光板Bとそれに隣接して配置される液晶セルとが、同一方向にカールを起こす、例えば、共に凹状態にカールを起こすと、お互いのカールが助長しあい、液晶セルの平面性を大きく損なうことになり、その結果、パネル表面に凹凸が生じ、表示ムラを招く結果となる。
本発明者らは、上記問題に対し鋭意検討を進めた結果、位相差フィルムとして、アセチル基置換度が1.70〜2.55の範囲にあるセルロースエステル樹脂を含有して構成すると共に、液晶セル自身が発現するカールの方向と、バックライトに隣接する第2の偏光板Bが発現するカールの方向が、相反する方向になるように構成すること、即ち、液晶セルで生じたカールを偏光板Bのカール特性で相殺することにより、液晶セルのカールを抑制し、平面性に優れ、表示ムラのない液晶表示装置を実現することができた。
更に詳しくは、第1の偏光板Aと、第2の偏光板Bとの構成部材の関係を、最適の条件に制御することが、本発明の問題を解決する上で重要であることが判明した。
すなわち、バックライト側に位置し、熱の影響をより受けやすい第2の偏光板Bに適用する位相差フィルムT3を、第1の偏光板Aに適用する位相差フィルムT2よりも、高い弾性率を付与し、硬質で収縮しにくい特性を付与すること、また、膜厚としても第2の偏光板Bに適用する位相差フィルムT3を、第1の偏光板Aに適用する位相差フィルムT2よりも厚い設計とすることにより、同じく、位相差フィルムの変形を起こしにくい設計としている。更には、第2の偏光板Bに適用する保護フィルムT4を、第1の偏光板Aに適用する保護フィルムT1よりも厚い設計とすることにより、同様に変形を起こしにくくすることができる。その結果、バックライト側に近接し、熱の影響を受けやすい第2の偏光板Bと、熱の影響が相対的に低い第1の偏光板との変形、収縮バランスをそろえることにより、液晶セルに対する第2の偏光板Bのカール特性を、本発明で規定しているように、相反する方向のカール特性を付与すると共に、垂直配向型液晶表示装置の構成部材全体としてのカール特性も安定化することができ、液晶表示素子全体として、様々な環境下で長期間にわたり使用された際にも、カール特性が安定化し、平面性に優れ、表示ムラの発生を抑制した垂直配向型液晶表示装置を実現することができた。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《垂直配向型液晶表示装置》
はじめに、図を用いて本発明の垂直配向型液晶表示装置の構成の概略について説明する。
図1は、一例として、カラーフィルター・オン・アレイ(COA)方式を採用した本発明の垂直配向型(VA型)液晶表示装置の構成の一例を示す概念図である。
図1において、本発明の垂直配向型液晶表示装置1の基本的構成としては、表示面側(紙面の上部)には、保護フィルムT1と位相差フィルムT2により、偏光子2を挟持して構成されている第1の偏光板Aが配置され、その下部に、透明基板3と、カラーフィルター5と薄層トランジスタ(TFT)6を有する透明基板7とで液晶層4を挟持した構成からなる液晶セルCが配置されている。その下部には、位相差フィルムT2と保護フィルムT4とで、偏光子8を挟持して構成されている第2の偏光板Bが配置されている。そして、最深部にバックライトBLが設けられている。
〈液晶層〉
本発明のVA型液晶表示装置においては、液晶層4が垂直配向型液晶層であることを特徴とするが、本発明に係る液晶層4としては、従来公知の種々の液晶層を用いることができる。ただし、本発明においては、誘電率異方性が正の液晶が二枚の透明基板3、7で挟持されている構成のVA型液晶層を用いることを特徴とする。この点については、特開2009−301010号公報に記載の液晶表示装置の構成、特に[0094]〜[0107]に記載の構成が参考となる。なお、透明基板3、7としては、従来公知の透明なガラスまたは樹脂を用いることができる。
このような透明基板3、7間に正の誘電率異方性を有するネマチック液晶を封入することで液晶層を形成する。正の誘電率異方性を有するネマチック液晶としては、TN型、IPS型液晶表示装置に使用されているような公知のものを用いることができる。
本発明において、液晶層は、一例として上下基板間に、誘電異方性が正で、Δn=0.0815、Δε=4.5程度のネマチック液晶材料等を用いることができる。
液晶層の厚さdについては特に制限されないが、例えば、3.5μm程度に設定することができる。
また、マルチドメイン構造とする場合には、各ドメイン間の境界領域の液晶分子の配向を調整するのに有利である。なお、「マルチドメイン構造」とは、液晶表示装置の一画素を複数の領域に分割した構造をいう。例えば、垂直配向型(VA型)液晶表示装置において、白表示時には液晶分子が傾斜しているので、傾斜方向とその逆方向では、斜めから観察した時の液晶分子の複屈折の大きさが異なり、輝度や色調に差が生じるが、マルチドメイン構造にすると、輝度や色調の視野角特性が改善されるので好ましい。
具体的には、画素のそれぞれを液晶分子の初期配向状態が互いに異なる2以上の領域で構成して平均化することで、視野角に依存した輝度や色調の偏りを低減することができる。また、それぞれの画素を、電圧印加状態において液晶分子の配向方向が連続的に変化する互いに異なる2以上の領域から構成しても同様の効果が得られる。
全方向で均等な視野角を得るにはこの分割数を多くすればよいが、4分割あるいは8分割以上とすることで、ほぼ均等な視野角が得られる。特に8分割時は偏光板吸収軸を任意の角度に設定できるので好ましい。
〈カラーフィルター〉
本発明のVA型液晶表示装置は、カラーフィルター・オン・アレイ(COA)方式を採用したVA型液晶層を用いることができる。COA方式は、例えば、特開平10−206888号公報等に記載されているように、カラーフィルターが液晶層の駆動側基板に直接形成されたカラーフィルター一体型駆動基板と、対向電極(導電層)を備える対向基板とをスペーサを介在させて対向配置し、その間隙部に液晶材料を封入して構成されるものであり、カラーフィルターを反射電極の上に形成し、高精細時に貼り合わせマージンを広くして歩留まりや開口率を向上させることができる。
〈カール特性〉
図1に示すような構成からなる垂直配向型液晶表示装置において、様々な温湿度環境下で各構成部材においてカールを生じる。カールが生じる要因としては、主には、特性の異なる部材を積層して構成した場合や、単一部材であっても、表裏面で部材を構成している材料の分布が異なる場合に、カールが発生しやすくなる。例えば、偏光板の場合には、保護フィルムと位相差フィルムの伸縮特性、剛性(弾性率)や膜厚等によりカールが生じることになり、また液晶セルの場合には、上下に配置した透明基板の特性によりカールが生じことになる。更には、液晶表示装置全体としては、第1の偏光板Aを構成する位相差フィルムT2と、第2の偏光板Bを構成する位相差フィルムT3との伸縮特性、剛性(弾性率)や膜厚差や、第1の偏光板Aを構成する保護フィルムT1と、第2の偏光板Bを構成する保護フィルムT4との膜厚差も、カール発現の要因となっている。
本発明では、上記のような構成からなる垂直配向型液晶表示装置において、液晶セルCと、第2の偏光板Bのそれぞれの単独構成におけるカール特性(カールの方向)が、相反する方向であることを特徴とする。すなわち、図1に示す構成において、例えば、液晶セル4が、両端部が上にせり上がる凹型のカール特性(この特性を、正カールともいう)を有している場合には、第2の偏光板Bは両端部が下がり、中央部が膨らむ凸型のカール特性(この特性を、負カールともいう)を付与させることにより、それぞれのカール特性を相殺することにより、平面性に優れた垂直配向型液晶表示装置とすることができる。
本発明の垂直配向型液晶表示装置においては、主には、表示面側を上にして測定したとき、液晶セルC単体のカールが正カール(凹型)であり、第2の偏光板B単体のカールが負カール(凸型)であることが好ましい。
更に、本発明においては、正カール(凹型)の液晶セルC単体と、負カール(凸型)である第2の偏光板B単体とを、図1に示す関係で配置した際に、カールにより生じる液晶セルC単体の底面と、第2の偏光板B単体の上面とのカールにより生じる乖離距離が、それぞれに中心部に対し、左右で対称の関係にあることが好ましい。すなわち、それぞれでカールが生じた場合でも、左右でねじれを起こすことのないカール特性であることが好ましい。
加えて、表示面側を上にして測定したときの液晶セルC単体のカール値(正カール:凹型)と、第2の偏光板B単体のカール値(負カール:凸型)が、符号の関係は逆であるが、その絶対値が等しいことが好ましい。本発明でいうカール値が等しいとは、カール値の±10%の範囲内であることをいう。
本発明に係るカールの測定は、偏光板あるいは液晶セルの10cm×10cmの単体を作製し、これらの単体を、表示面側を上にして各温湿度環境下で24時間以上放置したのち、4隅の立ち上がりの高さ、あるいはカールメータ(反りの曲率半径の逆数をカール度としている)を用いて測定して求めることができる。
本発明では、更には、第1の偏光板A及び第2の偏光板Bの構成部材の特性が、下記式(1)〜(3)で規定する条件の全てを満たすことが好ましい。
式(1)
1.1≦位相差フィルムT3の弾性率/位相差フィルムT2の弾性率≦1.5
式(2)
1.1≦位相差フィルムT3の膜厚/位相差フィルムT2の膜厚≦2.0
式(3)
1.1≦保護フィルムT4の膜厚/保護フィルムT1の膜厚≦2.0
本発明において、位相差フィルムT2及びT3の弾性率は、各位相差フィルムの製膜における延伸工程での延伸温度、延伸率等を適宜調整することにより、所望の弾性率に制御することができる。セルロースエステルフィルムの製膜方法の詳細について後述する。
《位相差フィルム》
次いで、本発明に係る位相差フィルムの詳細について説明する。
本発明においては、偏光板を構成する位相差フィルムは、少なくともセルロースエステル樹脂を含有し、当該セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度が、1.70〜2.55の範囲内であることを特徴とする。
(セルロースエステル樹脂)
本発明に係る位相差フィルムに適用されるセルロースエステル樹脂は、安価で製造可能であり、位相差発現性が高く、高い位相差を有する位相差フィルムとする場合であっても薄膜化可能であること、高い位相差を発現させても延伸倍率を低く抑えることができ破断等の故障を回避できる観点から、アセチル基置換度(総アシル基置換度ともいう)が1.70〜2.55の範囲内であるセルロースエステル樹脂である。
セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度が1.70未満である場合には、ドープ粘度の上昇によるフィルム面品質の劣化、延伸張力の上昇によるヘイズアップなどが発生することがある。また、アセチル基置換度が2.55を超える場合には、必要な位相差が得られ難い。アセチル基置換度の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて行うことができ、好ましいアセチル基置換度は、2.00〜2.55の範囲内であり、更に好ましくは2.20〜2.45の範囲内である。
セルロースエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、30000〜300000の範囲内が、得られるフィルムの機械的強度が強く好ましい。更に50000〜200000のものが好ましく用いられる。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnの値は、1.4〜3.0の範囲内であることが好ましい。
セルロースエステル樹脂の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
セルロースエステル樹脂の原料のセルロースとしては、特に限定はないが、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)、ケナフ等を挙げることができる。またそれらから得られたセルロースエステル樹脂はそれぞれ任意の割合で混合使用することができる。
本発明に係るセルロースエステル樹脂は、公知の方法により製造することができる。具体的には、特開平10−45804、特開2009−161701号などに記載の方法を参考にして合成することができる。
市販品としては、ダイセル社L20、L30、L40、L50、イーストマンケミカル社のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60S等が挙げられる。
(位相差フィルムの各種添加剤)
本発明に係る位相差フィルムに、目的に応じて各種添加剤を適用することができる。
〈糖エステル化合物〉
本発明に係る位相差フィルムには、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことができる。
本発明に係る位相差フィルムには、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも一種を1個以上12個以下有しその構造のOH基のすべてもしくは一部をエステル化したエステル化合物を含むことができる。
エステル化の割合としては、ピラノース構造又はフラノース構造内に存在するOH基の70%以上であることが好ましい。なお、本発明においては、上記エステル化合物を総称して、糖エステル化合物と称す。
本発明で好ましく用いられる糖の例としては、例えば以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノース、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノースあるいはケストース挙げられる。
このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。
これらの化合物の中で、特にピラノース構造とフラノース構造を両方有する化合物が好ましい。
例としてはスクロース、ケストース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオースなどが好ましく、さらに好ましくは、スクロースである。
本発明ピラノース構造またはフラノース構造中のOH基のすべてもしくは一部をエステル化するのに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができる。用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、オクテン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、酢酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、アルコキシ基を導入した芳香族モノカルボン酸、ケイ皮酸、ベンジル酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、より、具体的には、キシリル酸、ヘメリト酸、メシチレン酸、プレーニチル酸、γ−イソジュリル酸、ジュリル酸、メシト酸、α−イソジュリル酸、クミン酸、α−トルイル酸、ヒドロアトロパ酸、アトロパ酸、ヒドロケイ皮酸、サリチル酸、o−アニス酸、m−アニス酸、p−アニス酸、クレオソート酸、o−ホモサリチル酸、m−ホモサリチル酸、p−ホモサリチル酸、o−ピロカテク酸、β−レソルシル酸、バニリン酸、イソバニリン酸、ベラトルム酸、o−ベラトルム酸、没食子酸、アサロン酸、マンデル酸、ホモアニス酸、ホモバニリン酸、ホモベラトルム酸、o−ホモベラトルム酸、フタロン酸、p−クマル酸を挙げることができるが、特に安息香酸が好ましい。
オリゴ糖は、澱粉、ショ糖等にアミラーゼ等の酵素を作用させて製造されるもので、本発明に適用できるオリゴ糖としては、例えば、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖が挙げられる。
本発明の糖エステル化合物は、下記一般式(A)で表されるピラノース構造またはフラノース構造の少なくとも1種を1個以上12個以下縮合した化合物である。ただし、R11〜R15、R21〜R25は、炭素数2〜22のアシル基または水素原子を、m、nはそれぞれ0〜12の整数、m+nは1〜12の整数を表す。
R
11〜R
15、R
21〜R
25は、ベンゾイル基、水素原子であることが好ましい。ベンゾイル基はさらに置換基R
26(pは0〜5)を有していてもよく、例えばアルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、フェニル基が挙げられ、さらにこれらのアルキル基、アルケニル基、フェニル基は置換基を有していてもよい。オリゴ糖も本発明のエステル化合物と同様な方法で製造することができる。
以下に、本発明のエステル化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
〈一般式(1)で表されるエステル化合物〉
本発明に係る位相差フィルムには、特に、偏光板の環境変化でのリタデーション安定性の観点から、下記一般式(1)で表されるエステル化合物を含有することが好ましい。
一般式(1)
B−(G−A)n−G−B
上記一般式(1)において、Bはヒドロキシ基またはカルボン酸残基、Gは炭素数2〜12のアルキレングリコール残基または炭素数6〜12のアリールグリコール残基または炭素数が4〜12のオキシアルキレングリコール残基、Aは炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸残基または炭素数6〜12のアリールジカルボン酸残基を表す。nは1以上の整数を表す。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、Bで示されるヒドロキシ基またはカルボン酸残基と、Gで示されるアルキレングリコール残基またはオキシアルキレングリコール残基またはアリールグリコール残基、Aで示されるアルキレンジカルボン酸残基またはアリールジカルボン酸残基とから構成されるものであり、通常のエステル系化合物と同様の反応により得られる。
一般式(1)で表されるエステル化合物のカルボン酸成分としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、脂肪族酸等があり、これらはそれぞれ1種または2種以上の混合物として使用することができる。
一般式(1)で表されるエステル化合物の炭素数2〜12のアルキレングリコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル1,3−ペンタンジオール、2−エチル1,3−ヘキサンジオール、2−メチル1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用される。
特に炭素数2〜12のアルキレングリコールがセルロースエステルとの相溶性に優れているため、特に好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるエステル化合物の炭素数4〜12のオキシアルキレングリコール成分としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等があり、これらのグリコールは、1種または2種以上の混合物として使用できる。
一般式(1)で表されるエステル化合物の炭素数4〜12のアルキレンジカルボン酸成分としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、グルタール酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等があり、これらは、それぞれ1種または2種以上の混合物として使用される。炭素数6〜12のアリーレンジカルボン酸成分としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5ナフタレンジカルボン酸、1,4ナフタレンジカルボン酸等がある。
一般式(1)で表されるエステル化合物は、数平均分子量が、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000の範囲が好適である。また、その酸価は、0.5mgKOH/g以下、ヒドロキシル基価は25mgKOH/g以下、より好ましくは酸価0.3mgKOH/g以下、ヒドロキシル基価は15mgKOH/g以下のものである。
以下に、本発明に用いることのできる一般式(1)で表されるエステル化合物の具体的化合物を示すが、本発明はこれに限定されない。
本発明においては、セルロースエステルフィルムは一般式(1)で表されるエステル化合物をセルロースエステルフィルムの0.1〜30質量%含むことが好ましく、特には、0.5〜10質量%含むことが好ましい。
〈可塑剤〉
本発明に係る位相差フィルムでは、上記一般式(1)で表される化合物以外の可塑剤を含有することができる。
適用可能な可塑剤としては、特に限定されないが、好ましくは、多価カルボン酸エステル系可塑剤、グリコレート系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、脂肪酸エステル系可塑剤および多価アルコールエステル系可塑剤、エステル系可塑剤、アクリル系可塑剤等から選択される。
そのうち、可塑剤を2種以上用いる場合は、少なくとも1種は多価アルコールエステル系可塑剤であることが好ましい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールとモノカルボン酸のエステルよりなる可塑剤であり、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましく、より好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。
本発明において、特に好ましく用いられる多価アルコールは次の一般式(a)で表される化合物である。
一般式(a)
R11−(OH)n
上記一般式(a)において、R11はn価の有機基、nは2以上の正の整数、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価アルコールとしては、例えば、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
アドニトール、アラビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ガラクチトール、マンニトール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、ピナコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、キシリトール等を挙げることができる。
特に、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールが好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるモノカルボン酸としては、特に制限はなく、公知の脂肪族モノカルボン酸、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸等を用いることができるが、その中でも、脂環族モノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いると透湿性、保留性を向上させる点で好ましい。
好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数は1〜20であることが更に好ましく、1〜10の範囲内であることが特に好ましい。酢酸を含有させるとセルロースアセテートとの相溶性が増すため好ましく、酢酸と他のモノカルボン酸を混合して用いることも好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸の例としては、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸の例としては、安息香酸、トルイル酸等の安息香酸のベンゼン環にアルキル基、メトキシ基あるいはエトキシ基などのアルコキシ基を1〜3個を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸等のベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができ、その中でも、特に安息香酸が好ましい。
多価アルコールエステルの分子量は、特に制限はないが、300〜1500の範囲内であることが好ましく、350〜750の範囲内であることが更に好ましい。分子量が大きい方が揮発し難くなるため好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
多価アルコールエステルに用いられるカルボン酸は1種類でもよいし、2種以上の混合であってもよい。また、多価アルコール中のOH基は、全てエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
グリコレート系可塑剤は特に限定されないが、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が好ましく用いることができる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類としては、例えば、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が挙げられる。
クエン酸エステル系可塑剤としては、例えば、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
脂肪酸エステル系可塑剤としては、例えば、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物としては、2価以上、好ましくは2価〜20価の多価カルボン酸とアルコールのエステルよりなる。また、脂肪族多価カルボン酸は2〜20価の範囲内であることが好ましく、芳香族多価カルボン酸、脂環式多価カルボン酸の場合は3価〜20価であることが好ましい。
多価カルボン酸は、次の一般式(b)で表される。
一般式(b)
R12(COOH)m1(OH)n1
上記一般式(b)において、R12は(m1+n1)価の有機基、m1は2以上の正の整数、n1は0以上の整数、COOH基はカルボキシル基、OH基はアルコール性またはフェノール性水酸基を表す。
好ましい多価カルボン酸としては、例えば、以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などを好ましく用いることができる。特にオキシ多価カルボン酸を用いることが、保留性向上などの点で好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物に用いられるアルコールとしては、特に制限はなく、公知のアルコール、フェノール類を用いることができる。
例えば、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪族飽和アルコールまたは脂肪族不飽和アルコールを好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
また、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどの脂環式アルコールまたはその誘導体、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどの芳香族アルコールまたはその誘導体なども好ましく用いることができる。
多価カルボン酸としてオキシ多価カルボン酸を用いる場合は、オキシ多価カルボン酸のアルコール性またはフェノール性の水酸基を、モノカルボン酸を用いてエステル化しても良い。好ましいモノカルボン酸の例としては以下のようなものを挙げることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
脂肪族モノカルボン酸としては、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を持った脂肪酸を好ましく用いることができる。炭素数1〜20であることが更に好ましく、炭素数1〜10であることが特に好ましい。
好ましい脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサンカルボン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸などの飽和脂肪酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができる。
好ましい脂環族モノカルボン酸としては、例えば、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。
好ましい芳香族モノカルボン酸としては、例えば、安息香酸、トルイル酸などの安息香酸のベンゼン環にアルキル基を導入したもの、ビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸などのベンゼン環を2個以上持つ芳香族モノカルボン酸、またはそれらの誘導体を挙げることができる。特に酢酸、プロピオン酸、安息香酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は、特に制限はないが、分子量300〜1000の範囲内であることが好ましく、350〜750の範囲内であることが更に好ましい。保留性向上の点では大きい方が好ましく、透湿性、セルロースアセテートとの相溶性の点では小さい方が好ましい。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステルに用いられるアルコール類は一種類でも良いし、二種以上の混合であっても良い。
本発明に用いることのできる多価カルボン酸エステル化合物の酸価は1mgKOH/g以下であることが好ましく、0.2mgKOH/g以下であることが更に好ましい。酸価を上記範囲にすることによって、リタデーションの環境変動も抑制されるため好ましい。
なお、酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数をいう。酸価はJIS K0070に準拠して測定したものである。
特に好ましい多価カルボン酸エステル化合物の例を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が挙げられる。
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係る位相差フィルムには、紫外線吸収剤を含有することもできる。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明に用いられる紫外線吸収剤は、特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり、好ましく使用できる。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等である。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明に係る偏光板で用いる位相差フィルムとしては、紫外線吸収剤を2種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号公報に記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、または直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、位相差フィルムの乾燥膜厚が30〜200μmの場合は、位相差フィルムに対して0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、0.6〜4質量%の範囲内が更に好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤はとは劣化防止剤ともいわれ、例えば、位相差フィルム中の残留溶媒のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等によりフィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースエステル樹脂に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmが更に好ましい。
〈微粒子〉
本発明に係る位相差フィルムには、取扱性を向上させる為、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等の無機微粒子や架橋高分子などの微粒子を含有させることが好ましい。中でも二酸化ケイ素がフィルムのヘイズを小さくできるので好ましい。
微粒子の一次平均粒子径としては、20nm以下が好ましく、更に好ましくは、5〜16nmの範囲内であり、特に好ましくは、5〜12nmの範囲内である。
これらの微粒子は0.1〜5μmの粒径の二次粒子を形成して位相差フィルムに含まれることが好ましく、好ましい平均粒径は0.1〜2μmの範囲内であり、更に好ましくは0.2〜0.6μmの範囲内である。これにより、フィルム表面に高さ0.1〜1.0μm程度の凹凸を形成し、これによってフィルム表面に適切な滑り性を与えることができる。
本発明に用いられる微粒子の一次平均粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察し、粒子径を測定しその平均値をもって、一次平均粒子径として求めることができる。
微粒子の見掛け比重としては、70g/リットル以上が好ましく、更に好ましくは、90〜200g/リットルであり、特に好ましくは、100〜200g/リットルである。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましく、また、固形分濃度の高いドープを調製する際には、特に好ましく用いられる。
一次粒子の平均径が20nm以下、見掛け比重が70g/リットル以上の二酸化珪素微粒子は、例えば、気化させた四塩化珪素と水素を混合させたものを1000〜1200℃にて空気中で燃焼させることで得ることができる。また例えばアエロジル200V、アエロジルR972V(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、それらを使用することができる。
上記の見掛け比重は二酸化珪素微粒子を一定量メスシリンダーに採り、この時の重さを測定し、下記式で算出したものである。
見掛け比重(g/リットル)=二酸化珪素質量(g)/二酸化珪素の容積(リットル)
本発明に用いられる微粒子の分散液を調製する方法としては、例えば以下に示すような3種類が挙げられる。
調製方法Aとしては、溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。微粒子分散液をドープに加えて攪拌する。
調製方法Bとしては、溶剤と微粒子を攪拌混合した後、分散機で分散を行う。これを微粒子分散液とする。別に溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに前記微粒子分散液を加えて攪拌する。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープと十分混合する。
調製方法Cとしては、溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、攪拌溶解する。これに微粒子を加えて分散機で分散を行う。これを微粒子添加液とする。微粒子添加液をインラインミキサーでドープと十分混合する。
調製方法Aは二酸化珪素微粒子の分散性に優れ、調製方法Cは二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい点で優れている。中でも、上記記載の調製方法Bは二酸化珪素微粒子の分散性と、二酸化珪素微粒子が再凝集しにくい等、両方に優れている好ましい調製方法である。
分散方法としては、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散する時の二酸化珪素の濃度は5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度は高い方が、添加量に対する液濁度は低くなる傾向があり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアセテートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
セルロースアセテートに対する二酸化珪素微粒子の添加量はセルロースアセテート100質量部に対して、二酸化珪素微粒子は0.01質量部〜5.0質量部が好ましく、0.05質量部〜1.0質量部が更に好ましく、0.1質量部〜0.5質量部が最も好ましい。添加量は多い方が、動摩擦係数に優れ、添加量が少ない方が、凝集物が少なくなる。
分散機は通常の分散機が使用できる。分散機は大きく分けてメディア分散機とメディアレス分散機に分けられる。二酸化珪素微粒子の分散にはメディアレス分散機がヘイズが低く好ましい。メディア分散機としてはボールミル、サンドミル、ダイノミルなどが挙げられる。
メディアレス分散機としては超音波型、遠心型、高圧型などがあるが、本発明においては高圧分散装置が好ましい。高圧分散装置は、微粒子と溶媒を混合した組成物を、細管中に高速通過させることで、高剪断や高圧状態など特殊な条件を作りだす装置である。
高圧分散装置で処理する場合、例えば、管径1〜2000μmの細管中で装置内部の最大圧力条件が9.807MPa以上であることが好ましい。
更に好ましくは19.613MPa以上である。またその際、最高到達速度が100m/秒以上に達するもの、伝熱速度が420kJ/時間以上に達するものが好ましい。
上記のような高圧分散装置には、Microfluidics Corporation社製超高圧ホモジナイザ(商品名マイクロフルイダイザ)或いはナノマイザ社製ナノマイザがあり、他にもマントンゴーリン型高圧分散装置、例えば、イズミフードマシナリ製ホモジナイザ、三和機械(株)製UHN−01等が挙げられる。
また、微粒子を含むドープを流延支持体に直接接するように流延することが、滑り性が高く、ヘイズが低いフィルムが得られるので好ましい。
(位相差フィルム(セルロースエステルフィルム)の製造方法)
本発明に係る位相差フィルムは、溶液流延製膜法で製造されたフィルムであっても、溶融流延製膜法で製造されたフィルムであっても好ましく用いることができる。
本発明に係る位相差フィルムの溶液流延製膜法での製造は、セルロースアセテートおよび添加剤を溶剤に溶解させてドープを調製する工程、ドープを無限に移行する無端の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、延伸または幅保持する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻取る工程により行われる。
以下、一例として、溶液流延製膜法による位相差フィルム(セルロースエステルフィルム)の製造方法について説明する。
先ず、セルロースエステルを溶解し得る有機溶媒に溶解してドープを形成する。具体的には、セルロースエステルのフレークやパウダーと有機溶媒を混合し、攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。適用可能な溶解方法としては、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号、同9−95557号または同9−95538号に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後、ドープを濾材で濾過、脱泡した後、ポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、10〜35質量%の範囲内程度が好ましく、特に21〜35質量%の範囲内が好ましく用いられる。
本発明で用いられるセルロースエステルは、輝点異物が少ないものが好ましく用いられる。輝点異物とは、クロスニコルに配置された偏光板の間にセルロースエステルフィルム試料を配置し、一方より光を当てて、もう一方より観察するとき、光源の光が透過することによって光って見える点のことをいう。液晶表示装置に適用する位相差フィルムでは、この輝点異物が少ないものが求められており、10μm以上の大きさの輝点異物が100個/cm2以下、特に好ましくは実質的に無いことであり、5μm以上、10μm未満の大きさの輝点異物は200個/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは50個/cm2以下、特に好ましくは、実質的にないことである。5μm未満の輝点異物も少ないことが望ましい。セルロースエステルフィルムの輝点異物の原因は、原料のセルロースエステルに含まれる未酢化のセルロースと考えられており、原料として輝点異物が少ないセルロースエステルを選択すること及び流延に用いるセルロースエステル溶液を十分に濾過することによって減らすことができる。
セルロースエステルを溶解し得る有機溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、アセトン、シクロヘキサノン、アセト酢酸メチル、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ニトロエタン、塩化メチレン等を挙げることができる。塩化メチレンのような塩素系有機溶媒は、昨今の厳しい環境問題の中では、使用を見合わせた方が良い場合もあり、非塩素系の有機溶媒の方が好ましい。中でも、酢酸メチル、アセトンが好ましく使用できる。また、これらの有機溶媒に、メタノール、エタノール、ブタノール等の低級アルコールを併用すると、セルロースエステルの有機溶媒への溶解性が向上したりドープ粘度が低減できたり、支持体から剥離する際の剥離性が向上したりできるので好ましい。特に沸点が低く、毒性の少ないエタノールが好ましい。これら低級アルコールは、全有機溶媒に対して2質量%以上、50質量%以下含有させることが好ましく、特に5質量%以上、30質量%以下で含有させることが好ましい。
溶液流延製膜法は、上記のドープを濾過して、定量ポンプでダイに送り、表面研磨されているステンレスベルトあるいは金属ドラム上にダイからドープを流延し、その金属支持体上で、有機溶媒を蒸発あるいは冷却して固化させて、金属支持体が一周する前にウェブを剥離し、乾燥工程で乾燥してフィルムを形成させるものである。
前述のようにして調製されたセルロースエステル溶液(以下、ドープともいう)は、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギアポンプを通して加圧型ダイスに送られる。ギアポンプから加圧ダイスに送り込まれたドープは、加圧型ダイスの口金(スリット)からエンドレスに回転している支持体の上に均一に流延される。支持体がほぼ一周したところで、生乾きのフィルム(ウェブ)として支持体から剥され、回転しているロール群に通されながら乾燥され、乾燥されたフィルムは、巻き取り機で所定の長さに巻き取られる。
本発明に有用な流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから支持体上に均一に押し出す方法、一旦支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、一旦支持体上に流延されたドープを逆回転するロールで膜厚を調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイを用いる方法が好ましい。加圧ダイスには、コートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、上記以外にも、例えば、特開昭61−94724号、同61−148013号、特開平4−85011号、同4−286611号、同5−185443号、同5−185445号、同6−278149号、同8−207210号などに記載の従来知られている方法を好ましく用いることができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの上記公報に記載の内容と同様の効果が得られる。エンドレスの支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(単に、ベルトともいう)が用いられる。加圧ダイスは、1基あるいは2基以上設置してもよい。好ましくは1基または2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイスに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイスにドープを供給する。
支持体上に流延されたドープは、例えば、ドラムあるいはベルトの表面側、つまり支持体上にあるウェブ側から熱風を当てる方法、ドラムあるいはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムの裏面に接触させて、伝熱によりドラムあるいはベルトを加熱し、表面温度をコントロールする液体伝熱方法などによって乾燥することができるが、裏面液体伝熱方式を用いるのが好ましい。
ドープが流延される前の支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし、乾燥を促進し、また、ドープの支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1から10℃低い温度に設定することが好ましい。
製造する速度は、ドラムの直径あるいはベルトの長さ、乾燥方法、ドープ溶媒の組成等によっても変化するが、形成されたウェブをドラムやベルトから剥離する時点での残留溶媒の量も影響する。つまり、ドープ膜の厚み方向でのドラムやベルト表面付近での溶媒濃度が高すぎる場合には、形成されたウェブを剥離した時、ドラムやベルトにドープが残り、次の流延に支障をきたしてしまうし、また、形成されたウェブは、剥離する力に耐えるだけの強度が必要であるからである。剥離時点での残留溶媒量は、乾燥方法によっても異なり、ドープ表面から風を当てて乾燥する方法よりは、ベルトあるいはドラム裏面から伝熱する方法の方が効果的に残留溶媒量を低減することができる。
ドラムやベルト上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について説明する。
ドラムやベルトが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロール群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。発泡により、フィルム中に気泡ができると後述の延伸工程でフィルムが破断する原因となる恐れがあるため、当然ながらフィルム中には気泡が含まれないことが望まれる。具体的には0.5μm以上の気泡が、1個/cm2未満であることが望まれる。
支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、出来上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンター方式)が好ましい。
上記乾燥工程における乾燥温度は、40から250℃、特に70から180℃が好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
本発明においては、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、少なくとも1方向に1.15〜4.0倍延伸することが好ましく、特に好ましくは1.2〜2.5倍に延伸することである。また、本発明においては、ウェブ中の残留溶媒量が30質量%未満で延伸することが好ましい。
本発明でいう残留溶媒量は、下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
式中、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。
ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。延伸倍率は所望の位相差が得られるように適宜調整することができる。
本発明において、セルロースエステルを用いて溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明において、延伸温度としては120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下で延伸することである。
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの屈折率Nx、Ny、Nzを本発明の範囲に入れるために有効な方法である。例えば流延方向に延伸した場合、巾方向の収縮が大きすぎると、Nzの値が大きくなりすぎてしまう。この場合、フィルムの巾収縮を抑制あるいは、巾方向にも延伸することで改善できる。巾方向に延伸する場合、巾手で屈折率に分布が生じる場合がある。これは、テンター法を用いた場合にみられることがあるが、巾方向に延伸したことで、フィルム中央部に収縮力が発生し、端部は固定されていることにより生じる現象で、いわゆるボーイング現象と呼ばれるものと考えられる。この場合でも、流延方向に延伸することで、ボーイング現象を抑制でき、巾手の位相差の分布を少なく改善できるのである。
更に、互いに直行する2軸方向に延伸することにより得られるフィルムの膜厚変動が減少できる。セルロースエステルフィルムの膜厚変動が大き過ぎると位相差のムラが生じる。セルロースエステルフィルムの幅手及び長尺方向の膜厚変動は、前述したように±3%の範囲であることが望ましく、この様な目的において、互いに直交する2軸方向に延伸する方法は有効であり、互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ1.15〜4.0倍、1.0〜1.15倍の範囲とすることが好ましい。更に好ましくは長尺方向に1.2〜4.0に延伸し、幅手方向の延伸倍率が1.01〜1.2倍に延伸することが好ましく、更に好ましくは長尺方向に1.2〜2.5に延伸し、1.01〜1.10倍となるように延伸することが位相差のムラも少なく、平面性にも優れるため好ましい。
本発明に係る位相差フィルムにおいては、本発明の請求項2の式(1)で規定するように、位相差フィルムT3の弾性率/位相差フィルムT2の弾性率の比の値の範囲を、1.1〜1.5の範囲内にすることが、本発明の目的効果を得る観点からこのましく、更に好ましくは、1.2〜1.3の範囲内である。
上記延伸工程においては、延伸温度や延伸倍率条件を適宜調整することにより、得られる位相差フィルムの弾性率を制御することができる。例えば、延伸温度を低く設定する、あるいは延伸倍率を高く設定することにより、フィルムの弾性率は高くなり、逆に、延伸温度を高く設定する、あるいは延伸倍率を低く設定することにより、フィルムの弾性率は低くなる。
本発明でいう弾性率は、JIS K 7127に準じて測定して求めることができる。
具体的には、位相差フィルムを23±2℃、50±5%RHの環境下で、24時間放置した後、幅10mm×長さ200mm(長さ方向がMD方向となるように断裁)の短冊状に断裁し、弾性率を測定した。なお、MD方向とは、フィルム製膜時に搬送方向と直交する方向である。
次いで、引っ張り試験器オリエンテック(株)社製テンシロンRTA−100を使用し、上記試験片を、試験速度は10mm/分の条件で引っ張り、得られた引張応力−歪み曲線より、弾性率算出開始点を10N、終了点を30Nとし、その間に引いた接線を外挿し、位相差フィルムの弾性率(GPa)を求めることができる。
本発明に係る位相差フィルムの弾性率としては、2.0〜7.0GPaの範囲内であることが好ましく、更には、3.0〜5.0GPaの範囲内であることが好ましい。
ウェブを延伸する方法には特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向 先ず、セルロースエステルを溶解し得る有機溶媒に溶解してドープを形成する。具体的には、セルロースエステルのフレークやパウダーと有機溶媒を混合し、攪拌しながら溶解し、ドープを形成する。溶解方法には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、同9−95557号公報または同9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載の如き高圧で行う方法等種々の溶解方法がある。溶解後、ドープを濾材で濾過、脱泡した後、ポンプで次工程に送る。ドープ中のセルロースエステルの濃度は、10〜35質量%程度が好ましく、特に21〜35質量%が好ましく用いられる。
以上のようにして製膜される位相差フィルムの膜厚は、特に限定はされないが、10〜200μmの範囲内のものが用いられる。より好ましい膜厚は10〜100μmの範囲内であり、特に好ましくは、30〜80μmの範囲内である。
また、本発明の垂直配向型液晶表示装置においては、本発明の請求項2の式(2)で規定するように、位相差フィルムT3の膜厚/位相差フィルムT2の膜厚の比の値の範囲を、1.0〜2.0の範囲内にすることが、本発明の目的効果を得る観点からこのましく、更に好ましくは、1.4〜1.7の範囲内である。
同様に、本発明の垂直配向型液晶表示装置においては、本発明の請求項2の式(3)で規定するように、保護フィルムT4の膜厚/保護フィルムT1の膜厚の比の値の範囲を、1.0〜2.0の範囲内にすることが、本発明の目的効果を得る観点からこのましく、更に好ましくは、1.4〜1.7の範囲内である。
また、本発明に係る位相差フィルムにおいては、23℃、55%RHで測定した時の589nmにおける下記式(I)で定義するRoが30〜130nmの範囲内であり、かつ下記式(II)で定義するRtが100〜300nmの範囲内であることが好ましい態様である。
式(I)
Ro=(nx−ny)×d(nm)
式(II)
Rt={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
上記式(I)、(II)において、Roは位相差フィルムの面内位相差値を表し、Rtは位相差フィルムの厚さ方向の位相差を表す。dは位相差フィルムの膜厚を表し、nxは位相差フィルムの面内の最大(遅相軸方向)の屈折率を表す。nyは位相差フィルムの面内で遅相軸に直角な方向(進相軸方向)の屈折率を表し、nzは位相差フィルムの厚さ方向の屈折率を表す。
《偏光板、保護フィルム》
本発明に係る位相差フィルムは、偏光板、それを用いた液晶表示装置に使用する。
本発明に係る偏光板は、本発明に係る位相差フィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に貼合した偏光板である。
本発明に係る偏光板は、一般的な方法で作製することができる。本発明に係る位相差フィルムの偏光子側をアルカリ鹸化処理し、沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。
もう一方の面には、保護フィルムとして、上記説明した本発明に係る位相差フィルムを用いても、また他の市販のフィルムを用いることができる。
例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)も好ましく用いられる。
表示装置の表面側に用いられる第1の偏光板Aで用いる保護フィルムT1においては、防眩層あるいはクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することもできる。
偏光板の主たる構成要素である偏光子とは、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムで、これはポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと二色性染料を染色させたものがある。
偏光子は、ポリビニルアルコール水溶液を製膜し、これを一軸延伸させて染色するか、染色した後一軸延伸してから、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を行ったものが用いられている。偏光子の膜厚は5〜30μmが好ましく、特に10〜20μmであることが好ましい。
また、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、鹸化化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールも好ましく用いられる。
中でも熱水切断温度が66〜73℃であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
このエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムを用いた偏光子は、偏光性能および耐久性能に優れているうえに、色斑が少なく、大型液晶表示装置に特に好ましく用いられる。
以上のようにして得られた偏光子は、通常、その両面または片面に保護フィルムが貼合される。貼合する際に用いられる接着剤としては、PVA系の接着剤やウレタン系の接着剤などを挙げることができるが、中でもPVA系の接着剤が好ましく用いられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
《偏光板A用の位相差フィルムの作製》
〔位相差フィルムA1の作製〕
(セルロースエステル樹脂A1の調製)
セルロース(日本製紙(株)製溶解パルプ)300gにプロピオン酸1250gを加え、54℃で30分撹拌した。混合物を冷却した後、氷浴中で冷却した無水プロピオン酸の980gと、硫酸の13gを加えてエステル化を行った。なお、エステル化においては、液温が40℃を超えないように調節しながら、150分の攪拌を行った。反応終了後、プロピオン酸300gと水100gの混合液を20分かけて滴下して、過剰の無水物を加水分解した。反応液の温度を40℃に保持しながら、プロピオン酸900gと水300gを加えて1時間撹拌した。次いで、プロピオン酸マグネシウム20gを含有した水溶液中に混合物を添加し、しばらく撹拌した後にろ過、乾燥し、セルロースエステル樹脂A1を得た。得られたセルロースエステル樹脂A1は、総アシル基置換度が2.43、アセチル基置換度が2.43、重量平均分子量は220000であった。なお、総アシル基置換度(アセチル基置換度)の測定方法は、ASTMのD−817−91に準じて行った。
(微粒子添加液1の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製)の11質量部と、エタノールの89質量部とを、ディゾルバーを用いて50分間攪拌混合した後、マントンゴーリン分散機で分散を行って、微粒子分散液1を調製した。
次いで、99質量部のメチレンクロライドを入れた溶解タンクに、十分に攪拌しながら、上記調製した微粒子分散液1の5質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った後、これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液1を調製した。
(主ドープA1の調製)
はじめに、加圧溶解タンクに、メチレンクロライドと、エタノールを添加した。次いで、この混合溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記調製したアセチル基置換度が2.43のセルロースエステル樹脂A1を攪拌しながら添加し、これを加熱、攪拌しながら完全に溶解した。次いで、上記調製した微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープA1を調製した。上記調製した主ドープA1の組成の詳細は以下のとおりである。
〈主ドープA1の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂A1(アセチル基置換度2.43) 100質量部
糖エステル化合物:平均置換度5.5のベンジルサッカロース 10質量部
一般式(1)で表されるエステル化合物:例示化合物B−15 3質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜1に投入し、攪拌しながら溶解して主ドープA1を調製した。
(位相差フィルムA1の製膜:溶液流延法)
ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に、上記主ドープA1を、ダイコータを用いて均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、流延したフィルム中の溶媒残留量が75質量%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離した位相差フィルムを、160℃の延伸温度で、テンターを用いて幅方向に延伸倍率20%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、乾燥膜厚が38.0μmの位相差フィルムA1を作製した。
作製した位相差フィルムA1の弾性率を、下記の方法に従って測定した結果、3.8GPaであった。
弾性率は、JIS K 7127に準じて測定した。上記作製した位相差フィルムA1を23±2℃、50±5%RHの環境下で、24時間放置した後、幅10mm×長さ200mm(長さ方向がMD方向となるように断裁)の短冊状に断裁し、引っ張り試験器オリエンテック(株)社製テンシロンRTA−100を使用し、試験速度は10mm/分の条件で引っ張り、得られた引張応力−歪み曲線より、弾性率算出開始点を10N、終了点を30Nとし、その間に引いた接線を外挿し、位相差フィルムA1の弾性率(GPa)を求めた。
〔位相差フィルムA2〜A8の作製〕
上記位相差フィルムA1の作製において、表1及び表2に記載のように、使用するセルロースエステル樹脂のアセチル基置換度、延伸温度、製膜後の膜厚、弾性率を変更した以外は同様にして、位相差フィルムA2〜A8を作製した。
なお、上記作製に使用した各セルロースエステル樹脂のアセチル基置換度は、前記セルロースエステル樹脂A1の調製において、プロピオン酸の使用量及びエステル化の条件を適宜調整して、表1及び表2に記載のアセチル基置換度となるように調整した。
《偏光板B用の位相差フィルムの作製》
〔位相差フィルムB1の作製〕
(主ドープB1の調製)
はじめに、加圧溶解タンクに、メチレンクロライドと、エタノールを添加した。次いで、この混合溶媒の入った加圧溶解タンクに、位相差フィルムA1の作製で用いたのと同様のアセチル基置換度が2.43のセルロースエステル樹脂A1を攪拌しながら添加し、これを加熱、攪拌しながら完全に溶解した。次いで、位相差フィルムA1の作製で用いたのと同様の微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープB1を調製した。上記調製した主ドープB1の組成の詳細は、以下のとおりである。
〈主ドープB1の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 30質量部
セルロースエステル樹脂A1(アセチル基置換度2.43) 100質量部
糖エステル化合物:平均置換度5.5のベンジルサッカロース 10質量部
一般式(1)で表されるエステル化合物:例示化合物B−15 3質量部
微粒子添加液1 1質量部
以上を密閉されている主溶解釜1に投入し、攪拌しながら溶解して主ドープB1を調製した。
(位相差フィルムB1の製膜:溶液流延法)
ベルト流延装置を用い、温度22℃、2m幅でステンレスバンド支持体に、上記主ドープB1を、ダイコータを用いて均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、流延したフィルム中の溶媒残留量が75質量%になるまで溶媒を蒸発させ、次いで剥離張力130N/mで、ステンレスベルト支持体上から剥離した。剥離した位相差フィルムを、150℃の延伸温度で、テンターを用いて幅方向に延伸倍率35%延伸した。延伸開始時の残留溶媒は15%であった。
次いで、乾燥ゾーンを多数のロールで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。以上のようにして、乾燥膜厚が38.0μmの位相差フィルムB1を作製した。
作製した位相差フィルムB1の弾性率を、前述の方法に従って測定した結果、4.9GPaであった。
〔位相差フィルムB2〜B7の作製〕
上記位相差フィルムB1の作製において、表1及び表2に記載のように、延伸温度、製膜後の膜厚、弾性率を変更した以外は同様にして、位相差フィルムB2〜B7を作製した。
《保護フィルムT1、T4の作製》
〔保護フィルム1の作製〕
アセチル基置換度が2.92、粘度平均重合度が300のセルローストリアセテート100質量部、エチルフタリルエチルグリコレート2質量部、トリフェニルホスフェート10質量部、塩化メチレン350質量部、エタノール50質量部を密閉容器に入れ、混合物をゆっくり攪拌しながら徐々に昇温し、60分かけて45℃まで上げて溶解して、ドープAを調製した。この時、容器内は1.2気圧となった。このドープAを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した後、24時間静置し、ドープA中の泡を除いた。次いで、上記セルローストリアセテート1を5質量部、チヌビン326(BASFジャパン(株)製)3質量部、チヌビン109(BASFジャパン(株)製)7質量部、チヌビン171(BASFジャパン(株)製)5質量部及びAER0SIL 200V(日本アエロジル(株)製)1質量部を塩化メチレン90質量部及びエタノール10質量部に混合、撹拌して溶解し、紫外線吸収剤溶液Aを調製した。上記ドープAの100質量部に対して紫外線吸収剤溶液Aを2質量部の割合で加え、スタチックミキサーにより十分混合した後、ダイコータからステンレスベルト上にドープ温度35℃で流延した。ステンレスベルトの裏面から35℃の温度の温水を接触させて温度制御されたステンレスベルト上で1分間乾燥した後、更にステンレスベルトの裏面に、15℃の冷水を接触させて15秒間保持した後、ステンレスベルトから剥離した。剥離時のウェブ中の残留溶媒量は70質量%であった。次いで剥離したウェブの両端を固定しながら120℃で10分間乾燥させ、膜厚40μmの保護フィルム1を得た。
この保護フィルム1は、第1の偏光板Aの程フィルムT1として用いた。
〔その他の保護フィルムの作製〕
第2の偏光板Bで用いる保護フィルムT4については、上記保護フィルム1の作製において、表1及び表2に記載の膜厚となるように製膜条件を変更した以外は同様にして作製した。
《第1の偏光板A、第2の偏光板Bの作製》
〔第1の偏光板Aの作製〕
(第1の偏光板A1の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した後、水洗、乾燥して偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と上記作製した位相差フィルムA1と、裏面側には、上記作製した保護フィルム1(膜厚:40.0μm)を貼り合わせて偏光板A1を作製した。
工程1:位相差フィルムA1及び保護フィルム1を、60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:上記調製した偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した位相差フィルムA1の上に乗せて配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルムA1と偏光子と裏面側の保護フィルム1を圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と位相差フィルムA1と保護フィルム1とを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板A1を作製した。
(偏光板A2〜A8の作製)
上記偏光板A1の作製において、位相差フィルムA1に代えて、それぞれ位相差フィルムA2〜A8を用いた以外は同様にして、偏光板A2〜A8を作製した。
〔第2の偏光板Bの作製〕
(第2の偏光板B1の作製)
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した後、水洗、乾燥して偏光子を得た。
次いで、下記工程1〜5に従って偏光子と上記作製した位相差フィルムB1と、裏面側には、上記作製した保護フィルム(膜厚:44.0μmのものを使用)を貼り合わせて偏光板B1を作製した。
工程1:位相差フィルムB1及び保護フィルムを、60℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に90秒間浸漬し、次いで水洗し乾燥して、偏光子と貼合する側を鹸化した。
工程2:上記調製した偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒浸漬した。
工程3:工程2で偏光子に付着した過剰の接着剤を軽く拭き除き、これを工程1で処理した位相差フィルムB1の上に乗せて配置した。
工程4:工程3で積層した位相差フィルムB1と偏光子と裏面側の保護フィルムを圧力20〜30N/cm2、搬送スピードは約2m/分で貼合した。
工程5:80℃の乾燥機中に工程4で作製した偏光子と位相差フィルムB1と保護フィルムとを貼り合わせた試料を2分間乾燥し、偏光板B1を作製した。
(偏光板B2〜B33の作製)
上記偏光板B1の作製において、位相差フィルムB1及び保護フィルムに代えて、それぞれ表1及び表2に記載の位相差フィルム及び保護フィルム(膜厚のそれぞれ異なるフィルムを使用)を用いた以外は同様にして、偏光板B2〜B33を作製した。
《液晶表示装置の作製》
(液晶表示装置1〜38の作製)
SONY製のBRAVIA KDL-46HX800のLEDバックライトユニットを用い、特開2009−301010号公報の図17に記載の液晶セルを使用した液晶表示装置を作製し、図1に示すように、上記作製した第1の偏光板Aを液晶セルの上部に、第2の偏光板Bを液晶セルCとバックライトBLとの間に、表1及び表2に記載の組み合わせで配置して、液晶表示装置1〜38を作製した。
その際、各偏光板の貼合の向きは、位相差フィルムの面が液晶セル側となるように、かつ、予め貼合されていた偏光板と同一の方向に吸収軸が向くように貼り付けた。
この液晶表示装置の液晶セルCは、図1記載の構成からなり、カラーフィルター5と薄膜トランジスタ6が透明基板7の一方に配置されているカラーフィルター・オン・アレイ構造を有している。
《液晶表示装置の評価》
〔カール特性の評価〕
上記液晶表示装置の作製に用いた液晶セルと、位相差フィルムT3と保護フィルムT4から構成される第2の偏光板Bとのカール特性を、下記の方法に従って確認した。
液晶セルと第2の偏光板Bとを、表示面側が上になるように、水平板上に静置した後、1)23℃、55%RH、2)40℃、90%の2つの環境条件下で、それぞれ24時間保存した後のカール特性を確認した。
両条件において、液晶セルは共に、端部が競り上がる凹型のカール特性(正カール特性)を示し、第2の偏光板B1〜B23は中央部が競り上がる凸型のカール特性(負カール特性)、第2の偏光板B24〜B33は、液晶セルと同方向で、端部が競り上がる凹型のカール特性(正カール特性)であった。
〔表示ムラ耐性1の評価:常温常湿環境下〕
上記作製した各液晶表示装置を、23℃、55%RHの環境下で、1000時間連続点灯した後、画面の表示ムラ、即ち、平面性の劣化による表示ムラ(輝度ムラ)の有無を目視観察し、下記の基準に従って、表示ムラ耐性1の評価を行った。
5:表示ムラ、輝度ムラの発生が全く認められない
4:表示ムラ、輝度ムラの発生がほぼ認められない
3:ごく弱い表示ムラ、輝度ムラの発生は認められるが、画像表示ではほとんど気にならない
2:表示ムラ、輝度ムラの発生は認められるが、画像表示で気にならなく、実用上は許容される範囲にある
1.強い表示ムラ、輝度ムラの発生は認められ、実用上問題となる品質である
〔表示ムラ耐性2の評価:高温高湿環境下〕
上記作製した各液晶表示装置を、40℃、90%RHの環境下で、400時間連続点灯した後、画面の表示ムラ、即ち、平面性の劣化による表示ムラ(輝度ムラ)の有無を目視観察し、下記の基準に従って、表示ムラ耐性2の評価を行った。
5:表示ムラ、輝度ムラの発生が全く認められない
4:表示ムラ、輝度ムラの発生がほぼ認められない
3:ごく弱い表示ムラ、輝度ムラの発生は認められるが、画像表示ではほとんど気にならない
2:表示ムラ、輝度ムラの発生は認められるが、画像表示で気にならなく、実用上は許容される範囲にある
1.強い表示ムラ、輝度ムラの発生は認められ、実用上問題となる品質である
以上により得られた結果を、表3に示す。
表3に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる液晶表示装置は、比較例に対し、様々な環境下で長期間にわたり使用された後でも、平面性に優れ、表示ムラ耐性・輝度ムラ耐性が向上していることがわかる。